JP7345755B2 - 熱反射構造及びそれを備える熱反射材 - Google Patents
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Description
特許文献1には、Ln3Nb1-xTaxO7(0≦x≦1、LnはSc、Y及びランタノイドからなる群より選択される1種又は2種以上の原子)で表される化合物を主として含む遮熱コーティング用材料が開示されている。
特許文献2には、Ln1-xMxO1.5+x(0.13≦x≦0.24、LnはSc、Y及びランタノイドからなる群より選択される1種又は2種以上の原子、MはTa又はNb)で表される化合物を主として含む遮熱コーティング用材料が開示されている。
特許文献3には、Lnx+y-3xyTixTaxZr(1-3x)(1-y)O2+1.5xy-0.5y(0.05≦x≦0.25、0≦y≦0.15、Lnは、Y、Sm、Yb及びNdからなる群より選択される1種又は2種以上の原子)を主として含む遮熱コーティング用材料が開示されている。
特許文献4には、周期律表3A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素と周期律表4A族に属する元素のうち少なくとも1種の元素とを含む酸化物を主体とする、ハロゲン系プラズマに対する耐性が高い耐食性セラミック材料が開示されている。
特許文献5には、25℃で周波数1MHzでの誘電率が35以上の誘電体を主体として含み、前記誘電体が、Mg2Pr2SnO7、Sr0.5Ba0.5Nb0.4Ta1.6O6、YPrFeSbO7、Bi4V2O11、NdNb3O9、Sn(NbO3)2、(SrBi2Ta2O9)0.4(Bi3TiNbO9)0.6、(SrBi2Nb2O9)0.50(Bi3TiNbO9)0.50、YBiFeSbO7、Ba0.53Sr0.24Ti1.22O3、YErFeSbO7、Ba0.984Sr0.016TiO3、YLaFeSbO7、ZnBi1.5Nb1.5O7、(SrBi2Nb2O9)0.25(Bi3TiNbO9)0.75、Bi7Ti4NbO21、Ca2Nd2SnO7、(SrBi2Nb2O9)0.75(Bi3TiNbO9)0.25、SrMo0.5Ni0.5O3、YSmFeSbO7、Bi2Zn0.667Nb1.333O7、Bi2InNbO7、(SrBi2Nb2O9)0.40(Bi3TiNbO9)0.60、Bi2SrNb2O9、CaBi2Ta2O9、Mg2La2SnO7、SrTa2O6、BaMnTiO5、BaNb2O6、及びTiNb2O7からなる群から選択される、相転移といった問題を抱えず、熱伝導率がジルコニアのそれよりも小さい、新規の遮熱コーティング材料が開示されている。
特許文献6には、A2Ti2O7層とアルミナ系材料層とが各2層以上交互に積層された熱反射材であり、A2Ti2O7層におけるAは、Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのうちの少なくとも1種であり、基材上に配設される際、A2Ti2O7層が最表面側に配される、耐熱性に優れるとともに、優れた熱反射性を備える熱反射材が開示されている。
[1]基材の表面に保護層が複数積層される熱反射構造であって、
上記保護層は、下記一般式(1)で表される化合物からなる第1層と、下記一般式(2)で表される化合物からなる第2層とを有することを特徴とする熱反射構造。
A2TixO2x+3 (1)
(式中、AはY、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのうちの少なくとも1種であり、xは1又は2である。)
A2SiyO2y+3 (2)
(式中、Aは式(1)のAと同一であり、yは1又は2である。)
[2]上記第1層の厚みは0.05~0.5μmであり、且つ上記第2層の厚みは0.05~0.5μmである上記[1]に記載の熱反射構造。
[3]上記保護層の上記第2層が基材側に配される上記[1]又は上記[2]に記載の熱反射構造。
[4]基材上に配設される際、上記保護層の上記第1層が最表面側に配される上記[1]から上記[3]の何れか一項に記載の熱反射構造。
[5]上記第1層は、波長が500~2000nmの光に対する屈折率が2を超える高屈折率相であり、
上記第2層は、波長が500~2000nmの光に対する屈折率が2未満の低屈折率相である上記[1]から上記[4]のうち何れか一項に記載の熱反射構造。
[6]基材と、該基材の一面側に配された、上記[1]から上記[5]の何れか一項に記載の熱反射構造からなる部分とを備え、上記熱反射構造部を構成する複数の保護層のうち、上記基材に接合された保護層の第2層が上記基材に面していることを特徴とする熱反射材。
