JP7355288B1 - 樹脂組成物および電力ケーブル - Google Patents

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文俊 伊與田
智 山▲崎▼
周平 安田
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Abstract

樹脂組成物は、電力ケーブルの絶縁層を構成する樹脂組成物であって、プロピレン単位と、スチレン単位と、を含む。樹脂組成物は、25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、100MPa超の弾性率を有する海相と、100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、を備える。

Description

本開示は、樹脂組成物および電力ケーブルに関する。
架橋ポリエチレンは絶縁性に優れることから、電力ケーブルなどにおいて、絶縁層を構成する樹脂成分として広く用いられてきた(例えば、特許文献1)。
特開昭57-69611号公報
本開示の一態様によれば、
電力ケーブルの絶縁層を構成する樹脂組成物であって、
プロピレン単位と、スチレン単位と、を含み、
前記樹脂組成物は、
25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、
100MPa超の弾性率を有する海相と、
100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、
100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、
を備える
樹脂組成物が提供される。
図1は、本開示の一実施形態に係る電力ケーブルの軸方向に直交する模式的断面図である。 図2は、25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られるサンプルA1の弾性率分布である。 図3は、25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られるサンプルB5の弾性率分布である。 図4は、25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られるサンプルB2の弾性率分布である。 図5は、25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られるサンプルB3の弾性率分布である。 図6は、水針試験を示す模式的断面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
本発明者等は、絶縁層を構成する樹脂成分としてプロピレン系樹脂(ポリプロピレン)に着目し、電力ケーブルの特性向上のため、鋭意検討を行った。
本開示の目的は、絶縁層の曲げ耐性を確保しつつ、絶縁層中の微小異物または微小ボイドを起点とした水トリーの発生を抑制することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、絶縁層の曲げ耐性を確保しつつ、絶縁層中の微小異物または微小ボイドを起点とした水トリーの発生を抑制することができる。
[本開示の実施形態の説明]
<発明者の得た知見>
まず、発明者の得た知見について概略を説明する。
プロピレン系樹脂の単体は、結晶量が多く、硬くなる傾向がある。
そこで、発明者は、プロピレン系樹脂の結晶性を制御し、電力ケーブルの絶縁層の柔軟性を向上させるため、絶縁層を構成する樹脂成分として、プロピレン系樹脂と低結晶性樹脂とを混合することを検討した。
しかしながら、発明者は、プロピレン系樹脂と低結晶性樹脂とを含む絶縁層において、以下の新規課題を見出した。
(微小異物または微小ボイドを起点とした水トリー)
従来の水トリー試験では、電力ケーブルを水に浸漬させた状態で、絶縁層に電界を印加していた。当該水トリー試験では、絶縁層に対して、均等に水の圧力がかかり、均等に電界が加えられていた。
しかしながら、上述の水トリー試験で水トリーが発生しなかった電力ケーブルであっても、絶縁層中に微小異物または微小ボイドが混入したときに、以下のような絶縁層の相構造に依存して、絶縁層の水トリー耐性が低下する場合があることが分かった。
(i)絶縁層の相構造が共連続構造である場合では、絶縁層中に微小異物または微小ボイドが混入したときに、共連続構造のうち、低結晶性樹脂を含む相対的に柔軟な相(以下、柔軟相ともいう)に、微小異物または微小ボイドが取り込まれることがある。この場合、微小異物または微小ボイドを起点として水トリーが発生したときに、共連続構造の柔軟相に沿って、水トリーが伝播し易くなる。
(ii)絶縁層の相構造が、海相と、柔軟相として100nm以下の大きさを有する小さい島相のみと、を有する海島構造である場合では、プロピレン系樹脂を含む海相において粗大結晶が成長する。そのため、絶縁層中に微小異物または微小ボイドが混入したときに、粗大結晶の界面において水トリーが伝播し易くなる。
(屈曲時の絶縁性の低下)
従来では、絶縁層の絶縁性を評価するために、例えば、交流破壊電界強度を測定していた。当該測定は、製造直後の電力ケーブルの絶縁層から採取したシートにおいて、特段の応力をかけずに行っていた。
しかしながら、上述した測定において通常の交流破壊電界強度が高い電力ケーブルであっても、電力ケーブルを屈曲したときに、交流破壊電界強度が低下することが分かった。具体的には、以下のような絶縁層の相構造に依存して、絶縁層の曲げ耐性が低下する場合があることが分かった。
(iii)絶縁層の相構造が、海相と、柔軟相として100nm超の大きさを有する大きい島相のみと、を有する海島構造である場合では、プロピレン系樹脂を含む海相の弾性が、高い状態のまま維持される。このため、電力ケーブルを屈曲させたときに、海相において、割れが生じたり、結晶同士が分離したりする。このため、絶縁層の絶縁性が低下する可能性がある。
そこで、発明者は、上述の新規課題に対して鋭意検討した結果、絶縁層の相構造を最適化することで、絶縁層の曲げ耐性を確保しつつ、絶縁層中の微小異物または微小ボイドを起点とした水トリーの発生を抑制することに成功した。
本開示は、発明者が見出した上述の知見に基づくものである。
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の一態様に係る樹脂組成物は、
電力ケーブルの絶縁層を構成する樹脂組成物であって、
プロピレン単位と、スチレン単位と、を含み、
前記樹脂組成物は、
25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、
100MPa超の弾性率を有する海相と、
100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、
100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、
を備える。
この構成によれば、絶縁層の相構造を最適化することで、絶縁層の曲げ耐性を確保しつつ、絶縁層中の微小異物または微小ボイドを起点とした水トリーの発生を抑制することができる。
[2]本開示の一態様に係る電力ケーブルは、
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられた絶縁層と、
を備え、
前記絶縁層は、プロピレン単位と、スチレン単位と、を含み、
前記絶縁層は、
25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、
100MPa超の弾性率を有する海相と、
100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、
100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、
を備える。
この構成によれば、絶縁層の相構造を最適化することで、絶縁層の曲げ耐性を確保しつつ、絶縁層中の微小異物または微小ボイドを起点とした水トリーの発生を抑制することができる。
[3]上記[2]に記載の電力ケーブルにおいて、
水針試験により発生する前記絶縁層の水トリーの最大長さは、200μm以下である、
ここで、前記水針試験は、
前記絶縁層から採取したブロックの第1面に平板電極を設ける工程と、
前記第1面から1mmの間隔をあけて対向する位置に、10μmの曲率半径の先端を有するように、針状の空隙を形成する工程と、
塩分濃度3.8質量%の人工海水を前記空隙に注入することで、前記ブロック内に水針を形成する工程と、
前記平板電極と前記水針の前記先端との間に、1000Hzおよび4kVの交流電圧を200時間印加する工程と、
を含む。
この構成によれば、絶縁層に微小異物または微小ボイドが混入したとしても、水トリーの過大な伝播を抑制することが可能となる。
[4]上記[2]または[3]に記載の電力ケーブルにおいて、
所定の曲げ試験後の25℃における前記絶縁層の交流破壊電界強度は、50kV/mm以上である、
ここで、前記曲げ試験は、
前記絶縁層の外径に対する電力ケーブルの曲げ半径の曲げ比率が7以下となるように前記電力ケーブルを曲げる第1工程と、
前記第1工程の曲げ方向と反対の方向に前記第1工程の前記曲げ比率と同じ曲げ比率で前記電力ケーブルを曲げる第2工程と、
を含む。
この構成によれば、電力ケーブルを屈曲させたとしても、絶縁層の絶縁性を高く維持することが可能となる。
