JP7355714B2 - 使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法 - Google Patents

使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法 Download PDF

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Description

本開示は、使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法に関する。
使用済みの衛生用品からリサイクルパルプ繊維を回収する検討が行われている。
例えば、特許文献1には、パルプ繊維および高分子吸収材を含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収する方法であって、該方法が、使用済み衛生用品をオゾン水に浸漬して、高分子吸収材を分解する工程、分解した高分子吸収材が溶けたオゾン水を排出して、高分子吸収材が取り除かれた衛生用品の残渣を得る工程、および高分子吸収材が取り除かれた衛生用品の残渣を、消毒薬を含む水溶液中または水中で攪拌することにより、衛生用品の残渣を洗浄するとともに衛生用品の残渣を構成要素に分解する工程を含むことを特徴とする方法が記載されている。
特開2014-217835号公報
使用済み衛生用品から回収されたリサイクルパルプ繊維には、排泄物、高吸水性ポリマー等の残存成分が少ないことが好ましい。
本願発明者が、上記方法により回収されたリサイクルパルプ繊維を分析したところ、上記リサイクルパルプ繊維には、高濃度の窒素含有成分が残存している場合があることが分かった。
従って、本開示は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成することができる、使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法を提供することを目的とする。
本開示者らは、使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法であって、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む上記使用済みの衛生用品から得られた、上記パルプ繊維及び上記高吸水性ポリマーを含む混合物の水分率を70質量%以下に調整する水分率調整ステップ、上記水分率調整ステップを経た上記混合物を、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液で処理し、上記高吸水性ポリマーを酸化分解し、酸化分解された上記高吸水性ポリマーを上記酸化剤含有水溶液に溶解させるとともに上記リサイクルパルプ繊維を形成する酸化処理ステップ、上記リサイクルパルプ繊維を回収するリサイクルパルプ繊維回収ステップ、を含むことを特徴とする方法を見出した。
本開示の、使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成することができる。
図1は、本開示のリサイクルパルプ繊維を製造する方法を説明するための図である。
具体的には、本開示は以下の態様に関する。
[態様1]
使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法であって、
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む上記使用済みの衛生用品から得られた、上記パルプ繊維及び上記高吸水性ポリマーを含む混合物の水分率を70質量%以下に調整する水分率調整ステップ、
上記水分率調整ステップを経た上記混合物を、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液で処理し、上記高吸水性ポリマーを酸化分解し、酸化分解された上記高吸水性ポリマーを上記酸化剤含有水溶液に溶解させるとともに上記リサイクルパルプ繊維を形成する酸化処理ステップ、
上記リサイクルパルプ繊維を回収するリサイクルパルプ繊維回収ステップ、
を含むことを特徴とする、上記方法。
上記方法は、所定の水分率調整ステップと、酸化処理ステップと、リサイクルパルプ繊維回収ステップとを含む。上記水分率調整ステップでは、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む混合物を、所定の水分率に調整する。その結果、パルプ繊維、特にパルプ繊維の内部に含まれる、排泄物等の窒素含有成分の多くがパルプ繊維から除去され、窒素含有成分がパルプ繊維に残存しにくくなる。次に、酸化処理ステップにおいて、酸化剤が、混合物中の高吸水性ポリマーを的確に酸化分解し、酸化分解された高吸水性ポリマーを除去することができる。その結果、上記方法は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成することができる。
