このような多孔質ポリオレフィンフィルムは、透過性、機械的強度及び可撓性、生体適合性、並びに生物学的安定性のような特性の組み合わせを示し、これらの特性により、これらのフィルムは、例えば米国特許第6602224号明細書に記載されるように、血管グラフト、ステントカバー又はカテーテルバルーンのような血管用途などにおいて体内組織又は体液と接触する医療用途で使用するのに適した構成要素にもなる。
このような使用の多くにおいて、多孔質フィルム構成要素は、例えば生物医学的用途又は外科用途の場合、金属クランプ又は縫い付け(又は縫合)のようないくつかの取付け手段によって所定の位置又は別の構成要素に対して固定する必要がある。このような取付け手段は、ポリマーフィルムの機械的強度のような特性に深刻な影響を与えることがある;クランプ、又は縫合糸による縫い付けから生じる孔は、例えば、応力集中体として作用し、及び/又は小さい欠陥を導入することがあり、そして使用中に機械的負荷の下で、フィルムの引裂き及び早期破損を促進又は誘発し得る。
医療用途の場合には生命にかかわり得る、使用中の多孔質フィルムのこのような不利な引裂きを克服するために、従来技術の刊行物において、引裂き抵抗を改善するための種々の解決法が提唱されている。例えば、シート材料又はパッチを通した縫合における補助構成要素又はサンドウィッチ構造の使用が、米国特許第5797932号明細書及び米国特許第6544167号明細書に記載されている。国際公開第1997/033533号パンフレットには、縫合保持強度及び引裂き抵抗を増大させるためにPTFE糸で巻きつけることによって強化された多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)血管グラフトが記載されている。このような補助構成要素を使用することの不都合には、可撓性又は多孔度のような他の特性の悪化が含まれ得る。欧州特許第3058878号明細書には、適用された負荷の中心付近の位置でポリマーフィルム内に負荷分散要素を包含させることにより、外科用メッシュとして使用され得る多孔質ポリマーフィルムの引裂き強度を増大させる方法が開示される。前記負荷分散要素は、例えば、スリット、穿孔、又は他の開口部でよく、これらは、適用された応力を再分散させ、応力伝播に必要とされる負荷を増大させるのに役立つが、これらの要素は性能に悪影響も与え得る。
これらの文献の開示にもかかわらず、改善された引裂き抵抗を示す薄い多孔質ポリオレフィンフィルム、特に、改善された引裂き抵抗と、多孔度及び可撓性とを兼ね備えたこのような改善されたフィルムが依然として必要とされており、このフィルムは、医療用デバイスの構成要素として使用するのに適している。
以下において本明細書に記載され、特許請求の範囲において特徴付けられる態様及び実施形態は、改善された引裂き抵抗を示す改質された多孔質ポリオレフィンフィルムと、前記フィルムの製造方法とを提供する。
ある態様によると、本発明は、請求項1に記載される改質された多孔質ポリオレフィンフィルム、すなわち、多孔質ポリオレフィンフィルムである多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムであって、フィルムの表面積の0.02~40面積%を形成する1つ又は複数の隔離領域において、ポリオレフィンフィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填された多孔質ハイブリッドフィルムを提供する。
本発明のこの多孔質ハイブリッドフィルムは、驚くことに、例えば医療用デバイスの構成要素としてのハイブリッドフィルムの目的の使用中に、改善された引裂き抵抗を示すが、周囲条件におけるフィルムの多孔度、極性、厚さ、可撓性、及び非粘着性のような他の特性は、少なくとも部分的又はさらに実質的に保持されることが見出された。別の利点は、このような改質フィルムの改善された縫合保持である;選択された隔離領域においてその細孔がエラストマーにより充填されており、改質された領域において縫合された多孔質フィルムは、対応する非改質多孔質フィルム及びフィルム中に局所的に存在するエラストマーから製造されたフィルムのどちらよりも良好な引裂き抵抗又は他の破損抵抗を示すことが見出される。
エラストマーにより局所的に充填されるか又は含侵されたこの多孔質ポリオレフィンフィルムのさらなる利点は、フィルムのさらなる使用の間に、エラストマーが接着剤としても機能し得ることである。例えば、改質フィルムは、少なくとも部分的に重複する2つ以上の層をマンドレルに巻き付け、次に米国特許出願公開第2014/0352875号明細書に記載されるような熱結合プロセスを用いて重複部分において層を結合させることにより、管状構造に形成又は積層され得る。同様に、少なくとも部分的に重複する1つ又は複数のフィルム層の管状構造は熱又は溶剤結合によってそれ自体に形成され、フィルムが接触しているステントに付着されて、被覆されたステントが形成され得る。したがって、フィルム中に存在するエラストマーは熱又は溶剤活性化接着剤としても機能することができ、したがって、クランプ又は縫合糸のような取付け手段の必要性が低減される。
さらなる態様は、医療用インプラント又はデバイスの構成要素としてのこれらのハイブリッドフィルムの使用、特に、血管グラフト、ステントカバー又はカテーテルバルーンのような血管用途などにおいて体内組織又は体液と接触することになる構成要素としての使用に関する。他の態様には、前記微細多孔質ハイブリッドフィルムを含む、体内での一時的又は永久的な使用のための医療用デバイス又はインプラントが含まれる。
本記載は一般的に、微細多孔質UHMWPEフィルムと、エラストマーとしての熱可塑性ポリウレタンとに関連し、これらを用いて説明されるが、これらの開示が、引裂きに敏感な他のエラストマー及び多孔質ポリオレフィンフィルムにも同様に適用され得ることは理解されるであろう。
多孔質フィルムがエラストマーにより改質され得る隔離領域の例として、「スポット」の単純化された表示を示す。
多孔質フィルムがエラストマーにより改質され得る隔離領域の例として、「スポット」及び「ストライプ」の単純化された表示を示す。
多孔質フィルムがエラストマーにより改質され得る隔離領域の例として、「ストライプ」の単純化された表示を示す。
ポリウレタンエラストマーによる局所的な改質を有さない、穿刺された多孔質UHMWPEフィルムの引裂き挙動を説明するいくつかの写真を示す。
ポリウレタンエラストマーによる局所的な改質を有する、穿刺された多孔質UHMWPEフィルムの引裂き挙動を説明するいくつかの写真を示す。
エラストマー改質及び非改質微細多孔質UHMWPEフィルムでのトラウザー(trouser)引裂き試験において伸びに対して測定された力の例を示す。
[詳細な説明]
本明細書に関連して、多孔質フィルムは一般的に、その厚さよりもはるかに大きい長さ及び幅寸法を有し、且つ少なくとも25体積%の多孔度を有する、薄い可撓性の材料シート又はストリップであると理解される。微細多孔質フィルムは、本明細書では、最大細孔サイズが約50μmである多数の細孔を有する多孔質フィルムであると理解される。
生体適合性材料は、生体組織と接触したときに毒性、傷害性、又は免疫性の応答を生じないことによって生物学的に適合性である。生分解性は、酵素作用などの生物学的手段によって、材料がより単純な成分への化学的な劣化又は分解を起こしやすいことを意味する。生物安定性又は生物不活性は、目的の使用の条件及び時間において、材料が実質的に非生分解性であることを意味する。
ある態様によると、本発明は、多孔質ポリオレフィンフィルムを含む、又は多孔質ポリオレフィンフィルムである多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムを提供し、フィルムの表面の0.02~40面積%を構成する1つ又は複数の隔離領域において、ポリオレフィンフィルム内の細孔は、エラストマーにより少なくとも部分的に充填されている。
人工心臓弁のリーフレットとして使用するための複合材料又はハイブリッド材料が米国特許出願公開第2013/0325117号明細書に記載されており、この材料は、微細多孔質ポリマー膜と、細孔の実質的に全てを充填するエラストマーとを含む。微細多孔質膜は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のようなフルオロポリマー、又はポリエチレンから作製された繊維状不織布でよく、エラストマーは、テトラフルオロエチレンと、ペルフルオロメチルビニルエーテル又はシリコーンとのコポリマーであり得る。このような複合材料は使用中に硬化をあまり示さず、非改質膜よりも良好な疲労性能を示すと述べられている。しかしながら、米国特許出願公開第2013/0325117号明細書には、膜の実質的に全ての細孔をエラストマーで充填することが教示されており、引裂き抵抗のような特性を改善するために膜をエラストマーで局所的にだけ改質することは開示又は示唆されていない。
本発明の実施形態において、多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムは多孔質ポリオレフィンフィルムに基づいており、このフィルムは、フィルムのいくつかの選択された領域において、前記領域の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填され、これらの領域外の多孔度が実質的に変化しないままであるように改質されている。多孔質ポリオレフィンフィルムはそれ自体としては当該技術分野において知られており、種々のタイプのポリオレフィンに基づく(すなわち、種々のタイプのポリオレフィンから作製される)ことができ、例えば、多孔度及び細孔サイズのような所望の特性に応じて、種々の方法を用いて作製することができる。
実施形態において、多孔質ポリオレフィンフィルムは、例えば、バイポリマー、ターポリマーなどを含む、モノマー単位として1つ又は複数のオレフィンを含有するホモポリマー及びコポリマーから選択される1つ又は複数のポリマーであり得るポリオレフィンから作製されており、このポリオレフィンは、当業者に知られている任意の方法によって形成され得る。ポリオレフィンの適切な例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びこれらのコポリマー又はブレンド、例えば、中密度ポリエチレン、線状又は高密度ポリエチレン、エチレン及び1つ又は複数のアルファ-オレフィン(例えば、ブテン-1、ヘキセン-1、及びオクテン-1など)のコポリマー、線状低密度ポリエチレン、非常に低密度のポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン/プロピレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブチレン、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、アイオノマーなどが挙げられる。実施形態において、ポリオレフィンは、ポリエチレン又はポリプロピレンホモポリマーである。好ましい実施形態では、ポリオレフィンは、好ましくは高モル質量の線状ポリエチレン、例えば、高分子量ポリエチレン(HMWPE)又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。分子量という用語は一般にまだモル質量と互換的に使用され、一般に使用される超高モル質量ポリエチレンの略語(UHMWPE)にも反映されている。
