JP7352164B2 - 複合体とその製造方法 - Google Patents

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本発明は、複数の部材が一体化した複合体等に関する。
製品の仕様(特性や機能等)や生産性等を考慮して、複数の部材を接合等して一体化した製品(複合体)が用いられる。複合される部材同士は、形態や材質等が異なっても同じでもよい。いずれにしても、様々な複合体が各種分野で用いられている。
従来、複合体の性能や信頼性の向上等を図るため、接着特性の改善に関する提案が多くなされていた(例えば特許文献1および非特許文献1)。しかし、最近では、環境負荷低減を図るため、使用後の複合体の解体性やリサイクル性を高める提案なされている(例えば特許文献2、3および非特許文献2)。
WO2013/118562 特開平11-92728 特許第4617566号 特許第6084541号
睦月伸季,平原英俊, 白幡悠人, 會澤純雄, 桑静, 『トリアジンチオール系シランカップリング処理アルミニウムと無機層状化合物配合接着剤の接着特性』,第57回粘土化学討論会 講演要旨集, 57巻, A9, 2013. 佐藤千明, 森健晴, 和田選, 『吸水性樹脂分散エポキシ接着剤による解体性接着とその強度特性』, 第38回日本接着学会年次大会 講演要旨集, pp. 5, 2000.
特許文献2は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)や塩化ナトリウム(NaCl)等の水溶性充填剤を含有した接着剤を提案している。特許文献3は、ポリアクリル酸塩系樹脂やデンプン系樹脂等の吸水性樹脂を含有した接着剤を提案している。非特許文献2は、アクリルコポリマー系吸水性樹脂をエポキシ樹脂に混入した接着剤を提案している。これらの接着剤で被着体(被接合部材)を接合してなる接合体は、水中に浸漬されると、接着剤が膨潤、分解等して容易に解体され(つまり易解体性に優れ)、被着体の回収性(リサイクル性)が高まる。
なお、特許文献4には、レピドクロサイト型チタン酸塩を含有する樹脂組成物に関する記載がある。特許文献4の場合、レピドクロサイト型チタン酸塩は、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂)の硬化阻害を抑制するために添加されている。また、その樹脂組成物はディスクブレーキ用パッド(摩擦材)に用いられており、当然、本明細書でいうような易解体性を有するものではなく、この点について特許文献4には何らの記載もない。
本発明はこのような事情下で為されたものであり、従来とは異なる接合材を用いて、接合強度と易解体性を両立できる新たな複合体等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、繊維強化樹脂からなる部材を、特定のチタン系化合物を含む接合材で複合化すると、接合強度と易解体性を両立できることを見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明が完成されるに至った。
《複合体》
(1)本発明は、第1部材と、第2部材と、該第1部材と該第2部材との間にある接合層とを有する複合体であって、該第2部材は、少なくとも該接合層側が繊維強化樹脂からなり、該接合層は、レピドクロサイト型層状チタン酸塩と樹脂を含む接合材からなり、該レピドクロサイト型層状チタン酸塩は、平均長さが15~50μm、平均厚みが1~10μmであり、該第2部材と該接合層は、該繊維強化樹脂と該接合材の接合界面を跨ぐ架橋繊維により補強されている複合体である。
(2)本発明の複合体は、先ず、第1部材と第2部材が十分な強度で接合(一体化)されて、必要な機械的特性を発揮し得る。次に本発明の複合体は、例えば水(温水、熱水を含む。)に接触する環境下(湿潤雰囲気、水中への浸漬等)において容易に解体され、第1部材や第2部材の回収性やリサイクル性にも優れる。
《複合体の製造方法》
本発明は複合体の製造方法としても把握され得る。複合体の製造方法は種々考えられる。その一例として、平均長さが15~50μmおよび平均厚みが1~10μmであるレピドクロサイト型層状チタン酸塩を樹脂中に含む接合材を付着させた第1部材の被接合面へ、溶融した繊維強化樹脂を接触させた後に該繊維強化樹脂を凝固させて、該繊維強化樹脂からなる第2部材を得る成形工程を備え、該第1部材と該第2部材が一体化した複合体を得る製造方法がある。
