(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示している。図1に示すように、本実施の形態に係る無線通信システム100は、例えば、業務用無線システムであり、互いに無線通信を行う複数の無線機1を備えている。この例では、話者2A~2Cがそれぞれ使用する無線機1A(第1の無線機)、無線機1B(第2の無線機)、無線機1C(第3の無線機)を備えている。無線機1は、いわゆるトランシーバであり、半二重通信方式のセッションを用いたPTT方式により通話を行う。また、無線機1は、話者2の操作に従って、特定のグループのグループ通話や特定の無線機との個別通話を行う。
なお、ここでは、無線機1が音声データを送受信し音声通話を行う例について説明するが、音声に限らず、その他のデータを送受信してもよい。また、無線通信システム100は、必要に応じて、無線通信を中継するリピータなどを備えていてもよい。
本実施の形態では、デジタルコンベンショナル環境において、無線機1がグループ通話とIDを指定した個別通話を行う例について説明する。例えば、発信側の無線機1Aが着信側の無線機1Bに対する個別通話を開始する場合、話者2Aが通話相手の無線機1BのIDを選択及び指定してPTTボタンを押下することで呼び出しを行う。通話相手を指定せずにPTTボタンを押下した場合、それは個別通話にはならず、グループ通話となる。無線機1Aから呼び出しを受けた無線機1Bが応答すると、無線機1Aと無線機1Bは通話状態となり、通話相手の指定操作をしなくともPTTボタンを押下するだけで通話状態にある相手に対して通話を行うことができる。ある一定時間、無線機1A及び1Bのいずれからも通話が開始されないと通話状態が解除され、以降PTTボタンを押下しただけではグループ通話となる状態に戻る。この通話状態(セッション)を継続する一定時間、すなわち通話状態が解除される(個別通話の状態からグループ通話の状態へ戻る)までの時間を「通話状態継続時間(セッション維持時間)」とする。通話状態継続時間が長すぎると、個別通話の状態からグループ通話の状態へ自動的に戻るまで時間がかかり、デフォルトであるグループ通話を行うことができない場合が増えるため、業務等の通話に支障がないよう適切な値に設定する必要がある。
無線機1の各種の設定は、専用のPCアプリケーション(パーソナルコンピュータのアプリケーションプログラム)によって行うことができ、通話状態継続時間についてもPCアプリケーションによって任意の値に設定することができる。
<検討例1の動作>
ここで、本実施の形態の理解を助けるため、本実施の形態適用前の検討例1について説明する。検討例1では、デジタルコンベンショナル環境における無線機において、PCアプリケーションによって予め通話状態継続時間を設定することができるものの、その設定を運用中に動的に変更する方法が無いため、常に固定値での動作となる。このため、検討例1では、通話状態継続時間の設定が短いと、以下に説明するように、着信側が発信側からの問いかけに対し応答を返そうとしても、意図した相手とは異なる相手に返信してしまう場合があるという課題がある。
図2は、この課題が生じる場合の検討例1の動作を示しており、図3は、この場合の無線機の表示例を示している。なお、検討例1の無線機を無線機9とする。
図2は、デジタルコンベンショナル環境でIDを指定して個別通話を行う例であり、話者2A~2Cの操作によって、無線機9A~9Cがグループ通話または個別通話を行う。図2の例では、無線機9AはグループID=Xで待ち受け、無線機9B及び9CはグループID=Yで待ち受けている。例えば、話者2A~2Cが無線機9A~9Cを操作してグループのチャネルを選択し、無線機9Aには、図3(a)のようにグループXの待ち受け状態(待ち受け中)が表示され、無線機9B及び9Cには、図3(b)のようにグループYの待ち受け状態が表示される。
その状態で、発信側の無線機9Aから着信側の無線機9Bに対して個別通話を開始する。すなわち、無線機9Aは、話者2Aの操作に応じて、図3(c)のように宛先IDリストを表示し、通話相手の無線機9B(Transceiver B)を選択する(S101)。無線機9Bを選択した状態で、話者2Aが、無線機9AのPTTボタンを押下すると(S102)、無線機9Aは、選択されている無線機9BのIDを宛先に設定し、無線機9AのIDを送信元に設定した個別通話開始を送信する(S103)。このとき、無線機9Aは、図3(d)のように無線機9Bとの個別通話の通話状態(通話中)を表示する。例えば、通話状態であること、つまり、通話中であることが、表示部の右上の音符アイコンによって示される。無線機9Bは、この個別通話開始を受信すると、無線機9Aからの音声出力を開始する(S104)。このとき、無線機9Bは、図3(e)のように無線機9Aとの個別通話の通話状態を表示する。
続いて、無線機9Aから無線機9Bに対して「聞こえますか?」と問いかける(S105)。話者2Aが、無線機9AのPTTボタンを押下した状態で、「聞こえますか?」と話すと、無線機9Aは、その音声データを無線機9Bに送信し(S106)、音声データを受信した無線機9Bは、音声「聞こえますか?」を話者2Bへ出力する(S107)。
その後、話者2Aが無線機9AのPTTボタンから手を離して(リリースして)送信を終了する。話者2Aが無線機9AのPTTボタンから手を離すと(S108)、無線機9Aは、音声データ終端を無線機9Bへ送信し(S109)、無線機9Bは、その音声データ終端を受信すると、音声出力を終了する(S110)。
発信側の無線機9Aは、PTTボタンから手が離れた、または音声データ終端を送信したT0から、無線機9Aに設定されている通話状態継続時間Tc経過したT1まで通話状態を継続する。無線機9Aは、通話状態継続時間Tcの間、通話状態が継続するため、図3(d)のように無線機9Bとの個別通話の通話状態を表示し、通話状態継続時間Tc経過後、グループ通話に戻るため、図3(a)のようにグループXの待ち受け状態を表示する。また、着信側の無線機9Bは、音声出力を終了、または音声データ終端を受信したT2から、無線機9Bに設定されている通話状態継続時間Tc経過したT3まで通話状態を継続する。無線機9Bは、通話状態継続時間Tcの間、通話状態が継続するため、図3(e)のように無線機9Aとの個別通話の通話状態を表示し、通話状態継続時間Tc経過後、グループ通話に戻るため、図3(b)のようにグループYの待ち受け状態を表示する。
