JP2022143250A - 炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法 - Google Patents

炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反応炉内に存在する溶体を考慮して、反応炉内の反応を高精度に計算できる炉内反応の計算装置を提供する。【解決手段】本発明に係る炉内反応の計算装置は、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を移動させながら他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥及び還元を行う装置であり、燃焼ガスを含む第1気相のうちの原料鉱石を含む第1ベッド層との平衡反応に寄与する第1反応分と、第1ベッド層のうちの第1気相との平衡状態に寄与する第2反応分とが平衡状態に達した時の熱量の変化及び流量を少なくとも計算する平衡反応計算部を備え、平衡反応計算部は、第1ベッド層に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーと端成分の存在比率とに基づいて端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより溶体のギブズエネルギーを算出する。【選択図】図2

Description

本発明は、炉内反応の計算装置及び炉内反応の計算方法に関する。
酸化鉱石の一種であるリモナイト鉱石やサプロライト鉱石等のラテライト鉱石(ニッケル酸化鉱石)の製錬方法として、ロータリーキルンや移動炉床炉等を使用して、鉄とニッケルを主成分とする合金であるフェロニッケルを製造する乾式製錬方法が知られている。
ロータリーキルンによる乾式製錬方法では、原料鉱石をロータリードライヤーにて乾燥させ、付着水の含有量を例えば15%~25%とした後、付着水が低減された乾燥鉱石をロータリーキルンの装入端から投入する。その後、ロータリーキルンの装入端から供給する石炭の燃焼熱や、ロータリーキルンの排出端に設けられた微粉炭専焼バーナー又は微粉炭と重油の混焼バーナーにより、乾燥鉱石を加熱して、乾燥鉱石を乾燥させると共に焼成を行う。
このようなロータリーキルンによる乾式製錬方法として、例えば、装入端より供給する石炭の燃焼熱やバーナーで微粉炭や重油等が燃焼して生じる燃焼熱の他に、ロータリーキルンの途中から投入した石炭の燃焼によって生じる燃焼熱を乾燥鉱石の乾燥及び部分還元に必要な熱を与える方法がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、ロータリーキルンの途中に設けたスクープフィーダから石炭をロータリーキルン内に投入して、ロータリーキルンの装入端から装入したニッケル酸化鉱の乾燥鉱石を、バーナーで化石燃料の燃焼により生じる燃焼熱で焼成すると共に部分的な還元処理を施すロータリーキルンの操業方法が開示されている。このロータリーキルンの操業方法では、スクープフィーダから投入された石炭は熱分解することで揮発分と固定炭素になり、揮発分は炉内の燃焼ガスと共に装入端より排出され、固定炭素は、乾燥鉱石が乾燥・還元処理されて産出された焼鉱と共に排出端から排出される。
特許第5967616号公報
ここで、ロータリーキルン内に供給される原料鉱石中の針鉄鉱やケイ酸塩は、ロータリーキルン内での反応においてオリビンやマグネタイト等の固溶体に形態変化する。そのため、特許文献1に記載のロータリーキルンの操業方法等の周知の技術を用いてロータリーキルン等の反応炉内の乾燥鉱石等の挙動をシミュレーションする際、反応炉内に供給した原料鉱石の製錬をより精度高く行うためには、原料鉱石内に存在する溶体も考慮して、炉内反応を高精度に解析する必要があった。
本発明の一態様は、反応炉内に存在する溶体を考慮して、反応炉内の反応を高精度に計算できる炉内反応の計算装置を提供することを目的とする。
本発明に係る炉内反応の計算装置の一態様は、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算装置であって、
前記燃焼ガスを含む第1気相のうちの前記原料鉱石を含む第1ベッド層との平衡反応に寄与する第1反応分と、前記第1ベッド層のうちの前記第1気相との平衡状態に寄与する第2反応分とが、平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する平衡反応計算部を備え、
前記平衡反応計算部は、前記第1ベッド層に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーを計算し、前記端成分のギブズエネルギーと前記端成分の存在比率とに基づいて前記端成分が純物質として独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて前記端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより前記溶体のギブズエネルギーを算出する。
本発明に係る炉内反応の計算方法の一態様は、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算方法であって、
前記燃焼ガスを含む第1気相のうちの前記原料鉱石を含む第1ベッド層との平衡反応に寄与する第1反応分と、前記第1ベッド層のうちの前記第1気相との平衡状態に寄与する第2反応分とが、平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する平衡反応計算工程を含み、
前記平衡反応計算工程は、前記第1ベッド層に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーを計算し、前記端成分のギブズエネルギーと前記端成分の存在比率とに基づいて前記端成分が純物質として独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて前記端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより前記溶体のギブズエネルギーを算出する。
本発明に係る炉内反応の計算装置の一態様は、反応炉内に存在する溶体を考慮して、反応炉内の反応を高精度に計算できる。
本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの概略構成を示す。 本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置の機能を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る炉内反応の計算方法を説明するフローチャートである。 炉内反応の計算装置のハードウェア構成図である。 ロータリーキルン内の燃焼ガスと原料鉱石との流れを示す図である。 本発明の実施形態に係る炉内反応の計算方法をロータリーキルンの全体に適用する場合のフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。
