JP7354895B2 - 高分子組成物、キット、及び、物質吸着膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、物質の吸着による物理パラメータの変化を検出できるセンサー素子を構成する物質吸着膜の形成に使用するための高分子組成物に関する。
匂いセンサー等のガスセンサーが、様々な用途に利用されている。例えば、食品の腐敗によって発生する匂いを検知し、冷蔵庫内で食品の品質を管理するための匂いセンサーが知られている。また、例えば、食品及び香料の品質管理及び官能評価に利用するための匂いセンサーが知られている。
このような匂いセンサー等のガスセンサーとして、水晶振動子、表面弾性波素子等の圧電素子を有する圧電センサーが知られている。これら圧電センサーは、物質吸着膜を有し、その物質吸着膜に匂い物質が吸着することによる質量変化を感知して、匂い物質を検出する(特許文献1)。
また、表面プラズモン共鳴を利用した表面プラズモン共鳴センサーは、センサー素子上の物理量変化を検出し、匂いセンサーへの応用が可能である。
国際公開第2017/085939号
近年は、電子機器の小型化が進んでいる。これに伴って、匂いセンサーにおいても、小型化のニーズが高まっている。そのため、センサー素子には小型化が要求されており、従来よりも小径の物質吸着膜を形成する技術のニーズが高まってきている。物質吸着膜は、例えば、当該物質吸着膜の材料及び溶媒を含む液状組成物を用意し、この液状組成物をセンサー素子のトランスデューサ部上に塗布及び乾燥して形成される。
具体的な物質吸着膜の形成方法としては、例えば、スピンコート法を用いる形成方法が挙げられる。この形成方法では、通常、トランスデューサ部上に液状組成物を滴下し、トランスデューサ部を回転させて液状組成物を塗り広げて、物質吸着膜を形成する。しかし、スピンコート法では、塗り広げ時に膜材料の無駄が生じやすい。また、スピンコート法では、膜の小径化への対応が困難である。
別の物質吸着膜の形成方法としては、例えば、スプレーコート法を用いる形成方法が挙げられる。この形成方法では、通常、トランスデューサ部の塗布が不要な部分をマスクで覆った状態で、液状組成物をスプレー塗布して、物質吸着膜を形成する。この形成方法では、比較的小径の膜の形成が可能である。しかし、スプレーコート法では、マスクに液状組成物が付着するので、膜材料の無駄が生じやすい。また、マスクを用意することが求められるので、当該マスクの製造コスト及び生産性に課題がある。
そこで、本発明者は、液体定量吐出装置としてのディスペンサに着目した。ディスペンサを用いる物質吸着膜の形成方法では、通常、ディスペンサのノズルとしてのニードルからトランスデューサ部上に液状組成物を吐出し、物質吸着膜を形成する。ディスペンサを用いる形成方法は、膜材料の無駄を抑制でき、更にマスクが不要であることから、コスト及び生産性に優れる。ディスペンサとしては、エアパルス式ディスペンサ、メカニカル式ディスペンサ、ジェットディスペンサ等の、収納容器とそれに接続するノズルとを備えるディスペンサが好適に使用される。
ところで、ディスペンサには、ノズルを用いた液状組成物の吸引及び吐出によって塗布を達成するタイプのものがある。このタイプのディスペンサは、当該ディスペンサとは別に用意された液状組成物をノズルで吸引し、その吸引した液状組成物をノズルから吐出して、塗布を行う。このタイプのディスペンサにおいては、液状組成物の吸引を容易に円滑に行うために、液状組成物は大気中に開放された器に用意されることが一般的である。しかし、このタイプのディスペンサを使用する場合には、連続生産中、液状組成物が外気に曝されるために、乾燥によってその粘度が上昇することがある。また、液状組成物の吸引の際、ノズルが液状組成物中に差し込まれるので、ノズルの側面へ液状組成物が付着することがある。このような液状組成物の付着があると、乾燥によりノズルが詰まり易くなる。よって、物質吸着膜を連続して形成する場合に、生産性が低下しやすかった。
他方、ノズルを通さないで液状組成物を収納された収納容器と、それに接続されたノズルとを備えるディスペンサを用いる場合、収納容器内へと液状組成物を収納する際にノズルの側面へ液状組成物が付着することが無い。また、このタイプのディスペンサでは、通常、収納容器が大気から閉鎖されているので、乾燥による液状組成物の粘度の上昇が抑制される。
しかし、このタイプのディスペンサを用いる形成方法では、複数の物質吸着膜を連続して形成した場合に、物質吸着膜の形状及び面積にバラツキが生じるという課題があった。このバラツキは、物質の吸着量を測定する匂いセンサーの測定再現性に多大な影響を及ぼす重要なパラメータである。よって、バラツキを抑制して、物質吸着膜の形成の再現性を高めることができる技術の開発が望まれる。また、匂いセンサー等の物質吸着膜を備えるセンサー素子を用いた測定では、測定値の再現性が問題となる場合が多いが、これまで必ずしも再現性に満足いくものが得られておらず、測定再現性を高めることができる技術の開発が望まれる。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、物質吸着膜を高い再現性で形成でき、かつ測定再現性にも優れる高分子組成物;前記の高分子組成物を含む物質吸着膜の形成用のキット;並びに、前記の高分子組成物を用いた物質吸着膜の形成方法;を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、所定の範囲の沸点及び蒸気圧を有する第一溶媒を含み、所定の範囲の粘度を有する高分子組成物を用いることにより、物質吸着膜を高い再現性で形成でき、かつ測定再現性も高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
〔1〕 高分子化合物を含む物質吸着膜と、前記物質吸着膜を表面に備え前記物質吸着膜への物質の吸着によって生じる物理パラメータの変化を検出できるトランスデューサ部と、を備えるセンサー素子の前記物質吸着膜を形成するために、ディスペンサを用いて前記トランスデューサ部に塗布されるための高分子組成物であって、
前記ディスペンサが、前記高分子組成物を吐出できるノズルと、前記ノズルと接続され、前記ノズルを通さずに前記高分子組成物を収納されることができる容器と、を備え、
前記高分子組成物の25℃における粘度が、1mPa・sec~8000mPa・secであり、
前記高分子組成物が、前記高分子化合物及び溶媒を含み、
前記溶媒が、1013hPaにおける沸点が110℃~250℃であり、且つ、20℃における蒸気圧が0.001kPa~1.0kPaである第一溶媒を含む、高分子組成物。
〔2〕 前記第一溶媒の1013hPaにおける沸点が、170℃~250℃であり、且つ、
前記第一溶媒の20℃における蒸気圧が、0.001kPa~0.5kPaである、〔1〕に記載の高分子組成物。
〔3〕 前記溶媒の総量100質量%に対する前記第一溶媒の量が、30質量%~100質量%である、〔1〕又は〔2〕に記載の高分子組成物。
〔4〕 前記高分子組成物100質量%に対する高分子化合物の量が、1質量%~70質量%である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の高分子組成物。
〔5〕 前記センサー素子が、匂い物質又はガス分子の検出用のセンサー素子である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の高分子組成物。
〔6〕 前記ディスペンサが、エアパルス式ディスペンサまたはメカニカル式ディスペンサである、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の高分子組成物。
〔7〕 前記ディスペンサが、エアパルス式ディスペンサである、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の高分子組成物。
〔8〕 前記ノズルの内径が、20μm~1000μmである、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の高分子組成物。
〔9〕 高分子化合物を含む物質吸着膜と、前記物質吸着膜を表面に備え前記物質吸着膜への物質の吸着によって生じる物理パラメータの変化を検出できるトランスデューサ部と、を備えるセンサー素子の前記物質吸着膜を、ディスペンサを用いて形成するためのキットであって、
前記ディスペンサが、容器を取り付けられることができる容器取付部と、前記容器取付部に取り付けられた前記容器と接続されることができるノズルと、を備え、
前記キットが、前記容器と、前記容器に前記ノズルを通さずに収納された〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の高分子組成物と、を備える、キット。