[5]上記[2]から[4]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記絶縁層は、ブテン単位をさらに含み、
前記絶縁層中の前記ブテン単位の含有量は、9質量%以上20質量%未満である。
この構成によれば、上述の海島構造を安定的に形成することができる。
[6]上記[2]から[5]のいずれか1つに記載の電力ケーブルにおいて、
前記絶縁層は、
プロピレン系樹脂と、
プロピレン単位もしくはブテン単位、およびスチレン単位を含む第1スチレン系エラストマと、
プロピレン単位もしくはブテン単位、およびスチレン単位を含み、前記第1スチレン系エラストマと異なる第2スチレン系エラストマと、
を有する。
この構成によれば、絶縁層中に、大きさが互いに異なる2つの島相を安定的に形成することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<本開示の一実施形態>
(1)樹脂組成物
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、後述する電力ケーブル10の絶縁層130を構成するものである。
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、樹脂成分として、プロピレン系樹脂と、低結晶性樹脂と、を含んでいる。ここでいう「樹脂成分」とは、樹脂組成物の主成分を構成する樹脂材料(ポリマ)のことを意味する。「主成分」とは、最も含有率が多い成分のことを意味する。
プロピレン系樹脂と低結晶性樹脂とを混合することで、プロピレン系樹脂の過剰な結晶成長を阻害することができ、絶縁層130の柔軟性を向上させることができる。
(プロピレン系樹脂)
本実施形態のプロピレン系樹脂は、絶縁層の主成分を構成し、少なくともプロピレン単位を主鎖として含んでいる。プロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン(ホモPP)、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、およびブロックポリプロピレン(ブロックPP)が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物を核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)装置により分析することで、例えば、プロピレン系樹脂がランダムPPまたはブロックPPである場合には、プロピレン単位とエチレン単位が検出される。低結晶性樹脂がホモPPである場合には、プロピレン単位が検出される。
絶縁層130において高い絶縁性を得る観点からは、プロピレン系樹脂は、ランダムPPであってもよい。ホモPPは、ランダムPPと比較して結晶量が多く、高い絶縁性を得られる。しかしながら、ホモPPを含む絶縁層130では、結晶中または結晶間で割れなどを引き起こす可能性がある。このため、ホモPPでは、本来有する絶縁性を得られないことがある。これに対し、ランダムPPは、エチレン単位を含むため、結晶量が少なくなる。しかしながら、ランダムPPを含む絶縁層130では、粗大結晶化による割れが生じにくい。その結果、ランダムPPは、ホモPPと比較して高い絶縁性を得ることができる。
プロピレン系樹脂がランダムPPである場合には、ランダムPPにおけるエチレン単位含有量は、例えば、0.5質量%以上15質量%以下であってもよい。エチレン単位含有量を0.5質量%以上とすることで、粗大な球晶の成長を抑制することができる。一方で、エチレン単位含有量を15質量%以下とすることで、融点の低下を抑制し、非架橋または微架橋での使用を安定的に実現することができる。
本実施形態では、ポリプロピレンにおける立体規則性は、特に限定されないが、例えば、アイソタクチックであってもよい。アイソタクチックポリプロピレンは、チーグラーナッタ触媒で重合されたものであり、汎用的である。立体規則性がアイソタクチックであることで、プロピレン系樹脂と低結晶性樹脂とを混合した組成物において、融点の低下を抑制することができる。これにより、プロピレン系樹脂が本来有する高い絶縁性を得ることができる。
本実施形態では、プロピレン系樹脂単体としての貯蔵弾性率は、例えば、300MPa以上2500MPa以下である。
ここでいう「貯蔵弾性率」は、JIS K7244-4:1999に準拠して、動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)により測定される。
当該動的粘弾性測定は、以下の条件下において実施される。
測定モード:引張モード
歪み:0.08%
周波数:10Hz
温度範囲:0℃以上200℃以下
昇温速度:10℃/min
上述の「貯蔵弾性率」は、当該動的粘弾性測定により25℃で測定された値である。
プロピレン系樹脂単体としての貯蔵弾性率を300MPa以上とすることで、絶縁層130の剛性を確保することができる。一方で、プロピレン系樹脂単体としての貯蔵弾性率を2500MPa以下とすることで、絶縁層130の柔軟性を確保することができる。
プロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、プロピレン系樹脂のMFRは、例えば、0.1g/10min以上10.0g/10min以下であってもよく、或いは、0.1g/10min以上5.0g/10min以下であってもよい。ここでいう「MFR」とは、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgにて測定される値である。プロピレン系樹脂のMFRを上述の範囲内とすることにより、絶縁層130において、後述する海島構造を容易に形成することができる。
プロピレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、プロピレン系樹脂の融点は、例えば、130℃以上165℃以下であってもよい。これにより、プロピレン系樹脂と、低結晶性樹脂と混合したときに、後述する海島構造を容易に形成することができる。
(低結晶性樹脂)
本実施形態の低結晶性樹脂は、プロピレン系樹脂の結晶性を制御し、絶縁層に柔軟性を付与するよう構成されている。例えば、低結晶性樹脂は融点を有しないか、或いは、低結晶性樹脂の融点は100℃未満である。また、低結晶性樹脂の融解熱量は、例えば、50J/g以下であり、或いは30J/g以下であってもよい。
本実施形態の低結晶性樹脂は、例えば、スチレン系エラストマである。スチレン系エラストマにより、後述の島相を形成することができる。
低結晶性樹脂としてのスチレン系エラストマは、ハードセグメントとしてのスチレン単位と、ソフトセグメントとして、少なくともプロピレン単位またはブテン単位と、を含んでいる。スチレン系エラストマは、その他のソフトセグメントとして、例えば、エチレン単位およびイソプレン単位などのうち少なくとも1つのモノマ単位を含んでいてもよい。
スチレン系エラストマとしては、例えば、
スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、
水素化スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体、
スチレンエチレンプロピレン共重合体(SEP)、
スチレンイソプレンスチレン共重合体(SIS)、
水素化スチレンイソプレンスチレン共重合体、
水素化スチレンブタジエンラバー、
水素化スチレンイソプレンラバー、
スチレンエチレンブテンオレフィン結晶ブロック共重合体、
が挙げられる。これらのうち2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ここでいう「水素化(Hydrogenated)」とは、二重結合に水素を添加したことを意味する。例えば、「水素化スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体」とは、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体の二重結合に水素を添加したポリマを意味する。なお、スチレンが有する芳香環の二重結合には水素が添加されていない。「水素化スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体」は、スチレンエチレンブテンスチレンブロック共重合体(SEBS)と言い換えることができる。
スチレン系エラストマのなかでも、芳香環を除く化学構造中に二重結合を含まない水素化材料が用いられてもよい。非水素化材料を用いた場合では、樹脂組成物の成形時などに、樹脂成分が熱劣化する可能性があり、得られる成形体の諸特性が低下する可能性がある。これに対し、水素化材料を用いることで、熱劣化の耐性を向上させることができる。これにより、成形体の諸特性をより高く維持させることができる。
本実施形態では、樹脂組成物は、低結晶性樹脂として、2つのスチレン系エラストマ(第1スチレン系エラストマおよび第2スチレン系エラストマ)を含んでいる。第1スチレン系エラストマは、プロピレン単位もしくはブテン単位と、スチレン単位と、を含んでいる。第2スチレン系エラストマは、プロピレン単位もしくはブテン単位と、スチレン単位と、を含み、第1スチレン系エラストマと異なっている。第2スチレン系エラストマ中の少なくとも1つのモノマ単位の含有量は、第1スチレン系エラストマ中の少なくとも1つのモノマ単位の含有量と異なっている。これにより、絶縁層130中に、大きさが互いに異なる2つの島相を安定的に形成することができる。
