以下では、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
図1に示す電力供給システム1は、例えば住宅街区Tに設けられる。
まず、住宅街区Tについて説明する。住宅街区Tは、戸建住宅や集合住宅等の複数の住宅により構成される。住宅街区Tでは、複数の住宅間で互いにエネルギー(主に電力)を融通し合うことができる。住宅街区Tでは、使用される電力が電力小売事業者(アグリゲータ)から複数の住宅へと販売される。電力小売事業者は、複数の住宅へ販売する電力を電力会社(系統電源S)から一括で購入している。
本実施形態においては、住宅街区Tに3つの住宅Hが設けられている。住宅Hには、電力を消費する電気機器(負荷HL)が設けられる。住宅H(負荷HL)は、系統電源Sと接続される。
以下では、図1を用いて、電力供給システム1の構成について説明する。
電力供給システム1は、所定の電力を住宅H(負荷HL)へ供給すると共に、3つの住宅H間で電力を融通するためのものである。電力供給システム1は、配電線10、スマートメータ20、蓄電システム30及び制御部40を具備する。
配電線10は、系統電源Sと3つの住宅Hとを接続するものである。具体的には、配電線10の一端側は、系統電源Sと接続される。また、配電線10の他端側は、3つに分岐すると共に、分岐したそれぞれの端部が住宅Hに接続される。なお以下では、配電線10における前記一端側(系統電源S側)を「上流側」と、前記他端側(住宅H側)を「下流側」と称する場合がある。
スマートメータ20は、電力を計測可能なものである。スマートメータ20は、配電線10の中途部(系統電源Sの近傍)に設置される。スマートメータ20は、後述する制御部40と接続され、制御部40へ計測結果を送信することができる。スマートメータ20は、図示せぬ遮断器を具備する。スマートメータ20は、系統電源Sから配電線10に受け入れた電力(下流側へ流れる電力)が契約容量を超えた場合に、前記遮断器により配電線10の電力流通を遮断することができる。なお、契約容量とは、電力会社(系統電源S)との契約上、使用できる電力使用容量を意味する。本実施形態において、契約容量は、45[kVA]であるとする。
蓄電システム30は、太陽光を利用して発電可能であると共に、電力を充放電可能なものである。蓄電システム30は、太陽光発電部31、蓄電池32、電力測定部33及びパワコン34を具備する。
太陽光発電部31は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部31は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部31は、住宅Hの屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光発電部31は、後述するパワコン34に接続される。
蓄電池32は、電力を充放電可能なものである。蓄電池32は、例えばリチウムイオン電池等により構成される。蓄電池32は、後述するパワコン34に接続される。蓄電池32は、運転モードとして、放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モードを有する。なお、これらのモードについての詳細な説明は後述する。
なお、本実施形態において、蓄電池32の最大放電電力は、2[kW]であるとする。また、蓄電池32の最大充電電力は、2[kW]であるとする。また、蓄電池32の蓄電容量(最大容量)は、5.4[kW]であるとする。
また、蓄電池32には、停電等の非常時における電力を確保するための充電残量として所定の残量(以下では「残量下限値」と称する)が設定される。すなわち、蓄電池32の残量下限値とは、通常時において常に確保される最低限の充電残量を示すものである。なお、設定された残量下限値は、後述する契約容量超過抑制機能を実行した場合に、自動的に変更可能である。本実施形態において、蓄電池32の残量下限値は、蓄電容量(最大容量)の20%又は30%のいずれか一方に設定(変更)可能であるとする。蓄電池32の残量下限値の初期値(契約容量超過抑制フローにおける変更前の値)は、蓄電容量(最大容量)の30%に設定される。
また、蓄電池32には、蓄電池32の稼動状態を維持するための充電残量として所定の残量(以下では「最低残量」と称する)が設定される。蓄電池32は、充電残量が最低残量となった場合、稼動状態を維持(保護)するため充電モードが実行され、強制的に充電が行われる。最低残量は、残量下限値とは異なり変更不能である。本実施形態において、最低残量は、蓄電容量(最大容量)の10%に設定される。
電力測定部33は、電力を計測可能なものである。電力測定部33は、配電線10において、後述するパワコン34と配電線10との接続部の直ぐ上流側に設置される。より詳細には、電力測定部33は、配電線10において、前記(パワコン34と配電線10との)接続部と当該電力測定部33との間に、他の電線や電気機器が接続されないように設置される。電力測定部33は、パワコン34と接続され、パワコン34へ計測結果を送信することができる。
パワコン34は、電力を適宜変換可能なハイブリッドパワーコンディショナである。パワコン34は、上述の如く太陽光発電部31及び蓄電池32に接続される。また、パワコン34は、配電線10の中途部に接続される。このように、パワコン34は、太陽光発電部31と蓄電池32と配電線10との間に設けられる。
これにより、太陽光発電部31の発電電力は、パワコン34を介して配電線10に出力することができる。また、太陽光発電部31の発電電力は、パワコン34を介して蓄電池32に充電することができる。また、蓄電池32の放電電力は、パワコン34を介して配電線10に出力することができる。また、配電線10を流れる電力(系統電源Sからの電力)は、パワコン34を介して蓄電池32に充電することができる。
また、パワコン34は、上述の如く電力測定部33と接続される。パワコン34は、電力測定部33の設置箇所を流れる電力の大きさ及び向き(上流側又は下流側)に関する情報を取得することができる。パワコン34は、電力測定部33から取得した情報に基づいて、蓄電池32の充放電の制御を行うことができる。
このように、蓄電システム30は、太陽光発電部31の発電電力や蓄電池32の放電電力を、パワコン34を介して配電線10へ出力することができる。また、蓄電システム30は、太陽光発電部31の発電電力や系統電源Sからの電力を、パワコン34を介して蓄電池32に充電することができる。
