通信技術の発展に伴いネットワーク環境の整備が加速される中、持ち運び可能な端末機器の普及が著しい。スマートホンや携帯電話のように人が身に付けて携行する携帯端末や、カーナビゲーションに代表される車載用端末、あるいは在庫管理や出荷管理に使用されるデータ収集機能を持ったPOS端末やハンディーターミナル、更には、通信機能を有する家庭電化製品、または、メガネや腕時計のようなウェアラブル端末等々、ネットワークに接続可能な端末機器の種類は多岐に及び、昨今様々なシーンで活用されている。
さらに、ビッグデータと呼ばれる巨大な情報の集合体は、通信ネットワークを介して事業活動はもとより、個人の日常生活にまで幅広く利活用されるようになった。
このような環境下で、通信ネットワークを介して上述の端末機器(クライアント端末)に情報やサービスを提供するためのサーバが広く用いられている。サーバは、その機能や用途に応じて、Webサーバ、メールサーバ、ファイルサーバ、データベースサーバ、セキュリティサーバ等、種々使い分けられてはいるが、その基本機能は、いずれも情報の収集、蓄積、提供の三要素を共通的に有している。
上述したサーバや端末機器を含むネットワーク通信システムは、ネットワーク通信回線を介して端末(クライアント)側からの要求に対する回答を、同じくネットワーク通信回線を介してサーバから各端末に提供できるように双方向の送受信方式が採用され、かつ、一つのメインサーバに対して多くの端末が送受信可能なように構築されている。また、メインサーバと携帯端末との間にリレー(中継)サーバを介在させて中継接続するシステムも一般化されている。
ここで、通信ネットワークを介してサーバと端末とを接続するシステムにおいて度々問題視されるのが、通信トラフィック対策と情報の安全性確保である。特に、機密性の高い企業内情報や災害等で失われると困る情報は、メインサーバとは別のバックアップ用サーバに保管するのが常套手段になっている。
ここで、メインサーバに蓄積されている大量の情報をバックアップサーバに保存する際、ネットワーク回線に出来るだけ負荷がかからないように注意する必要がある。この負荷軽減手法として、例えば、特許文献1に記載されているようなサーバの分散技術が知られている。すなわち、地理的に異なる地域に複数のサーバを分散して配置し、バックアップすべき情報を分割してこれら分散配置された各サーバに個別に転送することで、通信トラフィック問題を回避しようとするものである。
一方、端末機器に関して言えば、サーバから送られてくる情報を受信して画像や音声で表示、再生する機能だけではなく、逆に、端末側で取得した情報を画像データや音声データとしてサーバに送信する機能を有しているものが多い。なお、端末側で取得した情報とは、端末の利用者が入力した情報や、端末に内蔵されているカメラ機能やマイク機能、あるいはGPSや振動等の各種センサー機能を使って収集した情報など、端末からネットワークに送信可能な全ての情報と定義することが出来る。
端末が取得した情報をメインサーバに送信する方法は、大別して次の2通りが存在する。一つは、情報を取得する都度、もしくは、予めタイマーで決められた時間に端末が自らネットワークを介してメインサーバに送信する方法(端末主導の送信)である。そして、もう一つは、メインサーバからの指示に応答して端末内に保存されている情報をメインサーバに送信する方法(サーバ主導の送信)である。
しかしながら、いずれの方法においても、端末機器は、取得した情報を単にメインサーバへ送信するだけの役割しか担っていないため、送受信される情報量が増えると、メインサーバに作業が集中するという課題がある。この課題を解決するために、特許文献2のように端末にサーバ機能を内蔵させる技術も提案されている。ここでは、携帯電話にサーバを内蔵することで、勤怠管理システムを構築した事例が開示されている。詳しくは、サーバ機能付きの携帯電話を各支店にそれぞれ設置し、支店で働く従業員それぞれの勤怠情報をこの携帯電話で収集し、収集した勤怠データを一括してメインサーバに送信するものである。その際、従業員の個人認証をメインサーバで行うのではなく、携帯電話に内蔵されたサーバで行うことで、メインサーバの負荷を軽減させることを狙いとしている。
さて、情報化社会において、ネットワークを介して送受信される情報の量が増えれば増えるほど、サーバ運用を伴うネットワーク通信システムの構築に必要な費用(インフラ費用)が増大するのは明らかである。前述したように、情報の安全性確保のためにサーバ分散技術を使用すると、分散サーバを設置するための場所の確保とそのメンテナンス費用がサーバの数だけ必要となる。さらに、メインサーバの処理集中を避けるために、サーバ内蔵の端末を利用したとしても、その端末を準備するための費用は避けられない。取り扱う情報量が増えれば増えるほど、そのインフラ費用も大きく膨らんでいくことになる。
よって、本発明の第1の目的は、通信トラフィック対策と情報の安全性を担保可能なネットワーク通信システムを低コストで実現することである。
さらに、特許文献2に開示されているように携帯電話にサーバ機能を内蔵することでメインサーバの処理負荷を軽減したとしても、携帯電話で収集、処理した情報は全てメインサーバに送らなければその情報を利活用することはできない。すなわち、特許文献2でいう内蔵サーバとは、メインサーバに代わって処理の一部を担当するだけの、いわば、メインサーバに従属した分散処理型のサーバでしかない。換言すれば、メインサーバと携帯電話の関係は、マスターとスレーブの関係に他ならない。結果として、携帯電話で処理、収集した情報をメインサーバを介することなく直接利用することができず、情報の利用者は、必ずメインサーバにアクセスしなければならないため、利用時に全ての情報が揃っていなければ役に立たないシステムということになる。この利用ロスは、利用者に大きな不便さを与えるだけでなく、情報の鮮度を阻害する要因ともなる。よって、メインサーバの処理負荷軽減を実現しつつ、かつ、利用ロスをも回避できるネットワーク通信システムを提供することが、本発明の第2の目的である。