UHMWPEは、高い生物学的安定性又は生物不活性と組み合わせて良好な生体適合性を示す合成ポリマーであり、種々の生物医学的デバイスにおいて既にかなり長い間使用されている。UHMWPEは、本明細書では、4~40dL/gの間のように少なくとも4dL/gの固有粘度(IV)を有するポリエチレンであると理解される。固有粘度はモル質量の尺度であり、Mn及びMwのような実際のモル質量パラメータよりも容易に決定することができる。IVは、ASTM D1601(2004)の方法に従って、135℃でデカリン溶液において、溶解時間16時間、抗酸化剤として2g/L溶液の量のブチルヒドロキシトルエンを用いて、種々の濃度で測定された粘度をゼロ濃度まで外挿することによって決定される。IVとMwとの間には種々の経験的関係があり、このような関係は、通常、モル質量分布のような因子に依存する。Mw=5.37*104*[IV]1.37の式に基づいて、8dL/gのIVは、約930kDaのMwに対応するであろう。欧州特許出願公開第0504954A1号明細書を参照されたい。好ましくは、ポリオレフィンフィルムにおけるUHMWPEのIVは、少なくとも5、6、7又は8dL/gである。好ましくは、IVは、高い機械特性と加工の容易さとの間のバランスに達するように、最大で30、25、20、18、16又はさらに最大で14dL/gである。一般に、フィルムにおけるUHMWPEポリマーで測定したときのIVは、フィルムの作製に使用されるポリマーのIVよりもやや低い可能性がある。この後でさらに記載されるゲル押出法のようなフィルム製造プロセスの間に、ポリオレフィンは熱的、機械的及び/又は化学的な劣化を受けることがあり、これは、鎖の破壊、モル質量の低下及び/又は異なるモル質量分布をもたらし得る。
本発明のさらなる実施形態では、フィルム内のUHMWPEは線状又は分枝状ポリマーでよく、線状ポリエチレンが好ましい。線状ポリエチレンは、本明細書では、100個の炭素原子当たり1つ未満の側鎖、好ましくは300個の炭素原子当たり1つ未満の側鎖を有するポリエチレンを意味すると理解され、側鎖又は分枝は通常少なくとも10個の炭素原子を含有する。線状ポリエチレンはさらに、エチレンと(共)重合可能である5mol%までの1つ又は複数の他のアルケン、例えば、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチルペンテン、1-ヘキセン及び/又は1-オクテンのようなC3~C12又はC3~C8アルケンを含有し得る。UHMWPE中の側鎖及びコモノマーは、FTIRにより、例えば厚さ2mmの圧縮成形フィルムにおいて、NMR測定に基づいた検量線を用いて1375cmの吸収を定量化することによって適切に測定され得る(例えば、欧州特許第0269151号明細書など)。
フィルム内のUHMWPEは単一のポリマーグレードであってもよいが、例えば、モル質量(分布)並びに/又は側鎖若しくはコモノマーの種類及び量が異なるポリエチレングレードの混合物であってもよい。またフィルム内のUHMWPEは、25質量%までの上記の別のポリオレフィンとのブレンドであってもよい。
さらなる実施形態において、微細多孔質フィルムのような多孔質ポリオレフィンフィルムは、例えば、25体積%から95体積%まで大きく異なり得る元の多孔度を有する。比較的低い多孔度は、非常に可撓性で柔軟且つ滑らかであり得る高多孔度のフィルムよりも高い剛性及び強度を示し得るフィルムをもたらす。したがって、多孔度レベルが所望される多孔質フィルムの標的とされる用途に依存し得る。例えば、電池の分離フィルムのような工業的使用の場合、一般的に、30~50体積%の多孔度及び0.03~0.1μmの範囲の典型的な細孔サイズを有する微細多孔質フィルムが適用される。人工血管又は血管デバイスなどの医療用途の場合、少なくとも50体積%のような高多孔度の薄いフィルムに起因する高い可撓性及びねじれ耐性は、約0.05又は0.1μm以上の細孔との組み合わせにおいて好ましい。このような細孔は、フィルムがグラフト材料として使用される場合のように血液と接触した状態での血栓形成のリスクを低減し得る。
本発明の実施形態において、多孔質ハイブリッドフィルムは、50~95体積%の多孔度、好ましくは、少なくとも60、70又は80体積%であり、且つ最大で92、90又は88体積%である多孔度を有する多孔質ポリオレフィンフィルムに基づく。ポリオレフィンフィルム内の細孔の細孔サイズは、好ましくは、0.05~10μmであり、或いは少なくとも0.1又は0.5μm、且つ最大で8又は5μmである。このような微細多孔質フィルムから出発することにより、得られたハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムは、医療用デバイスの構成要素としての使用、例えば、血管用途のために適切になる。
フィルムの多孔度は、フィルムの密度を測定し、フィルムを製造する材料(例えば、ポリオレフィン)の密度にそれを関連付けることによって決定することができる。細孔サイズは、キャピラリフローポロメータを用いて決定することができる。このような方法は、圧力を増大させてガスを適用することによるサンプル中の細孔からの湿潤液の変位に基づく。この方法は、最小、最大(又は最初の泡立ち点)及び平均の細孔サイズ、並びに細孔サイズ分布を測定するために広く使用される。或いは、細孔サイズを決定するために顕微鏡技術が使用されてもよい。
微細多孔質UHMWPEフィルムのような上記の多孔質ポリオレフィンフィルムは、当業者に知られている種々のプロセスによって作製することができる。一般に、ポリオレフィンは、押出装置及び適切なスリットダイを用いてベースフィルムに溶融加工することができ、このフィルムは、ポリマー鎖を配向させることにより機械特性を改善するために、連続して又は同時に、一方向又は二方向に延伸(伸張とも呼ばれる)される。このプロセスは、好ましくは二方向の例えば結晶化を含む延伸及び分子配向(通常は縦方向及び横方向の二軸延伸又は配向)の結果として、多孔性も誘発し得る。一般に、高分子物品の多孔性はポリマー組成物への細孔形成剤の添加に起因し得るか、又はそれによって改善され得る。細孔形成剤は、加工中にガスを放出する化合物であってもよいし、或いは、例えば蒸発又は抽出ステップにより、ポリマー及び細孔形成剤を含む組成物から作製されたフィルムから後で除去される化合物(溶剤を含む)であってもよい。後者の細孔形成剤の例は、ポリオレフィン組成物に添加される可塑化化合物又は溶剤であり得る。溶融加工が激しく妨げられるか、又はさらに実行不可能であるような高モル質量を有するポリオレフィンの場合、例えばUHMWPEの場合、ポリオレフィンの溶剤も有利に使用される。UHMWPEを繊維又はフィルムのような物品にするために、いわゆるゲル押出又はゲルトルージョン(geltrusion)プロセスなどの溶液加工技術が開発されている。このようなプロセスにおいて、ポリオレフィンの溶液は溶液としてフィルム又は繊維形態に加工され、この溶液は冷却されると凝固してゲルになり、溶剤含有ゲルは、さらに加工及び延伸可能であるような特性を有し、伸展されたポリマー結晶が形成される。溶剤は、このようなステップ中又はステップ後に抽出及び/又は蒸発によって除去され得る。ポリオレフィンを微細多孔質フィルムにするゲルトルージョンを含む方法は、例えば、米国特許第4472328号明細書、欧州特許第0378279号明細書、欧州特許第0504954号明細書、特開昭58-149925号公報、及び米国特許出願公開第2002/0054969号明細書に記載されている。より具体的には、欧州特許第0378279号明細書には、蒸発可能な溶剤中の2~30質量%のUHMWPEの均質な溶液を作製するステップと、ゲルフィルムに形成するステップと、少なくとも一方向におけるフィルムの収縮又は延伸を防止しながら、溶剤中のUHMWPEの溶解温度よりも低い温度での蒸発によって溶剤を除去するステップと、任意選択的に、UHMWPEの融点よりも低い温度で溶剤を除去した後にフィルムを一方向又は二方向に延伸するステップとを含む、微細多孔質UHMWPEフィルムの製造プロセスが記載される。実施形態において、多孔質ポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィン繊維から作製された織布、編物又は不織布のような織物構造又は布地ではない。
一般に、多孔質ポリオレフィンフィルムは、その目的の使用に応じて、マイクロメートルの範囲の厚さ、例えば、0.5~50μm、又は最大で1、2若しくは3μm、且つ最大で40、30、20、15若しくは10μmの厚さを有する。実施形態において、細孔の局所的な部分だけがエラストマーにより少なくとも部分的に充填されており、これは、フィルム厚さに対して小さく、主に局所的な効果しか有し得ず、フィルムの平均厚さにほとんど影響を与えないであろうことを考慮して、ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムは、同様の範囲の厚さ、例えば、0.5~50μm、又は最大で1、2若しくは3μm、且つ最大で40、30、20、15若しくは10μmの厚さを有する。多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムにおいて、細孔は、フィルムの1つ又は複数の隔離領域において、エラストマーにより少なくとも部分的に充填されている。ベースの多孔質ポリオレフィンフィルムが別のポリマーによって、すなわちポリオレフィンとは異なるエラストマーによって改質されているので、フィルムは多孔質ハイブリッドフィルムと呼ばれる。エラストマーは、ポリオレフィンとのブレンドとしてハイブリッドフィルム内に存在するのではなく、充填されていない細孔もまだ含有するポリオレフィンフィルムの細孔の一部の中に局所的に存在する。本発明の説明において、隔離領域は比較的小さい島様のドメインであると考えられ、例えば、隔離領域は「スポット」又は「ストライプ」であり得る。スポット又はストライプは、フィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填されたフィルムの表面の領域であり、すなわち、フィルムの一方の側の表面から他方の側の表面へのフィルムの体積セグメント内の細孔である。スポットは、最大で約5mmの直径を有する表面上の実質的に円形の領域でよく、したがって実質的に円柱状のフィルムのセグメントも示す。或いは、最大で5mmの平均断面寸法又は幅を有し、最大で直径5mmの円形の表面積を有する長方形、楕円形又は他の非円形のフィルム上の隔離領域(フィルムの表面で見たとき)でもよい。ストライプは、最大で5mmの幅及びフィルムの最大寸法までの長さを有する長尺領域(又はセグメント)であり、これは例えば、隣接して(又は部分的に重複して)適用された一連のエラストマー溶液の液滴(スポット)から形成されていてもよい。またストライプは、アプリケータ及びフィルムが互いに関して移動している間に液体を適用することにより作製されていてもよい。ストライプは、特にフィルムのエッジゾーンのストライプは、そのエッジの1つ又は複数においてフィルムがエラストマー溶液中に浸漬されるだけであるディップコーティングプロセスの結果でもあり得る。好ましくは、隔離領域は、最大で4、3、2若しくは1.0mmの直径若しくは幅、又はその等価物を有する。隔離領域の最小直径又は幅は0.1mmと小さくてもよく、好ましくは、直径又は幅は少なくとも0.2、0.3、0.4又は0.5mmである。これらの領域は局所的で隔離されており、これは、フィルムの1つ又は複数の異なる場所において、これらの領域がエラストマーによって互いにつながることなく互いに分離されていることを意味する。図1には、上記のことを説明するために、エラストマーにより局所的に改質された矩形の多孔質フィルム片を表すいくつかの略図が示されている。図1Aにおいて、エラストマーは、例えば、エラストマー溶液の液滴として適用されており、実質的に円形スポット(灰色)をもたらし、ここで、エラストマーは細孔内に存在しており、その後、例えば針を用いて、又はレーザー切断により、小さい孔(黒色の点で示され、使用中に物体はこの孔を通過し得る)を作ることができる。図1Bは、例えば、エラストマー溶液の液滴として適用された、2つの隔離されたスポット及び隔離されたストライプを示す。図1Cに示されるフィルム片は、隔離領域としてそのエッジの1つに沿ってストライプを有し、これは通常、ディップコーティングステップに起因し得る。
