以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
実施の形態.
図1には、本実施の形態に係る空調システム100の構成が示されている。空調システム100は、空調の対象である空間101内の空気を調和するシステムである。空間101には、空気の状態に影響を受ける人、動植物、食材、機器、設備、その他の物体があり、これらの物体には、空調システム100によって所望の空気環境が提供される。
空調システム100は、図1に示されるように、空調空気を供給する空調装置10と、自機の周辺の環境を計測して計測結果を空調装置10に通知するセンサ31,32と、センサ31,32からの計測結果の通知を中継する中継装置21,22,23と、を有する。以下では、中継装置21,22,23を総称して中継装置20と適宜表記し、センサ31,32を総称してセンサ30と適宜表記する。空調システム100においては、センサ30から送信される種々の形式のデータを、中継装置20が統一された形式に変換して空調装置10に送信する。
空間101は、例えば、オフィスビルディング、店舗、工場、倉庫、病院、学校、他の施設及び住宅に代表される建物内に設けられた部屋である。ただし、空間101は、建物の室内空間に限定されず、車両、船舶及び航空機に代表される乗り物の内部に設けられた空間であってもよいし、地下空間であってもよい。また、空間101は、密閉された空間に限られず、道路に面した店舗に代表されるように、部分的に開放されて外気と通じていてもよい。
空調装置10、中継装置20及びセンサ30はいずれも、無線通信によりデータを送受信する。無線通信は、例えば、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、その他の通信規格に従う。以下では、空調装置10、中継装置20及びセンサ30が、無線LANとしてのアドホックネットワークを形成する例を中心に説明する。
空調装置10は、例えば、空間101に設置される壁掛け型の室内空調機であって、建物外に設置された室外機との間で冷媒を循環させ、この冷媒と空気との間で熱交換を行うことにより空調空気を生成して空間101内の空気を調和する。空調装置10による空調は、センサ30から収集した空間101内の環境の計測結果に基づく。例えば、空調装置10は、センサ30によって検知される室温が予め設定された目標温度に等しくなるように空調空気を生成してもよいし、センサ30によってユーザの在室が検出されたときに稼働し、在室が検出されないときに停止してもよい。
空調装置10は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read-Only Memory)を有し、アプリケーションソフトウェアを実行することで空調を行う。このアプリケーションソフトウェアは、ID(Identifier)としてセンサ31,32に異なる識別情報を割り当てて管理することで、複数のセンサ30による計測結果を活用する。例えば、空調装置10は、異なる温度の計測結果を示す複数のデータを取得したときに、これらのデータに含まれるセンサ30の識別情報を確認して、センサ31の周辺温度が変化したのか、又はセンサ31,32の位置で異なる温度が分布しているのかを判別する。
空調装置10は、センサ30に割り当てられた識別情報と、中継装置20がデータに施すべき変換のルールと、を中継装置20に通知する。中継装置20からは、空調装置10が指定したルールに従って、識別情報を含む形式に変換されたデータが送信される。
なお、空調装置10は、住宅用のRAC(Room Air Conditioner)であってもよいし、業務用のPAC(Package Air Conditioner)であってもよい。また、空調装置10は、壁掛け型に限定されず、天井埋込型であってもよい。さらに、空調装置10は、室内機に限定されない。例えば、空調装置10は、中継装置20と通信する室外機と、空間101に空調空気を送風する室内機と、を含んでもよい。また、空調装置10は、冷媒回路を利用した冷暖房装置に限定されない。例えば、空調装置10は、空間101内の空気流を生成する装置、空間101内の空気と外気とを交換する換気装置、湿度を調整する加湿機若しくは除湿機、空気中の塵芥を除去する空気清浄機、又は、ガス燃焼若しくは電気により熱を生成するヒーターであってもよい。空調装置10は、センサ30の計測結果に基づいて空気を調和する装置であればよい。