加えて、情報の利用者にとっては、利用する情報の正確性と操作の容易性が重要である。しかしながら、携帯端末が取得した情報をいちいちメインサーバに送り、メインサーバから利用者に情報を提供するように構築された従来のサーバシステムの場合、端末からの情報入手がタイムリーに出来なかったり、あるいは、端末の操作者が情報を送り忘れたりすると、利用者には正確な情報が提供できないという不都合が生じる。このため、端末の操作者はメインサーバに正しく情報が転送されたかどうか、または、情報の送り忘れが無いかどうかを絶えず注意しておく必要があり、端末操作者にかかる負担が大きいという欠点があった。そこで、このような端末操作者にかかる負担を軽減することが出来るネットワーク通信システムを提供することが、本発明の第3の目的である。
また、前記特許文献2に記載されているように、端末側にサーバを内蔵させることで、メインサーバの負担を軽減することが出来たとしても、前述したように端末が情報を送る相手はメインサーバでしかなく、その情報はメインサーバを介して利用する以外方法はない。従って、情報利用者は、全てメインサーバに要求を出さなければならないので、メインサーバにアクセスが集中するという欠点を解消することはできない。
さらには、メインサーバを情報の提供元として構築されている従来のネットワーク通信システムでは、全ての情報をこのメインサーバに保存する必要があった。そのため、取り扱う情報量が多いほど、大容量のメインサーバが必要となり、サーバの増設に多くの費用がかかるという問題が生じる。本発明の第4の目的は、メインサーバへのアクセス集中の緩和と、サーバ増設コストの削減が可能なネットワーク通信システムを提供することである。
一方、情報利用者にとって重要な、情報の正確性と期待する情報の入手容易性という観点からいえば、従来のシステムでは、期待する最新の情報を、簡単かつ正確に入手するのは困難である。例えば、渋滞情報や天気情報のように一般向けに広く提供されている情報とは違って、よりローカルな情報、例えば、駐車スペースの空き状況やトイレの使用状況等、その現場でしか確かめられないような情報を、容易に、かつ正確に入手することは出来なかった。なお、各種検索手段を使っても、一般に公開されている情報(例えば、不特定多数の人間が利用する掲示板や、地域に特化した情報提供サイト等)から希望する情報にたどり着くまでには相当の時間と労力を要し、かつ雑情報も多く信頼性に乏しいという問題がある。一方、端末機器のメールサービスを利用して、正しい情報が提供可能な人に要求をするにしても、要求を受けた方は、都度それに回答しなければならないという負担を負うことになる。
本発明の第5の目的は、情報提供者に負担をかけることなく、現場で得られる情報を必要時に素早く、かつ、容易に入手することが可能なネットワーク通信システムを提供することである。
さらに、上述した通信機能を備えた携帯端末(スマートホン、カーナビゲーション、ハンディーターミナル、ウェアラブル端末等)は、モデルチェンジが激しく、最新機種を入手すると、それまで使っていた古い機種を下取りに出したり、使わずに放置したり、あるいは、廃棄したりしなければならなかった。これは、エコ対応の面から言っても決して好ましいことではない。
本発明の第6の目的は、これら古い端末の有効利用が可能な新しいネットワーク通信システムを提供することである。
また、従来の通信ネットワークシステムにおいて、ネットワークに接続される端末は、いずれもハッキングやトラッキングの被害を受けやすく、情報漏洩や改竄のリスクを無視することはできない。よって、本発明の第7の目的は、端末における情報漏洩や情報改竄のリスクを低減できるネットワーク通信システムを提供することである。
以上に述べた本発明の多くの目的は、それぞれが互いに異なる目的のように見えるが、いずれも本発明の新規な技術思想を応用することによって達成できるものであることに留意されたい。ここで、本発明の新規な技術思想とは、通信機能を有し、ネットワーク接続が可能な端末機器の内蔵メモリ領域の一部を専用メモリ領域として割り当て、各端末機器の専用メモリ領域の集合体で、サーバ用メモリと同等の機能を有する一つの仮想の集合メモリ空間を構築し、端末の移動と共に動くメモリ空間として活用することである。そして、この動的な集合メモリ空間と端末を通信ネットワークの中で目的に応じてアクセス制御することによって、低コストでの情報バックアップや、メインサーバへのアクセス集中の緩和、端末利用者の負担軽減、サーバコストの低減、情報漏洩リスクの低減等々、上述した目的を達成する新しいネットワーク通信システムを構築することができるのである。
さらに、本発明の技術思想によれば、ネットワークに接続される多くの端末機器を使って創り出された仮想の集合メモリ空間は、端末の増加と共にその記憶容量も増えていくという、これまでにない全く新しい構成のネットワークシステムとなり、ハードウェアの増設を招くことなく、情報の安全性確保と操作の容易性を提供することができる。
加えて、ネットワークに接続されている従来のメインサーバや分散サーバに内蔵されているメモリは、いずれも据え置き設置型のメモリであって、ネットワークを介して送られてくる情報を同じ場所でただ待っている機能しか有していない。これに対して、本発明の集合メモリ空間は、端末と共に自らが情報を収集する動的な探索機能を有している。ここに、従来との技術思想上の大きな相違がある。さらに言えば、この仮想の集合メモリ空間を創り出す端末の各々が、互いに有用、かつ最新の情報を収集して相互に情報の交換や共有が可能な人工知能機能を備えた全く新しい思考のネットワーク通信システムと言えよう。なお、特許文献2に記載のサーバ機能付き携帯電話に関して言えば、個人認証を行い勤怠情報を記憶する機能は有しているものの、この端末サーバは、飽く迄も中央管理センターのメインサーバとのみ通信を行うことしか意図されておらず、端末間での情報交換や情報共有については全く考慮されていない。云わば、マスターとして機能する中央管理センターのスレーブサーバとしての位置付けでしかなく、それ自体がマスターとして機能する本発明の人工知能を持った端末と異なるものであることは明らかである。そして、上述した各目的を達成するための本発明の特徴は以下のとおりである。