なお、上記水分率調整ステップを実施しない場合には、パルプ繊維、特にパルプ繊維の内部に含まれる、排泄物等の窒素含有成分の多くが、パルプ繊維に残存しやすくなる。その結果、次の酸化処理ステップにおいて、酸化剤が、窒素含有成分の酸化と、高吸水性ポリマーの酸化分解とに分散して消費され、高吸水性ポリマーの分解するための酸化剤の量が増える傾向があるともに、窒素含有成分が残存しやすくなる傾向にある。
[態様2]
上記水分率調整ステップにおいて、上記混合物が、上記混合物の乾燥質量1kg当たり、10.0g/Kg以下のTOCを有するように、上記混合物の水分を調整する、態様1に記載の方法。
上記方法では、水分率調整ステップにおいて、混合物が所定のTOCを有するように、混合物の水分を調整する。従って、水分率調整ステップにおいて、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む混合物に含まれる窒素含有成分の量を低減することができる。その結果、上記方法は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成することができる。
[態様3]
上記酸化処理ステップにおいて、上記混合物を、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液中で、当該酸化剤含有水溶液が3.0g/Kg以下のTOCを有するように処理する、態様1又は2に記載の方法。
上記方法では、酸化処理ステップにおいて、酸化剤含有水溶液が所定のTOCを有するように、混合物を処理する。その結果、上記方法は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成することができる。
[態様4]
上記水分率調整ステップの後且つ上記酸化処理ステップの前に、上記混合物を水に分散させる分散ステップをさらに含む、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む混合物は、高吸水性ポリマーの保水性の高さに起因して、混合物の水分率を下げることが難しい傾向がある。従って、混合物の水分率を70質量%以下に調整するためには、混合物に圧縮力を加える場合があり、その場合に、混合物が塊となり、混合物を水に再分散させることが難しくなる、時間がかかる等の問題が生じうる。
上記方法は、水分率調整ステップの後且つ酸化処理ステップの前に、所定の分散ステップをさらに含む。従って、水分率調整ステップを経て塊化した混合物を、各パルプ繊維、高吸水性ポリマー(各粒子)等に分散させやすくなり、次の酸化処理ステップにおいて、高吸水性ポリマーを酸化分解し、そしてパルプ繊維中の窒素含有成分を酸化分解しやすくなる。その結果、上記方法は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成することができる。
[態様5]
上記酸化処理ステップの後且つ上記リサイクルパルプ繊維回収ステップの前に、上記リサイクルパルプ繊維を、洗浄水を用いて洗浄するリサイクルパルプ繊維洗浄ステップをさらに含む、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
上記方法は、酸化処理ステップの後且つリサイクルパルプ繊維回収ステップの前に、所定のリサイクルパルプ繊維洗浄ステップをさらに含む。従って、リサイクルパルプ繊維に残存する窒素含有成分の量をさらに低減することができる。その結果、上記方法は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成することができる。
[態様6]
上記リサイクルパルプ繊維洗浄ステップ後の洗浄水が、1.5g/Kg以下のTOCを有する、態様5に記載の方法。
上記方法では、リサイクルパルプ繊維洗浄ステップ後の洗浄水が、所定のTOCを有する。その結果、上記方法は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を的確に形成することができる。
[態様7]
上記リサイクルパルプ繊維回収ステップの後に、上記リサイクルパルプ繊維を60質量%以下の水分率を有するように脱水するリサイクルパルプ繊維脱水ステップをさらに含む、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
上記方法では、リサイクルパルプ繊維回収ステップの後、所定のリサイクルパルプ繊維脱水ステップをさらに含む。従って、リサイクルパルプ繊維を乾燥して保存する場合に、乾燥性に優れ、そしてリサイクルパルプ繊維を湿式で保存する場合に、その運搬性に優れる。