例えば、着信側の無線機9Bに予め設定された通話状態継続時間Tcを3秒とする。そうすると、無線機9Bが無線機9Aからの音声データ終端を受信してから5秒後に、話者2Bが無線機9BのPTTボタンを押下して応答しようとした場合(S111)、上記課題として述べたように、その送信は無線機9Aに対する個別通話の応答ではなく、グループ通話の送信になる。すなわち、無線機9Bはグループ通話開始を送信し(S112)、同一グループIDで待ち受けている無線機9Cがこれを受信し、音声出力を開始する(S113)。このため、続いて、話者2Bが無線機9Bに「はい、聞こえます。」と話しても(S114)、グループ通話としてその音声データが送信され(S115)、無線機9Cが音声「はい、聞こえます。」を話者2Cへ出力してしまう(S116)。無線機9Cには、図3(f)のようにグループYの無線機9Bとの通話状態が表示される。このように、検討例1では、無線機9Bが無線機9Aに対し個別通話の応答を行おうとしても、無線機9Cを含むグループ通話となるため、意図した所望の通話を行うことができない。
<実施の形態1の動作>
上記検討例1のような課題に鑑みて、本実施の形態では、着信側の無線機において、受信した音声に対して音声認識処理を行い、例えば『問いかけ』に関するキーワードを検出した場合に、通話状態継続時間を通常時よりも長い時間に動的に変更して動作させることで、応答を送信するタイミングが少し遅れても意図した相手に正しく応答が返せるようにした。なお、通話状態継続時間は固定値でも良いし、運用の中で学習した値でも良い。
図4は、図2の検討例1に対し本実施の形態を適用した場合における、本実施の形態に係る無線通信システムの動作を示している。
図4に示すように、図2と同様、無線機1AがグループID=Xで待ち受け、無線機1B及び1CがグループID=Yで待ち受けた状態で、発信側の無線機1Aから着信側の無線機1Bに対してIDを指定して個別通話を開始する(S101~S104)。
続いて、PTTボタンを押下した状態で、無線機1Aから無線機1Bに対して「聞こえますか?」と問いかけ(S105)、その音声データが無線機1Aから無線機1Bに送信される(S106)。ここで、本実施の形態では、着信側の無線機1Bは、発信側の無線機1Aから無線で受信する音声データを解析し、例えば『問いかけ』を認識する(S121)。『問いかけを』を認識した無線機1Bは、無線機1Aからの音声データ終端を受信した際に起動する通話状態継続時間Tcを通常時(例えば3秒)よりも長い時間(例えば10秒)に動的に延長して設定する。なお、延長する時間の長さは、音声認識した場合に所定の時間延長してもよいし、認識する音声に応じた時間延長してもよい。例えば、認識した音声の長さに応じた時間としてもよい。
その後、話者2Aが無線機1AのPTTボタンから手を離して送信を終了する(S108~S110)。発信側の無線機1Aは、検討例1と同様、PTTボタンから手が離された、または音声データ終端を送信したT0から、通話状態継続時間Tc経過したT1まで通話状態を継続する。一方、着信側の無線機1Bは、音声出力を終了、または音声データ終端を受信したT2から、延長後の通話状態継続時間Tc経過するまで通話状態を継続する。
例えば、無線機1Aからの音声データ終端を受信してから5秒後に、話者2Bが無線機1BのPTTボタンを押下して応答しようとした場合(S122)、その送信はグループ通話の送信ではなく、無線機1Aに対する個別の応答になるため、意図した相手に正しく応答を返すことができる。すなわち、検討例1と異なり、本実施の形態では、延長された通話状態継続時間Tcまで通話状態が維持されるため、無線機1Bは無線機1Aに対して応答を送信し(S123)、無線機1Aが音声出力を開始する(S124)。なお、この例では、通信時に宛先のIDを含めて各メッセージを送信するため、無線機1Aは、通話状態継続時間Tcが経過していても、応答を受信することができる。続いて、話者2Bが無線機1Bに「はい、聞こえます。」と話すと(S125)、その音声データが無線機1Aに送信され(S126)、無線機1Aが音声「はい、聞こえます。」を話者2Aへ出力する(S127)。
<実施の形態1の着信側の無線機の構成及び動作>
図5は、本実施の形態に係る着信側の無線機1(例えば1B)の構成例を示している。図5に示すように、本実施の形態に係る無線機1は、制御部10、記憶部11、タイマ管理部12、操作部13、表示部14、音声入力部15、音声出力部16、無線受信部17、無線送信部18、音声解析部19を備えている。なお、図5の各構成は、一例であり、本実施の形態に係る動作が可能であれば、その他の構成であってもよい。例えば、図5の各構成のいくつかを一つまたは任意の数のブロックまたは装置としてもよい。
制御部10は、無線機1の各部から入力される情報に基づいて、必要な動作を制御する制御部である。制御部10は、通話状態の継続等の制御を行う通話制御部(セッション制御部)10a、音声認識等に基づいて通話状態継続時間の延長を行う延長部10b等を含む。例えば、記憶部11に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで実行することで、制御部10の機能が実現される。
記憶部11は、無線機1の動作に必要なプログラムやデータを記憶する。記憶部11は、無線機1のIDや通話相手の無線機1のID、音声解析部19が問いかけを検出したことを示す問いかけ検出フラグ等を記憶する。例えば、記憶部11は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリやハードディスク等である。タイマ管理部12は、制御部10の指示に応じて、タイマの動作を管理する。タイマ管理部12は、通話状態継続時間のタイマ(通話継続タイマ)の設定や延長、起動、停止、満了等を管理する。
操作部13は、話者2が所望の通信を行うために操作する操作部である。操作部13は、通話を行うためのPTTボタンや通話相手を選択するための選択キー等を含む。例えば、操作部13は、各種のキーやスイッチ、タッチパネル等である。表示部14は、話者2の操作に応じた表示や無線通信に応じた表示を行う表示部である。表示部14は、通話相手のリスト、グループ通話または個別通話の通話状態等を表示する。例えば、表示部14は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等である。
音声入力部15は、話者2から通話のための音声を入力する入力部であり、例えばマイク等である。PTTボタンを押下した状態で、音声入力部15に音声を入力することができる。音声出力部16は、通話相手の無線機1から受信した音声を出力する出力部であり、例えばスピーカ等である。通話状態の間に受信された音声が音声出力部16から出力される。