フィルムのこのような隔離領域内の細孔はエラストマーにより少なくとも部分的に充填されており、これは、フィルム表面の隔離領域によって画定される、その厚さを横切るフィルムの体積セグメント内の細孔を含む。これらの細孔はエラストマーにより少なくとも部分的に充填されており、例えば、関連される細孔体積の少なくとも20又は30体積%がエラストマーにより占められる。本発明のさらなる実施形態では、前記細孔の少なくとも40、50、60、70、80又は90体積%がエラストマーにより充填されているか、又はこのような隔離領域内の細孔は、エラストマーにより実質的に完全に充填されている。このような高度の局所的な細孔充填は、中間の乾燥を伴う複数のステップでエラストマー溶液を適用することによって得ることができる。細孔充填の範囲は、いくつかの技術を用いて決定することができ、例えば、光学又はSEM顕微鏡写真から、又は改質フィルム対ベースフィルムの細孔体積の差を測定することによって得ることができる。またこれは、隔離領域におけるフィルムの質量増加から得ることもできる。
隔離領域は、通常、微細多孔質ハイブリッドフィルムの小さい部分を形成することになり、主要な部分は改質されないままであり、元のベースフィルムと実質的に同じ多孔度を有する。例えば、10x10cmのフィルム上に直径約2mmの単一のスポットが作られる場合、エラストマーで改質された隔離領域はフィルムの0.04面積%未満を占め(又はそれに応じて、セグメントは0.04体積%未満を占め)、すなわちフィルムの(一方の側の)全表面積に対して0.04面積%未満を占める。ポリオレフィンフィルムの高多孔度及び低厚さを考慮して、特定の位置でエラストマーによりフィルムを改質すると、エラストマーにより改質された多孔質フィルムの相対体積が得られ、このフィルム体積は、隔離領域の相対表面積に対応すると思われる。改質された表面積は、ハイブリッドフィルムの表面の分析により、容易に特定及び測定することができる。隔離領域はハイブリッドフィルムの表面の最大で40面積%、又は多孔質ハイブリッドフィルムの体積の最大で40体積%を占め、ここで、細孔は、エラストマーにより少なくとも部分的に充填されている。実施形態において、隔離領域は、最大で35、30、25、20、15、10、5又は2.5面積%又は体積%を形成する。他の実施形態では、隔離領域は、ハイブリッドフィルムの少なくとも0.05面積%、好ましくは少なくとも0.1、0.2、0.5又は1面積%を占める。ハイブリッドフィルム内には比較的少しのエラストマーしか存在しないので、多孔度、極性、可撓性のような目的の使用又は用途のために有利であるベース微細多孔質ポリオレフィンフィルムの特性は実質的に保持され得るが、危機的であると特定された位置でエラストマーにより改質するだけで、フィルムの引裂き抵抗は改善される。
エラストマーを局所的にその細孔内に含む多孔質ハイブリッドフィルムの多孔度は、当然ながら隔離領域の面積%と、このような領域内の細孔のエラストマーによる充填範囲とに応じて、一般にベースポリオレフィンフィルムの多孔度よりも低い。実施形態において、多孔質ハイブリッドフィルムは、30~95体積%の平均多孔度を有する。他の実施形態では、ハイブリッドフィルムは、少なくとも40、50、60、70又は80体積%の多孔度を有する。さらなる実施形態において、ハイブリッドフィルムは、最大で92、90又は85体積%の多孔度を有する。
ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムの1つ又は複数の隔離領域は、例えば医療用デバイスの構成要素としてのハイブリッドフィルムの目的の使用中にフィルムに負荷がかかったときに、非改質ポリオレフィンフィルム内で引裂きが開始又は発生する可能性の高い位置であるとして選択されるか、又は選択されている。本開示の範囲内で、フィルムの目的の使用中に引裂きが発生する可能性の高いこれらの位置は、危機的な位置とも呼ばれる。これらの危機的な位置は、使用中に引裂きの伝播を開始又は容易にし得るクラック、切断部、孔、又は他の不規則さ若しくは欠陥が形成されているか、又は形成される可能性のある、フィルム上又はフィルム内の位置であり得る;或いは、ハイブリッドフィルムの使用中に負荷の下で応力が比較的高くなるか又は集中し得る穿刺孔又は他の位置であり得る。当業者は、例えば文献調査に基づいて、コンピュータ支援による設計及びモデリングによって、或いは既存のデバイスにおける故障解析及び/又は試作品における試験の実施によって、デバイスの構成要素としてのフィルムの開発及びその目的の使用中にこのような危機的な位置を特定できるであろう。
微細多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムにおいて、フィルムの1つ又は複数の隔離領域の細孔は、エラストマーにより少なくとも部分的に充填されている。一般的に降伏点を有し、永久伸び又は変形を示すポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィンのような他の材料と比べて、エラストマーは、比較的低いヤング率、高い伸び、及び伸び又は変形後の弾性回復を示す高分子材料である。本発明のハイブリッドフィルムのエラストマー成分は、熱硬化性又は熱可塑性材料であり得る。エラストマーは、好ましくは、適切な溶剤に可溶であり、その利点は、エラストマー溶液を使用して多孔質ポリオレフィンフィルムを局所的に含浸させ、細孔をエラストマーにより少なくとも部分的に充填できることである。
実施形態において、エラストマーは熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマー(TPE)は、加熱により繰り返し溶融され得、冷却により凝固され得る;熱硬化性ゴムの場合の化学架橋の代わりに、可逆的な物理架橋からその弾性が得られる。このようなTPEは、一般に、良好な溶剤中に溶解され得る。多くのTPE材料はブロック(セグメント化とも呼ばれる)コポリマーに基づき、これは、化学的に異なり、通常異なる熱的及び機械的特性、並びに異なる溶解性を示すポリマー(オリゴマーを含む)のブロック(セグメントとも呼ばれる)を含むポリマーである;このような異なるブロックは、通常、ミクロ相分離をもたらす。多くの場合、2つ(又はそれ以上)の種類のブロックを含むブロックコポリマーのブロックは、「ハード」及び「ソフト」ポリマーブロックと称される。ブロックコポリマーのハードブロックは通常、例えば生物医学的用途の場合は約35℃である使用温度よりも高い融解温度(Tm)又はガラス転移温度(Tg)を有する硬い又は高モジュラスポリマーを含む。ブロックコポリマーのソフトブロックは、多くの場合、25℃よりも低い、好ましくは0℃よりも低いTgを有する可撓性の非晶質ポリマーを含む。Tm及びTgのような熱パラメータは一般に、DSC又はDMAのような周知の技術を用いて、乾燥サンプルにおいて決定される。このような相分離ブロックコポリマーにおいて、ハードセグメントは可撓性ソフトセグメントのための物理架橋として機能し、ハードブロック対ソフトブロックの比率に応じて、かなり剛性から可撓性及び弾性までの範囲の特性を有する材料がもたらされる。
実施形態において、多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルム内のエラストマーはハード及びソフトブロックを含むTPEであり、ハードブロックは、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン及びポリオレフィンからなる群から選択されるポリマーを含み、ソフトブロックは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン及びポリシロキサン(又はシリコーン)又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。ブロックのためのこのようなポリマーは、本明細書では、オリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含むと理解され、ポリエステルは、ポリカーボネートを含むと考えられる。このようなTPEブロックコポリマーの例は、コポリエステルエステル、コポリエーテルエステル、及びコポリカーボネートエステル(ここで、ハードブロックは、通常、ポリブチレンテレフタレートのような半芳香族ポリエステルに基づく);コポリエステルアミド及びコポリエーテルアミド;エチレン-プロピレンブロックコポリマー;スチレン-エチレン-ブタジエンブロックコポリマー(SEBS);スチレン-イソブチレンブロックコポリマー(SIBS);並びにジイソシアナート及び鎖延長剤に基づくハードブロックと、ポリエステル、ポリエーテル及び/又はポリシロキサンソフトブロックとを含むポリウレタンである。
さらなる実施形態において、エラストマーは熱可塑性ポリウレタン(TPU)、より具体的にはポリウレタンブロックコポリマーである。熱可塑性ポリウレタンという用語は、基本的に、少なくとも3つの主成分(principle component)、すなわちジイソシアナート、ジオール鎖延長剤、ポリオール又はマクログリコールと、任意選択的に、末端基を形成する連鎖停止剤としての単官能性化合物とを含むポリマー群を示す。ポリウレタンは、ジイソシアナートと、鎖延長剤としてのジオール及び任意選択的にジアミンとの反応に起因するポリマー骨格の繰り返し単位中に、ウレタン基と、任意選択的にいくつかの尿素基とを含む骨格を有する。