本発明の実施形態に係る炉内反応の計算装置について説明するに当たり、本実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの構成について説明する。
<ロータリーキルン>
図1は、本実施形態に係る炉内反応の計算装置が適用されるロータリーキルンの概略構成を示す。図1に示すように、ロータリーキルン1は、回転自在で略円筒形状のキルン本体11と、キルン本体11の途中に設けられる燃焼用材料供給管12とを有する。
キルン本体11は、円筒形状の中空構造物からなる窯であり、キルン本体11は、厚さ15~30mmの炭素鋼からなる。キルン本体11は、その内周側の壁面に、耐熱性を高めるための耐火物を備えることが好ましい。
キルン本体11の大きさとしては、例えば、内径が4.5m~5.5m、長軸方向の長さ(全長)が100m~110mの大きさのものを用いることが好ましい。
キルン本体11は、その一端側(図1中の左側)の開口端部11aが、ロータリーキルン装入端(以下、単に「装入端」ともいう。)14Aに挿入して閉じられると共に、他端側(図1中の右側)の開口端部11bが、ロータリーキルン排出端(以下、「排出端」ともいう。)14Bに挿入して閉じられている。キルン本体11は、装入端14Aから排出端14Bに向かってわずかに傾斜した状態で配設されており、軸回りに回転自在に支持されている。
装入端14Aには、原料鉱石をキルン本体11内に導入する原料供給管15が貫設されている。排出端14Bには、開口端部11bを貫通してキルン本体11内に導入されるバーナー16が設けられる。
原料鉱石は、ニッケル酸化鉱石(酸化ニッケル鉱石)等を用いることができる。原料鉱石は、例えば、ニッケル酸化鉱石等をドライヤー(ロータリードライヤー)により予備乾燥して、付着水の一部を除去した乾燥鉱石等を用いることができる。乾燥鉱石中の水分量としては、15質量%~25質量%程度である。
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、鉄とニッケルを主成分とする合金であるフェロニッケルの製錬においては、ガーニエライト鉱等が好ましく用いられる。ガーニエライト鉱の代表的な組成としては、乾燥鉱石での換算で、Ni品位が2.1質量%~2.5質量%、Fe品位が11質量%~23質量%、MgO品位が20質量%~28質量%、SiO2品位が29質量%~39質量%、CaO品位が0.5質量%未満であり、灼熱減量が10質量%~15質量%である。また、原料鉱石には、Fe品位、Ni品位、MgO品位相当の、針鉄鉱FeOOHや、Fe、Ni、Mg等を含むケイ酸塩等が含まれている。
バーナー16は、微粉炭専焼バーナー又は微粉炭と重油の混焼バーナー等を用いることができる。バーナー16は、微粉炭又は微粉炭及び重油等を含む燃料を燃焼して、ロータリーキルン1内に燃焼熱を発生させる。
燃焼用材料供給管12は、キルン本体11の外周面の途中に設けられ、キルン本体11内に燃焼用材料を供給できる。燃焼用材料は、揮発分等の気相及び固定炭素等の主にベッド層に入る固体物質の少なくとも一方を含み、例えば、石炭等の炭材を用いることができる。
揮発分は、炭化水素化合物、硫黄及びハロゲン等の揮発物質等である。
固定炭素は、石炭から水分・揮発分が抜けた後の、熱分解後残渣であるチャー粒子(主に固定炭素及び灰分)のうち、灰分を除いた主に炭素から構成される燃焼分である。
なお、図1では、燃焼用材料供給管12は、キルン本体11の外周面に1つだけ設けられているが、キルン本体11の外周面に、キルン本体11の軸方向又は軸回りに沿って複数設けてもよい。
燃焼用材料は、単一品種の炭材ではなく、複数の異なる品種の炭材等を混合して用いることが多く、さらに投入する炭材の粒子径の大きさも分布を持つことが多い。なお、粒子径とは、有効径による体積平均粒径をいい、粒子径は、例えば、レーザ回折・散乱法、動的光散乱法又は分級法等によって測定される。レーザ回折・散乱法を用いる場合、レーザ回折・散乱法により測定した体積基準の粒度分布において小粒径側からの積算粒径分布が50%となる粒子径(D50)を平均粒子径として用いることができる。
原料鉱石は、装入端14Aに設けた原料供給管15からキルン本体11内に装入され、燃焼用材料は燃焼用材料供給管12からキルン本体11内に投入される。排出端14B側からは、排出端14Bに設置したバーナー16により微粉炭や重油等を燃焼させることにより発生した高温の燃焼ガスが、排出端14B側から装入端14A側に向けて、即ち原料鉱石の流れと反対の方向に吹き込まれる。
キルン本体11内では、原料鉱石は、装入端14Aから装入され、キルン本体11が所定の速度で回転することで、装入端14Aから原料供給管15を通してキルン本体11内に装入された原料鉱石を一端側である開口端部11a側から他端側である排出端14Bに向かって搬送する。このとき、原料鉱石は、キルン本体11内を移動しながら、排出端14Bから装入端14A側に向かって流れる燃焼ガスと向流接触し、バーナー16で微粉炭や重油等の燃料を燃焼させることにより発生させた高温の燃焼ガスの燃焼熱及び火炎によって加熱される。また、燃焼用材料供給管12からキルン本体11内に投入される燃焼用材料が、キルン本体11内の燃焼ガスにより燃焼する。原料鉱石は、燃焼用材料供給管12から投入された燃焼用材料の燃焼により生じさせた燃焼熱によっても加熱される。そのため、原料鉱石は、キルン本体11の回転に連れてキルン本体11の装入端14Aから排出端14Bに向けて移動しながら、バーナー16で燃料が燃焼することで生じた燃焼ガスの燃焼熱及び火炎と、燃焼用材料が燃焼することで生じた燃焼熱とにより加熱され、徐々に温度を上げて行く。
キルン本体11内では、原料鉱石と燃焼ガスとの間で、原料鉱石や燃焼用材料に含まれる水分の蒸発、燃焼用材料に含まれる揮発分の揮発、凝集と、バーナー燃料及び燃焼用材料に含まれる灰分の飛散、落下等により、物質の移動が生じる。ロータリーキルン1の途中から供給される燃焼用材料が熱分解することで生じる水分や揮発分は装入端14A側に燃焼ガスと共に移動し、チャー粒子は排出端14Bに原料鉱石と共に移動する。
キルン本体11内の原料鉱石が排出端14Bに到達するまでに、原料鉱石は、その原料鉱石中に含まれる水分がほぼ完全に除去されて焼成すると共に部分還元されて、焼鉱となる。焼鉱は、排出端14Bから排出される。
焼鉱は、例えば、温度800~900℃、粒子径が10mm~100mm程度の大きさからなる。
排出端14Bの排出口には、粒子径10mm~100mm程度の焼鉱と、ロータリーキルン1内に発生した焼結塊(粒子径100mm~500mm程度)とを分離するためのロストル(篩分装置)17が設けられている。ロストル17は、例えば、目開き100mm程度の鉄製の格子で構成されている。排出端14Bから排出された焼鉱は、ロストル17を通過した後、焼鉱排出用シュート18を通って、次工程に搬送される。
<炉内反応の計算装置>