無線受信部17は、通話相手の無線機1からの無線信号を受信する受信部である。無線受信部17は、グループ通話や個別通話で用いるチャネルの無線信号を受信する。無線送信部18は、通話相手の無線機1へ無線信号を送信する送信部である。無線送信部18は、グループ通話や個別通話で用いるチャネルにおいて無線信号を送信する。無線送信部18は、PTTボタンを押下した状態で入力された音声を送信する。無線受信部17及び無線送信部18は、他の無線機1と無線通信を行う通信部でもある。
音声解析部(音声認識部)19は、無線受信部17から音声信号を入力するインタフェースを有し、無線受信部17において通話相手の無線機1から受信した音声信号の音声を認識する。音声解析部19は、通話状態継続時間を延長すべき所定の音声を認識する。認識する所定の音声は、所定のキーワードを含み、例えば相手からの回答が期待される問いかけを含む音声である。例えば、「聞こえますか?」、「聞こえる?」、「聞こえるかい?」、「もしもし」、「おーい」、「~ですか?」、「~ですよね?」、「もう一度お願いします」、「教えてください」、「お答えください」等である。また、自身から通話状態継続時間の延長を望むような、「少々お待ちください」、「ちょっと待って」等でもよい。その他、語尾のイントネーションやアクセント、音声の音量、音声の長さ等、音声パラメータを考慮することが好ましい。例えば、所定の音量よりも大きい音量の音声、または、所定の時間よりも長い時間の音声の場合に、所定の音声であることを認識してもよい。なお、音声を認識する方法は、特に限定されず、機械学習や任意の音声認識技術を用いてもよい。
図6A及び図6Bは、本実施の形態に係る着信側の無線機1(例えば1B)の動作例を示している。図6A及び図6Bに示すように、まず、制御部10は、記憶部11の問いかけ検出フラグをOFFに初期化する(S201)。続いて、制御部10は、無線機1の状態を判定し(S202)、送受信がない場合(S202/送受信なし)、送信または受信が開始されるまで待つ。無線機1の状態が音声送信中の場合(S202/音声送信中)、制御部10は、話者2の操作に応じて音声の送信が終了するまで待って(S203)、次の処理を行う。すなわち、制御部10は、音声送信が終了したか否か判定し(S203)、音声送信が終了していない場合(S203/No)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻り、音声送信が終了した場合(S203/Yes)、無線機1の状態を送受信なしとし(S204)、次の処理を行う。
一方、無線機1の状態が自身宛ての音声受信中の場合(S202/音声受信中(自身宛て))、音声解析部19は、無線受信部17からの音声を解析する(S205)。例えば、音声解析部19は、所定のキーワードに基づき通話相手の「問いかけ」を検出したか否か判定する(S206)。音声解析部19が通話相手の「問いかけ」を検出した場合(S206/Yes)、制御部10は、記憶部11の問いかけ検出フラグをONに設定する(S207)。「問いかけ」を検出しない場合(S206/No)、または、問いかけ検出フラグON(S207)の後、次の処理を行う。
続いて、制御部10は、話者2の操作に応じて音声の送信が開始されたか否か判定し(S208)、音声の送信が開始された場合(S208/Yes)、無線機1の状態を音声送信中とし(S209)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻る。また、音声の送信が開始されない場合(S208/No)、制御部10は、通話相手からの音声の受信が終了するまで待って(S210)、次の処理を行う。すなわち、制御部10は、音声受信が終了したか否か判定し(S210)、音声受信が終了していない場合(S210/No)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻り、音声受信が終了した場合(S210/Yes)、無線機1の状態を送受信なしとし(S211)、次の処理を行う。
送受信なしの処理(S204またはS211)に続いて、制御部10は、問いかけ検出フラグの状態を判定する(S212)。問いかけ検出フラグがOFFの場合(S212/OFF)、制御部10は、予め設定されている時間(例えば3秒)でタイマ管理部12に対し通話継続タイマを起動する(S213)。一方、問いかけ検出フラグがONの場合(S212/ON)、制御部10(延長部10b)は、予め設定されている時間よりも長い時間(例えば10秒)でタイマ管理部12に対し通話継続タイマを起動し(S214)、問いかけ検出フラグをOFFに初期化する(S215)。
続いて、制御部10(通話制御部10a)は、通話継続タイマが満了するまで、通話状態を継続する。制御部10は、通話相手からの音声の受信が開始したか否か判定し(S216)、音声の受信が開始した場合(S216/Yes)、無線機1の状態を音声受信中とし(S221)、通話継続タイマを停止する(S222)。また、音声の受信が開始しない場合(S216/No)、制御部10は、話者2の操作に応じて音声の送信が開始されたか否か判定し(S217)、音声の送信が開始された場合(S217/Yes)、無線機1の状態を音声送信中とし(S220)、通話継続タイマを停止する(S222)。さらに、音声の送信が開始されない場合(S217/No)、制御部10は、通話継続タイマの停止要因が発生したか否か判定し(S218)、通話継続タイマの停止要因が発生した場合(S218/Yes)、通話継続タイマを停止する(S222)。通話継続タイマの停止要因が発生しない場合(S218/No)、通話継続タイマが満了したか否か判定し(S219)、通話継続タイマが満了していない場合(S219/No)、受信開始処理(S216)以降を繰り返す。通話継続タイマを停止(S222)した後、または、通話継続タイマが満了した場合(S219/Yes)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻る。
<実施の形態1の効果>
本実施の形態では、デジタルコンベンショナル環境においてIDを指定した個別通話を行うような場合に、着信側の無線機において、受信した音声信号に対して所定の音声を認識するようにした。そして、例えば、相手からの回答が期待される『問いかけ』を検出した場合、通話状態解除までの時間をPCアプリケーションで予め設定した時間よりも長く設定するようにした。これにより、本実施の形態では、着信側の無線機が発信側の無線機からの問いかけに対して応答する場合に、多少応答が遅れてもグループ通話での送信にはならずに、発信側の無線機に対する個別通話として送信することができ、意図した所望の相手と通信を行うことができる。
