JP7343321B2 - ハードコート層、その製造方法、透明部材、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、ひび割れや剥がれが生じにくいハードコート層、その製造方法、透明部材、及びその製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
前記樹脂層の前記フィラー濃度は前記透明樹脂部材の表面に近い側から遠い側に向けて漸次増大するような濃度勾配をもち、
前記フィラーは、
外部に連通する表面を基準とする比表面積直径が0.8nm以上80nm以下、表面の組成と内部の組成とが異なる無機物からなる一次粒子から構成され、
脱水縮合により粒子間が結合・融着した凝集体である粒子材料を主成分とする。
なお、ハードコート層における透明樹脂部材の表面に接する側の表面には、フィラーを含有させないこともできる。
前記透明樹脂材料の溶液又は前記透明樹脂材料の前駆体と、前記フィラーとを混合した後に成膜する成膜工程と、
前記成膜工程で得られた膜を液状のまま放置して含有する前記フィラーを前記膜の厚み方向に沈降させる沈降工程と、
前記膜中に含まれる前記溶媒を除去するか、又は、前記前駆体から前記透明樹脂材料に変換するかにより固化する固化工程と、
を有する。
インサートモールド射出成型又はプレス成型の型内に上述の(1)に記載のハードコート層を前記フィラーの含有量に従い配設した状態で前記透明樹脂材料を前記型内に導入して成型を行い透明部材を製造する成型工程と、
を有する。
本実施形態のハードコート層は、フィラーを含有しており、フィラー濃度は厚み方向に傾斜構造を持つ。ハードコート層は、透明樹脂部材の表面に設けられる。透明樹脂部材は、表面にハードコート層を配設することにより目的とする透明部材の形状になるような形状をもつ。透明樹脂部材の表面にハードコート層を配設する方法としては特に限定しないが、後述する透明部材の製造方法を採用して接合したり、透明樹脂部材の表面にてハードコート層を形成したり、接着剤により接着したりすることが例示できる。詳しくは透明部材の製造方法にて説明する。
透明樹脂部材を構成する樹脂材料としては特に限定されず、ポリカーボネート(変性体を含む、本明細書中の全ての樹脂について同じ)、ポリイミドなどのイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ユリア樹脂が例示できる。透明樹脂材料は、透明部材の中で最も大きな体積を占めることが多く、機械的特性(例えば耐衝撃性)を向上させるためにポリカーボネートを採用することが好ましい。
本発明のハードコート層にフィラーとして用いられる粒子材料について以下詳細に説明を行う。
本実施形態の粒子材料の製造方法は、上述の粒子材料を好適に製造できる製造方法である。本実施形態の粒子材料の製造方法は、分散工程と被覆工程と必要に応じて選択できるその他の工程とを有する。その他の工程としては、凝集工程、改質工程、粒度分布調整工程などが挙げられる。
本実施形態のハードコート層の製造方法は、特に限定しない。例えば、その後の工程により固化可能なフィラー分散液を流延法などにより成膜した後(成膜工程)に液体のまま放置することで含有されるフィラーが厚み方向で沈降して濃度の傾斜構造が生成できる(沈降工程)。液体のままでの放置は、静置することもできるし、回転による遠心力を加えて行っても良い。更には、ハードコート層を形成する透明樹脂部材の表面に成膜後、静置することによって傾斜構造を生成させても良い。
本実施形態の透明部材の製造方法は、透明樹脂部材の表面にハードコート層を熱圧着などにより接合させて一体化して透明部材を製造する方法である。透明樹脂部材は、最終的な目的物である透明部材とほぼ同等の形態を持つが、その成型は、ハードコート層の接合に先駆けて行うこともできるし、透明樹脂部材の成型をハードコート層の接合と同時に行うこともできる。
(試験1:表面の組成としてシリカ、内部の組成としてベーマイトを採用した一次粒子からなる凝集体である粒子材料の製造)
川研ファインケミカル株式会社製のアルミゾル10A(Al2O3を10質量%含有:短径×長径は10nm×50nm:コア粒子に相当)100質量部にイソプロパノール(IPA)40質量部を加えて、テトラエトキシシラン(TEOS:表面の組成であるシリカの前駆体)10質量部を添加した。この混合比を採用することで最終的に得られる粒子材料中のベーマイトとシリカとの質量比は理論上78:22である。