この製造方法によれば、第2部材と接合層の接合界面付近において、第2部材を構成する繊維強化樹脂の一部の繊維が、接合層の接合材へ延出した架橋繊維となり得る。この架橋繊維とレピドクロサイト型層状チタン酸塩により、接合強度と易解体性が確保された複合体が得られる。
《その他》
(1)本明細書でいう「第1」と「第2」は、説明の便宜上の呼称であり、各部材の形態(形状や大きさ等)や主従等とは関係ない。本明細書では、便宜上、接合層側に繊維強化樹脂を備える部材を第2部材とする。勿論、第1部材も、接合層側に繊維強化樹脂を備えてもよい。
第1部材は、樹脂材、金属材(純金属、合金、金属間化合物等)、セラミックス、複合材(母材(基材)中にフィラー(繊維、粒子/MMC:Metal Matrix Composites)が分散した材質)等のいずれからなってもよい。第1部材は、焼結材でも溶製材(展伸材や鋳造材)でもよく、その製造過程を問わない。なお、本明細書でいう「樹脂」は、通常、(合成)ゴムを含む合成樹脂である。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また、本明細書でいう「x~yμm」はxμm~yμmを意味する。他の単位系(nm、phr等)についても同様である。
なお、phr(Parts per Hundred Resin(Rubber))は、樹脂(ゴムを含む)100質量部に対する各種配合剤(例えばレピドクロサイト型層状チタン酸塩)の質量部を示す。
実施例で用意した試験片の正面図と平面図である。 試料11に係る接合層の断面をX線で観察したCT画像である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一以上の構成要素を付加し得る。製造方法に関する構成要素は、物に関する構成要素ともなり得る。なお、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《レピドクロサイト型層状チタン酸塩》
レピドクロサイト型層状チタン酸塩(単に「層状チタン酸塩」または「チタン酸塩」ともいう。)は、ホスト層と金属イオン層とが交互に積層された結晶構造を有する。ホスト層は、TiにOが6配位した八面体(TiO)が稜共有で2次元方向に連鎖した層状(面状)となっている。ホスト層は、Tiサイトの一部が空席になっており、ホスト層自体は負電荷を帯びている。ホスト層の負電荷は、隣接するホスト層間に存在する金属イオン層により補償され、レピドクロサイト型層状チタン酸塩全体は電気的に中性が保たれている。このように層状チタン酸塩は、多数の層状ホスト層が金属イオン層とのイオン結合により積層された状態となっている。
ホスト層にあるTiサイトの空席は、例えば、Ti4+と同程度のイオン半径を有しているLi、Mg、Zn、Ni、Cu、Fe、Al、Ga、Mnからなる金属元素群から選ばれる1種以上の金属イオンで置換され得る。
金属イオン層は、例えば、イオン半径が小さいLiを除くアルカリ金属(Na、K、Rb、Cs等)からなる。このようなアルカリ金属(1種以上)を総称して「A」略記する。なお、いずれの場合でも、層状チタン酸塩(結晶)全体として、電気的な中性が補償される量の金属イオンがホスト層間にあるとよい。
化学式で示すと、層状チタン酸塩は、例えば、ATi2-x/3Lix/3と表される。Aは、K、RbまたはCsの一種以上、KまたはCsのいずれか、さらにはKであるとよい。xは0.5~1、0.6~0.9さらには0.65~0.85であるとよい。
層状チタン酸塩は、通常、非繊維状粒子からなる。その粒子の形態やサイズは、製造条件(原料組成、焼成条件、粉砕処理条件等)により調整される。但し、チタン酸塩は層状であるため、通常、その粒子は、長さと厚さにより規定される。チタン酸塩の平均長さは、例えば、15~50μm、20~45μmさらには25~40μmである。チタン酸塩の平均厚みは、例えば、1~10μm、2~8μmさらには3~6μmである。長さや厚さが過小なチタン酸塩では、複合体の接合強度を確保できない。
本明細書でいう長さおよび厚さは、各粒子の最大長および最大厚とする。平均長さと平均厚さは、任意に抽出した50個の粒子について、二次元上(観察面上)で測定した最大長と最大厚の各算術平均値とする。複合体(接合層)中のチタン酸塩のサイズは、その縦断面を顕微鏡で観察して特定する。原料粉末中のチタン酸塩のサイズは、任意に抽出した50個の粒子を顕微鏡で観察して特定する。各数値の算出は、画像処理ソフト(例えばU.S. National Institute of Healths製 Image J )を用いてなされると効率的である。