(実施の形態2)
次に、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る無線通信システムの構成は、実施の形態1の図1と同様であり、例えば、無線通信システム100は、無線機1A及び1Bを備えている。
本実施の形態では、無線機1が、オプショナルシグナリングを指定して個別通話を行う例について説明する。オプショナルシグナリングは、2-ToneやDTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)などである。アナログ/デジタルコンベンショナル環境において、発信側の無線機1Aが個別通話を開始する場合、話者2Aが着信側の無線機1Bの待ち受けオプショナルシグナリングを選択及び指定してPTTボタンを押下することで呼び出しを行う。オプショナルシグナリングを指定せずにPTTボタンを押下した場合、通話が成立しない。無線機1Aから呼び出しを受けた無線機1Bが応答すると、無線機1Aと無線機1Bは通話状態となり、通話相手の指定操作をしなくともPTTボタンを押下するだけで通話状態にある相手に対して通話を行うことができる。ある一定時間、無線機1A及び1Bのいずれからも通話が開始されないと通話状態が解除され、以降PTTボタンを押下しただけでは通話が成立しない状態に戻る。オプショナルシグナリングを行う場合においても、この通話状態を継続する一定時間、すなわち通話状態が解除される(個別通話の状態から通話相手指定前の状態へ戻る)までの時間を「通話状態継続時間」とする。通話状態継続時間が長すぎると、個別通話の状態から通話相手指定前の状態へ自動的に戻るまで時間がかかり、他の無線機と通話を行うことができない場合が増えるため、業務等の通話に支障がないよう適切な値に設定する必要がある。
<検討例2の動作>
ここで、本実施の形態の理解を助けるため、本実施の形態適用前の検討例2について説明する。検討例2では、オプショナルシグナリングを行う無線機において、PCアプリケーションによって予め通話状態継続時間を設定することができるものの、その設定を運用中に動的に変更する方法が無いため、常に固定値での動作となる。このため、検討例2では、通話状態継続時間の設定が短いと、以下に説明するように、着信側が発信側からの問いかけに対する応答を返そうとしても、意図した相手が受信できない場合や応答を返すのに時間がかかる場合があるという課題がある。
図7は、これらの課題が生じる場合の検討例2の動作を示しており、図8は、この場合の無線機の表示例を示している。なお、検討例2の無線機を無線機9とする。
図7は、アナログコンベンショナル環境においてオプショナルシグナリング指定で個別通話を行う例であり、話者2Aの操作によって、発信側の無線機9AはオプショナルシグナリングとしてDTMFコード(9・8・7・6・5・4・3・2・1・0)を待ち受けており、話者2Bの操作によって、着信側の無線機9BはオプショナルシグナリングとしてDTMFコード(0・1・2・3・4・5・6・7・8・9)を待ち受けている。例えば、話者2A及び2Bが互いに使用するチャネルを選択し、無線機9A及び9Bには、図8(a)のようにチャネル1の待ち受け状態が表示される。
その状態で、発信側の無線機9Aから着信側の無線機9Bに対してDTMFコード(0・1・2・3・4・5・6・7・8・9)を送信し、個別通話を開始する。すなわち、無線機9Aは、話者2Aの操作に応じて、図8(b)のようにDTMFコードリストを表示し、通話相手の無線機9BのDTMFコード(0123456789)を選択する(S301)。無線機9BのDTMFコードを選択した状態で、話者2Aが、無線機9AのPTTボタンを押下すると(S302)、無線機9Aは、選択されている無線機9BのDTMFコード(0・1・2・3・4・5・6・7・8・9)を送信する(S303)。このとき、無線機9Aは、図8(c)のようにチャンネル1の個別通話の通話状態を表示する。無線機9Bは、このDTMFコードを受信すると、無線機9Aからの音声出力を開始する(S304)。このとき、無線機9Bは、図8(c)のようにチャンネル1の個別通話の通話状態を表示する。
続いて、無線機9Aから無線機9Bに対して「聞こえますか?」と問いかける(S305)。話者2Aが、無線機9AのPTTボタンを押下した状態で、「聞こえますか?」と話すと、無線機9Aは、その音声データを無線機9Bに送信し(S306)、音声データを受信した無線機9Bは、音声「聞こえますか?」を話者2Bへ出力する(S307)。
その後、話者2Aが無線機9AのPTTボタンから手を離して送信を終了する。話者2Aが無線機9AのPTTボタンから手を離すと(S308)、無線機9Aは、音声データ終端を無線機9Bへ送信し(S309)、無線機9Bは、その音声データ終端を受信すると、音声出力を終了する(S310)。
検討例1と同様に、発信側の無線機9Aは、PTTボタンから手が離された、または音声データ終端を送信したT0から、通話状態継続時間Tc経過したT1まで通話状態を継続する。無線機9Aは、通話状態継続時間Tcの間、通話状態が継続するため、図8(c)のように個別通話の状態を表示し、通話状態継続時間Tc経過後、個別通話の通話状態が終了するため、図8(a)のように待ち受け状態を表示する。また、着信側の無線機9Bは、音声出力を終了、または音声データ終端を受信したT2から、通話状態継続時間Tc経過したT3まで通話状態を継続する。無線機9Bは、通話状態継続時間Tcの間、通話状態が継続するため、図8(c)のように個別通話の状態を表示し、通話状態継続時間Tc経過後、個別通話の通話状態が終了するため、図8(a)のように待ち受け状態を表示する。
例えば、発信側の無線機9A及び着信側の無線機9B共に予め設定された通話状態継続時間Tcを3秒とする。そうすると、図7(a)に示すように、無線機9Bが無線機9Aからの音声データ終端を受信してから5秒後に、話者2Bが無線機9BのPTTボタンを押下して応答した場合(S311)、上記課題として述べたように、無線機9Aがこの応答を受信できない。すなわち、無線機9Aは、DTMFコード(9・8・7・6・5・4・3・2・1・0)を再受信する必要があるにもかかわらず、これを受信していないため、無線機9Bからの信号を受け付けない。この状況で、無線機9Bが応答を送信しても(S312)、音声入力(S313)による音声データを送信しても(S314)、無線機9Aには受信されない。このように、検討例2では、無線機9Bが無線機9Aに対し個別通話の応答を行っても、無線機9Bがその応答を受信しないため、意図した所望の通話を行うことができない。