第2スチレン系エラストマ中のプロピレン単位またはブテン単位の含有量は、例えば、第1スチレン系エラストマのプロピレン単位またはブテン単位の含有量よりも少ない。第2スチレン系エラストマにおいて、プロピレン系樹脂との相溶性が良いプロピレン単位またはブテン単位が相対的に少ないことで、第2スチレン系エラストマを凝集させ、第2スチレン系エラストマを含む大きな島相(後述の第2島相)を形成することができる。一方で、第1スチレン系エラストマにおいて、プロピレン単位またはブテン単位が相対的に多いことで、第1スチレン系エラストマを微細に分散させ、第1スチレン系エラストマを含む小さな島相(後述の第1島相)を形成することができる。
具体的には、第1スチレン系エラストマ中のプロピレン単位またはブテン単位の含有量は、例えば、40質量%以上80質量%以下である。第1スチレン系エラストマ中のプロピレン単位またはブテン単位の含有量を40質量%以上とすることで、第1スチレン系エラストマを微細に分散させることができる。一方で、第1スチレン系エラストマ中のプロピレン単位またはブテン単位の含有量を80質量%以下とすることで、絶縁層130の剛性を確保することができる。
一方で、第2スチレン系エラストマ中のプロピレン単位またはブテン単位の含有量は、例えば、5質量%以上40質量%未満である。第2スチレン系エラストマ中のプロピレン単位またはブテン単位の含有量を5質量%以上とすることで、絶縁層130の柔軟性を確保することができる。一方で、第2スチレン系エラストマ中のプロピレン単位またはブテン単位の含有量を40質量%未満とすることで、第2スチレン系エラストマを凝集させ、第2スチレン系エラストマを含む大きな島相(後述の第2島相)を安定的に形成することができる。
第2スチレン系エラストマ中のスチレン単位の含有量は、例えば、第1スチレン系エラストマのスチレン単位の含有量よりも多い。これにより、プロピレン系樹脂に対する第2スチレン系エラストマの相溶性を、第1スチレン系エラストマの相溶性よりも低くすることができる。その結果、第2スチレン系エラストマを含む島相(後述の第2島相)を、第1スチレン系エラストマを含む島相(後述の第1島相)よりも容易に大きくすることができる。
具体的には、第1スチレン系エラストマ中のスチレン単位の含有量は、例えば、20質量%以下であり、或いは10質量%以下であってもよい。第1スチレン系エラストマ中のスチレン単位の含有量を20質量%以下とすることで、第1スチレン系エラストマを微細に分散させることができる。さらに、第1スチレン系エラストマ中のスチレン単位の含有量を10質量%以下とすることで、第1スチレン系エラストマを微細に分散させつつ、絶縁層130を効率よく柔軟化することができる。
一方で、第2スチレン系エラストマ中のスチレン単位の含有量は、例えば、20質量%超70質量%以下である。第2スチレン系エラストマ中のスチレン単位の含有量を20質量%超とすることで、第2スチレン系エラストマを凝集させることができる。一方で、第2スチレン系エラストマ中のスチレン単位の含有量を70質量%以下とすることで、絶縁層130の柔軟性を確保することができる。
本実施形態では、スチレン系エラストマ単体としての貯蔵弾性率は、例えば、0.1MPa以上100MPa以下である。ここでいう「スチレン系エラストマ単体としての貯蔵弾性率」の測定方法および測定条件は、上述したプロピレン系樹脂の貯蔵弾性率と同様である。スチレン系エラストマ単体としての貯蔵弾性率を0.1MPa以上とすることで、絶縁層130の剛性を確保することができる。一方で、スチレン系エラストマ単体としての貯蔵弾性率を400MPa以下とすることで、絶縁層130の柔軟性を確保することができる。
スチレン系エラストマのMFRは、特に限定されないが、スチレン系エラストマのMFRは、例えば、0.1g/10min以上30.0g/10min以下であってもよく、或いは0.1g/10min以上10.0g/10min以下であってもよい。ここでのスチレン系エラストマのMFRの測定条件は、プロピレン系樹脂のMFRで記載した測定条件と同じである。スチレン系エラストマのMFRが上述の範囲内であることにより、絶縁層130において、後述する海島構造を容易に形成することができる。
(樹脂組成物中のモノマ単位の含有量)
樹脂組成物(後述の絶縁層130)中のモノマ単位の含有量は、樹脂組成物をNMR装置により測定される。ここで、樹脂組成物中のモノマ単位の合計含有量を100質量%とする。
樹脂組成物中のプロピレン単位の含有量は、例えば、50質量%超80質量%以下である。プロピレン系樹脂相を絶縁層の全体に亘って、海相として形成することができる。これにより、絶縁層130を非架橋としつつ、主成分としてのプロピレン系樹脂が有する絶縁性を確保することができる。一方で、プロピレン単位の含有量を80質量%以下とすることで、絶縁層130中で低結晶性樹脂を含む島相を確保することができる。これにより、プロピレン系樹脂の過剰な結晶成長を抑制することができる。
本実施形態では、樹脂組成物がプロピレン単位、ブテン単位およびスチレン単位を含む場合に、樹脂組成物中のブテン単位の含有量は、例えば、9質量%以上20質量%未満である。これにより、絶縁層130において、後述の海島構造を安定的に形成することができる。相構造については詳細を後述する。
本実施形態では、樹脂組成物中のスチレン単位の含有量は、例えば、0.1質量%以上15%未満である。スチレン単位の含有量を0.1質量%以上とすることで、絶縁層130の絶縁性を安定させることができる。一方で、スチレン単位の含有量を15質量%未満とすることで、絶縁層130の柔軟性を確保することができる。
樹脂組成物は、プロピレン単位、ブテン単位およびスチレン単位以外のモノマ単位として、例えば、プロピレン系樹脂または低結晶性樹脂に由来するエチレン単位を含んでいてもよい。
本実施形態では、樹脂組成物中の低結晶性樹脂としての第1スチレン系エラストマおよび第2スチレン系エラストマのそれぞれの含有量は、樹脂成分を混合したときの樹脂組成物中の上述したモノマ単位の含有量に基づいて調整される。
(架橋剤)
本実施形態では、絶縁層130を構成する樹脂成分は、リサイクルの観点から、非架橋であってもよい。この場合、樹脂組成物は、架橋剤を含まなくてもよい。
一方で、樹脂組成物は、ゲル分率(架橋度)が低くなるように微量の架橋剤を含んでいてもよい。具体的には、例えば、絶縁層130中の架橋剤の残渣が300ppm未満となるように、樹脂組成物は架橋剤を含んでいてもよい。ここでいう「架橋剤の残渣(分解残渣)」とは、架橋反応によって架橋剤が分解することで生成される分解生成物のことを意味する。架橋剤としてジクミルパーオキサイドを使用した場合には、残渣は、例えば、クミルアルコール、α-メチルスチレンなどである。
(その他の添加剤)
樹脂組成物は、上述の樹脂成分のほかに、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、銅害防止剤、滑剤および着色剤を含んでいてもよい。
樹脂組成物は、難燃剤となる金属水酸化物を含まなくてもよい。或いは、樹脂組成物が金属酸化物を含んでいても、樹脂組成物中の樹脂成分の含有量を100質量部としたときに、樹脂組成物中の金属酸化物の含有量を1質量部以下としてもよい。これにより、絶縁層130の安定した絶縁性を得ることができる。
(2)電力ケーブル
次に、図1を用い、本実施形態の電力ケーブルについて説明する。
本実施形態の電力ケーブル10は、いわゆる固体絶縁電力ケーブルとして構成されている。本実施形態の電力ケーブル10は、例えば、陸上(管路内)、水中または水底に布設されるよう構成されている。なお、電力ケーブル10は、例えば、交流に用いられてもよいし、或いは直流に用いられてもよい。
具体的には、電力ケーブル10は、例えば、導体110と、内部半導電層120と、絶縁層130と、外部半導電層140と、遮蔽層150と、シース160と、を有している。
(導体(導電部))
導体110は、例えば、純銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金を含む複数の導体芯線(導電芯線)を撚り合わせることにより構成されている。
(内部半導電層)
内部半導電層120は、導体110の外周を覆うように設けられている。また、内部半導電層120は、半導電性を有し、導体110の表面における電界集中を抑制するよう構成されている。内部半導電層120は、例えば、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン系共重合体、オレフィン系エラストマ、上述の低結晶性樹脂のうち少なくともいずれかと、導電性のカーボンブラックと、を含んでいる。
(絶縁層)
絶縁層130は、内部半導電層120の外周を覆うように設けられている。絶縁層130は、例えば、上述のように、樹脂組成物により押出成形されている。絶縁層130の相構造、およびケーブル特性については、詳細を後述する。
(外部半導電層)
外部半導電層140は、絶縁層130の外周を覆うように設けられている。また、外部半導電層140は、半導電性を有し、絶縁層130と遮蔽層150との間における電界集中を抑制するよう構成されている。外部半導電層140は、例えば、内部半導電層120と同様の材料により構成されている。
(遮蔽層)
遮蔽層150は、外部半導電層140の外周を覆うように設けられている。遮蔽層150は、例えば、銅テープを巻回することにより構成されるか、或いは、複数の軟銅線等を巻回したワイヤシールドとして構成されている。なお、遮蔽層150の内側や外側に、ゴム引き布等を素材としたテープが巻回されていてもよい。
(シース)
