JP7352055B2 - 半金属用吸着材及び半金属元素除去方法 - Google Patents
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Description
これに対して、キレート樹脂を用いてホウ素を吸着させる方法(例えば、特許文献1に記載のアンバーライト(登録商標)IRA-743等)では、排水をキレート樹脂塔に流すだけでホウ素が除去されるため、操作が簡単であり、吸脱着を繰り返すことにより、キレート樹脂をリサイクル使用することができるという利点もある。
ラクトン構造を有する単糖類としてはアルドン酸、ウロン酸、アルダル酸などの糖ラクトンが挙げられる。
アルドン酸のラクトンとしてはエリトロノラクトン、トレオノラクトン、リボノラクトン、アラビノノラクトン、キシロノラクトン、リキソノラクトン、アロノラクトン、アルトロノラクトン、グルコノラクトン、マンノラクトン、グロノラクトン、イドノラクトン、ガラクトノラクトン、タロノラクトン、グルコヘプトノラクトンなどが挙げられる。
ウロン酸のラクトンとしては、リブロノラクトン、アラビヌロノラクトン、キシルロノラクトン、リキスロノラクトン、アルロノラクトン、アルトルロノラクトン、グルクロノラクトン、マンヌロノラクトン、グルロノラクトン、イズロノラクトン、ガラクツロノラクトン、タルロノラクトンなどが挙げられる。
アルダル酸のラクトンとしてはリバロラクトン、アラバロラクトン、キシラロラクトン、リキサロラクトン、アラロラクトン、アルトラロラクトン、グルカロラクトン、マンナロラクトン、グラロラクトン、イダロラクトン、ガラクタロラクトン、タラロラクトンなどが挙げられる。
また、糖ラクトン以外の水酸基を有するラクトンとしては、アスコルビン酸やアラボアスコルビン酸などが挙げられる。
これらのラクトンの中でも、グルコノラクトンが比較的手に入れやすく、最も好ましい。また、二種以上のラクトンが構成要素とされていてもよい。
図1は、本発明の半金属用吸着材の化学構造を模式的に示したものである。すなわち、図1は、アミノ基で修飾された炭化水素骨格1を有する化合物のアミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するラクトンと開環反応してアミド結合を有する置換基部分2となり、さらに残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤によって架橋部3が形成された本発明の吸着材を示している。
また、図2は、アミノ基で修飾された炭化水素骨格1を有する化合物のアミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するエポキシ化合物と開環反応して置換基部分4となり、さらに残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤によって架橋部3が形成された本発明の吸着材を示している。
図1及び図2に示す本発明の半金属用吸着材は、いずれも多くの水酸基を有しているため、半金属イオンを含む排水中に投じられた場合、吸着材に存在している多数の水酸基が半金属イオンとキレートを形成し(例えば、ホウ酸イオンのキレート形成を示す図3参照)、半金属イオンが吸着される。また、多数の水酸基の存在によって親水性に優れ、吸水率が高くなる。このため、半金属イオンは吸着材の内部まで浸透してバルク全体で半金属を吸着することができる。さらに、この吸着材は、残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤で架橋されているため、水に溶出されにくくなる。
本発明の半金属用吸着材は、単に半金属元素を構成要素とするイオンを含有する水溶液と接触させることによって半金属元素を除去することができる。接触させる方法としては特に限定はないが、例えば、被処理液に吸着材を投入したり、吸着材を充填したカラムに被処理液を流したりしてもよい。さらには、粉末状でもよく、膜状にして流通経路等に設置してもよい。
(実施例1~5、比較例1)
以下に示す実施例1~実施例5の吸着材を合成した。
ポリエチレンイミン(平均分子量1800、富士フイルム和光純薬株式会社製、以下同様)及びグルコノラクトン(東京化成工業株式会社製、以下同様)を、下記表1に示す仕込み重量だけ秤取り、水3mL中に投入し、室温で24時間反応させた。ここで、ポリエチレンイミンが、アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物であり、グルコノラクトンが、少なくとも1つの水酸基を有するラクトンである。その後、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下同様)を表1に示す仕込み重量だけ秤取り、上記反応液に添加し、撹拌後、さらに一晩静置させた。その後、生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例1~5の吸着材を得た。
以下に示す実施例6~実施例8の吸着材を合成した。
ポリアリルアミン20%溶液(ニットーボーメディカル株式会社製)と、グルコノラクトンとを、表2に示す仕込み重量だけ秤取り、水0.5mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。ポリアリルアミンが、アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物である。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを表2に示す仕込み重量だけ秤取り、上記の反応液に添加し、撹拌後、一晩静置させた。得られた生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例6~8の吸着材を得た。
グリシドール(関東化学株式会社製)0.592gと、エチレングルコールジグリシジルエーテル0.174gとを混合した後、ポリアリルアミン20%溶液2.28gを入れて室温で3時間撹拌した後、生成物を水洗し、80℃で乾燥させて、実施例9の吸着材を得た。ここで、グリシドールが少なくとも1つの水酸基を有するエポキシ化合物である。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表3に示す。
ジエチレントリアミン(米山薬品工業株式会社製)0.26gと、グルコノラクトン0.45gとを、水1mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。ここで、ジエチレントリアミンがアミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物ある。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.65g投入し、撹拌後、一晩静置させた。生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例10の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表4に示す。
テトラエチレンペンタミン(関東化学株式会社製)0.47gと、グルコノラクトン0.445gとを、水1mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。ここで、テトラエチレンペンタミンがアミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物である。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.65g投入し、撹拌後、一晩静置させた。生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例11の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表5に示す。