また、図7(b)に示すように、無線機9Bが無線機9Aからの音声データ終端を受信してから5秒後に、図8(d)のように話者2Bの操作に応じてDTMFコードのリストを表示して無線機9AのDTMFコード(9・8・7・6・5・4・3・2・1・0)を選択し(S315)、無線機9BのPTTボタンを押下して応答した場合(S316)、無線機9Aは無線機9Bからの応答を受信することができる。しかし、無線機9BがDTMFコード(9・8・7・6・5・4・3・2・1・0)を送信完了してからでないと音声データを送信できないため、上記課題として述べたように、応答を返すまでに時間がかかってしまう。この状況では、無線機9Bが宛先選択(S315)及びPTTボタンの押下(S316)に応じてDTMFコードを送信し(S317)、無線機9Aが音声出力開始し(S318)、さらに無線機9Bが音声入力(S319)に応じて音声データ送信し(S320)、無線機9Aが音声出力を行う(S321)ことになる。このように、検討例2では、無線機9Aが応答を受信可能となるように、無線機9Bから無線機9Aに対しDTMFコードを送信する必要があるため、所望の通話を行うまで時間がかかる。
<実施の形態2の動作>
上記検討例2のような課題に鑑みて、本実施の形態では、着信側と発信側の両方の無線機において通話状態継続時間を延長する。すなわち、実施の形態1と同様に、着信側の無線機において、受信した音声に対して音声認識処理を行い、例えば『問いかけ』に関するキーワードを検出した場合に、通話状態継続時間を通常時よりも長い時間に動的に変更して動作させることで、応答を送信するタイミングが少し遅れても意図した相手に正しく応答が返せるようにした。
さらに、発信側の無線機において、マイク入力音声に対して音声認識処理を行い、例えば『問いかけ』に関するキーワードを検出した場合に、通話状態継続時間を通常時よりも長い時間に動的に変更して動作させることで、着信側の無線機が応答を返す際に再度DTMFコードを送信する必要が無く、即座に応答が返せるようにした。
図9は、図7の検討例2に対し本実施の形態を適用した場合の、本実施の形態に係る無線通信システムの動作を示している。
図9に示すように、図7と同様、アナログコンベンショナル環境でオプショナルシグナリングを行う場合に、無線機1AがDTMFコード(9・8・7・6・5・4・3・2・1・0)を待ち受け、無線機9BはオプショナルシグナリングとしてDTMFコード(0・1・2・3・4・5・6・7・8・9)を待ち受けた状態で、発信側の無線機1Aから着信側の無線機1Bに対してDTMFコード(0・1・2・3・4・5・6・7・8・9)を送信し、個別通話を開始する(S301~S304)。
続いて、PTTボタンを押下した状態で、無線機1Aから無線機1Bに対して「聞こえますか?」と問いかけ(S305)、その音声データが無線機1Aから無線機1Bに送信される(S306)。ここで、本実施の形態では、発信側の無線機1Aはマイク入力される音声データを解析し、例えば『問いかけ』を認識する(S331)。マイク入力音声より『問いかけ』を認識した無線機1Aは、送信終了後に起動する通話状態継続時間Tcを通常時(例えば3秒)よりも長い時間(例えば10秒)に動的に変更して設定する。実施の形態1と同様に、延長する時間の長さは、音声認識した場合に所定の時間延長してもよいし、認識する音声に応じた時間延長してもよい。また、実施の形態1と同様に、着信側の無線機1Bは、発信側の無線機1Aから無線で受信する音声データを解析し、例えば『問いかけ』を認識する(S332)。無線受信音声より『問いかけを』を認識した無線機1Bは、無線機1Aからの音声データ終端を受信した際に起動する通話状態継続時間Tcを通常時(例えば3秒)よりも長い時間(例えば10秒)に動的に変更して設定する。なお、発信側と着信側で延長する時間は同じであることが好ましい。
その後、話者2Aが無線機1AのPTTボタンから手を離して送信を終了する(S308~S310)。発信側の無線機1Aは、PTTボタンから手が離された、または音声データ終端を送信したT0から、延長後の通話状態継続時間Tc経過するまで通話状態を継続し、着信側の無線機1Bも、音声出力を終了、または音声データ終端を受信したT2から、延長後の通話状態継続時間Tc経過するまで通話状態を継続する。
例えば、無線機1Aからの音声データ終端を受信してから5秒後に、話者2Bが無線機1BのPTTボタンを押下して応答しようとした場合(S333)、無線機1Aは、通話状態が継続しているため、DTMFコード(9・8・7・6・5・4・3・2・1・0)を再受信する必要無く無線機1Bからの信号を受け付けることができる。また、無線機1BもDTMFコード(9・8・7・6・5・4・3・2・1・0)を送信する必要が無く、即座に応答が返すことができる。すなわち、検討例2と異なり、本実施の形態では、無線機1Bは無線機1Aに対して応答を送信し(S334)、無線機1Aが音声出力を開始する。そうすると、話者2Bが無線機1Bに「はい、聞こえます。」と話すと(S335)、その音声データが無線機1Aに送信され(S336)、無線機1Aが音声「はい、聞こえます。」を話者2Aへ出力する(S337)。
<実施の形態2の発信側の無線機の構成及び動作>
本実施の形態に係る発信側の無線機の構成及び動作について説明する。なお、着信側の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
図10は、本実施の形態に係る発信側の無線機1(例えば1A)の構成例を示している。図10に示すように、本実施の形態に係る無線機1は、実施の形態1と同様に、制御部10、記憶部11、タイマ管理部12、操作部13、表示部14、音声入力部15、音声出力部16、無線受信部17、無線送信部18、音声解析部19を備えている。本実施の形態では、音声解析部19は、音声入力部15から音声信号を入力するインタフェースを有し、音声入力部15において話者2から入力された音声信号の音声を認識する。その他については、実施の形態1の着信側の構成と同様である。
図11A及び図11Bは、本実施の形態に係る発信側の無線機1(例えば1A)の動作例を示している。実施の形態1の動作と比べて、音声送信中における音声入力部からの音声解析処理(S223~S225)が追加され、自身宛ての音声受信中における無線受信部からの音声解析処理(S205~S207)が省略されている。その他については実施の形態1と同様である。
