JP7355106B2 - 多孔体、それを含む燃料電池、およびそれを含む水蒸気電解装置 - Google Patents
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Description
上記骨格の本体は、構成元素としてニッケルとコバルトとを含み、
上記骨格の本体は、上記ニッケルおよび上記コバルトの合計質量に対する上記コバルトの質量割合が0.2以上0.8以下であり、
上記骨格は、その表面の算術平均粗さが0.05μm以上であり、
上記多孔体は、大気中、800℃、16kPaの荷重の条件下で200時間の熱処理を行った後に、外観の形状における体積が1%以上増加する。
このような金属多孔体は、様々なものが知られている。たとえば、特開2012-132083号公報(特許文献1)には、耐酸化性および耐食性の特性を備えた金属多孔体として、ニッケル-スズ合金を主成分とする骨格を有する金属多孔体が開示されている。特開2012-149282号公報(特許文献2)には、高い耐食性を備えた金属多孔体として、ニッケル-クロム合金を主成分とする骨格を有する金属多孔体が開示されている。
上記によれば、燃料電池の空気極用集電体または水素極用集電体として用いた場合、熱による燃料電池用セルの変形が起きても、上記燃料電池用セルと良好な接触が維持できる多孔体、それを含む燃料電池、およびそれを含む水蒸気電解装置を提供することができる。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の一態様に係る多孔体は、三次元網目状構造を有する骨格を備えた多孔体であって、
上記骨格の本体は、構成元素としてニッケルとコバルトとを含み、
上記骨格の本体は、上記ニッケルおよび上記コバルトの合計質量に対する上記コバルトの質量割合が0.2以上0.8以下であり、
上記骨格は、その表面の算術平均粗さが0.05μm以上であり、
上記多孔体は、大気中、800℃、16kPaの荷重の条件下で200時間の熱処理を行った後に、外観の形状における体積が1%以上増加する。
このような特徴を有する多孔体は、燃料電池の空気極用集電体または水素極用集電体として用いた場合、熱による燃料電池用セルの変形が起きても、上記燃料電池用セルと良好な接触が維持できる。
以下、本開示の一実施形態(以下、「本実施形態」とも記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
本実施形態に係る多孔体は、三次元網目状構造を有する骨格を備えた多孔体である。上記骨格の本体は、構成元素としてニッケルとコバルトとを含む。上記骨格の本体は、上記ニッケルおよび上記コバルトの合計質量に対する上記コバルトの質量割合が0.2以上0.8以下である。上記骨格は、その表面の算術平均粗さが0.05μm以上である。上記多孔体は、大気中、800℃、16kPaの荷重の条件下で200時間の熱処理を行った後に、外観の形状における体積が1%以上増加する。このような特徴を有する多孔体は、燃料電池の空気極用集電体または水素極用集電体として用いた場合、熱による燃料電池用セルの変形(例えば、膨張、反り)が起きても、上記燃料電池用セルと良好な接触が維持できる。ここで、本実施形態における「多孔体」としては、たとえば、金属からなる多孔体、当該金属の酸化物からなる多孔体、金属および当該金属の酸化物を含む多孔体が挙げられる。
しかし、本実施形態における多孔体は、後述するように複数の支柱部と複数のノード部とが一体となって三次元網目状構造を形成している。そのため、金属の酸化が起きることによって、外観の形状における体積の膨張が起きやすくなっていると本発明者らは考えている。
ここで、「16kPaの荷重」は、以下のようにして負荷される。すなわち、まず評価用のサンプルとして、2.5cm2のシート状の多孔体を準備する。つぎに、当該サンプルの主面にSUSブロック(1kg)を載せることで、16kPaの荷重を負荷する。