センサ30は、空間101内に配置される計測装置である。センサ30には、空調システム100に組み入れるための情報が予め設定されることなく、空調システム100の管理者によって入手されたセンサ30が単に設置される。そして、センサ30は、温度及び湿度を含む空気の状態、その他の環境に関する値を繰り返し計測して、計測結果を示すデータをブロードキャストする。すなわち、センサ30は、計測結果を含むデータを、宛先を指定することなく無線で周辺の機器に送信する。詳細には、センサ30は、ブロードキャスト用のIP(Internet Protocol)アドレスをヘッダ内の宛先アドレスとして含むパケットを送信する。このパケットは、さらにブロードキャスト用のMAC(Media Access Control)アドレスをヘッダ内の宛先アドレスとして含むフレームのペイロードに格納されて送信される。ただし、センサ30から送信されるデータには、空調装置10のアプリケーションソフトウェアにおいてセンサ30に割り当てられた識別情報が含まれない。以下では、センサ30から送信されるデータをセンサデータと適宜表記する。
センサ30によって計測される環境の値は、例えば、温度、湿度、人の在又は不在に対応する値、二酸化炭素濃度、空気中の塵芥の多さである。人の在又は不在を検出するセンサ30は、例えば、赤外線センサ、超音波センサ、在室時に使用される照明を検出するための照度センサである。空気中の塵芥は、例えば、ほこり、花粉、ハウスダスト、その他の微粒子である。センサ30から通知される計測結果の種類及びデータの形式は、センサ30の機種或いはメーカーによって異なる。このデータの形式の詳細については、後述する。
中継装置20は、センサ30から空調装置10へ計測結果の伝送を中継する装置である。中継装置20は、通常は、空調装置10と同じメーカーによって製造される。中継装置20は、そのハードウェア構成として、図2に示されるように、プロセッサ41と、主記憶部42と、補助記憶部43と、入力部44と、出力部45と、通信部46と、を有する。主記憶部42、補助記憶部43、入力部44、出力部45及び通信部46はいずれも、内部バス47を介してプロセッサ41に接続される。
プロセッサ41は、CPU又はMPUを含む。プロセッサ41は、補助記憶部43に記憶されるプログラムP1を実行することにより、中継装置20の種々の機能を実現して、後述の処理を実行する。
主記憶部42は、RAMを含む。主記憶部42には、補助記憶部43からプログラムP1がロードされる。そして、主記憶部42は、プロセッサ41の作業領域として用いられる。
補助記憶部43は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)に代表される不揮発性メモリを含む。補助記憶部43は、プログラムP1の他に、プロセッサ41の処理に用いられる種々のデータを記憶する。補助記憶部43は、プロセッサ41の指示に従って、プロセッサ41によって利用されるデータをプロセッサ41に供給し、プロセッサ41から供給されたデータを記憶する。
入力部44は、入力キー及びスイッチに代表される入力デバイスを含む。入力部44は、中継装置20のユーザによって入力された情報を取得して、取得した情報をプロセッサ41に通知する。
出力部45は、LCD(Liquid Crystal Display)及びスピーカに代表される出力デバイスを含む。出力部45は、プロセッサ41の指示に従って、種々の情報をユーザに提示する。
通信部46は、外部の装置と通信するためのネットワークインタフェース回路と、無線通信をするためのアンテナと、を含む。通信部46は、外部から無線信号を受信して、この信号により示されるデータをプロセッサ41へ出力する。また、通信部46は、プロセッサ41から出力されたデータを示す無線信号を外部に送信する。
中継装置20は、上述のハードウェア構成の協働により、種々の機能を発揮する。図3には、中継装置20の一例として中継装置22の機能的な構成が示されている。中継装置22は、その機能として、図3に示されるように、空調装置10から初期設定を受け付ける受付部210と、種々のデータを記憶する記憶部220と、センサ30及び他の中継装置20から送信された情報の伝送を中継する中継部230と、を有する。なお、中継装置21,23は、中継装置22と同様の機能を有する。
受付部210は、主としてプロセッサ41と通信部46との協働により実現される。受付部210は、空調装置10から配信されたセンサ30に関するセンサ情報221を受信して、受信したセンサ情報221を記憶部220に格納する。
センサ情報221は、図4に示されるように、センサ30毎に、デバイスアドレスと、識別情報と、計測結果の送信周期と、当該センサ30から送信されたデータに施す変換を規定する変換ルールと、を対応付ける情報である。
デバイスアドレスは、センサ30自体が予め有する固有のアドレスであって、例えばセンサ30のメーカーによって付与されたMACアドレスである。デバイスアドレスは、センサデータに送信元を示すものとして含まれるため、センサデータを送信したセンサ30を判別するために利用される。なお、空調装置10及び中継装置20もデバイスアドレスを有する。