層状チタン酸塩は種々の方法により調製され得る。例えば、アルカリ金属(A)化合物とチタン化合物を含む混合原料を、酸化雰囲気中(例えば大気中)で焼成した層状結晶体である。A化合物は、例えば、KCO、RbCO、CsCOである。Ti化合物は、TiO(アナターゼ型)である。混合原料は、金属炭酸塩(例えばA以外の炭酸塩であるLiCO、CoCO、FeCO)を所定モル数含んでもよい。混合原料はさらに、チタン酸塩の径を大きくするためにアルカリ金属の溶融塩(KC1等)を含むとよい。焼成温度は、例えば、600~1200℃さらには800~1000℃である。焼成時間は、例えば、6~24時間さらには8~10時間である。
《接合層/接合材》
第1部材と第2部材を接合する接合層(中間層)は、主に接合材からなる。接合材は、樹脂と上述したレピドクロサイト型層状チタン酸塩が混在した組成物(混合物)からなる。接合材の樹脂(適宜「基体樹脂」ともいう。)は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂である。
接合材からなる接合層は、例えば、層状チタン酸塩を含む樹脂系エマルジョン(チタン酸塩含有エマルジョン)を用いて形成される。この場合、第1部材の被接合面に、その樹脂系を塗布、乾燥させた塗布層を形成する。その塗布層上に第2部材を成形する。この成形時の余熱または別な熱処理の加熱により、そのエマルジョン中の基体樹脂は融着、架橋または硬化する。こうして接合層が形成され、この接合層を介して第1部材と第2部材が接合された複合体が得られる。
樹脂系エマルジョンは、例えば、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、複合系エマルジョン等である。エマルジョンは、通常、乳化重合させたポリマー微粒子(分散質)が分散媒中に分散されてなる。分散媒は水系でも溶剤系でもよい。エマルジョンは、ポリマー微粒子の分散状態を確保するため、適宜、界面活性剤等を含む。またエマルジョンは、例えば、1液硬化型でも2液硬化型でもよい。
接合材(接合層)は、例えば、層状チタン酸塩が3~50phr、7~30phrさらには15~25phrであるとよい。なお、ここでphrは、基体樹脂100質量部に対する層状チタン酸塩の質量部を意味する。なお、複合体の接合層内における層状チタン酸塩の組成割合は、第1部材や第2部材の影響を受け易い接合界面近傍を除いた領域を分析して特定されるとよい。
接合層の厚さまたは第1部材の被接合面に塗布する塗布層の厚さは、例えば、最小厚さが1μm以上、5μm以上さらには10μm以上あり、最大厚さが100μm以下、500μm以下さらには30μm以下であるとよい。接合層が適切な厚さであると、複合体の機械的特性(強度等)と易解体性の両立が図られ易い。
《繊維強化樹脂/第2部材》
第2部材は、少なくとも接合層側(接合界面側)が繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastics )からなる。繊維強化樹脂は、強化繊維の種類や形態(形状、大きさ)、樹脂の種類を問わない。
強化繊維は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等である。強化繊維は単種のみに限らず、複数種が混合されたものでもよい。いずれの強化繊維も、例えば、最大繊維径(断面の最大長)が1~20μm、最大繊維長が5~1000μmであるとよい。強化繊維は、例えば、母材(マトリックス)となる樹脂に対して10~40phrさらには15~35phr含まれるとよい。
樹脂(ゴムを含む)は、熱硬化性樹脂でも、汎用プラスチック、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等の熱可塑性樹脂でもよい。繊維強化樹脂は、強化繊維の他に、他の充填材や添加剤等を含んでもよい。
《複合体》
複合体の形態や用途等は問わない。複合体は、例えば、自動車や航空機等の各種部品や電子機器等に用いられる。但し、複合体は、解体時を除いて、湿潤環境で使用されない製品に適する。
