JP7358001B2 - 乳酸菌、インターロイキン-22産生誘導剤、皮膚バリア機能増強剤 - Google Patents

乳酸菌、インターロイキン-22産生誘導剤、皮膚バリア機能増強剤 Download PDF

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Description

NPMD NITE BP-02583 NPMD NITE BP-02585 NPMD NITE BP-02586 NPMD NITE BP-02587 NPMD NITE BP-02588
本発明は、乳酸菌、インターロイキン-22産生誘導剤、皮膚バリア機能増強剤に関する。更に詳しくは、B細胞の生存能を向上させ、更にB細胞を活性化させるとともに、インターロイキン-22(IL-22)の産生を誘導する乳酸菌、インターロイキン-22産生誘導剤、皮膚バリア機能増強剤に関する。
従来、乳酸菌は、様々な作用があることが知られており、整腸作用・腸内細菌叢改善、コレステロール低減、抗肥満効果、認知機能改善効果、美容効果などが報告されている。更に、乳酸菌は、免疫改善(アレルギー改善、がん予防、感染防御)効果の報告例も多い。
このような乳酸菌による健康効果を期待して、食品分野では、ドリンク(飲料)、ヨーグルト、サプリメント、菓子など様々な形態で乳酸菌が配合された商品が販売されており、乳酸菌は、生菌、殺菌菌体、乳酸菌生産物質などの様々な形状で効果を発揮するため、上記様々な形態の商品が存在している。
そして、現在、免疫に関与する乳酸菌として、具体的には、(1)プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を直接活性化し、抗ウイルス効果等を発揮する「プラズマ乳酸菌(ラクトコッカス・ラクティスJCM5805株)」、(2)NK活性増強効果があり、風邪罹患リスクを低減することが実証されている「1073R-1株(ラクトバチルス・ブルガリカスOLL1073R-1)」、(3)マクロファージを活性化し、腸管免疫に働くことが知られている「FK-23菌(エンテロコッカス・フェカリスFK-23)」、(4)Th1とTh2細胞に直接働きかけ、IgE抗体を制御する働きがあり、アレルギー症状への有効性が実証されている「L-92乳酸菌(ラクトバチルス・アシドフィルスL-92株)」(例えば、特許文献1参照)などが報告されている。
特開2004-026729号公報
しかしながら、特許文献1に記載の乳酸菌は、B細胞に直接作用することによってB細胞の生存能を向上させ、更にB細胞を活性化し、免疫賦活作用を発揮するというものではない。更に、インターロイキン-22(IL-22)は、角化細胞を増殖させたり、皮膚や腸管などのバリア機能を高めたりするなどの優れた効果を発揮するサイトカインであるが、特許文献1に記載の乳酸菌では、このIL-22の産生を誘導するという効果を発揮するものではない。
ここで、乳酸菌は、食品適性が高いため、食品素材として摂取し易いという利点がある。そのためこのような乳酸菌のうち、B細胞の生存能を向上させ且つB細胞を活性化させて免疫賦活作用を発揮し、同時に、角化細胞を増殖させたり、皮膚や腸管などのバリア機能を高めたりするなどの優れた効果を有するIL-22の産生を誘導することができるものを見出すことが期待されている。
そこで、本発明は、B細胞に直接作用することによってB細胞の生存能を向上させ、更にB細胞を活性化させるとともに、IL-22の産生を誘導する乳酸菌を提供するものである。
本発明によれば、以下に示す乳酸菌が提供される。
[1] B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有するとともに、インターロイキン-22の産生を誘導し、
受託番号NITE BP-02585の乳酸菌、受託番号NITE BP-02587の乳酸菌、受託番号NITE BP-02586の乳酸菌、または受託番号NITE BP-02588の乳酸菌である、乳酸菌。
[2] B細胞からのインターロイキン-22の産生を誘導する前記[1]に記載の乳酸菌。
] 前記[1]または[2]に記載の乳酸菌を含有するインターロイキン-22産生誘導剤。
] 前記[1]または[2]に記載の乳酸菌を含有する皮膚バリア機能増強剤。
本発明の乳酸菌は、B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有するとともに、インターロイキン-22(IL-22)の産生を誘導するものである。
B細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 全脾臓細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞の活性化能について菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 全脾臓細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞の活性化能について菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 全脾臓細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞の活性化能について菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 全脾臓細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞の活性化能について菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 全脾臓細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞の活性化能について菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 全脾臓細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞の活性化能について菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 全脾臓細胞におけるIL-22の産生誘導能を有する菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞の活性化能について菌株のスクリーニング結果を示すグラフである。 B細胞のIL-22産生誘導能を示すグラフである。 全脾臓細胞のIL-22産生誘導能を示すグラフである。 B細胞の活性化能について示すグラフである。 IL-22の産生誘導能についてフローサイトメトリーによる測定を行った際の結果を示す図である。 実施例5における経表皮水分損失量(TEWL)の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
発明者らは、食品適性が高い乳酸菌を用いて、生体防御に必要な抗体を産生するB細胞の生存能を向上させ、更にB細胞を活性化させることができれば、安全に免疫系を賦活化することができるので、非常に有用であることに着目した。更に、このような効果を有する乳酸菌によってインターロイキン-22(IL-22)の産生誘導能を高めることができれば、免疫系の賦活化に加えて、皮膚や腸管などのバリア機能を良好に高める効果も期待できる。
なお、乳酸菌は摂取する際の安全性が高く(即ち、食品適性が高く)、培養が簡単であるため製造し易いという利点もある。
[1]乳酸菌:
本発明の乳酸菌は、B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有するとともに、IL-22の産生を誘導するものである。なお、本明細書において、「乳酸菌」とは、消費したブドウ糖から50%以上の乳酸を生成する、細胞形態が桿菌または球菌であるグラム陽性細菌を意味し、これらの条件を満たせばバチルス・コアギュランスのような内生胞子をつくる有胞子性菌も有胞子性乳酸菌として乳酸菌に含めている。