シース160は、遮蔽層150の外周を覆うように設けられている。シース160は、例えば、ポリ塩化ビニルまたはポリエチレンにより構成されている。
なお、本実施形態の電力ケーブル10は、水中ケーブルまたは水底ケーブルであれば、遮蔽層150よりも外側に、いわゆるアルミ被などの金属製の遮水層や、鉄線鎧装を有していてもよい。
一方で、本実施形態の電力ケーブル10は、例えば、遮蔽層150よりも外側に遮水層を有していなくてもよい。つまり、本実施形態の電力ケーブル10は、非完全遮水構造により構成されていてもよい。
(具体的寸法等)
電力ケーブル10における具体的な各寸法としては、特に限定されるものではないが、例えば、導体110の直径は5mm以上60mm以下であり、内部半導電層120の厚さは0.5mm以上3mm以下であり、絶縁層130の厚さは3mm以上35mm以下であり、外部半導電層140の厚さは0.5mm以上3mm以下であり、遮蔽層150の厚さは0.1mm以上5mm以下であり、シース160の厚さは1mm以上である。本実施形態の電力ケーブル10に適用される交流電圧は、例えば20kV以上である。
(3)絶縁層の相構造
発明者等は、樹脂組成物を含む絶縁層130の微小領域弾性測定を行うことにより、上述した新規課題を解決することができる絶縁層130の相構造を発見した。
ここでいう「微小領域弾性測定」とは、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)を用いて行われる。当該測定では、例えば、絶縁層130の厚さ方向の中央部から切り出した所定厚さを有するシートが使用される。微小領域弾性測定では、例えば、25℃で、シリコン(単結晶)からなり曲率半径が1nm以上20nm未満である先端を有するカンチレバーにより、試料の1μm角の範囲内を1万6000回タッピングする条件下で、弾性率を測定する。
このような微小領域弾性測定により、絶縁層130における弾性率分布を得ることができる。これにより、弾性率分布に基づいて、絶縁層130の相構造を把握することが可能となる。
例えば、200MPaの弾性率を閾値として弾性率分布を観察することで、絶縁層130の相構造が共連続構造か否かを把握することができる。ここで、スチレン系エラストマ中のプロピレン単位またはブテン単位は、プロピレン系樹脂と容易に混ざり合う。スチレン系エラストマとプロピレン系樹脂とが混ざり合った箇所は、プロピレン系樹脂の弾性率とスチレン系樹脂の弾性率との間の中間の弾性率として、例えば、200MPa以下の弾性率を有することとなる。このような200MPa以下の相が連続相として連なると、当該相中を水トリーが伸展し易くなる。したがって、200MPaの弾性率を閾値として弾性率分布を観察することで、水トリーが伸展し易い共連続構造を判別することができる。
更に、例えば、100MPaの弾性率を閾値として弾性率分布を観察することで、絶縁層130の相構造が海島構造である場合の島相の大きさを測定することができる。すなわち、スチレン系エラストマが微小領域弾性測定において100MPa未満の弾性率を示すため、100MPaの弾性率を閾値とした観察により、スチレン系エラストマに由来する島相の大きさを測定することができる。
本実施形態では、絶縁層130は、25℃でSPMを用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、例えば、100MPa超の弾性率を有する海相と、100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、を備えている。
本実施形態では、絶縁層130を構成する樹脂組成物が、例えば、以下の要件を満たすことで、絶縁層130において、上述の相構造を安定的に形成することができる。
(A)樹脂組成物が、プロピレン系樹脂と、低結晶性樹脂として2つのスチレン系エラストマと、を含んでいる。
(B)樹脂組成物がプロピレン単位、ブテン単位およびスチレン単位を含む場合に、樹脂組成物中のブテン単位の含有量(質量パーセント濃度)は、9質量%以上20質量%未満である。
(C)後述する新規混合方法を適用している。
以下において、図2~図5を参照し、本実施形態の絶縁層130の相構造について説明する。一例として、絶縁層130を構成する樹脂組成物がプロピレン単位、ブテン単位およびスチレン単位を含む場合において、本実施形態の絶縁層130の相構造を、参考例の相構造と比較する。図2~図5は、25℃でSPMを用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布を示している。図2~図5において、灰色領域が、各図の上部に記載した閾値以下の弾性率を有する領域を示している。
(参考例1:共連続構造)
例えば、樹脂組成物が、低結晶性樹脂として2つのスチレン系エラストマを含むか否かに関わらず、樹脂組成物中のブテン単位の含有量が20質量%以上である参考例1では、絶縁層130の相構造は、図3に示した共連続構造となる。
図3の弾性率分布に示すように、参考例1の共連続構造は、例えば、200MPa超の弾性率を有する第1連続相CP1と、200MPa未満の弾性率を有する第2連続相CP2と、を有している。第1連続相CP1は、プロピレン系樹脂に由来する。第2連続相CP2は、主に低結晶性樹脂としてのスチレン系エラストマに由来する。
共連続構造では、第1連続相CP1および第2連続相CP2のそれぞれが、長く連続している。200MPaの弾性率を閾値とした弾性率分布において、第2連続相CP2の両端間の長さは、例えば、5μm以上である。ここでいう「第2連続相CP2の両端間の長さ」とは、第2連続相CP2の第1端から最も遠い第2端までを直線で結んだ長さのことをいう。
絶縁層130の相構造が上述のような共連続構造である場合では、絶縁層130中に微小異物または微小ボイドが混入したときに、スチレン系エラストマを含む柔軟な第2連続相CP2に、微小異物または微小ボイドが取り込まれることがある。この場合、微小異物または微小ボイドを起点として水トリーが発生したときに、共連続構造の第2連続相CP2に沿って、水トリーが伝播し易くなる。
(参考例2:微小島相のみを有する海島構造)
例えば、樹脂組成物が、低結晶性樹脂として、ブテン単位の含有量が多いスチレン系エラストマしか含まず、且つ、樹脂組成物中のブテン単位の含有量が20質量%未満である参考例2では、絶縁層130の相構造は、例えば、図4に示した微小島相SIPのみを有する海島構造となる。
図4の弾性率分布に示すように、参考例2の海島構造は、例えば、100MPa超の弾性率を有する海相SPと、100MPa未満の弾性率を有する微小島相SIPと、を有している。海相SPは、プロピレン系樹脂に由来する。微小島相SIPは、低結晶性樹脂としてのスチレン系エラストマに由来する。微小島相SIPの大きさは、例えば、100nm以下の大きさを有する。
絶縁層130の相構造が上述のように微小島相SIPのみを有する海島構造である場合では、プロピレン系樹脂を含む海相SPにおいて粗大結晶が成長する。そのため、絶縁層130中に微小異物または微小ボイドが混入したときに、粗大結晶の界面において水トリーが伝播し易くなる。
(参考例3:粗大島相のみを有する海島構造)
例えば、樹脂組成物が、低結晶性樹脂として、ブチレン単位の含有量が少ないスチレン系エラストマしか含まず、且つ、樹脂組成物中のブテン単位の含有量が9質量%未満である参考例3では、絶縁層130の相構造は、例えば、図5に示した粗大島相LIPのみを有する海島構造となる。
図5に示した弾性率分布において、参考例3の海島構造は、例えば、100MPa超の弾性率を有する海相SPと、100MPa未満の弾性率を有する微小島相SIPと、を有している。海相SPは、プロピレン系樹脂に由来する。粗大島相LIPは、低結晶性樹脂としてのスチレン系エラストマに由来する。粗大島相LIPの大きさは、例えば、100nm超の大きさを有する。
絶縁層130の相構造が上述のように粗大島相LIPのみを有する海島構造である場合では、プロピレン系樹脂を含む海相SPの弾性が、高い状態のまま維持される。このため、電力ケーブル100を屈曲させたときに、海相SPにおいて、割れが生じたり、結晶同士が分離したりする。このため、絶縁層130の絶縁性が低下する可能性がある。
その他、例えば、絶縁層130を構成する樹脂組成物がスチレン系エラストマを含まない場合や、絶縁層130を構成する樹脂組成物が上述の(A)および(B)を満たすが(C)を満たさない場合においても、絶縁層130の相構造が、参考例3と同様の海島構造となる。
(本実施形態:大きさが異なる2つの島相を有する海島構造)
これに対し、本実施形態では、絶縁層130を構成する樹脂組成物が、例えば、上述の(A)、(B)および(C)の要件を満たすことで、絶縁層130の相構造は、例えば、図2に示した海島構造となる。
すなわち、本実施形態では、(A)樹脂組成物が、プロピレン系樹脂と、低結晶性樹脂として、2つのスチレン系エラストマと、を含んでいることで、大きさが互いに異なる2つの島相(第1島相IP1および第2島相IP2)を形成することができる。
本実施形態では、(B)樹脂組成物中のブテン単位の含有量を9質量%以上とすることで、プロピレン系樹脂に対する各スチレン系エラストマの相溶性を確保し、各スチレン系エラストマの過剰な凝集を抑制することができる。これにより、海相SP中に第1島相IP1を微細に分散させることができる。更に、第2島相IP2の過大な凝集を抑制することができる。
本実施形態では、(B)樹脂組成物中のブテン単位の含有量を20質量%未満とすることで、プロピレン系樹脂に対して各スチレン系エラストマが過剰に相溶することを抑制することができる。これにより、共連続構造の形成を抑制することができる。