本実施形態において、蓄電システム30は3つ設けられる。3つの蓄電システム30(より詳細には、蓄電システム30のパワコン34)は、配電線10にそれぞれ接続される。具体的には、3つの蓄電システム30は、配電線10のスマートメータ20と負荷HLとの間において、電力の流れる方向に1つずつ順番に接続される。各蓄電システム30は、3つの住宅Hのうちいずれかの住宅Hに所有されている。
制御部40は、蓄電システム30の動作態様を制御することによって、電力供給システム1における電力の供給態様を制御するものである。制御部40は、3つの蓄電システム30のそれぞれのパワコン34に接続される。
制御部40は、パワコン34を介して蓄電池32を制御することができる。具体的には、制御部40は、蓄電池32の運転モードを切り換えることができる。また、制御部40は、蓄電池32の残量下限値を変更することができる。
また、制御部40は、パワコン34を介して蓄電システム30に関する情報を取得することができる。具体的には、制御部40は、蓄電池32の充電残量に関する情報を取得することができる。また、制御部40は、蓄電池32の実行中の運転モードに関する情報を取得することができる。
また、制御部40は、スマートメータ20に接続される。制御部40は、スマートメータ20から計測結果に関する情報を取得することができる。具体的には、制御部40は、系統電源Sから配電線10に受け入れた電力に関する情報を取得することができる。
また、制御部40は、種々の機能を実行することができる。この種々の機能には、契約容量超過抑制機能が含まれる。なお、契約容量超過抑制機能についての詳細な説明は後述する。
また、制御部40は、電力の供給態様に関するフローを実行することができる。前記電力の供給態様に関するフローは、後述するように、順次実行される複数のフロー(後述する契約容量超過抑制フロー及び通常フロー)から構成される。なお、契約容量超過抑制フロー及び通常フローにおいては、上述の如き蓄電池32の運転モードから適宜なモードが実行される。
以下では、蓄電池32の運転モード(放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モード)について説明する。
本実施形態においては、上述の如く3つの蓄電システム30(すなわち、3つの蓄電池32)が設けられるが、各蓄電池32の運転モードの内容は同一である。
放電モードは、負荷追従運転により蓄電池32を放電させるモードである。放電モードが実行された場合、蓄電池32は、電力測定部33の測定結果に応じて放電可能な状態となる。具体的には、蓄電池32は、電力測定部33が下流側へ流れる電力を測定した場合に、当該測定した電力に対応する電力を放電し、放電状態となる。
なお、電力測定部33が下流側へ流れる電力を測定した場合とは、(太陽光発電部31が発電している場合には)太陽光発電部31の発電電力が配電線10に出力されているものの、負荷HLの合計に対して不足している場合が想定される。
また、放電モードが実行された場合、電力測定部33が下流側へ流れる電力を測定した場合であっても、蓄電池32の充電残量が放電可能な残量でない場合(例えば、充電残量が残量下限値である場合や、最低残量である場合)には、蓄電池32は放電することができず、後述する待機モードに切り換えられる。
充電モードは、蓄電池32を充電させるモードである。充電モードが実行された場合、蓄電池32は、太陽光発電部31の発電電力を、系統電源Sからの電力に優先して充電する。また、蓄電池32は、太陽光発電部31の発電電力が蓄電池32の最大充電電力よりも小さい場合や太陽光発電部31が発電していない場合には、系統電源Sからの電力も充電する。なお、太陽光発電部31の発電電力の一部が蓄電池32に充電された場合、当該発電電力の残りは配電線10に出力される。
また、充電モードが実行された場合であっても、満充電である場合には蓄電池32は充電することができず、後述する待機モードに切り換えられる。この場合、太陽光発電部31の発電電力の全部が配電線10に出力される。
待機モードは、蓄電池32を待機させるモードである。待機モードが実行された場合、蓄電池32は稼動状態のまま充放電を行わない。
充放電モードは、負荷追従運転により蓄電池32を充放電させるモードである。充放電モードが実行された場合、蓄電池32は、電力測定部33の測定結果に応じて充放電可能な状態となる。
具体的には、蓄電池32は、放電モードと同様に、電力測定部33が下流側へ流れる電力を測定した場合に、当該測定した電力に対応する電力を放電し、放電状態となる。
なお、電力測定部33が下流側へ流れる電力を測定した場合とは、(太陽光発電部31が発電している場合には)太陽光発電部31の発電電力が配電線10に出力されているものの、負荷HLの合計に対して不足している場合が想定される。
また、充放電モードが実行された場合、電力測定部33が下流側へ流れる電力を測定した場合であっても、蓄電池32の充電残量が放電可能な残量でない場合(例えば、充電残量が残量下限値である場合や、最低残量である場合)には、蓄電池32は放電することができず、待機モードに切り換えられる。
また、充放電モードが実行された場合、蓄電池32は、電力測定部33が上流側へ流れる電力を測定した場合に、当該測定した電力に対応する電力を充電し、充電状態となる。ここで、電力測定部33が上流側へ流れる電力を測定した場合とは、太陽光発電部31の発電電力が配電線10に出力され、負荷HLに対して余剰している場合が想定される。すなわち、蓄電池32は、太陽光発電部31の発電電力が負荷HLに対して余剰している場合、当該発電電力のうち余剰している分だけ充電する。
また、充放電モードが実行された場合、太陽光発電部31の発電電力が負荷HLに対して余剰している場合であっても、満充電である場合には蓄電池32は充電することができない。この場合、蓄電池32は、充放電モードを維持しつつ、充放電を行わない待機状態となる。またこの場合、太陽光発電部31の発電電力の全部が配電線10に出力される。
また、充放電モードが実行された場合、電力測定部33が上流側及び下流側へ流れる電力を測定しなかった場合には、蓄電池32は、充放電モードを維持しつつ充放電を行わない待機状態となる。なお、電力測定部33が上流側及び下流側へ流れる電力を測定しなかった場合とは、例えば太陽光発電部31の発電電力が配電線10に出力され、負荷HLに対して余剰も不足もしていない場合(均衡した状態)が想定される。