次に、本実施形態に係る炉内反応の計算装置について説明する。図2は、本実施形態に係る炉内反応の計算装置の機能を示すブロック図である。なお、図2では、炉内反応の計算装置が、ロータリーキルン1内を複数の領域に分割した時の、燃焼用材料供給管12から燃焼用材料が供給される領域Aにおける単位操作モデルとして説明する。また、図2では、領域Aから見て燃焼ガスが吹き込まれる側の隣接領域を領域A+1とし、原料鉱石が装入される側の隣接領域を領域A-1とする。
なお、以下の説明において、ガス領域は、ロータリーキルン1内のガス及びダストを含む気相が流れる領域を意味し、ベッド層は、原料鉱石が移動する領域を意味する。
領域A内の気相(ガス相)は、第1気相G1、第2気相G2又は第3気相G3として記載し、領域A内のベッド層は、第1ベッド層S1、第2ベッド層S2又は第3ベッド層S3として記載する。以下の説明において、領域A内の各気相及び各ベッド層は、それぞれ、以下の通り定義する。
「第1気相G1」とは、一方の隣接領域(領域(A+1))から領域Aに流入する燃焼ガスである。燃焼ガスは、揮発分、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素等の平衡反応に寄与するガスを含み、反応に寄与しない不活性な物質(例えば、窒素等)等を含んでもよい。
「第2気相G2」とは、燃焼用材料から分配された添加気相と第1気相とが合算された気相である。
「第3気相G3」とは、後述する第1の混合計算部204-1で生じる気相である。
「第1ベッド層S1」とは、他方の隣接領域(領域(A-1))から領域Aに流入する原料鉱石である。原料鉱石は、針鉄鉱FeOOHや、Fe、Ni、Mg等を含むケイ酸塩の鉱石中化合物、固定炭素を含み、後述する平衡反応計算部203において反応に寄与しない不活性な物質等を含んでもよい。
「第2ベッド層S2」とは、燃焼用材料から分配された添加ベッド層と第1ベッド層とが合算されたベッド層である。
「第3ベッド層S3」とは、後述する第2の混合計算部204-2で生じるベッド層である。
また、領域A内で算出される、反応分、未反応分及び生成分は、第1反応分R1、第1未反応分r1、第1生成分P1、第2反応分R2、第2未反応分r2又は第2生成分P2と記載する。これらは、図2に示す炉内反応の計算装置を構成する各部の何れかで算出される。
図2に示すように、炉内反応の計算装置20は、燃焼用材料の分配部(分配部)201、第1反応量の計算部202-1、第2反応量の計算部202-2、平衡反応計算部203、第1の混合計算部204-1、及び第2の混合計算部204-2を含む。
炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1(図1参照)内において、原料鉱石に含まれる、又は含まれる物質に起因して生成される溶体も考慮して、ロータリーキルン1(図1参照)内におけるベッド層と気相との平衡反応計算を行うことで、炉内反応を高精度に解析し、ロータリーキルン1(図1参照)内の反応の計算精度を高めたものである。
原料鉱石は、針鉄鉱FeOOHや、Mg、Fe、Ni等を含むケイ酸塩等を含み、ロータリーキルン1(図1参照)内での反応によって、マグネタイトや、Mg、Fe、Ni等を含むオリビン等が生成され、炉内にて固溶体として存在する。例えば、原料鉱石に含まれる、Mg、Fe、Niは、炉内で、オリビン((Mg、Fe、Ni)2SiO4)として存在する。ベッド層と気相との平衡反応計算をギブズエネルギー最小化法に基づいて行い、ベッド層と気相との反応を解析する際、原料鉱石に含まれる固溶体に起因して生じる部分的還元挙動も考慮して炉内反応を計算するためには、固溶体のギブズエネルギーを正確に求める必要がある。
なお、固溶体とは、溶体のうち、固相の溶体であり、結晶の構造はそのままに構成原子の一部が別の原子に置き換わったものをいう。溶体とは、純物質が原子又は分子の尺度で混合して均一になった物質をいう。例えば、固溶体がオリビンである場合、オリビン内では、Mg、Fe及びNiが、それぞれ、骨格であるSiO4四面体の間でSiO4に対するモル比の合計が2となる範囲内で任意に存在している。溶体としては、例えば、オリビン、固体酸化物、溶融スラグ、合金、溶融合金等が挙げられる。
また、溶体を形成する各純物質を、端成分という。例えば、溶体がオリビンである場合、オリビンの端成分は、Mg2SiO4、Fe2SiO4、Ni2SiO4である。
溶体を形成する場合、端成分に相当する純物質が混合せず単に共存している場合(即ち、溶体を形成しない場合)に比べて、ギブズエネルギーが変化する。即ち、各物質のモル分率とギブズエネルギーから加重平均によりギブズエネルギーを算出しても、溶体のギブズエネルギーを正しく計算できない。本実施形態に係る炉内反応の計算装置20は、溶体を構成するそれぞれの端成分のギブズエネルギーから溶体モデルに基づいて溶体のギブズエネルギーを精度良く計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、炉内反応を高精度に解析できるので、ロータリーキルン1(図1参照)内の反応を高精度に計算できる。
分配部201は、燃焼用材料の種類や成分等を予め設置しておくことにより、燃焼用材料を、燃焼用材料に含まれる気相とベッド層とに質量流量で分配する機能を有する。
分配された気相及びベッド層は、添加気相AG11及び添加ベッド層AS11として領域A内に供給される。
第1反応量の計算部202-1は、一方の隣接領域((領域(A+1))から流入する燃焼ガスである第1気相G1と、分配部201で分配された燃焼用材料の添加気相AG11とを含む第2気相G2のうちの、他方の隣接領域((領域(A-1))から流入する原料鉱石である第1ベッド層S1と、分配部201で分配された添加ベッド層AS11とを含む第2ベッド層S2との平衡状態に寄与する第1反応量を計算して、第2気相G2の平衡反応に寄与する反応分を第1反応分R1として求める。
第1反応量の計算部202-1は、第2気相G2と第2ベッド層S2との平衡状態に達する量が、例えばアレニウス型の反応速度式に従う反応速度と、領域A内の第2気相G2の滞留時間から算出できるモデルを採用する。そして、第1反応量の計算部202-1は、第1反応量に相当する第1反応分R1と、残りの未反応の質量流量に相当する第1未反応分r1とに分割する。
なお、反応分とは、領域A内の第2気相G2又は第2ベッド層S2が通過する滞留時間において、第2気相G2又は第2ベッド層S2との接触により、反応に寄与する流量をいう。
ロータリーキルン1では、燃焼ガスと原料鉱石の流れが対向流となっている。燃焼ガスの流速は原料鉱石の流れよりも大きく、燃焼ガスと原料鉱石とは平衡状態に達していない。そこで、本実施形態では、第1反応量の計算部202-1は、ロータリーキルン1内のある領域(領域A)の第2気相G2の一部のみが原料鉱石と平衡状態に達するとみなして、それに対応する第1反応量に応じて、第2気相G2を分割する。
第2反応量の計算部202-2は、第2ベッド層S2のうちの、第2気相G2との平衡状態に寄与する第2反応量を計算して、第2ベッド層S2の平衡反応に寄与する反応分を第2反応分R2として求める。