[態様8]
上記水分率調整ステップの前に、脱水剤を用いて、上記高吸水性ポリマーを脱水させる高吸水性ポリマー脱水ステップをさらに含む、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
上記方法は、所定の高吸水性ポリマー脱水ステップをさらに含む。従って、高吸水性ポリマー脱水ステップにおいて、混合物中の高吸水性ポリマーに含まれる窒素含有成分の量を低減することができるとともに、次の水分率調整ステップにおいて、窒素含有成分の多くがパルプ繊維から除去され、窒素含有成分がパルプ繊維に残存しにくくなる。その結果、上記方法は、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成することができる。
本開示の使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法(以下、単に「製造方法」と称する場合がある)について、以下、詳細に説明する。
本開示の製造方法は、図1に示されるように、以下のステップを含む。
・パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む上記使用済みの衛生用品から得られた、上記パルプ繊維及び上記高吸水性ポリマーを含む混合物の水分率を70質量%以下に調整する水分率調整ステップ(以下、単に「水分率調整ステップS11」と称する場合がある)
・上記水分率調整ステップを経た上記混合物を、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液で処理し、上記高吸水性ポリマーを酸化分解し、酸化分解された上記高吸水性ポリマーを上記酸化剤含有水溶液に溶解させるとともに上記リサイクルパルプ繊維を形成する酸化処理ステップ(以下、単に「酸化処理ステップS12」と称する場合がある)
・上記リサイクルパルプ繊維を回収するリサイクルパルプ繊維回収ステップ(以下、「リサイクルパルプ繊維回収ステップS13」と称する場合がある)
本開示の製造方法は、図1に示されるように、任意ステップとして、以下のステップをさらに含むことができる。
・上記水分率調整ステップの前の、脱水剤を用いて、上記高吸水性ポリマーを脱水させる高吸水性ポリマー脱水ステップ(以下、単に「高吸水性ポリマー脱水ステップS101」と称する場合がある)
・上記水分率調整ステップの後且つ上記酸化処理ステップの前の、上記混合物を水に分散させる分散ステップ(以下、単に「分散ステップS102」と称する場合がある)
・上記酸化処理ステップの後且つ上記リサイクルパルプ繊維回収ステップの前の、上記リサイクルパルプ繊維を、洗浄水を用いて洗浄するリサイクルパルプ繊維洗浄ステップ(以下、単に「リサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103」と称する場合がある)
・上記リサイクルパルプ繊維回収ステップの後の、上記リサイクルパルプ繊維を60質量%以下の水分率を有するように脱水するリサイクルパルプ繊維脱水ステップ(以下、単に「リサイクルパルプ繊維脱水ステップS104」と称する場合がある)
<水分率調整ステップS11>
水分率調整ステップS11では、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済みの衛生用品から得られた、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む混合物の水分率を70質量%以下に調整する。
上記衛生用品としては、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含むものであれば、特に制限されず、例えば、紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシート等が挙げられる。上記使用済みの衛生用品は、排泄物を吸収した状態の衛生用品を意味する。
上記パルプ繊維としては、衛生用品として使用可能なものであれば特に制限されず、例えば、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、架橋パルプ、非木材パルプ等が挙げられる。
上記高吸水性ポリマーとしては、上記衛生用品の技術分野で公知のものが挙げられ、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高吸水性ポリマーが挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸水性ポリマーとしては、例えば、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられる。合成ポリマー系の高吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸水性ポリマー(SAP,Super Absorbent Polymer)等が挙げられる。
