JP4459938B2 - 免疫バランスを正常化するストレプトコッカス属乳酸菌及びそれを用いた飲食品 - Google Patents

免疫バランスを正常化するストレプトコッカス属乳酸菌及びそれを用いた飲食品 Download PDF

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本発明は、免疫バランスを正常化する機能を有する特定の乳酸菌、及びこの乳酸菌を含むことを特徴とする免疫バランス正常化又はアレルギー症状予防もしくは改善用飲食品に関する。本発明は、さらに、これらの免疫バランス正常化飲食品及びアレルギー症状予防又は改善用飲食品の製造方法にも関する。
最近、ヘルパーT細胞はタイプ1ヘルパーT細胞(Th1)及びタイプ2ヘルパーT細胞(Th2)の2つのサブタイプに分かれており、これらが種々の免疫反応に関わる疾病をコントロールしていることがマウス及びヒトについてわかってきた。Th1とTh2は、相互機能的にバランスをとっており、このバランスが保たれていれば健康な状態にあるが、バランスが崩れると種々の疾患の発症及び進展につながると推測されている。即ち、適正な状態のTh1/Th2バランスよりもTh1側に偏向すると、糖尿病、肝障害、気道炎症、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、腎炎等が発症し、Th2側に偏向すると、がん、免疫不全、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患、腎炎、感染症等が発症するものと考えられている。
このTh1/Th2バランスの状態は、現在、ヘルパーT細胞からの特異的サイトカイン産生を調べることにより推定することができる。例えばインターロイキン2(IL‐2)やインターフェロンγ(IFN‐γ)等のTh1型サイトカインの産生が優位の場合にはTh1側へ、インターロイキン4(IL‐4)、インターロイキン5(IL‐5)等のTh2型サイトカインの産生が優位の場合にはTh2側へ偏向しているとされる。
乳酸菌は、整腸作用や免疫賦活作用等を含む有益な生理活性を有することが知られている。ヒトにおいて行なわれた臨床的研究において、乳酸菌は、アトピー及び多年性のアレルギー性鼻炎の症状を緩和すること、また、免疫系の抗腫瘍活性を増強することで、がんの発症を予防することが示された。さらに、乳酸菌は、アレルギー患者のTh2側に偏向した免疫バランスを適正の状態に改善してくれることが示唆されており、アレルギー性疾患の治療及び改善について効果が期待されている。
しかし、乳酸菌によって個々の免疫応答は全く異なり、例えば、免疫調節作用を有する乳酸菌であってもすべての株がTh1型の特異的免疫反応を促進するのに有効であるというわけではない。したがって、菌株の選択は乳酸菌の適正な利用のために極めて重要である。
Lactobacillus paracasei KW3110株等のいくつかの菌株は、卵白アルブミンで感作されたマウス脾臓由来リンパ球に対し、Th1応答の活性化の指標となるインターロイキン12(IL‐12)の産生を増大させ、Th2応答の活性化の指標となるIL‐4の産生を低減させることが知られている(特許文献1)。
また、本発明者らは、昨年、各種の乳酸菌株を検討した結果、マウス脾臓細胞に作用させるとINF‐γの産生をより多く増加させる乳酸菌を見い出した(日本農芸化学会2006年度大会にて発表)。
WO2004/096246(再表2004/096246) Bennett, S., R., M., et al. (1998). Nature, 393: 478-480. Cella, M., et al. (1996). Journal of Experimental Medicine, 184: 747-752. Choi, S.S., et al. (2006). Letters in Applied Microbiology, 42: 452-458. Christensen, H.R., et al. (2002). The Journal of Immunology, 168: 171-178. Ciprandi, G., et al. (2004). International Archives of Allergy and Immunology, 134: 34-40. Ciprandi, G., et al. (2005). Allergy, 60: 957-960. Cross, M.L., et al. (2001). International Immunopharmacology, 1: 891-901. Feuerer, M., et al. (2006). Journal of Immunology, 176: 2857-2863. Gelbmann, C.M., et al. (2003). Gut, 52: 1448-1456. Gill, H.S., et al. (2000). British Journal of Nutrition, 83: 167-176. Gill, H.S., et al. (2001). Journal of Clinical Immunology, 21: 264-271. Ishida, Y., et al. (2005). Journal of Dairy Science, 88: 527-533. Kalliomaki, M., et al. (2001). Lancet, 357: 1076-1079. Kidd, P.(2003). Alternative Medicine Review, 8(3): 223-246. Lanzavecchia, A.(1998). Nature, 393: 413. Hart, A.L., et al. (2004). Gut, 53: 1602-1609. Mellman, I. and Steinman, R.M.(2001). Cell, 106: 255-258. Mohamadadzadeh, M., et al. (2005). PNAS, 102(8): 2880-2885. Michelsen, K.S., et al. (2001). Journal of Biological Chemistry, 276(28): 25680-25686. Morimato, K., et al. (2005). Preventive Medicine, 40: 589-594. Nagao, F., et al. (2000). Bioscience, Biotechnology and Biochemistry, 64(12): 2706-2708. Nishimura, T., et al. (1987). Journal of Immunology, 139: 2888-2891. Ohashi, Y., et al. (2002). Urologia Internationalis, 68: 273-280. Pene, J., et al. (1988). Proceedings of the National Academy of Sciences, 85: 6880-6884. Peng, G-C. and Hsu, C-H.(2005). Pediatric Allergy and Immunology, 16: 433-438. Perdigon, G., et al. (2000). International Journal of Immunopathology and Pharmacology, 13(3): 141-150. Perdigon, G., et al. (2002). European Journal of Clinical Nutrition, 56, Suppl 4: S21-S26. Pessi, T., et al. (2000). Clinical and Experimental Allergy, 30: 1804-1808. Pochard, P., et al. (2005). Journal of Allergy and Clinical Immunology, 116(1): 198-204. Pohjavuori, E., et al. (2004). Journal of Allergy and Clinical Immunology, 114: 131-136. Qing, H., et al. (2005). Journal of Immunology, 174: 4860-4869. Rautava, S., et al. (2002). Journal of Allergy and Clinical Immunology, 109: 119-121. Rescigno, M., et al. (2001). Nature Immunology, 2(4): 361-367. Ridge, J.P., et al. (1998). Nature, 393: 474-478. Sato, M., et al. (2003). International Immunology, 15(7): 837-843. Schoenberger, S.P., et al. (1998). Nature, 393: 480-483. Sicherer, S.H., et al. (2004). Journal of Allergy and Clinical Immunology, 114: 159-165. Taylor, S.L. and Hefle, S.L.(2005). Food Technology, 59(2): 40-43;75. Wang, M.F., et al. (2004). Pediatric Allergy and Immunology, 15: 152-158. Yoshimura, S., et al. (2001). International Immunology, 13(5): 675-683. Zeuthen, L.J., et al. (2006). Clinical and Vaccine Immunology, 13(3): 365-375.