本実施形態では、後述の新規混合方法を適用することで、樹脂組成物に高いせん断力を印加することができるとともに、シリンダ中の樹脂組成物の滞留時間を充分に確保することができる。これにより、本実施形態の海島構造を安定的に形成することができる。
具体的には、図2の弾性率分布に示すように、本実施形態の海島構造は、例えば、海相SPと、第1島相IP1と、第2島相IP2と、を備えている。
海相SPは、100MPa超の弾性率を有している。海相SPは、プロピレン系樹脂に由来している。海相SPは、弾性率分布全体にわたって広がっている。
第1島相IP1は、100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有している。ここでいう「第1島相IP1の大きさ」とは、第1島相IP1の第1端から最も遠い第2端までを直線で結んだ最大長さのことをいう。
第1島相IP1は、例えば、主に第1スチレン系エラストマに由来している。すなわち、第1島相IP1は、少なくともスチレン単位を含んでいる。第1島相IP1中のスチレン単位は、絶縁層130から採取した試料を重金属により染色することにより、透過電子顕微鏡(TEM)によって観察可能である。
第2島相IP2は、100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有している。ここでいう「第2島相IP2の大きさ」の計測方法は、上述した「第1島相IP1の大きさ」の計測方法と同じである。
第2島相IP2は、例えば、主に第2スチレン系エラストマに由来している。すなわち、第2島相IP2は、少なくともスチレン単位を含んでいる。第2島相IP2中のスチレン単位は、第1島相IP1で述べた方法と同様の方法により、TEMにより観察可能である。
弾性率分布の単位面積に占める第1島相IP1および第2島相IP2の合計面積の割合(以下「島相合計面積割合」ともいう)は、例えば、10%以上70%以下である。島相合計面積割合を10%以上とすることで、海相SPの粗大結晶の形成を抑制することができる。これにより、絶縁層130を柔軟化することができる。一方で、島相合計面積割合を70%以下とすることで、海相SPの絶縁性を確保することができる。
弾性率分布の単位面積に占める第1島相IP1の面積の割合(以下「第1島相面積割合」ともいう)は、例えば、1%以上40%以下である。第1島相面積割合を1%以上とすることで、海相SP中に第1島相IP1を充分に分散させることができる。これにより、絶縁層130を柔軟化することができる。一方で、第1島相合計面積割合を40%以下とすることで、海相SPの絶縁性を確保することができる。
弾性率分布の単位面積に占める第2島相IP2の面積の割合(以下「第2島相面積割合」ともいう)は、例えば、5%以上30%以下である。第2島相面積割合を5%以上とすることで、海相SPの粗大結晶の形成を抑制できる。一方で、第2島相合計面積割合を30%以下とすることで、海相SPの絶縁性を確保することができる。
更に、海相SP中において、第1島相IP1および第2島相IP2を含まない円形の島相フリー領域(図中の破線内領域)の直径は、例えば、5nm以上400nm以下である。島相フリー領域の直径が5nm以上であることで、海相SPの絶縁性を確保することができる。一方で、島相フリー領域の直径が400nm以下であることで、海相SPの粗大結晶の形成を抑制することができる。これにより、絶縁層130を柔軟化することができる。
(4)ケーブル特性
本実施形態では、絶縁層130が上述の海島構造を有していることで、絶縁層130の曲げ耐性を確保しつつ、絶縁層130中の微小異物または微小ボイドを起点とした水トリーの発生を抑制することができる。
(水トリー耐性)
発明者等は、絶縁層130中に取り込まれた微小異物または微小ボイドを模擬した水針を用いて水トリー試験(以下、「水針試験」ともいう)を行うことで、絶縁層130の水トリー耐性を評価した。
ここでいう「水針試験」は、図6に示すように、以下の手順で行われる。
まず、絶縁層130から、六面体のブロックIBを採取する。ブロックIBを採取したら、ブロックIBの第1面S1に平板電極FEを設ける。
平板電極FEを設けたら、ブロックIBの第1面S1と反対の第2面S2から法線方向沿って、針状の空隙を形成する。このとき、ブロックIBの第1面S1から1mmの間隔dをあけて対向する位置に、10μmの曲率半径の先端を有するように、針状の空隙を形成する。
ブロックIBに空隙を形成したら、塩分濃度3.8質量%の人工海水を空隙に注入する。これにより、ブロックIB内に水針WNを形成する。
上述した状態で、平板電極FEと水針WNの先端との間に、1000Hzおよび4kVの交流電圧を200時間印加する。
当該水針試験後に、水針WNの先端に発生した水トリーの長さを計測する。
このように、本実施形態の水針試験では、水針WNの先端が、絶縁層130中に取り込まれた微小異物または微小ボイドを模擬するように鋭くなっている。このため、水針WNの先端付近において、局所的に高い電界が印加される。したがって、本実施形態の水針試験は、絶縁層に均等に電界を印加する従来の水トリー試験と比較して、水トリーが極めて発生し易くなっている。
本実施形態では、水針試験により発生する絶縁層130の水トリーの最大長さは、例えば、200μm以下である。すなわち、上述のような水トリーが発生し易い試験であっても、絶縁層130の水トリーの最大長さを短くすることができる。
(曲げ試験後の絶縁性)
本実施形態では、絶縁層130は、上述の海島構造を有することで、所定の曲げ試験に対する耐性を有している。
ここでいう「曲げ試験」は、例えば、絶縁層130の外径に対する電力ケーブル10の曲げ半径の曲げ比率(以下、単に「曲げ比率」ともいう)が7以下となるように電力ケーブル10を曲げる第1工程と、第1工程の曲げ方向と反対の方向に第1工程の曲げ比率と同じ曲げ比率で電力ケーブル10を曲げる第2工程と、を含む。
ここで、通常のケーブル規格における曲げ試験では、絶縁層の外径に対する電力ケーブルの曲げ半径の曲げ比率を、例えばおよそ20程度にする。
これに対し、本実施形態における曲げ試験における曲げ比率は、通常のケーブル規格における曲げ試験における曲げ比率よりも小さい。このため、本実施形態の曲げ試験では、絶縁層130に加わる曲げ応力が強くなる。その結果、曲げ試験に起因して、絶縁層130内に欠陥が生じやすくなる。
本実施形態では、上述のような曲げ試験後であっても、交流破壊電界強度が高く維持される。
すなわち、本実施形態では、上述の曲げ試験後の常温(例えば25℃)における絶縁層130の交流破壊電界強度は、例えば、50kV/mm以上であり、或いは60kV/mm以上であってもよい。
ここでいう「交流破壊電界強度」とは、常温(25℃)において、0.4mm厚の試料に対して商用周波数(例えば60Hz)の交流電圧を10kVで10分課電した後、1kVごとに昇圧し10分課電するサイクルを繰り返す条件下で印加することにより測定される。
なお、本実施形態では、上述の曲げ試験前の常温(例えば25℃)における絶縁層130の交流破壊電界強度も、当然に、例えば、50kV/mm以上であり、或いは60kV/mm以上である。
(5)電力ケーブルの製造方法
次に、本実施形態の電力ケーブルの製造方法について説明する。
本実施形態の電力ケーブルの製造方法は、例えば、導体準備工程S120と、樹脂組成物準備工程S140と、ケーブルコア形成工程300と、遮蔽層形成工程S400と、シース形成工程S500と、を有している。
(S120:導体準備工程)
複数の導体芯線を撚り合わせることにより形成された導体110を準備する。
(S140:樹脂組成物準備工程)
一方で、プロピレン単位とスチレン単位とを含む樹脂組成物を準備する。
このとき、25℃でSPMを用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、100MPa超の弾性率を有する海相SPと、100MPa以下の弾性率、および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相IP1と、100MPa以下の弾性率、および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相IP2と、を備えるように、樹脂組成物を混合する。
具体的には、本実施形態では、プロピレン系樹脂と、低結晶性樹脂として2つのスチレン系エラストマと、を混合する。すなわち、プロピレン単位もしくはブテン単位、およびスチレン単位を含む第1スチレン系エラストマと、プロピレン単位もしくはブテン単位、およびスチレン単位を含み、第1スチレン系エラストマと異なる第2スチレン系エラストマと、をプロピレン系樹脂中に混合する。
このとき、本実施形態では、樹脂組成物がプロピレン単位、ブテン単位およびスチレン単位を含む場合に、樹脂組成物中のブテン単位の含有量が9質量%以上20質量%未満となるように、プロピレン系樹脂と、低結晶性樹脂としての第1スチレン系エラストマおよび第2スチレン系エラストマと、を混合する。
このとき、本実施形態では、例えば、二軸混合機を用い、樹脂組成物を混合する。二軸混合機を用いることで、ニーダよりも高いせん断力で樹脂組成物を混合することができる。
このとき、本実施形態では、例えば、220℃未満の温度にて、樹脂組成物を混合する。220℃以上の温度で樹脂組成物を混合すると、高い温度に起因して樹脂組成物の粘度が低下する。このため、樹脂組成物に所定のせん断力を印加することが困難となる。これに対し、本実施形態では、混合温度を220℃未満とすることで、樹脂組成物の粘度を高く維持することができる。これにより、樹脂組成物に高いせん断力を印加することができる。その結果、上述した海島構造を安定的に形成することができる。