多孔体は、上述のとおり三次元網目状構造を有する骨格を備える。骨格の本体は、構成元素としてニッケルとコバルトとを含む。上記骨格の本体は、上記ニッケルおよび上記コバルトの合計質量に対する上記コバルトの質量割合が0.2以上0.8以下である。上記骨格は、その表面の算術平均粗さが0.05μm以上である。
目付量(g/m2)=M(g)/S(m2)
M:骨格の質量[g]
S:骨格における外観の主面の面積[m2]
骨格の見かけの密度(g/cm3)=M(g)/V(cm3)
M:骨格の質量[g]
V:骨格における外観の形状の体積[cm3]
気孔率(%)=[1-{M/(V×d)}]×100
M:骨格の質量[g]
V:骨格における外観の形状の体積[cm3]
d:骨格を構成する金属の密度[g/cm3]
平均気孔径(μm)=25400μm/nc
多孔体は、三次元網目状構造を有する骨格を備える。本実施形態において「三次元網目状構造」とは、立体的な網目状の構造を意味する。三次元網目状構造は、骨格によって形成される。以下、三次元網目状構造について詳細に説明する。
骨格の本体は、上述のとおり構成元素としてニッケルとコバルトとを含む。骨格の本体は、本開示の多孔体が有する作用効果に影響を与えない限り、ニッケルおよびコバルト以外の第3の成分を含むことを除外するものではない。しかしながら骨格の本体は、金属成分としては上記の2成分(ニッケルおよびコバルト)からなることが好ましい。具体的には、骨格の本体は、ニッケルおよびコバルトからなるニッケル-コバルト合金を含むことが好ましい。特に、ニッケル-コバルト合金は、骨格の本体における主成分であることが好ましい。ここで骨格の本体における「主成分」とは、骨格の本体において占める質量割合が最も多い成分をいう。より具体的には、骨格の本体における「主成分」とは、骨格の本体における質量割合が50質量%を超える成分をいう。
骨格の本体は、ニッケルおよびコバルトの合計質量に対するコバルトの質量割合が0.2以上0.8以下である。好ましくは、当該コバルトの質量割合が0.2以上0.6以下である。このような組成を有する骨格を備える多孔体をSOFCの空気極用集電体または水素極用集電体などに用いた場合、上記骨格は酸化しても十分な強度を維持することができる。また、酸化によってNi3-xCoxO4(ただし、0.6≦x≦2.4)、典型的にはNiCo2O4またはNi2CoO4の化学式で示されるスピネル型酸化物が骨格本体中に生成される。骨格本体の酸化によりCoCo2O4の化学式で示されるスピネル型酸化物が生成される場合もある。スピネル型酸化物は、高い導電性を示し、もって多孔体は、高温環境下での使用によって骨格本体の全体が酸化された場合にも高い導電性を維持することができる。
骨格の本体は、構成元素としてさらに酸素を含むことが好ましい。具体的には、酸素は、上記骨格の本体において0.1質量%以上35質量%以下含まれることがより好ましい。骨格本体中の酸素は、たとえば多孔体をSOFCの空気極用集電体または水素極用集電体として用いた後に検出され得る。すなわち多孔体を700℃以上の高温に曝した後の状態で、酸素は、上記骨格の本体において0.1質量%以上35質量%以下含まれることが好ましい。酸素は、上記骨格の本体において10質量%以上30質量%以下含まれることがより好ましく、25質量%以上28質量%以下含まれることがさらに好ましい。
骨格の本体は、本開示の多孔体が有する作用効果に影響を与えない限り、上述のように第3の成分を構成元素として含むことができる。骨格の本体は、第3の成分としてたとえばケイ素、マグネシウム、炭素、スズ、アルミニウム、ナトリウム、鉄、タングステン、チタン、リン、ホウ素、銀、金、クロム、モリブデンなどが含まれていてもよい。これらの成分は、たとえば後述する製造方法において混入が不可避となる不可避不純物として含まれる場合がある。たとえば不可避不純物の一例として、後述の導電化処理により形成される導電被覆層に含まれる元素などを挙げることができる。さらに骨格の本体は、第3の成分として上述の酸素が、多孔体をSOFCの空気極用集電体または水素極用集電体として用いる前の状態において含まれていてもよい。骨格本体中において第3の成分は、これら単独で5質量%以下であることが好ましく、これらの合計で10質量%以下であることが好ましい。