本発明は、特定の免疫機能性のある乳酸菌、特に免疫バランスを正常化する方向で作用し、その結果、アレルギー症状又は疾患の予防又は改善効果を与えることのできる能力を有する乳酸菌を提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような乳酸菌を用いた発酵乳製品等の飲食品及びその製造方法を提供することをも目的とする。
本発明者らは、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属等の各種乳酸菌の菌株を、身体全体の免疫バランスを正常化する作用について詳細に検討し、免疫バランスの改善に関してより効果の高い乳酸菌を選択することにより、本発明を完成した。
本発明は、
〔1〕以下に規定する免疫調節作用を有することを特徴とするStreptococcus thermophillus乳酸菌:
(1)マウス脾臓細胞を、2×10個/mLで1μg/mLの濃度の乳酸菌と1mLの培地中で36時間共培養し、続いて4×10個/mLで0.5μg/mLのα‐CD3存在下で250μLの培地中で36時間培養して、上清中のインターフェロンγ(IFN‐γ)及びインターロイキン4(IL‐4)の産生量を測定した場合、
(a)乳酸菌刺激したIFN‐γ産生量/コントロールのIFN‐γ産生量の比が少なくとも2.0である;
(b)乳酸菌刺激したIL‐4産生量/コントロールのIL‐4産生量の比が2.0以下である;及び
(c)乳酸菌刺激したIFN‐γ産生量/乳酸菌刺激したIL‐4産生量の比が少なくとも20.0である;かつ、
(2)マウス腹腔マクロファージを、5×10個/mLで所定の濃度の乳酸菌と250μLの培地中で48時間共培養して、上清中のインターロイキン12(IL‐12)及びインターロイキン10(IL‐10)の産生量を測定した場合、
(d)100μg/mLの乳酸菌濃度で少なくとも3ng/mLのIL‐12の産生を誘導する;
(e)1000μg/mLの乳酸菌濃度で4ng/mL以上のIL‐10の産生を誘導しない;及び
(f)IL‐12産生量/IL‐10産生量の比が少なくとも4.0である;
〔2〕さらに、
(3)5〜20μg/mLのいずれかの濃度の乳酸菌と共培養した後に分化させたマウス骨髄由来樹状細胞を、別のMHCハプロタイプを有するマウス由来の脾臓細胞と混合リンパ球反応を行なった後のものをエフェクター細胞として、同じMHCハプロタイプを有するマウス由来腫瘍細胞をターゲット細胞として細胞傷害活性を測定した場合、コントロールと比較して有意な細胞傷害活性を示す、前記〔1〕記載の乳酸菌;
〔3〕乳酸菌Streptococcus thermophillus OH1(AHU1838)(FERM P−21009);
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の乳酸菌又はその加工品を含む、飲食品;
〔5〕免疫バランス正常化あるいはアレルギー予防又は改善用である、前記〔4〕記載の飲食品、
を提供する。
本発明は、さらに、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の乳酸菌を用いて乳又は乳加工品を含む原料を発酵させる工程を含む、乳製品の製造方法を提供する。
本発明によれば、免疫担当細胞を刺激して高いINF‐γ産生を誘導し、かつTh1サイトカインであるIFN‐γやIL‐12の産生誘導とTh2サイトカインであるやインターロイキン10(IL‐10)の産生抑制の両方の機能を有する乳酸菌Streptococcus thermophillus、特にStreptococcus thermophillus OH1(AHU1838)(FERM P−21009)が提供される。本発明の乳酸菌は、未成熟樹状細胞の成熟化にも寄与し、極めて効果の高い乳酸菌株である。
乳酸菌は非常に安全性が高いため、食品・飲料等によって摂取しても人体への悪影響が考えられない。また、飲食品の製造において容易に使用でき、加工方法も公知であるので、応用範囲が広い等の利点を有する。
さらに、本発明の乳酸菌及びこれを使用する飲食品は、食味においても従来のものと同等程度以上の評価を得られるものである。
本発明の乳酸菌は、発酵乳製品又は未殺菌乳等から常法にしたがって分離した菌株等の中から、以下に説明する方法にしたがって所望の活性を有するものを選択することにより得ることができる。
1.マウス脾臓細胞刺激試験(IFN‐γ測定)
C57BL/6マウスから脾臓を無菌的に取り出し、10%(V/V)熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)を加えたRPMI‐1640培地中で脾臓細胞懸濁液を調製する。ナイロンフィルターでろ過したろ液を1,500rpm(回転/分)、4℃、5分間の遠心分離に供し、脾臓細胞のペレットを回収する。このペレットを0.144M塩化ナトリウム‐0.017Mトリス塩酸緩衝液(pH7.65)に再懸濁し、37℃で2.5分間、5%CO下でインキュベートして赤血球を溶血させ、最終的に実験に用いる脾臓細胞(4×10個/mL)を調製する。
上記で得た脾臓細胞(5×10個)を、最終濃度5〜0.625μg/mLの乳酸菌と最終容量250μlで37℃、5%CO下で48時間共培養する。
培養後、上清中のIFN‐γをELISA法によって検出し、その濃度を決定する。乳酸菌の代替にリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.4)と共培養した脾臓細胞をコントロールとする。
