JP7354480B1 - レーザー光透過側成形品用樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Abstract

レーザー光透過側成形品の製造に適した樹脂組成物、及びレーザー光透過側用成形品を提供する。樹脂組成物成形品のレーザー光透過性を向上させる方法を提供する。ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部と、ポリカーボネート樹脂(B)10~100質量部と、カルボジイミド化合物(C)0.1~3質量部と、無機充填剤(D)0~100質量部と、無機リン化合物(E)と、を含む、レーザー光透過側成形品用樹脂組成物とする。樹脂組成物成形品のレーザー光透過性を向上させる方法であり、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部、ポリカーボネート樹脂(B)10~100質量部、無機充填剤(D)0~100質量部、及び無機リン化合物(E)を含む樹脂組成物に、カルボジイミド化合物(C)を0.1~3質量部配合することを含む、方法とする。

Description

本発明は、レーザー光透過側成形品用樹脂組成物及びその成形品に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリアルキレンテレフタレート樹脂は、耐熱性、機械的強度、寸法安定性、電気的特性、及び成形性に優れており、電気・電子分野や自動車分野等の分野で広く利用されている。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、アクチュエータやセンサー等の筐体に使用されることも多く、その接合にネジ止めや接着、溶着等の方法が採用されており、近年ではレーザー溶着が採用されることも多くなっている。
しかし、ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、ポリカーボネート樹脂やポリスチレン樹脂又はポリアミド樹脂等に比べて、レーザー光透過性が低くレーザー溶着に適していない。そこで、ポリアルキレンテレフタレート樹脂をレーザー溶着に適応させるための技術として、ポリブチレンテレフタレート樹脂にポリカーボネート樹脂又はスチレン系樹脂を配合してアロイ化する方法等がある(例えば、特許文献1)。
さらに、ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、湿熱環境下で長時間使用されると加水分解を起こしやすい。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性を高める技術として、樹脂組成物にエポキシ樹脂やカルボジイミド化合物を添加する方法がある。例えば、特許文献2には、熱可塑性ポリエステル系樹脂と所定量かつ所定の組成を有する染料と所定量のカルボジイミド化合物とを含むレーザー溶着用樹脂組成物が記載されている。
特開2003-292752号公報 特開2019-38878号公報
ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、ポリカーボネート樹脂と配合した場合、成形時の滞留によって熱安定性が低下してエステル交換反応が進むと、結晶化温度が低下してしまうことがある。結晶化温度が低下してしまうと結晶化しにくくなり、成形時の離型性や耐熱性などの品質が低下してしまう。また、エポキシ樹脂などの耐加水分解向上剤を用いた場合、樹脂組成物成形品の耐加水分解性は向上しても、レーザー溶着された部分の耐加水分解性は、樹脂組成物成形品と同様な改善が得られない場合がある。さらに、レーザー光透過側の成形品用の樹脂組成物は、肉厚の成形品の溶着やレーザー照射速度を速くすることで溶着工程を短縮するため、より高いレーザー光透過率を実現できることが好ましい。
本発明者は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂に、ポリカーボネート樹脂、カルボジイミド化合物及び無機リン化合物を配合することで、樹脂組成物の熱安定性、成形品のレーザー光透過性、及びレーザー溶着品におけるレーザー溶着部分の耐加水分解性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の一つの課題は、レーザー光透過側成形品の製造に適した樹脂組成物、及びレーザー光透過側用成形品を提供することにある。
本発明の別の課題は、樹脂組成物成形品のレーザー光透過性を向上させる方法を提供することにある。
本発明は以下の態様を有する。
[1]ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部と、ポリカーボネート樹脂(B)10~100質量部と、カルボジイミド化合物(C)0.1~3質量部と、無機充填剤(D)0~100質量部と、無機リン化合物(E)と、を含む、レーザー光透過側成形品用樹脂組成物。
[2]JIS K7121に基づき、示差走査熱量測定により、50℃から昇温速度10℃/分で280℃まで昇温後、降温速度-10℃/分にて50℃まで降温する操作を3サイクル繰り返したときの、1サイクル目の結晶化温度と3サイクル目の結晶化温度との差が5℃以下である、「1]に記載の樹脂組成物。
[3]エポキシ樹脂(F)をさらに含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4][1]から[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、レーザー光透過側用成形品。
[5][1]から[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を含むレーザー光透過側成形品と、レーザー光吸収側成形品と、を含む複合成形品。
[6][1]から[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む第1の成形品の少なくとも一部と、ポリアルキレンテレフタレート樹脂及びレーザー光吸収剤を含む樹脂組成物を含む第2の成形品の少なくとも一部とを重ね合わせ、第1の成形品側からレーザー光を照射して第1の成形品の少なくとも一部と第2の成形品の少なくとも一部とを溶着する、複合成形品の製造方法。
[7]樹脂組成物成形品のレーザー光透過性を向上させる方法であり、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部、ポリカーボネート樹脂(B)10~100質量部、無機充填剤(D)0~100質量部、及び無機リン化合物(E)を含む樹脂組成物に、カルボジイミド化合物(C)を0.1~3質量部配合することを含む、方法。
本発明によれば、レーザー光透過側成形品の製造に適した樹脂組成物、及びレーザー光透過側用成形品を提供することができる。本発明によれば、樹脂組成物成形品のレーザー光透過性を向上させる方法を提供することができる。
実施例2の樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(B)の分散状態を確認するための走査電子顕微鏡写真(10,000倍)である。 比較例2の樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(B)の分散状態を確認するための走査電子顕微鏡写真(10,000倍)である。 レーザー溶着試験で使用した試験片の形状を示す概略説明図である。(a)は、レーザー光透過側成形品である試験片の側面図であり、(b)は、レーザー光吸収側成形品である試験片の側面図である。各数値は寸法(mm)を示している。 レーザー溶着試験におけるレーザー光の照射状況を示す概略説明図である。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。本明細書において「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。