〔10〕 高分子化合物を含む物質吸着膜と、前記物質吸着膜を表面に備え前記物質吸着膜への物質の吸着によって生じる物理パラメータの変化を検出できるトランスデューサ部と、を備えるセンサ素子の、前記物質吸着膜の形成方法であって、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の高分子組成物を、ディスペンサを用いて、前記トランスデューサ部の表面に塗布する工程と、
塗布された高分子組成物を乾燥させる工程を含み、
前記ディスペンサが、前記高分子組成物を吐出できるノズルと、前記ノズルと接続され、前記ノズルを通さずに前記高分子組成物を収納された容器と、を備える、物質吸着膜の形成方法。
本発明によれば、物質吸着膜を高い再現性で形成でき、かつ測定再現性も高めることができる高分子組成物;前記の高分子組成物を含む物質吸着膜の形成用のキット;並びに、前記の高分子組成物を用いた物質吸着膜の形成方法;を提供できる。
図1は、一例に係るディスペンサを用いてトランスデューサ部の表面に高分子組成物を塗布する様子を模式的に示す正面図である。 図2は、一例としてのセンサー素子を模式的に示す上面図である。 図3は、一例としてのセンサー素子を模式的に示す側面図である。 図4は、一例としてのセンサー装置を模式的に示す概略図である。
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
[1.高分子組成物の概要]
本発明の一実施形態に係る高分子組成物は、高分子化合物及び溶媒を含む。また、この高分子組成物は、所定の範囲の粘度を有する。さらに、溶媒は、所定の範囲の沸点を有し且つ所定の範囲の蒸気圧を有する第一溶媒を含む。
前記の高分子組成物は、高分子化合物を含む物質吸着膜と、前記物質吸着膜を表面に備え前記物質吸着膜への物質の吸着によって生じる物理パラメータの変化を検出できるトランスデューサ部と、を備えるセンサー素子の、前記物質吸着膜を形成するために用いられる。用語「吸着」は、別に断らない限り、物理吸着だけではなく、化学結合又は生化学的な作用による吸着も含む。また、この高分子組成物は、ディスペンサを用いてトランスデューサ部に塗布されるための組成物であり、前記のディスペンサは、高分子組成物を吐出できるノズルと、ノズルと接続され、ノズルを通さずに高分子組成物を収納されることができる容器と、を備える。前記の高分子組成物を用いることにより、物質吸着膜を高い再現性で形成すること、及び、高い測定再現性を達成すること、が可能である。
以下の説明では、ディスペンサが備える前記の容器を、適宜「収納容器」と呼ぶことがある。また、以下の説明では、前記のノズル及び収納容器を備えるディスペンサを、適宜「非吸引型ディスペンサ」と呼ぶことがある。
[2.高分子化合物]
高分子化合物としては、無機化合物を用いてもよいが、有機化合物を用いることが好ましい。高分子化合物としては、適切な繰り返し単位を有する規則性の高い高分子化合物が好ましい。このような高分子化合物を用いた場合、センサー素子によって検出したい物質(以下、適宜「目的物質」ということがある。)の適切な検出が可能な物質吸着膜を得やすい。
通常、物質吸着膜を備えるセンサー素子を用いた検出では、物質吸着膜に吸着した物質の検出が行われる。よって、高分子化合物の具体的な種類は、目的物質に応じて選択することが好ましい。好ましい高分子化合物の具体例としては、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、イミド樹脂、ウレタン樹脂、セルロースポリマー、変性セルロース、ビニルピリジンポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリスルホン、シクロオレフィンポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、シリコーン樹脂、ポリブタジエン、及びこれらの共重合体などが挙げられる。これらの高分子化合物には、目的物質の吸着し易さを調整するために、適切な官能基が導入されていてもよい。
通常、形成される物質吸着膜が常温で固体であることから、高分子化合物も、常温では固体であることが好ましい。
高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは500~100万、より好ましくは1000~50万である。このような範囲の重量平均分子量を有する高分子化合物を用いた場合、目的物質の適切な検出が可能な物質吸着膜を得やすい。
高分子化合物の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
高分子組成物において、高分子化合物は、溶媒に分散していてもよいが、高分子組成物のポットライフを長くする観点から、溶媒に溶解していることが好ましい。
高分子組成物100質量%に対する高分子化合物の量は、好ましくは1質量%~70質量%、より好ましくは2質量%~60質量%、更に好ましくは2質量%~50質量%である。前記のような量の高分子化合物を用いた場合、所望の粘度の高分子組成物を容易に得ることができる。
[3.溶媒]
溶媒は、所定の範囲の沸点を有し且つ所定の範囲の蒸気圧を有する第一溶媒を含む。
具体的には、非吸引型ディスペンサにより物質吸着膜を高い再現性で形成する観点、及び高い測定再現性を達成する観点から、第一溶媒の1013hPaにおける沸点は、通常110℃以上、好ましくは115℃以上、より好ましくは140℃以上であり、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは225℃以下である。沸点は沸点上昇計法又は蒸留法により測定できる。
また、同様に、非吸引型ディスペンサにより物質吸着膜を高い再現性で形成する観点、及び高い測定再現性を達成する観点から、第一溶媒の20℃における蒸気圧は、通常0.001kPa以上、好ましくは0.002kPa以上、より好ましくは0.003kPa以上であり、通常1.0kPa以下、好ましくは0.9kPa以下、より好ましくは0.6kPa以下である。蒸気圧は、静止法又は沸点法により測定できる。
前記の要件を満たす第一溶媒を含む高分子組成物は、適切な乾き易さを有することができる。よって、高分子組成物が非吸引型ディスペンサから吐出されてから、その吐出された高分子組成物がトランスデューサ部の表面に定着するまでの期間において、溶媒の乾燥による大きな粘度変化の発生を抑制できる。例えば、非吸引型ディスペンサのノズル先端で高分子組成物が乾燥して大きな粘度上昇が生じることを抑制できる。よって、ノズルの先端部に高分子組成物の乾燥物が詰まることを抑制できるので、この乾燥物の詰まりによって吐出量が経時的に変化することを抑制できる。さらに、高分子組成物がトランスデューサ部の表面へ塗布されてから溶媒が乾燥して物質吸着膜が得られるまでの間の面積変化を、高い再現性で一定にすることができる。したがって、所望の形状及び大きさの物質吸着膜を、高い再現性で容易に形成することが可能である。さらに、前記の要件を満たす第一溶媒を含む高分子組成物は、物質吸着膜への溶媒の残留を抑制できるので、ノイズの発生を抑制でき、高い測定再現性を達成することが可能である。
さらに、非吸引型ディスペンサによる塗布をより安定して連続的に行う観点から、第一溶媒の1013hPaにおける沸点は、170℃以上が好ましく、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは185℃以上であり、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは225℃以下である。
また、同様に、非吸引型ディスペンサによる塗布をより安定して連続的に行う観点から、第一溶媒の20℃における蒸気圧は、通常0.001kPa以上、好ましくは0.002kPa以上、より好ましくは0.003kPa以上であり、好ましくは0.5kPa以下、より好ましくは0.4kPa以下、さらに好ましくは0.3kPa以下である。
一般に、非吸引型ディスペンサによる塗布を行う際、塗布する箇所の指定を行う等のため、高分子組成物を収納したシリンジ等の収納容器を非吸引型ディスペンサに取り付けた状態で所定の静置時間を要することがある。この際、静置すると、高分子組成物の全体もしくは一部に粘度上昇が生じ、その高分子組成物がシリンジ等の収納容器からノズルを通して吐出されにくくなることがある。これに対し、前記の要件を満たす第一溶媒を含む高分子組成物は、非吸引型ディスペンサのノズル先端における溶媒の揮発を抑制でき、高分子組成物の粘度上昇等により吐出が困難となることを抑制できる。よって、静置時間が長い場合でも、高分子組成物の吐出が阻害される不具合を抑制することができ、連続して塗布する際に手作業によるノズル洗浄を省略可能となり、安定して連続的に非吸引型ディスペンサによる塗布を行うことが可能となる。したがって、静置後の高分子組成物を用いて物質吸着膜を形成する場合に、より安定した形成が可能である。
第一溶媒の例としては、下記のものが挙げられる。下記の例示物の名称の後に記載されたカッコには、その例示物の1013hPaにおける沸点と、20℃における蒸気圧を記載する。