第2反応量の計算部202-2は、アレニウス型の反応速度式で鉱石の滞留時間により第2ベッド層S2と第2気相G2とが平衡状態に達していると見積もった分量だけについて、第2気相G2との反応に寄与する第2ベッド層S2の第2反応量を計算する。そして、第2反応量の計算部202-2は、第2反応量に相当する第2反応分R2と、残りの未反応の質量流量に相当する第2未反応分r2とに分割する。
平衡反応計算部203は、第1反応分R1と第2反応分R2との反応により生成される可能性のある物質(生成物質)の種類、相、流量等を予め設定しておくことにより、生成物質の自由エネルギーが最小となるように、平衡反応計算を行って、生成物質の種類、相、流量等を決定する機能を有する。平衡反応計算部203は、第1反応分R1と第2反応分R2とが平衡状態に達したときの、それぞれの熱量の変化、流量、生成物質の種類、組成及び相等を計算して出力する。
平衡反応計算部203は、第2ベッド層S2に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーと端成分の存在比率から、端成分が純物質として独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて端成分が純物質として独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより、溶体のギブズエネルギーを算出する。
即ち、平衡反応計算部203は、まず純物質及び溶体中の端成分が、全て、純物質として独立して存在する場合のギブズエネルギーを算出する。そして、平衡反応計算部203は、溶体の場合は、さらに、端成分が純物質として独立して存在する場合の(混合前の)ギブズエネルギーと、溶体として交じり合って存在する場合のギブズエネルギーとの差を溶体モデルにより算出することにより、溶体のギブズエネルギーを算出する。
溶体モデルとしては、例えば、理想溶体モデル、正則溶体モデル、副格子モデル、会合溶体モデル、修正擬化学モデル等が挙げられる。平衡反応計算部203は、溶体モデルを用いることで、溶体のギブズエネルギーを計算できる。
平衡反応計算部203は、第2ベッド層S2内に存在し得る物質を計算物質とし、それぞれの計算物質のギブズエネルギーを温度の関数として定義する。第2ベッド層S2内に存在し得る物質として、ニッケル酸化鉱等の原料鉱石に含まれる物質が挙げられる。
ニッケル酸化鉱等の原料鉱石に含まれる物質としては、例えば、(Mg、Fe,Ni)3Si25(OH)4、FeOOH等が挙げられる。
平衡反応計算部203は、溶体のギブズエネルギーを算出する際、純物質から構成される溶体と、溶体のギブズエネルギーを求めるために使用する溶体モデルと、溶体を構成する端成分とを決定する。例えば、溶体がオリビン((Mg、Fe、Ni)2SiO4)である場合、溶体モデルとしては、例えば、Compound Energy Formalism(CEF)を使用し、端成分として、Mg2SiO4、Fe2SiO4、Ni2SiO4を定義する。これにより、端成分の存在比率に基づいて溶体のギブズエネルギーが算出される。
そして、平衡反応計算部203は、純物質及び溶体について、領域A内でギブズエネルギーが最小となるときの第2ベッド層S2の物量、即ち、領域Aでの反応後の第2ベッド層S2の物量を算出する。
平衡反応計算部203は、第1反応分R1と第2反応分R2とが反応することで生じる生成ガスと第1反応分R1の未使用分とを、第1生成分P1として計算する。また、平衡反応計算部203は、第1反応分R1と第2反応分R2とが反応することで生じる生成物質と、第2反応分R2の未使用分とを、第2生成分P2として計算する。
第1の混合計算部204-1は、複数の流れを混合する機能を有しており、第1反応量の計算部202-1で分割された第1未反応分r1と、平衡反応計算部203で生じた第1生成分P1とをそれぞれ混合した第3気相G3の流量や組成データ等を計算する。
第2の混合計算部204-2は、複数の流れを混合する機能を有しており、第2反応量の計算部202-2で分割された第2未反応分r2と、平衡反応計算部203で生じた第2生成分P2とを、それぞれ混合した第3ベッド層S3の流量や組成データ等を計算する。
なお、本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、燃焼用材料をロータリーキルン1内に投下しない場合には、分配部201を備えなくてもよい。この場合、第1反応分R1は、第1気相G1のうちの第1ベッド層S1との平衡反応に寄与する反応分とし、第2反応分R2は、第1ベッド層S1のうちの第1気相G1との平衡状態に寄与する反応分とする。
本実施形態では、炉内反応の計算装置20は、炉内の熱伝導を、必要に応じて、放射、伝導及び対流等のモデルで計算するようにしてもよい。
<炉内反応の計算方法>
次に、本実施形態に係る炉内反応の計算装置を用いて、本実施形態に係る炉内反応の計算方法について説明する。本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、図1に示すような構成を有するロータリーキルン1において、ロータリーキルン1の装入端14A側から供給した原料鉱石を排出端14B側に向かって移動させながら、移動の途中から燃焼用材料を投入し、原料鉱石を排出端14B側に設けられるバーナー16から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う。
図3は、本実施形態に係る炉内反応の計算方法を説明するフローチャートである。図3に示すように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内に燃焼用材料を投下しているか否かを確認する(確認工程:ステップS11)。
ロータリーキルン1内に燃焼用材料が投下されている場合(ステップS11:Yes)、炉内反応の計算装置20は、気相を想定した炭化水素化合物等の物質と、ベッド層を想定した物質を入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、分配部201を用いて、ロータリーキルン1内に添加される燃焼用材料を気相である添加気相AG11とベッド層である添加ベッド層AS11とに質量流量で分配する(分配工程:ステップS12)。
次に、炉内反応の計算装置20は、一方の隣接領域(領域(A+1))から領域Aに流入する燃焼ガスである第1気相G1と、他方の隣接領域(領域(A-1))から領域Aに流入する第1ベッド層S1と、分配部201で分配された燃焼用材料の添加気相AG1及び添加ベッド層AS11とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第1反応量の計算部202-1を用いて、第1気相G1と、添加気相とを含む第2気相G2のうちの、第1ベッド層S1及び添加ベッド層を含む第2ベッド層S2との平衡状態に寄与する第2気相G2の第1反応量を計算する(第1反応量の計算工程:ステップS13)。