実施形態において、ポリウレタンは、芳香族、脂肪族又は脂環式ジイソシアナート化合物(の反応生成物)を含む。適切なジイソシアナートは、1分子当たり平均1.9~2.1個のイソシアナート基を有する。実施形態において、ジイソシアナートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート(TDI)、1,4-フェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、テトラメチレン-1,4-ジイソシアナート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、又はこれらの混合物を含む。実施形態において、ジイソシアナートは、ヘキサメチレンジイソシアナート,ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、又はこれらの混合物を含む。実施形態において、ジイソシアナートは、ヘキサメチレンジイソシアナート,ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、又はこれらの混合物からなる。実施形態において、ジイソシアナートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、又は1,4-フェニレンジイソシアナートを含む。実施形態において、ジイソシアナートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、1,4-フェニレンジイソシアナート、又はこれらの混合物からなる。実施形態において、ジイソシアナートのモル質量は、100~500g/molである。実施形態において、ジイソシアナートのモル質量は、150~260g/molである。
鎖延長剤は、通常、2つのヒドロキシル又はアミン基を有する低モル質量の脂肪族化合物である。二官能性鎖延長剤は線状熱可塑性ポリマーをもたらし、多官能性鎖延長剤は架橋生成物をもたらす(多官能性イソシアナートと同様)。実施形態において、二官能性鎖延長剤は、少なくとも60g/mol、少なくとも70g/mol、少なくとも80g/mol、少なくとも90g/mol、又は少なくとも100g/molのモル質量を有する。実施形態において、鎖延長剤は、最大で500g/mol、最大で400g/mol、最大で300g/mol、最大で200g/mol、又は最大で150g/molのモル質量を有する。実施形態において、鎖延長剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又は1,8-オクタンジオール、及び任意選択的に、このような対応するジアミンを含む。実施形態において、ポリウレタンエラストマーはジオール鎖延長剤のみを含み、熱可塑性挙動を示す。
他の実施形態では、ポリウレタンエラストマーは、ウレタン及び尿素結合の両方を有するハードブロックを含む。その利点は、ハードブロック間の相互作用の増強であり、より高いソフトブロック含量を可能にし、増強された可撓性及び弾性、並びに優れた屈曲寿命(flex life)又は耐疲労性を示すブロックコポリマーがもたらされる。ジオール/ジアミン比に応じて、ポリウレタンエラストマーは、溶融加工温度において熱劣化があり得るような強力な相互作用を示すことがあり、したがって、最適性能のために溶液加工が好ましいはずである。ウレタン及び尿素結合の両方を含むこのようなポリウレタンエラストマーの市販の例としては、Biospan(登録商標)製品(例えば、DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)が挙げられる。
さらなる実施形態において、ポリウレタンエラストマーは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン及びポリシロキサン(シリコーンとも呼ばれる)からなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族ポリマージオール又はポリオールから誘導されるソフトブロックを含み、これらのポリマーは、ヒドロキシル(又はアミン)末端基を有する二官能性である。ソフトブロックのためのこのようなポリマージオールは、本明細書では、オリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含むと理解され、ポリエステルは、ポリカーボネートを含むと考えられる。一般的に知られているポリウレタンブロックコポリマー及びこれらのコポリマーの調製方法は、特に、米国特許第4739013号明細書、米国特許第4810749号明細書、米国特許第5133742号明細書、米国特許第5229431号明細書及び米国特許第7671162号明細書に記載されている。
本発明の実施形態において、エラストマーは、ソフトブロックとして、脂肪族ポリエステルジオール、脂肪族ポリエーテルジオール、ポリ(イソブチレン)ジオール及び/又はポリシロキサンジオールを含むTPUである。鎖延長剤に関しては、アミン官能性ソフトブロックを使用することもでき、付加的な尿素結合をもたらす。種々のポリウレタンブロックコポリマーの人体における生体適合性及び生物学的安定性は証明されている。
ポリウレタンブロックコポリマーの機械特性及び他の特性は、ブロックの化学組成及び/又はモル質量を変えることによって調整することができる。ポリウレタンTPUを含む、本発明で使用するためのブロックコポリマー又はTPEのハードブロックは、約160~10,000Da、より好ましくは約200~2,000Daのモル質量を有し得る。ソフトセグメントのモル質量は、通常、約200~100,000Da、好ましくは約400~9000Daであり得る。ソフトブロック対ハードブロックの比率は、ポリマーの特定の剛性又は硬度をもたらすように選択することができる。通常、TPE、特にポリウレタンエラストマーのデュロメータ硬度は、A又はDスケールを用いてショア(Shore)試験で測定したときに、40ShA、又は少なくとも50若しくは60ShAから、80若しくは75ShDまで、又は90、85、80、75ShAまででよく、通常、約5~2500MPaの曲げ弾性率範囲、又は約5~2500又は5~500MPaの引張弾性率(成形時乾燥(dry-as-molded)サンプルで測定)を表す。
本発明のさらなる実施形態では、ポリウレタンTPUは、ソフトブロックとして脂肪族ポリエーテル又は脂肪族ポリエステル、より具体的には脂肪族ポリカーボネートを含む。適切なポリエーテルには、ポリ(プロピレンオキシド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、及びこれらのコポリマーが含まれる。適切な脂肪族ポリエステルは、一般に、少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び少なくとも1つの脂肪族ジオールから作られ、これらの成分は、好ましくは、10、0、又は-10℃よりも低いTgを有する本質的に非晶質オリゴマー又はポリマーが形成されるように選択される。脂肪族ポリカーボネートジオールは、ポリエステルジオールのために使用されるものと同様の脂肪族ジオールに基づき、当該技術分野において知られている様々な経路によって合成され得る。適切な例としては、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールが挙げられる。実施形態において、ポリウレタンは、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール及びポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、又はポリ(ポリテトラヒドロフランカーボネート)ジオールに基づいたブロックのような、ポリエーテル及び脂肪族ポリカーボネートの組み合わせをソフトセグメント中に含有する。このようなポリウレタンのハードブロックは、通常、トルエンジイソシアナート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)のような芳香族ジイソシアナートと、1,4-ブタンジオールのような低モル質量脂肪族ジオールとに基づく。ポリカーボネートウレタンは、その可撓性、強度、生物学的安定性、生体適合性及び耐摩耗性を考慮して、生物医学的用途のために適切に使用され得る。ソフトブロックとしてポリエーテル又はポリカーボネートと、ポリシロキサンとの組み合わせを含有するポリウレタンは独特の特性の組み合わせを示し、これもエラストマーとして使用され得る。このようなポリマーの市販の例としては、Bionate(登録商標)及びCarbosil(登録商標)TPU製品(DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)が挙げられる。
ポリウレタンエラストマーは、無極性末端基のような1つ又は複数の末端基を含み得る。末端基は、一般に、分子の末端部に存在する非反応性部分である。実施形態において、ポリウレタンエラストマーは線状であり、骨格の各末端に末端基、すなわち平均約2個の末端基を含む。実施形態において、末端基は無極性末端基である。実施形態において、無極性末端基は線状である。別の実施形態において、末端基は分枝状である。末端基は、ポリマー骨格の形成中又は形成後の末端イソシアナート基と、単官能性化合物又は連鎖停止剤の共反応性基との反応によって形成されていてもよい。例えば、ポリウレタンを形成するための製剤は、ジイソシアナート、高分子脂肪族ジオール、二官能性鎖延長剤、及びC8アルキル末端基を形成するための1-オクタノール又はオクチルアミンのような単官能性化合物を含み得る。
実施形態において、無極性末端基は、C2~C20アルキル、C2~C16フルオロアルキル、C2~C16フルオロアルキルエーテル、ポリ(アルキレンオキシド)又はポリシロキサン(これらのコポリマーを含む)を含む。実施形態において、ポリ(アルキレンオキシド)は、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(テトラメチレンオキシド)又はこれらのコポリマーである。実施形態において、無極性末端基は、ポリ(ジメチルシロキサン)のようなポリシロキサンである。実施形態において、末端基は、C2~C20アルキル、C2~C16フルオロアルキル、C2~C16フルオロアルキルエーテル、又は無極性ポリ(アルキレンオキシド)を含む。実施形態において、末端基は、C5~C20アルキル、C5~C16フルオロアルキル又はC5~C16フルオロアルキルエーテルを含む。前記末端基は、カルビノール、又は上記のアミンを含む単官能性アルコールを用いて形成され得る。無極性末端基を有するこのようなポリウレタンエラストマーは、ポリウレタンの表面特性と、ポリオレフィンのような他のポリマーを含む他の材料との相互作用、並びに身体組織及び血液のような体液との相互作用とに対してよい影響を与えることが見出される。