第一溶媒としては、例えば、n-ヘプタノール(176℃、0.0015kPa)、ジメチルスルホキシド(189℃、0.059kPa)、デカヒドロナフタレン(190℃、0.13kPa)、安息香酸メチル(200℃、0.05kPa)、N-メチルピロリドン(202℃、0.032kPa)、γ-ブチロラクトン(204℃、0.15kPa)、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(207℃、0.034kPa)、カルビトールアセテート(218℃、0.0056)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(220℃、0.2kPa)、ブチルカルビトール(230℃、0.003kPa)、安息香酸プロピル(230℃、0.0181kPa)、ジエチレングリコール(245℃、0.007kPa)、4-tert-ブチル安息香酸メチル(247℃、0.0019kPa)、ブチルカルビトールアセテート(247℃、0.0053kPa)、1-ブタノール(119℃、0.7kPa)、2-ペンタノール(119℃、0.8kPa)、メチルセロソルブ(125℃、0.8kPa)、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(146℃、0.5kPa)、乳酸エチル(155℃、0.21kPa)、メチルアミルケトン(149℃、0.285kPa)、シクロヘキサノン(156℃、0.07kPa)、ジメチルアセトアミド(165℃、0.33kPa)、メシチレン(165℃、0.24kPa)、などが挙げられる。中でも、1013hPaにおける沸点が170℃~250℃、且つ、20℃における蒸気圧が0.001kPa~0.5kPaの条件を満たす、n-ヘプタノール、ジメチルスルホキシド、デカヒドロナフタレン、安息香酸メチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、カルビトールアセテート、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ブチルカルビトール、安息香酸プロピル、ジエチレングリコール、4-tert-ブチル安息香酸メチル、ブチルカルビトールアセテートが好ましく、特にn-ヘプタノール、デカヒドロナフタレン、γーブチロラクトン、カルビトールアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテートが好ましい。また、第一溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
高分子組成物100質量%に対する第一溶媒の量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは98.0質量%以下である。第一溶媒の量が前記範囲にある場合、物質吸着膜の形成の再現性、及び測定再現性を特に良好にできる。
溶媒は、第一溶媒に組み合わせて、当該第一溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。高分子組成物に含まれる第一溶媒以外の溶媒を、以下、適宜「第二溶媒」ということがある。第二溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、物質吸着膜の形成の再現性、及び測定再現性を特に良好にする観点では、溶媒の総量(即ち、第一溶媒及び第二溶媒の合計)に対する第一溶媒の割合が大きいことが好ましい。具体的には、高分子組成物に含まれる溶媒の総量100質量%に対する第一溶媒の量は、好ましくは30質量%~100質量%、より好ましくは40質量%~100質量%、特に好ましくは50質量%~100質量%である。
また、第二溶媒の1013hPaにおける沸点が前記第一溶媒の沸点範囲の下限値未満である場合、その第二溶媒の量は、高分子組成物に含まれる溶媒の総量100質量%に対して、好ましくは50%質量以下、より好ましく40%質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下であり、10質量%以下、5質量%以下、又は0質量%でありうる。さらに、第二溶媒の1013hPaにおける沸点が前記第一溶媒の沸点範囲の上限値より高い場合、その第二溶媒の量は、高分子組成物に含まれる溶媒の総量100質量%に対して、好ましくは20%質量以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。第二溶媒の量が前記範囲にある場合、物質吸着膜の形成の再現性、及び測定再現性を特に良好にできる。また1013hPaにおける沸点が170℃~250℃、且つ、20℃における蒸気圧が0.001kPa~0.5kPaの条件を満たす溶媒を第1溶媒とした場合、第二溶媒の量が前記範囲にあると、さらに、非吸引型ディスペンサによる連続的塗布の安定性を特に良好にできる。
[4.任意の成分]
高分子組成物は、上述した高分子化合物及び溶媒に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
[5.高分子組成物の物性]
高分子組成物の25℃における粘度は、通常1mPa・sec以上、好ましくは2mPa・sec以上であり、通常8000mPa・sec以下、好ましくは3000mPa・sec以下、より好ましくは1000mPa・sec以下である。高分子組成物が前記範囲の粘度を有することで、物質吸着膜の形成の再現性、及び測定再現性を良好にできる。
高分子組成物の粘度は、0mPa・sec以上500mPa・sec未満ではE型粘度計(東機産業社製「RE-85U」、1°24×R24コーン)を用いて測定でき、500mPa・sec以上8000mPa・sec以下ではE型粘度計(東機産業社製「RE-80U」3°×R9.7コーン)にて測定できる。
[6.高分子組成物の製造方法]
高分子組成物は、例えば、高分子化合物及び溶媒、並びに、必要に応じて任意の成分を混合して製造できる。各成分の混合の順番は、任意である。また、高分子化合物の溶媒への溶解又は分散を促進するため、撹拌処理、熱処理等の任意の処理を施してもよい。
[7.物質吸着膜の形成方法]
上述した高分子組成物は、センサー素子の物質吸着膜の形成用の組成物である。この高分子組成物は、トランスデューサ部の表面に物質吸着膜を形成する形成方法において用いられる。この形成方法によれば、センサー素子を得ることができる。以下、この高分子組成物を用いた物質吸着膜の形成方法の一実施形態を説明する。
一実施形態としての物質吸着膜の形成方法は、センサー素子用のトランスデューサ部を用意する工程と、高分子組成物をトランスデューサ部の表面に塗布する工程と、塗布された高分子組成物を乾燥させて物質吸着膜を形成する工程と、を含む。
〔7.1.トランスデューサ部を用意する工程〕
トランスデューサ部として、通常は、当該トランスデューサ部の表面に形成された物質吸着膜への物質の吸着によってその物質吸着膜が生じる物理パラメータの変化を検出できる素子を用いる。前記の物理パラメータは、特に制限は無く、例えば、表面応力、応力、表面張力、圧力、質量、弾性、ヤング率、ポアソン比、共振周波数、周波数、体積、厚み、粘度、密度、磁力、磁気量、磁場、磁束、磁束密度、電気抵抗、電気量、誘電率、電力、電界、電荷、電流、電圧、電位、移動度、静電エネルギー、キャパシタンス、インダクタンス、リアクタンス、サセプタンス、アドミッタンス、インピーダンス、コンダクタンス、プラズモン、屈折率、吸収波長、吸光度、光度、温度などが挙げられる。
トランスデューサ部は、前記の物理パラメータの変化を検出できる任意の素子でありうる。よって、トランスデューサ部の構造及び動作は、任意である。好ましいトランスデューサ部としては、例えば、圧電素子、表面プラズモン共鳴素子(SPR素子)、電界効果トランジスタ素子(FET素子)、表面弾性波素子、電荷結合素子、金属酸化物半導体素子、有機導電性ポリマー素子、電気化学素子などが挙げられる。前記の圧電素子には、水晶振動子(QCM)が含まれうる。
圧電素子は、通常、圧電材料で形成された圧電体と、この圧電体上に設けられた電極とを備える。圧電材料としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム等の、圧電単結晶;チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛等の、圧電セラミックス;フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン共重合体等の、圧電高分子膜;などが挙げられる。物質吸着膜は、圧電素子の圧電体の表面に設けてもよく、電極の表面に設けてもよい。
表面プラズモン共鳴素子は、通常、プリズムと、このプリズム上に形成された金属層とを備える。金属層の材料としては、金、銀等が挙げられる。物質吸着膜は、通常、表面プラズモン共鳴素子の金属層の表面に設けられる。
〔7.2.高分子組成物をトランスデューサ部の表面に塗布する工程〕