識別情報は、空調装置10のアプリケーションソフトウェアがセンサ30を区別するために使用するIDである。図4では、センサ31,32それぞれの符号に等しいIDが識別情報として示されている。なお、空調装置10及び中継装置20にも、識別情報が割り当てられ、識別情報は、ネットワークを構成するノードである空調装置10、中継装置20及びセンサ30それぞれに割り当てられるユニークな論理アドレスに相当する。ただし、空調装置10及び中継装置20は、自機及び自機以外のノードの識別情報を保持するが、センサ30は、自機の識別情報を保持しない。識別情報は、空調装置10のアプリケーションソフトウェアが自動的に割り当ててもよいし、ユーザによって割り当てられてもよい。
変換ルールは、センサデータから抽出すべき計測結果の種類、計測結果のデータ形式の変更、及び、計測結果に付加すべき情報を規定する。変換ルールに従う変換の詳細については、後述する。受付部210は、中継装置22において、センサ30それぞれについて、2以上のセンサ30を識別するために割り当てられた識別情報と、センサ30自体が有するアドレスと、を対応付けるセンサ情報221を受け付ける受付手段の一例に相当する。
図3に戻り、受付部210は、さらに、空調装置10及び自機に関する情報を空調装置10から受信して、受信した情報によりネットワーク情報222を更新する。詳細には、受付部210は、空調装置10及び中継装置20のそれぞれについて、デバイスアドレス及び識別情報を受信して、空調システム100のネットワークに関するネットワーク情報222を更新する。
ネットワーク情報222は、図5に示されるように、中継装置20それぞれの識別情報と、中継装置20それぞれのデバイスアドレスと、空調装置10の識別情報と、空調装置10のデバイスアドレスと、を示す情報である。
図3に戻り、記憶部220は、主として主記憶部42と補助記憶部43との少なくとも一方によって実現される。記憶部220は、センサ情報221、ネットワーク情報222及び受信したデータの履歴を示す履歴情報223を記憶する。履歴情報223の詳細については、後述する。
中継部230は、データに変換を施す変換モジュール231と、無線通信を実行する無線通信モジュール232と、を有する。無線通信モジュール232は、主として通信部46により実現される。
変換モジュール231は、主としてプロセッサ41により実現される。変換モジュール231は、センサ30及び他の中継装置20から無線通信モジュール232によって受信されたデータを取得する。変換モジュール231は、センサデータを取得すると、記憶部220に記憶されるセンサ情報221及びネットワーク情報222を参照することによりデータの形式を変換して、変換後のデータを無線通信モジュール232に送出して送信させる。また、変換モジュール231は、他の中継装置20から送信されたデータを取得すると、記憶部220に記憶される履歴情報223を更新して、当該データを無線通信モジュール232に転送させる。以下では、中継装置20によってセンサデータから変換されて送信されるデータを、中継データと適宜表記する。なお、センサデータは、空調システム100において、センサ30から送信される第1データの一例に相当し、中継データは、空調システム100において、中継装置20から送信される第2データの一例に相当する。
ここで、中継部230によるデータの中継について、詳細に説明する。中継部230は、センサ30の無線通信によるデータの送信範囲外に空調装置10が位置し、当該データが空調装置10に到達しない場合に、当該データの伝送を中継して空調装置10に到達させる。図1には、空調装置10、中継装置20及びセンサ30の間で通信可能な通信路が破線で示されている。すなわち、空調装置10は、中継装置21,22,23及びセンサ31と通信可能であるが、センサ32との直接の通信はできない。また、センサ31は、空調装置10及び中継装置21,22,23と通信可能であり、センサ32は、中継装置21,22,23と通信可能であるが空調装置10と直接の通信はできない。また、中継装置21,22は互いに通信可能であり、中継装置22,23は互いに通信可能である。
図1の例において、中継装置21,22,23の中継部230は、センサ32から通知された情報を受信して、空調装置10に転送する。なお、センサ32による計測結果が、中継装置21,22,23それぞれを介して空調装置10に重複して伝送されるが、空調装置10は、いずれか一の計測結果を選択して処理すればよい。