まず、制御部10は、記憶部11の問いかけ検出フラグをOFFに初期化し(S201)、無線機1の状態を判定し(S202)、送受信がない場合(S202/送受信なし)、送信または受信が開始されるまで待つ。無線機1の状態が音声送信中の場合(S202/音声送信中)、音声解析部19は、音声入力部15からの音声を解析する(S223)。例えば、音声解析部19は、所定のキーワードに基づき話者2の「問いかけ」を検出したか否か判定する(S224)、音声解析部19が「問いかけ」を検出した場合(S224/Yes)、制御部10は、記憶部11の問いかけ検出フラグをONに設定する(S225)。「問いかけ」を検出しない場合(S224/No)、または、問いかけ検出フラグON(S225)の後、次の処理を行う。続いて、制御部10は、話者2の操作に応じて音声の送信が終了するまで待って(S203)、次の処理を行う。すなわち、制御部10は、音声送信が終了したか否か判定し(S203)、音声送信が終了していない場合(S203/No)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻り、音声送信が終了した場合(S203/Yes)、無線機1の状態を送受信なしとし(S204)、次の処理を行う。
一方、無線機1の状態が音声受信中の場合(S202/音声受信中(自身宛て))、音声の送信が開始されたか否かを判定し(S208)、送信が開始された場合(S208/Yes)、無線機1の状態を音声送信中とし(S209)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻る。送信が開始されない場合(S208/No)、通話相手からの音声の受信が終了まで待って(S210)、次の処理を行う。すなわち、制御部10は、音声受信が終了したか否か判定し(S210)、音声受信が終了していない場合(S210/No)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻り、音声受信が終了した場合(S210/Yes)、無線機1の状態を送受信なしとし(S211)、次の処理を行う。
送受信なしの処理(S204またはS211)に続く処理は、実施の形態1と同様である。すなわち、問いかけ検出フラグの状態に応じて(S212)、予め設定されている時間または予め設定されている時間よりも長い時間でタイマ管理部12に対し通話継続タイマを起動し(S213、S214)、そのタイマ期間中に、受信処理(S216、S221)、送信処理(S217、S220)等を行う。
<実施の形態2の効果>
本実施の形態では、オプショナルシグナリングを指定して個別通話を行うような場合に、実施の形態1と同様に、着信側の無線機において、受信した音声信号の音声認識に応じて通話状態解除までの時間を予め設定した時間よりも長く設定するようにした。これにより、着信側の無線機が発信側の無線機からの問いかけに対して応答する場合に、多少応答が遅れてもグループ通話での送信にはならずに、無線機に対する個別通話として送信できる。また、多少応答が遅れてもオプショナルシグナリングを再度送信しなくてもよくなったため、即座に応答を返すことができる。
さらに、本実施の形態では、発信側の無線機においても、マイクから入力された音声信号に対して所定の音声を認識するようにした。そして、着信側の無線機と同様に、発信側の無線機が、例えば、相手からの回答が期待される『問いかけ』を検出した場合にも、通話状態解除までの時間を予め設定した時間よりも長く設定するようにした。これにより、着信側の無線機が発信側の無線機からの問いかけに対して応答する場合に、多少応答が遅れても、発信側の無線機はオプショナルシグナリングを再度受信しなくても着信側の無線機の応答が受信でき、確実に所望の相手と通信を行うことができる。
(実施の形態3)
次に、図面を参照して実施の形態3について説明する。図12は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示している。図12に示すように、本実施の形態に係る無線通信システム100は、実施の形態1と同様に、無線機1A(第1の無線機)、無線機1B(第2の無線機)、無線機1C(第3の無線機)を備えている。本実施の形態では、実施の形態1と同様、デジタルコンベンショナル環境において、無線機1がグループ通話及びIDを指定した個別通話を行う例について説明する。
例えば、図12に示すように、無線機1A及び1CがグループID=Xで待ち受け、無線機1BがグループID=Yで待ち受けている状態で、発信側の無線機1Aから着信側の無線機1Bに対して個別通話を開始する。無線機1Aと無線機1Bが通信している時、同じ周波数で他の無線機である無線機1Cが発信すると妨害電波となる可能性がある。このため、無線機1Cは、無線機1A及び1Bが使用している周波数を受信して、その周波数では発信しない機能を持つ。
また、無線機1Aと無線機1Bは通信が中断した状態、つまり、無線機1A/1B双方でPTTボタンを押していない場合でも所定の時間はセッションを維持する機能を有する。しかし、本実施の形態適用前の無線機では、無線機1Aと無線機1Bの通信が中断している場合、無線機1Aと無線機1Bのセッションが維持されているにもかかわらず、無線機1Aと無線機1Bが通信する周波数で発信できてしまうため、無線機1Aと無線機1Bの通信に割り込んでしまう。
そこで、本実施の形態では、無線機1Aと無線機1Bの通信が終了した後、所定の時間を通話状態継続時間(セッション維持時間)と定め、この通話状態継続時間内において無線機1Cは無線機1Aと無線機1Bが通信していた周波数での発信を行わない設定とする。これにより、無線機1Aと無線機1Bの通話状態継続時間を考慮して無線機1Cの発信を止めるため、無線機1Aと無線機1Bの通話状態継続時間内で妨害となる発信を防ぐことができる。
<実施の形態3の無線機の構成>
図13は、本実施の形態に係る無線機1(例えば1C)の構成を示している。図13に示すように、本実施の形態に係る無線機1は、実施の形態1や2と同様に、制御部10、記憶部11、タイマ管理部12、操作部13、表示部14、音声入力部15、音声出力部16、無線受信部17、無線送信部18を備え、また、音声解析部19に代えてモニタ部20を備えている。なお、実施の形態1と同様に、音声解析部19を備えていてもよい。
モニタ部20は、無線受信部17から無線信号を入力するインタフェースを有し、無線受信部17において受信した所定のチャネルの音声信号や通話状態継続時間に関する情報などの無線信号をモニタ、または取得する。また、本実施の形態では、制御部10は、無線機1Aと無線機1Bの間で通話状態が維持される通話状態継続時間(セッション維持時間)を設定する設定部10c、設定された通話状態継続時間に基づいて、無線信号の送信を制限する制限部10d等を含む。設定部10cは、無線機1Aと無線機1Bの通話状態継続時間を推定する推定部であるとも言える。また、記憶部11は送信ガードフラグ等を記憶する。その他については実施の形態1と同様である。