上記使用済の衛生用品から、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む混合物を得る方法としては、特に制限されず、例えば、使用済みの衛生用品を切断し、吸収体から、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む混合物を取得することができる。
上記混合物では、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーが、液状の排泄物を吸収し、保水しているとともに、高吸水性ポリマーが、保水している液状の排泄物を離水させにくいことから、水分率を70質量%以下に調整するためには、上記混合物に力、例えば、圧縮力(例えば、圧力、遠心力)を加えることが好ましい。例えば、上記混合物を、スクリュープレス脱水機、遠心分離機等を用いて圧縮することにより、上記混合物を脱水し、上述の水分率を達成することができる。
上記スクリュープレス脱水機としては、例えば、川口精機株式会社製のスクリュープレス脱水機が挙げられる。上記スクリュープレス脱水機の蓋体に加えられる圧力は、上記混合物の水分率を所定の範囲に調整できる圧力であれば特に制限されないが、高吸水性ポリマーが保水性に優れることから、高い圧力を加えることが好ましい。
上記圧力は、好ましくは1.0MPa超、より好ましくは1.1MPa超、そしてさらに好ましくは1.2MPa超である。また、上記スクリュープレス脱水機の蓋体に加えられる圧力は、好ましくは5.0Mpa以下、より好ましくは4.0Mpa以下、そしてさらに好ましくは3.0Mpa以下である。それにより、混合物の水分率を上述の範囲に調整しやすくなるとともに、混合物の再分散性を確保しやすくなる。
水分率調整ステップS11では、上記混合物の水分率を、70質量%以下、より好ましくは67質量%以下、そしてさらに好ましくは65質量%以下に調整することが好ましい。また、水分率調整ステップS11では、上記混合物の水分率を、50質量%以上、より好ましくは53質量%以上、そしてさらに好ましくは55質量%以上に調整することが好ましい。それにより、混合物中の窒素含有成分の量、ひいてはリサイクルパルプ繊維中の窒素含有成分の量を、所定の範囲に低減させやすくなる。
なお、本明細書では、混合物の固形分と称する場合があり、単一の混合物の固形分と、水分率とは、その和が100となる関係にある。
本明細書では、水分率は、ケット社の赤外線水分計FD-720を用いて測定される。具体的には、FD-720の試料皿に約5gの試料を置き、設定温度を150℃とし、自動停止モードを選択して、水分率を測定する。
本開示の製造方法では、水分率調整ステップS11において、上記混合物が、上記混合物の乾燥質量1kg当たり、好ましくは10.0g/Kg以下、より好ましくは8.0g/Kg以下、そしてさらに好ましくは6.0g/Kg以下のTOCを有するように、上記混合物の水分率を調整する。それにより、混合物中の窒素含有成分の量、ひいてはリサイクルパルプ繊維中の窒素含有成分の量を、所定の範囲に低減させやすくなる。
また、水分率調整ステップにおいて、上記混合物の乾燥質量1kg当たりのTOCの下限は、特に制限されないが、例えば、0.1g/Kgが挙げられる。
なお、上記混合物の乾燥質量は、上述の水分率を測定した後の混合物の質量を意味する。
本明細書では、混合物の乾燥質量1kg当たりのTOCは、以下の通り測定される。
(1)水分率調整ステップにおいて、上記混合物から排出された排出液を回収する。
(2)上記排出液を、粒子保持能:1μmのガラス繊維ろ紙を用いて吸引ろ過し、ろ過残渣と、抽出液とに区画する。
(3)上記抽出液のTOC:y(g/Kg)を、東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社製のTOC-200MDを用いて測定する。
(4)水分率を調整された混合物の水分率:x(質量%)を、本明細書に記載の方法に従って測定する。
(5)水分率を調整された混合物の乾燥質量1kg当たりの水分量:a(Kg)を、以下の式:
a(Kg)=x/(100-x)
により算出する。
(6)混合物の乾燥質量1kg当たりのTOC:z(g/Kg)を、次の式:
z(g/Kg)=y×a
=x×y/(100-x)
により算出する。
上記ガラス繊維ろ紙としては、GEヘルスケア・ジャパン製のガラス繊維円形濾紙GF/Bが挙げられる。
なお、TOCは、全有機炭素(Total Organic Carbon)を意味する。