こうして、放電モード又は充放電モードにおいて、蓄電システム30から配電線10に出力された電力(具体的には、太陽光発電部31の発電電力や、蓄電池32の放電電力)は、負荷HLに対して余剰していない場合、当該負荷HLに供給される。
ここで、配電線10は、全ての住宅H(負荷HL)に接続されている。したがって、蓄電システム30から配電線10に出力された電力は、全ての住宅Hに供給可能である。換言すれば、蓄電システム30から配電線10に出力された電力は、この蓄電システム30を所有している住宅Hだけでなく、この蓄電システム30を所有していない他の住宅Hにも供給可能である。すなわち、電力供給システム1においては、蓄電システム30からの電力を住宅Hへ供給すると共に、3つの住宅H間で電力を融通することができる。
なお、放電モード又は充放電モードにおいて、蓄電システム30から配電線10に出力された電力(具体的には、太陽光発電部31の発電電力)は、負荷HLに対して余剰している場合、系統電源Sに逆潮流される。
また、蓄電池32の運転モードの切り換えに関する処理は、制御部40により実行される電力の供給態様に関するフローに規定されている。なお、電力の供給態様に関するフローについての説明は後述する。
以下では、図2及び図3を用いて、充放電モードが実行された場合における電力の供給態様の一例について説明する。
図2及び図3のブロック図は、充放電モードが実行された場合における電力の供給態様の一例を示している。なお、負荷HLの合計は、46[kW]であるものとする。また、契約容量は、45[kVA]であるものとする。また、図2以降のブロック図を用いた説明においては、説明の便宜上、太陽光発電部31は発電していないものとする。また、図3においては、便宜上、制御部40等の図示を省略している。
また、以降のブロック図において、蓄電池32の内部に記載されたメモリ(4つの矩形状の枠)は、蓄電池32の充電残量をイメージ化したものである。具体的には、4つの矩形状の枠のうち色付きの枠の数が、最大容量に対する充電残量の大まかな割合を示している。また、黒色の枠は、充電残量が放電可能な残量であることを示している。また、薄黒色の枠は、充電残量が放電不能な残量(充電残量が残量下限値である場合)であることを示している。すなわち、図2においては、全ての蓄電池32は、放電可能な充電残量を有している。
図2に示すように、負荷HLの合計が46[kW]である場合、3つの蓄電池32から最大放電電力(2[kW])の放電を行った場合であっても、負荷HLの合計に対して不足する。そのため、3つの蓄電池32の放電電力で不足する分の電力(40[kW])が系統電源Sから配電線10に受け入れられる。こうして、3つの蓄電池32の放電電力と系統電源Sからの電力とが、負荷HLに供給される。
このように、図2に示す一例においては、系統電源Sからの電力(40[kW])は、契約容量(45[kVA])よりも小さい。すなわち、スマートメータ20は、配電線10の電力流通を遮断しない。
しかし、例えば蓄電池32が放電を継続した結果、蓄電池32の充電残量が減少して残量下限値に到達した場合、蓄電池32は放電することができなくなる。この場合、系統電源Sから配電線10に受け入れられる電力は、大きくなる。
図3(a)は、図2に示した状態から、全部の蓄電池32の充電残量が減少して残量下限値に到達した場合における、電力の供給態様の一例を示している。
この場合、図3(a)に示すように、3つの蓄電池32は放電することができないため、系統電源Sから配電線10に受け入れられる電力が、図2に示した40[kW]から46[kW]へと増加する。このように、配電線10に受け入れられる電力が大きくなった際には(厳密に言えば、系統電源Sから配電線10に受け入れられる電力が契約容量を超えた際には)、図3(b)に示すように、スマートメータ20は、配電線10の電力流通を遮断することとなる。
こうして、スマートメータ20により配電線10の電力流通が遮断された場合、負荷HLへ電力を供給することができないため、各住宅Hにおいて電気機器を使用することができない。また、電力流通を一旦遮断したスマートメータ20は、各住宅Hにおいて復旧させることができない。このように、スマートメータ20が、電力流通を遮断した場合には、各住宅Hにおいて不都合な状態となる。
これに対して、本実施形態に係る電力供給システム1においては、スマートメータ20により配電線10の電力流通が遮断されるのを抑制するための機能(契約容量超過抑制機能)を有している。契約容量超過抑制機能は、制御部40の処理(契約容量超過抑制フロー)により実行される。契約容量超過抑制機能は、例えば各住宅Hの住人により任意に設定(ON/OFF)することができる。
以下では、図4のフローチャートを用いて、電力の供給態様に関するフローについて説明する。
電力の供給態様に関するフローは、制御部40により所定のタイミングで繰り返し実行される。
ステップS101において、制御部40は、契約容量超過抑制機能がONであるか否かを判断する。制御部40は、契約容量超過抑制機能がONであると判断した場合(ステップS101で「YES」)、ステップS102に移行する。一方、制御部40は、契約容量超過抑制機能がONではない(OFFである)と判断した場合(ステップS101で「NO」)、ステップS104に移行する。
ステップS102において、制御部40は、契約容量超過抑制フローを実行する。契約容量超過抑制フローとは、契約容量超過抑制機能を実行するためのフローである。換言すれば、契約容量超過抑制フローとは、スマートメータ20により配電線10の電力流通が遮断されるのを抑制するためのフローである。なお、契約容量超過抑制フローについての詳細な説明は後述する。制御部40は、ステップS102の処理を行った後、ステップS103に移行する。
ステップS103において、制御部40は、通常フラグがONであるか否かを判断する。なお、通常フラグとは、通常フローを実行するか否かを示すフラグである。制御部40は、通常フラグがONであると判断した場合(ステップS103で「YES」)、ステップS104に移行する。一方、制御部40は、通常フラグがONではない(OFFである)と判断した場合(ステップS103で「NO」)、電力の供給態様に関するフローを一旦終了する。