まず、本発明の乳酸菌は、B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有するものである。
ここで、B細胞は、液性免疫に中心的な役割を果たし、病原体など異物(抗原)に対して抗体を産生できる唯一の細胞であるが、乳酸菌による作用に関してはほとんど知られていない。また、B細胞は、T細胞に抗原を提示する細胞で、活性化T細胞の維持に必要不可欠な細胞であることが知られている。そのため、B細胞の働きを強めることは、T細胞の働きをも補強することとなり、免疫賦活効果を免疫系の細胞全体で強めることにもなる。本発明において「B細胞の活性化能」とは、抗体産生の能力と抗原提示の能力の両方が活性化することをいう。
そして、抗体を産生して異物を攻撃できるB細胞の働きを人為的に強化するなど直接コントロールすることができれば、抗体による働きが影響するアレルギー疾患や感染症、自己免疫疾患などの免疫系疾患の予防や緩和、治療につながっていくことが期待できる。
本明細書において「B細胞の生存能を向上させる能力を有する」とは、B細胞が持つ「生存する能力」を高める性質を有することを意味する。より具体的には、実験用マウス脾臓細胞を用い、乳酸菌を添加していない試料中における、総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合を基準(基準値100)としたとき、乳酸菌を添加した試料中における、総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合の値(測定値)が、100超となることをいう。「総細胞の数」はフローサイトメトリーにより定量して求められ、「生存するB細胞(生細胞)の数」は、Propidium Iodide(PI)核染色液で染色されず、抗B220抗体に反応する細胞をB細胞とし、抗B220抗体に反応する細胞を定量することにより求められる。
なお、「B細胞の生存能を有する」とは、上記の通りであるが、具体的には、実施例2に示す方法によって得られる値(測定値)が、100超となることをいう。
本明細書において「B細胞の活性化能を有する」とは、B細胞を活性化させる能力(性質)を有することを意味する。より具体的には、実験用マウス脾臓細胞を用い、乳酸菌を添加していない試料中における、活性化しているB細胞の数と活性化していないB細胞の数との比を基準(基準値100)としたとき、乳酸菌を添加した試料中における、活性化しているB細胞の数と活性化していないB細胞の数との比の値(測定値)が、100超となることをいう。なお、「活性化しているB細胞の数」は、抗B220抗体と抗CD86抗体の両方に反応した細胞の数をフローサイトメトリーにより測定して求められる。「活性化していないB細胞の数」は、抗CD86抗体とは反応せずに、抗B220抗体と反応した細胞の数をフローサイトメトリーにより測定して求められる。
なお、「B細胞の活性化能を有する」とは、上記の通りであるが、具体的には、実施例1に示す方法によって得られる測定値(表1~表7中の「B細胞の活性化能」の欄に示す値)が、100超となることをいう。
本発明の乳酸菌は、上記のB細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有すること以外に、更に、IL-22の産生を誘導することができるものである。
「IL-22」は、角化細胞を増殖し、皮膚のターンオーバーを促進させることができることから、美肌素材、抗菌素材などの用途に好適に用いることが期待できる。更に、IL-22は、組織修復、細胞生存・増殖、粘膜バリア防御に関わるものであり、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や、脂肪肝疾患、ディフィシル菌(Clostridium difficile)などによる感染症の予防・治療などの用途が期待できる。
なお、本発明の乳酸菌は、ヒスタミン産生能が低い乳酸菌であることが好ましい。
本発明の乳酸菌は、B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞を活性化させる能力を有し、更に、IL-22の産生を誘導するものであれば具体的な菌株について特に制限されるものではない。
即ち、具体的には、本発明の乳酸菌は、テトラジェノコッカス属、エンテロコッカス属、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属、及びバチルス属からなる群より選択される少なくとも1つに属するものとすることができる。より具体的には、本発明の乳酸菌は、テトラジェノコッカス・ハロフィラス(Tetragenococcus halophilus)(これは例えば味噌や醤油に含まれる耐塩性の乳酸菌である)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、及び、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)からなる群より選択される少なくとも1つに属するものとすることができる。つまり、テトラジェノコッカス・ハロフィラス(Tetragenococcus halophilus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、及び、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)に属する乳酸菌のうちの1種または2種以上とすることができる。この乳酸菌であると、B細胞に直接作用してB細胞における生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を良好に発揮し、更に、IL-22の産生誘導能が優れる。
また、本発明の乳酸菌は、食品(特に発酵食品)由来のものや、ヒトの腸内細菌由来のものなどであることがよい。このような乳酸菌であることにより、摂取する際における安全性が優れる。上記食品(特に発酵食品)としては、特に制限はなく、例えば、味噌、醤油、甘酒、漬物、納豆などが挙げられる。
ここで、味噌由来の乳酸菌とは、味噌に含まれている乳酸菌だけでなく、味噌の醸造工程で単離される乳酸菌も含む。「味噌の醸造工程で単離される」乳酸菌とは、味噌醸造工程における「蔵」、「室(ムロ)」、「桶」などに定着している乳酸菌のことをいう。なお、本発明において、味噌由来の乳酸菌は、味噌の醸造工程で直接単離したものに限らず、味噌から単離し、その後に培養(継代培養)されたものも含む。また、醤油由来の乳酸菌または甘酒由来の乳酸菌とは、醤油の醸造工程または甘酒の製造工程で単離される乳酸菌ということもでき、味噌の場合と同様に定義することができる。
[1-1]好ましい乳酸菌:
本発明の乳酸菌は、受託番号NITE BP-02585の乳酸菌(菌株)(菌株名「ta-52」)、受託番号NITE BP-02587の乳酸菌(菌株)(菌株名「fc-24」)、受託番号NITE BP-02586の乳酸菌(菌株)(菌株名「lb-57」)、受託番号NITE BP-02588の乳酸菌(菌株)(菌株名「pc-19」)、または、受託番号NITE BP-02583の乳酸菌(菌株)(菌株名「sc-09」)であることが好ましい。
これらの乳酸菌は、摂取する際の安全性が高く、B細胞に直接作用してB細胞における生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を発揮し、免疫系を賦活化することができる(即ち、良好な免疫賦活作用を有する)。更に、これらの乳酸菌は、IL-22の産生誘導能が非常に優れている。なお、上記の乳酸菌は、T細胞にも作用することができ、更に、樹状細胞などにも作用することが考えられる。