2.マウス脾臓細胞刺激試験(IFN‐γ及びIL‐4の測定)
BALB/cマウスから脾臓を無菌的に取り出し、10%(V/V)熱不活性化FCSを加えたRPMI‐1640培地中で脾臓細胞懸濁液を調製する。ナイロンフィルターでろ過したろ液を1,500rpm、4℃、5分間の遠心分離に供し、脾臓細胞のペレットを回収する。このペレットを0.144M塩化ナトリウム‐0.017Mトリス塩酸緩衝液(pH7.65)に再懸濁し、37℃で2.5分間、5%CO下でインキュベートして溶血させ、最終的に実験に用いる脾臓細胞(1×10個/mL)を調製する。
上記で得た脾臓細胞を、まず乳酸菌(最終濃度1μg/mL)と最終容量1mLで37℃、5%CO下で36時間共培養する。次に、脾臓細胞を洗浄して乳酸菌を除き、4×10個/mLに調整して、抗マウスCD3抗体(α‐CD3)(最終濃度0.5μg/mL)を含有する新鮮RPMI‐1640培地中で最終容量250μLで37℃、5%CO下で再び36時間培養する。
培養後、上清中のIFN‐γ及びIL‐4をELISA法によって検出し、その濃度を決定する。乳酸菌の代替にPBS(pH7.4)と共培養した脾臓細胞をコントロールとする。
3.マウス腹腔マクロファージ(PEC)刺激試験(IL‐10及びIL‐12の測定)
C57BL/6マウスに2mLの10%チオグリコレート培地を腹腔内投与し、4日後にマウスの腹腔内をPBSで洗浄することによりPECを回収する。細胞をRPMI‐1640培地で洗浄した後、4×10個/mLに調整する。このPEC(5×10個)を、5%CO下、37℃で2日間、10%FCSを含有するRPMI‐1640培地中で最終濃度1〜1000μg/mLの乳酸菌と最終容量250μlで共培養する。
培養後、上清中のIL‐10及びIL‐12をELISA法によって検出し、その濃度を決定する。乳酸菌の代替にPBS(pH7.4)と共培養したPECをコントロールとする。
なお、マクロファージはIL‐12の最も効率的な産生細胞のひとつであり、IL‐12はNK細胞やT細胞に作用して、IFN‐γの産生を誘導することが知られている。これによってTh1が活性化され、Th1/Th2バランスの不均衡が是正されると考えられている。
4.乳酸菌による骨髄由来樹状細胞(BMDC)成熟化に対する影響の検討
BALB/cマウス大腿から骨髄細胞(5×10個)を得、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF;Granulocyte Macrophage colony stimulating factor)(最終濃度30ng/mL)、インターロイキン3(IL‐3)(最終濃度30ng/mL)及び乳酸菌(0〜20μg/mL)の存在下で、最終容量1mLのRPMI‐1640中で、5%CO下、37℃で培養する。培養開始2.5日後に新鮮な培地(サイトカイン及び乳酸菌を新たに添加)に交換し、さらに2日間培養後(培養開始4.5日後)、接着性細胞(BMDC;Bone marrow-derived dendritic cells)を得る。
得られたBMDCを最終濃度120μg/mLのマイトマイシンC(MMC;Mitomycin C)を含むRPMI‐1640培地中で、37℃、5%CO下で30分間インキュベートし、細胞増殖を停止させる。MMCを除去した後、C57BL/6マウスから調製した脾臓細胞(5×10個)と共に37℃、5%CO下で4日間培養することにより混合リンパ球反応(MLR;mixed lymphocytes reaction)を行う。
細胞傷害性を、クロム遊離試験法によって測定する。上記で得たMLR後の細胞をエフェクター細胞とし、[51Cr]を取り込ませたP815細胞(DBA/2マウス由来原発腫瘍)をターゲット細胞として、エフェクター細胞:ターゲット細胞の数の比率(E/T比)が80:1、40:1、20:1となるように混合し、37℃、5%CO下で4時間でインキュベートする。陰性コントロールとしては、MBL‐2細胞(C57BL/6マウス由来リンパ腫)を用いて同様の実験を行なう。培養後の上清を回収し、液体シンチレーションカウンターにて、[51Cr]より放射されるγ線を測定する。ターゲット細胞のみを培地中で培養したものについての測定値を自然に放出される[51Cr]の量(S)、ターゲット細胞に1Nの塩酸を加えたときの測定値を最大放出量(Max)として、細胞傷害性活性(%)を次の式によって算出する:
細胞傷害活性(%)=(エフェクター細胞と共培養したときの[51Cr]の量‐S)/(Max‐S)×100
5.評価方法
上記の各試験の結果に基づいて、本発明の乳酸菌を以下のようにして選択することができる。乳酸菌選択の最も重要な要素は、免疫系の細胞に対してIFNγ産生を誘導する性質の高いことである。したがって、上記2.の方法で測定した場合の乳酸菌刺激したIFN‐γ産生量/コントロールのIFN‐γ産生量の比(乳酸菌刺激したIFN‐γ産生量÷コントロールのIFN‐γ産生量)を算出し、この数値が大きいものを選択する。本発明の目的のためには、望ましい乳酸菌は、上記の比が少なくとも2.0であり、好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。