[樹脂組成物]
本実施形態に係るレーザー光透過側成形品用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部と、ポリカーボネート樹脂(B)10~100質量部と、カルボジイミド化合物(C)0.1~3質量部と、無機充填剤(D)0~100質量部と、無機リン化合物(E)と、を含む。
「レーザー光透過側成形品用」とは、レーザー溶着用の成形品のうち、レーザー光透過側に用いられる成形品の製造に用いられることを意味している。
(ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A))
ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)は、ジカルボン酸化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール化合物及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応により得られる熱可塑性ポリエステル樹脂のうち、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、ジオール成分としてアルキレングリコール及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするものである。
ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)としては、主成分以外のジカルボン酸成分やジオール成分、さらに他の共重合可能なモノマーとして、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等(以下、共重合性モノマーという場合がある)を組み合わせたコポリエステルも使用できる。
主成分以外のジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドテカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等のC4-40程度のジカルボン酸、好ましくはC4-14程度のジカルボン酸)、脂環族ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等のC4-40程度のジカルボン酸、好ましくはC8-12程度のジカルボン酸)、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、メチルイソフタル酸、メチルテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’-ジオキシ安息香酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸等のC8-16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物等のエステル形成可能な誘導体)等が挙げられる。テレフタル酸と組み合わせて用いるのに好ましいジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、これらを二種以上組み合わせて用いることもできる。ただし、共重合性モノマーとしてのジカルボン酸成分全体の、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上が芳香族ジカルボン酸化合物であるとよい。さらに必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体(アルコールエステル等)等を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリアルキレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
主成分以外のジオール成分としては、脂肪族アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等のC2-12程度の脂肪族ジオール、好ましくはC2-10程度の脂肪族ジオールのうち、主成分として使用するもの以外の脂肪族アルカンジオール)、ポリオキシアルキレングリコール(C2-4程度のオキシアルキレン単位を複数有するグリコール。例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、脂環族ジオール(例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等)等が挙げられる。また、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコール等の芳香族ジオールを併用してもよい。ただし、共重合性モノマーとしてのジオール成分全体の、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上がアルキレングリコールであるとよい。さらに必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等のポリオール又はそのエステル形成性誘導体を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリアルキレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
オキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸成分又はオキシカルボン酸類)には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はこれらの誘導体等が含まれる。ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン等が含まれる。
なお、コポリエステルにおいて、共重合性モノマーの割合は、例えば、全単量体に対して、0.01モル%以上30モル%以下程度の範囲から選択できる。一実施形態においては、全単量体に対して、1モル%以上25モル%以下程度、好ましくは3モル%以上20モル%以下程度、更に好ましくは5モル%以上15モル%以下程度である。また、ホモポリエステルとコポリエステルとを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの合計量(100モル%)に対するコポリエステルの割合が、0.01モル%以上30モル%以下(好ましくは1モル%以上25モル%以下程度、更に好ましくは3モル%以上20モル%以下程度、特に好ましくは5モル%以上15モル%以下程度)となる範囲から選択できる。一実施形態においては、ホモポリエステル/コポリエステル=99/1~1/99(質量比)、好ましくは95/5~5/95(質量比)、更に好ましくは90/10~10/90(質量比)程度の範囲から選択できる。
好ましいポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)には、アルキレンテレフタレート単位を主成分(例えば、50~100モル%、好ましくは75~100モル%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリC2-4アルキレンテレフタレート等のホモポリエステル;アルキレンテレフタレート単位を主成分として、共重合成分にアルキレンイソフタレート単位を含有するコポリエステル;アルキレンテレフタレート単位を主成分として、共重合成分にアルキレンナフタレート単位を含有するコポリエステル等]が含まれ、これらを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