このとき、本実施形態では、例えば、二軸混合機におけるニーディングディスクの設置条件を調整し、二軸混合機における回転数を調整する。ここで、二軸混合機におけるせん断力は、例えば、ニーディングディスクを変更したり、回転数を変更したりすることで変化し得る。例えば、ニーディングディスクの設置個所が5か所超であり、各回転数が200rpm以上であると、混合時において温度が上昇し易い。これに対し、本実施形態では、例えば、ニーディングディスクの設置個所数を2か所以上5か所以下とし、各回転数を20rpm以上200rpm未満とする。これにより、混合時における220℃以上への温度上昇を抑制することができる。温度上昇を抑制することで、樹脂組成物の粘度の低下を抑制することができる。その結果、二軸混合機における高いせん断力を維持することができる。
このとき、本実施形態では、例えば、二軸混合機のシリンダ内への樹脂組成物の充填率(シリンダ容積に対する樹脂組成物の体積の比率)を高くし、シリンダ中の樹脂組成物の滞留時間を確保する。ここで、通常、二軸混合機のシリンダ内への樹脂組成物の充填率を20%以下とすることで、設備の負荷(スクリューに印加されるトルク)を下げ、吐出量を確保している。これに対し、本実施形態では、二軸混合機のシリンダ内への樹脂組成物の充填率を20%超とすることで、シリンダ中の樹脂組成物の滞留時間を充分に確保することができる。これにより、上述した海島構造を安定的に形成することができる。
以上のようにして、本実施形態では、樹脂組成物において、上述した海島構造を形成することができる。
樹脂組成物を混合したら、当該樹脂組成物を押出機により造粒する。これにより、絶縁層130を構成することとなるペレット状の樹脂組成物が形成される。なお、混合から造粒までの工程を一括して行ってもよい。
(S300:ケーブルコア形成工程(押出工程、絶縁層形成工程))
導体準備工程S120および樹脂組成物準備工程S140およびが完了したら、上述の樹脂組成物を用い、導体110の外周を被覆するように絶縁層130を形成する。
このとき、本実施形態では、上述の樹脂組成物を用いて絶縁層130を押出成形することで、絶縁層130においても、上述の海島構造が形成される。
このとき、本実施形態では、例えば、3層同時押出機を用いて、内部半導電層120、絶縁層130および外部半導電層140を同時に形成する。
具体的には、3層同時押出機のうち、内部半導電層120を形成する押出機Aに、例えば、内部半導電層用組成物を投入する。
絶縁層130を形成する押出機Bに、上記したペレット状の樹脂組成物を投入する。なお、押出機Bの設定温度は、例えば、所望の融点よりも10℃以上50℃以下の温度だけ高い温度に設定する。線速および押出圧力に基づいて、設定温度を適宜調節する。
外部半導電層140を形成する押出機Cに、押出機Aに投入した内部半導電層用樹脂組成物と同様の材料を含む外部半導電層用組成物を投入する。
次に、押出機A~Cからのそれぞれの押出物をコモンヘッドに導き、導体110の外周に、内側から外側に向けて、内部半導電層120、絶縁層130および外部半導電層140を同時に押出す。これにより、ケーブルコアとなる押出材が形成される。
その後、押出材を、例えば、水により冷却する。
以上のケーブルコア形成工程S300により、導体110、内部半導電層120、絶縁層130および外部半導電層140により構成されるケーブルコアが形成される。
(S400:遮蔽層形成工程)
ケーブルコアを形成したら、外部半導電層140の外側に、例えば銅テープを巻回することにより遮蔽層150を形成する。
(S500:シース形成工程)
遮蔽層150を形成したら、押出機に塩化ビニルを投入して押出すことにより、遮蔽層150の外周に、シース160を形成する。
以上により、固体絶縁電力ケーブルとしての電力ケーブル10が製造される。
(6)本実施形態のまとめ
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態では、絶縁層130は、25℃でSPMを用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、100MPa超の弾性率を有する海相SPと、100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相IP1と、100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相IP2と、を備えている。
プロピレン系樹脂を含む海相SP中に、柔軟で且つ微小な第1島相IP1を分散させることで、プロピレン系樹脂を効率よく柔軟化させ、絶縁層130全体としての可撓性を得ることができる。これにより、電力ケーブル10を屈曲させたときに、絶縁層130に曲げ応力が加わったとしても、海相SPにおける割れなどを抑制することができる。その結果、電力ケーブル10を屈曲させたとしても、絶縁層130の絶縁性を確保することができる。
この状態で、プロピレン系樹脂を含む海相SP中に、柔軟で且つ大きな第2島相IP2をさらに分散させることで、たとえ微小異物または微小ボイドを起点として水トリーが発生したとしても、水トリーの伝播を第2島相IP2内で止めることができる。その結果、絶縁層130における微小異物または微小ボイドを起因とした水トリーの過大な伝播を抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、絶縁層130の曲げ耐性を確保しつつ、絶縁層130中の微小異物または微小ボイドを起点とした水トリーの発生を抑制することが可能となる。
(b)本実施形態では、絶縁層130中に取り込まれた微小異物または微小ボイドを模擬した水針試験において、絶縁層130の水トリーの最大長さは、200μm以下である。すなわち、水トリーが発生し易い試験であっても、絶縁層130の水トリーの最大長さを短くすることができる。その結果、たとえ実際の絶縁層130に微小異物または微小ボイドが混入したとしても、水トリーの過大な伝播を抑制することが可能となる。
(c)本実施形態では、曲げ比率を7以下とした曲げ試験後において、常温(例えば25℃)での絶縁層130の交流破壊電界強度は、50kV/mm以上である。なわち、通常のケーブル規格における曲げ試験における曲げ応力よりも強い曲げ応力が絶縁層130に加わる試験であっても、交流破壊電界強度を高く維持することができる。その結果、たとえ実際の電力ケーブル10を屈曲させたとしても、絶縁層130の絶縁性を高く維持することが可能となる。
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
上述の実施形態では、電力ケーブル10が遮水層を有していなくてもよい場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。電力ケーブル10は、簡易的な遮水層を有していてもよい。具体的には、簡易的な遮水層は、例えば、金属ラミネートテープからなる。金属ラミネートテープは、例えば、アルミまたは銅からなる金属層と、金属層の片面または両面に設けられる接着層と、を有している。金属ラミネートテープは、例えば、ケーブルコアの外周(外部半導電層よりも外周)を囲むように縦添えにより巻き付けられる。なお、当該遮水層は、遮蔽層よりも外側に設けられていてもよいし、遮蔽層を兼ねていてもよい。このような構成により、電力ケーブル10のコストを削減することができる。
上述の実施形態では、電力ケーブル10が陸上、水中または水底に布設されるよう構成される場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。例えば、電力ケーブル10は、いわゆる架空電線(架空絶縁電線)として構成されていてもよい。
上述の実施形態では、ケーブルコア形成工程S300において3層同時押出を行ったが、1層ずつ押出してもよい。
次に、本開示に係る実施例を説明する。これらの実施例は本開示の一例であって、本開示はこれらの実施例により限定されない。
(1)電力ケーブルの作製
以下の手順により、サンプルA1~A3、B1~B8の電力ケーブルを製造した。
(1-1)材料準備工程
各サンプルの樹脂成分として、以下の材料を準備した。
(プロピレン系樹脂)
・ランダムポリプロピレン(r-PP):
立体規則性:アイソタクチック
エチレン単位含有量:3質量%、
MFR:1.3g/10min(230℃、2.16kg)、
密度:0.9g/ml、
融点:145℃、
融解熱量:100J/g
(低結晶性樹脂)
・水素化スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SEBS1):
ブテン単位含有量:65質量%、
スチレン単位含有量:5質量%、
MFR:6.0g/10min(230℃、2.16kg)、
硬度:A45、
融点:なし、
融解熱量:なし
・水素化スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SEBS2):
ブテン単位含有量:25質量%、
スチレン単位含有量:30質量%、
MFR:5.0g/10min(230℃、2.16kg)、
硬度:A84、
融点:なし、
融解熱量:なし
・水素化スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SEBS3):
ブテン単位含有量:65質量%、
スチレン単位含有量:12質量%、