請求項1記載の本発明は、通信機能を有する複数の端末機器と、サーバと、これら複数の端末機器と前記サーバとの間で情報転送を行う通信ネットワークとを含むネットワーク通信システムであって、前記複数の端末機器のそれぞれに内蔵されているメモリ領域の一部を専用メモリ領域として割り当て、当該専用メモリ領域に対する自身の端末からのアクセスを禁止するアクセス制御部をそれぞれに設けたことを特徴とする。
請求項1に従属する請求項2記載の本発明は、前記サーバに保存されている情報を分割し、分割された情報を前記複数の端末機器の各専用メモリ領域に分散して記憶することを特徴とするものである。
請求項2に従属する請求項3記載の発明は、前記複数の端末機器の各専用メモリ領域に分散して記憶された分割情報は、各分割情報同士を相互に関連付ける付加情報を有することを特徴とするものである。
さらに、請求項4は請求項1に従属するネットワーク通信システムで、アクセス制御部は、自身の端末機器以外の予め定められた機器からのアクセスのみ許可することを特徴とする。
請求項5は請求項4に従属し、前記予め定められた機器が、前記自身の端末機器と同じ通信ネットワークに接続可能な他の端末機器であることを特徴とする。
請求項6に係る本発明は、通信機能を有する複数の端末機器と、前記複数の端末機器に接続可能な通信ネットワークとを含むネットワーク通信システムであって、前記複数の端末機器のそれぞれに内蔵されているメモリ領域の一部を専用メモリ領域として割り当て、各端末機器の前記専用メモリ領域からなる一つの集合メモリ空間を形成し、前記複数の端末機器は、前記通信ネットワークを介して互いに前記集合メモリ空間にアクセスするようにしたことを特徴とする新たなネットワーク通信システムを提供するものである。
請求項7記載の本発明は、請求項6に従属し、前記通信ネットワークには、少なくとも一つのリレーサーバが接続されていることを特徴とするものである。
さらに、請求項8記載の発明は、請求項7記載のネットワーク通信システムにおいて、前記リレーサーバには要求ボックスと回答ボックスが設けられており、各端末機器は前記要求ボックスと回答ボックスの双方に前記通信ネットワークを介してアクセス可能で、情報提供をリクエストしたい端末機器は、前記要求ボックスに要求内容を送信し、前記要求ボックスにアクセスした端末機器は、自身の専用メモリ領域に要求に対する回答が保管されている場合、当該回答を前記通信ネットワークを介して前記リレーサーバの前記回答ボックスに送信することを特徴とするものである。
請求項9記載の発明は、請求項8記載のネットワークシステムにおいて、前記リレーサーバの前記回答ボックスに送信された回答は、前記通信ネットワークを介して前記要求をした端末機器に送信されるか、もしくは、当該端末機器が前記回答ボックスにアクセスして自ら回答を入手することを特徴とするものである。
請求項10記載の発明は、請求項9に従属し、前記回答ボックスに前記要求に対する回答が無い場合、当該要求をした端末機器は所定時間経過後「回答なし」を伝える旨のメッセージを受信することを特徴とする。
請求項11記載のネットワークシステムは、前記端末機器の前記専用メモリ領域に、当該端末機器が移動した場所で入手した情報が保管されていることを特徴とする、請求項8記載のシステムに従属するネットワーク通信システムである。
請求項12記載の発明は、請求項8に従属し、前記回答ボックスには、回答内容と共に回答取得場所、及び/もしくは、回答取得時刻に関するデータが関連付けられていることを特徴とするものである。
また、請求項13記載の発明は、請求項8記載のネットワーク通信システムにおいて、前記通信ネットワークには、さらにメインサーバが接続されており、前記リレーサーバの要求ボックスおよび回答ボックスに保管されている情報は、所定期間経過後前記メインサーバに転送され、当該メインサーバにて過去情報として保存されることを特徴とするネットワーク通信システムを提供するものである。
上記の本発明において、「端末機器」としては、ネットワークに接続可能な通信機能を有し、メモリを内蔵する機器であれば、携帯端末、タブレット端末、POS端末、レジ端末、金融端末、ハンディーターミナル、カーナビゲーション、ウェアラブル端末、等、移動や持ち運びが可能なあらゆる端末が適用できる。
また、「専用メモリ領域」とは、本発明の実施にのみ使用されるメモリ領域を指し、特に、端末製造時に予め特別領域として他のメモリ領域とは設計上、もしくは、仕様上、分離して規定された領域、あるいは、アプリケーションプログラムを起動させて内蔵メモリの中で必要なメモリ容量がソフトウェア的に規定された領域であって、情報の書込みおよび読出しが可能なメモリ領域と定義することができる。さらに、この専用メモリ領域を自身の端末からアクセスできるようにするか、それともアクセス禁止とするかは用途に応じて適宜決定すればよい。例えば、請求項1乃至5記載の発明を実施するには、アクセス禁止とすることが望ましい。一方、請求項6乃至13記載の発明では、アクセス可としても良い。
次に、各請求項に記載された発明によって得られる効果を説明する。
まず、請求項1記載の発明によれば、各端末機器の専用メモリ領域の集合体を一つの大きな仮想の集合メモリ空間として捉えた上で、各専用メモリ領域を自身の端末機器からアクセスできないようにしているので、この集合メモリ空間を高セキュリティの不可侵メモリ空間として活用することが可能となる。しかも、この集合メモリ空間は、端末の増加に比例して自然にそのメモリ容量が増加するため、取り扱う情報量が増えてもサーバ増設といったハードウェア機器の補充を必要としない極めて低コストのネットワーク通信システムを提供することができるという格別の効果を有する。さらに、この集合メモリ空間は、各端末機器の移動と共に場所を変える動的なメモリ空間として活用することができるため、これまでにない新しいビジネスの創造ツールとして幅広く利用することができる。
請求項2記載の発明は、前述した不可侵の集合メモリ空間を重要情報のバックアップ用メモリ空間として利用することができる新規なネットワーク通信システムに関し、従来のようにバックアップ用の専用サーバや分散サーバの設置場所の確保や増設を必要とすることなく、かつ、それらのメンテナンスに費用をかける必要も無い極めて経済的なバックアップシステムを提供することができる。