また、中継部230は、センサデータを、空調装置10のアプリケーションソフトウェアに適した形式に変換して得る中継データを送信する。詳細には、中継部230は、センサ30から送信されるデータの形式を、センサ情報221に含まれる変換ルールに従って、識別情報を含む形式に変換してからブロードキャストする。すなわち、中継部230は、センサ30による計測結果を含む中継データを、宛先を指定することなく無線で周辺の機器に送信する。より詳細には、中継部230は、ブロードキャスト用のIPアドレスをヘッダ内の宛先アドレスとして含むパケットを送信する。このパケットは、さらにブロードキャスト用のMACアドレスをヘッダ内の宛先アドレスとして含むフレームのペイロードに格納されて送信される。中継部230は、中継装置20において、センサ30から第1データを受信すると、該第1データに含まれるアドレスにセンサ情報221において対応する識別情報を含む第2データを送信する中継手段の一例に相当する。
図1の例において、センサ31と空調装置10は、互いに通信可能な範囲内に位置するが、センサ31から出力されたデータを空調装置10のアプリケーションソフトウェアがそのまま処理することは、通常は困難である。詳細には、センサ31から送信されるデータには、センサ30の識別情報が含まれないため、空調装置10は、いずれのセンサ30から送信された計測結果であるかを判別することができない。中継装置21,22,23の中継部230は、センサ31からのセンサデータを受信して、センサ31の識別情報を含む中継データを生成してから空調装置10に転送する。なお、センサ32による計測結果と同様に、センサ31による計測結果が、複数の中継装置20を介して空調装置10に重複して伝送されるが、空調装置10は、いずれか一の計測結果を選択して処理すればよい。
図6には、センサデータ及び中継データのフォーマットが模式的に示されている。図6に示されるように、センサデータ及び中継データは、空調システムのネットワークにおけるブロードキャストデータであって、共通のフォーマットに従う。
共通のフォーマットは、ヘッダ、ブロードキャストデータの送信元を示す送信元デバイスアドレス、送信元の製造メーカーを示すメーカーID、ペイロード長、ペイロード、及びエラーチェックコードを含む。センサデータのペイロード内のデータ形式は、中継データのペイロード内のデータ形式と異なる。換言すると、センサデータと中継データは、ペイロードを除いて、共通のデータ形式を有する。
センサデータのペイロードには、図6の例においては、パケット長、温度、湿度、電池残量、及びGPS(Global Positioning System)情報を含む計測結果が格納されている。なお、センサ30の製造メーカー或いは機種によってペイロードの内容は異なる。例えば、センサ31が図6に例示されるペイロードを有するのに対して、センサ32のペイロードには、人感センサの検知結果のみが格納されていてもよい。
中継データのペイロードには、センサデータが含む計測結果から、温度及び湿度のみが抽出されて格納される。また、中継データのペイロードには、中継データであるか否かを示す種別情報と、ホップ数を示す中継制御情報と、を含む中継情報が格納される。さらに、中継データのペイロードには、計測結果を得たセンサ30の識別情報であるセンサ識別情報と、計測結果を処理すべき空調装置10の識別情報である空調装置識別情報と、を含む。
センサ識別情報及び空調装置識別情報は、中継データがさらに他の中継装置20によって中継された場合においても変化することなく、新たな中継データに含まれる。ただし、中継データの送信元デバイスアドレスは、当該中継データを生成して送信したノードである中継装置20のデバイスアドレスであって、中継されるたびに変化する。
図1では、複数の中継装置20が互いに通信可能な範囲内にあるため、一の中継装置20によって中継されたデータが、他の中継装置20によってさらに中継され得る。センサ30による計測結果が、単一の中継装置20による中継では空調装置10に到達されない場合には、複数の中継装置20がデータの伝送を中継して計測結果が空調装置10に到達する。中継部230は、センサデータと同様に、他の中継装置20からの中継データを受信すると、当該中継データをブロードキャストする。
なお、多数の中継装置20による中継が不必要に連続してしまい、通信が輻輳することを防ぐために、中継部230は、中継の回数に対応する中継制御情報を中継データに含めて送信するとともに、他の中継装置20から受信した中継データにより示される中継の回数が閾値を超える場合には、中継データを転送することなく当該中継データを破棄して、中継データの送信を中止する。
さらに、中継装置20による中継がループしてしまうことを防ぐために、中継部230は、受信したセンサデータ及び中継データの履歴を示す履歴情報223を更新する。そして、中継部230は、受信したセンサデータ及び中継データと同一の計測結果を示すデータが履歴情報に含まれる場合に、中継データの送信を中止する。