ステップS104において、制御部40は、通常フローを実行する。通常フローにおいては、制御部40は、3つの蓄電池32の運転モードとして充放電モードを実行する。すなわち、通常フローが実行された場合、3つの蓄電池32は、電力測定部33の測定結果に応じて充放電可能な状態となる(図2参照)。制御部40は、ステップS104の処理を行った後、電力の供給態様に関するフローを一旦終了する。
以下では、図5及び図6のフローチャートを用いて、契約容量超過抑制フローについて詳細に説明する。
契約容量超過抑制フローとは、系統電源Sから配電線10に受け入れる電力が契約容量を超えそうな場合であって、かつ、充電残量が残量下限値となり放電不能な蓄電池32がある場合に、この残量下限値を変更する(引き下げる)ことにより蓄電池32を再び放電可能とするものである。
契約容量超過抑制フローは、上述の如く蓄電池32の残量下限値を引き下げるための処理(ステップS201~ステップS209)と、蓄電池32の引き下げた残量下限値を引き上げる(元に戻す)ための処理(ステップS301~ステップS313)と、により構成される。以下に、詳細に説明する。
まず、蓄電池32の残量下限値を引き下げるための処理(ステップS201~ステップS209)について説明する。
ステップS201において、制御部40は、現在の購入電力が緊急放電指示条件以上であるか否かを判断する。なお、購入電力とは、電力小売事業者が系統電源Sから購入している電力(系統電源Sから配電線10に受け入れている電力)を意味する。また、緊急放電指示条件とは、契約容量よりも若干小さく設定された電力の値である。例えば本実施形態において、緊急放電指示条件は、契約容量(45[kVA])よりも7[kW]だけ小さい38[kW]に設定される。すなわち、購入電力が緊急放電指示条件以上である場合とは、今後しばらくの間、購入電力が契約容量を超過する可能性が高い場合を意味する。また逆に、購入電力が緊急放電指示条件よりも小さい場合とは、今後しばらくの間、購入電力が契約容量を超過する可能性が低い場合を意味する。
制御部40は、現在の購入電力が緊急放電指示条件以上であると判断した場合、(ステップS201で「YES」)、ステップS202に移行する。一方、制御部40は、現在の購入電力が緊急放電指示条件よりも小さいと判断した場合(ステップS201で「NO」)、ステップS301に移行する。
ステップS202において、制御部40は、緊急フラグをONに設定する。また、制御部40は、通常フラグをOFFに設定する。なお、緊急フラグとは、蓄電池32の残量下限値が初期値から引き下げられた状態となることを示すフラグである。このように、緊急フラグがONである場合、通常フラグがOFFとなる。すなわち、蓄電池32の残量下限値が初期値から引き下げられた状態となる場合、ステップS104の通常フローは実行されない(図4参照)。制御部40は、ステップS202の処理を行った後、ステップS203に移行する。
ステップS203において、制御部40は、緊急放電許可台数を算出する。なお、緊急放電許可台数とは、購入電力が契約容量を超過するのを抑制するため、放電を開始することが必要な蓄電池32の台数を意味する。換言すれば、緊急放電許可台数とは、充電残量が残量下限値となり放電不能な蓄電池32がある場合に、残量下限値を変更する(引き下げる)必要がある蓄電池32の台数を意味する。緊急放電許可台数は、以下の数1を用いて算出される。なお、緊急放電許可台数としては、以下の数1を用いて算出された値に対して、小数点以下を切り上げた値が採用される。
緊急放電許可台数=(購入電力-緊急放電指示条件)/2000 (数1)
ここで、「2000」とは、蓄電池32の最大放電電力[W]を意味している。なお、緊急放電許可台数は、後述するステップS209の処理により更新される(1ずつ減らされる)ものであり、ステップS203で算出された緊急放電許可台数は、緊急放電許可台数の初期値として取り扱われる。
制御部40は、ステップS203の処理を行った後、ステップS204に移行する。
ステップS204において、制御部40は、緊急放電指示順位を算出する。なお、緊急放電指示順位とは、蓄電池32の残量下限値を引き下げる必要がある場合に、3つの蓄電池32のうちどの蓄電池32を優先的に引き下げるのか決定する判断基準を意味する。緊急放電指示順位は、3つの蓄電池32の充電残量が比べられ、充電残量が多い蓄電池32から順番に順位が高くなるように設定される。
具体的には、3つの蓄電池32のうち充電残量が最も多い蓄電池32が、緊急放電指示順位が第一位であると算出される。また、3つ蓄電池32のうち充電残量が2番目に多い蓄電池32が、緊急放電指示順位が第二位であると算出される。また、3つの蓄電池32のうち充電残量が3番目に多い蓄電池32が、緊急放電指示順位が第三位であると算出される。
制御部40は、ステップS204の処理を行った後、ステップS205に移行する。なお、制御部40は、ステップS204からステップS205に移行した場合、ステップS204の処理で算出(設定)された緊急放電指示順位に従って、蓄電池32の台数分(本実施形態においては、3回)だけステップS205からステップS209までの処理を繰り返す。すなわち、制御部40は、緊急放電指示順位が第一位の蓄電池32、第二位の蓄電池32、第三位の蓄電池32に、順番に着目し、着目した蓄電池32を対象としてステップS205からステップS209までの処理を繰り返す。
ステップS205において、制御部40は、緊急放電許可台数が0よりも大きいか否かを判断する。ここで、ステップS205における緊急放電許可台数としては、ステップS204からステップS205に移行された後の、最初のステップS205の処理である場合には、ステップS203の処理で算出された緊急放電許可台数の初期値が用いられる。また、2回目以降のステップS205の処理である場合には、後述のステップS209の処理で算出された緊急放電許可台数の更新値が用いられる。制御部40は、緊急放電許可台数が0よりも大きいと判断した場合(ステップS205で「YES」)、ステップS206に移行する。一方、制御部40は、緊急放電許可台数が0よりも大きくないと(すなわち、0であると)判断した場合(ステップS205で「NO」)、契約容量超過抑制フローを一旦終了し、電力の供給態様に関するフローのステップS103に移行する。