<変形例>
本実施の形態において、無線機1Aと無線機1Bは、実施の形態1及び2のように、個別通話の通話状態継続時間を動的に制御する機能を有してもよい。この場合、無線機1Cは、発信側の無線機1Aまたは着信側の無線機1Bから通話状態継続時間情報(セッション維持時間情報)を受信し、この情報に基づき、通話状態継続時間を設定してもよい。
一例として、実施の形態1や2のように、無線機1Aまたは1BがPTTボタンを離す前の音声を分析し、問いかけに相当する音声の場合や、通話の音量が所定の音量より大きい場合や、通話時間が所定時間より長い場合に、通話状態継続時間を所定の時間より長く設定してもよい。この場合、無線機1Cは、通話状態継続時間が変更されたという情報を無線機1Aまたは1Bから受け取ってもよいし、無線機1Aまたは1Bの通話の音声認識を無線機1Cも行い、無線機1Cが通話状態継続時間を推定してもよい。
また、他の例として、無線機1Aまたは1Bが所定の操作により、通話状態継続時間を変更する機能を有し、通話状態継続時間を変更したという情報を発信してもよい。すなわち、特定のボタンの押下に応じて通話状態継続時間を変更してもよく、例えば、ボタン1を押すとセッション維持時間が数秒長くなり、ボタン2を押すとセッション維持時間が数秒短くなるようにしてもよい。この場合、無線機1Cは、この変更情報を受信し、受信した情報を元に無線機1Aと無線機1Bの通話状態継続時間を推定して、推定した時間内で同一周波数での発信をしないように制御する。
図14及び図15A~図15Cは、無線機1Cが音声解析部19を有し、問いかけに関する音声を認識することによって通話状態継続時間を動的に制御する場合の例を示す。
まず、図14の動作について説明する。無線機1A及び1Bの動作は、検討例1や実施の形態1と同様である。図14に示すように、デジタルコンベンショナル環境で、無線機1A及び1CがグループID=Xで待ち受け、無線機1BがグループID=Yで待ち受けている。
この状態で、発信側の無線機1Aから着信側の無線機1Bに対してIDを指定して個別通話を開始する(S101~S104)。さらに、PTTボタンを押下した状態で、無線機1Aから無線機1Bに対して「聞こえますか?」と問いかけ(S105)、その音声データが無線機1Aから無線機1Bに送信される(S106)。
このとき、本実施の形態では、通信中ではない他の無線機である無線機1Cは、発信側の無線機1Aと着信側の無線機1Bの通信をモニタし(S401)、無線機1Aから無線機1Bへ送信された音声データを解析し、例えば『問いかけ』を認識する(S402)。『問いかけを』を認識した無線機1Cは、自身が発信しない期間として、無線機1Aと無線機1Bの通話状態継続時間Tcを設定する。
その後、話者2Aが無線機1AのPTTボタンから手を離して送信を終了すると(S108~S110)、無線機1Cは、無線機1Aが送信した音声データ終端をモニタし(S403)、音声データ終端を検出したT4から、設定した通話状態継続時間Tc経過したT5まで、発信禁止状態とする。すなわち、通話状態継続時間Tcの間、話者2Cが無線機1CのPTTボタンを押下して発信しようとしても(S404)、無線機1Cは発信を行わない。例えば、PTTボタンを押下してもグループ送信や無線機1Aと無線機1Bに対する(もしくは全ての無線機に対する)個別送信ができないようガードする。そして、通話状態継続時間Tc経過した後、発信可能な状態となり、話者2Cが無線機1CのPTTボタンを押下すると(S405)、無線機1Cはグループ通話開始を送信し(S406)、これを受信した無線機1Aは、音声出力を開始する(S407)。
次に、図15A~図15Cの動作について説明する。実施の形態1及び2の動作と比べて、非自身宛ての音声受信中における処理(S232~S240)及び送信禁止動作(S241~S242)が追加され、音声送信中における音声入力部からの音声解析処理(S223~S225)及び自身宛ての音声受信中における無線受信部からの音声解析処理(S205~S207)が省略されている。その他については実施の形態1及び2と同様である。
まず、制御部10は、記憶部11の送信ガードフラグをOFFに初期化する(S231)。続いて、制御部10は、無線機1の状態を判定し(S202)、送受信がない場合(S202/送受信なし)、送信または受信が開始されるまで待つ。無線機1の状態が音声送信中の場合(S202/音声送信中)、実施の形態1と同様に、制御部10は、音声の送信終了まで待って(S203)、次の処理を行う。すなわち、制御部10は、音声送信が終了したか否か判定し(S203)、音声送信が終了していない場合(S203/No)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻り、音声送信が終了した場合(S203/Yes)、無線機1の状態を送受信なしとし(S204)、次の処理を行う。また、無線機1の状態が自身宛ての音声受信中の場合(S202/音声受信中(自身宛て))、制御部10は、実施の形態2と同様に、音声の送信が開始されたか否かに応じて(S208)、無線機1の状態を音声送信中とし(S209)、また、相手側からの音声の受信が終了まで待って(S210)、次の処理を行う。すなわち、制御部10は、音声の送信が開始されたか否かを判定し(S208)、送信が開始された場合(S208/Yes)、無線機1の状態を音声送信中とする(S209)。送信が開始されない場合(S208/No)、音声受信が終了したか否か判定し(S210)、音声受信が終了していない場合(S210/No)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻り、音声受信が終了した場合(S210/Yes)、無線機1の状態を送受信なしとし(S211)、次の処理を行う。
一方、無線機1の状態が非自身宛ての音声受信中(モニタ中)の場合(S202/音声受信中(非自身宛て))、音声解析部19は、無線受信部17からの音声を解析する(S232)。例えば、音声解析部19は、実施の形態1と同様に、非自宛ての音声で「問いかけ」を検出したか否か判定する(S233)。音声解析部19が「問いかけ」を検出した場合(S233/Yes)、制御部10は、記憶部11の送信ガードフラグをONに設定する(S234)。「問いかけ」を検出しない場合(S233/No)、または、送信ガードフラグON(S234)の後、次の処理を行う。