図7には、履歴情報223の一例が模式的に示されている。図7に示されるように、履歴情報223は、計測結果の発信元であるセンサ30毎に、データの受信時刻と、センサデータ又は中継データの送信元の識別情報と、を関連付けるレコードを蓄積した情報である。履歴情報223のレコードは、受信時刻と現在時刻との差が閾値以上になると、削除される。この閾値は、例えば、センサ30それぞれの送信周期の0.5倍の長さの時間である。図7の例においては、センサ31の送信周期が図4に示されるように1分間であることから、センサ31に関するレコードは、30秒間だけ保持されることとなる。
続いて、空調システム100によって実行されるシステム処理について、図8を用いて説明する。図8のシステム処理は、空調装置10、中継装置20及びセンサ30による処理の手順例を模式的に示すものであって、この手順は任意に変更されてもよい。
システム処理では、空調装置10が、センサ情報221及びネットワーク情報222を取得する(ステップS1)。具体的には、空調装置10は、ユーザによって入力されるセンサ30各々のデバイスアドレス、識別情報及び変換ルールと、中継装置20各々のデバイスアドレス及び識別情報と、空調装置10自体の識別情報と、を取得する。ただし、空調装置10は、ユーザによって入力された空調装置10、中継装置20及びセンサ30のデバイスアドレスから自動的に識別情報を生成してもよい。そして、空調装置10は、取得した情報を中継装置20に配信する。
次に、中継装置20が、空調装置10から配信された情報を受け付けて記憶部220に格納する(ステップS2)。これにより、中継装置20の記憶部220には、センサ情報221及びネットワーク情報222が格納されて、計測結果を中継するための準備が整う。ステップS2は、中継装置20により実行される中継方法において、2以上のセンサ30を識別するために割り当てられた識別情報と、センサ30自体が有するアドレスと、をセンサ30それぞれについて対応付けるセンサ情報221を受け付ける受付ステップの一例に相当する。
次に、センサ30が、自機の周辺の環境を計測して、計測結果を示すセンサデータを送信する(ステップS3)。また、中継装置20が、中継処理を実行する(ステップS4)。これにより、空調装置10が処理可能な形式で計測結果を含む中継データが、空調装置10に伝送される。そして、空調装置10が、計測結果に基づく空調を実行する(ステップS5)。その後、ステップS3以降の処理が繰り返される。
続いて、中継装置20によって実行される中継処理について、図9を用いて説明する。中継処理は、中継装置20の電源が投入されることで開始する。
中継処理では、中継装置20は、何らかのデータを受信したか否かを判定する(ステップS21)。具体的には、無線通信モジュール232が、無線LANにおけるブロードキャストデータを受信したか否かを判定する。データを受信していないと判定した場合(ステップS21;No)、中継装置20は、ステップS21の判定を繰り返して、新たなデータの受信まで待機する。
一方、データを受信したと判定した場合(ステップS21;Yes)、中継装置20は、受信したデータに含まれる送信元のデバイスアドレスがセンサ情報221又はネットワーク情報222に登録されているか否かを判定する(ステップS22)。具体的には、中継部230が、受信したデータのうち図6に示される送信元デバイスアドレスが、センサ情報221により示されるいずれかのセンサ30のデバイスアドレス、又はネットワーク情報222により示されるいずれかの中継装置20のデバイスアドレスに一致するか否かを判定する。これにより、受信されたデータが、空調システム100のネットワークを構成するいずれかのノードから送信されたか否かが判定される。
送信元のデバイスアドレスが登録されていないと判定した場合(ステップS22;No)、中継装置20は、受信したデータを破棄して中継データの送信を中止する(ステップS23)。その後、中継装置20は、ステップS21以降の処理を繰り返す。
一方、送信元のデバイスアドレスが登録されていると判定した場合(ステップS22;Yes)、中継装置20は、受信したデータに含まれる計測結果に対応するセンサ30の識別情報が、履歴情報223に登録されているか否かを判定する(ステップS24)。具体的には、ステップS22にてデバイスアドレスがセンサ情報221に登録されていると判定され、受信したデータがセンサデータであると判断したときに、中継部230は、当該デバイスアドレスに対応する識別情報が履歴情報223に登録されているか否かを判定する。また、ステップS22にてデバイスアドレスがネットワーク情報222に登録されていると判定され、受信したデータが中継データであると判断したときに、中継部230は、当該中継データに含まれるセンサ識別情報が、履歴情報223に登録されているか否かを判定する。これにより、過去に同一の計測結果を受信したか否かが判定される。