トリス(2-アミノエチル)アミン(東京化成工業株式会社製)0.73gと、グルコノラクトン0.29gとを、水2.5mL中に投入し、90℃で3時間反応させた。ここで、トリス(2-アミノエチル)アミンがアミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物である。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.58g投入し、撹拌後、一晩静置させた。生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例12の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表6に示す。
ポリエチレンイミン(平均分子量1800、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.48gと、アスコルビン酸0.247gとを、水3mL中に投入し、室温で24時間反応させた。ここで、アスコルビン酸が少なくとも1つの水酸基を有するラクトンである。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.37g投入し、撹拌後、一晩静置させた。水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例13の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表7に示す。
ポリエチレンイミン(平均分子量1800、富士フイルム和光純薬株式会社製)0.48gと、グロノラクトン0.25gとを、水3mL中に投入し、室温で24時間反応させた。ここで、グロノラクトンが少なくとも1つの水酸基を有するラクトンである。その後、室温まで下げ、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.37g投入し、撹拌後、一晩静置させた。生成物を水洗し、80℃で加熱乾燥し、実施例14の吸着材を得た。また、実施例1~5の場合と同様の方法により吸水率を求めた。結果を表8に示す。
<吸水率>
表1~表8に示す結果から、実施例1~14の吸着材の吸水率は高く、バルク内部まで水を浸透させることが可能であることが分かった。また、架橋剤の質量割合を小さくすれば吸水率が高くなり、架橋剤の質量割合を大きくすれば吸水率が小さくなることから、架橋剤の仕込み割合を適宜調整することにより、吸水率を容易に制御できることが分かった。
試験液としてホウ素濃度100ppmに調製したホウ酸水溶液を用意し、この試験液25mLに対し、上記のようにして調製した実施例及び比較例の吸着材を約0.3gまたは約0.05gを入れ、24時間撹拌した。その後、試験液から吸着材をろ別し、ICP-AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SEIKO SPS3520)を用いてろ液中のホウ素の定量分析を行った。
この表から、水酸基を有する置換基が結合している実施例1~14の吸着材の1g当たりのホウ素吸着量は、水酸基を有する置換基が結合していない比較例1及び比較例2に比べて、顕著に高くなることが分かった。これは、試験液中のホウ酸イオンが水酸基とキレートを形成して、吸着材に吸着されるからである(図3参照)。
ホウ素以外の半金属(すなわち、ヒ素、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、セレン、ケイ素、テルル)に関しても、ホウ素の吸着試験と同様の方法で吸着試験を行った。比較例として、半金属以外の金属(カルシウム、チタン)も同様の方法で吸着試験を行った。各元素を100ppmに調整した試験液を用意し、この試験液25mLに対し、実施例1の吸着材を約0.3g入れて24時間撹拌した。その後、吸着材をろ別し、ICP-AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SEIKO SPS3520)を用いてろ液中の分析を行った。結果を表10に示す。この表から、ヒ素、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、セレン、ケイ素及びテルルにおいて吸着効果が確認された。これらの元素の中でもセレン、ビスマス、ゲルマニウム及びヒ素については特に高い吸着効果を示した。また、半金属ではないカルシウム、チタンについてはほとんど吸着能がないことが確認された。
吸着材についてのリサイクル使用の可能性を調べるために、以下のリサイクル試験を行った。
実施例1の吸着材について、前述したホウ素吸着試験を行った後の吸着材を取り出し、0.1Mの塩酸水溶液中に加え、2時間撹拌した。その後、吸着材をろ別し、純水で洗浄した後、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液で1時間撹拌し、吸着材に吸着していたホウ素を脱離させ、吸着材を再生した。
こうして再生させた吸着材に対して再度、同様の方法でホウ素吸着試験を行った。その結果、再生前の結果とほぼ同様のホウ素吸着能を示しており、リサイクル使用が十分可能であることが分かった。
吸着材のホウ素吸着量におけるpHの影響を調べるために、塩酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを1~13に調整したホウ素濃度100ppm試験液を用いて吸着実験を行った。吸着実験の方法については、pH調整すること以外は前述した吸着実験方法と同じである。結果を表11に示す。この表から、広いpH範囲で、ホウ素を吸着できることが分かった。特に好適なpH範囲は、2以上10以下であり、さらに好適なのは3以上9以下であり、最も好適なのは3以上8以下であった。
Claims (7)
- アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物の前記アミノ基の一部が、少なくとも1つの水酸基を有するラクトンと開環反応した構造を有し、さらに残りの前記アミノ基の一部又は全部が架橋剤で架橋されることにより、水に投入した場合にろ過や静置によって母液から分離可能とされている半金属用吸着材(ただし、ホウ素化合物が吸着している半金属用吸着材を除く)。
- 前記アミノ基で修飾された炭化水素骨格を有する化合物は、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン及びトリス(2-アミノエチル)アミンのいずれかである請求項1に記載の半金属用吸着材。
- 前記少なくとも1つの水酸基を有するラクトンは、ラクトン構造を有する単糖類及びアスコルビン酸のいずれかである請求項1又は2に記載の半金属用吸着材。
- 前記架橋剤はエポキシ基を2つ以上有する化合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半金属用吸着材。
- 吸着材の質量に対する前記架橋剤の質量割合は0.05以上2.0以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半金属用吸着材。
- (水を飽和に達するまで吸水させた場合の吸水した水の質量)/(乾燥状態における質量)で定義される吸水率が0.5以上10以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半金属用吸着材。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半金属用吸着材に、半金属元素を構成要素とするイオンを含有する水溶液を接触させることを特徴とする半金属元素除去方法。
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