特に好ましいポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)は、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレート等のC2-4アルキレンテレフタレート単位を80モル%以上(特に90モル%以上)含む、ホモポリエステル樹脂又はコポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート樹脂等)である。
これらの内、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、特にポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシ基量は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)の末端カルボキシ基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。
ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は、本発明の効果を阻害しない範囲で特に制限されない。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.6~1.3dL/gであるのが好ましく、0.65~1.2dL/gであるのがより好ましい。かかる範囲の固有粘度のポリアルキレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られる樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリアルキレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.8dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は、例えば、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
なお、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)としては、市販品を使用してもよく、ジカルボン酸成分又はその反応性誘導体と、ジオール成分又はその反応性誘導体と、必要により共重合可能なモノマーとを、慣用の方法、例えばエステル交換、直接エステル化法等により共重合(重縮合)することにより製造したものを使用してもよい。
(ポリカーボネート樹脂(B))
樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(B)を、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して10~100質量部含む。ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)に、ポリカーボネート樹脂(B)を配合し、さらに後述するカルボジイミド化合物(C)を添加することによって、樹脂組成物の滞留時の熱安定性、成形品のレーザー光透過率、及びレーザー溶着成形品の溶着部の耐加水分解性を高めることができることが分かった。
ポリカーボネート樹脂(B)(PC樹脂)としては、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとの反応により得られる重合体が挙げられる。ジヒドロキシ化合物は、脂環式ジオール等の脂環族化合物等であってもよいが、好ましくは芳香族化合物、より好ましくはビスフェノール化合物である。ジヒドロキシ化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ビスフェノール化合物としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、2,2,2’,2’-テトラヒドロ3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビ-[1H-インデン]-6,6’-ジオール等のビス(ヒドロキシアリール)C1-10アルカン、好ましくはビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)C4-10シクロアルカン;4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフォキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフォキシド等のジヒドロキシアリールスルフォキシド;4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルケトン等のジヒドロキシアリールケトン等が挙げられる。
好ましいポリカーボネート樹脂(B)としては、ビスフェノールA型ポリカーボネートが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(B)は、ホモポリカーボネートであってもよいし、コポリカーボネートであってもよい。また、ポリカーボネート樹脂(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂(B)の溶融粘度は、限定されず、300℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が、好ましくは0.1kPa・s以上であり、より好ましくは0.2kPa・s以上であり、さらに好ましくは0.25kPa・s以上である。
ポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、10~100質量部であり、好ましくは15~90質量部であり、より好ましくは20~85質量部であり、さらに好ましくは22~80質量部である。一実施形態において、ポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、60~85質量部であってもよく、70~85質量部であってもよく、75~85質量部であってもよい。別の実施形態において、ポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対し、10~30質量部であり得る。
一実施形態において、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)の総含有量は、樹脂組成物中に含まれる熱可塑性樹脂中の、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。言い換えると、一実施形態において、樹脂組成物中のポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは熱可塑性樹脂中に20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは0である。