続いて、制御部10は、話者2の操作に応じて音声の送信が開始されたか否か判定し(S235)、音声の送信が開始された場合(S235/Yes)、送信ガードフラグの状態を判定する(S236)。制御部10(制限部10d)は、送信ガードフラグがONの場合(S236/ON)、送信を行わない送信禁止動作を実行する(S237)。送信ガードフラグがOFFの場合(S236/OFF)、無線機1の状態を音声送信中とし(S238)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻る。音声の送信が開始されない場合(S235/No)、また、送信禁止動作(S237)の後、制御部10は、非自宛ての音声の受信が終了するまで待って(S239)、次の処理を行う。すなわち、制御部10は、音声受信が終了したか否か判定し(S239)、音声受信が終了していない場合(S239/No)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻り、音声受信が終了した場合(S239/Yes)、無線機1の状態を送受信なしとし(S240)、次の処理を行う。
送受信なしの処理(S204、S211またはS240)に続いて、制御部10(設定部10c)は、タイマ管理部12に対し通話継続タイマを起動する(S243)。通話継続タイマの設定時間は、予め設定されている時間(例えば3秒)でもよいし、音声認識に応じて、予め設定されている時間よりも長い時間(例えば10秒)としてもよい。
続いて、制御部10は、通話相手からの音声の受信が開始したか否か判定し(S216)、音声の受信が開始した場合(S216/Yes)、無線機1の状態を音声受信中とし(S221)、通話継続タイマを停止する(S222)。また、音声の受信が開始しない場合(S216/No)、制御部10は、話者2の操作に応じて音声の送信が開始されたか否か判定し(S217)、送信が開始された場合(S217/Yes)、送信ガードフラグの状態を判定する(S241)。制御部10(制限部10d)は、送信ガードフラグがONの場合(S241/ON)、送信を行わない送信禁止動作を実行し(S242)、送信ガードフラグがOFFの場合(S241/OFF)、無線機1の状態を音声送信中とし(S220)、通話継続タイマを停止する(S222)。
音声の送信が開始されない場合(S217/No)、また、送信禁止動作(S242)の後、制御部10は、通話継続タイマの停止要因が発生したか否か判定し(S218)、通話継続タイマの停止要因が発生した場合(S218/Yes)、通話継続タイマを停止する(S222)。通話継続タイマの停止要因が発生しない場合(S218/No)、通話継続タイマが満了したか否か判定し(S219)、通話継続タイマが満了していない場合(S219/No)、受信開始処理(S216)以降を繰り返す。さらに、通話継続タイマを停止(S222)した後、または、通話継続タイマが満了した場合(S219/Yes)、送信ガードフラグをOFFに初期化し(S244)、無線機1の状態に応じた処理(S202)へ戻る。
<実施の形態3の効果>
本実施の形態は、デジタルコンベンショナル環境においてIDを指定した個別通話を行うような場合に、発信側及び着信側の無線機の通話状態継続時間情報に基づき、発信側及び着信側の無線機の通信が中断している状態でも通話状態が維持されていると想定される時間内は、通信中ではない他の無線機は同じ周波数での発信をしない設定とする。例えば、通話状態継続時間が3秒の場合、発信側または着信側の無線機の通信が終了してから最低3秒間は他の無線機は同じ周波数で発信しない。これにより、発信側及び着信側の無線機の通話が他の無線機によって妨害されることを防ぐことができる。
また、発信側及び着信側の無線機が通話状態継続時間を動的に変更する機能を有している場合、他の無線機は変更された通話状態継続時間の情報に基づき同じ周波数で発信しない時間を変更する。例えば、通話状態継続時間が4秒となった場合、発信側または着信側の無線機の通信が終了してから最低4秒間は他の無線機は同じ周波数で発信しない。これにより、通話状態継続時間が動的に変更された場合でも、発信側及び着信側の無線機の通話が他の無線機によって妨害されることを防ぐことができる。
さらに、発信側及び着信側の無線機の通話状態継続時間を、発信側及び着信側の無線機の通信内容の音声を認識することで、動的に変化させる。例えば、問いかけに相当する音声の場合や、通話の音量が所定の音量より大きい場合、通話時間が所定時間より長い場合に、通話状態継続時間を所定の時間より長く設定する。これにより、発信側及び着信側の無線機の問いかけ等の音声に応じて通話状態継続時間を設定し、発信側及び着信側の無線機の通話が他の無線機によって妨害されることを効果的に防ぐことができる。
(その他の実施の形態)
実施の形態1では発信側の無線機、実施の形態2では着信側の無線機、実施の形態3では他の無線機について説明したが、実施の形態1~3を一つの無線機に適用してもよい。その場合の無線機の構成を図16に示す。
図16に示すように、無線機1は、実施の形態1~3と同様、制御部10、記憶部11、タイマ管理部12、操作部13、表示部14、音声入力部15、音声出力部16、無線受信部17、無線送信部18、音声解析部19を備えてもよい。この場合、音声解析部19は、音声入力部15からの音声信号と無線受信部17からの音声信号の両方を解析する。また、制御部10は、自身の通話状態の継続等の制御を行う通話制御部10a、その通話状態継続時間の延長を行う延長部10b、他の無線機間の通話状態継続時間を設定する設定部10c、無線信号の送信を制限する制限部10d等を含む。
また、この場合の動作は、実施の形態1~3と同様である。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態は、業務用無線システムの無線機に限らず、汎用的な携帯電話やスマートフォン等の無線通信装置に適用してもよい。
上述の実施形態における無線機は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。無線機の各機能(各処理)を、CPUやメモリ等を有するコンピュータにより実現してもよい。例えば、記憶部に実施形態における無線通信方法を行うためのプログラムを格納し、各機能を、記憶部に格納されたプログラムをCPUで実行することにより実現してもよい。
このプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。