履歴情報223に登録されていると判定した場合(ステップS24;Yes)、中継装置20は、ステップS23へ処理を移行する。これにより、過去に中継した計測結果と同一の計測結果を重複して中継することが回避される。
履歴情報223に登録されていないと判定した場合(ステップS24;No)、中継装置20は、受信したデータに関するレコードを履歴情報223に追加する(ステップS25)。これにより、履歴情報223が更新される。また、中継装置20は、履歴情報223に追加したレコードを一定時間後に削除するためのタイマーを起動する。一定時間後には、中継処理とは別のプロセスにより、履歴情報223に追加されたレコードが削除される。
次に、中継装置20は、受信したデータが中継データであるか否かを判定する(ステップS26)。具体的には、中継部230が、受信したデータに含まれるメーカーIDが空調装置10のメーカーIDに等しく、かつ、受信したデータが図6に示される種別情報を含むか否かを判定する。空調装置10のメーカーIDは、中継装置20自身のメーカーIDと等しいため、中継部230は、中継装置20自体のメーカーIDを空調機のメーカーIDとして用いることができる。また、種別情報は、特定のビットパターンであって、空調装置10のメーカーにより提供される装置から送信される中継データには、このビットパターンが挿入されるため、メーカーID及び種別情報により中継データであるか否かを判別することができる。なお、中継データであるか否かの判定は、ステップS22と同様に、デバイスアドレスがセンサ情報221に登録されているか或いはネットワーク情報222に登録されているかを判断することにより実行されてもよい。さらに、ステップS26の判定は、これらの例に限定されず、他の手法によりなされてもよい。
受信したデータが中継データであると判定した場合(ステップS26;Yes)、中継装置20は、中継データをさらに中継するための再中継処理を実行する(ステップS27)。
図10には、再中継処理の詳細が示されている。再中継処理では、中継装置20は、中継データの中継制御情報により示されるホップ数が予め定められた範囲外であるか否かを判定する(ステップS271)。中継制御情報は、ホップ数を示す情報であってもよいし、中継可能な回数である残りホップ数を示す情報であってもよい。中継制御情報がホップ数を示す場合には、当該ホップ数が閾値以上であるときに、ステップS271の判定が肯定される。また、中継制御情報が残りホップ数を示す情報である場合には、当該残りホップ数がゼロ以下であるときに、ステップS271の判定が肯定される。
ホップ数が予め定められた範囲外であると判定された場合(ステップS273;Yes)、中継装置20は、受信した中継データを破棄して中継データの送信を中止する(ステップS272)。その後、中継装置20による処理は、再中継処理から図9の中継処理に戻る。
一方、ホップ数が予め定められた範囲外ではないと判定された場合(ステップS271;No)、中継部230は、ホップ数を変更した新たな中継データを生成してブロードキャストで送信する(ステップS273)。具体的には、中継部230は、ホップ数をインクリメントする。ただし、中継情報が残りホップ数を示す場合には、中継部230は、残りホップ数をデクリメントする。その後、中継装置20による処理は、再中継処理から図9の中継処理に戻る。
図9に戻り、再中継処理の終了後に、中継装置20は、ステップS21以降の処理を繰り返す。
ステップS26にて、受信したデータが中継データではないと判定した場合(ステップS26;No)、中継装置20は、受信したデータがセンサデータであると判断して、センサデータを中継データに変換する変換処理を実行する(ステップS28)。ステップS28の変換処理は、中継装置20により実行される中継方法において、センサ30から第1データを受信すると、該第1データに含まれるアドレスにセンサ情報221において対応する識別情報を含む第2データを送信する中継ステップの一例に相当する。
図11には、変換処理の詳細が示されている。変換処理では、中継部230は、センサ情報221及びネットワーク情報222を記憶部220から読み出す(ステップS281)。
次に、中継部230は、センサ情報221に含まれる変換ルールに規定された種別の計測結果を、センサデータから抽出する(ステップS282)。そして、中継部230は、必要に応じて、計測結果を示す情報のデータ形式を変換する(ステップS283)。例えば、中継部230は、変換ルールに従って、整数型、小数点型及び文字列型に代表されるデータ型の変換、暗号化されている情報の復号、その他のデコード処理を実行する。