ここで、受託番号NITE BP-02585の乳酸菌、受託番号NITE BP-02587の乳酸菌、受託番号NITE BP-02586の乳酸菌、受託番号NITE BP-02588の乳酸菌、及び受託番号NITE BP-02583の乳酸菌は、いずれも独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されている。
「好ましい乳酸菌」の中でも、受託番号NITE BP-02585の乳酸菌(菌株名「ta-52」)は、味噌由来の耐塩性乳酸菌であり、塩濃度が高い環境(例えば18w/v%超の塩分濃度)においても増殖可能であるため、食中毒菌や汚染菌などが生育し難い塩濃度が高い条件で培養することで、選択的に培養することができ、更に、簡易な培養設備での製造が可能である。また、B細胞の活性化能を更に高くするものである。なお、「w/v%」は、(質量(g)/体積(100mL))%を意味する。
また、受託番号NITE BP-02583の乳酸菌(菌株名「sc-09」)は、IL-22産生誘導能及びB細胞の活性化能が非常に高く優れている。つまり、IL-22産生を高めたいときに最も好適である。また、高温域(45~60℃)でも増殖可能であるため、一般的な細菌が成育し難い高温域(45~60℃)で培養することで、選択的に培養することができ、更に、簡易な培養施設での製造が可能である。また、胞子形成能があるため、胞子化させることで保管などの種菌(スターター)の取扱いも容易である。
また、受託番号NITE BP-02587の乳酸菌(菌株名「fc-24」)は、B細胞の他、T細胞の活性化能が非常に高く優れているため、例えば病原体など異物が侵入してきたときの免疫応答が迅速に進むことが期待できる。
また、受託番号NITE BP-02586の乳酸菌(菌株名「lb-57」)、受託番号NITE BP-02585の乳酸菌(菌株名「ta-52」)、受託番号NITE BP-02583の乳酸菌(菌株名「sc-09」)は、B細胞の生存能を向上させる能力、及び、B細胞の活性化能が優れ、更には、B細胞からのIL-22産生能が優れているといえる。
また、受託番号NITE BP-02588の乳酸菌(菌株名「pc-19」)は、食塩に対する抵抗性があり、9~10w/v%の塩分濃度でも生育可能である。また、増殖の最適温度は40℃であるが、50~53℃の高温域でも増殖可能である。そのため、塩分(9~10w/v%)を含む培地を用いて高温帯(50~53℃)で培養することで、選択的に培養することができ、更に、簡易な培養施設での製造が可能である。
上記のように、本発明の乳酸菌は、受託番号NITE BP-02585の乳酸菌、受託番号NITE BP-02587の乳酸菌、受託番号NITE BP-02586の乳酸菌、受託番号NITE BP-02588の乳酸菌、または、受託番号NITE BP-02583の乳酸菌が好ましい。
[2]乳酸菌の調製方法:
本発明の乳酸菌は、培養後、殺菌などの処理を行って調製することができる。具体的には、培養終了後、遠心分離などの手段により培地成分を取り除き、洗浄・精製する。そして、加熱殺菌を行い、その後、凍結乾燥・減圧乾燥・熱風乾燥などの手段により乾燥・濃縮する。このようにして、本発明の乳酸菌を調製することができる。
なお、加熱殺菌は、特に制限はないが、具体的にはオートクレーブ殺菌(121℃、20分)または同程度の殺菌が好ましい。
[3]IL-22産生誘導剤:
本発明のインターロイキン-22(IL-22)産生誘導剤は、本発明の乳酸菌を含有するものである。このIL-22産生誘導剤は、摂取する際の安全性が高い菌種である乳酸菌を含有しており、更に、この乳酸菌は製造が容易である。そして、本発明のIL-22産生誘導剤は、本発明の乳酸菌を含有することによって、その効果(IL-22の産生誘導能)が発揮される。
本発明のIL-22産生誘導剤は、本発明の乳酸菌を有効成分として含有する限りその含有割合は特に制限はない。なお、本発明のIL-22産生誘導剤は、本発明の乳酸菌以外にその他の成分として、難消化性デキストリン、オリゴ糖、デキストリン、二酸化ケイ素などを含有することができる。
なお、本発明のIL-22産生誘導剤は、本発明の乳酸菌を培養した際に得られる培養物、菌体または菌体成分を含有するものであってもよい。
なお、本発明のIL-22産生誘導剤は、そのもの自体を、飲食品、サプリメント、医薬品などとしてもよいし、飲食品、サプリメント、医薬品などに添加して用いることもできる。飲食品としては、特に制限はなく、例えば、味噌、即席味噌汁、調理味噌(味噌加工品)、金山寺味噌などのなめ味噌、醤油、つゆ、調味ソース、調味たれ、ご飯の素、惣菜、あま酒(糀飲料)等が挙げられる。
[4]皮膚バリア機能増強剤:
本発明の皮膚バリア機能増強剤は、本発明の乳酸菌を含有するものである。この皮膚バリア機能増強剤は、IL-22の産生を誘導し、経表皮からの水分蒸発を抑えることができる。即ち、皮膚上皮のタイトジャンクション(Tight junction:密着接合)が強固になり、皮膚のバリア機能を増強(即ち向上)させることができる。このように皮膚のバリア機能を向上させると、肌の潤いを保つことができ、乾燥肌や敏感肌を引き起こし難くすることができる。また、病原体の侵入などの外的刺激(病原体の侵入の他には、例えば、紫外線を受けることによる刺激、アレルゲン、化学物質、埃などと接触することによる刺激、乾燥環境下に晒されることによる刺激など)から肌を守ることができる。
ここで、皮膚の表皮層は、紫外線、アレルゲン、化学物質、病原体などの上記外的な刺激から生体を防御するバリア機能を担っているが、皮膚上皮のタイトジャンクションが緩み、皮膚のバリア機能が十分に機能しなくなると、外的な刺激から肌を守ることができなくなる。その結果、肌荒れ、しみ、シワ、ハリの低下、肌のたるみなどの問題の原因となる。このようなことから、皮膚のバリア機能を正常に保ち、このバリア機能が低下している場合には、その機能を向上させることが重要になる。本発明の皮膚バリア機能増強剤は、本発明の乳酸菌を含有することによって、この乳酸菌がIL-22の産生を誘導し、その結果、皮膚のバリア機能が発揮される(経表皮水分損失を防ぐ効果が発揮される)。
なお、経表皮からの水分蒸発量が大きいと(即ち、経表皮水分損失量(TransEpidermal Water Loss(TEWL)が大きいと)、皮膚(特に表皮層)が乾燥状態となる他、皮膚による十分な保護機能が発揮されずに、紫外線、アレルゲン、化学物質、病原体などの外的な刺激が皮膚の内部に悪影響(シミの発生や痒みなど)を与えることになる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<IL-22の測定試験>
発酵食品、及び、ヒトから乳酸菌を収集し、得られた各種乳酸菌を培養、殺菌処理し、実験用マウス(C57BL/6)の脾臓細胞に添加して培養し、培養後における、IL-22の産生量を測定した。なお、試験に用いた菌株は、表1~表7に記載している。以下、IL-22の測定試験について具体的に説明する。
(1)乳酸菌の分離及び同定
味噌、醤油、及び甘酒の発酵食品の醸造工程より、味噌、醤油、または甘酒由来の植物性乳酸菌の収集を行った。また、ヒトの腸内細菌の収集のため、ヒト糞便サンプルより、ヒト由来の動物性乳酸菌を分離した。
乳酸菌の分離培地は、ラクトバシラスMRS寒天培地(和光純薬社製)に炭酸カルシウムを加えた培地を用いた。そして、30℃と50℃のそれぞれの条件で、1~3日間嫌気培養して、周囲の炭酸カルシウムが溶解しているコロニーを収集した。また、耐塩性乳酸菌を選択して分離するために、「10SG10N寒天培地」を用い、30℃で、1~5日間嫌気培養して、コロニーを収集した。