水分率調整ステップS11では、水分率を調整する前の混合物(使用済みの衛生用品から得られた混合物)において、高吸水性ポリマーは、脱水剤を用いて脱水されていても、そして脱水されていなくともよい。
脱水剤を用いて高吸水性ポリマーが脱水されている場合には、水分率を調整する前の混合物(使用済みの衛生用品から得られた混合物)において、高吸水性ポリマーが、好ましくは50倍以下、より好ましくは30倍以下、さらに好ましくは25倍以下、そしてさらにいっそう好ましくは20倍以下の吸水倍率を有する。それにより、水分率調整ステップS11において、水分率をより低下させやすくなる。
<高吸水性ポリマー脱水ステップS101>
本開示の製造方法は、任意ステップとして、水分率調整ステップS11の前に、高吸水性ポリマーを脱水させる高吸水性ポリマー脱水ステップS101をさらに含むことができる。それにより、混合物中の高吸水性ポリマーに含まれる窒素含有成分の量を低減することができるとともに、次の水分率調整ステップS11において、窒素含有成分の多くがパルプ繊維から除去され、窒素含有成分がパルプ繊維に残存しにくくなる。
高吸水性ポリマー脱水ステップS101は、脱水剤を含む脱水剤含有水溶液に、上記混合物、例えば、使用済みの衛生用品を浸漬することにより実施することができる。
上記脱水剤としては、酸(例えば、無機酸及び有機酸)、石灰、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。上記酸は、パルプ繊維に灰分を残留させにくいことから好ましい。上記脱水剤として酸を用いる場合は、上記脱水剤含有水溶液は、好ましくは2.5以下、そしてより好ましくは1.3~2.4のpHを有する。それにより、高吸水性ポリマーの吸水能力を十分に低下させることができ、設備の腐食のおそれが少なく、そして排水処理時の中和処理に多くのアルカリ薬品が必要となりにくくなる。
上記無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸が挙げられるが、塩素を含まないこと、コスト等の観点から硫酸が好ましい。上記有機酸としては、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸等が挙げられるが、排泄物に含まれる金属イオンと錯体を形成可能な酸、例えば、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカーボネート系有機酸が特に好ましい。なお、排泄物に含まれる金属イオンとしては、カルシウムイオンが挙げられる。排泄物に含まれる金属イオンと錯体を形成可能な酸のキレート効果により、排泄物中の金属イオンがトラップされ、除去可能であるためである。また、クエン酸は、その洗浄効果により、高い汚れ成分除去効果が期待できる。
高吸水性ポリマー脱水ステップS101は、例えば、特開2003-326161号公報、後述の「酸化処理ステップS12」の箇所に例示の公報等に従って実施することができる。
高吸水性ポリマー脱水ステップS101では、高吸水性ポリマーが、好ましくは50倍以下、より好ましくは30倍以下、さらに好ましくは25倍以下、そしてさらにいっそう好ましくは20倍以下の吸水倍率を有するように、高吸水性ポリマーを脱水する。
上記吸水倍率は、以下の通り測定される。
(1)高吸水性ポリマーを、メッシュに入れて5分間吊るし、それらの表面に付着した水分を除去し、その乾燥前質量:m1(g)を測定する。
(2)高吸水性ポリマーを、120℃で10分間乾燥し、その乾燥後質量:m2(g)を測定する。
(3)吸水倍率(g/g)を、次の式:
吸水倍率(g/g)=100×m1/m2
により算出する。
<酸化処理ステップS12>
酸化処理ステップS12では、水分率調整ステップS11を経た混合物を、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液で処理し、高吸水性ポリマーを酸化分解し、酸化分解された高吸水性ポリマーを酸化剤含有水溶液に溶解させるとともにリサイクルパルプ繊維を形成する。
上記酸化剤としては、オゾン(例えば、オゾン含有ガス)、過酸化水素、二酸化塩素、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
酸化処理ステップS12としては、特開2014-217835号公報、特開2016-881号公報、特開2019-007119号公報、特開2019-085447号公報、特開2019-108639号公報、特開2019-108640号公報等に記載の工程が挙げられる。
酸化処理ステップS12では、上記混合物を、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液中で、酸化剤含有水溶液が、好ましくは3.0g/Kg以下、より好ましくは2.5g/Kg以下、そしてさらに好ましくは2.0g/Kg以下のTOCを有するように処理する。それにより、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を形成しやすくなる。