MFR:4.5g/10min(230℃、2.16kg)、
硬度:A42、
融点:なし、
融解熱量:なし
・超低密度ポリエチレン(VLDPE):
エチレン-1-ブテン共重合体、
ブテン単位含有量:21質量%、
MFR:6.7g/10min(230℃、2.16kg)、
硬度:A86、
融点:66℃、
融解熱量:10J/g
(1-2)樹脂組成物の混合工程
上述した材料を用い、各サンプルの樹脂組成物を混合した。
(サンプルA1~A3)
サンプルA1~A3において、各モノマ単位の含有量が以下の表1に示した値となるように、r-PPと、SEBS1と、SEBS2と、を混合した。このとき、二軸混合機を用い、200℃の温度で、樹脂を混合した。ニーディングディスクの設置個所を3か所とし、各回転数を100rpmとし、シリンダ内における樹脂組成物の充填率を50%とした。なお、当該方法を、以下で「新規混合方法」ともいう。
(サンプルB1~B7)
サンプルB1~B7において、使用した低結晶性樹脂および各モノマ単位の含有量が異なる点を除いて、サンプルA1と同様に樹脂組成物を混合した。
(サンプルB8)
サンプルB8において、混合方法が異なる点を除いて、サンプルA1と同様に樹脂組成物を混合した。サンプルB8では、ニーダを用い、220℃の温度で樹脂組成物を混合した。
(1-3)後工程
上述のように樹脂組成物を混合する一方で、直径が17mmの希薄銅合金製の導体芯線を撚り合せることにより形成された断面積200mmの導体を準備した。導体を準備したら、エチレン-エチルアクリレート共重合体を含む内部半導電層用樹脂組成物と、上述の樹脂組成物と、内部半導電層用樹脂組成物と同様の材料からなる外部半導電層樹脂組成物と、をそれぞれ押出機A~Cに投入した。押出機A~Cからのそれぞれの押出物をコモンヘッドに導き、導体の外周に、内側から外側に向けて、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を同時に押出した。このとき、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層の厚さを、それぞれ、0.5mm、3.5mm、0.5mmとした。押出工程後、押出材を冷却した。その結果、サンプルA1~A3、B1~B8のそれぞれの電力ケーブルを製造した。
(2)評価
各サンプルにおいて、以下の評価を行った。
(NMR)
上述の各サンプルの絶縁層の一部をオルトクロロベンゼンに溶解させた。この状態で、130℃の温度環境下にて、日本電子社製NMR装置を用い、分析を行った。H-NMRおよび13C-NMRから得られるピーク面積比から、モノマ単位の組成比を算出した。
(SPM)
SPMを用いて、微小領域弾性測定を行った。当該測定では、各サンプルの絶縁層の厚さ方向の中央部から切り出した1mmの厚さを有するシートを使用した。微小領域弾性測定では、25℃で、シリコン(単結晶)からなり曲率半径が7nmである先端を有するカンチレバーにより、試料の1μm角の範囲内を1万6000回タッピングする条件下で、弾性率を測定した。
微小領域弾性測定では、弾性率の閾値を200MPaとした弾性率分布と、弾性率の閾値を100MPaとした弾性率分布とを取得した。各弾性率分布では、視野を1.0μm角とした。
弾性率の閾値を200MPaとした弾性率分布において、各相が分断せずに連続している場合の相構造を「共連続構造(B1)」と判断し、各相が分断している場合の相構造を「海島構造」と判断した。
相構造を「海島構造」と判断した場合に、弾性率の閾値を100MPaとした弾性率分布において、島相の大きさを計測した。その結果、100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、を備える海島構造を、本開示の相構造として、「A」と評価した。第1島相のみを備える海島構造を「B2」と評価した。第2島相のみを備える海島構造を「B3」と評価した。
(水針試験)
図6に示すように、各サンプルにおいて絶縁層からブロックを採取し、上述した水針試験を行った。
水針試験の条件は、以下のように設定した。
水針の先端の曲率半径:10μm
ブロックの第1面上の平板電極から水針の先端までの間隔:1mm
水針内の人工海水の塩分濃度:3.8質量%
周波数:1000MHz
交流電圧:4kV
水針試験後、ブロックを乾燥させ、メチレンブルー水溶液でブロックを煮沸して染色した。ブロックを染色したら、ブロックの水針先端付近をスライスし、観察用スライス片を形成した。その後、観察用スライス片を光学顕微鏡により観察することで、観察用スライス片において、水針先端付近に発生した水トリーを観察した。
このとき、観察用スライス片中に発生した水トリーの最大長さを計測した。「水トリーの最大長さ」は、各サンプルの絶縁層から無作為に抽出した10個のブロックにおいて最も長かった水トリーの長さを四捨五入して求めた。
その結果、水トリーの最大長さが200μm以下である場合を、良好(A)として評価した。水トリーの最大長さが200μm超である場合を、不良(B)として評価した。
(絶縁性評価)
(i)製造直後の絶縁性評価
電力ケーブルの製造直後において、各サンプルの絶縁層から、シートを採取した。シートの厚さは、0.4mmとした。
常温(25℃)において、絶縁層のシートに対して商用周波数(60Hz)の交流電圧を10kVで10分課電した後、1kVごとに昇圧し10分課電することを繰り返す条件下で印加した。絶縁層のシートが絶縁破壊したときの電界強度を測定した。その結果、交流破壊強度が50kV/mm以上である場合を良好(A)とし、交流破壊強度が50kV/mm未満である場合を不良として評価した。
(ii)曲げ試験後の絶縁性評価
(7D曲げ試験)
まず各サンプルの電力ケーブルにおいて、曲げ試験を行った。
曲げ試験の第1工程では、外径(直径)26mmの電力ケーブルを、半径180mmのSUS製のリングの半周に沿わせて押し付けた。つまり、絶縁層の外径(電力ケーブルの外径)に対する電力ケーブルの曲げ半径の曲げ比率が7以下となるように、電力ケーブルを曲げた。その後の第2工程では、第1工程の曲げ方向と反対の方向に第1工程の曲げ比率と同じ曲げ比率で電力ケーブルを曲げた。
(試料採取および交流破壊試験)
曲げ試験後の各サンプルの電力ケーブルにおいて、上述の製造直後の評価と同様に、絶縁層のシートを採取した。曲げ試験後に採取した絶縁層のシートにおいて、上述の製造直後の評価と同様に、交流破壊試験を行った。
(3)結果
以下の表1、図2~図5を参照し、各サンプルの評価を行った結果を説明する。
上述したNMR分析の結果、各サンプルが、表1に示した各モノマ単位の含有量を満たすことを確認した。以下、各サンプルのその他の評価結果について説明する。
(サンプルB1、B5およびB6)
サンプルB1およびB5では、絶縁層中のブテン単位の含有量が20質量%以上であった。サンプルB6では、絶縁層がスチレン単位を含まず、絶縁層中のブテン単位の含有量が20質量%以上であった。
このため、図3の弾性率分布に示すように、サンプルB1、B5およびB6では、絶縁層の相構造が共連続構造B1となっていた。
その結果、サンプルB1、B5およびB6では、曲げ試験後の交流破壊電界強度は50kV/mm以上であった。しかしながら、サンプルB1、B5およびB6では、水針試験における水トリーの最大長さが200μm超であった。
サンプルB1、B5およびB6では、絶縁層の相構造が共連続構造B1であったため、水針試験において水トリーが発生したときに、共連続構造の柔軟相に沿って水トリーが伝播したと考えられる。
(サンプルB2)
サンプルB2では、絶縁層が、低結晶性樹脂としてブテン単位の含有量が多いSEBS1のみを含み、且つ、絶縁層130中のブテン単位の含有量が20質量%未満であった。
このため、図4の弾性率分布に示すように、サンプルB2では、絶縁層の相構造が、微小な第1島相を備えるが、粗大な第2島相を有しない海島構造B2となっていた。
その結果、サンプルB2では、曲げ試験後の交流破壊電界強度は50kV/mm以上であった。しかしながら、サンプルB2では、水針試験における水トリーの最大長さが200μm超であった。
サンプルB2では、絶縁層の相構造が、微小な第1島相のみを備えた海島構造B2であったため、海相に粗大結晶が成長していた。このため、水針試験において水トリーが発生したときに、粗大結晶の界面において水トリーが伝播したと考えられる。
(サンプルB3およびB4)
サンプルB3およびB4では、絶縁層が、低結晶性樹脂としてブテン単位の含有量が少ないSEBS2のみを含み、且つ、絶縁層中のブテン単位の含有量が9質量%未満であった。
このため、図5の弾性率分布に示すように、サンプルB3およびB4では、絶縁層の相構造が、粗大な第2島相を備えるが、微小な第1島相を有しない海島構造B3となっていた。
その結果、サンプルB3およびB4では、水針試験における水トリーの最大長さは、200μm以下であった。しかしながら、サンプルB3およびB4では、曲げ試験後の交流破壊電界強度は50kV/mm未満であった。
サンプルB3およびB4では、曲げ試験において、海相に割れなどが生じたため、曲げ試験後の絶縁性が低下したと考えられる。
(サンプルB7)
サンプルB7では、絶縁層が、低結晶性樹脂としてスチレン単位を含まないVLDPEのみを含んでいた。
このため、サンプルB7では、サンプルB3およびB4と同様に、粗大な島相のみを備える海島構造B3となっていた。
その結果、サンプルB7では、サンプルB3およびB4と同様に海相に割れなどが生じたため、曲げ試験後の交流破壊電界強度は50kV/mm未満となっていた。
(サンプルB8)