一実施形態において、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂から選択される少なくとも1つのポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)、並びにポリカーボネート樹脂(B)のみからなり得る。一実施形態において、樹脂組成物中の熱可塑性樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂であるポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂(B)のみからなり得る。
(カルボジイミド化合物(C))
樹脂組成物は、カルボジイミド化合物(C)を、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して0.1~3質量部含む。ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とのアロイ材を用いたレーザー溶着用樹脂組成物において、カルボジイミド化合物(C)を添加することによって、溶融時の熱安定性の向上効果、成形品のレーザー光透過率の向上効果、及びレーザー溶着部の耐加水分解性の向上効果が確認された。
また、無機リン化合物を含むと成形品のレーザー光透過率が低下することがあるが、カルボジイミド化合物(C)を含むことにより、無機リン化合物を含む場合でも成形品のレーザー光透過率を向上させることができる。さらに、着色剤を含む場合は成形品のレーザー光透過率が低下する傾向にあるが、カルボジイミド化合物(C)を含むことにより、着色剤を含む樹脂組成物においても、カルボジイミド化合物(C)を含まない成形品に比べてレーザー光透過率をさせることができる。
レーザー光透過率が向上することの非限定的なメカニズムとして、カルボジイミド化合物(C)を添加することによって、樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(B)の分散径が小さくなり、かつ均一に分散されることにより、レーザー光の透過率が高くなることが考えられる。
図1,2に、樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(B)の分散状態を確認するための走査電子顕微鏡写真(10,000倍)を示す。図1は、実施例2の成形品サンプルを、室温で有機溶媒(クロロホルム)中に浸漬させてポリカーボネート樹脂(B)を抽出した後、真空乾燥し、その後、成形品の破断面を、スパッタリング処理して走査電子顕微鏡(例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「Phenom Pro X」)で観察した写真である。図2は、比較例2の樹脂組成物を用いて同様の操作をした後、走査電子顕微鏡で観察した写真である。図1,2において黒い影として観察される部分は、ポリカーボネート樹脂(B)が存在していた箇所を示している。
図1に示すように、実施例2の樹脂組成物において、ポリカーボネート樹脂(B)は、小さい粒状となって均一に分散している。図1の視野において、黒い影として観察される部分の最大径(最大の直線距離)は500nm程度であり、レーザー光の波長(940nm)よりも短い。図2に示すように、比較例2の樹脂組成物において、ポリカーボネート樹脂(B)は、線状又は粒状に凝集しており、かつ分散状態は不均一になっている。
レーザー溶着成形品の溶着部の耐加水分解性が向上することの非限定的なメカニズムとして、カルボジイミド化合物(C)を添加することによって、レーザー溶着時の熱によるポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)の分解をカルボジイミド化合物(C)が抑制するとともに、更に湿熱処理時にポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)の分解が進むにつれ、カルボジイミド化合物(C)がレーザー光透過側成形品とレーザー光吸収側成形品の双方に含まれるポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)のカルボン酸末端と反応し、架橋効果により成形品の強度が保持されること等が考えられる。
カルボジイミド化合物(C)は、分子中にカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物である。カルボジイミド化合物(C)としては、主鎖が脂肪族の脂肪族カルボジイミド化合物、主鎖が脂環族の脂環族カルボジイミド化合物、主鎖が芳香族の芳香族カルボジイミド化合物が挙げられ、これらから選択される1以上を用いることができる。
中でも、成形品のレーザー光透過率をより向上できる点で、芳香族カルボジイミド化合物を含有することが好ましい。
脂肪族カルボジイミド化合物としては、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド等が挙げられる。脂環族カルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド等が挙げられる。これらは2種以上を併用することもできる。
芳香族カルボジイミド化合物としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N’-フェニルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-p-メトキシフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロルフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-o-トリイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド等のモノ又はジカルボジイミド化合物;及びポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ビフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,5’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等のポリカルボジイミド化合物;が挙げられる。これらは2種以上を併用することもできる。
これらの中でも特に、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(フェニレンカルボジイミド)およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)から選択される1以上を好適に用いることができる。
カルボジイミド化合物の数平均分子量は、3000以上であることが好ましい。数平均分子量を上記範囲にすることで、熱可塑性樹脂の溶融混練時や成形時の滞留時間が長い場合において、ガスや臭気が発生することを防ぎやすくなる。
カルボジイミド化合物(C)の配合量は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、0.1~3質量部であり、好ましくは0.5~2.5質量部であり、より好ましくは0.8~2.0質量部であり、さらに好ましくは1.0~1.5質量部である。カルボジイミド化合物(C)を、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して0.1~3質量部含むことにより、溶融時の熱安定性、成形品のレーザー光透過率、及びレーザー溶着品におけるレーザー溶着部分の耐加水分解性を高めることができる。