X線回折法: θ-2θ法
測定系: 平行ビーム光学系ミラー
スキャン範囲(2θ): 10~90°
積算時間: 1秒/ステップ
ステップ: 0.03°。
本実施形態に係る燃料電池は、空気極用集電体および水素極用集電体を備える燃料電池である。上記空気極用集電体または上記水素極用集電体の少なくとも一方は、上記の多孔体を含む。上記空気極用集電体または水素極用集電体は、上述のように、熱による燃料電池用セルの変形(例えば、膨張)が起きても、上記燃料電池用セルと良好な接触が維持できる多孔体を含む。そのため上記空気極用集電体または水素極用集電体は、作動時に700℃以上の高温となるSOFCの空気極用集電体または水素極用集電体の少なくとも一方として好適である。上記燃料電池は、多孔体がニッケルおよびコバルトを含むため、上記多孔体を空気極用集電体として用いることがより好適である。
本実施形態に係る水蒸気電解装置(「水蒸気電気分解装置」ともいう。)は、空気極用集電体および水素極用集電体を備える水蒸気電解装置であり、上記燃料電池と同様の構造を備える。上記空気極用集電体または上記水素極用集電体の少なくとも一方は、上記の多孔体を含む。上記空気極用集電体または水素極用集電体は、上述のように水蒸気電解装置用の集電体として適度な強度を有する多孔体を含む。そのため上記空気極用集電体または水素極用集電体は、水蒸気電解装置の空気極用集電体または水素極用集電体の少なくとも一方として好適である。上記水蒸気電解装置は、多孔体がニッケルおよびコバルトを含むため、上記多孔体を空気極用集電体として用いることがより好適であり、一例として抵抗が下がり電解電圧が下がる効果がある。
本実施形態に係る多孔体は、例えば、以下の方法によって製造することが可能である。
すなわち、上記多孔体の製造方法であって、
三次元網目状構造を有する樹脂成形体に導電被覆層を形成することにより導電性樹脂成形体を得る工程(第1工程)と、
上記導電性樹脂成形体上にニッケルめっきを行なうことにより第一多孔体前駆体を得る工程(第2工程)と、
上記第一多孔体前駆体上にコバルトめっきを行うことにより第二多孔体前駆体を得る工程(第3工程)と、
上記第二多孔体前駆体に対して熱処理を行なって、導電性樹脂成形体中の樹脂成分を焼却し、これを除去することにより第三多孔体前駆体を得る工程(第4工程)と、
得られた上記第三多孔体前駆体を還元雰囲気で熱処理することで、ニッケルとコバルトとが熱拡散することにより多孔体を得る工程(第5工程)と、
を含む多孔体の製造方法により、多孔体を製造することができる。なお、第2工程後に第4工程を行い、その後、第3工程を実施し、その後第5工程を経ても、同様の多孔体を製造することが可能である。
まず、三次元網目状構造を有する樹脂成形体(以下、単に「樹脂成形体」とも記す。)のシートを準備する。樹脂成形体としてポリウレタン樹脂、メラミン樹脂などを用いることができる。さらに、樹脂成形体に導電性を付与する導電化処理として、樹脂成形体の表面に導電被覆層を形成する。この導電化処理としては、たとえば以下の方法を挙げることができる。
(1)カーボン、導電性セラミックなどの導電性粒子およびバインダーを含有した導電性塗料を、塗布、含浸などの手段により樹脂成形体の表面に含ませること、
(2)無電解めっき法によってニッケルおよび銅などの導電性金属による層を樹脂成形体の表面に形成すること、
(3)蒸着法またはスパッタリング法によって導電性金属による層を樹脂成形体の表面に形成すること。これにより、導電性樹脂成形体を得ることができる。