実施形態において、無極性末端基は、C2~C16フルオロアルキル又はC2~C16フルオロアルキルエーテルを含む。このような末端基は、C5~C16フルオロアルキル又はC5~C16フルオロアルキルエーテルを含む単官能性アルコール又はアミンを用いて形成され得る。実施形態において、末端基は、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン-1-オール、1H,1H-ノナフルオロ-1-ペンタノール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘキシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘプチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-オクチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ノニルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-デシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ウンデシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ラウリルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ミリスチルアルコール、又は1H,1H-ペルフルオロ-1-パルミチルアルコールから形成される。
実施形態において、無極性末端基は単量体であり、200g/mol以上、300g/mol以上、又は500g/mol以上であり、且つ1,000g/mol以下又は800g/mol以下であるモル質量を有する。実施形態において、末端基は重合体(又は、オリゴマー)であり、10,000g/mol以下、8,000g/mol以下、6,000g/mol以下、又は4,000g/mol以下のモル質量を有する。実施形態において、末端基は重合体であり、500g/mol以上、1,000g/mol以上、又は2,000g/mol以上のモル質量を有する。
実施形態において、無極性末端基は、ポリウレタンの総質量を基準として、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%、又は少なくとも0.5質量%の量で存在する。実施形態において、無極性末端基は、ポリウレタンの総質量を基準として、最大で3質量%、最大で2質量%又は最大で1質量%の量で存在する。実施形態において、無極性末端基は、ポリウレタンの総質量を基準として、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%、又は少なくとも0.5質量%の量、且つ最大で3質量%、最大で2質量%又は最大で1質量%の量で存在する。
TPUのハードブロックは、通常、トルエンジイソシアナート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)のような芳香族ジイソシアナートと、1,4-ブタンジオールのような低モル質量脂肪族ジオールとに基づく。ポリエーテル及びポリカーボネートポリウレタンは、その可撓性、強度、生物学的安定性、生体適合性及び耐摩耗性を考慮して、生物医学的用途のために適切に使用され得る。例えばソフトブロックとしてポリエーテル及びポリシロキサン、又はポリカーボネート及びポリシロキサンの組み合わせを含有するTPUは、独特の特性の組み合わせを示し、コーティングにおけるポリウレタンとして有利に使用され得る。実施形態において、ポリシロキサンソフトセグメントを含むこのようなTPUはさらに、オリゴマーポリシロキサン末端基を含む。このようなポリマーの市販の例としては、Carbosil(登録商標)TSPCU製品(DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)が挙げられる。
実施形態において、使用されるエラストマーは2つ以上のポリマーのブレンドであってもよく、任意選択的に、作製されるハイブリッドフィルムの標的の使用のために許容される1つ又は複数の通例の添加剤を含み得る。添加剤の例は、抗酸化剤、加工助剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤、着色剤、及び充填剤である。添加剤は、当該技術分野において知られているような通常有効な量、例えば、ポリマーの量を基準として0.01~5質量%、好ましくは0.01~1質量%の量で存在し得る。別の実施形態では、エラストマーは実質的にポリマーからなり、実質的に添加剤を含有しない。
米国特許第6652966号明細書及びComposites Science and Technology 61(2001)2371等のTeohらによる関連の刊行物には確かに、UHMWPE微細多孔質フィルム及びポリエーテルウレタンに基づいたハイブリッドフィルムが記載されている。しかしながら、米国特許第6652966号明細書に記載される方法では、微細多孔質フィルムの全ての相互接続細孔が含浸されて、細孔がTPUにより完全に充填され、非混和性ポリマーの相互貫通ネットワークがもたらされる;得られた半透明のフィルムは続いて、好ましくは約125℃の高温及び圧力下で加熱圧縮され、透明なフィルムが形成される。米国特許第6652966号明細書は、完全に充填された細孔を有するフィルムの光学特性及び引張特性について報告しているが、多孔質UHMWPEフィルムをTPUにより局所的にだけ含浸させることを開示又は示唆しておらず、局所的な改質が引裂き抵抗などの特性に与える潜在的な影響について言及していない。
国際公開第2009/063067号パンフレットには、UHMWPEフィルムの親水性及びその透水性を増大させることを目的として、フィルムの細孔を内部でコーティングするために微細多孔質UHMWPEフィルムをポリアミド溶液で含浸させることにより作製された微細多孔質膜が記載されている。この文献は、別のポリマーで局所的にだけ含浸された微細多孔質UHMWPEフィルムを開示しておらず、引裂き抵抗のような機械特性に関して言及していない。
他の態様において、本発明は、
a.多孔質ポリオレフィンフィルムを提供するステップと、
b.フィルム上の1つ又は複数の位置であって、フィルムの目的の使用の間に引裂きが起こる可能性の高い位置を特定するステップと、
c.特定されたフィルムの位置に、ある量のエラストマーの溶剤中の溶液を適用するステップと、
d.溶剤を実質的に除去するステップと
を含む、多孔質ポリオレフィンフィルムの引裂き抵抗を増大させる方法であって、フィルムの表面の0.02~40面積%を形成する1つ又は複数の隔離領域を有し、この領域において、フィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填されたハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムをもたらす方法を提供する。
多孔質ポリオレフィンフィルムの引裂き抵抗を増大させるこの方法の実施形態において、微細多孔質UHMWPEフィルムなどの、全ての変化形、好ましい及び任意選択的な特徴並びに代替物を含む多孔質ポリオレフィンフィルムは、微細多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムについて本明細書において上記で記載されたように提供される。
本方法は、フィルムの(目的の)使用中に負荷の下でこれらの位置において引裂きが開始又は発生する可能性が高いという意味で危機的である、フィルム上の位置又は領域を特定するステップb.を含む。当業者は、このような危機的な位置が、負荷の下で引裂きの伝播を開始又は容易にし得るクラック、切断部、孔、又は他の不規則さ若しくは欠陥が形成されているか、又は形成される可能性があるか、又は形成され得るフィルム上又はフィルム内の位置であり得ることに気付くであろう。危機的な位置の他の例は、フィルムの使用中に負荷の下で応力が比較的高くなるか又は集中し得る穿刺孔又は他のスポットであり得る。
本方法の実施形態において、当業者は、例えば、医療用デバイスの構成要素としてのフィルムの目的の使用の開発中に、例えば、文献調査を実施することによって、異なる負荷の下での応力分布のモデリングを含む、コンピュータ支援による設計及びモデリングを使用することによって、或いは既存のデバイス(例えば、カテーテル、ステント-グラフト、又は閉塞(occlusion)デバイスなどの医療用デバイス)において、及び/又は構成要素としてフィルムを含む試作品において、フィルムに引裂き又は他の損傷が生じた後の故障解析を含むいくつかの実験を行うことによって、フィルム上のこのような危機的な位置を特定し得る。
本発明の方法の次のステップc.では、特定されたフィルムの危機的な位置に、ある量のエラストマーの溶剤中の溶液が適用され、1つ又は複数の隔離領域においてフィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填されたハイブリッドフィルムが生じるように、微細多孔質フィルムを浸透及び含浸することができる。フィルムの特定の位置に適用される溶液の量は、例えば、処理される面積又は体積、溶液中のエラストマーの濃度、及び細孔内に少なくとも(且つ、例えば隔離領域における細孔体積によって限定されるような、最大で)付着されるエラストマーの量に依存し得る。一般に低いフィルムの厚さ、及び処理される比較的小さい位置又は隔離領域を考慮して、量は比較的少なくてよく、例えば、1つ又は複数の小滴でよい。このような量の溶液を局所的に適用するための適切な方法は、マイクロピペット又はシリンジの使用、噴霧、又はインクジェットアプリケータの使用を含み得る。マスク又はテンプレートを使用して、特定された位置及び/又は所望のパターンに溶液を適用することができる。また上記のように、ディップコーティングを適用して、フィルム片の1つ又は複数のエッジゾーンを含浸させることもできる。マイクロピペッテイングの場合、特定された位置に、より一定で再現可能に適用するために、液滴体積に対して広い開口部を有するピペット先端が好ましい。所望の量の溶液は1ステップで適用されてもよいが、例えば、1つの隔離(実質的に円形)スポットにおいて溶液を細孔に浸透させ、溶剤を蒸発させるためにステップ間に特定の時間をはさんで、より少量ずつ適用する複数ステップにおいて、或いはストライプ(長尺領域)を形成するために、互いにわずかに重複する又は隣接する複数の液滴の適用によって適用されてもよい。
特定されたフィルムの危機的な位置に、ある量のエラストマーの溶剤中の溶液を適用するステップc.では、エラストマーの溶液が使用される。特定された位置でエラストマーが細孔内に付着されるこのステップで使用するのに適したエラストマーは、好ましい熱可塑性ポリウレタンなどの、全ての変化形、好ましい及び任意選択的な特徴並びに代替物を含む、多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムについて本明細書において上記で記載されたエラストマーである。