また、IL‐4は、アレルギー反応を促進する性質があるため、乳酸菌は、免疫系の細胞を刺激しても、IL‐4産生が低く保たれるもの、即ち少なくともIL‐4産生を促進しないもの、好ましくは抑制するものであることが必要である。したがって、上記の方法で測定した場合の乳酸菌刺激したIL‐4産生量/コントロールのIL‐4産生量の比(乳酸菌刺激したIL‐4産生量÷コントロールのIL‐4産生量)を算出し、この数値が小さいものを選択する。本発明の目的のためには、望ましい乳酸菌は、上記の比が2.0以下であり、好ましくは1.6以下であり、さらに好ましくは1.4以下である。
そして、上記の方法で測定した場合のIFN‐γ産生量/IL‐4産生量の比(IFN‐γ産生量÷IL‐4産生量)を算出し、この数値が大きいものが好ましい。本発明の目的のためには、望ましい乳酸菌は、上記の比が少なくとも20.0であり、好ましくは24.0以上であり、さらに好ましくは30.0以上である。
さらに、免疫バランスを是正するという目的には、他のサイトカインの誘導又は抑制能も重要である。IL‐12は、Th1免疫が活性化されていることを示す指標である。したがって、乳酸菌は、免疫系の細胞に対してIL‐12産生を誘導する性質の高いもの、即ちIL‐12産生を促進するものを選択する。とりわけ低い乳酸菌濃度においてIL‐12産生の誘導能が高いものが望ましい。したがって、本発明の目的のためには、上述の試験において、100μg/mL以下、好ましくは10μg/mL以下の乳酸菌濃度で、少なくとも3ng/mL、好ましくは4ng/mL以上のIL‐12産生を誘導する乳酸菌が望ましい。
また、IL‐10は、マクロファージ活性を負に制御し、炎症性サイトカイン(IL‐12やIL‐6、TNF‐αなど)の産生を抑制することが知られている。したがって、乳酸菌株は、免疫系の細胞を刺激しても、IL‐10産生が低く保たれるもの、即ち少なくともIL‐10産生を促進しないもの、好ましくは抑制するものを選択することが必要である。特に、高い乳酸菌濃度でもIL‐10産生の誘導能が低いものが望ましい。本発明の目的のためには、望ましい乳酸菌は、上述の試験において、1000μg/mLの乳酸菌濃度で、4ng/mL以上、好ましくは3ng/mL以上のIL‐10産生を誘導しない乳酸菌、及び/又は100μg/mLの乳酸菌濃度で、2ng/mL以上、好ましくは1ng/mL以上のIL‐10産生を誘導しない乳酸菌が望ましい。
そして、上記の方法で測定した場合のIL‐12産生量/IL‐10産生量の比(IL‐12産生量÷IL‐10産生量)を算出し、この数値が大きいものが好ましい。なお、IL‐10産生量が検出限界に満たない場合、便宜上、上記の比の計算はIL‐10産生量を「1」として算出する。本発明の目的のためには、望ましい乳酸菌は、上記の比が少なくとも4.0であり、好ましくは6.0以上であり、さらに好ましくは8.0以上である。
以上の評価基準にしたがって、総合的に、IFN‐γ産生量が高く、IL‐4産生量が低く、IFN‐γ産生量/IL‐4産生量の比が高く、IL‐12産生量が高く、IL‐10産生量が低く、IL‐12産生量/IL‐10産生量の比が高いものを選択する。
また、本発明の目的のためには、上述の細胞傷害性試験において、細胞特異的な高い細胞傷害活性をもたらす乳酸菌が望ましい。本発明の目的のためには、望ましい乳酸菌は、5〜20μg/mLのいずれかの乳酸菌濃度で、E/T比80:1又は40:1で測定した場合、上記の細胞傷害活性が少なくとも10%、好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上である。
このようにして選択された本発明の乳酸菌は、グラム陽性の通性嫌気性中温菌である。そのひとつであるStreptococcus thermophillus OH1(FERM P−21009)の菌学的性質を表1に示す。
Figure 0004459938
このようにして選択した本発明の乳酸菌Streptococcus thermophillus OH1は、日本微生物資源学会(JSCC)において認められた公的保存機関である北海道大学大学院農学研究科応用生命工学専攻菌株保存室(AHU)に「AHU1838」として寄託されており、また、平成18年8月27日付で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。
本発明の乳酸菌は、公知の方法で培養することができる。
培養した乳酸菌は、その菌体(生菌又は死菌のいずれでもよい)又はその加工品(例えば菌体の抽出物、破砕物、画分等)を摂取用に供することもでき、あるいは所望の飲食品にこれらを含有させてもよい。
本発明の飲食品は、本発明の乳酸菌を食品製造業などの技術分野において公知の方法により適宜飲食品中に含有させることにより製造することができる。乳酸菌を含有させる方法としては、例えば、本発明の乳酸菌を凍結乾燥菌体、噴霧乾燥菌体、湿菌体などの形態で、あるいはこれらの各種菌体の破砕物、適当な画分などの形態で、飲食原料に添加して飲食品を製造する方法などが挙げられる。
本発明の飲食品の種類及び形態等について特に制限はない。好ましくは、菓子(例えばタブレット状の菓子、アイスクリーム、ゼリー等)、各種粉末食品、カプセル、飲料、油脂食品などが挙げられる。また、最も好ましくは、本発明の乳酸菌を使って製造された発酵乳製品(例えば発酵乳、乳酸菌飲料など)が挙げられる。
乳製品の製造方法としては、例えば、脱脂粉乳、酵母エキス、L‐システイン塩酸塩、炭酸カルシウム、糖液などの原料に、本発明の乳酸菌をスターターとして使用し、常法に従って発酵させる方法、また、このようにして製造された発酵産物をシロップ液などで希釈して発酵乳飲料を製造する方法などが挙げられる。