即ち、炉内反応の計算装置20は、第2気相G2と第2ベッド層S2とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、第2気相G2が第2ベッド層S2及び第2気相G2同士で反応して平衡状態に達する時の、反応に寄与する第1反応量を計算する。
そして、炉内反応の計算装置20は、第1反応量の計算結果に基づいて、第1反応量に相当する第1反応分R1と、残りの未反応量に相当する第1未反応分r1とに分割する。
次に、炉内反応の計算装置20は、第1気相G1と、添加気相と、第1ベッド層S1と、添加ベッド層とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、第2反応量の計算部202-2を用いて、第2ベッド層S2のうち、第2気相G2及び第2ベッド層S2同士での反応に寄与する、第2ベッド層S2の第2反応量を計算する(第2反応量の計算工程:ステップS14)。
即ち、炉内反応の計算装置20は、第2気相G2と第2ベッド層S2とが反応して平衡状態に達すると仮定したときに、第2ベッド層S2が第2気相G2及び第2ベッド層S2同士で反応して平衡状態に達する時の反応に寄与する第2反応量を計算する。
そして、炉内反応の計算装置20は、第2反応量の計算結果に基づいて、第2反応量に相当する第2反応分R2と、残りの未反応量に相当する第2未反応分r2とに分割する。
次に、炉内反応の計算装置20は、第1反応量の計算工程(ステップS13)で得られた第1反応分R1と、第2反応量の計算工程(ステップS14)で得られた第2反応分R2とを入力物質として与える。炉内反応の計算装置20は、平衡反応計算部203を用いて、第1反応分R1と第2反応分R2との平衡反応を計算し、第1反応分R1と第2反応分R2とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する(平衡反応計算工程:ステップS15)。
このとき、炉内反応の計算装置20は、平衡反応計算部203により、第2ベッド層S2に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーと端成分の存在比率とに基づいて端成分が純物質として独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより溶体のギブズエネルギーを算出する。
炉内反応の計算装置20は、第1反応分R1と第2反応分R2とが反応することで生じる気相と、第1反応分R1の未使用分とを、第1生成分P1として計算し、第1反応分R1と第2反応分R2とが反応することで生じるベッド層と、第2反応分R2の未使用分とを、第2生成分P2として計算する。
次に、炉内反応の計算装置20は、第1反応量の計算工程(ステップS13)で得られた第1未反応分r1と、平衡反応計算工程(ステップS15)で得られた第1生成分P1とを入力物質として与え、第1の混合計算部204-1を用いて、第1未反応分r1と第1生成分P1とを含む第3気相G3の流量および組成データを計算する(第1の混合計算工程:ステップS16)。
第1反応量の計算工程(ステップS13)で計算した第1反応分R1は、第2気相G2と第2ベッド層S2とが平衡状態に達したと仮定した時の反応量であるため、通常、全て使用される。しかし、気相である第1反応分R1には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。不活性な物質は、例えば、窒素等である。第1混合計算工程(ステップS16)では、反応の量論比以上に存在し、結果として平衡反応後に残る物質や不活性な物質は、平衡反応計算部203で使用されずに残った未使用分として計算する。
炉内反応の計算装置20は、第3気相G3を領域Aよりも装入端14A側の領域(領域A-1)に移動する。
次に、炉内反応の計算装置20は、第2反応量の計算工程(ステップS14)で得られた第2未反応分r2と、平衡反応計算工程(ステップS15)で得られた第2生成分P2とを入力物質として与え、第2の混合計算部204-2を用いて、第2未反応分r2と第2生成分P2とを含む第3気相G3の流量および組成データを計算する。
ベッド層である第2反応分R2には、反応の量論比以上に存在する物質や反応に寄与しない不活性な物質が存在している場合がある。第2混合計算工程(ステップS17)では、第2反応分R2のうち、反応の量論比以上に存在し結果として反応で使用されなかった部分、および不活性な部分は、平衡反応計算部203で使用されずに残った未使用分として計算する。
炉内反応の計算装置20は、第3ベッド層S3を領域Aよりも排出端14B側の領域(領域A+1)に移動する。
なお、本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、第1反応量の計算工程(ステップS13)と第2反応量の計算工程(ステップS14)とを並行して行ってもよいし、第1反応量の計算工程(ステップS13)を第2反応量の計算工程(ステップS14)の後に行ってもよい。
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、第1混合計算工程(ステップS16)と第2混合計算工程(ステップS17)とを並行して行ってもよいし、第1混合計算工程(ステップS16)を第2混合計算工程(ステップS17)の後に行ってもよい。
本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、炉内の熱伝導を、必要に応じて、放射、伝導及び対流等のモデルで計算してもよい。
<炉内反応の計算装置のハードウェア構成>
次に、炉内反応の計算装置のハードウェア構成の一例について説明する。図4は、炉内反応の計算装置のハードウェア構成図である。図4に示すように、炉内反応の計算装置20は、例えば、情報処理装置(コンピュータ)で構成され、物理的には、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit:プロセッサ)21と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)22及びROM(Read Only Memory)23と、補助記憶装置24と、入出力インタフェース25と、出力装置である表示装置26等を含むコンピュータシステムとして構成することができる。これらは、バス27で相互に接続されている。なお、補助記憶装置24及び表示装置26は、外部に設けられていてもよい。
CPU21は、炉内反応の計算装置20の全体の動作を制御し、各種の情報処理を行う。CPU21は、ROM23または補助記憶装置24に格納された原料鉱石の反応計算プログラムを実行して、測定収録画面と解析画面の表示動作を制御する。
RAM22は、CPU21のワークエリアとして用いられ、主要な制御パラメータや情報を記憶する不揮発RAMを含んでもよい。
ROM23は、基本入出力プログラム等を記憶する。原料鉱石の反応計算プログラムはROM23に保存されてもよい。
補助記憶装置24は、SSD(Solid State Drive)、及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置であり、例えば、原料鉱石の反応計算プログラムや炉内反応の計算装置20の動作に必要な各種のデータ、ファイル等を格納する。