請求項3記載の発明によれば、各端末機器に割り当て可能な情報の量は従来のバックアップ専用サーバに比して少なくなるが、細かく分割した分セキュリティの信頼性を上げることが出来、かつ情報の損失も低く抑えることが出来るという効果を得ることができる。なお、分割した情報を関連付ける付加情報としては、例えば、分割した情報とこの情報を保存する端末機器のIPアドレスとを対応付けるテーブルをメインサーバに設けたり、あるいは、情報の分割時に予めメインサーバで付与したシリアル番号等を使うことも出来る。
請求項4記載の発明では、各端末機器の専用メモリ領域は、自身の端末機器からはアクセスすることが出来ず、自身の端末以外の予め決められた機器からのアクセスしか許可しないようになされているので、持ち運びや移動を伴う端末機器であっても、仮にそれを紛失したとしても他人から容易に情報を盗まれる心配がないという有効な情報保護効果が得られる。
請求項5記載の発明においては、任意のある端末の専用メモリ領域を他の端末からしかアクセスできないようになされているので、例えば、他の端末に関する重要な情報(例えば、他の端末使用者の個人情報や秘密情報等)を前記ある端末の専用メモリ領域に保存しておくことで、重要情報の漏洩リスク等を低減することができる。すなわち、各端末機器間で互いの重要情報の秘匿性を高め合うことができるという優れた効果を奏することができる。
次に、請求項6記載の発明は、通信ネットワークに接続される各端末機器に内蔵されたメモリ領域の一部を専用メモリ領域として確保し、これら複数の専用メモリ領域の集合体で一つの集合メモリ空間を構築し、各端末機器同士がネットワークを介して互いに同じ集合メモリ空間にアクセスすることで、メインサーバを介することなく情報の送受信(提供、入手)を行うことが出来るようになされたものである。これは、人工知能を持った集合メモリ空間を使った新規な端末間情報通信システムといえる。各端末機器は、いちいちメインサーバを介することなく、この仮想の集合メモリ空間を用いて情報のやり取りができる。その結果、メインサーバへのアクセス集中や処理負荷集中、通信トラフィック過多という不都合な現象を生じることもなく、快適なネットワーク通信ができるという優れた効果を有している。しかも、ネットワークに接続可能な端末機器が増えれば増えるほど、集合メモリ空間の容量も自動的に増えるため、余分な費用をかける必要がないという経済的効果も得られる。特に、ここで云う集合メモリ空間とは、各端末機器に内蔵された専用メモリ領域の集合体を意味し、これらの各専用メモリ領域は夫々物理的に異なる場所に位置していることに留意されたい。すなわち、集合メモリ空間内に存在する情報は、まとまって存在するのではなく、それぞれ物理的に異なる場所に分散して存在するものである。従って、ハッキングやトラッキングの被害を受け難いという特異な性質を持ったメモリ空間で、一般に知られているP2Pシステムの共有ファイルが記憶されるメモリ等とは、安全性や堅牢性において格段の差があると言っても過言ではない。
請求項7記載の発明は、ネットワーク上にリレーサーバを設けることで、端末機器同士を直接通信させるのではなく、リレーサーバを介して通信させるものである。このようにすることで、各端末機器は、特定の端末機器に対して情報提供を求めるのではなく、ネットワークに接続された不特定多数の端末機器から情報の提供を受けることが出来る。従って、専用メモリ領域で構築された集合メモリ空間に存在する全ての情報を対象に希望する情報を入手することが可能となり、極めて使い勝手の良いネットワーク通信システムを構築することができる。
さらに、請求項8記載の発明によれば、リレーサーバを介して各端末機器同士が情報のやり取りを実行できるようにしたネットワーク通信システムにおいて、各端末機器からリクエストされる全ての要求内容を、リレーサーバに設けられた要求ボックスに集約しているので、各端末機器は、リレーサーバにアクセスすることで現在どの様な要求がなされているかをリアルタイムで容易に把握することができる。同様に、各端末機器が取得した情報は、リレーサーバの回答ボックスに集められるため、リレーサーバにアクセスするだけで希望する回答を入手することができる。従って、各端末機器は、情報要求及び回答取得のために他の端末機器にいちいちアクセスする必要がない。なお、回答方法としては、各端末機器が情報を取得する度に、リレーサーバの回答ボックスに取得した情報を送信しても良いし(都度送信)、あるいは、取得した情報を自身の専用メモリ領域に保存しておいて、要求ボックスをチェックした際、その要求に対する回答を持っていると判断される時にリレーサーバの回答ボックスに送信するようにしても良い(必要時送信)。前者の場合には、回答を短時間で入手できる効果があり、後者の場合は、サーバの記憶容量(回答ボックスの容量)を節約でき、かつ、通信トラフィックの集中をも回避できるという効果がある。
請求項9記載の発明は、回答ボックスからの情報の受け取りに関する発明であり、ここでは、リレーサーバから端末機器に回答を送信するサーバ主導方式と、端末機器がリレーサーバに回答を取りに行く端末主導方式の2通りの受取りが可能である。回答は、要求ボックスの要求ファイル番号と対応するように回答ファイル番号を付してファイル形式でまとめておくことで、各端末機器は目的の回答をファイル形式のまま容易に入手することができる。このようなファイル管理は、メインサーバでなくとも安価なリレーサーバで実行することができるので、メインサーバに処理負荷をかけることなく情報を入手することが可能である。特に、ネットワークに接続される端末機器が多い場合には、各端末からのメインサーバへのアクセス集中を大幅に緩和することができる。
請求項10記載の発明では、端末機器からの情報要求のタイミングを基準にして回答までの時間管理を行っているので、所定時間が経過しても回答が存在しない時にはリレーサーバから「回答なし」のメッセージを送信することにより、各端末機器は何度も要求を重ねることなく現在の回答状況を知ることが出来るという効果を得ることが出来る。