なお、酸化処理ステップS12では、リサイクルパルプ繊維のTOCの下限は、特に制限されないが、例えば、0.5g/Kgが挙げられる。
本明細書では、酸化剤含有水溶液のTOCは、以下の通り測定される。
(1)酸化剤含有水溶液を、粒子保持能:1μmのガラス繊維ろ紙を用いて吸引ろ過し、ろ過残渣と、抽出液とに区画する。
(2)上記抽出液のTOC:w(g/Kg)を、東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社製のTOC-200MDを用いて測定し、その測定値を酸化剤含有水溶液のTOCとする。
<分散ステップS102>
本開示の製造方法は、任意ステップとして、水分率調整ステップS11の後且つ酸化処理ステップS12の前に、上記混合物を水に分散させる分散ステップS102をさらに含むことができる。それにより、水分率調整ステップS11を経て、混合物の少なくとも一部又は全部が塊化している場合であっても、混合物を、各パルプ繊維、高吸水性ポリマー(各粒子)等に分散させやすくなり、次の酸化処理ステップS12において、高吸水性ポリマーを酸化分解し、そしてパルプ繊維中の窒素含有成分を酸化分解しやすくなる。
分散ステップS102は、例えば、上記混合物に水を添加し、分散水溶液を形成し、上記分散水溶液を、例えば、パルパー、リファイナー、ビーター等に通すことにより実施することができる。
上記分散水溶液における上記混合物の水分率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、そしてさらに好ましくは90質量%以上である。また、上記分散水溶液における上記混合物の水分率は、好ましくは99.0質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、そしてさらに好ましくは98.0質量%以下である。それにより、水分率調整ステップS11を経て塊化した、混合物の塊化部分を、各パルプ繊維、高吸水性ポリマー(各粒子)等に分散させやすくなる。
上記分散水溶液は、上記混合物に含まれる高吸水性ポリマーの吸水を抑制する観点から、高吸水性ポリマー脱水ステップS101の箇所で説明された脱水剤を含むことが好ましい。
分散ステップS102では、高級水性ポリマーの脱水状態を維持することができればよいことから、上記分散水溶液は、上述の脱水剤含有水溶液よりも低濃度(例えば、1/10倍、1/100倍等)の脱水剤を含むことができ、そして上記分散水溶液は、上述の脱水剤含有水溶液と同一濃度の脱水剤を含むことができ、分散水溶液が、脱水剤含有水溶液と同一であってもよい(すなわち、高吸水性ポリマー脱水ステップS101における脱水剤含有水溶液を、分散ステップS102における分散水溶液として再利用してもよい)。
<リサイクルパルプ繊維回収ステップS13>
リサイクルパルプ繊維回収ステップS13では、リサイクルパルプ繊維を回収する。
リサイクルパルプ繊維回収ステップS13では、例えば、酸化剤含有水溶液から、例えば、複数の開口を有するスクリーンを用いて、リサイクルパルプ繊維を回収することができる。
<リサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103>
本開示の製造方法は、任意ステップとして、酸化処理ステップS12の後且つリサイクルパルプ繊維回収ステップS13の前に、上記リサイクルパルプ繊維を、洗浄水を用いて洗浄するリサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103をさらに含むことができる。
リサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103は、特に制限されず、上記リサイクルパルプ繊維を、洗浄水(例えば、水道水、脱イオン水等)を用いて洗浄することができる。上記洗浄水は、流水、静水(例えば、容器に貯蔵した水)等として用いられることができる。
リサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103後の上記洗浄水は、好ましくは1.5g/Kg以下、より好ましくは1.0g/Kg以下、そしてさらに好ましくは0.9g/Kg以下のTOCを有する。それにより、窒素含有成分の含有率の低いリサイクルパルプ繊維を的確に形成することができる。
なお、上記リサイクルパルプ繊維のTOCの下限は、特に制限されないが、例えば、0.5g/Kgが挙げられる。
本明細書では、洗浄水のTOCは、以下の通り測定される。
(1)洗浄水を、粒子保持能:1μmのガラス繊維ろ紙を用いて吸引ろ過し、ろ過残渣と、抽出液とに区画する。