カルボジイミド化合物(C)は、取り扱いを容易にするため、マトリックス樹脂中にカルボジイミド化合物(C)が分散しているマスターバッチとして用いることもできる。マトリックス樹脂の種類は、特に限定されず、例えば上記したポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)と同じであってもよく、異なる種類の熱可塑性樹脂であってもよい。マスターバッチの調製方法は、特に限定されず、例えば、マトリックス樹脂とカルボジイミド化合物(C)とを押出機で溶融及び混練することにより製造することができる。
(無機充填剤(D))
樹脂組成物は、得られる成形品の機械的物性を向上させる目的で、無機充填剤(D)を含んでいてもよい。無機充填剤(D)としては、繊維状充填剤、板状充填剤、又は粉粒状充填剤が挙げられる。
繊維状充填剤としては、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ-アルミナ繊維、アルミニウムシリケート繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、ウィスカー(アルミナ、窒化珪素等のウィスカー)等の無機質繊維;脂肪族又は芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル等のアクリル樹脂、レーヨン等で形成された繊維等の有機質繊維が挙げられる。板状充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。
粉粒状充填剤としては、例えば、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(例えば、ミルドガラスファイバー等)、ウォラストナイト(珪灰石)等が挙げられる。なお、ウォラストナイトは、板状、柱状、繊維状等の形態であってもよい。無機充填剤(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらののうち、安価であり入手しやすいこと等から、無機充填剤(D)はガラス繊維を含むことが好ましい。
繊維状充填剤の平均径は、例えば、1μm~30μm(好ましくは3μm~20μm)程度、平均繊維長は、例えば、100μm~5mm(好ましくは300μm~4mm、さらに好ましくは500μm~3.5mm)程度であってもよい。また、板状又は粉粒状充填剤の平均一次粒子径は、例えば、10μm~500μm、好ましくは15μm~100μm程度とすることができる。
なお、繊維状充填剤の平均径及び平均繊維長、並びに板状又は粉粒状充填剤の平均一次粒子径は、樹脂組成物中に配合される前の繊維状充填剤、板状又は粉粒状充填剤について、CCDカメラで撮影した画像を解析し、加重平均により算出した値であり、例えば、株式会社セイシン企業製、製品名「動的画像解析法/粒子(状態)分析計PITA-3」等を用いて算出することができる。
無機充填剤(D)の含有割合は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、0~100質量部であり、好ましくは10~90質量部であり、より好ましくは30~85質量部であり、さらに好ましくは50~80質量部である。
(無機リン化合物(E))
樹脂組成物は、無機リン化合物(E)を含む。ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)にポリカーボネート樹脂(B)及びカルボジイミド化合物(C)を配合した樹脂組成物において、無機リン化合物(E)をさらに含むことにより、樹脂組成物の滞留時の熱安定性をさらに高めることができる。
無機リン化合物(E)としては、無機リン酸(リン酸、亜リン酸、ホスフォン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ポリ亜リン酸、ホスホノカルボン酸、含窒素リン酸等)及びそれらの酸性金属塩等が挙げられる。
無機リン酸の酸性金属塩には、例えば、無機リン酸水素アルカリ金属塩類(例えば、LiHPO、NaHPO、NaHPO・2HO、Na、KHPO、K等の(ピロ)リン酸水素アルカリ金属塩)、無機リン酸水素アルカリ土類金属塩類(例えば、Ca(HPO)、Ca(HPO)・HO、CaH、Mg(HPO)、MgH等の(ピロ)リン酸水素アルカリ土類金属塩)、無機リン酸水素アルミニウム塩類(例えば、Al(HPO)等)等が挙げられる。無機リン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一実施形態において、無機リン化合物(E)は、第一リン酸カルシウム(Ca(HPO))を含むことが好ましい。
無機リン化合物(E)の含有量は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部であり、より好ましくは0.05~3質量部であり、さらに好ましくは0.08~1質量部であり、特に好ましくは0.08~0.5質量部である。
熱安定性の向上効果をより高める観点から、樹脂組成物は有機リン化合物を含んでも良い。樹脂組成物中の有機リン化合物の含有量は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して0.1質量部以上1.5質量部未満であることが好ましく、0.2質量部以上0.5質量部未満であることがより好ましい。
一実施形態において、樹脂組成物は、無機リン化合物(E)のみからなるリン系化合物を含むことが好ましい。
(エポキシ樹脂(F))
樹脂組成物は、樹脂組成物自体の耐加水分解性をより高めるために、エポキシ樹脂(F)を含んでいてもよい。エポキシ樹脂(F)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、2種以上のエポキシ樹脂を任意に組み合わせて使用してもよい。エポキシ当量は、150~1500g/当量(g/eq)であることが好ましい。
一実施形態において、樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂(F)の含有量は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)に対して、好ましくは0~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部であり、さらに好ましくは1~5質量部であり、特に好ましくは1~3質量部である。
(その他の添加物)
樹脂組成物には、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、難燃剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、染顔料等の着色剤、分散剤、可塑剤、核剤等を添加してもよい。この場合の添加物の含有量は、例えば、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部に対して、0質量部を超え20質量部以下とすることができる。なお、着色剤については、意匠面の要求から、レーザー光吸収側成形品と同様の色目、特に黒色系への着色が必要となる場合、レーザー光透過性を損なわないよう、染料系の着色剤を用いるか、あるいはレーザー光透過率を損なわない顔料(例えば、BASF社のルモゲン(登録商標)ブラックなど)を用いることが望ましい。
樹脂組成物には、必要に応じて、他の樹脂を含有することもできる。他の樹脂としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、コアシェルポリマー等を挙げることができる。
樹脂組成物は、レーザー光透過率をさらに高めるため、レーザー光吸収性化合物を含まない、又は樹脂組成物中のレーザー光吸収性化合物の割合が0.01質量%未満であることが好ましい。レーザー光吸収性化合物としては、例えば、カーボンブラック、六ホウ化ランタン、セシウム酸化タングステン等が挙げられる。