入出力インタフェース25は、タッチパネル、キーボード、表示画面、操作ボタン等のユーザインタフェースと、外部のデータ収録サーバ等からの情報を取り込み、他の電子機器に解析情報を出力する通信インタフェースとの双方を含む。
表示装置26は、モニタディスプレイ等である。表示装置26では、測定収録画面と解析画面が表示され、入出力インタフェース25を介した入出力操作に応じて画面が更新される。
図4に示す炉内反応の計算装置20の各機能は、RAM22やROM23等の主記憶装置又は補助記憶装置24にシミュレーションソフトウェア(炉内反応の計算プログラムを含む)等を読み込ませ、RAM22、ROM23又は補助記憶装置24に格納された原料鉱石の反応計算プログラム等をCPU21により実行することにより、RAM22等におけるデータの読み出し及び書き込みを行うと共に、入出力インタフェース25及び表示装置26を動作させることで実現される。
炉内反応の計算プログラムは、以下の構成のプログラムを用いることができる。
即ち、炉内反応の計算プログラムは、反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算を少なくともコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記燃焼ガスを含む第1気相の、前記原料鉱石を含む第1ベッド層との平衡状態に寄与する第1反応量を計算して、前記第1気相の平衡反応に寄与する反応分を第1反応分として求める第1反応量の計算工程と、
前記原料鉱石を含む第1ベッド層の、平衡状態に寄与する第2反応量を計算して、前記第1ベッド層の平衡反応に寄与する反応分を第2反応分として求める第2反応量の計算工程と、
前記第1反応分と前記第2反応分とが平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する平衡反応計算工程と、
を含み、
前記平衡反応計算工程は、前記第1ベッド層に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーと前記端成分の存在比率とに基づいて前記端成分が純物質として独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて前記端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより前記溶体のギブズエネルギーを算出する炉内反応の計算を少なくともコンピュータに実行させるプログラムを用いることができる。
炉内反応の計算プログラムは、例えば、RAM22やROM23の主記憶装置又は補助記憶装置24等のコンピュータが備える記憶装置内に格納される。なお、原料鉱石の反応計算プログラムは、その一部又は全部が、通信回線等の伝送媒体を介して伝送され、コンピュータが備える通信モジュール等により受信されて記録(インストールを含む)される構成としてもよい。また、原料鉱石の反応計算プログラムは、その一部又は全部が、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュメモリ等の携帯可能な記憶媒体に格納された状態から、コンピュータ内に記録(インストールを含む)される構成としてもよい。
以上の通り、本実施形態に係る炉内反応の計算装置20は、平衡反応計算部203を備え、平衡反応計算部203において、第1反応量の計算部202-1及び第2反応量の計算部202-2で得られた第1反応分R1及び第2反応分R2を用いて平衡反応を計算する。その際、平衡反応計算部203は、第2ベッド層S2に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーと端成分の存在比率に基づいて端成分が純物質として独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより溶体のギブズエネルギーを算出する。
炉内反応の計算装置20は、平衡反応計算部203において、ギブズエネルギー最小化法に基づいて平衡反応の計算のシミュレーションを行う際、計算物質に溶体物質を含め、第2ベッド層S2に含まれる溶体のギブズエネルギーを溶体モデルに基づいて計算する。これにより、炉内反応の計算装置20は、溶体のギブズエネルギーを精度良く計算できるので、ギブズエネルギー最小化法に基づいて平衡反応の計算を行う際に、炉内反応の計算精度を向上させることができる。よって、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層S2と第2気相G2との平衡反応をより正確に算出できるので、ロータリーキルン1内の物質の挙動をより高精度に解析できる。したがって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内に存在する溶体を考慮して、ロータリーキルン1内の反応を高精度に計算できる。
溶体を形成する場合、端成分に相当する純物質が混合せず単に共存している場合(即ち、溶体を形成しない場合)に比べて、ギブズエネルギーが変化する。即ち、各物質が単に共存しているものとして、各物質のモル分率とギブズエネルギーから加重平均によりギブズエネルギーを算出した場合、溶体が形成された時のギブズエネルギーからずれてしまう。そのため、ギブズエネルギー最小化法により炉内反応を計算するシミュレーション方法では、溶体のギブズエネルギーを正しく計算できない。炉内反応の計算装置20は、計算に考慮する物質として溶体を含め、溶体のギブズエネルギーを、溶体に含まれる個々の端成分のギブズエネルギーから溶体モデルに基づいて計算する。そのため、炉内反応の計算装置20は、溶体のギブズエネルギーを高精度に計算できるので、ギブズエネルギー最小化法に基づく炉内反応の計算精度を向上させることができる。
炉内反応の計算装置20は、平衡反応計算部203において、第2ベッド層S2に含まれる純物質のギブズエネルギーを算出できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内に存在する純物質も含めてロータリーキルン1内の反応を高精度に計算できる。
炉内反応の計算装置20では、溶体がオリビンを含むことができる。オリビンは原料鉱石に含まれるケイ酸塩が加熱されて分解することによって生成する成分であるため、本実施形態に係る炉内反応の計算方法は、原料鉱石中に形成された溶体を考慮して炉内反応の計算を高精度に行うことができる。
炉内反応の計算装置20は、第1反応量の計算部202-1及び第2反応量の計算部202-2を備えることができる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1反応量の計算部202-1において、第1気相G1を含む第2気相G2から平衡反応に寄与する第1反応分R1を求め、第2反応量の計算部202-2において、第1ベッド層S1を含む第2ベッド層S2から平衡反応に寄与する第2反応分R2を求めることができる。そのため、炉内反応の計算装置20は、第2気相G2及び第2ベッド層S2のうち、平衡反応計算部203において使用される反応分を求めることができるため、必要な反応分を用いて平衡反応計算を確実に行うことができる。