使用済みの複合体は、例えば、水(温水を含む)に接触させることにより、容易に解体される。これにより、各部材の回収や再生が容易となり、リサイクル性の向上が図られる。水との接触は、例えば、40~100℃さらには50~70℃の温水(熱水)に、複合体を浸漬してなされるとよい。浸漬は、例えば、1時間~10日間、2時間~6日間さらには4時間~1日間なされるとよい。
アルミニウム合金からなる金属体(第1部材)の被接合面に、強化繊維からなる樹脂体(第2部材)を射出成形(インサート成形)した試験片(複合体)を種々製作した。各試験片の解体試験(温水浸漬)前・後の接合強度を評価した。また、樹脂体側の接合界面近傍(接合層)を観察した。これらの具体例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
《試料の製作》
表1に示す各試料に係る試験片を以下のように製作した。なお、試験片を構成する金属体、樹脂体およびそれらの接合層の各サイズは図1に示した通りである。
(1)金属体
Al-Mg-Si系アルミニウム合金の展伸材(JIS A6061/Mg:0.8~1.2%、Si:0.4~0.8%、Cu:0.15~0.4%、Cr:0.04~0.35%、残部:Alと不純物/「%」は質量%を意味する。)からなる短冊状の板材を金属体とした。
試料D4に係る金属体の被接合面には、特表2016-522310号公報または特開2018-171749号公報の記載に沿った陽極酸化処理を施した。
(2)接合材
金属体の被接合面に樹脂体を直接成形した試料D4を除く試料では、金属体の被接合面に、表1に示す接合材からなる接合層(厚さ15μm/目標値)を形成するため、次の処理を施した。
試料11~33および試料C1~C4は、各金属体の被接合面に後述する種々の樹脂系エマルジョン(塗料)を塗布した。試料D1~D3は、各金属体の被接合面に種々の接着剤を塗布した。
試料D1に示す2液型アクリル系接着剤にはLORD社製 LORD850を用いた。試料D2に示す2液型ウレタン系接着剤にはSika社製 Sikaflex-268を用いた。試料D3に示す易解体性接着剤には化研テック株式会社製 CT-2165Mを用いた。
(3)無機化合物
試料11~33および試料C4に示す無機化合物には、層状チタン酸塩(K0.8Ti1.73Li0.27)を用いた。この層状チタン酸塩は次のようにして製作した。
原料となるKCO、TiO(アナターゼ型)およびLiCOを、上記の組成に沿った所定モル数となるように秤量した。各原料には、いずれも市販されている試薬(富士フイルム和光純薬株式会社製、株式会社高純度化学研究所製)を用いた。これら原料と溶融塩となるKClを乳鉢に入れ、乳棒で10分間混合した。得られた混合原料(約20g)をるつぼに入れ、焼成した。焼成は大気雰囲気中で、820℃で1時間行った後、さらに1000℃で8時間行った。除冷後取り出し、水洗して溶融塩を溶解除去して粉末状の層状チタン酸塩を得た。
比較のため、上記の層状チタン酸塩以外にも、2種の無機化合物を用意した。試料C2に係る無機化合物(Cs0.7Ti1.825)は、CsCoとアナターゼ型TiOを、モル比5.2(TiO/CsCo)で混合し、大気中で800℃×10時間焼成した後、急冷して得た。試料C3に係る薄片状チタン酸塩は、上記の層状チタン酸塩を、0.5規定の塩酸中で攪拌してH1.07Ti1.73Oとした後、アンモニウムの塩と混合処理して製作した。
(4)樹脂系エマルジョン
試料11~33および試料C1~C4で用いた樹脂系エマルジョンは、次のように調製した。先ず、基体樹脂を含む3種類のベースエマルジョンを用意した。表1に示した溶剤系アクリルエマルジョンには、アクリル樹脂を基体とする関西ペイント株式会社製KINO6500主剤を用いた。表1に示した水性ウレタンエマルジョンには、ウレタン樹脂を基体とするDIC株式会社製ハイドランWLS-210を用いた。
表1に示した水性アクリルエマルジョンは次のように調製した。メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアシド、スチレンをモノマーとしてして、開始剤に過硫酸アンモニウムを用いて乳化重合で合成した。
各エマルジョンに、表1に示した無機化合物と硬化剤とを添加し、スターラで、一晩攪拌して混合した。各無機化合物の配合量は表1にまとめて示した。この配合量は、基体樹脂100質量部に対する無機化合物の質量部である。各エマルジョンに添加した硬化剤の種類と配合量は次の通りである。