(樹脂組成物)
樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出すことによりペレットとする方法や、組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製しそのペレットを所定量混合する方法等が挙げられる。
樹脂組成物は、滞留時の熱安定性に優れるとともに、成形品のレーザー光透過率が向上し、さらにレーザー溶着成形品の溶着部の耐加水分解性が優れている。よって、レーザー溶着に供される成形品のうちレーザー光透過側成形品の製造用に好ましく用いることができる。
一実施形態において、樹脂組成物は、JIS K7121に基づき、示差走査熱量測定(DSC)により、50℃から昇温速度10℃/分で280℃まで昇温後、降温速度-10℃/分にて50℃まで降温する操作を1サイクルとして、3サイクル繰り返したときの、1サイクル目の結晶化温度と3サイクル目の結晶化温度との差が、5℃以下であることが好ましく、4.8℃以下であることがより好ましく、1.5℃以下であることがさらに好ましい。
[成形品]
本実施形態に係る成形品(単に「成形品」ともいう)は、上記した樹脂組成物を含む、レーザー光透過側用成形品である。成形品は、上記樹脂組成物を含むので、成形時の滞留による熱分解が抑えられているとともに、レーザー光透過率が向上している。また、レーザー溶着された場合にレーザー溶着部分の耐加水分解性が優れている。
一実施形態において、上記した樹脂組成物の成形品のレーザー光透過率(T1)の、カルボジイミド化合物(B)を含まない樹脂組成物の成形品のレーザー光透過率(T2)に対する比(T1/T2)が、1.10以上であることが好ましく、1.20以上であることがより好ましく、1.30以上であることがさらに好ましい。「カルボジイミド化合物(B)を含まない樹脂組成物」は、カルボジイミド化合物(B)を含まないこと以外は、当該樹脂組成物と同じ組成の樹脂組成物を意味する。レーザー光透過率は、光路長2.0mmにおける波長940nmのレーザー光透過率とする。レーザー光透過率は、分光光度計を用いて測定した値である。
一実施形態において、成形品の、光路長2.0mmにおける波長940nmのレーザー光透過率は、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。一実施形態において、成形品が着色剤を含む場合は、光路長2.0mmにおける波長940nmのレーザー光透過率は、30%以上であることが好ましい。
成形品は、それ自体の耐加水分解性が優れている。一実施形態において、成形品を、恒温恒湿槽で湿熱処理(85℃、湿度85%、1000時間)した後の、ISO527-1,2に準拠して測定した引張強さが、湿熱処理前の引張強さに対して、70%以上の保持率であることが好ましく、80%以上の保持率であることがより好ましく、85%以上の保持率であることがさらに好ましい。成形品は、レーザー溶着した場合のレーザー溶着部分の耐加水分解性を向上させることもできる。
成形品は、上記した樹脂組成物を用いて製造される。成形品の製造方法は、特に限定されず、樹脂組成物を溶融混練し、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、回転成形、ガスインジェクションモールディング等の慣用の方法で成形することができ、通常は、射出成形により成形される。なお、射出成形時の金型温度は、通常40~90℃、好ましくは50~80℃、さらに好ましくは60~80℃程度である。
成形品の形状は、特に制限されないが、成形品をレーザー溶着により相手材(レーザー光吸収側成形品)と接合して用いることができるよう、通常、少なくとも接触面(平面等)を有する形状(例えば、板状)である。また、成形品はレーザー光に対する透過性が高いので、レーザー光が透過する部位の成形品の厚み(レーザー光が透過する方向の厚み)は、広い範囲から選択でき、例えば、0.3mm~5mm、好ましくは0.5mm~3mm(例えば、1mm~2mm)程度であってもよい。
[複合成形品]
本実施形態に係る複合成形品(以下、単に「複合成形品」ともいう)。は、上記した樹脂組成物を含むレーザー光透過側成形品(以下、「第1の成形品」ともいう)と、レーザー光吸収側成形品(以下、「第2の成形品」ともいう)と、を含む。レーザー光透過側成形品については、上記のレーザー光透過側用成形品と同じである。
第2の成形品を構成する樹脂組成物としては、第1の成形品を構成する樹脂組成物と相溶性のある樹脂組成物であれば特に制限されず、例えば、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂を含む樹脂組成物を挙げることができる。第2の成形品を構成する樹脂組成物は、第1の成形品を構成する樹脂組成物に含まれる樹脂と同種類又は同系統の樹脂(PBT系樹脂、PET系樹脂等の芳香族ポリエステル系樹脂、及び/又はポリカーボネート系樹脂)を含んでいてもよい。
第2の成形品は、レーザー光に対する吸収剤又は着色剤を含んでいてもよい。着色剤は、レーザー光の波長に応じて選択でき、無機顔料又は有機顔料を用いることができる。無機顔料としては、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等)等の黒色顔料、酸化鉄赤等の赤色顔料、モリブデートオレンジ等の橙色顔料、酸化チタン等の白色顔料等を挙げることができる。有機顔料としては、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料等を挙げることができる。これらの吸収剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。吸収剤としては、通常、黒色顔料又は染料、特にカーボンブラックが使用できる。カーボンブラックの平均粒子径は、通常、1nm~1000nm、好ましくは10nm~100nm程度であってもよい。着色剤の割合は、第2の成形品構成する組成物全体に対して0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%(例えば、0.5質量%~3質量%)程度である。
レーザー光の照射は、通常、第1の成形品から第2の成形品の方向に向けて行われ、光吸収性を有する第2の成形品との界面で発熱させることにより、第1の成形品と第2の成形品とを融着させる。なお、必要によりレンズ系を利用して、第1の成形品と第2の成形品との界面にレーザー光を集光させ接触界面を融着してもよい。レーザー光源としては、特に制限されず、例えば、色素レーザー、気体レーザー(エキシマレーザ、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム-ネオンレーザ等)、固体レーザー(YAGレーザー等)、半導体レーザー等が利用できる。レーザー光としては、通常、パルスレーザが利用される。
複合成形品は、レーザー溶着部分の耐加水分解性が優れている。一実施形態において、複合成形品を、恒温恒湿槽で湿熱処理(85℃、湿度85%、1000時間)した後の、レーザー溶着された部分の引張強さが、湿熱試験前のレーザー溶着された部分の引張強さに対して、50%以上の保持率であることが好ましく、60%以上の保持率であることがより好ましく、70%以上の保持率であることがさらに好ましい。
[レーザー光透過性向上方法]