次に、中継部230は、ホップ数に関する初期値を含む中継情報、受信したセンサデータに含まれる送信元デバイスアドレスにセンサ情報221において対応する識別情報であるセンサ識別情報、及び、ネットワーク情報222に規定される空調装置10の識別情報である空調装置識別情報を付加して、中継データのペイロードを生成する(ステップS284)。中継情報の初期値は、例えば、ホップ数を示すゼロ、又は、予め規定された値の残りホップ数である。そして、中継部230は、ブロードキャストデータのフォーマットに従う新たな中継データを生成して、ブロードキャストで送信する(ステップS285)。その後、中継装置20による処理は、変換処理から図9の中継処理に戻る。
以上、説明したように、中継装置20の中継部230は、センサ30からセンサデータを受信すると、当該センサデータに含まれるデバイスアドレスにセンサ情報221において対応する識別情報を含む中継データを送信する。これにより、空調装置10には、センサ30の識別情報を含む中継データが伝送される。このため、空調装置10は、センサ30の識別情報が付与された計測結果を得ることができる。その結果、空調装置10は、中継装置20を介してセンサ30による計測結果を取得したときに、いずれのセンサ30による計測結果であるかを判別することができる。ひいては、センサ30を利用する空調システム100の利便性を向上させることができる。
なお、空調装置10の空調処理を実行するアプリケーションソフトウェアにより管理される識別情報に代えて、IPアドレスを識別情報として利用することが考えられる。しかしながら、IPアドレスは、動的に変化し得るため、空調システム100において利用する識別情報としては好ましくない。これに対して、デバイスアドレスに対応する識別情報を用いることで、空調システム100の稼働をより安定させることができる。
また、中継装置20が、センサデータに識別情報を付加した中継データを生成する。このため、センサ30は、識別情報を扱う必要がない。これにより、比較的簡素な構成のセンサ30を利用して空調システム100を形成することが容易になる。また、センサ30が、空調装置10及び中継装置20の通信方式に適合するための設定或いは処理を行う必要が無いため、消費電力が小さく長寿命のセンサ30を利用して空調システム100を形成することができる。
また、センサデータは、センサ情報221に含まれる変換ルールに従って中継データに変換された。これにより、センサ30のメーカー或いは機種毎に異なるデータ形式を、空調装置10のアプリケーションソフトウェアが処理可能な形式に統一させてから、空調装置10に伝送することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態では、空調装置10が1つである例について説明したが、空調装置10は、複数であってもよい。また、中継装置20及びセンサ30の数を、任意に変更してもよい。
上記実施の形態に係るセンサ情報221及びネットワーク情報222は、ユーザによって空調装置10に入力されてから中継装置20に配信されたが、これには限定されない。例えば、ユーザは、中継装置20を直接操作してセンサ情報221又はネットワーク情報222を設定し、又は変更してもよい。また、空調装置10及び中継装置20は、センサ情報221又はネットワーク情報222を、インターネット上のサーバから取得してもよい。
上述の実施形態に係る中継装置20の機能は、専用のハードウェアによっても、また、通常のコンピュータシステムによっても実現することができる。
例えば、プログラムP1を、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムP1をコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することができる。
また、プログラムP1をインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するようにしてもよい。
また、インターネット等のネットワークを介してプログラムP1を転送しながら起動実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
さらに、プログラムP1の全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報をコンピュータが通信ネットワークを介して送受信しながらプログラムP1を実行することによっても、上述の処理を達成することができる。
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等してもよい。
また、空調システム100の機能を実現する手段は、ソフトウェアに限られず、その一部又は全部を専用のハードウェアによって実現してもよい。例えば、中継装置20の機能的な構成要素を、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いて構成すれば、中継装置20の省電力化を図ることができる。