さらに、請求項11記載の発明によれば、各端末機器の専用メモリ領域に、その端末機器が移動した場所で入手できる情報を保存することで、スマートホンや携帯電話、あるいは、カーナビゲーションやウェアラブル端末といった移動を伴う機器の利点を活かして、現場でしか取得できない最新の情報を正確に、かつ素早く他の端末機器に伝えることができるという優れた効果を得ることが出来る。この請求項11記載の発明は、云わば、移動式の集合メモリ空間(動的メモリ空間、あるいは、動き回るサーバともいえる)の利点を有効に活用したものであり、これにより各端末は、各現場で取得した最新かつ正確な情報を他の端末に提供したり、あるいは他の端末から入手したりすることができるようになる。この結果、情報の要求者は、無駄な検索や玉石混交からの情報探しといった厄介な作業から解放され、期待する情報を、簡単かつ素早く入手することができる。まさに、各端末が、新たな人工知能を持つ動くサーバとして機能する画期的なネットワーク通信システムの実現を可能とするものである。
また、請求項12記載の発明のように、回答内容と共に、その回答の取得場所や取得時刻を関連付けておくことで、回答が何時、何処で取得されたものであるかを情報利用者(要求者)に伝えることができる。さらに、かかる場所情報と時間情報とを利用者の端末の地図画面上に重ねてプロットすれば、通常の地図情報から得ることの出来ない貴重な最新情報を手っ取り早く、かつ分かり易く入手することができるのである。なお、場所情報は端末内蔵のGPS機能から得ることが出来、時間情報は同じく端末内蔵のタイマー機能から得ることが出来る。
請求項13記載の発明では、各端末の専用メモリ領域によって構成された集合メモリ空間にメインサーバを接続することで、要求ボックスと回答ボックスとを有するリレーサーバの情報をメインサーバに移して過去情報として保存しておくことができるので、メインサーバに蓄積された貴重な情報をビッグデータとして活用して、地域に特化した新たなサービスや効率的なビジネス経路を創造、提供することもできる。また、要求をした端末が現在の回答を得られない場合、メインサーバに保存されている情報を過去情報として送信することも可能となる。
さらに、端末機器は、入れ替えや買い替えの頻度が激しく、この入れ替え時や買い替え時における古い機種の始末に困ることが大きな弱点である。特に、使わずに放置している端末については、エコ対応の面からも大きな問題となっている。これに対して、上述の各請求項記載の発明によれば、このエコ対応にも優れた効果を発揮することができる。すなわち、本発明における各端末機器内の専用メモリ領域は、サーバの外側に位置する集合メモリ空間を形成する大切なツールとして持続的に機能しているので、廃棄したり放置したりすることなく「高セキュリティの情報の金庫」として継続して使い続けることができる。すなわち、本発明で使用される端末機器は、優秀な人工知能を持ったエコサーバとして長期間の使用に供することができるという効果を有するものである。
以上、本発明によって得られる代表的な効果を説明したが、本発明の斬新なネットワーク通信システムによって得られる様々な効果は、以下の発明の実施の形態の説明から更に明らかになるであろう。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
本発明は、図1に示されているように、通信ネットワーク1に接続可能な端末機器群2に内蔵されているメモリ領域の一部を使って、ネットワーク上に仮想の大きな集合メモリ空間3を構築することである。従って、使用可能な端末機器としては、スマートホンや携帯電話のような携帯端末や、携行可能なタブレット端末やノートPC、通信機能を有するメガネや時計のようなウェアラブル端末、家庭電化製品、さらには、カーナビゲーションや自動運転に寄与する車載用端末等々、メモリを内蔵しソフトウェア制御で動作する各種端末機器を全て対象にすることができる。そして、このような端末機器は、企業活動だけではなく日常生活の中でも数多くの人々に利用されている携帯可能な小型電子機器で、これらの端末をまとめると一つの巨大なメモリ空間を形成することが可能となる。好ましい態様においては、集合メモリ空間3をより動的なものとするため、端末機器群2に含まれる端末機器はすべてモバイル端末機器とすることができる。
本発明は、企業にあっては、各人に与えられた業務を遂行するために使われている端末を、また、日常生活にあっては、個人個人が夫々の目的で使っている端末を、まとめて一つの集合体と見做し、夫々の使用目的でバラバラに使われている端末機器の一部を共通化することによって新たな人工知能型ネットワーク通信システムを創り出そうとするものである。
これは、従来の分散サーバのように一つのサーバを物理的に分散するのではなく、分散されている物をひとつにまとめて活用するという真逆の発想から生み出されたものである。
なお、本発明のネットワークシステムに適用できる端末群としては、全てが同種の端末機器であっても、または、夫々異機種の端末機器の組み合わせであっても良い。何故ならば、本発明は、端末固有の機能を使うのではなく、各端末に内蔵されている記憶機能の一部を共通化して使用することを特徴とするからである。
ここで、「記憶機能の共通化」とは、各端末機器に内蔵されている書込み及び読出し可能なメモリ領域の一部を、全ての端末機器に対して、本発明で使用する専用メモリ領域として割り当て、共通の専用プログラムで制御できるようにすることを意味する。当該専用プログラムは、各端末機器が内蔵するCPUによって実行される。割り当て方としては、必要な容量のメモリ領域をアプリケーションプログラムによって専用メモリ領域として確保するようにしても良いし、あるいは、機器製造時に内蔵メモリ領域の一部を他の領域から電気的に分離して独立した領域として確保するようにしても良い。
図2を参照して、各端末機器に割り当てられた専用メモリ領域の構成について説明する。
各端末機器10に内蔵されているメモリ領域11は、上述した方法により通常メモリ領域12と専用メモリ領域13とに分けられる。通常メモリ領域12は、当該端末機器が有する機能を実行する際に使用される領域である。一方、専用メモリ領域13は、先に述べた集合メモリ空間を構築するために使用され、外部の通信ネットワーク1、もしくは、自身の端末10とはアクセス制御部14によってアクセスの可否が制御される。この構成は、端末の種類を問わず共通で良い。