1.各種乳酸菌株によるマウス脾臓細胞のサイトカイン産生誘導能への作用の試験
1‐1.菌株
スクリーニングに使用した菌株は、乳業連合参加企業から提供を受けた発酵乳製品製造用の乳酸菌株、市販の乳製品からの分離株、及び独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター(JCM)及び独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)から入手した菌株を、それぞれ単コロニー分離して純度を確かめた後のものであった。これらの供試株を表2に示す。
Figure 0004459938
番号(#)7〜9の菌株は、市販のヨーグルトから単離したものであり、S6、B1、B4は発明者らが任意につけた識別記号である。#7〜9の菌株の16sリボゾームDNA配列を解析したところ、全て同一であり、NCBIデータベース検索を行なったところ、Accession No. NZ_AAGR01000053として登録されている配列と100%一致した。また、#7〜9と同一又は最も近い菌株は、Lactobacillus casei(ATCC334)であることが判明した。
すべての菌株は、N、CO及びH(8:1:1)の嫌気性条件下で37℃で定常生育期まで培養した。Lactobacillus delrueckii subsp. bulgaricusLactobacillus paracasei subsp. caseiLactobacillus paracasei subsp. paracaseiLactobacillus plantarumLactobacillus acidophilus及びLactobacillus gasseriは、de Man, Rogosa, and Shape(MRS)培地(Becton, Dickinson Co, Sparks, Md, USA)中で培養した。Streptcoccus thermophillusの各株は、M17培地(Becton, Dickinson Co, Sparks, Md, USA)中で培養した。また、Bifidobacterium breveは、Gifu Anaerobic Medium(GAM)培地(Nissui Pharmaceutical, Tokyo, Japan)中で培養した。これらの培養物は、3,000×g、10分、4℃の遠心分離によって回収し、氷冷した滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)で3回洗浄した。細菌は、105℃、5分間の熱処理によって殺菌し、凍結乾燥して−80℃に保存した。使用時、10mg/mLの濃度でPBSに懸濁して実験に用いた。
1‐2.マウス脾臓由来リンパ球の調製
使用したC57BL/6マウス及びBALB/cマウス(日本チャールスリバー、横浜)は、いずれも5〜8週齢の雌で、SPF環境下で飼育維持された。
マウスから脾臓を無菌処置により摘出し、10%(V/V)となるように熱不活化ウシ胎児血清(FCS)を加えたRPMI‐1640培地(各最終濃度180U/mLペニシリン、0.09mg/mLストレプトマイシン、2.16mg/mLHEPES、0.1mg/mLピルビン酸ナトリウムを含む;以下、「調製したRPMI‐1640培地」という)中で、ピンセットを用いて細胞単位になるまでほぐして、細胞懸濁液を調製した。得られた脾臓細胞懸濁液は、ナイロンメッシュフィルターを通過させることにより、細胞塊や脂肪組織を取り除いた。濾液を遠心分離(1,500回転/分、4℃、5分間)に供し、細胞ペレットを得た。このペレットに約2mLの0.144M塩化ナトリウム、0.017Mトリス‐塩酸緩衝液(pH7.65)を加え、再懸濁し、37℃、5%CO下で2.5分間インキュベートし、赤血球を溶血させた。遠心分離による洗浄の後、調製したRPMI‐1640培地に再懸濁し、トリパンブルー染色法による生細胞数の決定の後で、4×10個/mLとなるようにマウス脾臓細胞由来リンパ球を調整した。
1-3.乳酸菌の調製
凍結乾燥乳酸菌粉末はPBSで10mg/mLの濃度に懸濁し、105℃、5分間の熱処理による滅菌処理を行った。共培養時には、これを、調製したRPMI‐1640培地で使用する濃度にまで希釈して用いた。
1-4.乳酸菌によるマウス脾臓細胞のIFN‐γ産生能への影響
マウス脾臓細胞と各種乳酸菌とを共培養し、産生されたIFN‐γを定量することで、それぞれの乳酸菌の免疫賦活化能の比較を行った。
C57BL/6マウスから調製した脾臓細胞(5×10個)を、乳酸菌の最終濃度が5、2.5、1.25、0.625μg/mLとなるように共培養した。すべての試料は、最終容量が250μlとなるように、96ウェル平底マイクロタイタープレート中で、37℃、5%CO雰囲気下で48時間培養した。培養後、上清を回収し、ELISA法によってIFN‐γ濃度の決定を行った。ELISAは「OptEIAマウスIFN‐γ」(商品名)キット(BD Biosciences Pharmingen, California, USA;日本ベクトン・ディッキンソン)を用いて行なった。
なお、マウス脾臓細胞に対する細胞毒性については、トリチウム[H]で放射ラベルしたチミジンの取り込み量をシンチレーションカウンターで定量することにより検討した。用いた全ての乳酸菌において、取り込まれた[H]チミジンの量は十分な濃度であったため、使用した濃度における乳酸菌の細胞毒性は認められないと判断した。従って、INF‐γの産生における差異は、細胞毒性によるものではなく、乳酸菌株の刺激能の違いによるものであることが示された。