[7]上記基材がSiC繊維強化セラミックスを含む上記[6]に記載の熱反射材。
本発明において、保護層を構成する第1層が最表面側に配される場合には、優れた熱反射性を発現させることができる。
本発明において、第1層が高屈折率層、第2層が低屈折率層である場合には、高温環境下における輻射熱エネルギーに対して効果的な熱反射性を発現させることができる。
本発明の熱反射材において、基材がSiC繊維強化セラミックスを含む場合には、熱反射構造部が優れた耐食性を有することで、水蒸気を含む高温環境下において減肉が抑制されるだけでなく、その基材の高温環境下における酸素や水蒸気による酸化とその後の揮散による減肉を良好に抑制することもできる。
図1は、熱反射構造を備える熱反射材100の一例であり、本発明の熱反射構造は、基材20を保護するために、保護層10Aが複数積層されて構成されている。
保護層10Aは、第1層11及び第2層12を有している。図1は、本発明における好ましい態様を示し、第1層11及び第2層12は、第1層11が表面側、第2層12が基材側に配されるように積層されている。
A2TixO2x+3 (1)
式中、Aは、希土類元素であり、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)のうちの少なくとも1種である。
式中、xは1又は2である。第1層11の化合物は、具体的には、A2Ti2O7又はA2TiO5である。
なお、上述の高温環境は、1000℃~2500℃の環境、より具体的には1200℃~2000℃の環境、更に具体的には1300℃~1800℃の環境をいうものとする。
熱反射材100は、基材20上に配設される際、保護層10Aの第1層11が最表面側に配されることが好ましい。第1層11を最表面に配することで、熱反射性を良好に発現させることができる。特に、第1層11が高屈折率層である場合、上記のように、高温環境下の輻射熱エネルギーに対する高い熱反射性が得られる。
具体的に、第1層11の厚みは、0.05~0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.1~0.4μm、更に好ましくは0.18~0.25μmである。第1層11の厚みが、上述の範囲である場合、熱反射性及び耐食性を十分に発現させることができる。
A2SiyO2y+3 (2)
式中、Aは、式(1)のAと同一である。つまり、式(2)中のAは、希土類元素であり、Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuのうちの少なくとも1種である。
式中、yは、1又は2であり、式(1)のxと同値である(y=x)ことが好ましい。つまり、式(1)のxが1であればyは1であり、xが2であればyは2であることが好ましい。第2層12の化合物は、具体的には、A2Si2O7又はA2SiO5である。
これは、第1層11をYb2Ti2O7とした場合に第2層12をY2Si2O7とする等のようにAを異なるものとする構成、又は、第1層11をYb2Ti2O7とした場合に第2層12をYb2SiO5とする等のようにyをxと異なる値にする構成の場合、高温環境下で第1層11と第2層12が化学的に反応して析出物が生じることがある。そのため、複数の保護層10Aどうしにおいて、全ての第1層11の化合物を同一とし、第1層11に合わせて全ての第2層12の化合物を同一とすることにより、所望とする耐熱性、熱反射性及び耐食性が得られなくなることを確実に防止することができる。
具体的に、第2層12の厚みは、0.05~0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.1~0.4μm、更に好ましくは0.18~0.25μmである。第2層12の厚みが、上述の範囲である場合、熱反射性及び耐食性を十分に発現させることができる。
本発明において、保護層10Aの層数が多いほど、反射性と耐食性は高くなるために保護層10Aを複数とする。但し、おおよそ10層ほどで対象とする波長における反射率は理論上ほぼ100%となるため、好ましい層数が存在する。
基材20の材質は、特に限定されず、SiC繊維強化セラミックス(炭化ケイ素繊維(SiC)により強化したセラミックス)等のセラミックマトリックス複合材料(CMC)や、耐熱金属等を挙げることができる。