トランスデューサ部を用意した後で、そのトランスデューサ部の表面に高分子組成物を塗布する工程を行う。高分子組成物の塗布は、非吸引型ディスペンサを用いて行われる。非吸引型ディスペンサは、収納容器及びノズルを備える。収納容器とノズルとは接続されていて、収納容器に収納された高分子組成物をノズルが吐出できる。また、非吸引型ディスペンサの収納容器は、ノズルを通さずに高分子組成物を収納できるように設けられている。収納容器への高分子組成物の収納方法は、ノズルを通さない任意の収納方法を採用しうる。
例えば、収納容器の内外を連通する開口としての供給口を、ノズルとは別に設け、この供給口を通して収納容器に高分子組成物を収納してもよい。この供給口は、収納容器に高分子組成物を収納した後で、必要に応じて蓋をしてもよい。
また、例えば、収納容器の内外に開口する管としての供給管を、ノズルとは別に設け、この供給管を通して収納容器に高分子組成物を収納してもよい。この供給管は、収納容器に高分子組成物を収納した後で、必要に応じて、塞いでもよく、除去してもよい。
収納容器への高分子組成物の収納は、収納容器とノズルとを接続する前に行ってもよく、後に行ってもよい。また、収納容器は、収納容器の外部の大気に開放されていない密閉容器であることが好ましい。
このような非吸引型ディスペンサの代表的なものとして、例えば、エアパルス式ディスペンサ、メカニカル式ディスペンサ、ジェット式ディスペンサが挙げられる。
エアパルス式ディスペンサは、通常、高分子組成物を充填した収納容器としてのシリンジと、このシリンジの先端に取り付けられたノズルとしてのニードルとを備える。使用時には、ニードルを塗布対象(ここに示す実施形態では、トランスデューサ部の表面)に近づけて(通常、数十μm~数mmの距離)、シリンジにエアーを送り込む。このエアーの圧力によって、ニードル先端から高分子組成物を吐出させる。吐出された高分子組成物は、塗布対象に付着し、その後、ニードルが塗布対象から離れることにより、塗布が完了する。
メカニカル式ディスペンサは、容積計量式ディスペンサとも呼ばれ、通常、高分子組成物を充填した収納容器としてのプランジャ付きのシリンジと、このシリンジの先端に取り付けられたノズルとしてのニードルとを備える。使用時には、ニードルを塗布対象に近づけて(通常、数十μm~数mmの距離)、プランジャを押す圧力によって高分子組成物をニードルから吐出させる。吐出された高分子組成物は、塗布対象に付着し、その後、ニードルが塗布対象から離れることにより、塗布が完了する。
ジェット式ディスペンサは、非接触式ディスペンサとも呼ばれ、通常、高分子組成物を充填した収納容器としてのシリンジと、このシリンジの先端に形成されたノズルとしての吐出穴とを備える。前記の吐出穴には、ピエゾ素子等が取り付けられうる。使用時には、吐出穴を塗布対象上部に移動させ(通常、数センチの距離)、ピエゾ素子等による圧力で高分子組成物を吐出穴から吐出させる。吐出された高分子組成物は、空中を飛び、塗布対象に着弾し、塗布が完了する。
エアパルス式ディスペンサおよびメカニカル式ディスペンサは、塗布対象の数十μm~数mm近傍までニードルを近づけた状態で高分子組成物が吐出され、一時的に、ニードルと塗布対象が高分子組成物で繋がった状態になりうるので、接触式ディスペンサと呼ばれることがある。
以下、接触式ディスペンサの収納容器としてのシリンジ及びノズルとしてのニードルを簡略化して示した図面を用いて、非吸引型ディスペンサを用いた高分子組成物の塗布について説明する。
図1は、一例に係る非吸引型ディスペンサ100を用いてトランスデューサ部210の表面210Uに高分子組成物10を塗布する様子を模式的に示す正面図である。図1に示す例において、ディスペンサ100は、高分子組成物10を収納できる収納容器としてのシリンジ110と、シリンジ110に接続されたノズル(ここでは、送出管)としてのニードル120とを備える。
ニードル120は、シリンジ110内に収納された高分子組成物10を吐出できるように設けられた管であり、通常はシリンジ110の一端に設けられる。小径の物質吸着膜を形成する観点から、ニードル120等のノズルの内径は、小さいことが好ましい。ニードル120等のノズルの具体的な内径は、好ましくは20μm~1000μm、より好ましくは50μm~300μmである。
非吸引型ディスペンサ100を用いた高分子組成物10の塗布では、通常、シリンジ110内に収納された高分子組成物10をニードル120を通して吐出させ、その吐出した高分子組成物10をトランスデューサ部210の表面210Uに付着させることで、塗布が行われる。ただし、一般に、具体的な塗布の手順は、ディスペンサ100のタイプによって異なりうる。以下にエアパルス式及びメカニカル式の例を説明する。
エアパルス式のディスペンサ100を用いた塗布では、例えば、下記の手順で塗布を行う。ニードル120の先端120Eを、トランスデューサ部210の表面210Uに近づける。その後、シリンジ110にエアーを送り込む。これにより、空気圧によって高分子組成物10がニードル120を通して吐出される。吐出された高分子組成物10は、トランスデューサ部210の表面210Uに着弾する。これにより、トランスデューサ部210の表面210Uへの高分子組成物10の塗布が達成される。その後、必要に応じて、ニードル120の先端120Eがトランスデューサ部210の表面210Uから離される。
メカニカル式のディスペンサ100を用いた塗布では、例えば、下記の手順で塗布を行う。ニードル120の先端120Eを、トランスデューサ部210の表面210Uに近づける。その後、図示しないプランジャによってシリンジ110内の高分子組成物10を押す。これにより、押された高分子組成物10がニードル120を通して吐出される。通常、吐出された高分子組成物10は、ニードル120の先端120Eから離れないで液滴を形成する。そして、押し出された高分子組成物10の量が多くなることで大きくなった液滴が、トランスデューサ部210の表面210Uに触れる。これにより、トランスデューサ部210の表面210Uへの高分子組成物10の塗布が達成される。その後、必要に応じて、ニードル120の先端120Eがトランスデューサ部210の表面210Uから離される。
これらのタイプのうち、エアパルス式のディスペンサ100が好ましい。エアパルス式のディスペンサ100を用いることにより、物質吸着膜の形成の再現性、及び測定再現性を特に良好にできる。エアパルス式のディスペンサ100を用いる場合、吐出時間は1ms~500msが好ましく、エアー圧力(吐出圧)は5kPa~200kPaが好ましい。
高分子組成物10の塗布は、通常は常温常圧の環境下において行うが、所望の物質吸着膜が得られる範囲で塗布環境を調整してもよい。高い再現性及び安定性で物質吸着膜の形成を行う観点、及び高い測定再現性を達成する観点では、塗布環境の温度は0℃~30℃が好ましく、塗布環境の圧力は950hPa~1080hPaが好ましく、塗布環境の相対湿度は10%~99%が好ましい。
上述した高分子組成物10は、ニードル120から吐出されてからトランスデューサ部210の表面210Uに定着するまでの期間に、乾燥による大きな粘度上昇が抑制される。よって、塗布された時点における高分子組成物10は、適切な粘度を有することができる。したがって、トランスデューサ部210の表面210Uにおいて、高分子組成物10は、歪な形状とならず、一定の形状(通常は、円形)の液滴として塗布されることができる。このように、高分子組成物10は、高い塗布性を有する。
〔7.3.塗布された高分子組成物を乾燥させて物質吸着膜を形成する工程〕
トランスデューサ部の表面に高分子組成物を塗布する工程の後で、塗布された高分子組成物を乾燥させる工程を行う。乾燥により、トランスデューサ部の表面の高分子組成物から溶媒が除去されて、高分子化合物を含む物質吸着膜が形成される。これにより、トランスデューサ部及び物質吸着膜を備えるセンサー素子が得られる。
乾燥は、自然乾燥によって行ってもよく、加熱乾燥によって行ってもよい。具体的な乾燥条件の例を挙げると、下記の通りである。乾燥温度は、好ましくは20℃~250℃、より好ましくは80℃~200℃である。乾燥時間は、好ましくは1分~1週間、より好ましくは5分~1日、更に好ましくは10分~3時間、特に好ましくは30分~2時間である。このような条件での乾燥を行う場合、特に高い再現性で物質吸着膜の形成を行うことができ、かつ高い測定再現性を達成することができる。
図2は、トランスデューサ部210と、このトランスデューサ部210の表面210Uに形成された物質吸着膜220とを備える一例としてのセンサー素子200を模式的に示す上面図である。図2に示すように、物質吸着膜220は、一般に、厚み方向から見て円形の膜として形成される。物質吸着膜220の具体的な径Wは、好ましくは0.1μm~1000μm、より好ましくは0.1μm~800μm、特に好ましくは0.1μm~500μmである。このように物質吸着膜220の径Wが小さい場合、センサー素子200の小型化を達成できる。また、このように小径の物質吸着膜220を高い再現性で繰り返し形成できる点、及び高い測定再現性を達成し得る点で、本実施形態に係る高分子組成物は優れる。