結果を、図1及び表3に示す。なお、以下、表において「N.D.」は検出限界未満であったことを表す。
Figure 0004459938
Lactobacillus gasseri JCM 8787(#3)を除くほとんどの乳酸菌株は、マウス脾臓細胞によるIFN‐γ産生を誘導した。一方、IFN‐γは、陰性対照試料コントロール(「Control」;乳酸菌の代わりにPBSを添加したもの)から得られた培養上清中ではほとんど検出されず、観察されたマウス脾臓細胞によるIFN‐γ産生が乳酸菌での刺激によるものであることが示された。
また、乳酸菌株によって刺激能が全く異なることが示され、IFN‐γ産生誘導能の高い株と低い株とでは、誘導能に10倍以上の差があることが判った。
1‐5.マウス脾臓細胞に対する乳酸菌前処理によるサイトカイン産生に対する影響の検討
上記の結果においてIFN‐γ産生誘導能が高かった乳酸菌株(#8、12、14、18、22、27、32、37、38)及び全く誘導能を示さなかった乳酸菌株(#3)を用いて、前培養としてマウス脾臓細胞と共培養を行ない、培養後に洗浄によって乳酸菌を排除した状態で、抗マウスCD3抗体(α‐CD3)で刺激を行なって産生されるサイトカインについて、比較検討を行った。
BALB/cマウスから調製した脾臓細胞(2×10個)を最終濃度1μg/mLの各種乳酸菌存在下で前培養した。前半の培養は、最終容量が1mLとなるように24ウェル平底プレート中で、37℃、5%CO雰囲気下で36時間培養した。次に、乳酸菌を除くために、培養した細胞を調製したRPMI‐1640培地で3回洗浄後、セルカウントを経て、4×10個/mLに調整した。
調整した細胞は、α‐CD3(最終濃度0.5μg/mL)存在下で、本培養を行った。後半の培養は、最終容量が250μlとなるように96ウェル平底マイクロタイタープレート中で、37℃、5%CO雰囲気下で36時間培養した。培養後、上清を回収し、ELISA法によってIFN‐γ及びIL‐4濃度の決定を行った。ELISAは「OptEIAマウスIFN‐γ」(商品名)キット及び「OptEIAマウスIL‐4」(商品名)キット(BD Biosciences Pharmingen, California, USA;日本ベクトン・ディッキンソン)を用いて行なった。
結果を、図2A及びB、並びに表4に示す。L. gasseri JCM 8787(#3)、L. paracaseisubsp. tolerans JCM 1173(#14)及びL. casei subsp. casei 027 (R‐12)(#32)は、IFN‐γ及びIL‐4の産生がいずれも低かった。他方、L. casei(#8)及びS. thermophillus OH1(#22)は、高いIFN‐γ産生を示し、かつIL‐4産生が比較的低い乳酸菌株であることが示された。
Figure 0004459938
表4には、測定値に加えて、IFN‐γ産生量(pg/mL)とIL‐4産生量(pg/mL)との比(IFN‐γ産生量÷IL‐4産生量)を示す。本発明の目的からは、IFN‐γ産生量が多く、IL‐4産生量が少ないもの、そして上記の比が大きいものが好ましい。この点に関して、試験した菌株のうち、#8、#14、#18、#22、#38が特に好ましい結果を示していた。
総合的に、この試験の結果、#8及び#22が特に好ましい菌株として選択された。
2.乳酸菌による腹腔内細胞に対するIL‐12及びIL‐10産生誘導能の測定
2‐1.マウス腹腔マクロファージ(PEC)の調製
C57BL/6マウスに2mLの10%チオグリコレート培地を腹腔内投与し、4日後にPBSを用いてマウス腹腔内よりPECを回収した。集めたPECを、上記の調製したRPMI‐1640培地で2回洗浄し、4×10個/mLとなるように調整した。
調整したPEC(5×10個)を、乳酸菌の最終濃度が1000、100、10、1μg/mLとなるように共培養した。乳酸菌としては、上記1‐3の試験においてIFN‐γ産生誘導能が高かったと選択された乳酸菌株(#8、12、14、18、22、27、32、38)といくつかの他の菌株(#5、10、16、23、24、28、39、40)、及び全く誘導能を示さなかった乳酸菌株(#3)を用いた。すべての試料は、最終容量が250μlとなるように96ウェル平底マイクロタイタープレート中で、37℃、5%CO雰囲気下で48時間培養を行った。培養後、上清を回収し、ELISA法によってIL‐12及びIL‐10濃度の決定を行った。ELISAには「OptEIAマウスIL‐12p70」(商品名)キット及び「OptEIAマウスIL‐4」(商品名)キット(BD Biosciences Pharmingen, California, USA;日本ベクトンディッキンソン)を用いた。
結果を、図3A及び3B並びに表5及び表6に示す。IL‐12の産生誘導能はS. thermophillus OH1(#22)、S. thermophillus OJT101(#24)及びL. paracasei subsp. paracasei BZN2.12.4A(1HB)(#38)の乳酸菌で高かった。また、これら乳酸菌株は、PECからのIL‐10の産生を抑制した。これに対し、S. thermophillus 21072(#12)、L. delbrueckii subsp. bulgaricus NBRC13953(#18)及びL. delbrueckii subsp. bulgaricus JCM 1002(#27)は、PECからのIL‐10産生を強く増強し、IL‐12の産生を抑制した。