炉内反応の計算装置20は、第1の混合計算部204-1及び第2の混合計算部204-2を備えることができる。第1の混合計算部204-1では、第1未反応分r1と、平衡反応計算部203で生成する第1生成分P1とを混合した第3気相G3の流量を少なくとも計算できる。第2の混合計算部204-2では、第2未反応分r2と、平衡反応計算部203で生成する第2生成分P2とを混合した第3ベッド層S3の流量を少なくとも計算できる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第1気相G1の装入端14Aへの移動量と、熱分解後残渣であるベッド層S1の排出端14Bへの移動量をより正確に計算できる。
炉内反応の計算装置20は、分配部201を備え、分配部201において、原料鉱石の移動の途中に投入された燃焼用材料に含まれる気相とベッド層とを添加気相AG11と添加ベッド層AS11とに質量流量で分配できる。炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の途中から投入される燃焼用材料を第1気相G1及び第1ベッド層S1に分配してそれぞれ別々の燃料として扱い、添加気相AG11は第2気相を構成する成分とし、添加ベッド層AS11は第2ベッド層を構成する成分にできる。これにより、炉内反応の計算装置20は、第2気相G2から第1反応分R1を求めると共に第2ベッド層S2から第2反応分R2を求めることで、平衡反応計算部203において、第2気相G2と第2ベッド層S2とから平衡反応に必要な反応分に基づいて平衡反応を計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1の途中から投入される燃焼用材料を考慮して、ロータリーキルン1内の物質の挙動を解析できるため、燃焼用材料を用いる場合でも、炉内反応の計算を高精度に行うことができる。
このように、炉内反応の計算装置20は、第2ベッド層S2に含まれる溶体を考慮して、炉内で生じる平行反応計算をより高精度に計算できる。よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の全領域に適用することで、ロータリーキルン1内の全体の反応プロセスをより高精度に計算することを可能にできる。
炉内反応の計算装置20をロータリーキルン1の全体に適用する場合について説明する。炉内反応の計算装置20は、例えば、図5に示すように、ロータリーキルン1内を複数の領域に分割した時の1つの領域Aにおける反応プロセスを単位操作モデルと仮定した時、単位操作モデルの組合せによってロータリーキルン1内の反応プロセスをモデル化できる。そして、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の複数の領域に、原料鉱石の流れ又は燃焼ガスの流れ(仮定した流れを含む。)に沿って繰り返し実施する(図5中の矢印参照)。そして、炉内反応の計算装置20は、所定の領域における計算値とその領域における前回の計算値との差が所定の範囲内に収まるまで繰り返し実施する。
炉内反応の計算装置20をロータリーキルン1の全体に適用する場合のフローチャートを図6に示す。図6に示すように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1で起こる反応プロセスを複数の単位操作モデルの組合せによってモデル化する(モデル化工程:ステップS21)。
単位操作モデルには、上記の図2に示す炉内反応の計算装置20が適用される。それぞれの単位操作モデル毎に、単位操作モデルを構成する、燃焼用材料の分配部201、第1反応量の計算部202-1、第2反応量の計算部202-2、平衡反応計算部203、第1の混合計算部204-1、第2の混合計算部204-2等が予め用意される。
各単位操作モデルは、原料鉱石や燃焼ガスの流れ(仮定した流れを含む。)に沿って相互に接続される。
次に、炉内反応の計算装置20は、ステップS21においてモデル化された単位操作モデルの計算を行う(計算工程:ステップS22)。単位操作モデルには、流れの情報が入力される。
流れの情報は、原料鉱石、燃焼ガス、及び燃焼用材料の成分、流量、温度、回転数等のデータである。流れの情報が入力されると、単位操作モデルは所定の計算を行い、その計算値(原料鉱石、燃焼ガス、及び燃焼用材料の成分、流量、温度等)が出力される。これらの計算結果から、図2に示す炉内反応の計算装置20の各構成に用いる値が計算される。炉内反応の計算装置20の各部に用いる値としては、第1気相G1の流量、燃焼用材料の分配部201で分配される揮発分及びベッド層の量、第2気相G2の流量、第3気相G3の流量、第1反応分R1の流量、第1未反応分r1の流量、第1ベッド層S1の流量、第2ベッド層S2の流量、第2反応分R2の流量、第2未反応分r2の流量、及び第3ベッド層S3の流量等である。
本実施形態では、単位操作モデルの計算は、最も装入端14A側に位置する単位操作モデルから行う。
次に、炉内反応の計算装置20は、最終の単位操作モデルまで計算したか否か判断する(ステップS23)。
最終の単位操作モデルまで計算した場合(ステップ23:Yes)は、炉内反応の計算装置20は、単位操作モデルの前回の計算値があるか否か判断する(ステップS24)。
前回の計算値がある場合(ステップS24:Yes)には、炉内反応の計算装置20は、計算工程(ステップS22)において計算された計算値と、前回の計算値とを比較する(ステップS25)。
次に、炉内反応の計算装置20は、計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たすか否か判断する(比較工程:ステップS26)。
収束条件としては、例えば、計算値と前回の計算値との差が数℃(例えば、1℃)以下の範囲内である。
計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たす場合(ステップS26:Yes)には、炉内反応の計算装置20は、計算を終了する。これにより、ロータリーキルン1のキルン本体11内の全体で起こる反応プロセスが解析される。
一方、ステップS23において、最終の単位操作モデルまで計算していない場合(ステップS23:No)は、炉内反応の計算装置20は、隣接する他の単位操作モデルである領域A+1又は領域A―1に位置する単位操作モデルに移行する(ステップS27)。そして、炉内反応の計算装置20は、領域A+1又は領域A―1に位置する単位操作モデルの計算を行う(ステップS22)。
ステップS24において、前回の計算値がない場合(ステップS24:No)、又はステップS26において、計算値と前回の計算値との差が収束条件を満たさない場合(ステップS26:No)には、炉内反応の計算装置20は、先頭の単位操作モデルに移行する(ステップS28)。