図3は、トランスデューサ部210と、このトランスデューサ部210の表面210Uに形成された物質吸着膜220とを備える一例としてのセンサー素子200を模式的に示す側面図である。図3に示すように、物質吸着膜220の厚みTは、目的物質の特性に応じて適切に設定できる。物質吸着膜220の具体的な厚みTは、好ましくは1nm~10μm、より好ましくは50nm~800nmである。物質吸着膜220が前記範囲の厚みTを有する場合に、物質吸着膜の形成の再現性、及び測定再現性を特に良好にできる。また、通常は、物質吸着膜220が前記範囲の厚みTを有する場合に、目的物質の検出感度を高くできる。
物質吸着膜220の厚みTは、例えば、非吸引型ディスペンサによる高分子組成物の吐出量によって調整できる。
物質吸着膜220は、1つのトランスデューサ部210当たり、1枚だけ形成されていてもよく、複数枚形成されていてもよい。
こうして形成された物質吸着膜220を備えるセンサー素子200は、通常、目的物質の物質吸着膜220への吸着によって生じた物質吸着膜220の物質パラメータの変化を、高い感度で検出できる。よって、センサー素子200は、目的物質に対し、高い応答性を有することができる。したがって、このセンサー素子200を用いることにより、高い検出感度を有するセンサー装置を実現できる。
〔7.4.複数の物質吸着膜の形成〕
本実施形態に係る高分子組成物は、複数の物質吸着膜を形成する場合の再現性に優れる。よって、この利点を活用して、センサー素子上に、複数枚の物質吸着膜を形成することが好ましい。
例えば、複数枚の物質吸着膜を形成するために、高分子組成物の塗布を複数回行ってもよい。この場合、各回での塗布条件は一定にすることが好ましく、よって各回での高分子組成物の塗布量は一定にすることが好ましい。例えば、非吸引型ディスペンサを用いた前記の塗布方法では、1回当たりの高分子組成物の吐出量を一定にすることが好ましい。エアパルス式のディスペンサを用いた塗布方法では、1回当たりの吐出時間及びエアー圧力を一定にすることにより、1回当たりの高分子組成物の吐出量を一定にできる。
複数枚の物質吸着膜を形成する場合、乾燥は、高分子組成物を複数回塗布した後で、一括して行ってもよい。また、乾燥は、高分子組成物を1回塗布する都度行ってもよい。特に高い再現性で物質吸着膜を形成する観点から、乾燥は、同じ乾燥条件で行うことが好ましい。
複数枚の物質吸着膜を形成する場合、単一のトランスデューサ部の表面に、複数の物質吸着膜を形成してもよい。これにより、トランスデューサ部上に高い再現性で複数の物質吸着膜を形成できる。また、異なるトランスデューサ部の表面にそれぞれ1又は2以上の物質吸着膜を形成してもよい。これにより、複数のトランスデューサ部上のそれぞれに、高い再現性で物質吸着膜を形成できる。
複数の物質吸着膜を形成する場合、物質吸着膜の再現性に優れるという利点を活用して、それら複数の物質吸着膜の面積の変動係数を小さくすることが可能である。ここで、物質吸着膜の「面積」とは、物質吸着膜を厚み方向から観察した際に観測される面積である。例えば、同一の塗布条件及び同一の乾燥条件で100枚の物質吸着膜を繰り返し形成した場合に、それら100枚の物質吸着膜の面積の変動係数を、好ましくは15%未満にできる。物質吸着膜の面積は、顕微鏡(キーエンス社製「VK-X1100」)により測定できる。また、変動係数は、測定された面積の平均値及び標準偏差から、下記の式(X)により計算できる。
Figure 0007354895000001
さらに、通常、物質吸着膜を備えたセンサー素子は、目的物質の検出を複数回行った場合に、高い測定再現性を有することができる。例えば、同じサンプルについて目的物質の検出を複数回行った場合に、目的物質が物質吸着膜に吸着して生じる物理パラメータの変化量のバラツキを、小さくすることができる。変化量は、物理パラメータに応じて異なりうるが、例えば、同一のセンサー素子を用いて同一のサンプルに含まれる目的物質の検出を3回行った場合、各回で検出される物理パラメータの変化量の変動係数を、好ましくは15%未満にできる。
また、前記のように高い再現性で形成された物質吸着膜は、複数の物質吸着膜がそれぞれ目的物質の検出を行った場合に、測定再現性にも有利に作用する。例えば、同じ方法で物質吸着膜が形成された複数のセンサー素子が、同じサンプルについて目的物質の検出を行った場合に、目的物質が物質吸着膜に吸着して生じる物理パラメータの変化量のバラツキを、小さくし易くできる。変化量は、物理パラメータに応じて異なりうるが、例えば、同一の方法で形成された物質吸着膜を備える複数のセンサー素子を用いて同一のサンプルに含まれる目的物質の検出を行った場合、各センサー素子を用いて測定される物理パラメータの変化量の変動係数を、好ましくは15%未満にすることを容易にする。
さらに、上述した高分子組成物を用いることにより、物質吸着膜を高い安定性で形成できる。具体的には、シリンジに高分子組成物を収納した後に一定時間経過した後であっても、安定して高分子組成物を塗布できる。したがって、塗布を行わない待ち時間が経過した後に複数の物質吸着膜を形成しても、高い再現性で物質吸着膜を形成できる。例えば、シリンジに高分子組成物を収納した後に所定の時間静置した後で、同一の方法で物質吸着膜を形成した場合、上記式(X)で表される変動係数(%)を、15%未満にできることが好ましい。前記の静置を行う時間は、長いほど好ましいが、非吸引型ディスペンサを用いて物質吸着膜を複数形成する作業時間を鑑みると、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上である。また、非吸引型ディスペンサを用いて物質吸着膜を複数形成する作業時間を鑑みると通常60分以下である。
[8.センサー装置]
上述した方法で形成される物質吸着膜を備えたセンサー素子は、物質吸着膜に吸着できる目的物質を検出するためのセンサー素子として用いうる。具体的には、物理吸着膜への目的物質の吸着によって生じる物理パラメータの変化を検出することにより、当該目的物質を検出するためのセンサー素子として用いうる。特に、前記のセンサー素子は、高い再現性で物質吸着膜が形成されるので、物理パラメータの変化への応答性に優れ、更に、物理パラメータの変化量の再現性(測定再現性)に優れる。したがって、目的物質を、一定の高い感度で検出することが可能である。そこで、このような利点を活用して、センサー素子は、匂い物質又はガス分子の検出用のセンサー素子として用いることが好ましい。
ここで、用語「匂い」とは、人間あるいはそれを含む生物が嗅覚情報として取得することができる、特定の分子単体もしくは異なる分子からなる分子群がそれぞれの濃度を持って集合したものを含む。
また、用語「匂い物質」とは、広義において物質吸着膜に吸着可能な物質を含む。したがって、一般的には匂いの原因物質とされていない物質も、用語「匂い物質」に含まれうる。「匂い」には原因となる匂い物質が複数含まれることが多く、また、匂い物質として認知されていない物質又は未知の匂い物質も存在しうる。以下、単に「匂い物質」と記載した場合であっても、個々の匂い物質ではなく、複数の匂い物質が含まれうる「匂い物質の集合体」を意味する場合がある。
さらに、用語「ガス分子」とは、任意の気体状の分子を含む。よって、上述したセンサー素子は、匂いとは関係の無い分子を目的物質として検出するために用いてもよい。
以下、目的物質として気体状の匂い物質を検出するためのセンサー素子を備えたセンサー装置の一例を、図面を示して説明する。図4は、一例としてのセンサー装置300を模式的に示す概略図である。図4に示すように、センサー装置300は、センサー素子200が設けられた素子装着部310と、センサー素子200で検出された物理パラメータの変化の情報を出力できる出力部320とを備える。
素子装着部310には、センサー素子200で検出された物質吸着膜(図4では図示せず)の物理パラメータの変化の情報を取り出すための装置が設けられていてもよい。
例えば、トランスデューサ部(図4では図示せず。)が圧電素子である場合、その圧電素子は、通常、物質吸着膜の物理パラメータの変化を、当該圧電素子の振動周波数の変化として検出できる。よって、素子装着部310は、この周波数の変化を取り出すために、圧電素子を振動させるために交流電圧を印加するための配線、圧電素子の振動周波数を測定するための周波数計、などを備えていてもよい。
また、例えば、トランスデューサ部が表面プラズモン共鳴素子である場合、表面プラズモン共鳴素子は、通常、物質吸着膜の物理パラメータの変化を、共鳴角の変化として検出できる。よって、素子装着部310は、この共鳴角の変化を取り出すために、表面プラズモン共鳴素子に光を照射するための光源、表面プラズモン共鳴素子での反射光を検出するための光検出器、などを備えていてもよい。