耐熱金属としては、ステンレス鋼等のFe基合金、ニッケル基合金、クロム基合金等を挙げることができる。ステンレス鋼としては、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。また、ニッケル基合金としては、インコネル600(登録商標)、インコネル718(登録商標)、インコロイ802(登録商標)等が挙げられる。更に、クロム基合金としては、Ducrlloy CRF(94Cr5Fe1Y2O3)等が挙げられる。
本発明において、保護層10Aを構成する第1層11及び第2層12が、いずれも、好ましくはY、Yb又はLuを含む化合物、特に好ましくはYbを含む化合物であり、保護層10Aが好ましくは3層以上である場合には、熱反射材100の熱反射性及び耐食性が特に優れたものとなる。また、基材20がSiC繊維強化セラミックスを含む場合には、従来、高温環境下でこのSiC繊維強化セラミックスからなる部分で発生した減肉挙動が抑制され、水蒸気を含む高温環境下で用いられる熱反射材100は耐久性を有することとなる。
また、これらの部品表面(基材表面)の温度上昇を抑えることができるとともに、耐食性を付与することができるため、従来では適用困難であった耐熱性及び耐食性が低い金属部材等の使用も可能になる。更に、各種熱処理炉の内壁、太陽集光発電用蓄熱材の容器内壁等に応用することで、系内に投入される熱エネルギーを外部に逃さない効率的な昇温と保温が可能になり、また高温環境下における耐食性の向上を図ることができる。
例えば、各種被膜形成法を用いて、基材20上に第2層12及び第1層11を交互に形成することを複数回行うことにより、熱反射材100を製造することができる。
被膜形成法としては、例えば、(1)熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンビーム蒸着、スパッタリング、反応性スパッタリング等の物理蒸着法、(2)熱化学蒸着、プラズマ化学蒸着、電子サイクロトロン共鳴源プラズマ化学蒸着等の化学蒸着法、(3)プラズマ溶射等の溶射法、(4)エアロゾルデポジション(AD)法、ゾルゲル法、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。
(1-1)Yb2Ti2O7粉末
四塩化チタン水溶液(TiCl4水溶液:東邦チタニウム社製、型番TLA1、Ti濃度17wt%)31gと、硝酸イッテルビウム(III)三水和物((N3O)3Yb・3H2O:日本イットリウム社製)94gとを混合し、前駆体溶液を得た。
噴霧熱分解法(最高800℃)により、前駆体溶液から、Yb/Ti比が1の非晶質のYb-Ti-O粉末を合成した。
Yb-Ti-O粉末を1673Kの温度で20時間熱処理し、結晶質のYb2Ti2O7粉末を得た。
シリカゾル(日産化学工業社製、商品名:スノーテックスOXS)52gと、硝酸イッテルビウム(III)三水和物((N3O)3Yb・3H2O:日本イットリウム社製)37gとを混合し、前駆体溶液を得た。
噴霧熱分解法(最高1000℃)により、前駆体溶液から、Yb/Si比が1の非晶質のYb-Si-O粉末を合成した。
Yb-Si-O粉末を1673Kの温度で2時間熱処理し、結晶質のYb2Si2O7粉末を得た。
四塩化チタン水溶液(TiCl4水溶液:東邦チタニウム社製、型番TLA1、Ti濃度17wt%)12gと、硝酸イットリウム六水和物((N3O)3Y・6H2O:関東化学社製)15gとを混合し、前駆体溶液を得た。
噴霧熱分解法(最高800℃)により、前駆体溶液から、Y/Ti比が1の非晶質のY-Ti-O粉末を合成した。
Y-Ti-O粉末を1073Kの温度で2時間熱処理し、結晶質のY2Ti2O7粉末を得た。
上記[1]で得られたYb2Ti2O7粉末と、Yb2Si2O7粉末とを、体積比で1:1となるように乾式混合し、混合粉末を得た。
この混合粉末を1300℃、1400℃及び1500℃の各温度で10時間加熱して熱処理し、X線回折測定を行って、熱処理前と対比した。その結果を、図2に示す。
図2によれば、1300℃、1400℃及び1500℃の各温度での熱処理物は、熱処理前と比較して、新たなピークが生じていないことから、Yb2Ti2O7とYb2Si2O7との反応による新たな析出物が発生していない。なお、Yb2SiO5が検出されているが、これはYb2Si2O7粉末にもともとごく微量含まれるものである。よって、Yb2Ti2O7とYb2Si2O7は、1300℃~1500℃の高温で反応せず、安定に存在することが確認できた。
(3-1)試験片(サンプル1)
上記[1](1-1)で得られたYb2Ti2O7粉末を用い、1500℃で5時間焼成して、直径10mm、厚み1mmの円板状の試験片(サンプル1)を作製した。
上記[1](1-3)で得られたY2Ti2O7粉末を用い、1600℃で5時間焼成して、直径10mm、厚み1mmの円板状の試験片(ドラフトサンプル1)を作製した。