溶剤系アクリルエマルジョン:関西ペイント株式会社製KINO6500硬化剤 質量比で3:1
水性ウレタンエマルジョン :DIC株式会社製 DNW5000 10phr
水性アクリルエマルジョン :DIC株式会社製 DNW5000 10phr
こうして、均一的な樹脂系エマルジョンを種々調製した。なお、試料C1では、無機化合物を添加せず、水性アクリルエマルジョンをそのまま用いた。
(5)樹脂体の原料
樹脂体となる樹脂原料には、試料C4を除き、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)にガラス繊維(GF)が配合された繊維強化樹脂(東ソー株式会社製SGX120)を用いた。GF配合量は繊維強化樹脂全体に対して20質量%であった。試料C4には、強化繊維が未配合なPPS(東レ株式会社製A900)を用いた。
(6)成形工程
試料11~33および試料C1~C4は、樹脂系エマルジョンをアプリケーターで被接合面に塗布した金属体を、乾燥機で80℃×3分間加熱した(プレヒート工程)。いずれも接合層の厚さ(目標値)が15μmとなるようにした。
金属体の被接合面(接合材の塗布層)上に、上述した樹脂体の原料を射出成形(インサート成形)した(射出工程)。射出成形装置には、新興セルビック社製小型射出成形機C.Mobileを用いた。このとき、溶融樹脂温度:330℃、金型温度:150℃、成形圧力:70MPa、射出速度:50mm/secとした。射出完了後、30秒間保持して溶融樹脂を凝固させた(固化工程)。接着面積は5mm×10mmである。
こうして得られた成形体を、さらに、乾燥機で140℃×30分間加熱した(焼付け工程)。こうして金属体と樹脂体を一体化させた試験片(複合体)を得た。
なお、接着剤を用いた試料D1~D3は、上述した樹脂体と金属体を接着剤で直接貼り合せ、常温で7日間静置して複合体とした。
《試験》
(1)引張試験
各試験片を用いて引張試験を行い、接合強度を測定した。引張試験は、ISO規格(ISO 19095)に準拠して、インストロン型万能試験機(Instron社製「INSTRON 5566」)を用いて、引張速度:10mm/minで行った。破断時の荷重を、試験片の初期断面(10mm×5mm)で除して求めたせん断強度(n=3:3回行った算術平均値)を、接合強度として表1に併せて示した。
(2)解体試験
引張試験用試験片とは別に用意した同様な試験片を用いて解体試験を行った。解体試験は、温水(60℃)に6時間浸漬した後の試験片の接合強度を、上述した引張試験と同様に測定して行った。こうして得られた解体試験後の接合強度も表1に併せて示した。
《観察・測定》
(1)無機化合物
試料11と試料C2、C3に係る複合体の接合層の縦断面(図1の上下方向の断面)を、それぞれ走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。得られたSEM像に基づいて、各接合層中の無機化合物の長さと厚みを測定した。測定領域は、各接合層の中央付近における視野(100μm×100μm)とした。各測定領域から無作為に抽出した50個の無機化合物について、それぞれ最大長と最大幅を測定した。それらの相加平均(算術平均)を、各無機化合物の平均長さおよび平均厚さとした。その結果は次の通りであった。
試料11/K0.8Ti1.73Li0.27 … 平均長さ20μm、平均厚さ3μm
試料C2/Cs0.7Ti1.825 … 平均長さ10μm、平均厚さ3μm
試料C3/薄片状チタン酸塩 … 平均長さ20μm、平均厚さ10nm
試料11に係る無機化合物がレピドクロサイト型および層状であることは、それぞれ、エマルジョンに添加前の無機化合物をX線回折測定(XRD)と原子間力顕微鏡(AFM)で観察することにより確認している。また、その無機化合物の組成式が、K0.8Ti1.73Li0.27となることはX線回折測定(XRD)により確認している。
(2)接合層
試料11係る接合層の断面をX線により観察したCT(Computed Tomography)画像を図2に示した。図2には、その接合層の一部を拡大した写真も併せて示した。観察した接合層は、引張試験後(解体試験前)のものであるため、図2に金属体は現れていない。
《評価》
表1から明らかなように、接合層が基体樹脂と層状チタン酸塩が混合(複合)された接合材からなる試料11~33では、相応な接合強度と優れた易解体性の両立が確認された。