出力部320は、素子装着部310に設けられたセンサー素子200から送られた情報を出力できるように設けられている。出力部320としては、例えば、情報を画面に表示可能なディスプレイ装置、情報をコンピュータ装置に出力できるインターフェース、情報を印刷できるプリンタ装置、等が挙げられる。
前記の装置を用いた匂い物質の検出方法では、素子装着部310に匂い物質を含むサンプルガス20を導入する。導入されたサンプルガス20中の匂い物質がセンサー素子200に接触すると、その匂い物質はセンサー素子200の物質吸着膜に吸着する。この吸着により、物質吸着膜の物理パラメータの変化が生じる。この物理パラメータの変化が、センサー素子200のトランスデューサ部によって検出される。例えば、トランスデューサ部が圧電素子である場合、物質吸着膜の物理パラメータの変化は、圧電素子により、振動周波数の変化として検出されうる。また、例えば、トランスデューサ部が表面プラズモン共鳴素子である場合、物質吸着膜の物理パラメータの変化は、表面プラズモン共鳴素子により、共鳴角の変化として検出されうる。こうして検出された情報は、通常、電気信号へと変換され、出力部320に送られる。
出力部320は、送られてきた情報を出力する。出力された情報は、匂い物質の吸着によって生じた物質吸着膜の物理パラメータの変化の情報を含んでいる。よって、物理パラメータの変化が生じた場合、そのサンプルガス20に匂い物質が含まれていたことが分かるので、匂い物質の検出が可能である。また、出力装置から出力された情報が、物理パラメータの変化量の情報を含む場合、当該変化量の情報に基づいて、サンプルガス20中の匂い物質の量を測定してもよい。
一般に、気体中には匂いの源となる複数種類の匂い物質が含まれている。そして、それらの匂い物質の集合体を含む当該匂い物質の組み合わせパターンにより、人が知覚する匂いが異なりうる。そこで、それら複数種類の匂い物質を検出するため、素子装着部310には、同一又は異なる種類の目的物質を吸着できる物質吸着膜を備えた複数のセンサー素子200が設けられていてもよい。または、素子装着部310に設けられたセンサー素子200が、同一又は異なる種類の目的物質を吸着できる複数の物質吸着膜を備えていてもよい。このような構成によれば、複数の匂い物質の組み合わせを検出できるので、サンプルガスの匂いを適切に分析することが可能である。特に、上述した方法で物質吸着膜が形成されたセンサー素子200では、物質吸着膜の形成の再現性、及び測定再現性が高いので、このように複数の物質吸着膜を用いた分析の再現性を効果的に高めることができる。
前記のセンサー装置300は、更に任意の構成要素を含んでいてもよい。例えば、センサー装置300は、センサー素子200が検出した情報を解析できる解析部(図示せず。)を備えていてもよい。このような解析部は、例えば、センサー素子200から送られる情報を解析するための解析アプリケーションがインストールされたコンピュータ装置を用いてよい。このような解析部を活用することにより、サンプルガスの匂いの定量的及び定性的な分析が容易になる。
[9.キット]
上述した高分子組成物は、通常、適切な容器に収納された状態で保存及び運搬される。非吸引型ディスペンサへの高分子組成物の供給を容易に行うためには、前記の容器として非吸引型ディスペンサに装着可能なシリンジ等の収納容器を採用することが好ましい。この場合、シリンジ等の収納容器と、この収納容器に収納された高分子組成物とを備えるキットを提供できる。収納容器には、通常、ノズルと接続されるよりも前に高分子組成物が収納されるので、その収納容器への高分子組成物の収納は、ノズルを通さずに行われうる。また、このキットにおいて、高分子組成物は、好ましくは品質維持等の観点から、密封されたシリンジ等の収納容器の内部に封入される。この際、シリンジ等の収納容器には、高分子化合物の種類及び量、溶媒の種類及び量、高分子組成物によって形成される物質吸着膜の適切な径及び厚み、その物質吸着膜が吸着可能な目的物質の種類、等の情報が記載されたラベルが設けられていてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、別途明示のない限り、以下に説明する操作は、常温常圧大気中で行った。
[高分子組成物の粘度の測定方法]
高分子組成物の粘度は、E型粘度計を用い、温度25±2℃において測定した。E型粘度計としては、粘度0mPa・sec以上500mPa・sec以下では東機産業社製「RE-85U」(1°24×R24コーン)を用い、粘度500mPa・sec以上8000mPa・sec以下では東機産業社製「RE-80U」(3°×R9.7コーン)を用いた。回転数は、いずれも100rpmとした。
[高分子組成物の塗布安定性の評価方法]
シリンジ(武蔵エンジニアリング社製、型番PSY-10E-M、容量10ml)、及び、このシリンジの先端に接続されたニードル(武蔵エンジニアリング社製、型番SNA-32GB、内径0.1mm、針長13mm)を備えるニードル付シリンジを用意した。シリンジの後端に形成された開口を通して、シリンジに高分子組成物を充填した。
高分子組成物を充填したシリンジをエアパルス式ディスペンサ(武蔵エンジニアリング社製の高精度ディスペンサ「SuperΣxIII」)に取り付けた。このディスペンサを用いて、シリコン基板の表面に高分子組成物を吐出することにより、高分子組成物の塗布を一定の吐出量で100回行った。前記の塗布は、各回での吐出位置を一定間隔で変えることで、シリコン基板上の100か所に高分子組成物を塗布できるようにした。
その後、前記高分子組成物を充填したシリンジを1分間静置させた後、シリンジの静置前と同様の手順で、前記シリコン基板の異なる箇所に高分子組成物の塗布を100回行った。
更に、シリンジを5分間静置させた後、シリンジの静置前と同様の手順で、前記シリコン基板の異なる箇所に塗布を100回行った。
更に、シリンジを10分間静置させた後、シリンジの静置前と同様の手順で、前記シリコン基板の異なる箇所に塗布を100回行った。
その後、100℃で60min乾燥を行うことにより、シリコン基板上に複数の物質吸着膜を得た。顕微鏡(キーエンス社製「VK-X1100」)を用いて、レーザーコンフォーカルの形状測定モードにて各物質吸着膜を観察し、物質吸着膜それぞれの面積の平均値及び標準偏差を算出した。
各静置時間後に形成した物質吸着膜の面積の変動係数を、上記式(X)より導き出した。この変動係数が15%未満の場合を「○」と判定した。変動係数が15%以上ではあるが塗布ができている場合は「△」と判定した。塗布ができないもの場合は「×」と判定した。本結果を「塗布安定性」の結果として後述する表1及び表2に記載した。この塗布安定性が優れていることは、物質吸着膜の形成の安定性に優れることを表す。
[高分子組成物の塗布再現性の評価方法]
前記[高分子組成物の塗布安定性の評価方法]と同じ方法により、シリンジの静置を行うことなく、シリコン基板上に高分子組成物の塗布を100回行い、その後乾燥を行って、シリコン基板上に複数の物質吸着膜を得た。顕微鏡(キーエンス社製「VK-X1100」)を用いて、レーザーコンフォーカルの形状測定モードにて各物質吸着膜を観察し、物質吸着膜それぞれの面積の平均値及び標準偏差を算出した。
測定された面積について、その平均値及び標準偏差を計算した。その後、得られた平均値及び標準偏差から、前記の式(X)により、変動係数(%)を計算した。
面積の変動係数が15%未満である場合を「○」と判定した。面積の変動係数が15%以上である場合を「×」と判定した。本結果を「塗布再現性」の結果として後述する表1及び表2に記載した。この塗布再現性が優れていることは、物質吸着膜の形成の再現性に優れることを表す。
[匂い測定再現性の評価方法]
(1-1.QCMセンサー素子上への物質吸着膜の形成)
シリンジ(武蔵エンジニアリング社製、型番PSY-10E-M、容量10ml)、及び、このシリンジの先端に接続されたニードル(武蔵エンジニアリング社製、型番SNA-32GB、内径0.1mm、針長13mm)を備えるニードル付シリンジを用意した。シリンジの後端に形成された開口を通して、シリンジに高分子組成物を充填し、ニードル付シリンジをエアパルス式ディスペンサ(武蔵エンジニアリング社製の高精度ディスペンサ「SuperΣxIII」)に取り付けた。このディスペンサを用いて、QCM(日本電波工業社製「PSA-SL-30001T」)上に、高分子組成物を吐出することにより、高分子組成物の塗布を行った。その後、乾燥炉で100℃、60分間乾燥を行うことにより、径約400μmの物質吸着膜が形成されたQCMセンサー素子を得た。
(1-2.ガス(匂い物質)の測定によるQCMセンサー素子の評価)
前記QCMセンサー素子を、水晶振動子測定システム(日本電波工業社製「NAPiCOS Lite」)のチャンバー内に取り付け、下記の手順により、匂い物質の測定を行った。