なお、「10SG10N寒天培地」は、醤油(イチビキ社製の商品名「こいくちしょうゆ」)10v/v%、ぶどう糖1.0w/v%、酵母エキス1.0w/v%、ポリペプトン0.5w/v%、酢酸ナトリウム3水和物0.2w/v%、塩化ナトリウム10w/v%、「Tween80(ポリ(オキシエチレン)ソルピタンモノオレアート)」0.0025w/v%、硫酸マグネシウム7水和物0.02w/v%、硫酸マンガン4水和物0.001w/v%、及び、硫酸鉄7水和物0.001w/v%を混合し、pH6.8に調整して、寒天末1.5w/v%を加えて、オートクレーブにより処理したものである。なお、「v/v%」は、(体積/体積)%を示す。
分離した乳酸菌は、グラム染色を行い、顕微鏡観察をして、グラム染色陽性及び菌の形状の確認を行った。
また、菌体からDNAを抽出し、16S rDNAをプライマー10F(5’-GTTTGATCCTGGCTCA-3’)及びプライマー1500R(5’-TACCTTGTTACGACTT-3’)を用いてPCRで増幅した後、得られたPCR産物の配列分析によって菌種の同定を行った。なお、解析方法の詳細は、第十七改正日本薬局方 参照情報「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」に準じた。
収集した乳酸菌は、テトラジェノコッカス属乳酸菌(耐塩性乳酸菌)95株、エンテロコッカス属乳酸菌39株(フェカリス菌12株、フェシウム菌27株)、ラクトバチルス属乳酸菌61株、ラクトコッカス属乳酸菌7株、ロイコノストック属乳酸菌10株、ペディオコッカス属乳酸菌64株、ワイセラ属乳酸菌21株、コアギュランス有胞子性乳酸菌20株であった。
(2)菌体懸濁液の調製
分離・同定した乳酸菌は、ラクトバチリMRSブロス(和光純薬社製)を用いて、30℃または50℃、1~5日間、静置培養した。但し、耐塩性乳酸菌には、「10SG10N培地」を用いた。なお、「10SG10N培地」は、上記「10SG10N寒天培地」から寒天末を抜いた(寒天末を使用しない)培地である。
そして、上記のそれぞれの方法で培養後、121℃で20分間オートクレーブ滅菌処理をして菌株毎の培養液を得た。
次に、得られた各培養液を、5000rpmで10分間遠心分離を行った。その後、それぞれ集菌して、蒸留水で3回洗浄した後、蒸留水で懸濁し、凍結乾燥して菌体を得た。その後、得られた菌体のそれぞれについて、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で1mg/mLになるように懸濁して、各菌株の菌体懸濁液を調製した。
(3)細胞浮遊液の調製:
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓から採取した細胞を50mLコニカルチューブ(FALCON社製)に集め、5mLの赤血球溶解バッファー(0.155M NHCl,0.01M Tris-HCl,pH7.5)を加えて細胞を懸濁させた。その後、これにpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)5mLを加えて1200rpmで5分間遠心分離した。その後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄して、細胞浮遊液を調製した。
(4)細胞培養:
2×10cells/mLになるように細胞浮遊液を基本培地で調整し、調整後の細胞浮遊液を、24wellマイクロプレート(FALCON社製)に1mLずつ播種して、2×10cells/1mL/wellとした。なお、基本培地は、所定のL-グルタミン酸(0.3g/L)加RPMI 1640(ナカライテスク社製)に、55℃で30分間加熱して非働化した牛胎児血清(SAFC Biosciences社製)を培地中で9(w/v)%になるように添加したものを用いた。上記「所定のL-グルタミン酸(0.3g/L)加RPMI 1640」は、ペニシリン-ストレプトマイシン混合溶液(培地中に100U/mL-100μg/mL、ナカライテスク社製)及び2-メルカプトエタノール(培地中に50μM、ナカライテスク社製)を加えたL-グルタミン酸(0.3g/L)加RPMI 1640である。
その後、これに各菌体懸濁液(1mg/mL)を10μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で2日間培養した。なお、コントロールも用意した。このコントロールは、調整後の細胞浮遊液に菌体懸濁液を添加せずに、菌体を添加した場合と同一条件(37℃、5%COの条件)で2日間培養したものとした。
(5)IL-22の測定:
42時間の培養後、培養液にBD GolgiStopTM(BD社製)を0.67μLずつ加えて混合した。その後、更に、37℃、5%COの条件下で6時間培養した。
その後、24wellマイクロプレート(FALCON社製)で培養した細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio-One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をBD Cytofix/CytopermTM Fixation/Permeabilization Kit(BD社製)を用いて固定及び透過処理を行った。この操作はFixation/Permeabilization Kitの添付の説明書に従った。
B細胞の染色には、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用し、更に、IL-22の染色には、PE標識抗IL-22抗体(affymetrix eBioscience社製)を用いた。また、B細胞の活性化状態を測定するために、APC標識抗CD86抗体(TONBO Biosciences社製)を用いた。
染色反応は、冷蔵(5℃)で60分間静置して行った。その後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、0.5mLのPBSに懸濁して測定用試料を得た。
なお、測定は、フローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いた。
そして、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo(FlowJo,LLC社製)を用いた。
<結果>(1)脾臓B細胞におけるIL-22産生細胞量の測定:
B220陽性細胞をB細胞として、脾臓B細胞中のIL-22陽性細胞の割合(IL-22,B220/B220)を各測定用試料で求めた。
コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における脾臓B細胞中のIL-22陽性細胞の割合を基準(100)とし、各測定用試料の相対値を算出して、B細胞のIL-22産生細胞量の値とした(表中、「IL-22産生誘導能(脾臓B細胞)」と記す)。
なお、各測定用試料を1回測定した上で、測定値が高かった測定用試料については、更に測定を2~6回繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表1~表7に示す。
(2)全脾臓細胞におけるIL-22産生細胞量の測定:
全脾臓細胞中のIL-22陽性細胞の割合(IL-22陽性細胞/全脾臓細胞)を各測定用試料で求めた。
コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)における全脾臓細胞中のIL-22陽性細胞の割合を基準(100)とし、各測定用試料の相対値を算出して、全脾臓細胞のIL-22産生細胞量の値とした(表中、「IL-22産生誘導能(全脾臓細胞)」と記す)。
上記「(1)B細胞におけるIL-22産生細胞量の測定」と同様に、各測定用試料を1回測定した上で、測定値が高かった測定用試料については、更に上記(1)の場合と同様の回数で測定を繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表1~表7に示す。
(3)B細胞の活性化能の測定:
B細胞中のCD86陽性細胞の割合(CD86,B220/CD86,B220)を求めた。そして、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)におけるB細胞中のCD86陽性細胞の割合を基準(100)とし、B細胞の活性化能の値を算出した(表1~表7中、「B細胞の活性化能」と示す)。
なお、上記「(1)B細胞におけるIL-22産生細胞量の測定」及び「(2)全脾臓細胞におけるIL-22産生細胞量の測定」を繰り返して行った測定用試料については、B細胞の活性化能の測定も同様に繰り返し、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表1~表7に示す。
Figure 0007358001000001
Figure 0007358001000002
Figure 0007358001000003
Figure 0007358001000004
Figure 0007358001000005
Figure 0007358001000006
Figure 0007358001000007
(4)IL-22の産生誘導菌のスクリーニング結果:
各種属の乳酸菌のスクリーニング結果は、以下のようになった(表1~表7、図1~図24参照)。
(a)テトラジェノコッカス属乳酸菌(耐塩性乳酸菌)(95株、表1~表2、図1~図6参照):
試験を行ったテトラジェノコッカス属乳酸菌の菌株の大半は、IL-22の産生細胞量をほとんど変化させるものではなかった。そして、IL-22の産生量が高い菌株(B細胞中の産生細胞量がコントロールに比べて1.1倍以上)は、全体の1割程度であった。その中でも、B細胞中の産生細胞量がコントロールに比べて約4倍に上昇する菌(菌株名「ta-52」)があった。これは、脾臓細胞全体における結果においてもコントロールに比べてIL-22の産生細胞量が約3倍となり、高い結果であった。
(b)エンテロコッカス属乳酸菌(フェカリス菌12株、フェシウム菌27株、表3、図7~図9参照):
フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、フェシウム菌(Enterococcus faecium)についても、テトラジェノコッカス属乳酸菌と同様に、大半の菌は、IL-22の産生細胞の量をほとんど変化させるものではなかった。一方で、試験を行った菌の中でも、B細胞中におけるIL-22の産生量がコントロールに比べて約2倍である菌(菌株名「fc-24」)があった。これは、脾臓細胞全体における結果においてもコントロールに比べてIL-22の産生量が約2倍となり、高い結果であった。
(c)ラクトバチルス属乳酸菌(61株、表4、図10~図12参照):
約2割にあたる菌株がIL-22の産生量を高めた(B細胞中の産生細胞量がコントロールに比べて1.1倍以上)。その中で、Lactobacillus ruminis、Lactobacillus acidipiscis、Lactobacillus reuteriは、IL-22の産生誘導能が高く、特に、Lactobacillus ruminis(菌株名「lb-57」)はB細胞中におけるIL-22の産生細胞量がコントロールに比べて5倍、脾臓細胞全体においてもコントロールに比べてIL-22の産生細胞量が4倍と最も上昇した。
(d)ラクトコッカス属乳酸菌(7株、表5、図13~図15参照)、ロイコノストック属乳酸菌(10株、表5、図13~図15参照)、ワイセラ属乳酸菌(21株、表7、図19~図21参照):
ラクトコッカス(Lactococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、及び、ワイセラ(Weissella)属の乳酸菌は、全体的に、IL-22の産生細胞量にほとんど変化がなく、特にIL-22の産生細胞量が高い菌株も存在しなかった。
(e)ペディオコッカス属乳酸菌(64株、表6、図16~図18参照):
約7割にあたる菌株がIL-22の産生量を高めた(B細胞中の産生細胞量がコントロールに比べて1.1倍以上)。その中で、Pediococcus acidilacticiに、IL-22の産生誘導能が高い菌株があった(菌株名「pc-19」)。この菌株(菌株名「pc-19」)は、B細胞中におけるIL-22の産生細胞量がコントロールに比べて約4倍、脾臓細胞全体においてもコントロールに比べてIL-22の産生細胞量が約3倍に上昇した。
(f)コアギュランス有胞子性乳酸菌(20株、表7、図19~図21参照):
測定した全てのコアギュランス菌(Bacillus coagulans)で、IL-22の産生細胞量が上昇した(B細胞中の産生細胞量がコントロールに比べて1.3倍以上)。その中でも、Bacillus coagulans sc-09が、B細胞中におけるIL-22の産生細胞量がコントロールに比べて10倍、脾臓細胞全体で6倍となり、スクリーニングを行った全菌株の中で最も上昇した。
以上の結果を表1~表7に示す。更に、菌種毎のB細胞及び全脾臓細胞のIL-22産生誘導能、B細胞の活性化能をまとめた図をそれぞれ図22、図23、図24に示す。図22、図23には、IL-22産生誘導能の値(複数回測定したものは平均値)を丸(○)で示し、それらの平均値を縦棒(|)で示した。なお、横軸はIL-22産生誘導能の値である。また、図24には、B細胞の活性化能の値(複数回測定したものは平均値)を丸(○)で示し、それらの平均値を縦棒(|)で示した。なお、横軸はB細胞の活性化能の値である。これらが示すように、乳酸菌の菌体による刺激に起因するIL-22産生誘導能は、種属間で異なることが分かった。そして、これらの乳酸菌の中でも、コアギュランス有胞子性乳酸菌は、IL-22産生誘導能が高い傾向にあることが分かった。
また、テトラジェノコッカス属、エンテロコッカス属乳酸菌(フェシウム菌など)、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属、コアギュランス有胞子性乳酸菌の各種属の乳酸菌から、IL-22を顕著に高く誘導する菌株を見出した。結果を表8に示す。なお、表8に示す菌株の中で、IL-22を最も高く誘導するのは、味噌由来のBacillus coagulans sc-09であった。
Figure 0007358001000008
CD4T細胞やNK細胞などがIL-22を産生することは知られているが、IL-22がB細胞中で産生されることは、これまで報告がない。また、これらの乳酸菌の刺激により、脾臓細胞中で特にB細胞からのIL-22産生量が増加していた。Bacillus coagulans sc-09の結果の一例を図25に示す。
なお、図25は、実施例1におけるフローサイトメトリーにおける測定の一例であり、縦軸がB220の発現を示し、横軸がIL-22の発現を示し、左側にはコントロール(control)、右側には「sc-09」の菌株を添加した場合(「+ sc-09」と記す)について示している。
また、IL-22の産生誘導能が高い乳酸菌は、B細胞の活性化も高い傾向にあった。一方で、B細胞の活性化能が高い菌が必ずしもIL-22について高い産生誘導能を有するとは限らなかった。
このことから、菌体の刺激によってB細胞を活性化させることができる乳酸菌の一部は、IL-22の産生誘導能も有することが分かった。なお、B細胞が活性化された状態であると、免疫を賦活化する効果も期待できることになる。
なお、本実施例では、B220陽性細胞に着目してB細胞について解析したが、IL-22の産生誘導能が高い乳酸菌について、B220陽性細胞に代えてCD19陽性細胞(violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用)で解析した場合にも同様の結果が得られた。このことからも、所定の菌株によってB細胞からのIL-22産生誘導能が向上し、更に、B細胞の活性化能が向上されることが確認できた。