本実施形態に係るレーザー光透過性向上方法は、樹脂組成物成形品のレーザー光透過性を向上させる方法であり、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部、ポリカーボネート樹脂(B)10~100質量部、無機充填剤(D)0~100質量部、及び無機リン化合物(E)を含む樹脂組成物に、カルボジイミド化合物(C)を0.1~3質量部配合することを含む。本発明者の研究により、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)とのアロイ材を用いたレーザー溶着用樹脂組成物において、カルボジイミド化合物(C)を添加することによって、樹脂組成物を含む成形品のレーザー光透過率が向上することが確認された。そのメカニズムは現段階では明らかではないが、図1,2に示すように、カルボジイミド化合物(B)の添加によって、樹脂組成物中におけるポリカーボネート樹脂(B)の分散径が小さくなり、かつ均一に分散される。これにより、ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)とポリカーボネート樹脂(B)界面の光の散乱が減少し、樹脂組成物の成形品のレーザー光透過性が向上すると考えられる。
カルボジイミド化合物(C)を含むことにより、無機リン化合物(E)を含む場合でも、樹脂組成物成形品のレーザー光透過率を向上させることができる。カルボジイミド化合物(C)を含むことにより、着色剤を含む場合でも、樹脂組成物成形品の樹脂組成物のレーザー光透過率を向上させることができる。
「レーザー光透過性が向上する」とは、カルボジイミド化合物(C)を含む樹脂組成物のレーザー光透過率(T1)が、カルボジイミド化合物(C)を含まない樹脂組成物のレーザー光透過率(T2)よりも高いことを意味している。
一実施形態において、レーザー光透過性向上方法は、樹脂組成物の成形品のレーザー光透過率(T1)の、カルボジイミド化合物(C)を含まない樹脂組成物の成形品のレーザー光透過率(T2)に対する比(T1/T2)を、1.10以上にする方法であることが好ましく、1.20以上にする方法であることがより好ましく、1.30以上にする方法であることがさらに好ましい。「カルボジイミド化合物(C)を含まない樹脂組成物」は、カルボジイミド化合物(C)を含まないこと以外は、当該樹脂組成物と同じ組成の樹脂組成物を意味する。レーザー光透過率は、光路長2.0mmにおける波長940nmのレーザー光透過率とする。レーザー光透過率は、分光光度計を用いて測定した値である。
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
[材料]
実施例及び比較例で使用した材料は、以下のとおりである。
A:ポリアルキレンテレフタレート樹脂(PBT)
A-1:ポリプラスチックス(株)製、ポリブチレンテレフタレート、固有粘度(IV):0.69dL/g
A-2:ポリプラスチックス(株)製、イソフタル酸12.5モル変性ポリブチレンテレフタレート
B:ポリカーボネート樹脂(PC)
帝人株式会社製、製品名「パンライト(登録商標)」、溶融粘度:0.27kPa・s
C:カルボジイミド化合物
ランクセス社製、芳香族カルボジイミド、製品名「Stabaxol(登録商標) P-100」
D:無機充填剤(GF)
日本電気硝子(株)製、ガラス繊維、製品名「T-127」、平均繊維径:13μm
E:リン系化合物
E-1:第一リン酸カルシウム
E-2:(株)ADEKA製、製品名「アデカスタブ(登録商標)AX-71」(モノ-及びジ-ステアリルアシッドホスフェートの混合物)
E-3:(株)ADEKA社、製品名「アデカスタブPEP-36」(ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)
F:エポキシ樹脂
三菱ケミカル(株)製、製品名「エピコート1004」
G:酸化防止剤
BASFジャパン(株)製、「Irganox(登録商標) 1010」
H:核剤
窒化硼素
I:着色剤
I-1:Pigment Blue 15.3
I-2:Pigment Yellow 181
I-3:Pigment Red 149
J:エラストマー
東洋紡(株)製、ポリエステルエラストマー、製品名「ペルプレン(登録商標)P-90BD」
K:滑剤
理研ビタミン(株)製、製品名「リケマール(登録商標) B-74」
[実施例1~3、比較例1~8]
表1,2に示す材料を表1,2に示す含有割合で、2軸押出機(日本製鋼所株式会社製、30mmφ)により260℃にて混錬し、樹脂組成物ペレットを作製した。なお、実施例3及び比較例8は、着色剤を含む場合の例である。
[測定及び評価]
実施例及び比較例の樹脂組成物ペレットについて、以下の物性を測定及び評価した。結果を表1,2に示す。
(レーザー光透過性)
樹脂組成物ペレットをシリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、試験片(80mm×80mm×厚み2mm)を得た。得られた試験片について、光路長2.0mmにおける波長940nmにおけるレーザー光透過率を、分光光度計(日本分光(株)製、製品名「V770」)を用いて測定した。
(樹脂組成物成形品の耐加水分解性)
実施例又は比較例で得られた樹脂組成物ペレットを140℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、ISO3167に準拠した1Aタイプの引張試験片を作製した。得られた試験片について、ISO527-1,2に準拠し、引張強さの測定をした。
次に上記試験片を恒温恒湿槽で湿熱処理し(85℃、湿度85%、1000時間)、湿熱処理後の引張強さをISO527-1,2に準拠して測定した。湿熱処理前後の強度保持率[(湿熱処理後の引張強さ/湿熱処理前の引張強さ)×100(%)]を算出した。
(樹脂組成物成形品の破断面の観察)
実施例2及び比較例2で得られた樹脂組成物ペレットを、それぞれ、140℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、ISO3167に準拠した1Aタイプの引張試験片を得た。得られた成形品を、ビューラー社製のダイヤモンドカッター(製品名「アイソメット1000」)を使用して、標線間において垂直方向に切断した。得られた切断品のうちの一つの切断面をミクロトームで切削し、有機溶媒(クロロホルム)を用いて室温で浸漬することにより、ポリカーボネート樹脂(B)を抽出した。その後、真空乾燥、スパッタリング処理して、走査電子顕微鏡(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「Phenom Pro X」)を用いて10,000倍で観察した。図1,2に走査電子顕微鏡写真(10,000倍)を示す。
(レーザー溶着品の作製)
実施例又は比較例で得られた樹脂組成物ペレットをレーザー光透過材料として使用した。その樹脂組成物ペレットに、カーボンブラック濃度が20質量%のPBTマスターバッチを、樹脂組成物とPBTマスターバッチとの質量比(樹脂組成物:PBTマスターバッチ)が19:1となる割合で添加した樹脂組成物を吸収材料として使用した。
レーザー光透過材料としての樹脂組成物ペレットを、140℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、図3(a)に示す形状を有するレーザー光透過側成形品1(第1の成形品)を得た。図3(a)に示すレーザー光透過側成形品1は、直径48mm、厚さ2mmの円盤状で、該円盤の片側の主面中央部に突起を有しており、全体で鍋蓋型の形状となっている。
レーザー光吸収材料としての樹脂組成物ペレットを、140℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、図3(b)に示す形状を有するレーザー光吸収側成形品2(第2の成形品)を得た。図3(b)に示すレーザー光吸収側成形品2は、厚み2.5mm、内径43mm、高さ20mmの、中空で上面が全体に開口している鍋型の形状を有している。レーザー光吸収側成形品2は、高さ15mmの部分に、外側に広がる幅2.5mm、厚さ0.5mmの縁部を有しており、該縁部の底面から垂直に5mm延びて直径48mmの開口部を形成している。