前記適用ステップc.で適用されるエラストマーの溶液のための適切な溶剤は、エラストマーが実質的に又は好ましくは均一に溶解され得る溶剤であるが、ポリオレフィンは、少なくとも本方法を実施している間は、この溶剤中に溶解されない。当業者は、その一般的な知識に基づき、任意選択的に、例えば溶剤及びポリマーの溶解度パラメータに関する「ポリマーハンドブック」(Brandrup及びImmergut編)のようないくつかの文献に裏付けられて、所与のエラストマー及びポリオレフィンの組み合わせのための適切な溶剤を選択することができるであろう。また当業者は、ポリマーモル質量の溶解度に対する効果も認識している。エラストマーを含むポリマーのいわゆる良好な溶剤の場合、ポリマー鎖と溶剤分子との間の相互作用はエネルギー的に有利であり、ポリマーと溶剤との溶解度パラメータの違いは小さい。ポリオレフィンの非溶剤であるエラストマーの溶剤を見出す本発明の場合において、当業者は、本明細書において上記で記載されたようなエラストマーの大部分、特に熱可塑性エラストマー(のハードブロック)がやや極性の特性を有し、ポリオレフィンが通常無極性であることを理解するであろう。このような場合、例えば、攪拌又は音波処理に支援されて、任意選択的にいくらかの熱を加えることによって、エラストマーを溶解させることができる溶剤は、エラストマーの溶液がポリオレフィンフィルムに適用されるときにポリオレフィンを溶解しないと思われる。
特にエラストマーがポリウレタンブロックコポリマーである本方法の例示的な実施形態では、溶剤は、テトラヒドロフラン(THF)、メチル-テトラヒドロフラン(m-THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、ジオキソラン、これらの混合物、又はこれらと、他のあまり良好でない溶剤との混合物(このような混合物がエラストマー又はポリウレタンを溶解可能であることを条件とする)であり得る。溶液を適用するステップの後に溶剤をフィルムから除去することを考慮して、任意選択的にポリオレフィンの融点よりも少なくとも10℃低い温度へ加熱することにより蒸発によって溶剤が実質的に除去され得るような揮発性を有する溶剤が好ましい。この点で、THFは、TPUとの組み合わせで非常に適していると思われる。
ステップc.で適用される溶液中のエラストマーの濃度は重要ではなく、一般に、溶剤中のエラストマーの濃度は0.1~10質量%の範囲であり得る。しかしながら、実験では、溶液による細孔の含浸、したがってエラストマーによる細孔の充填は、溶液が比較的低粘度であれば、より容易に且つより再現可能に進行することが観察された。他方で、エラストマー濃度が高いほど、効果的な含浸又は細孔充填のために使用することが必要な溶液は少なくなる。したがって、実施形態において、エラストマーの溶液は約1~5000mPa.sのブルックフィールド粘度、又は好ましくは、少なくとも2、5、10又は15、且つ最大で3000、2000、1000、500、400、300、200、100、50又は25mPa.sの粘度を有する。
本方法のさらなるステップd.において、溶剤はフィルムから実質的に除去される。簡単且つ好ましい方法は、溶剤(又は溶剤混合物)を蒸発させることである。これは周囲条件で実施されてもよいが、効率を高めるために減圧及び/又は高温を適用することにより実施されてもよい。温度の上昇が使用される場合、例えば、ポリオレフィン材料の部分融解により生じるハイブリッドフィルムの特性の悪化を防止するために注意を払わなければならない。好ましくは、適用される温度は、ポリオレフィンの融解温度よりも十分に低い、例えば少なくとも10℃低いままである。任意選択的又は代替的に、溶剤を実質的に除去するために洗浄ステップが適用される。洗浄は、エラストマー及びポリオレフィンの非溶剤である洗浄溶剤を含む、又はからなる液体を用いて行うことができるが、洗浄溶剤は、エラストマーの溶剤と混和性である。このような洗浄ステップは周囲温度で実施することができるが、上記と同様の制約を受けて高温で実施することもできる。
微細多孔質ポリオレフィンフィルムの引裂き抵抗を増大させるための方法は、任意選択的に、得られたフィルムを、ポリオレフィンの融解温度よりも低温で圧縮するさらなるステップを含み得る。このような圧縮ステップは、種々の目的をもって実施され得る。ハイブリッドフィルムを圧縮すると、例えば、フィルム内の不均一性が低減されたり、適用されたエラストマーがより均一に分配されたり、又はハイブリッドフィルムの厚さが低減されたりし得る。圧縮ステップは、プラテンプレス又はカレンダーロールのような既知の装置を用いて実施され得る;そして、ステップd.の乾燥について上記したのと同様の制約を受けて高温で実行され得る。UHMWPEベースのフィルムの場合のような実施形態において、圧縮は、得られるフィルムの所望の量の圧縮及び/又は厚さに応じて約50~2000N/m2までの力を加えながら約20~145℃の温度で行われる。
(微細)多孔質ポリオレフィンフィルムの引裂き抵抗を増大させるための方法は、フィルムの表面の0.02~40面積%を形成する1つ又は複数の隔離領域を有し、この領域において、好ましい微細多孔質TPU/UHMWPEフィルムなどの、全ての変化形、好ましい及び任意選択的な特徴並びに代替物を含む上記のようなエラストマーにより、フィルム内の細孔が少なくとも部分的に充填されている、改質された多孔質ポリオレフィンフィルム(又は多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルム)をもたらす。
本発明のさらなる態様は、
a.多孔質ポリオレフィンフィルムを提供するステップと、
b.フィルム上の1つ又は複数の位置であって、フィルムの目的の使用の間に引裂きが起こる可能性の高い位置を特定するステップと、
c.特定されたフィルムの位置に、ある量のエラストマーの溶剤中の溶液を適用するステップと、
d.溶剤を実質的に除去するステップと
を含む、改質された多孔質ポリオレフィンフィルム又は多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムを作製する方法であって、フィルムの表面の0.02~40面積%を形成する1つ又は複数の隔離領域を有し、この領域において、フィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填されたハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムをもたらす方法に関する。この方法及び任意選択的なステップを操作する種々の手段及び好ましい手段及び実施形態は、改質又はハイブリッド多孔質ポリオレフィンフィルムについて、そして多孔質ポリオレフィンフィルムの引裂き抵抗を増大させる方法について本明細書において上記で記載されたものと十分に類似している。
またさらなる態様では、本発明は、特に、血管グラフト、閉塞デバイス、ステントカバー又はカテーテルバルーンのような血管用途などにおいて多孔質ハイブリッドフィルムが体内組織又は体液と接触するような使用のために、医療用インプラント又はデバイスの構成要素としてのこれらの多孔質ハイブリッドフィルムの使用に関する。
他の実施形態は、前記多孔質ハイブリッドフィルムが構成要素として使用される医療用デバイス又はインプラントの製造方法と、医療用デバイス又はインプラント、例えば、血管グラフト、閉塞デバイス、ステントカバー又はカテーテルバルーンのような血管デバイスとを含み、このデバイス又はインプラントは、前記(微細)多孔質ハイブリッドフィルムを含む。
本発明の記載との関連(特に、以下の特許請求の範囲との関連)での「a」及び「an」及び「the」という用語、並びに同様の指示対象の使用は、本明細書において他に記載されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、他に言及されない限り、オープンエンドの用語であると解釈されるべきである(すなわち「含むが、これらに限定されない(including,but not limited to)」を意味する)。本明細書中の値の範囲の詳述は単にその範囲に含まれる個別の各値を個々に参照する簡単な方法としての役割を果たすことが意図されるだけであり、個別の各値は本明細書中に個々に列挙されたかのように本明細書中に援用される。本明細書で提供される任意の全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など(such as)」又は「のような(like)」)の使用は単に本発明をより良く説明することが意図されるだけであり、他に特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の言語はどれも、任意の非特許請求要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものと解釈されてはならない。
本発明を実行するための本発明者らに知られている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。そのような好ましい実施形態の変化形は、上記の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変化形を必要に応じて利用することを予想している。したがって、本発明は、準拠法により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙される主題の全ての修正物及び等価物を含む。特定の任意選択的な特徴が本発明の実施形態として記載されるが、他に特に示されない限り、又は物理的に不可能でない限り、この記載は、これらの実施形態の全ての組み合わせを包含し、そして特に開示することが意図される。
上記の本発明の種々の実施形態及び態様を実施する方法は、一連の例示的な実施形態によってこれからさらに要約される。
1.多孔質ポリオレフィンフィルムを含む、又は多孔質ポリオレフィンフィルムである多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムであって、フィルムの表面の0.02~40面積%を形成する1つ又は複数の隔離領域において、ポリオレフィンフィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填された、多孔質ハイブリッドフィルム。
2.
a.多孔質ポリオレフィンフィルムを提供するステップと、
b.フィルム上の1つ又は複数の位置であって、フィルムの目的の使用の間に引裂きが起こる可能性の高い位置を特定するステップと、
c.特定されたフィルムの位置に、ある量のエラストマーの溶剤中の溶液を適用するステップと、
d.溶剤を実質的に除去するステップと
を含む、多孔質ポリオレフィンフィルムの引裂き抵抗を増大させる方法であって、フィルムの表面の0.02~40面積%を形成する1つ又は複数の隔離領域を有し、この領域において、フィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填されたハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムをもたらす、方法。
3.