よって、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1で起こる反応プロセスを複数の単位操作モデルの組合せによってモデル化し、単位操作モデルの接続順序に沿って、単位操作モデルの各々に設定された値に基づいて計算を行う。本実施形態では、それぞれの単位操作モデルの計算をロータリーキルン1の装入端14A側から排出端14B側に向かって順じ行った後、排出端14B側から装入端14A側に向かって行う(図5参照)。そして、一連の操作を、所定の領域Aにおける計算値が所定の収束条件が満たされるまで繰り返す。その結果、ロータリーキルン1内のそれぞれの領域における、燃焼ガスと原料鉱石の流量等の計算結果が導き出される。これにより、ロータリーキルン1のキルン本体11内の全体での燃焼ガス及び原料鉱石を構成する各物質の挙動をより正確に解析することが可能となる。
このように、炉内反応の計算装置20は、ロータリーキルン1内の全体の反応プロセスを原料鉱石に中に生じる溶体を考慮しながら高精度に解析することができるため、ロータリーキルン1の運転条件(例えば、ロータリーキルン1の大きさや回転数、原料鉱石の種類、供給量)等を変えながら、ロータリーキルン1内の各物質の挙動をより正確に解析できる。よって、炉内反応の計算装置20は、原料鉱石の種類及び供給量の変更、ロータリーキルン1の設備改善の事前検討、操業条件等による影響調査等に有効に活用することが可能である。
なお、本実施形態では、ロータリーキルン1内に供給される原料は、原料鉱石以外の原料でもよい。
本実施形態では、図1に示すロータリーキルン1の途中から投下される燃焼用材料は、揮発分及びベッド層の両方を必ずしも含んでいなくてもよいし、揮発分及びベッド層以外に、灰分等の他の物質を含んでいてもよい。
本実施形態では、図1に示すロータリーキルン1以外に、原料鉱石を装入端14A側から排出端14B側に向かって移動させながら加熱する反応炉であればよい。
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 ロータリーキルン
11 キルン本体
16 バーナー
20 炉内反応の計算装置
201 分配部
202-1 第1反応量の計算部
202-2 第2反応量の計算部
203 平衡反応計算部
204-1 第1の混合計算部
204-2 第2の混合計算部
G1 第1気相
G2 第2気相
G3 第3気相
S1 第1ベッド層
S2 第2ベッド層
S3 第3ベッド層

Claims (8)

  1. 反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算装置であって、
    前記燃焼ガスを含む第1気相のうちの前記原料鉱石を含む第1ベッド層との平衡反応に寄与する第1反応分と、前記第1ベッド層のうちの前記第1気相との平衡状態に寄与する第2反応分とが、平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する平衡反応計算部を備え、
    前記平衡反応計算部は、前記第1ベッド層に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーと前記端成分の存在比率とに基づいて前記端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて前記端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより前記溶体のギブズエネルギーを算出する炉内反応の計算装置。
  2. 前記平衡反応計算部は、前記第1ベッド層に含まれる純物質のギブズエネルギーを算出する請求項1に記載の炉内反応の計算装置。
  3. 前記溶体が、オリビンを含む請求項1又は2記載の炉内反応の計算装置。
  4. 前記第1気相の、前記第1ベッド層との平衡状態に寄与する第1反応量を計算して、前記第1気相の平衡反応に寄与する反応分を前記第1反応分として求める第1反応量の計算部と、
    前記第1ベッド層の、前記第1気相との平衡状態に寄与する第2反応量を計算して、前記第1ベッド層の平衡反応に寄与する反応分を前記第2反応分として求める第2反応量の計算部と、
    を備える請求項1~3の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
  5. 前記第1反応量の計算工程で生じる前記第1反応分以外の未反応分を第1未反応分とし、
    前記第2反応量の計算工程で生じる前記第2反応分以外の未反応分を第2未反応分とし、
    前記第1未反応分と、前記平衡反応計算部で前記第1反応分と前記第2反応分とが反応することで生じる第1生成分とを混合した気相の流量を少なくとも計算する第1の混合計算部と、
    前記第2未反応分と、前記平衡反応計算部で前記第1反応分と前記第2反応分とが反応することで生じる第2生成分とを混合したベッド層の流量を少なくとも計算する第2の混合計算部と、
    を備える請求項4に記載の炉内反応の計算装置。
  6. 前記原料鉱石の移動の途中に投入された、添加気相及び添加ベッド層の少なくとも一方を含む燃焼用材料を前記添加気相と前記添加ベッド層とに質量流量で分配する分配部を備え、
    前記第1反応分は、前記第1気相と前記添加気相とを含む第2気相のうちの前記第1ベッド層と前記添加ベッド層とを含む第2ベッド層との平衡反応に寄与する反応分であり、
    前記第2反応分は、前記第2ベッド層のうちの前記第2気相との平衡反応に寄与する反応分である請求項1~5の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
  7. 前記反応炉内をその長軸方向に沿って複数の領域に分割すると仮定した時、
    前記複数の領域に、前記原料鉱石の流れ又は前記燃焼ガスの流れに沿って繰り返し行い、所定の領域における計算値とその領域における前回の計算値との差が所定の範囲内に収まるまで繰り返し行う請求項1~6の何れか一項に記載の炉内反応の計算装置。
  8. 反応炉の一端側から供給した原料鉱石を他端側に向かって移動させながら、前記原料鉱石を前記他端側から供給された燃焼ガスと接触させて、乾燥させると共に還元を行う炉内反応の計算方法であって、
    前記燃焼ガスを含む第1気相のうちの前記原料鉱石を含む第1ベッド層との平衡反応に寄与する第1反応分と、前記第1ベッド層のうちの前記第1気相との平衡状態に寄与する第2反応分とが、平衡状態に達した時のそれぞれの熱量の変化及び流量を少なくとも計算する平衡反応計算工程を含み、
    前記平衡反応計算工程は、前記第1ベッド層に含まれる溶体を構成する端成分のギブズエネルギーを計算し、前記端成分のギブズエネルギーと前記端成分の存在比率とに基づいて前記端成分が純物質として独立に存在する場合のギブズエネルギーを算出し、溶体モデルに基づいて前記端成分が独立に存在する場合のギブズエネルギーを補正することにより前記溶体のギブズエネルギーを算出する炉内反応の計算方法。
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