ステップS206において、制御部40は、当該蓄電池32(すなわち、3つの蓄電池32のうち、ステップS205からステップS209までの処理の対象とされた蓄電池32)の充電残量が最低残量よりも大きいか否かを判断する。制御部40は、当該蓄電池32の充電残量が最低残量よりも大きいと判断した場合(ステップS206で「YES」)、ステップS207に移行する。一方、制御部40は、当該蓄電池32の充電残量が最低残量よりも大きくないと(すなわち、最低残量以下であると)判断した場合(ステップS206で「NO」)、次に当該蓄電池32よりも1つ順位が低い蓄電池32を対象として、ステップS205からステップS209までの処理を行う。なお、当該蓄電池32が最も順位の低い蓄電池32であった場合には、制御部40は、契約容量超過抑制フローを一旦終了し、電力の供給態様に関するフローのステップS103に移行する。
ステップS207において、制御部40は、当該蓄電池32の運転動作状態が放電状態(すなわち、放電中)であるか否かを判断する。制御部40は、当該蓄電池32の運転動作状態が放電状態ではないと判断した場合(ステップS207で「NO」)、ステップS208に移行する。一方、制御部40は、当該蓄電池32の運転動作状態が放電状態であると判断した場合(ステップS207で「YES」)、次に当該蓄電池32よりも1つ順位が低い蓄電池32を対象として、ステップS205からステップS209までの処理を行う。なお、当該蓄電池32が最も順位の低い蓄電池32である場合には、制御部40は、契約容量超過抑制フローを一旦終了し、電力の供給態様に関するフローのステップS103に移行する。
ステップS208において、制御部40は、当該蓄電池32の新たな残量下限値(現在の残量下限値よりも小さい残量下限値)を算出すると共に、現在の残量下限値を新たな残量下限値に変更する。そして、制御部40は、当該蓄電池32に放電指示を行う。具体的には、制御部40は、当該蓄電池32の運転モードを放電モードに切り換える。新たな残量下限値は、以下の数2を用いて算出される。
(新たな)残量下限値=(当該蓄電池32の充電残量割合/10-1)×10 (数2)
ここで、「当該蓄電池32の充電残量割合」とは、現在の蓄電池32の充電残量を、蓄電容量に対する割合(%)で示したものである。また、「当該蓄電池32の充電残量割合/10」により算出された値は、1の位以下が切り上げられる。こうして、例えば現在の当該蓄電池32の充電残量割合が30%である場合には、数2を用いて、新たな残量下限値として20%が算出される。
制御部40は、ステップS208の処理を行った後、ステップS209に移行する。
ステップS209において、制御部40は、緊急放電許可台数の更新値を算出する。緊急放電許可台数の更新値は、以下の数3を用いて算出される。
緊急放電許可台数の更新値=現在の緊急放電許可台数-1 (数3)
ここで、「現在の緊急放電許可台数」とは、ステップS204からステップS205に移行された後の、最初のステップS209の処理である場合には、ステップS203の処理で算出された緊急放電許可台数の初期値である。また、2回目以降のステップS209である場合には、前回のステップS209の処理で算出された緊急放電許可台数の更新値である。
制御部40は、ステップS209の処理を行った後、次に当該蓄電池32よりも1つ順位が低い蓄電池32を対象として、ステップS205からステップS209までの処理を行う。なお、当該蓄電池32が最も順位の低い蓄電池32であった場合には、制御部40は、契約容量超過抑制フローを一旦終了し、電力の供給態様に関するフローのステップS103に移行する。
このように、蓄電池32の残量下限値を引き下げるための処理(ステップS201~ステップS209)が実行される。
すなわち、現在の購入電力が緊急放電指示条件以上であり(ステップS201で「YES」)、かつ、当該蓄電池32の充電残量が最低残量よりも大きく(ステップS206で「YES」)、かつ、当該蓄電池32の運転動作状態が放電状態ではない(ステップS207で「NO」)場合とは、3つの蓄電システム30から負荷HLに供給される電力が負荷HLの合計に対して不足しているにもかかわらず、当該蓄電池32は充電残量が残量下限値となり放電不能となっている場合であると想定される。また、当該蓄電池32は、充電残量が最低残量よりも大きいため、残量下限値を引き下げた場合に、再び放電を開始できる可能性があると想定される。
そこで、このような場合には、当該蓄電池32の新たな残量下限値(現在の残量下限値よりも小さい残量下限値)を算出し、現在の残量下限値を新たな残量下限値に変更する(ステップS208)。これによって、放電不能であった当該蓄電池32を、放電させることができる。したがって、系統電源Sから配電線10に受け入れる電力を減少させ、購入電力が契約容量を超えるのを抑制し、ひいてはスマートメータ20により配電線10の電力流通が遮断されるのを抑制することができる。
図7は、契約容量超過抑制機能を実行した場合における電力の供給態様の一例を示している。具体的には、図7は、図3(a)に示した状態となる前、すなわち購入電力が契約容量を超える前に全部の蓄電池32の残量下限値を初期値(30%)から20%に引き下げた場合における、電力の供給態様の一例を示している。
図7に示すように、残量下限値を引き下げた場合には3つの蓄電システム30の放電を行うことができるため、系統電源Sから配電線10に受け入れる電力が大きくなるのを抑制することができる。すなわち、系統電源Sから配電線10に受け入れる電力が契約容量(45[kVA])を超えるのを抑制し、スマートメータ20により配電線10の電力流通が遮断されるのを抑制している。
なお、ステップS201の処理では、ステップS202以降の処理(すなわち、蓄電池32の残量下限値を引き下げるための処理)を行うために、現在の購入電力が緊急放電指示条件以上であるか否かを判断している。ここで、緊急放電指示条件とは、上述の如く契約容量よりも若干小さく設定された電力の値である。すなわち、今後しばらくの間、購入電力が契約容量を超過する可能性が高い場合にだけ、蓄電池32の残量下限値を引き下げることができるため、停電等の非常時における電力をむやみに使用することを抑制することができる。
また、ステップS203の処理では、緊急放電許可台数として、上記の数1を用いて算出された値に対して、小数点以下を切り上げた値を採用している。これにより、購入電力が契約容量を超過する可能性が高い場合には、例えば蓄電池32の放電を開始させても最大放電電力で放電させる必要がない場合であっても、この蓄電池32を放電させることができる。こうして、スマートメータ20により配電線10の電力流通が遮断されるのを効果的に抑制することができる。