このようにして共通化された専用メモリ領域の使い方としては、次の2通りがあり得る。第1は、端末機器から自身の専用メモリ領域13にアクセス出来ないように、アクセス制御部14によって内部からのアクセス15を禁止し、ネットワーク1を介した外部からのアクセス16のみ許可する使い方、第2は、自身の端末からも他の端末からもアクセスできるように内部アクセス15及び外部アクセス16共に許可する使い方である。
前記第1の使い方は、専用メモリ領域13を使って重要な情報を保存したり、あるいは、自分以外の第三者に貸与、もしくは譲渡するのに役立つ。例えば、企業情報のバックアップや、個人情報や秘密情報の保護に有用である。これに関しては、その具体例を後述する。一方、前記第2の使い方は、端末利用者間での情報提供や情報収集を必要とするシステムに有用である。これに関しても後述する事例を参照されたい。
次に、図3を参照して第1の使い方、すなわち、情報のバックアップや保護に有効なネットワークシステムについて説明する。各端末機器T1乃至Tnは、夫々共通化された専用メモリ領域M1乃至Mnを有しており、メインサーバ4とは通信ネットワーク1を介して接続される。そして、これら端末機器T1乃至Tnに割り当てられた専用メモリ領域M1乃至Mnによって、一つの集合メモリ空間3が構築される。ここでは、各端末機器に内蔵されているアクセス制御部14は、内部アクセス15を禁止し、外部アクセス16のみを許可するファイアウォール機能を有している。
このシステムを用いてメインサーバの情報をバックアップする様子が図4に示されている。メインサーバ4は、各端末機器に割り当てられた専用メモリ領域のサイズに合わせてバックアップすべき情報を分割し、ネットワーク1を介して各端末機器T1乃至Tnに分散して転送する。各端末のアクセス制御部14は、メインサーバ1から送られてきた分割情報が、自分の端末のものであることを、例えば端末固有のIPアドレス等の識別情報によって認識し、自身の専用メモリ領域13に格納する。このようにして各端末機器に格納された分割情報は、併せて一つの集合メモリ空間3を構成し、予め決められた外部機器(例えば、メインサーバ4や中央管理装置(図示せず))からのみアクセスすることができる。
このシステムの大きな特徴は、従来のようなバックアップ用の分散サーバを必要としないことである。さらに、端末機器が携帯用もしくは携行用の移動端末の場合、バックアップされた情報は、一つの場所に留まっておらず動き回っていることになる。しかも、その移動を第三者が把握したり予測したりすることは極めて困難といえる。故に、堅牢なセキュリティサーバとしてその威力を発揮することができる。勿論、分散サーバの狙いでもある通信トラフィック対策も、十分に兼ね備えたバックアップシステムとして機能することは明らかである。なお、バックアップ用としてではなく、特定の装置からしかアクセスできない重要情報の保管用としても適用できることは当業者が容易に理解しうることである。
図5は、各端末機器T1乃至Tnの専用メモリ領域を、それぞれ情報保護用として活用する仕組みを説明する図である。このような活用例として、端末機器所有者の個人情報や秘密情報の管理が挙げられる。例えば、重要メモや備忘録等の管理に有用である。
その一例として、端末機器T1の所有者が、自己の重要メモ17を端末機器T3の専用メモリ領域M3にネットワーク1を介して送り記憶させておく例を図5は示している。ここでは、端末T3のアクセス制御部は、端末T1からのアクセスのみを許可するように働く。このようにすることで、端末機器T1の所有者が、仮に自分の端末を失くしたとしても、重要メモ17は端末T3に安全に保管されているため、情報紛失の心配がなくなる。また、複数の端末に同様のメモを保存しておけば、保存した端末が紛失したとしても被害は抑えられる。
このような端末間通信は、図6に示されるようにネットワーク1を介して端末T1とT3の間で行われる。端末T1からネットワーク1を介して端末T3に送られた重要メモは、端末T3の専用メモリ領域13に保存される。端末T3専用メモリ領域13に保存されたメモは、アクセス制御部14によって自身の内部アクセス15では見ることが出来ないので、端末T3の所有者に情報が漏れることはなく、集合メモリ空間3の一つの専用メモリ領域に安全に保存された状態を維持することができる。しかも、この専用メモリ領域13は、端末機器T3と共に場所を移動するメモリであるため、ハッキングやトラッキングの被害を受け難いという効果もある。
図7は、専用メモリ領域を前記第2の使い方で用いる例を示したネットワーク通信システムの機能ブロック図である。ここでは、専用メモリ領域M1乃至Mnは、自分の端末からでも、また、他の端末からでもアクセスできるようにアクセス制御部(図2の14)が動作する。このシステムは、端末間での情報のやり取りに適しており、特に、ある端末機器が欲しい情報を他の端末機器に要求したり、あるいは、自分で取得した情報を他の端末機器に提供するのに有効な端末間通信システムといえる。
具体的には、ある地域Aに現在存在する端末群A2と他の地域Bに現在存在する端末群B2との間でリレーサーバ5を使って情報のやり取りを行う際のネットワーク通信システムの例が図7に示されている。各端末は、ネットワークを介してリレーサーバ5と送受信することで端末間通信を実現するものである。なお、使用可能な端末機器としては、上述の専用メモリ領域が予め確保されているものであれば、その種類を問う必要はない。
使用されるリレーサーバ5の内部構成が図8に示されている。図示されているように、リレーサーバ5は、要求ボックスファイル51、回答ボックスファイル52、及び、これらを制御するボックス制御部53を備えている。要求ボックスファイル51は、各端末からネットワークを介して送られてきた要求内容を端末ごとにファイル形式でまとめて記憶するものであり、回答ボックスファイル52は、各端末から送られてきた回答内容を同じくファイルごとにまとめて記憶するものである。ボックス制御部53は、要求内容と回答内容とを識別番号(例えば、各要求に受理番号を付与する等)で関連付けたり、時間を管理したりする機能を有している。