(実施例2)
<細胞の生存能及び活性化能の測定試験>
実施例1でIL-22の産生誘導能の高かった乳酸菌について、殺菌処理後の菌体を、実験用マウス(C57BL/6)の「脾臓細胞と共培養」して、脾臓細胞全体の生存能、脾臓B細胞と脾臓T細胞の生存能、及び脾臓B細胞と脾臓T細胞の活性化能を調査した。以下、試験内容について具体的に説明する。
(1)菌体懸濁液の調製:
実施例1で調製した乳酸菌懸濁液と同様のものを使用した。
(2)細胞浮遊液の調製:
実施例1と同様に調整した。
(3)細胞培養:
2×10cells/mLになるように細胞浮遊液を基本培地で調整し、調整後の細胞浮遊液を、48wellマイクロプレート(FALCON社製)に0.5mLずつ播種して、1×10cells/0.5mL/wellとした。
その後、これに各菌体懸濁液(1mg/mL)を5μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で2日間培養した。なお、コントロールは、調整後の細胞浮遊液に菌体懸濁液を添加せずに、菌体を添加した場合と同一条件(37℃、5%COの条件)で2日間培養したものとした。
(4)細胞の生存能及び活性化能の測定:
48wellマイクロプレートで培養していた細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio-One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.2mLに懸濁し、以下の4つの抗体を1μLずつ加え、冷蔵(5℃)で60分間静置した。
添加した4つの抗体は、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)、APC標識抗CD86抗体(TONBO Biosciences社製)、Brilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)、及びPE標識抗CD69抗体(BioLegend社製)であった。
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLに懸濁した。その後、Propidium Iodide(PI)核染色液(コスモバイオ社製)を0.5μL加えて測定用試料を得た。この測定用試料についてフローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いて測定を行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo (FlowJo, LLC社製)を用いた。
(細胞生存能)
測定用試料のうち、PI検出された細胞(PI核染色液で染色された細胞)を死細胞とみなし、カウントされた細胞数(総細胞数)からの差を生細胞の数とした。そして、総細胞中の生細胞の割合(生細胞の数/総細胞の数×100)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞中の生細胞の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出して細胞の生存能(細胞生存能)の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表9に示す。本実施例において「平均値(X)」は、6回の試験(n=6)による平均値である。
(B細胞の生存能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)にてB細胞を検出した。生細胞のうちのB細胞の数(PI検出されなかった細胞のうちのB220陽性細胞)と、総細胞の数との商(総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞の数に対する生存するB細胞の数の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の生存能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表9に示す。
(T細胞の生存能)
T細胞の細胞表面マーカーであるBrilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)にてT細胞を検出した。生細胞のうちのT細胞の数(PI検出されなかった細胞のうちのCD4陽性細胞)と、総細胞の数との商(総細胞の数に対する生存するT細胞の数の割合)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞の数に対する生存するT細胞の数の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してT細胞の生存能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表9に示す。
(B細胞の活性化能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体と、B細胞の活性化マーカーであるAPC標識抗CD86抗体によって、B220及びCD86を発現するB細胞を検出し、カウントした。そして、B細胞(B220陽性細胞)のうち、活性化しているB細胞(CD86,B220)と活性化していないB細胞(CD86,B220)の商(活性化しているB細胞/活性化していないB細胞の比の値)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているB細胞(CD86,B220)と活性化していないB細胞(CD86,B220)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の活性化能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表9に示す。
(T細胞の活性化能)
T細胞の細胞表面マーカーであるBrilliant Violet510標識抗CD4抗体(BioLegend社製)と、T細胞の活性化マーカーであるPE標識抗CD69抗体(BioLegend社製)によって、CD4及びCD69を発現する細胞を検出し、その数を数えた。そして、T細胞(CD4陽性細胞)のうち、活性化しているT細胞(CD69,CD4)と活性化していないT細胞(CD69,CD4)の商(活性化しているT細胞/活性化していないT細胞の比の値)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているT細胞(CD69,CD4)と活性化していないT細胞(CD69,CD4)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してT細胞の活性化能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表9に示す。
<結果>
本実施例の結果によって、実施例1で選択した「IL-22の産生誘導能が高い菌株」は、B細胞の活性化能が高いだけでなく、B細胞の生存能を向上させる能力も高いことが分かった。更に、T細胞の生存能を向上させる能力及びT細胞の活性化能も高いことが分かった。
なお、本実施例では、B220陽性細胞に着目してB細胞について解析したが、B220陽性細胞に代えてCD19陽性細胞(violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用)で解析した場合にも同様の結果が得られた。このことからも、所定の菌株によってB細胞の生存能が向上し、更に、B細胞の活性化能が向上されることが確認できた。
Figure 0007358001000009
(実施例3)
<B細胞の生存能及び活性化能の測定試験>