また、ステップS204等の処理で、充電残量が多い蓄電池32から順番に、残量下限値を引き下げるようにしている。これにより、例えば充電残量が少ない蓄電池32の残量下限値を引き下げる一方で、充電残量が多い蓄電池32の残量下限値をそのままにした結果、残量下限値を引き下げた蓄電池32の充電残量がすぐに不足すること(蓄電池32がすぐに放電不能となること)を抑制することができる。すなわち、すぐに他の蓄電池32の残量下限値を引き下げる必要が生じるのを抑制することができ、ひいてはスマートメータ20により配電線10の電力の供給が遮断されるのを効率的に抑制することができる。
また、ステップS206の処理で、蓄電池32の充電残量が最低残量よりも大きいか否かを判断し、充電残量が最低残量以下である蓄電池32に対して残量下限値を引き下げるのを防止している。これにより、蓄電池32の充電残量が最低残量よりも小さいにもかかわらず放電が開始され、結果として強制的に充電が行われる(系統電源Sから配電線10に受け入れる電力が、さらに大きくなる)ことを防止している。こうして、スマートメータ20により配電線10の電力流通が遮断されるのを効果的に抑制することができる。
次に、蓄電池32の引き下げた残量下限値を引き上げる(元に戻す)ための処理(ステップS301~ステップS313)について説明する。
上述の如きステップS201(ステップS201で「NO」)から移行したステップS301において、制御部40は、緊急フラグがONであるか否かを判断する。制御部40は、緊急フラグがONであると判断した場合(ステップS301で「YES」)、ステップS303に移行する。一方、制御部40は、緊急フラグがONではない(OFFである)と判断した場合(ステップS301で「NO」)、ステップS302に移行する。
ステップS302において、制御部40は、通常フラグをONに設定する。制御部40は、ステップS302の処理を行った後、契約容量超過抑制フローを一旦終了し、電力の供給態様に関するフローのステップS103に移行する。
ステップS303において、制御部40は、現在の購入電力が緊急放電解除条件よりも小さいか否かを判断する。なお、緊急放電解除条件とは、緊急放電指示条件よりも小さく設定された電力の値である。例えば本実施形態において、緊急放電解除条件は、緊急放電指示条件(38[kW])よりも小さい35[kW]に設定される。すなわち、購入電力が緊急放電解除条件よりも小さい場合とは、今後しばらくの間、購入電力が契約容量を超過する可能性がほとんど無い場合を意味する。換言すれば、購入電力が緊急放電解除条件よりも小さい場合とは、残量下限値が初期値から引き下げられた蓄電池32がある場合に、停電等の非常時における電力の確保を考慮し、残量下限値を引き上げる(初期値に戻す)ことが望ましい場合を意味する。
制御部40は、現在の購入電力が緊急放電解除条件よりも小さいと判断した場合(ステップS303で「YES」)、ステップS304に移行する。一方、制御部40は、現在の購入電力が緊急放電解除条件以上であると判断した場合(ステップS303で「NO」)、契約容量超過抑制フローを一旦終了し、電力の供給態様に関するフローのステップS103に移行する。
ステップS304において、制御部40は、緊急放電解除台数を算出する。なお、緊急放電解除台数とは、残量下限値が初期値から引き下げられた蓄電池32がある場合に、残量下限値を引き上げる蓄電池32の台数を意味する。緊急放電解除台数は、以下の数4を用いて算出される。なお、緊急放電解除台数としては、以下の数4を用いて算出された値に対して、小数点以下を切り捨てた値が採用される。
緊急放電解除台数=(緊急放電解除条件-購入電力)/2000 (数4)
ここで、「2000」とは、蓄電池32の最大放電電力[W]を意味している。なお、緊急放電解除台数は、後述するステップS310の処理により更新される(1ずつ減らされる)ものであり、ステップS304で算出された緊急放電解除台数は、緊急放電解除台数の初期値として取り扱われる。
制御部40は、ステップS304の処理を行った後、ステップS305に移行する。
ステップS305において、制御部40は、緊急放電解除順位を算出する。なお、緊急放電解除順位とは、蓄電池32の残量下限値を引き上げる場合に、3つの蓄電池32のうちどの蓄電池32を優先的に引き上げるのか決定する判断基準を意味する。緊急放電解除順位は、3つの蓄電池32の充電残量が比べられ、充電残量が少ない蓄電池32から順番に順位が高くなるように設定される。
具体的には、3つの蓄電池32のうち充電残量が最も少ない蓄電池32が、緊急放電解除順位が第一位であると算出される。また、3つ蓄電池32のうち充電残量が2番目に少ない蓄電池32が、緊急放電解除順位が第二位であると算出される。また、3つの蓄電池32のうち充電残量が3番目に少ない蓄電池32が、緊急放電解除順位が第三位であると算出される。
制御部40は、ステップS305の処理を行った後、ステップS306に移行する。なお、制御部40は、ステップS305からステップS306に移行した場合、ステップS305の処理で算出(設定)された緊急放電解除順位に従って、蓄電池32の台数分(本実施形態においては、3回)だけステップS306からステップS311までの処理を繰り返す。すなわち、制御部40は、緊急放電解除順位が第一位の蓄電池32、第二位の蓄電池32、第三位の蓄電池32に、順番に着目し、着目した蓄電池32を対象としてステップS306からステップS311までの処理を繰り返す。
ステップS306において、制御部40は、当該蓄電池32(すなわち、3つの蓄電池32のうち、ステップS306からステップS311までの処理の対象とされた蓄電池32)の残量下限値が初期値(すなわち、蓄電容量の30%)よりも小さいか否かを判断する。制御部40は、残量下限値が初期値よりも小さいと判断した場合(ステップS306で「YES」)、ステップS307に移行する。一方、制御部40は、残量下限値が初期値よりも小さくない(初期値のままである)と判断した場合(ステップS306で「NO」)、次に当該蓄電池32よりも1つ順位が低い蓄電池32を対象として、ステップS306からステップS311までの処理を行う。なお、当該蓄電池32が最も順位の低い蓄電池32であった場合には、制御部40は、ステップS312に移行する。
ステップS307において、制御部40は、当該蓄電池32の運転動作状態が放電状態(すなわち、放電中)であるか否かを判断する。制御部40は、当該蓄電池32の運転動作状態が放電状態ではないと判断した場合(ステップS307で「NO」)、ステップS311に移行する。一方、制御部40は、当該蓄電池32の運転動作状態が放電状態であると判断した場合(ステップS307で「YES」)、ステップS308に移行する。