a.多孔質ポリオレフィンフィルムを提供するステップと、
b.フィルム上の1つ又は複数の位置であって、フィルムの目的の使用の間に引裂きが起こる可能性の高い位置を特定するステップと、
c.特定されたフィルムの位置に、ある量のエラストマーの溶剤中の溶液を適用するステップと、
d.溶剤を実質的に除去するステップと
を含む、改質された多孔質ポリオレフィンフィルム又は多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムの製造方法であって、フィルムの表面の0.02~40面積%を形成する1つ又は複数の隔離領域を有し、この領域において、フィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填されたハイブリッドフィルムをもたらす、方法。
4.多孔質ポリオレフィンフィルムが、例えば、バイポリマー、ターポリマーなどを含む、モノマー単位として1つ又は複数のオレフィンを含有するホモポリマー及びコポリマーから選択される1つ又は複数のポリオレフィンから作製されている、実施形態1に従うハイブリッドフィルム又は実施形態2若しくは3に従う方法。
5.ポリオレフィンが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びこれらのコポリマー又はブレンド、例えば、中密度ポリエチレン、線状又は高密度ポリエチレン、エチレン及び1つ又は複数のアルファ-オレフィン(例えば、ブテン-1、ヘキセン-1、及びオクテン-1など)のコポリマー、線状低密度ポリエチレン、非常に低密度のポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン/プロピレンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブチレン、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、及びアイオノマーから選択される、実施形態1に従うハイブリッドフィルム又は実施形態2若しくは3に従う方法。
6.ポリオレフィンがポリエチレン又はポリプロピレンホモポリマーであり、好ましくは、ポリオレフィンが、高分子量ポリエチレン(HMWPE)又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のような線状ポリエチレンである、実施形態1及び4~5のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~5のいずれか1つに従う方法。
7.ポリオレフィンが4~40dL/gの間の固有粘度(IV)を有するUHMWPEであり、好ましくは、IVが少なくとも5、6、7又は8dL/gであり、且つ最大で30、25、20、18、16又はさらに最大で14dL/gである、実施形態1及び4~6のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~6のいずれか1つに従う方法。
8.UHMWPEが、エチレンと共重合可能である5mol%までの1つ又は複数の他のアルケン、例えば、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチルペンテン、1-ヘキセン及び/又は1-オクテンのようなC3~C12又はC3~C8アルケンを任意選択的に含有する線状ポリエチレンである、実施形態1及び4~7のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~7のいずれか1つに従う方法。
9.UHMWPEが、25質量%までの別のポリオレフィンを含むブレンドである、実施形態1及び4~8のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~8のいずれか1つに従う方法。
10.多孔質ポリオレフィンフィルムが、30~95体積%、好ましくは、少なくとも40、50、60、70又は80体積%、且つ最大で92、90又は88体積%の多孔度と、キャピラリフローポロメータを用いて決定したときに0.05~10μm、好ましくは、少なくとも0.1又は0.5μm、且つ最大で8又は5μmである細孔サイズとを有する、実施形態1及び4~9のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~9のいずれか1つに従う方法。
11.ハイブリッドフィルムが、0.5~50μm、好ましくは、最大で1、2又は3μm、且つ最大で40、30、20、15又は10μmの厚さを有する、実施形態1及び4~10のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~10のいずれか1つに従う方法。
12.隔離領域が、最大で直径約5mmの実質的に円形スポット、最大で平均幅約5mmの非円形スポット、又は最大で幅5mmの長尺ストライプであり、好ましくは、隔離領域が、最大で4、3、2又は1.0mm、且つ少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5mmの直径又は幅を有する、実施形態1及び4~11のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~11のいずれか1つに従う方法。
13.隔離領域における細孔の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、又は90体積%がエラストマーにより充填されているか、或いは細孔がエラストマーにより実質的に充填されている、実施形態1及び4~12のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~12のいずれか1つに従う方法。
14.エラストマー溶液が中間の乾燥を伴う複数のステップで適用される、実施形態2~12のいずれか1つに従う方法。
15.隔離領域がハイブリッドフィルムの最大で35、30、25、20、15、10、5又は2.5面積%、且つ少なくとも0.05、0.1、0.2、0.5又は1面積%を形成する、実施形態1及び4~13のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~14のいずれか1つに従う方法。
16.ハイブリッドフィルムが、30~95体積%、好ましくは、少なくとも50、60、70又は80体積%、且つ最大で90又は85体積%の多孔度を有する、実施形態1及び4~15のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~15のいずれか1つに従う方法。
17.1つ又は複数の隔離領域が、非改変ポリオレフィンフィルムがハイブリッドフィルムの目的の使用の間に負荷の下で引裂きが起こる可能性の高い危機的な位置であり、危機的な位置が、例えば、引裂きの伝播を開始又は容易にし得るクラック、切断部、孔、又は他の不規則さ若しくは欠陥であるか、又はハイブリッドフィルムの使用中に負荷の下で応力が比較的高くなるか又は集中し得る位置である、実施形態1及び4~16のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~16のいずれか1つに従う方法。
18.エラストマーが溶剤に可溶である、実施形態1及び4~17のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~17のいずれか1つに従う方法。
19.エラストマーが、好ましくはハード及びソフトポリマーブロックを含むブロックコポリマーに基づく、熱可塑性エラストマー(TPE)である、実施形態1及び4~18のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~18のいずれか1つに従う方法。
20.エラストマーが、35℃よりも高い融解温度(Tm)又はガラス転移温度(Tg)を有する硬い又は高モジュラスポリマーを含むハードブロック、好ましくは、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリウレタン及びポリオレフィンからなる群から選択されるポリマーを含むハードブロックを含むTPEである、実施形態1及び4~19のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~19のいずれか1つに従う方法。
21.エラストマーが、25℃よりも低い、好ましくは0℃よりも低いTgを有する可撓性の非晶質ポリマーを含むソフトブロックを含むTPEであり、好ましくは、ソフトブロックが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン及びポリシロキサン(又はシリコーン)又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、実施形態1及び4~20のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~20のいずれか1つに従う方法。
22.エラストマーが、コポリエステルエステル、コポリエーテルエステル、及びコポリカーボネートエステル(ここで、ハードブロックは、好ましくは、ポリブチレンテレフタレートのような半芳香族ポリエステルに基づく);コポリエステルアミド及びコポリエーテルアミド;エチレン-プロピレンブロックコポリマー;スチレン-エチレン-ブタジエンブロックコポリマー(SEBS);スチレン-イソブチレンブロックコポリマー(SIBS);並びにジイソシアナート及び鎖延長剤に基づくハードブロックと、脂肪族ポリエステル、ポリエーテル及び/又はポリシロキサンに基づくソフトブロックとを含むポリウレタンから選択されるブロックコポリマーである、実施形態1及び4~21のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~21のいずれか1つに従う方法。
23.エラストマーが、ジイソシアナート、ジオール鎖延長剤、ポリマージオールソフトブロック、及び任意選択的に、鎖延長剤としてのジアミン、及び/又は末端基としての単官能性化合物から得られる熱可塑性ポリウレタン(TPU)である、実施形態1及び4~22のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~22のいずれか1つに従う方法。
24.TPUが、芳香族、脂肪族又は脂環式ジイソシアナート化合物、好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート(TDI)、1,4-フェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、テトラメチレン-1,4-ジイソシアナート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート(HMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)から選択される少なくとも1つのジイソシアナートを含む、実施形態23に従うハイブリッドフィルム又は方法。
25.ジイソシアナートが、ヘキサメチレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、又はこれらの混合物からなる、実施形態23又は24に従うハイブリッドフィルム又は方法。
26.ジイソシアナートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、1,4-フェニレンジイソシアナート、又はこれらの混合物からなる、実施形態23又は24に従うハイブリッドフィルム又は方法。
27.TPUが、ヒドロキシル又はアミン基を有する二官能性鎖延長剤を含み、好ましくは、鎖延長剤が、少なくとも60g/mol、少なくとも70g/mol、少なくとも80g/mol、少なくとも90g/mol、又は少なくとも100g/mol、且つ最大で500g/mol、最大で400g/mol、最大で300g/mol、最大で200g/mol、又は最大で150g/molのモル質量を有する、実施形態23~26のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
28.TPUが、鎖延長剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、若しくは1,8-オクタンジオール、及び/又はこのような対応するジアミンから選択される少なくとも1つの化合物を含む、実施形態23~27のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
29.TPUが、ウレタン及び尿素結合の両方を有するハードブロックを含む、実施形態23~28のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
30.TPUが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン及びポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族ポリマージオールから誘導されるソフトブロックを含む、実施形態23~29のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
31.TPUが、ソフトブロックとして、脂肪族ポリエステルジオール、脂肪族ポリエーテルジオール、ポリ(イソブチレン)ジオール及びポリシロキサンジオールから選択される少なくとも1つを含む、実施形態23~30のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