試料C1から、接合材に層状チタン酸塩が含まれない場合、そもそも、金属体と樹脂体が実質的に接合されないことがわかった。試料C2から、平均長さが短いチタン酸塩を含む接合材を用いた場合、同様に金属体と樹脂体が接合されないことがわかった。試料C3から、平均厚さが薄いチタン酸塩を含む接合材を用いた場合、同様に金属体と樹脂体が接合されないことがわかった。
試料C4から、接合材に層状チタン酸塩が含まれる場合でも、樹脂体(第2部材)中に強化繊維が含まれていないと、やはり、金属体と樹脂体が実質的に接合されないことがわかった。
試料D1、D2から、従来の接着剤を接合材として用いても、十分な接合強度が確保されず、その接合強度は解体試験前後で殆ど変化しないことがわかった。試料D3から、特許文献2で提案されていた接着剤を接合材として用いた場合、相応な接合強度が得られることがわかった。但し、その接合強度は解体試験後もあまり減少せず、必ずしも易解体性に優れるものではなかった。
試料D4から、接合材を用いずに陽極酸化層を介して直接的に金属体と樹脂体を接合した試験片は、非常に高い接合強度を発揮することがわかった。但し、その接合強度は、解体試験後も変化せず、容易に解体できないことがわかった。
《考察》
試料11~33と試料C1~C4との比較からわかるように、接合材が基体樹脂と共に所定の層状チタン酸塩を含み、かつ、樹脂体が繊維強化樹脂からなる場合に、易解体性と接合強度を両立できることがわかった。易解体性は、接合層が水に接触し、層状チタン酸塩が吸湿(吸水)、膨潤等して発現されると考えられる。
図2から、接合強度は、樹脂体側の強化繊維が接合層側に延出して、それらの接合界面を跨ぐ架橋繊維となったためと考えられる。ここで、試料C1~C3のように、接合材中に無機化合物が含まれているにもかかわらず、実質的に接合されなかった理由として、層状チタン酸塩が小さいまたは薄いため、樹脂体側の強化繊維と絡み難い等が考えられる。
以上のことから、層状チタン酸塩と基体樹脂を含む接合材からなる接合層を有する複合体は、接合性(接合強度)と易解体性を両立し得ることが確認された。
Figure 0007352164000001

Claims (8)

  1. 第1部材と、第2部材と、該第1部材と該第2部材との間にある接合層とを有する複合体であって、
    該第2部材は、少なくとも該接合層側が繊維強化樹脂からなり、
    該接合層は、レピドクロサイト型層状チタン酸塩と樹脂を含む接合材からなり、
    該レピドクロサイト型層状チタン酸塩は、平均長さが15~50μm、平均厚みが1~10μmであり、
    該接合材は、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含むと共に、該レピドクロサイト型層状チタン酸塩を3~50phr含み、
    該第2部材と該接合層は、該繊維強化樹脂と該接合材の接合界面を跨ぐ架橋繊維により補強されている複合体。
  2. 前記架橋繊維は、前記繊維強化樹脂中の一部の繊維が前記接合材へ延出してなる請求項1に記載の複合体。
  3. 前記レピドクロサイト型層状チタン酸塩は、ATi2-x/3Lix/3(AはK、Rb、Csの一種以上、0.5≦x≦1)である請求項1または2に記載の複合体。
  4. 前記AはKであると共に0.6≦x≦0.9である請求項に記載の複合体。
  5. 水との接触により解体する請求項1~のいずれかに記載の複合体。
  6. 前記第1部材は、少なくとも該接合層側が金属からなる請求項1~5のいずれかに記載の複合体。
  7. 平均長さが15~50μmおよび平均厚みが1~10μmであるレピドクロサイト型層状チタン酸塩を樹脂中に含む接合材を付着させた第1部材の被接合面へ、溶融した繊維強化樹脂を接触させた後に該繊維強化樹脂を凝固させて、該繊維強化樹脂からなる第2部材を得る成形工程を備え、
    該接合材は、アクリル樹脂またはウレタン樹脂を含むと共に、該レピドクロサイト型層状チタン酸塩を3~50phr含み、
    該第1部材と該第2部材が一体化した複合体を得る製造方法。
  8. 前記接合材は、前記第1部材の被接合面に、前記レピドクロサイト型層状チタン酸塩を含む樹脂系エマルジョンを塗布して乾燥させた塗布層からなる請求項7に記載の複合体の製造方法。
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