ステップS308において、制御部40は、緊急放電解除台数が0よりも大きいか否かを判断する。ここで、ステップS308における緊急放電解除台数としては、ステップS305からステップS306に移行された後、ステップS310の処理がまだ実行されていない場合には、ステップS305の処理で算出された緊急放電解除台数の初期値が用いられる。また、ステップS305からステップS306に移行された後、ステップS310の処理がすでに実行されている場合には、当該ステップS310の処理で算出された緊急放電解除台数の更新値が用いられる。制御部40は、緊急放電解除台数が0よりも大きいと判断した場合(ステップS308で「YES」)、ステップS310に移行する。一方、制御部40は、緊急放電解除台数が0よりも大きくないと(すなわち、0であると)判断した場合(ステップS308で「NO」)、ステップS309に移行する。
ステップS309において、制御部40は、継続フラグをONに設定する。なお、継続フラグとは、ステップS306からステップS311までの処理を行った後、緊急フラグをOFFに設定するかの判断の基準となるフラグである。制御部40は、ステップS309の処理を行った後、次に当該蓄電池32よりも1つ順位が低い蓄電池32を対象として、ステップS306からステップS311までの処理を行う。なお、当該蓄電池32が最も順位の低い蓄電池32であった場合には、制御部40は、ステップS312に移行する。
ステップS310において、制御部40は、緊急放電解除台数の更新値を算出する。緊急放電解除台数の更新値は、以下の数5を用いて算出される。
緊急放電解除台数の更新値=現在の緊急放電解除台数-1 (数5)
ここで、「現在の緊急放電解除台数」とは、ステップS305からステップS306に移行された後の、最初のステップS310の処理である場合には、ステップS305の処理で算出された緊急放電解除台数の初期値である。また、2回目以降のステップS310の処理であるには、前回のステップS310の処理で算出された緊急放電解除台数の更新値である。
制御部40は、ステップS310の処理を行った後、ステップS311に移行する。
ステップS311において、制御部40は、現在の残量下限値を初期値に変更する。そして、制御部40は、当該蓄電池32に待機指示を行う。具体的には、制御部40は、当該蓄電池32の運転モードを待機モードに切り換える。制御部40は、ステップS311の処理を行った後、次に当該蓄電池32よりも1つ順位が低い蓄電池32を対象として、ステップS306からステップS311までの処理を行う。なお、当該蓄電池32が最も順位の低い蓄電池32であった場合には、制御部40は、ステップS312に移行する。
ステップS312において、制御部40は、継続フラグがOFFであるか否かを判断する。制御部40は、継続フラグがOFFであると判断した場合(ステップS312で「YES」)、ステップS314に移行する。一方、制御部40は、継続フラグがOFFではない(ONである)と判断した場合(ステップS312で「NO」)、ステップS313に移行する。
ステップS313において、制御部40は、継続フラグをONに設定する。制御部40は、ステップS313の処理を行った後、契約容量超過抑制フローを一旦終了し、電力の供給態様に関するフローのステップS103に移行する。
ステップS314において、制御部40は、緊急フラグをOFFに設定する。制御部40は、ステップS314の処理を行った後、契約容量超過抑制フローを一旦終了し、電力の供給態様に関するフローのステップS103に移行する。
このように、蓄電池32の引き下げた残量下限値を引き上げる(元に戻す)ための処理(ステップS301~ステップS313)が実行される。
すなわち、今後しばらくの間、購入電力が契約容量を超過する可能性がほとんど無い場合(ステップS303で「YES」)に、蓄電池32の残量下限値を初期値から引き下げた状態で放電を継続させるのではなく、蓄電池32の残量下限値を初期値に戻して放電を停止させる(ステップS307で「YES」、ステップS311等参照)。こうして、系統電源Sから配電線10に受け入れる電力が増加するものの、購入電力が契約容量を超過する可能性がほとんど無い場合には、停電等の非常時における電力をむやみに使用することを抑制することができる。
なお、ステップS301の処理では、ステップS304以降の処理(すなわち、蓄電池32の残量下限値を引き上げるための処理)を行うために、現在の購入電力が、(緊急放電指示条件(ステップS201参照)よりも小さく設定された)緊急放電解除条件よりも小さいか否かを判断している。ここで、例えば緊急放電解除条件を緊急放電指示条件と同一の値に設定した場合には、蓄電池32の残量下限値の引き下げと引き上げとが交互に頻発することが想定される。しかしながら、上述の如き構成により、蓄電池32の残量下限値の引き下げと引き上げとが交互に頻発するのを抑制することができる。
また、ステップS304の処理では、緊急放電解除台数として、上記の数4を用いて算出された値に対して、小数点以下を切り捨てた値を採用している。これにより、購入電力が契約容量を超過する可能性が高い場合には、(残量下限値を引き下げて放電を行っている場合に)最大放電電力で放電していない蓄電池32がある場合であっても、この蓄電池32の放電を継続させることができる。すなわち、スマートメータ20により配電線10の電力流通が遮断されるのを効果的に抑制することができる。
また、ステップS305等の処理で、充電残量が少ない蓄電池32から順番に、残量下限値を引き上げるようにしている。これにより、例えば充電残量が多い蓄電池32の残量下限値を引き上げる一方で、充電残量が少ない蓄電池32の残量下限値をそのままにした結果、残量下限値をそのままにした蓄電池32の充電残量がすぐに不足すること(蓄電池32がすぐに放電不能となること)を抑制することができる。すなわち、すぐに他の蓄電池32の残量下限値を引き下げる必要が生じるのを抑制することができ、ひいては蓄電池32の残量下限値の引き下げと引き上げとが交互に頻発するのを抑制することができる。
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、
系統電源Sと接続された負荷HLに電力を供給する電力供給システムであって、