匂い物質サンプル(リナロール:東京化成工業社製、純度96%以上)を、200ml三角フラスコに100ml注ぎ、ガラス管を2本挿入した。この時、一方のガラス管の端はサンプルの液面より下になるように挿入し、もう一方のガラス管の端はサンプルの液面より上になるように挿入した。このガラス管を、前記水晶振動子測定システムに接続した。水晶振動子測定システムのポンプを用いて、400ml・minで空気を流すことでバブリングを行い、サンプルガス(揮発したリナロールを含む空気)を発生させた。このサンプルガスとエアーとを、前記水晶振動子測定システムのチャンバー内に180秒毎に切り替えて供給した。エアーが供給されている期間には、チャンバーにエアーが導入され、チャンバー内のサンプルガスが取り除かれた。また、サンプルガスが供給されている期間では、チャンバー内にサンプルガスが導入された。前記一連のエアー及びサンプルガスの導入を、QCMセンサー素子の周波数を測定しながら行った。この時、エアーを流している際の周波数からサンプルガスに切り替えた際の周波数変化量を測定した。
前記の結果から、測定値の再現性を評価した。具体的には、上記の測定を3回行い、サンプルガス導入時の周波数変化量の平均値及び標準偏差を計算した。標準偏差を平均値で割り算して、変動係数を求めた。変動係数が15%未満であれば、匂い物質の測定値の再現性を「○」と判定した。また、変動係数が15%以上であれば、匂い物質の測定値の再現性を「×」と判定した。また、QCMセンサー素子にディスペンサによる塗布ができなかった場合「―」と表記した。本結果を「匂い測定再現性」の結果として後述する表1及び表2に記載した。この匂い測定再現性が優れていることは、物質吸着膜の測定再現性に優れることを表す。
[実施例1]
ポリビニルブチラール樹脂(PVB;積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度85mPa・secの高分子組成物が得られるように、n-ヘプタノールに溶解させて、高分子組成物を調製した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例2]
シリコーン樹脂(信越化学工業社製「KR―216」)を、粘度72mPa・secの高分子組成物が得られるように、デカヒドロナフタレンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例3]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度34mPa・secの高分子組成物が得られるように、γ―ブチロラクトンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例4]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度316mPa・secの高分子組成物が得られるように、ブチルカルビトールに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例5]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度307mPa・secの高分子組成物が得られるように、ブチルカルビトールアセテートに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例6]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度3.6mPa・secの高分子組成物が得られるように、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)に溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例7]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度7980mPa・secの高分子組成物が得られるように、カルビトールアセテートに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例8]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度31mPa・secの高分子組成物が得られるように、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA)に溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例9]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度30mPa・secの高分子組成物が得られるように、シクロヘキサノンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例10]
COP樹脂(ポリプラスチックス社製のシクロオレフィンポリマー「トーパス 6013S-C4」)を、粘度11mPa・secの高分子組成物が得られるように、1,3,5-トリメチルベンゼンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例11]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度44mPa・secの高分子組成物が得られるように、乳酸エチルに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[実施例12]
ポリアクリル酸(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号;181285)を、粘度13mPa・secの高分子組成物が得られるように、1-ブタノールに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例1]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度6mPa・secの高分子組成物が得られるように、アセトンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例2]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度6mPa・secの高分子組成物が得られるように、メタノールに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例3]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度13mPa・secの高分子組成物が得られるように、エタノールに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例4]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度4mPa・secの高分子組成物が得られるように、メチルエチルケトン(MEK)に溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例5]
ウレタン樹脂(大成ファインケミカル社製「PU―1020」)を、粘度15mPa・secの高分子組成物が得られるように、シクロヘキサンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例6]
ポリアクリル酸(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号;181285)を、粘度11mPa・secの高分子組成物が得られるように、イソプロパノール(IPA)に溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例7]
フェノール樹脂(日本化薬社製「KAYAHARD 「GPH―65」)を、粘度3mPa・secの高分子組成物が得られるように、アセトニトリルに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例8]
ポリスチレン(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号;331651)を、粘度26mPa・secの高分子組成物が得られるように、酢酸イソプロピルに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例9]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度5mPa・secの高分子組成物が得られるように、メチルイソプロピルケトン(MIPK)に溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例10]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度23mPa・secの高分子組成物が得られるように、1―プロパノールに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例11]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度32mPa・secの高分子組成物が得られるように、2-ブタノールに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例12]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度8mPa・secの高分子組成物が得られるように、プロピオン酸エチルに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例13]