(2)上記抽出液のTOC:w(g/Kg)を、東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社製のTOC-200MDを用いて測定し、その測定値を洗浄水のTOCとする。
<リサイクルパルプ繊維脱水ステップS104>
本開示の製造方法は、任意ステップとして、リサイクルパルプ繊維回収ステップS13の後に、上記リサイクルパルプ繊維を60質量%以下の水分率を有するように脱水するリサイクルパルプ繊維脱水ステップS104をさらに含むことができる。
上記リサイクル繊維脱水ステップでは、リサイクルパルプ繊維を、好ましくは60質量%以下、そしてより好ましくは50質量%以下の水分率を有するように脱水することができる。それにより、リサイクルパルプ繊維を乾燥して保存する場合に、乾燥性に優れ、そしてリサイクルパルプ繊維を湿式で保存する場合に、その運搬性に優れることになる。
上記サイクル繊維脱水ステップは、例えば、加圧型脱水機、例えば、川口精機株式会社製,スクリュープレス脱水機を用いて実施することができる。
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
[実施例1]
<高吸水性ポリマー脱水ステップS101等>
特開2019-085447号公報に記載の穴開け工程S11,破砕工程S12,第1分離工程S13,第1除塵工程S14,第2除塵工程S15,及び第3除塵工程S16(破袋装置11,破砕装置12,第1分離装置13,第1除塵装置14,第2除塵装置15,第3除塵装置16,及び第2分離装置17)に従って、使用済みの紙おむつを含む収集袋から、パルプ繊維と、高吸水性ポリマーとを含む混合物No.1a(水分率:91質量%)を得た。
なお、高吸水性ポリマー脱水ステップS101では、脱水剤含有水溶液を、クエン酸を添加することによりpH=2.0に調整した。
<水分率調整ステップS11>
混合物No.1aを、川口精機株式会社製のスクリュープレス脱水機に投入し、蓋体に1.2MPaの圧力を加え、排出液と、混合物No.1b(水分率:70質量%)とを得た。
上記排出液のTOCと、混合物No.1bの水分率とから、混合物No.1bのTOCを算出した。混合物No.1bのTOCを表1に示す。
また、上記排出液のTOCと、混合物No.1aの水分率とから、混合物No.1aのTOCを算出した。混合物No.1aのTOCを表1に示す。
<分散ステップS102>
混合物No.1bに水を加え、サトミ製作所製のリファイナー装置に通し、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを水に分散させた、混合物No.1c(固形分率:4.0質量%)を得た。
<酸化処理ステップS12>
混合物No.1cを、固形分率1.0質量%に調整し、特開2019-085447号公報に記載の酸化剤処理工程S19(オゾン処理装置22)に従い、以下の条件で酸化処理ステップS12を実施し、リサイクルパルプ繊維No.1aを形成した。リサイクルパルプ繊維No.1aを形成した後の酸化剤含有水溶液のTOCを表1に示す。
・酸化剤:オゾン含有ガス
・オゾン含有ガス中のオゾン濃度:200g/m3
・形態:ナノバブル
・処理時間:30分
・pH:4.5
<リサイクルパルプ繊維回収ステップS13>
酸化処理ステップS12を経たリサイクルパルプ繊維No.1aを脱水し、リサイクルパルプ繊維No.1bを得た。
[実施例2]
酸化処理ステップS12の後且つリサイクルパルプ繊維回収ステップS13の前に、酸化処理ステップS12を経たリサイクルパルプ繊維No.1bを取り出し、洗浄水として、リサイクルパルプ繊維No.1bの乾燥質量の40倍の脱イオン水を用いて、リサイクルパルプ繊維No.1aを3分間流水洗浄するリサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103を追加した以外は、実施例1と同様にして、リサイクルパルプ繊維No.2を得た。リサイクルパルプ繊維No.2を得た後の洗浄水のTOCを表1に示す。
なお、リサイクルパルプ繊維の乾燥質量は、リサイクルパルプ繊維を、105℃±3℃の温度のオーブンで2時間乾燥させた後の質量を意味する。
[実施例3]
酸化処理ステップS12の後且つリサイクルパルプ繊維回収ステップS13の前に、酸化処理ステップS12を経たリサイクルパルプ繊維No.1bを取り出し、洗浄水として、リサイクルパルプ繊維No.1bの乾燥質量の40倍の脱イオン水を用いて、リサイクルパルプ繊維No.1aを60分間流水洗浄するリサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103を追加した以外は、実施例1と同様にして、リサイクルパルプ繊維No.3を得た。リサイクルパルプ繊維No.3を得た後の洗浄水のTOCを表1に示す。