系統電源Sと前記負荷HLとの間に接続されると共に所定の供給源(系統電源S及び太陽光発電部31)からの電力を充放電可能な複数の蓄電池32と、
前記複数の蓄電池32の充放電を制御する制御部40と、
を具備し、
前記複数の蓄電池32は、
充電残量のうち通常時に放電可能な電力の下限値を示す残量下限値が設定され、
前記制御部40は、
系統電源Sから前記負荷HL側に供給された供給電力が所定の緊急放電指示条件(放電指示基準値)以上になった場合に、前記残量下限値を引き下げ可能であるものである。
このような構成により、系統電源Sから配電線10に受け入れる電力を減少させ、購入電力が契約容量を超えるのを抑制し、ひいてはスマートメータ20により配電線10の電力の供給が遮断されるのを抑制することができる。
また、電力供給システム1において、
前記制御部40は、
前記供給電力と前記緊急放電指示条件(放電指示基準値)との差を前記蓄電池32の最大放電電力で除した値に基づいて、前記複数の蓄電池32のうち前記残量下限値を引き下げる蓄電池32の数を決定するものである。
このような構成により、全ての蓄電池32の残量下限値を引き下げるのではなく、必要最小限の数の蓄電池32だけ残量下限値を引き下げることができる。すなわち、停電等の非常時における電力をむやみに使用することを抑制することができる。
また、電力供給システム1において、
前記制御部40は、
前記複数の蓄電池32のうち充電残量の多い蓄電池32から順番に前記残量下限値を引き下げ可能であるものである。
このような構成により、例えば他と比べて充電残量が少ない蓄電池32の残量下限値を引き下げて放電させた結果、放電可能な充電残量がすぐに不足すること(蓄電池32がすぐに放電不能となること)を抑制することができる。こうして、スマートメータ20により配電線10の電力の供給が遮断されるのを効率的に抑制することができる。
また、電力供給システム1において、
前記複数の蓄電池32は、
引き下げる前の前記残量下限値(残量下限値の初期値)よりも小さい最低残量(放電最下限値)が設定され、
前記制御部40は、
前記残量下限値を前記最低残量(放電最下限値)よりも引き下げないものである。
このような構成により、蓄電池32に例えば稼動状態を維持する程度の充電残量を確保することができる。
また、電力供給システム1において、
前記制御部40は、
前記供給電力が前記緊急放電指示条件(放電指示基準値)よりも小さく設定された緊急放電解除条件(放電解除基準値)よりも小さくなった場合に、前記残量下限値を引き上げ可能であるものである。
このような構成により、停電等の非常時における電力をむやみに使用することを抑制することができる。また、蓄電池32の残量下限値の引き下げと引き上げとが交互に頻発するのを抑制することができ、蓄電池32の制御が煩雑となるのを抑制することができる。
また、電力供給システム1において、
前記制御部40は、
前記緊急放電解除条件(放電解除基準値)と前記供給電力との差を前記蓄電池32の最大放電電力で除した値に基づいて、前記複数の蓄電池32のうち前記残量下限値を引き上げる蓄電池32の数を決定するものである。
このような構成により、全ての蓄電池32の残量下限値を一度に引き上げるのではなく、必要最小限の数の蓄電池32だけ残量下限値を引き上げることができる。すなわち、スマートメータ20により配電線10の電力の供給が遮断されるのを抑制しつつ、停電等の非常時における電力をむやみに使用することを抑制することができる。
また、電力供給システム1において、
前記制御部40は、
前記複数の蓄電池32のうち充電残量の少ない蓄電池32から順番に前記残量下限値を引き上げ可能であるものである。
このような構成により、すぐに他の蓄電池32の残量下限値を引き下げる必要が生じるのを抑制することができ、ひいては蓄電池32の残量下限値の引き下げと引き上げとが交互に頻発するのを抑制することができる。すなわち、蓄電池32の制御が煩雑となるのを抑制することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態において、電力供給システム1は、住宅街区Tに設けられるものとしたが、工場やマンション、病院等の任意の場所や建物に設けられてもよい。また、住宅街区Tは、戸建住宅や集合住宅等の複数の住宅により構成されるものとしたが、これに限定されない。
また、本実施形態において、蓄電システム30は3つ設けられるものとしたが、これに限定されない。ただし、電力融通の観点からは複数(2つ以上)であることが望ましい。また、蓄電システム30は、太陽光発電部31を有する構成としたが、太陽光発電部31を有しなくてもよい。また、太陽光発電部31に加えて(又は代わりに)他の電力の供給源(例えば、燃料電池や、太陽光以外の自然エネルギーを用いて発電を行う水力発電部や風力発電部等)を有していてもよい。
また、本実施形態において、制御部40は、蓄電システム30の外部に設けられる構成としたが、蓄電池32の内部に組み込まれる等、蓄電システム30の内部に設けられる構成でもよく、その構成は限定されるものではない。
また、本実施形態において、緊急放電指示条件は、38[kW]に設定されるものとしたが、これに限定されない。ただし、緊急放電指示条件は、電力の供給が遮断されるのを抑制する観点から、例えば契約容量と緊急放電指示条件との差が、契約容量と全部の蓄電池32の最大放電電力の合計との差よりも、小さくなるように設定することが望ましい。
また、本実施形態において、緊急放電解除条件は、35[kW]に設定されるものとしたが、これに限定されない。ただし、緊急放電解除条件は、緊急放電指示条件よりも小さく設定する必要がある。
また、本実施形態において、蓄電池32の残量下限値は、蓄電容量(最大容量)の20%又は30%のいずれか一方、すなわち択一的に設定可能であるとしたが、これに限定されない。例えば蓄電池32の残量下限値は、2つ(20%又は30%)はなく、3つ以上設定可能であってもよい。またその場合において、蓄電池32の残量下限値を引き下げる場合は、残量下限値を段階的に引き下げることができる。また、蓄電池32の残量下限値を引き上げる場合は、残量下限値を(すぐに初期値に戻すのではなく)段階的に引き上げることができる。また、蓄電池32の残量下限値は、1の位が0である必要はなく、任意の数値を採用することができる。
また、本実施形態において、最低残量は、蓄電容量(最大容量)の10%に設定されるとしたが、これに限定されない。ただし、最低残量は、残量下限値の初期値よりも小さく設定する必要がある。