実施例1-2の粒子材料(160℃で乾燥後850℃で焼結)を表3に示した配合量でミキサーに入れたのち、表3に示す有機物配合量(シラン化合物の量)に相当するシラン化合物溶液を撹拌しながら投入して表面処理を行った。シラン化合物溶液は、シラン化合物としてのビニルトリメトキシシラン(信越化学製KBM-1003)、IPA、水の等量混合液とした。
実施例1-0の粒子材料(160℃で乾燥のみ)を表4に示した配合量でミキサーに入れたのち、表4に示す有機物配合量(シラン化合物の量)に相当するシラン化合物溶液を撹拌しながら投入して表面処理を行った。シラン化合物溶液は、シラン化合物としてのビニルトリメトキシシラン(信越化学製KBM-1003)、IPA、水の等量混合液とした。
TEOSの添加量を表5に記載の量に変更した以外は、上述した実施例1-2と同様の方法にて実施例4-1、4-2、及び4-3の粒子材料を製造した。
TEOSを添加しないこと以外は、試験1の実施例1-0~1-7と同様の方法で粒子材料を製造し、それぞれ比較例1-0~1-7の粒子材料とした。比較例の粒子材料は、全体がベーマイトまたはベーマイトが加熱により変化したγアルミナから形成されている。
実施例2-2の粒子材料(屈折率=1.54)10質量部と東レダウコーニング製二液シリコーンOE-6631(屈折率=1.54、光透過率(450nm/1mm)=100%)100質量部を自転公転ミキサーで混合してシリコーン熱硬化物を得た。厚さ2mmの金型に入れて、150℃/1時間加熱して硬化させた。この硬化片の光透過率を測定したところ、99%(400nm/2mm)であった。また強度は引っ張り強度は樹脂のみの強度を1として1.5であった。
実施例2-2の粒子材料(屈折率=1.52)20質量部と市販の水酸基含有アクリル樹脂/ブチルエーテル化メラミン樹脂からなるクリヤー塗料(硬化後の屈折率=1.51)100質量部をディスパーで混合してクリヤー塗料を得た。塗膜が30μmになるように板ガラスの表面に塗膜を作成した。
実施例2-3の粒子材料(屈折率=1.52)30質量部とサンユレック製LE-1421(二液タイプ、屈折率1.51)100質量部を混合して厚さ300μmの板に成形した。
実施例2-1の粒子材料(屈折率=1.59)20質量部と市販のポリカーボネート100質量部をニーダーで混練してペレットを得た。
実施例4-5の粒子材料にメチルトリメトキシシランで処理した粒子材料(屈折率=1.490)20質量部と市販のポリメチルメタクリレート100質量部をニーダーで混練してペレットを得た。射出成型して厚さ2mmのテストピースを作成した。光透過率を測定したところ、98%であった。また強度は曲げ強度は樹脂のみの弾性率を1として1.2であった。
実施例2-1の粒子材料(屈折率=1.59)30質量部と三菱化学製透明PIタイプA(屈折率=1.60)100質量部(固形分換算を混合して流延法で厚さ100μmのフィルムを作成した。
実施例2-2の粒子材料に対して、粒子材料の質量を基準として3質量%のグリシジルプロピルトリメトキシシランで処理した以外は試験7と同じように塗膜を作成した。膜の光透過率は98%(400nm/300μm)、引っ張り強度は試験7と比較して20%向上した。膜の光透過率は、膜厚2mmに換算すると光透過率は87%であった。曲げ強度は樹脂のみの弾性率を1として1.4であった。
実施例4-7の粒子材料(屈折率=1.42)30質量部とシリコーン樹脂(二液型:株式会社ダイセル製CELVENUS A1070(屈折率=1.41)100質量部を自転公転ミキサーで混合し、厚さ2mmの金型に入れて、80℃/1時間と150℃/4時間加熱して硬化させた。この硬化片の光透過率を測定したところ、92%(400nm/2mm)であった。また引っ張り強度は樹脂のみの強度を1として1.6であった。
比較例1-2の粒子材料について試験6と同様の方法にてテストピースを作成して光透過率を測定した。その結果、膜厚2mmに換算すると光透過率は10%未満であり不透明であった。引っ張り強度は樹脂材料を1として1.5であった。
比較例1-4について試験8と同様の方法にてテストピースを作成して光透過率を測定した。その結果、膜厚2mmに換算すると光透過率は10未満%であり不透明であった。これはαアルミナ化に伴う粒子の肥大化により光線の散乱が生じたことによる影響であると推測される。また曲げ弾性率は1.6であった。
粒子材料としてゲル法シリカ(富士シリシア製、サイリシア:比表面積285m2/g)にて製造したものを採用した以外は、試験6、8、6~11、及び13と同様の方法にてそれぞれ試験14~22のテストピースを作成し、光透過率及び強度(引っ張り強度又は曲げ強度)を測定した。結果を表8に示す。