次に、上記導電性樹脂成形体上にニッケルめっきを行なうことにより第一多孔体前駆体を得る。ニッケルめっきの方法は、無電解めっきを適用することもできるが、効率の観点から電解めっき(所謂ニッケルの電気めっき)を用いることが好ましい。ニッケルの電解めっきでは、導電性樹脂成形体をカソードとして用いる。
塩(水溶液): スルファミン酸ニッケル(350~450g/L)
ホウ酸 : 30~40g/L
pH : 4~4.5。
温度: 40~60℃
電流密度: 0.5~10A/dm2
アノード: 不溶性陽極。
第3工程では、上記第一多孔体前駆体上にコバルトめっきを行うことにより第二多孔体前駆体を得る。コバルトめっきの方法は、無電解めっきを適用することもできるが、効率の観点から電解めっき(所謂コバルトの電気めっき)を用いることが好ましい。コバルトの電解めっきでは、第一多孔体前駆体をカソードとして用いる。
塩(水溶液): スルファミン酸コバルト(350~450g/L)
ホウ酸 : 30~40g/L
pH : 4~4.5。
温度: 40~60℃
電流密度: 0.5~10A/dm2
アノード: 不溶性陽極。
続いて、上記第二多孔体前駆体に対して熱処理を行なって、導電性樹脂成形体中の樹脂成分を焼却し、これを除去することにより第三多孔体前駆体を得る。上記樹脂成分を除去するための熱処理の温度および雰囲気は、たとえば600℃以上とし、大気などの酸化性雰囲気とすればよい。
得られた上記第三多孔体前駆体を還元雰囲気で熱処理することで、ニッケルとコバルトとが熱拡散することにより多孔体を得る。このとき、ニッケルのめっきおよびコバルトのめっきは、熱拡散により所定の表面粗さを有し且つ均一なニッケル-コバルト合金の膜とすることができる。還元雰囲気としては例えば、H2ガス雰囲気、COガス雰囲気などが挙げられる。本実施形態において、上記第三多孔体前駆体は、H2ガス雰囲気で熱処理することが好ましい。熱処理温度、時間は、後述のものに限定されるわけではないが、例えば、1000℃で3時間、又は、1100℃で20分などが挙げられる。これにより、三次元網目状構造を有する骨格を備えた多孔体を得ることができる。また、当該骨格は、その表面の算術平均粗さが0.05μm以上である。
(付記1)
三次元網目状構造を有する骨格を備えた多孔体であって、
前記骨格の本体は、構成元素としてニッケルとコバルトとを含み、
前記骨格の本体は、前記ニッケルおよび前記コバルトの合計質量に対する前記コバルトの質量割合が0.2以上0.8以下であり、
前記骨格は、その表面粗さが0.05μm以上であり、
前記多孔体は、大気中、800℃、16kPaの荷重の条件下で200時間の熱処理を行った後に、外観の形状における体積が1%以上増加する、多孔体。
<試料1~試料5>
以下の手順で試料1~試料5の多孔体を作製した。
まず三次元網目状構造を有する樹脂成形体として1.5mm厚のポリウレタン樹脂製シートを準備した。このポリウレタン樹脂製シートの気孔率および平均気孔径を上述の計算式に基づいて求めたところ、上記気孔率は96%であり、上記平均気孔径は450μmであった。
上記導電性樹脂成形体をカソードとし、下記の浴組成および電解条件の下でニッケルの電解めっきを行なった。これにより、導電性樹脂成形体上にニッケルを660g/m2付着させ、もって第一多孔体前駆体を得た。
塩(水溶液): スルファミン酸ニッケル(400g/L)
ホウ酸: 35g/L
pH: 4.5。
温度: 50℃
電流密度: 5A/dm2
アノード: 不溶性陽極。
(第3工程)
上記第一多孔体前駆体をカソードとし、下記の浴組成および電解条件の下でコバルトの電解めっきを行なった。これにより、骨格にニッケルのめっきおよびコバルトのめっきを含む第二多孔体前駆体を得た。なお、ニッケルおよびコバルトの合計質量に対するコバルトの質量割合を、0.9(試料1)、0.8(試料2)、0.6(試料3)、0.3(試料4)、又は0.1(試料5)にそれぞれ調整するため、ニッケルのめっき量に応じてコバルトめっきの通電時間を調整した。