ポリアクリル酸(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号;181285)を、粘度4mPa・secの高分子組成物が得られるように、水に溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例14]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度27mPa・secの高分子組成物が得られるように、1,4―ジオキサンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例15]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度5mPa・secの高分子組成物が得られるように、ジエチルケトンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例16]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度9mPa・secの高分子組成物が得られるように、酢酸プロピルに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例17]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度9mPa・secの高分子組成物が得られるように、ギ酸ブチルに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例18]
ポリスチレン(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号;331651)を、粘度42mPa・secの高分子組成物が得られるように、トルエンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例19]
ポリスチレン(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号;331651)を、粘度389mPa・secの高分子組成物が得られるように、1-エチルナフタレンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例20]
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製「KS-3」)を、粘度156mPa・secの高分子組成物が得られるように、ジベンジルエーテルに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[比較例21]
ポリスチレン(シグマアルドリッチジャパン社製、製品番号;331651)を、粘度870mPa・secの高分子組成物が得られるように、1-メトキシナフタレンに溶解させて、高分子組成物を調整した。得られた高分子組成物を用いて、上述した方法により、塗布安定性、塗布再現性及び匂い測定再現性の評価を行った。
[結果]
実施例1~12及び比較例1~21の結果を、表1及び表2に示す。表中、「未実施」は、5分及び10分で判定が〇のため、評価を省略し、実施しなかったことを示す。また、表中「-」は、高分子組成物が吐出されず評価または判定が不可能であったことを示す。さらに、表中、「CV」は変動係数を表す。
Figure 0007354895000002
Figure 0007354895000003
[検討]
表1から分かるように、所定の範囲の沸点及び蒸気圧を有する第一溶媒を含み、且つ、所定の範囲の粘度を有する高分子組成物を用いた実施例1~12は、物質吸着膜の形成の再現性、及び匂い物質の測定再現性に優れていた。さらに、実施例1~5、7は、塗布安定性にも優れていた。
他方、沸点及び蒸気圧のいずれかが上記範囲外となる溶媒を使用した高分子組成物は、比較例1~18のように、物質吸着膜の形状の再現性、匂い物質の測定再現性及び塗布安定性が悪いか、比較例19~21のように、匂い物質の測定再現性が高い物質吸着膜の形成ができなかった。
10 高分子組成物
20 サンプルガス
100 ディスペンサ
110 シリンジ
120 ニードル
200 センサー素子
210 トランスデューサ部
220 物質吸着膜
300 センサー装置
310 素子装着部
320 出力部

Claims (10)

  1. 高分子化合物を含む物質吸着膜と、前記物質吸着膜を表面に備え前記物質吸着膜への物質の吸着によって生じる物理パラメータの変化を検出できるトランスデューサ部と、を備えるセンサー素子の前記物質吸着膜を形成するために、ディスペンサを用いて前記トランスデューサ部に塗布されるための高分子組成物であって、
    前記ディスペンサが、前記高分子組成物を吐出できるノズルと、前記ノズルと接続され、前記ノズルを通さずに前記高分子組成物を収納されることができる容器と、を備え、
    前記高分子組成物の25℃における粘度が、1mPa・sec~8000mPa・secであり、
    前記高分子組成物が、前記高分子化合物及び溶媒を含み、
    前記溶媒が、1013hPaにおける沸点が110℃~250℃であり、且つ、20℃における蒸気圧が0.001kPa~1.0kPaである第一溶媒を含
    前記第一溶媒が、n-ヘプタノール、デカヒドロナフタレン、γ-ブチロラクトン、カルビトールアセテート、ブチルカルビトール及びブチルカルビトールアセテートからなる群より選ばれる1種類以上を含む、高分子組成物。
  2. 前記第一溶媒の1013hPaにおける沸点が、170℃~250℃であり、且つ、
    前記第一溶媒の20℃における蒸気圧が、0.001kPa~0.5kPaである、請求項1に記載の高分子組成物。
  3. 前記溶媒の総量100質量%に対する前記第一溶媒の量が、30質量%~100質量%である、請求項1又は2に記載の高分子組成物。
  4. 前記高分子組成物100質量%に対する高分子化合物の量が、1質量%~70質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子組成物。
  5. 前記センサー素子が、匂い物質又はガス分子の検出用のセンサー素子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の高分子組成物。
  6. 前記ディスペンサが、エアパルス式ディスペンサまたはメカニカル式ディスペンサである、請求項1~5のいずれか一項に記載の高分子組成物。
  7. 前記ディスペンサが、エアパルス式ディスペンサである、請求項1~6のいずれか一項に記載の高分子組成物。
  8. 前記ノズルの内径が、20μm~1000μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の高分子組成物。
  9. 高分子化合物を含む物質吸着膜と、前記物質吸着膜を表面に備え前記物質吸着膜への物質の吸着によって生じる物理パラメータの変化を検出できるトランスデューサ部と、を備えるセンサー素子の前記物質吸着膜を、ディスペンサを用いて形成するためのキットであって、
    前記ディスペンサが、容器と接続されて高分子組成物を吐出できるノズルを備え、
    前記キットが、前記容器と、前記容器に前記ノズルを通さずに収納された請求項1~8のいずれか1項に記載の高分子組成物と、を備える、キット。
  10. 高分子化合物を含む物質吸着膜と、前記物質吸着膜を表面に備え前記物質吸着膜への物質の吸着によって生じる物理パラメータの変化を検出できるトランスデューサ部と、を備えるセンサ素子の、前記物質吸着膜の形成方法であって、
    請求項1~8のいずれか一項に記載の高分子組成物を、ディスペンサを用いて、前記トランスデューサ部の表面に塗布する工程と、
    塗布された高分子組成物を乾燥させる工程を含み、
    前記ディスペンサが、前記高分子組成物を吐出できるノズルと、前記ノズルと接続され、前記ノズルを通さずに前記高分子組成物を収納された容器と、を備える、物質吸着膜の形成方法。
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