実施例4-1の粒子材料を製造する際にTEOSと共にコロイダルシリカを表9に示す量だけ添加して実施例5-1~5-3を製造した。比較例5-1として、実施例4-1の粒子材料を製造する際にTEOSを除き、コロイダルシリカを表9に示す量だけ添加して製造した。
ベーマイトは高温にて加熱することでγアルミナに転移するため、この生成・消失を検討することで、ベーマイトからγアルミナへの転移が表面に存在するシリカによりどのように影響を受けるかを検討した。
実施例5-4として、前述の実施例5-1(表9)のコロイダルシリカ配合量が5、比表面積直径が7.8、ベーマイト:シリカ(理論比)が45:55 になった以外は同じように調製した粒子材料を製造した。平均粒子径は10μm、屈折は1.53であった。
この実施例5-4の粒子材料をフィラーとして43部、アクリレート BPE-200(新中村化学工業)を31部、3G(新中村工業)を69部に分散させ、ラジカル重合開始剤 Omnirad 651(I.G.M Resins.) 1部を配合後、300μmの厚みになるよう透明板で挟み、6時間静置することで無機粒子濃度勾配を付与した。これに365nmのLEDライトを2分間照射して光重合を進行させて、透明フィルムを得た。
Claims (13)
- フィラーを含有する透明樹脂材料からなる樹脂層を有し、透明樹脂部材の表面に設けられるハードコート層であって、
前記樹脂層の前記フィラー濃度は前記透明樹脂部材の表面に近い側から遠い側に向けて漸次増大するような濃度勾配をもち、
前記フィラーは、
外部に連通する表面を基準とする比表面積直径が0.8nm以上80nm以下、表面の組成と内部の組成とが異なる無機物からなる一次粒子から構成され、
脱水縮合により粒子間が結合・融着した凝集体である粒子材料を主成分とし、
前記一次粒子は、
前記内部がベーマイト、前記表面がシリカから構成されるか、又は、
前記内部がγアルミナ、前記表面がシリカから構成される、
ハードコート層。 - 前記粒子材料は、
前記一次粒子の表面を被覆する有機物からなる被覆層を有し、
前記被覆層は、前記一次粒子の表面に対して、共有結合するか又は分子間力結合するかにより結合している請求項1に記載のハードコート層。 - 前記有機物は、シラン化合物の縮合物である請求項2に記載のハードコート層。
- 前記凝集体の体積平均粒径は0.1μm以上500μm以下である請求項1~3のうちの何れか1項に記載のハードコート層。
- 前記フィラーは、
X線回折での2θが、
45°~49°と64°~67°とにそれぞれ存在するピークの半値幅が0.5°以上であるか、
37°~39°と71°~73°とにそれぞれ存在するピークの半値幅が2.5°以下であるか、又は、
45°~49°と64°~67°とにそれぞれ存在するピークの半値幅が2.5°以下である、
請求項1~4のうちの何れか1項に記載のハードコート層。 - 前記凝集体は、原子番号38以上の元素の酸化物からなる第2粒子を含む請求項1~5のうちの何れか1項に記載のハードコート層。
- 前記樹脂層は、顔料を含む請求項1~6のうちの何れか1項に記載のハードコート層。
- 前記透明樹脂部材はポリカーボネートであり、
前記樹脂層を構成する樹脂材料はアクリル樹脂である請求項1~7のうちの何れか1項に記載のハードコート層。 - 請求項1~8のうちの何れか1項に記載のハードコート層と、
前記ハードコート層を表面にもつ前記透明樹脂部材と、
を有する透明部材。 - 請求項1~8のうちの何れか1項に記載のハードコート層を製造する製造方法であって、
前記透明樹脂材料の溶液又は前記透明樹脂材料の前駆体と、前記フィラーとを混合した後に成膜する成膜工程と、
前記成膜工程で得られた膜を液状のまま放置して含有する前記フィラーを前記膜の厚み方向に沈降させる沈降工程と、
前記膜中に含まれる溶媒を除去するか、又は、前記前駆体から前記透明樹脂材料に変換するかにより固化する固化工程と、
を有するハードコート層の製造方法。 - 請求項10に記載の製造方法によりハードコート層を製造するハードコート層製造工程と、
インサートモールド射出成型又はプレス成型の型内に前記ハードコート層を前記フィラーの含有量に従い配設した状態で前記透明樹脂材料を前記型内に導入して成型を行い透明部材を製造する成型工程と、
を有する透明部材の製造方法。 - 前記ハードコート層の表面に別のコート層である第2コート層を形成する第2コート層形成工程を有する請求項11に記載の透明部材の製造方法。
- 前記ハードコート層の表面に電子線を照射する電子線照射工程を有する請求項11又は12に記載の透明部材の製造方法。
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