以下に、配送業者が本システムを使って配送業務を実施する例を図8乃至図10を用いて説明する。ここでは、地域Aにいる配送者が自己の端末T1を用いて情報要求を出す場合が想定されている。端末T1の所有者は、図9Aに示すような要求フォーマットを使って知りたい情報をリレーサーバ5に送信する。要求フォーマットには、時間と地域と要求内容が記載されており、このフォーマットを自分の端末で画像表示して知りたい情報の入力を行う。かかる要求フォーマットは、各端末が共通に使用するフォーマットとして共用されるもので、アプリケーションで各端末に容易に設定することができる。このように、フォーマットを共通化することで知りたい情報と教えたい情報とを統一化することができ、無意味な情報や的外れの情報を混在させることなく、無駄のない情報交換が可能となる。
時間情報としては、例えば、現在から前後5分以内、前後10分以内、前後20分以内、前後30分以内、さらに、前後1時間以内の区分けがなされており、入手したい情報のタイミングを知らせることができるようになっている。また、地域情報としては、現在地から1キロ以内、2キロ以内、3キロ以内、5キロ以内、さらに10キロ以内の各指定ができるようになっている。こうして、配送者(端末T1の利用者)が、何時、何処の情報が欲しいのかを他の端末に知らせることが出来る。さらに、知りたい情報がどの様な情報なのかを知らせる要求内容を入力することで、雑情報を含まない的確な回答を得ることが出来る。特に、配送業務においては、急な天候変化や駐車スペースの空き状況、トイレの場所や急な工事による通行止めの様子、あるいは、昼食店の混雑状況等、一般の公開情報からは得にくい、また得るのに時間がかかる最新情報を、正確にかつタイムリーに入手することで業務効率を格段に向上させることができる。
さらに、要求フォーマットには、情報を入手したい制限時間(例では、前後5分以内から前後1時間以内まで、現在の自分が知りたい時間帯を指定)が付加されているので、忙しい時に情報入手に手を煩わせることなく、必要な時に必要な情報だけを正確に入手することができる。これこそ、従来の設置型のサーバからは到底得ることが出来ない、端末機器という動く情報収集ツールの最大の利点を活かした人工知能型のネットワーク通信システムと言える。
一方、各配送者は、自分の配送業務の遂行中に、配送状況や休憩情報(休息開始と休息終了時刻)、不在状況、待機状況等、業務に必要な情報を自分の端末から中央管理センター(図示せず)に送信することを義務付けられていることが多い。その際、現場で入手した役立ち情報を専用メモリ領域に記録しておくことで、他の配送者からの問合せにその都度対応する煩わしさから解放される。すなわち、現場で確認した情報を要求フォーマットに対応する形式で、文字、記号、音声、もしくは、写真や画像(動画も可)等の情報として、その取得時間(端末のタイマー機能で取得可)と取得場所(端末のGPS機能で取得可)と共に専用メモリ領域に保存しておけばよい。
前記要求フォーマットに対応する回答フォーマットの例を図9Bに示す。図より明らかなように、前記要求フォーマットに対応した回答入力フォーマットで、現場の状況を見て回答し易いように作っておく方が良い。各回答に、それを入力した時刻と場所のデータを、端末内蔵のタイマーやGPSから自動的に取得して回答に紐づけておくことで、制限時間や距離(地域指定)の要求条件を満たす回答を提供することができる。
次に、情報要求から回答入手までの手順の例を図10のフローチャートを用いて説明する。各端末の利用者は、業務開始時にアプリケーションを起動して、専用メモリ領域を使用する準備を行う(ステップS1)。このアプリケーションの起動を受けて、端末内のアクセス制御部14は、専用メモリ領域に対する自身の端末からの内部アクセス15を許可する。ただし、この専用メモリ領域は、当該端末で実行可能な他のアプリケーションで使用することができないのは前述したとおりである。
次に、地域Aにいる配送者(端末T1)が、現在の場所から2キロ以内の地域に関する工事状況と駐車スペースの空き状況を知りたい場合、希望する制限時間(例えば、10分以内)と共に地域情報(2キロ以内)と要求内容(工事と駐車)を要求フォーマットから入力してネットワークを介してリレーサーバ5に送信する(ステップS2)。リレーサーバ5は、この要求情報F1を受け付けると、端末T1に対して受理番号を返信し(ステップS3)、次いで、要求ボックスファイル51に受理番号と共に保存する(ステップS4)。
一方、各端末は所定の時間間隔(例えば、30秒毎)でリレーサーバ5の要求ボックスファイル51のモニタリングを行い(ステップS5)、ボックス内に自分が回答できる要求があった場合には、専用メモリ領域に保存してある回答をリレーサーバ5に送信する(ステップS6)。ここでは、2キロ以内の地域Bにいる端末T2が回答を自身の専用メモリ領域に有しているため、端末T2からネットワーク1を介してリレーサーバ5に回答が送信される。かかる処理は、端末T2の利用者がその都度実行するのではなく、端末T2とリレーサーバ5の間で30秒毎に自動的に行われるため、いちいち配送者の手を煩わせることはない。端末T2は回答を送信すると、当該要求に関する処理を終了して(ステップS7)して、次の要求のモニタリングを行う。
端末T2から回答を受け取ったリレーサーバ5は、回答ボックスファイル52に端末T2から送られてきた回答情報F3を保存する(ステップS8)。回答情報F3は、受理番号を識別情報として先の要求と紐づけられて回答ボックス52に保存される。
要求を出した端末T1は、所定時間毎(この例では、30秒毎)にリレーサーバ5の回答ボックス52をモニタリングして(ステップS9)、受理番号に紐づけられた回答F4を見つけると、ネットワークを介してこれを受信して(ステップS10)、処理終了となる(ステップS11)。以上のように、各端末機器は、予め定められた時間間隔(この例では、30秒間隔)でリレーサーバ5の要求ボックス51と回答ボックス52を自動的にモニタリングして、要求ボックス51にファイリングされている要求ファイルをその都度一括して自身の端末にダウンロードするようにアプリケーションで制御されている。一括して取り込んだ要求ファイルに対して、自身の専用メモリ領域に保存されている回答とのマッチングが行なわれ、要求条件に該当する回答があれば、まとめてリレーサーバ5の回答ボックス52に自動送信される。これら一連の処理は、予め各端末機器にインストールしたアプリケーションで実行することができる。