塩(水溶液): スルファミン酸コバルト(400g/L)
ホウ酸: 35g/L
pH: 4.5。
温度: 50℃
電流密度: 5A/dm2
アノード: 不溶性陽極。
上記第二多孔体前駆体に対して熱処理を行なって、導電性樹脂成形体中の樹脂成分を焼却し、これを除去することにより第三多孔体前駆体を得た。上記樹脂成分を除去するための熱処理の温度を650℃とし、その雰囲気を大気雰囲気とした。
得られた上記第三多孔体前駆体を還元雰囲気(H2ガス雰囲気)で、熱処理することで、ニッケルとコバルトとが熱拡散することにより試料1~試料5の多孔体を得た。上記熱処理の温度および時間は、1000℃、300分であった。
第2工程において用いる浴組成に関し、スルファミン酸ニッケル(400g/L)の水溶液の代わりに、スルファミン酸ニッケルおよびスルファミン酸コバルトの水溶液を用いたこと、および第3工程を実施しなかったことを除いて、試料1と同じ工程によって試料6の多孔体を作製した。ここで、スルファミン酸ニッケルおよびスルファミン酸コバルトの水溶液は、NiおよびCoの合計量を400g/Lとし、Co/(Ni+Co)の質量比を0.8(80質量%)とした。
試料7および試料8として、市販されているSUSメッシュ(材質;SUS304、織方;平織、メッシュ数;10、線径;0.5mm)およびSUS不織布(材質;SUS316L、単位面積当たりの重量;120g/m2、線径;12μm、厚み;0.5mm)をそれぞれ準備した。
第3工程を実施しなかったことを除いて、試料1と同じ工程によって試料9の多孔体を作製した。
第3工程において用いる浴組成に関し、硫酸第一スズ(20g/L)、硫酸(100g/L)を用いたこと以外は、試料1と同じ工程によって試料10の多孔体を作製した。なお、ニッケルおよびスズの合計質量に対するスズの質量割合を、0.15に調整するため、ニッケルのめっき量に応じてスズめっきの通電時間を調整した。
第3工程において用いる浴組成に関し、クロム酸230g/L、ケイフッ化ナトリウム5g/L、硫酸1g/Lを使用する以外は、試料1と同じ工程によって試料11の多孔体を作製した。なお、ニッケルおよびクロムの合計質量に対するクロムの質量割合を、0.3に調整するため、ニッケルのめっき量に応じてクロムめっきの通電時間を調整した。
<多孔体の物性分析>
上述の方法により得た試料1~試料6の多孔体に関し、これらの骨格の本体におけるニッケルおよびコバルトの合計質量に対するコバルトの質量割合を、それぞれ上記SEMに付帯のEDX装置(SEM部分:商品名「SUPRA35VP」、カールツァイスマイクロスコピー株式会社製、EDX部分:商品名「octane super」、アメテック株式会社製)を用いて調べた。具体的には、まず各試料の多孔体を切断した。次に切断された多孔体の骨格の断面を、上記EDX装置によって観察し、検出された各元素の原子濃度に基づいて当該コバルトの質量割合を求めた。その結果を表1に示す。
試料1~試料11における骨格の算術表面粗さ(Ra)をレーザー顕微鏡VK-X1000(キーエンス株式会社製)にて測定した。このとき、少なくとも1つの支柱部の幅方向が1つの視野に収まるように倍率を1000倍で測定した。また、測定する範囲は、上記支柱部の幅方向の中央を通り、上記支柱部の長手方向に対して平行な任意の20μm長の範囲とした。この測定を1つの多孔体に対して10視野行い、得られた値の平均値を各試料における骨格の算術表面粗さ(Ra)とした。なお、上記算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2001)に規定された算術平均粗さを意味している。結果を表1に示す。