[実施例4]
酸化処理ステップS12の後且つリサイクルパルプ繊維回収ステップS13の前に、酸化処理ステップS12を経たリサイクルパルプ繊維No.1bを取り出し、洗浄水として、リサイクルパルプ繊維No.1bの水分率が99質量%となるように脱イオン水を添加し、リサイクルパルプ繊維No.1aを洗浄するリサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103を追加した以外は、実施例1と同様にして、リサイクルパルプ繊維No.4を得た。リサイクルパルプ繊維No.4を得た後の洗浄水のTOCを表1に示す。
[比較例1]
水分率調整ステップS11及び分散ステップS102を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、リサイクルパルプ繊維No.5を得た。混合物No.1a及び酸化剤含有水溶液のTOCを表1に示す。
[比較例2]
酸化処理ステップS12の後且つリサイクルパルプ繊維回収ステップS13の前に、酸化処理ステップS12を経たリサイクルパルプ繊維No.5を取り出し、洗浄水として、リサイクルパルプ繊維No.5の乾燥質量の40倍の脱イオン水を用いて、リサイクルパルプ繊維No.5を3分間流水洗浄するリサイクルパルプ繊維洗浄ステップS103を追加した以外は、比較例1と同様にして、リサイクルパルプ繊維No.6を得た。リサイクルパルプ繊維No.6を得た後の洗浄水のTOCは、洗浄前の酸化剤含有水溶液の約半分であった。
Figure 0007355714000001
S11 水分率調整ステップ
S12 酸化処理ステップ
S13 リサイクルパルプ繊維回収ステップ
S101 高吸水性ポリマー脱水ステップ
S102 分散ステップ
S103 リサイクルパルプ繊維洗浄ステップ
S104 リサイクルパルプ繊維脱水ステップ

Claims (8)

  1. 使用済みの衛生用品から、清浄化されたリサイクルパルプ繊維を製造する方法であって、
    パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む前記使用済みの衛生用品から得られた、前記パルプ繊維及び前記高吸水性ポリマーを含む混合物の水分率を70質量%以下に調整する水分率調整ステップ、
    前記水分率調整ステップを経た前記混合物を、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液で処理し、前記高吸水性ポリマーを酸化分解し、酸化分解された前記高吸水性ポリマーを前記酸化剤含有水溶液に溶解させるとともに前記リサイクルパルプ繊維を形成する酸化処理ステップ、
    前記リサイクルパルプ繊維を回収するリサイクルパルプ繊維回収ステップ、
    を含むことを特徴とする、前記方法。
  2. 前記水分率調整ステップにおいて、前記混合物が、前記混合物の乾燥質量1kg当たり、10.0g/Kg以下のTOCを有するように、前記混合物の水分を調整する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記酸化処理ステップにおいて、前記混合物を、酸化剤を含む酸化剤含有水溶液中で、当該酸化剤含有水溶液が3.0g/Kg以下のTOCを有するように処理する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記水分率調整ステップの後且つ前記酸化処理ステップの前に、前記混合物を水に分散させる分散ステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記酸化処理ステップの後且つ前記リサイクルパルプ繊維回収ステップの前に、前記リサイクルパルプ繊維を、洗浄水を用いて洗浄するリサイクルパルプ繊維洗浄ステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記リサイクルパルプ繊維洗浄ステップ後の洗浄水が、1.5g/Kg以下のTOCを有する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記リサイクルパルプ繊維回収ステップの後に、前記リサイクルパルプ繊維を60質量%以下の水分率を有するように脱水するリサイクルパルプ繊維脱水ステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記水分率調整ステップの前に、脱水剤を用いて、前記高吸水性ポリマーを脱水させる高吸水性ポリマー脱水ステップをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
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