実施例1でIL-22の産生誘導能の高かった乳酸菌について、殺菌処理後の菌体を、実験用マウス(C57BL/6)の「脾臓由来のB細胞(B220陽性細胞)と共培養」して、脾臓B細胞の生存能を向上させる能力及び脾臓B細胞の活性化能を調査した。以下、測定試験について具体的に説明する。
(1)菌体懸濁液の調製:
実施例1で調製した乳酸菌懸濁液と同様のものを使用した。
(2)B細胞浮遊液の調製:
実験用マウス(C57BL/6)の脾臓から採取した細胞を50mLコニカルチューブ(FALCON社製)に集め、5mLの赤血球溶解バッファー(0.155M NHCl,0.01M Tris-HCl,pH7.5)を加えて細胞を懸濁させた。その後、これにpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)5mLを加えて1200rpmで5分間遠心分離した。その後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄して、細胞浮遊液を調製した。
基本培地で懸濁後、ビオチン-抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を加えて、冷蔵(5℃)して30分間静置した。
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で2回洗浄した後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で懸濁した。その後、磁気ビーズであるStreptavidin Particles Plus・DM(日本BD社製)を加えて、冷蔵(5℃)して30分間静置した。
その後、1200rpmで5分間遠心分離し、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)で1回洗浄した後、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)に再度懸濁して、ラウンドチューブに移した。
その後、BD IMag Cell Separation System(日本BD社製)にて細胞分離を行い、磁石に引き寄せられている細胞を「B細胞(B220陽性細胞)」として回収(ポジティブ細胞分画)した。回収した細胞を基本培地に懸濁して、B細胞浮遊液を調製した。なお、得られたB細胞浮遊液は、血球計算板を用いて細胞数を計測した。
(3)細胞培養:
2×10cells/mLになるようにB細胞浮遊液を基本培地で調整し、調整後のB細胞浮遊液を、24wellマイクロプレート(FALCON社製)に1mLずつ播種して、2×10cells/1mL/wellとした。その後、各乳酸菌懸濁液を10μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で2日間培養した。なお、調整後のB細胞浮遊液に菌体(乳酸菌懸濁液)を添加せずに、菌体を添加した水準と同一条件(37℃、5%COの条件)で2日間培養したものをコントロールとした。
(4)B細胞の生存能及び活性化能の測定:
培養後、フローサイトメトリー(ミルテニーバイオテク社製 MACSQuant Analyzer)を用いて、各試料(細胞培養液)について生存能及び活性化能の測定を行った。
まず、24wellマイクロプレートで培養していた細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio-One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.1mLに懸濁し、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)とAPC標識抗CD86抗体(TONBO Biosciences社製)を0.5μLずつ加え、冷蔵(5℃)で60分間静置した。
静置後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、pH6.8のリン酸緩衝液(PBS)0.5mLに懸濁した。その後、Propidium Iodide(PI)核染色液(コスモバイオ社製)を0.5μL加えて測定用試料を得た。この測定用試料についてフローサイトメトリーを用いて測定を行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo (FlowJo, LLC社製)を用いた。
(B細胞の生存能)
測定用試料のうち、PI検出された細胞(PI核染色液で染色された細胞)を死細胞とみなし、カウントされた細胞数(総細胞数)からの差をB細胞の生細胞数とした。そして、総細胞中の生細胞の割合(生細胞の数/総細胞の数×100)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、総細胞中の生細胞の割合を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の生存能(細胞生存能)の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表10の「B細胞の生存能」に示す。本実施例において「平均値(X)」は、4回の試験(n=4)による平均値である。
(B細胞の活性化能)
B細胞の細胞表面マーカーであるvioletFluor450標識抗B220抗体と、B細胞の活性化マーカーであるAPC標識抗CD86抗体によって、B220及びCD86を発現するB細胞を検出し、その数を数えた。そして、B細胞(B220陽性細胞)のうち、活性化しているB細胞(CD86,B220)と活性化していないB細胞(CD86,B220)の商(活性化しているB細胞の数と活性化していないB細胞の数との比)を算出した。同様に、コントロール(乳酸菌懸濁液を添加しなかったもの)における、活性化しているB細胞(CD86,B220)と活性化していないB細胞(CD86,B220)の商を算出した。その後、これらの値を比較し、コントロールを基準(100)としたときの比の値を算出してB細胞の活性化能の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表10の「B細胞の活性化能」に示す。
<結果>
本実施例の結果によって、実施例1により選択した「IL-22の産生誘導能が高い菌株」は、B細胞に直接作用して、B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を高めていることが更に確認できた。
Figure 0007358001000010
(実施例4)
<B細胞のIL-22産生誘導能の測定試験>
実施例1でIL-22の産生誘導能の高かった乳酸菌について、殺菌処理後の菌体を、実験用マウス(C57BL/6)の「脾臓由来のB細胞(B220陽性細胞)と共培養」して、IL-22産生誘導能を調査した。以下、測定試験について具体的に説明する。
(1)菌体懸濁液の調製:
実施例1で調製した乳酸菌懸濁液と同様のものを使用した。
(2)B細胞浮遊液の調製:実施例3と同様に調製した。
(3)細胞培養:実施例3と同様に培養した。
(4)IL-22の測定:
42時間の培養後、培養液にBD GolgiStopTM(BD社製)を0.67μLずつ加えて混合した。その後、更に、37℃、5%COの条件下で6時間培養した。
その後、24wellマイクロプレート(FALCON社製)で培養した細胞培養液を1.5mLリアクションチューブ(Greiner Bio-One社製)に移し、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収した。その後、回収した細胞をBD Cytofix/CytopermTM Fixation/Permeabilization Kit(BD社製)を用いて固定及び透過処理を行った。この操作はFixation/Permeabilization Kitの添付の説明書に従った。