以下の手順で、試料1~試料11における熱処理後の厚みの評価を行った。試料2~試料4は実施例であり、試料1および試料5~試料11は比較例である。まず、評価用のサンプルとして、2.5cm2のシート状となるように、試料1~試料11をそれぞれ準備した。つぎに、当該サンプルの主面にSUSブロック(1kg)を載せることで、16kPaの荷重を負荷した。上記サンプルに荷重を負荷した状態を維持しながら、大気中、800℃の条件下で所定の時間(150時間~1000時間)の熱処理を行った。その後、デジタルシックネスゲージを用いて、上記サンプルの厚みを測定し、熱処理前の厚みに対する変化率を求めた。結果を表1および図10に示す。
さらに試料1~試料11を空気極用集電体として、エルコーゲン社製のYSZセル(図9)と共に燃料電池を作製し(図8)、以下の手順で1000時間駆動後の最大出力電力維持率を評価した。
まず、駆動前の燃料電池と1000時間駆動(0.3A/cm2の定電流駆動)後の燃料電池とに対して、電流値(I)を変えて電圧値(V)を測定してI-V特性を得た。
次に、電流値Iに対し、出力電力(I×V)をプロットした。得られたプロットにおいて出力電力が極大となる点を最大出力電力とした。その後、以下の式に基づいて、最大出力電力維持率を算出した。結果を表1に示す。最大出力電力維持率が90%以上である場合、合格品(評価A)であるとし、90%未満である場合、不合格品(評価R)であるとした。
最大出力電力維持率(%)=(1000時間駆動後の最大出力電力)/(駆動前の最大出力電力)×100
Claims (9)
- 三次元網目状構造を有する骨格を備えた多孔体であって、
前記三次元網目状構造は、複数のセル部が接合することによって形成され、
前記セル部は、支柱部と複数の前記支柱部を繋ぐノード部とを備え、
前記骨格の本体は、構成元素としてニッケルとコバルトとを含み、
前記骨格の本体は、前記ニッケルおよび前記コバルトの合計質量に対する前記コバルトの質量割合が0.2以上0.8以下であり、
前記骨格は、その表面の算術平均粗さが0.05μm以上であり、
前記算術平均粗さは、JIS B 0601(2001)に規定された算術平均粗さであり、
前記多孔体は、シート状の外観を有し、
前記多孔体は、大気中、800℃、16kPaの荷重の条件下で200時間の熱処理を行った後に、外観の形状における厚みが1%以上増加する、多孔体。 - 前記骨格の本体は、構成元素としてさらに酸素を含む、請求項1に記載の多孔体。
- 前記酸素は、前記骨格の本体において0.1質量%以上35質量%以下含まれる、請求項2に記載の多孔体。
- 前記骨格の本体は、スピネル型酸化物を含む、請求項2または請求項3に記載の多孔体。
- 前記骨格の本体は、その断面を3000倍の倍率で観察することにより観察像を得た場合、前記観察像の任意の10μm四方の領域において現われる長径1μm以上の空隙の数が5個以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多孔体。
- 前記骨格は、中空である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多孔体。
- 前記多孔体は、厚みが0.2mm以上2mm以下である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の多孔体。
- 空気極用集電体および水素極用集電体を備える燃料電池であって、
前記空気極用集電体または前記水素極用集電体の少なくとも一方は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の多孔体を含む、燃料電池。 - 空気極用集電体および水素極用集電体を備える水蒸気電解装置であって、
前記空気極用集電体または前記水素極用集電体の少なくとも一方は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の多孔体を含む、水蒸気電解装置。
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