サンプルB8では、絶縁層のモノマ単位の組成がサンプルA1と同じであったが、上述の新規混合方法を適用しなかった。
このため、サンプルB8では、絶縁層の相構造が、サンプルB3およびB4と同様に、粗大な島相のみを備える海島構造B3となっていた。
その結果、サンプルB8では、水針試験における水トリーの最大長さは、200μm以下であった。しかしながら、サンプルB8では、曲げ試験後の交流破壊電界強度は50kV/mm未満であった。
サンプルB8では、新規混合方法を適用しなかったため、混合時のせん断力が不足し、樹脂組成物が充分に混合されなかった。このため、サンプルB8では、サンプルA1のような海島構造Aが形成されなかった。その結果、曲げ試験において、海相に割れなどが生じたため、曲げ試験後の絶縁性が低下したと考えられる。
(サンプルA1~A3)
サンプルA1~A3では、絶縁層が、低結晶性樹脂として、SEBS1およびSEBS2を含んでいた。サンプルA1~A3では、絶縁層中のブテン単位の含有量が9質量%以上20質量%未満であった。更に、サンプルA1~A3では、新規混合方法を適用した。
このため、図2に示すように、サンプルA1~A3では、絶縁層の相構造が、微小な第1島相と、粗大な第2島相と、を備えた海島構造Aとなっていた。
その結果、サンプルA1~A3では、曲げ試験後の交流破壊電界強度は50kV/mm以上であった。更に、サンプルA1~A3では、水針試験における水トリーの最大長さは、200μm以下であった。
サンプルA1~A3では、絶縁層の相構造を、微小な第1島相と、粗大な第2島相と、を備えた海島構造Aとしたことで、電力ケーブルを屈曲させたとしても、絶縁層の絶縁性を確保することができたことを確認した。
更に、絶縁層の相構造を、微小な第1島相と、粗大な第2島相と、を備えた海島構造Aとしたことで、絶縁層において、微小異物または微小ボイドを模擬した水針の先端からの水トリーの過大な伝播を抑制することができたことを確認した。
<付記>
以下、本開示の態様を付記する。
(付記1)
電力ケーブルの絶縁層を構成する樹脂組成物であって、
プロピレン単位と、スチレン単位と、を含み、
前記樹脂組成物は、
25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、
100MPa超の弾性率を有する海相と、
100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、
100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、
を備える
樹脂組成物。
(付記2)
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられた絶縁層と、
を備え、
前記絶縁層は、プロピレン単位と、スチレン単位と、を含み、
前記絶縁層は、
25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、
100MPa超の弾性率を有する海相と、
100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、
100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、
を備える
電力ケーブル。
(付記3)
水針試験により発生する前記絶縁層の水トリーの最大長さは、200μm以下である、
ここで、前記水針試験は、
前記絶縁層から採取したブロックの第1面に平板電極を設ける工程と、
前記第1面から1mmの間隔をあけて対向する位置に、10μmの曲率半径の先端を有するように、針状の空隙を形成する工程と、
塩分濃度3.8質量%の人工海水を前記空隙に注入することで、前記ブロック内に水針を形成する工程と、
前記平板電極と前記水針の前記先端との間に、1000Hzおよび4kVの交流電圧を200時間印加する工程と、
を含む
付記2に記載の電力ケーブル。
(付記4)
所定の曲げ試験後の25℃における前記絶縁層の交流破壊電界強度は、50kV/mm以上である、
ここで、前記曲げ試験は、
前記絶縁層の外径に対する電力ケーブルの曲げ半径の曲げ比率が7以下となるように前記電力ケーブルを曲げる第1工程と、
前記第1工程の曲げ方向と反対の方向に前記第1工程の前記曲げ比率と同じ曲げ比率で前記電力ケーブルを曲げる第2工程と、
を含む
付記2または付記3に記載の電力ケーブル。
(付記5)
前記絶縁層は、ブテン単位をさらに含み、
前記絶縁層中の前記ブテン単位の含有量は、9質量%以上20質量%未満である
付記2から付記4のいずれか1項に記載の電力ケーブル。
(付記6)
前記第1島相と、前記第2島相とは、少なくとも前記スチレン単位を含む
付記2から付記5のいずれか1つに記載の電力ケーブル。
(付記7)
前記絶縁層は、
プロピレン系樹脂と、
プロピレン単位もしくはブテン単位、およびスチレン単位を含む第1スチレン系エラストマと、
プロピレン単位もしくはブテン単位、およびスチレン単位を含み、前記第1スチレン系エラストマと異なる第2スチレン系エラストマと、
を有する
付記2から付記6のいずれか1つに記載の電力ケーブル。
(付記8)
前記第2スチレン系エラストマ中の前記プロピレン単位もしくは前記ブテン単位の含有量は、前記第1スチレン系エラストマの前記プロピレン単位もしくは前記ブテン単位の含有量よりも少ない
付記7に記載の電力ケーブル。
(付記9)
前記第2スチレン系エラストマ中の前記スチレン単位の含有量は、前記第1スチレン系エラストマの前記スチレン単位の含有量よりも多い
付記7または付記8に記載の電力ケーブル。
(付記10)
プロピレン単位と、スチレン単位と、を含む樹脂組成物を準備する工程と、
前記樹脂組成物により、導体の外周を覆うように絶縁層を形成する工程と、
を備え、
前記樹脂組成物を準備する工程では、
25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、100MPa超の弾性率を有する海相と、100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、を備えるように、前記樹脂組成物を混合する
電力ケーブルの製造方法。
10 電力ケーブル
110 導体
120 内部半導電層
130 絶縁層
140 外部半導電層
150 遮蔽層
160 シース

Claims (6)

  1. 電力ケーブルの絶縁層を構成する樹脂組成物であって、
    プロピレン単位と、スチレン単位と、を含み、
    前記樹脂組成物は、
    25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、
    100MPa超の弾性率を有する海相と、
    100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、
    100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、
    を備える
    樹脂組成物。
  2. 導体と、
    前記導体の外周を覆うように設けられた絶縁層と、
    を備え、
    前記絶縁層は、プロピレン単位と、スチレン単位と、を含み、
    前記絶縁層は、
    25℃で走査型プローブ顕微鏡を用いた微小領域弾性測定により得られる弾性率分布において、
    100MPa超の弾性率を有する海相と、
    100MPa以下の弾性率および0.1nm以上100nm以下の大きさを有する第1島相と、
    100MPa以下の弾性率および100nm超2000nm以下の大きさを有する第2島相と、
    を備える
    電力ケーブル。
  3. 水針試験により発生する前記絶縁層の水トリーの最大長さは、200μm以下である、
    ここで、前記水針試験は、
    前記絶縁層から採取したブロックの第1面に平板電極を設ける工程と、
    前記第1面から1mmの間隔をあけて対向する位置に、10μmの曲率半径の先端を有するように、針状の空隙を形成する工程と、
    塩分濃度3.8質量%の人工海水を前記空隙に注入することで、前記ブロック内に水針を形成する工程と、
    前記平板電極と前記水針の前記先端との間に、1000Hzおよび4kVの交流電圧を200時間印加する工程と、
    を含む
    請求項2に記載の電力ケーブル。
  4. 所定の曲げ試験後の25℃における前記絶縁層の交流破壊電界強度は、50kV/mm以上である、
    ここで、前記曲げ試験は、
    前記絶縁層の外径に対する電力ケーブルの曲げ半径の曲げ比率が7以下となるように前記電力ケーブルを曲げる第1工程と、
    前記第1工程の曲げ方向と反対の方向に前記第1工程の前記曲げ比率と同じ曲げ比率で前記電力ケーブルを曲げる第2工程と、
    を含む
    請求項2または請求項3に記載の電力ケーブル。
  5. 前記絶縁層は、ブテン単位をさらに含み、
    前記絶縁層中の前記ブテン単位の含有量は、9質量%以上20質量%未満である
    請求項2または請求項3に記載の電力ケーブル。
  6. 前記絶縁層は、
    プロピレン系樹脂と、
    プロピレン単位もしくはブテン単位、およびスチレン単位を含む第1スチレン系エラストマと、
    プロピレン単位もしくはブテン単位、およびスチレン単位を含み、前記第1スチレン系エラストマと異なる第2スチレン系エラストマと、
    を有する
    請求項2または請求項3に記載の電力ケーブル。
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