上記[1](1-2)で得られたYb2Si2O7粉末を用い、1500℃で5時間焼成して、直径10mm、厚み1mmの円板状の試験片(サンプル2)を作製した。
Al2O3粉末(大明化学工業社製、商品名:TM-DAR)を用い、1500℃で5時間焼成して、直径10mm、厚み1mmの円板状の試験片(ドラフトサンプル2)を作製した。
分光エリプソメーター(堀場製作所製、商品名:UVISEL)を用い、波長範囲を500~2000nmとして、各試験片における屈折率を測定した。その結果を図3に示す。
また、Yb2Si2O7による試験片(サンプル2)は、Al2O3による試験片(ドラフトサンプル2)とほぼ同等の屈折率を備えていることが確認できた。
以上のことから、Yb2Ti2O7による第1層と、Yb2Si2O7による第2層とを有する保護層を形成した場合には、ドラフトサンプルであるY2Ti2O7による第1層と、Al2O3による第2層とを有する保護層を形成した場合(特開2014-55079号公報に記載された層構成)とほぼ同等の優れた熱反射性を有することが推定される。
上記[3]で得た屈折率の測定値を用い、行列理論に基づく薄膜設計計算ソフトEssential Macleod(Thin Film Center社製)により、Yb2Ti2O7(サンプル1)による第1層と、Yb2Si2O7(サンプル2)による第2層とを有する保護層と、Y2Ti2O7(ドラフトサンプル1)による第1層と、Al2O3(ドラフトサンプル2)による第2層とを有する保護層(特許文献6の組み合わせ)の垂直入射に対する反射率を計算で求めた。なお、この計算において、各積層数は4層ずつとして、各層の厚さはすべて0.16μmとした。その計算結果を図4に示す。
(5-1)Yb2Ti2O7焼結体からなるサンプルAの作製
上記[1](1-1)で得られたYb2Ti2O7粉末を用い、1500℃で5時間焼成して、直径10mm、厚み0.25mmの円板状の試験片(サンプルA)を作製した。
四塩化チタン水溶液(TiCl4水溶液:東邦チタニウム社製、型番TLA1、Ti濃度17wt%)と、硝酸イッテルビウム(III)三水和物((N3O)3Yb・3H2O:日本イットリウム社製)とを、Yb/Ti比が2となるように混合し、前駆体溶液を得た。
噴霧熱分解法(最高800℃)により、前駆体溶液から、Yb/Ti比が2の非晶質のYb-Ti-O粉末を合成した。
Yb-Ti-O粉末を1673Kの温度で20時間熱処理し、結晶質のYb2TiO5粉末を得た。
この粉末を用い、ホットプレス(1500℃、50MPa、30分、Ar中)を行い、その後、成形機から取り出して、大気中、1500℃で5h熱処理し、Yb2TiO5焼結体を得た。得られた焼結体を直径10mm、厚み0.25mmの円板状の試験片に加工し、サンプルBを得た。
Al2O3粉末(大明化学工業社製、商品名:TM-DAR)を用い、1500℃で5時間焼成して、直径10mm、厚み0.25mmの円板状の試験片(サンプルC)を作製した。
11 第1層
12 第2層
20 基材
30 高温水蒸気腐食試験装置
31 管状炉
33 白金製メッシュ
35 電気炉
37 Pt-20wt%Rh製管
39 断熱材
40 耐食性評価用サンプル
100 熱反射材
Claims (4)
- 基材の表面に保護層が複数積層される熱反射構造であって、
前記保護層は、(ア)Yb 2 Ti 2 O 7 からなる第1層と、Yb 2 Si 2 O 7 からなる第2層との組み合わせ、及び、(イ)Yb 2 TiO 5 からなる第1層と、Yb 2 SiO 5 からなる第2層との組み合わせから選ばれ、
前記保護層の層数は3以上であり、
前記第1層の厚みは0.05~0.5μmであり、且つ前記第2層の厚みは0.05~0.5μmであり、基材上に配設される際、前記保護層の前記第1層が最表面側に配され、前記保護層の前記第2層が基材側に配されることを特徴とする熱反射構造。 - 前記第1層は、波長が500~2000nmの光に対する屈折率が2を超える高屈折率層であり、
前記第2層は、波長が500~2000nmの光に対する屈折率が2未満の低屈折率層である請求項1に記載の熱反射構造。 - 基材と、該基材の一面側に配された、請求項1又は2に記載の熱反射構造からなる部分とを備え、前記熱反射構造からなる前記部分を構成する複数の保護層のうち、前記基材に接合された保護層の第2層が前記基材に面していることを特徴とする熱反射材。
- 前記基材がSiC繊維強化セラミックスを含む請求項3に記載の熱反射材。
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