B細胞の染色には、violetFluor450標識抗B220抗体(TONBO Biosciences社製)を使用した。また、IL-22の染色には、PE標識抗IL-22抗体(affymetrix eBioscience社製)を用いた。
染色反応は、冷蔵(5℃)で60分間静置して行った。その後、1200rpmで5分間遠心分離し、細胞を回収して、0.5mLのpH6.8のリン酸緩衝液(PBS)に懸濁して測定用試料を得た。この測定用試料についてフローサイトメトリーを用いて測定を行った。なお、解析は、FCSデータ解析ソフト FlowJo(FlowJo,LLC社製)を用いた。
B細胞中のIL-22陽性細胞の割合(IL-22,B220/B220)を各測定用試料で求め、コントロール(菌体懸濁液を添加しなかったもの)におけるB細胞中のIL-22陽性細胞の割合を基準(100)とし、各測定用試料の相対値を算出して、B細胞のIL-22産生細胞量の値とした。なお、試験は繰り返して行い、平均値(X)と標準誤差(S.E.)を求めた。結果を表10の「IL-22産生誘導能」に示す。本実施例において「平均値(X)」は、4回の試験(n=4)による平均値である。
<結果>
本実施例の結果によって、実施例1により選択した「IL-22の産生誘導能が高い菌株」は、B細胞に直接作用して、IL-22を産生するB細胞を増加させていることが分かった。
(実施例5)
<給餌試験(TEWLの測定)>
IL-22の産生誘導能の高かった「Bacillus coagulans sc-09」(受託番号NITE BP-02583の乳酸菌(菌株名「sc-09」))の殺菌処理後の菌体を実験用マウスに摂取させ、その後、皮膚の経表皮水分損失量(TransEpidermal Water Loss(TEWL))を測定した。また、あわせてIL-22を投与した群(表11中、「IL-22投与群」)と、IL-22の中和抗体を投与した群(表11中、「菌体摂取/抗IL-22抗体投与群」)も用意し、IL-22の接種による皮膚の変化も確認した。
(1)乳酸菌配合飼料の調製:
通常のマウス用飼料に、殺菌処理しその後凍結乾燥したコアギュランス菌sc-09の菌体を1w/w%の割合で配合した飼料(乳酸菌配合飼料)を調製した。なお、通常のマウス用飼料としては、マウス飼育繁殖用飼料CE-2(日本クレア社製)を用いた。
(2)給餌飼育:
通常の実験用マウス(C57BL/6)(8週齢・雌)12匹を4群に分け(各群3匹ずつ)、そのうちの2群に乳酸菌配合飼料を与え、残りの2群には乳酸菌の菌体を含まない通常のマウス用飼料を与えて、21日間飼育をした。
乳酸菌の菌体を含まない通常のマウス用飼料を与えた2つの群のうちの一方には、給餌開始14日目と17日目に、それぞれ、IL-22の組換え体タンパク質である「リコンビナントIL-22(TONBO社製 リコンビナントマウスIL-22(Recombinant Mouse IL-22))」を尾静脈注射(それぞれ2μg/匹)した。上記2つの群のうち、「リコンビナントIL-22」を尾静脈注射した群を「IL-22投与群」と言うこととし、「リコンビナントIL-22」を尾静脈注射(投与)しない群を「コントロール群」ということとした。
また、乳酸菌配合飼料を与えた2つの群のうちの一方には、給餌開始から14日目と17日目に、それぞれ、IL-22中和抗体として「抗IL-22抗体(Thermo Fisher社製 IL-22モノクローナル抗体)」を尾静脈注射(それぞれ20μg/匹)した。上記2群のうち、「抗IL-22抗体」を尾静脈注射した群を「菌体摂取/抗IL-22抗体投与群」と言うこととし、「抗IL-22抗体」を尾静脈注射(投与)しない群を「菌体摂取群」ということとした。
(3)経表皮水分損失量(TEWL)の測定:
給餌開始から21日目に、各群のマウスの背部における皮膚の経表皮水分損失量(TEWL)を測定した。本測定に際して、前日(20日目)にマウスの背部を剃毛処理した。TEWLの測定は、CORTEX TECHNOLOGY社製の皮膚測定装置「DermaLab(登録商標)」にて行った。各マウスにおいてTEWLの測定は3回ずつ行い、各群の平均値と標準偏差を求めた。表11,図26には、経表皮水分損失量(TEWL)の結果を示す。コントロール群とその他の各群の数値について、F検定を行い、分散に有意差があるか否かの確認を行った。その後、Student’s t検定(これは、等分散を仮定した2標本による検定である)を行った。
Figure 0007358001000011
表11、図26の結果から明らかなように、菌体摂取群(「Bacillus coagulans sc-09」を摂取し、「抗IL-22抗体」を投与しない群)は、コントロール群に比べて、TEWLが低く、Student’s t検定の結果、p<0.01(p=0.0004)となり、有意水準1%で有意差が認められた。
なお、表11から分かるように、IL-22投与群(乳酸菌配合飼料は与えずに、IL-22を投与した群)は、コントロール群に比べて、TEWLが低く、Student’s t検定の結果、p<0.01(p=0.003)となり、有意水準1%で有意差が認められた。また、「菌体摂取/抗IL-22抗体投与群」は、菌体摂取群に比べて、TEWLが高く(即ち、皮膚からの水分の蒸発量が多く)、コントロール群と比べてもTEWLが高く、Student’s t検定の結果、p<0.01(p=0.003)となり、有意水準1%で有意差が認められた。なお、各群のマウスは、目視上では皮膚の性状に変化は確認されなかった。
このように本実施例からすると、菌体摂取群ではTEWLが低くなることが分かり、本発明の乳酸菌を摂取することで皮膚のバリア機能が高まることが分かった。
なお、IL-22を投与することでもTEWLが低下するものの、一方で、IL-22の中和抗体を投与(尾静脈注射)することでTEWLが上昇することから(表11,図26参照)、IL-22が皮膚のバリア機能を高めていることが確認された。そして、菌体摂取による皮膚のバリア機能の向上は、菌体を摂取したことに起因した刺激に基づくものであり、菌体によるIL-22の産生誘導に拠るものである可能性が考えられる。
以上のように、本発明の乳酸菌は、B細胞に直接作用することによってB細胞の生存能を向上させる能力を有し、B細胞の活性化能を有することが分かった。そして、このことからすると、本発明の乳酸菌は、免疫賦活作用を有することが分かる。更に、本発明の乳酸菌は、IL-22の高い産生誘導能を有することが分かった。また、本発明の乳酸菌は、皮膚のバリア機能を増強する(高める)ことが分かった。
本発明の乳酸菌は、飲食品、サプリメント、医薬品などに添加して免疫賦活作用を発揮させる免疫賦活剤の有効成分(更には、皮膚バリア機能増強剤の有効成分)として採用したり、そのものを飲食品、サプリメント、医薬品などとしたりすることができる。飲食品としては、例えば、味噌、即席味噌汁、調理味噌(味噌加工品)、金山寺味噌などのなめ味噌、醤油、つゆ、調味ソース、調味たれ、ご飯の素、惣菜、あま酒(糀飲料)等が挙げられる。
受託番号NITE BP-02583、受託番号NITE BP-02585、受託番号NITE BP-02586、受託番号NITE BP-02587、及び受託番号NITE BP-02588

Claims (4)

  1. B細胞の生存能を向上させる能力及びB細胞の活性化能を有するとともに、インターロイキン-22の産生を誘導し、
    受託番号NITE BP-02585の乳酸菌、受託番号NITE BP-02587の乳酸菌、受託番号NITE BP-02586の乳酸菌、または受託番号NITE BP-02588の乳酸菌である、乳酸菌。
  2. B細胞からのインターロイキン-22の産生を誘導する請求項1に記載の乳酸菌。
  3. 請求項1または2に記載の乳酸菌を含有するインターロイキン-22産生誘導剤。
  4. 請求項1または2に記載の乳酸菌を含有する皮膚バリア機能増強剤。
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