なお、この例では、各端末が取得した情報は、取得と同時にリレーサーバに送るのではなく、要求があった時に送るようにしているので、ネットワークのトラフィックを必要以上に混雑させる心配はない。また、回答情報として、端末利用者が手動で入力した情報以外にも、端末機器自身が自動的に取得可能な各種センサー情報や走行情報等を専用メモリ領域に保存しておくようにしても良い。
また、得られた回答には、取得場所と取得時間が付加されているので、これらを用いて地図画面上にプロットして表示することにより、端末T1の利用者は、必要な情報を分かり易く入手することが出来る。なお、回答方法として、回答フォーマットの内容に対応する音声や写真画像、動画情報等、端末利用者がその現場で入手した情報を付加しておくことも可能である。
以上のように、本実施例によれば、各端末機器が現場で取得した情報を自身の専用メモリ領域に保存し、その情報を必要とする要求の有無について所定時間毎にネットワークを介してリレーサーバをモニタリングするようにしているので、情報提供者は現場で確認した最新の情報を自分の都合に合わせて専用メモリに保管しておくだけで良いので、返答に煩わされることなく自分の業務を遂行することができる。また、要求者は、相手を指定することなくリレーサーバに要求を送信するだけで、要求に合った回答を入手することができる。
さらに、要求者が回答を入手した後、要求ボックスファイル51および回答ボックスファイル52からその要求と回答に関する情報を消去するようにしても良い。このようにすることで、要求と回答に関して常に最新の情報をリレーサーバに保存しておくことが可能となり、リアルタイムの情報を優先して提供することができるようになる。
このように処理終了後にボックスファイルを消去することで、図8のボックス制御部53は、要求を受け付けてから所定時間が経過しても、なお要求ボックスにファイルが存在している時に、「回答なし」を伝える旨のメッセージを要求端末T1に送信することができる。その結果、要求者は、何度も要求を繰り返すことなく回答の有無を確認することができる。また、車載用端末を利用して本発明を実施する場合には、車載用端末から定期的に発信される走行データの発信タイミングに合わせて、リレーサーバからファイルを一括してダウンロードして要求内容を端末側で確認することも出来る。
なお、このように端末機器が取得した情報を活用する場合、夜間などのように端末機器の電源がオフされている状況では、回答ボックスファイル52に回答情報が送信されないことも想定される。その場合には、リレーサーバ5のボックス制御部53が、要求を受理してから予め定められた時間内に当該要求に対する回答が送信されないことを検出して、「回答不可」を伝えるメッセージを要求端末に送信すれば良い。これは、サーバのタイマー管理機能を用いて容易に実現することが出来る。
加えて、リレーサーバ5に要求ボックスファイル51と回答ボックスファイル52を設けることで、リレーサーバに情報を集約できるので、各端末同士を直接接続することなく、いずれの端末もリレーサーバへのアクセスだけで情報のやり取りが出来る。故に、端末本来の機能を損なうことなく本発明のネットワーク通信システムを構築できることも大きな優位点と言える。
さらに、本発明は、広い地域にまたがるネットワークシステムにも提供することが出来る。図11は、かかる広域ネットワークシステムの例を示すブロック図である。ここには、物理的に異なる地域A、B、Cにおいて、それぞれの地域のリレーサーバA5、B5、C5を用いて本発明に係るネットワークシステムを構築した例が図示されている。
地域ごとに端末群A2、B2、C2が存在し、各端末はリレーサーバA5、B5、C5を介してネットワーク接続されており、各端末の専用メモリ領域の集合体が本発明の一つの集合メモリ空間を形成することになる。ここでは、ある任意の端末から出された要求を、各地域の端末が夫々のリレーサーバを順にポーリングすることによって確認することが出来る。要求方法と回答方法は、前述した実施例2と同等で良いため、先の説明を参照されたい。
このように広域なネットワークにおいては、接続される端末の数も多く、自動的に大規模な集合メモリ空間の構築が可能となる。従って、この集合メモリ空間に記憶される情報量も多く、しかもどの情報も現場で取得した貴重な情報と言える。例えば、企業が本発明のネットワークシステムを採用する場合、従業員の端末で得られた情報(各端末の専用メモリ領域に蓄積された情報)には企業的価値も高く、ビッグデータとして業務の改善や効率化、あるいは、新規ビジネスの創造等に有用な情報となり得る。
しかしながら、このような情報をリレーサーバに残しておくのは、セキュリティの観点から好ましいものではない。そこで、図11に示すように、ネットワークを介して各リレーサーバとメインサーバ4とを接続することで、リレーサーバに保管されている情報をメインサーバにアップロードすることが効果的である。
例えば、図12にフローチャートを示したように、各リレーサーバ5A、5B、5Cのボックス制御部にて状態を監視し(ステップS20)、従業員の退社時間が過ぎて情報のやり取り頻度が所定の数値より低くなった場合に、リレーサーバからメインサーバ4に転送要求を行い(ステップS21)、メインサーバ4からこの要求を許可する要求受付がなされたら(ステップS22)、リレーサーバに保管されている情報(要求ボックスファイルと解凍ボックスファイル)を一括してメインサーバに転送する(ステップS23)。メインサーバ4は、各リレーサーバから転送されてきた情報を受信して(ステップS24)、これらを過去情報として保存する(ステップS26)。メインサーバ4は、情報が正しく保存されたことを確認して受信確認信号をリレーサーバに送信する。リレーサーバは、この確認信号に応答して要求ボックスと回答ボックスの情報を消去する(スッテプS25)。
こうすることで、端末で得られた貴重な情報を保存しておくことができ、かつ、リレーサーバに情報を残しておく必要もなくなる。メインサーバ4に保存された情報は、過去情報として各端末機器に転送することもできれば、端末からの要求に応じて回答情報として送信することもできる。