Figure 0004459938
Figure 0004459938
これらの結果から、S. thermophillus OH1(#22)及びL. paracasei subsp. paracasei BZN2.12.4A(1HB)(#38)は高いIL‐12産生誘導能を有し、かつIL‐10の産生誘導能が低く抑えられた乳酸菌株であることが確認できた。これら乳酸菌株は、Th2優位なアレルギー状態から、Th1免疫を賦活化し、アレルギーの症状を緩和することができる乳酸菌として有力な株であることが示された。
3.乳酸菌の骨髄由来樹状細胞成熟化能に関する試験
BALB/cマウスの骨髄由来樹状細胞成熟化に対する各種乳酸菌の影響を、C57BL/6マウス由来脾臓細胞との混合リンパ球反応(MLR)及び細胞傷害性試験を行なって調べた。また、MLR前の樹状細胞についても共刺激分子の発現をフローサイトメトリー(FACS)解析によって調べた。
本試験に用いた乳酸菌は、上述の試験で優れていた株S. thermophillus OH1(#22)に加えて、市販のヨーグルトからの分離株(L. casei(#8))であった。
3‐1.骨髄由来樹状細胞(BMDC)の調製
BALB/cマウスより無菌的に摘出した大腿骨より調製した骨髄細胞(5×10個)を、IL‐3(最終濃度30ng/mL)及びGM‐CSF(最終濃度30ng/mL)の樹状細胞成熟化サイトカイン条件で、乳酸菌を最終濃度が0、5、10、20μg/mLとなるように添加して培養した。培養開始2.5日後に、穏やかにプレートを揺らして非接着細胞を浮遊させてから除去し、新鮮な培地に交換後、新たにサイトカインと乳酸菌を添加した。さらに2日間培養後(培養開始4.5日後)、トリプシンで接着細胞のみを剥がし、骨髄由来樹状細胞(BMDC)を得た。すべての試料は、最終容量が1mLとなるように12ウェル平底プレート中で、37℃、5%CO雰囲気下で培養を行なった。
3‐2.細胞傷害性の測定
得られたBMDCをDNA複製阻害剤であるマイトマイシンC(MMC)(最終濃度120μg/mL)を加えたRPMI‐1640培地中で、37℃、5%CO雰囲気下で30分間インキュベートすることで、細胞増殖を停止させた。MMC処理したBMDC(2×10個)はRPMI‐1640で4回洗浄することで、完全にMMCを除去し、C57BL/6マウスから調製した脾臓細胞(5×10個)と混合リンパ球反応(MLR)を行った。MLRは5mLPPラウンドチューブ(ファルコン社)中で、37℃、5%CO雰囲気下で4日間培養することで行った。
細胞傷害性活性(エフェクター細胞がターゲット細胞を殺傷する活性)の測定は、クロム遊離試験法によって行った。予め1時間インキュベートして[51Cr]を取り込ませたP815細胞(DBA/2マウス由来原発腫瘍)及びMBL‐2細胞(C57BL/6マウス由来リンパ腫)をターゲット細胞とし、MLR後の細胞をエフェクター細胞として試験を行った。エフェクター細胞とターゲット細胞の数の比率が80:1、40:1、20:1となるように混合し、37℃、5%CO雰囲気下で4時間でインキュベートした。培養後の上清を回収し、液体シンチレーションカウンターにて、殺傷されたターゲット細胞から培地中に放出された放射線物質[51Cr]より放射されるγ線を測定した。このとき、自然に放出される[51Cr]の量(S)はターゲット細胞のみを培地中で培養したものについての測定値とし、最大放出量(Max)はターゲット細胞に1規定の塩酸を加えたときの測定値を用いた。これら及び各試料についての測定値に基づいて上述の計算式によって細胞傷害活性(%)を算出した。
結果を図4及び表7に示す。
Figure 0004459938
P815細胞はMHC(主要組織適合性遺伝子複合体)ハプロタイプがH‐2であるのに対して、MBL‐2細胞はH‐2となっている。BMDCはBALB/cマウス(H‐2のMHCハプロタイプを持つ)から調製したので、P815細胞に対する殺傷能力が高い方がよく、MBL‐2細胞に対する殺傷能力はほとんどないのであれば細胞特異的が高いといえる。
#22は、20μg/mLの濃度で、P815細胞に対する最も高い細胞傷害性活性が誘導された。一方、陰性コントロールであるMBL‐2細胞に対する細胞傷害活性は全く検出されず、H‐2をMHCハプロタイプに持つP815細胞特異的な細胞傷害性活性であることが確認された。このことから、#22の添加によって未成熟なマウスリンパ球を活性化できるBMDCが誘導できたことが示された。
一方、市販ヨーグルト分離乳酸菌株(#8)は、どの濃度の添加においても、コントロールと有意な差が観察されず、#22は高い樹状細胞成熟化能を有することが確認できた。
3‐3.CD40分子及びCD86分子の発現解析
上記で調製したMLR前のBMDCについて、T細胞との共刺激分子であるCD40分子及びCD86(B7.2)分子の発現を、フローサイトメトリー解析により評価した。コントロールにはPBSを用いた。
得られたBMDC(2×10個)を、FITC標識した抗マウスCD11c抗体(50倍希釈、クローン名:HL‐3、カタログ番号553802、日本BD)とPE標識された抗マウスCD40抗体(35倍希釈、クローン名:3‐23、カタログ番号553790、日本BD)もしくはPE標識された抗マウスCD86抗体(35倍希釈、クローン名:GL‐1、カタログ番号553691、日本BD)と共に、常法に従って、4℃、10分間インキュベートした。CD11cは樹状細胞のマーカー分子である。細胞を洗浄後、CD11c陽性細胞中のCD40及びCD86陽性細胞を、フローサイトメーター「FACScalibur」(登録商標、日本BD)を用いて測定し、解析ソフトウェア「CellQuest」(商品名、日本BD)を用いてヒストグラムデータを作製した。