図4に、レーザー光の照射状況を示す概略説明図を示す。図4に示すように、レーザー光透過側成形品1(第1の成形品)を、レーザー光吸収側成形品2(第2の成形品)の前記縁部に嵌め込み、レーザー光吸収側成形品(第2の成形品)の開口部をふさいだ状態にして、レーザー溶着装置(株式会社ファインデバイス製、製品名「FD-2430」)を用いて、レーザー光透過側成形品1(第1の成形品)側から、照射速度10mm/sec、照射径1.6mmで、レーザーヘッド3からレーザー光4を照射してレーザー溶着を行い、レーザー溶着品(複合成形品)を得た。複合成形品は、レーザー光吸収側成形品(第2の成形品)の開口部が、レーザー光透過側成形品(第1の成形品)で塞がれている。幅5mmの縁部がレーザー溶着部分である。
(レーザー溶着部分の耐加水分解性)
上記によって得られたレーザー溶着品(複合成形品)のレーザー溶着部分について、(株)島津製作所製、製品名「万能試験機オートグラフAG-X」を用いて、試験速度10mm/minにて、初期破壊強度を測定した。
次に、レーザー溶着品を恒温恒湿槽で湿熱処理し(85℃、湿度85%、1000時間)、上記と同じ条件でレーザー溶着部分の湿熱試験後の破壊強度を測定した。
湿熱処理前後での強度保持率[(湿熱処理後の引張強さ/湿熱処理前の引張強さ)×100(%)]を算出した。強度保持率が70%以上をAと判定し、70%未満をBと判定した。
(熱安定性)
実施例又は比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製、製品名「DSC Q-1000」)を用い、280℃に加熱して溶融させてから、50℃まで降温し、その後、50℃から280℃まで10℃/分で昇温し、280℃環境下で5分間維持した後、50℃まで10℃/分で降温する操作を3サイクル繰り返した。1サイクル目に検出される結晶化温度Tc1と3サイクル目で検出される結晶化温度Tc3の差(Tc1-Tc3)をΔTcとして算出した。
ΔTcがいずれも5℃以下のものをAと判定性、ΔTcが5℃を超えるものをBと判定した。
Figure 0007354480000001
Figure 0007354480000002
表1に示すように、実施例1,2の樹脂組成物は、ΔTcがいずれも5℃以下であり熱安定性に優れている。実施例1,2の樹脂組成物は、比較例1,2の樹脂組成物に比べて、成形品の波長940nmにおけるレーザー光透過率が向上している。実施例1のレーザー光透過率(T1)の、比較例1のレーザー光透過率(T2)に対する比(T1/T2)は、1.26であり、実施例2のレーザー光透過率(T1)の、比較例2のレーザー光透過率(T2)に対する比(T1/T2)は、1.39であった。実施例1,2の樹脂組成物は、樹脂組成物成形品の耐加水分解性に優れるとともに、レーザー溶着品におけるレーザー溶着部分の耐加水分解性も優れている。実施例1と比較例1との対比、及び実施例2と比較例2との対比から、カルボジイミド化合物(C)を添加することによる耐加水分解性の向上効果は、透過側樹脂組成物単体(樹脂組成物成形品)の場合に比べ、接合部(レーザー溶着品)の方がより顕著であることが分かる。
カルボジイミド化合物(C)を含まない比較例1,2の樹脂組成物は、熱安定性に劣るとともに、レーザー溶着品におけるレーザー溶着部分の耐加水分解性が低い。
カルボジイミド化合物(C)及び無機リン化合物(E)を含まない比較例3の樹脂組成物は、成形品のレーザー光透過率は高いものの、レーザー溶着品におけるレーザー溶着部分の耐加水分解性及び熱安定性が低い。比較例1と比較例3との対比から、カルボジイミド化合物(C)を含まない樹脂組成物では、無機リン化合物(E)を添加することでΔTcが小さくなり熱安定性は向上するものの、レーザー光透過率が82%から50%まで大きく低下することが分かる。これに対して、カルボジイミド化合物(C)を含む実施例1では、60%以上のレーザー光透過率を実現することができる。実施例1の樹脂組成物は、比較例1の樹脂組成物に比べて、波長940nmにおけるレーザー光透過率が向上している。
カルボジイミド化合物(C)の含有量が0.1質量部未満である比較例4の樹脂組成物は、成形品のレーザー光透過率が低く、レーザー溶着品におけるレーザー溶着部分の耐加水分解性が低い。
ポリカーボネート樹脂(B)、カルボジイミド化合物(C)及び無機リン化合物(E)を含まない比較例5の樹脂組成物は、熱安定性は高いものの、成形品のレーザー光透過率が低く、レーザー溶着品におけるレーザー溶着部分の耐加水分解性が低い。
無機リン化合物(E)に替えて有機リン化合物を含む比較例6,7の樹脂組成物は、熱安定性が低い結果となった。
表2に示すように、着色剤を含む樹脂組成物においても、実施例3の樹脂組成物は、比較例8の樹脂組成物に比べて、成形品の波長940nmにおけるレーザー光透過率が向上している。実施例3の樹脂組成物は、樹脂組成物成形品の耐加水分解性に優れるとともに、レーザー溶着品におけるレーザー溶着部分の耐加水分解性も優れている。
本発明の樹脂組成物は熱安定性、レーザー光透過性、及びレーザー溶着部分の耐加水分解性に優れるため、レーザー光透過側成形品として好適に利用できる。
1 レーザー光透過側成形品
2 レーザー光吸収側成形品
3 レーザーヘッド
4 レーザー光

Claims (7)

  1. ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部と、
    ポリカーボネート樹脂(B)10~100質量部と、
    カルボジイミド化合物(C)0.1~3質量部と、
    無機充填剤(D)0~100質量部と、
    第一リン酸カルシウムを含む無機リン化合物(E)と、
    を含む、レーザー光透過側成形品用樹脂組成物。
  2. JIS K7121に基づき、示差走査熱量測定により、50℃から昇温速度10℃/分で280℃まで昇温後、降温速度-10℃/分にて50℃まで降温する操作を3サイクル繰り返したときの、1サイクル目の結晶化温度と3サイクル目の結晶化温度との差が5℃以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. エポキシ樹脂(F)をさらに含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、レーザー光透過側用成形品。
  5. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含むレーザー光透過側成形品と、レーザー光吸収側成形品と、を含む複合成形品。
  6. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む第1の成形品の少なくとも一部と、ポリアルキレンテレフタレート樹脂及びレーザー光吸収剤を含む樹脂組成物を含む第2の成形品の少なくとも一部とを重ね合わせ、第1の成形品側からレーザー光を照射して第1の成形品の少なくとも一部と第2の成形品の少なくとも一部とを溶着する、複合成形品の製造方法。
  7. 樹脂組成物成形品のレーザー光透過性を向上させる方法であり、
    ポリアルキレンテレフタレート樹脂(A)100質量部、ポリカーボネート樹脂(B)10~100質量部、無機充填剤(D)0~100質量部、及び第一リン酸カルシウムを含む無機リン化合物(E)を含む樹脂組成物に、カルボジイミド化合物(C)を0.1~3質量部配合することを含む、方法。
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