結果を図5に示す。CD40及びCD86分子は、それぞれCD40L、CD28分子をリガンドとする共刺激分子であり、発現強度が高い方がよりT細胞に対する活性化能力が高い。市販ヨーグルト分離乳酸菌株(#8)は、どの濃度の添加においても、CD40分子及びCD80分子の発現増強を示さなかったが、#22は両分子の発現を増強し、特にCD86分子に対して極めて高い発現増強を示した。
樹状細胞上にあるCD86分子(別名B7.2)は、T細胞受容体(TCR)とMHCがペプチドを介してシグナルを伝達する際に、T細胞上のCD28分子と結合して第2のシグナルを伝達することで、T細胞を活性することができる共刺激分子の一つである。このCD86分子の発現が増強したことで、このBMDCは効率良くT細胞を活性化することが可能となる。これらの結果は#22が樹状細胞の成熟化において極めて効果の高い乳酸菌株であることを示している。
5.本発明の乳酸菌を用いた飲食品の製造例
5‐1.ヨーグルトの製造
ヨーグルト発酵のスターターとして、上記で得た#22の乳酸菌、即ちSteptococcus thermophillus OH1(AHU1838)、及び標準的な菌として種の基準株であるLactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus JCM1002を用いた。
スキムミルクを126g/Lで水に溶かし、パスツーリゼーション(90℃、15分間)を行なった。使用株は、−80℃で保存しており、使用時に18時間培養した。S. thermophillusはM17培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)で、L. delbrueckii は、MRS培地(OXOID社)で、それぞれ増殖させた。次に各株を新鮮培地に植え継ぎ、対数増殖後期まで(37℃、18時間)培養し、遠心分離で菌体を集め、生理的食塩水で洗浄した後、同溶液に懸濁した。
ヨーグルト発酵を始めるために、各株を次の濃度で添加した:S. thermophillus は、2.5×106cfu/mL、L. delbrueckiiは、5.0×10 cfu/mL。発酵は、43℃で行なった。約4時間半でpH4.5付近となったので、サンプルを冷やして発酵を止めた。その後は、約5℃で保存して、評価した。
醗酵によって製造されたヨーグルトは、ソフトでなめらかなカードを形成し、すがすがしい香りと柔らかな酸味を呈して、優良なヨーグルトを製造することができた。市販品ヨーグルトと比較しても、同等又はそれ以上の性状、味、香りを有していた。
2.醗酵乳飲料の製造
スターターとして、上記で得た#22の乳酸菌(Steptococcus thermophillus OH1(AHU1838))を用いた。−80°Cで保存していた使用株を、使用時にM17培地で18時間培養し、増殖させた。次にこの株を新鮮培地に植え継ぎ、対数増殖後期まで(37℃、18時間)培養し、遠心分離で菌体を集め、生理的食塩水で洗浄した後、同溶液に懸濁した。
発酵乳の発酵を始めるのに、上記の菌体を、2.5×106cfu/mL濃度で生ミルクに添加した。発酵は、43℃で行い、約5時間でpH5.0付近となったので、サンプルを冷やして発酵を止めた。その後は、約5℃で保存して、評価した。
できあがった発酵乳は、なめらかな酸味とふくよかな味わいを持つ優良な発酵乳を得た。
図1は、各種乳酸菌刺激によってC57BL/6マウス由来脾臓細胞から産生されたIFN‐γの濃度を表す図である。 図2(パネルA)は、各種乳酸菌刺激による前培養後にα‐CD3刺激によってBALB/c由来脾臓細胞から産生されたIFN‐γの濃度を表す図である。図2(パネルB)は、各種乳酸菌刺激による前培養後にα‐CD3刺激によってBALB/c由来脾臓細胞から産生されたIL‐4の濃度を表す図である。 図3(パネルA)は、各種乳酸菌刺激によりC57BL/6マウス由来腹腔マクロファージから産生されたIL‐12の濃度を表す図である。図3(パネルB)は、各種乳酸菌刺激によりC57BL/6マウス由来腹腔マクロファージから産生されたIL‐10の濃度を表す図である。 図4は、MLR後の細胞傷害活性を表す図である。参照株(#8)(パネルA、C)及び本発明の乳酸菌株(#22)(パネルB、D)でそれぞれ刺激を行った。パネルA及びBは、P815細胞、パネルC及びDは、MBL‐2細胞に対する細胞傷害性である。 図5は、参照株(#8)(パネルA)及び本発明の乳酸菌株(#22)(パネルB)によって誘導されたBMDC(CD11c陽性細胞)におけるCD40分子及びCD80分子の発現ヒストグラムを表す図である。

Claims (3)

  1. 乳酸菌Streptococcus thermophillus OH1(AHU1838)(FERM P−21009)。
  2. 請求項記載の乳酸菌又はその加工品を含む、飲食品。
  3. 免疫バランス正常化あるいはアレルギー予防又は改善用である、請求項記載の飲食品。
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