32.TPUが、約160~10,000Da、好ましくは約200~2,000Daのモル質量を有するハードブロックを含む、実施形態23~31のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
33.TPUが、約200~100,000Da、好ましくは約400~9000Daのモル質量を有するソフトブロックを含む、実施形態23~32のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
34.TPUが、ソフトブロックとして、ポリ(プロピレンオキシド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール又はこれらのコポリマーのような脂肪族ポリエーテルを含む、実施形態23~33のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
35.TPUが、ソフトブロックとして、脂肪族ポリエステル、好ましくは、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールのような脂肪族ポリカーボネートを含む、実施形態23~34のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
36.TPUが、ソフトブロックとして、例えば、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール及びポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールから誘導される、脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリカーボネートの組み合わせを含有する、実施形態23~35のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
37.TPUが、ソフトブロックとして、脂肪族ポリエーテル又はポリカーボネート及びポリシロキサンの組み合わせを含有する、実施形態23~35のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
38.エラストマーが、成形時乾燥サンプルにおいてA又はDスケールを用いてショア試験で測定したときに、少なくとも40、50又は60ShA、且つ最大で80若しくは75ShD、又は最大で90、85、80若しくは75ShAのデュロメータ硬度を有するTPE又はTPUである、実施形態1及び4~37のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~37のいずれか1つに従う方法。
39.TPUが1つ又は複数の無極性末端基を含み、好ましくは、TPUが平均約2個の無極性末端基を含む、実施形態23~38のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
40.無極性末端基が、C2~C20アルキル、C2~C16フルオロアルキル、C2~C16フルオロアルキルエーテル、ポリ(アルキレンオキシド)又はポリシロキサン(これらのコポリマーを含む)を含む、実施形態39に従うハイブリッドフィルム又は方法。
41.無極性末端基がポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(テトラメチレンオキシド)又はこれらのコポリマーである、実施形態39又は40に従うハイブリッドフィルム又は方法。
42.無極性末端基が、ポリ(ジメチルシロキサン)オリゴマーのようなポリシロキサンである、実施形態39又は40に従うハイブリッドフィルム又は方法。
43.末端基が、C2~C20アルキル、C2~C16フルオロアルキル又はC2~C16フルオロアルキルエーテル、好ましくは、C5~C20アルキル、C5~C16フルオロアルキル又はC5~C16フルオロアルキルエーテルを含む、実施形態39又は40に従うハイブリッドフィルム又は方法。
44.末端基が、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン-1-オール、1H,1H-ノナフルオロ-1-ペンタノール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘキシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘプチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-オクチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ノニルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-デシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ウンデシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ラウリルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ミリスチルアルコール、又は1H,1H-ペルフルオロ-1-パルミチルアルコールから形成される、実施形態43に従うハイブリッドフィルム又は方法。
45.無極性末端基が単量体であり、少なくとも200、300又は500g/mol、且つ最大で1,000又は800g/molのモル質量を有する、実施形態39~44のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
46.末端基が重合体であり、最大で10,000、8,000、6,000又は4,000g/mol、且つ少なくとも500、1,000又は2,000g/molのモル質量を有する、実施形態39~44のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
47.無極性末端基が、ポリウレタンの総質量を基準として少なくとも0.1、0.2、0.3又は0.5質量%の量、且つポリウレタンの総質量を基準として最大で3、2又は1質量%の量で存在する、実施形態39~46のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
48.TPUが、トルエンジイソシアナート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)のような芳香族ジイソシアナートと、1,4-ブタンジオールのような低モル質量脂肪族ジオールと、脂肪族ポリカーボネートジオール、脂肪族ポリカーボネートジオール及びポリシロキサンジオールの組み合わせ、又は脂肪族ポリエーテルジオール及びポリシロキサンの組み合わせとに基づく、実施形態23~47のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム又は方法。
49.エラストマーが2つ以上のポリマーのブレンドであり、任意選択的に、抗酸化剤、加工助剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤、着色剤、及び充填剤のような1つ又は複数の通例の添加剤を含む、実施形態1及び4~48のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~48のいずれか1つに従う方法。
50.エラストマーが実質的にポリマーからなり、実質的に添加剤を含有しない、実施形態1及び4~48のいずれか1つに従うハイブリッドフィルム、又は実施形態2~48のいずれか1つに従う方法。
51.ステップb.が、負荷の下で応力が比較的高くなるか又は集中し得る穿刺孔又は他のスポットを含む、負荷の下で引裂きの伝播を開始又は容易にし得るクラック、切断部、孔、又は他の不規則さ若しくは欠陥が存在するか、又は形成される可能性のある危機的な位置を特定することを含む、実施形態2~50のいずれか1つに従う方法。
52.ステップc.が、特定されたフィルムの危機的な位置に、ある量のエラストマーの溶剤中の溶液を適用し、1つ又は複数の隔離領域においてフィルム内の細孔がエラストマーにより少なくとも部分的に充填されたハイブリッドフィルムが形成されるように、溶液が微細多孔質フィルムを浸透及び含侵できるようにすることを含む、実施形態2~51のいずれか1つに従う方法。
53.エラストマー溶液が、マイクロピペット又はシリンジを用いて、噴霧により、インクジェットアプリケータにより、又はディップコーティングにより、任意選択的に、所望のパターンのマスク又はテンプレートを用いて適用される、実施形態2~52のいずれか1つに従う方法。
54.エラストマーの溶液が1ステップで適用されるか、或いは、溶液を細孔に浸透させ、溶剤を蒸発させるためにステップ間に特定の時間をはさんで、複数ステップにおいて適用される、実施形態2~53のいずれか1つに従う方法。
55.溶剤が、実質的にエラストマーを溶解し得るが、本方法の実施中、ポリオレフィンを溶解しない、実施形態2~54のいずれか1つに従う方法。
56.溶剤が、テトラヒドロフラン(THF)、メチル-テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジオキソラン、これらの混合物、及びこれらと、他のあまり良好でない溶剤との混合物から選択される、実施形態2~55のいずれか1つに従う方法。
57.エラストマーがTPUであり、溶剤がTHFである、実施形態2~56のいずれか1つに従う方法。
58.溶液が溶剤中に0.1~10質量%のエラストマーを含む、実施形態2~57のいずれか1つに従う方法。
59.エラストマー溶液が、約1~5000mPa.s、好ましくは、少なくとも2、5、10又は15、且つ最大で3000、2000、1000、500、400、300、200、100、50又は25mPa.sのブルックフィールド粘度を有する、実施形態2~58のいずれか1つに従う方法。
60.ステップe.において、任意選択的にポリオレフィンの融点よりも少なくとも10℃低い温度へ加熱することにより、蒸発によって溶剤が実質的に除去される、実施形態2~59のいずれか1つに従う方法。
61.ステップe.が任意選択的又は代替的に、好ましくは、エラストマー及びポリオレフィンの非溶剤であるが、エラストマーの溶剤と混和性である洗浄溶剤を含む、又はからなる液体を用いて、実質的に溶剤を除去するために洗浄ステップを含む、実施形態2~60のいずれか1つに従う方法。
62.得られたフィルムを、ポリオレフィンの融解温度よりも低温で圧縮するステップをさらに含む、実施形態2~61のいずれか1つに従う方法。
63.ポリオレフィンフィルムがUHMWPEに基づき、圧縮が、約50~2000N/m2までの力を加えながら約20~145℃の温度で行われる、実施形態62に従う方法。
64.実施形態1~63のいずれか1つに記載される、又は実施形態1~63のいずれか1つによって得られる多孔質ハイブリッドエラストマー/ポリオレフィンフィルムの、医療用インプラント又はデバイスの構成要素としての使用、好ましくは、例えば、血管グラフト、閉塞デバイス、ステントカバー又はカテーテルバルーンのような血管用途においてハイブリッドフィルムが体内組織又は体液と接触するような使用。
65.実施形態1~63のいずれか1つに記載される、又は実施形態1~63のいずれか1つによって得られる多孔質ハイブリッドフィルムを、医療用デバイス又はインプラント、例えば、血管グラフト、閉塞デバイス、ステントカバー又はカテーテルバルーンのような血管デバイスの構成要素として使用することを含む医療用デバイス又はインプラントの製造方法。
66.医療用デバイス又はインプラント、例えば、血管グラフト、閉塞デバイス、ステントカバー又はカテーテルバルーンのような血管デバイスであって、実施形態1~63のいずれか1つに記載される、又は実施形態1~63のいずれか1つによって得られる多孔質ハイブリッドフィルムを含む、デバイス又はインプラント。
以下の実験及びサンプルは本発明の実施形態をさらに明らかにするが、当然ながら、多少なりとも特許請求の範囲を限定すると解釈されてはならない。
[実施例及び比較実験]
[方法]
[フィルム厚]
フィルムの厚さは、ISO4593に従って、較正された機械式厚さスキャナ、タイプMillitron 1234-ICを用いて測定される。厚さスキャナは、平らな下部表面と、下部表面に平行であり、直径11.3mm(100mm2)を有する平らな上部測定表面とを有する。タイプMahr P2004MAの測定末端上の総負荷は0.75Nである。
[細孔サイズ]
多孔質膜の平均細孔サイズ値は、ISO5636-5に従ってGurley試験法を用いて測定されるGurley空気透過率値から得ることができ、これはs/50mlで表され、Gurley数で1.77を割ることによりμmに換算される。フィルムの平均細孔サイズ値は、キャピラリフローポロメータを用いて、圧力を増大させてガスを適用することによる細孔からの湿潤液の変位に基づいて決定することもできる。このような方法は、細孔が円柱形状を有し、膜をまっすぐ通り抜けると仮定する。
[エラストマー溶液の粘度]
25℃における溶液粘度は、UL-アダプター及びULA-49EAYスピンドルを有するBrookfield DV-E粘度計を用いて決定され、これは、シリコーン系粘度標準物(Benelux Scientific)を用いて較正される。
[引裂き抵抗]
引裂き抵抗は、約200*50mmの矩形フィルムサンプルにおいて三重に実施される、周囲条件でのトラウザー引裂き試験を用いて測定した。この試験では、ISO13937-2に基づいて、幅の中心から始まる100mmの長手方向のスリットを作製してトラウザーを形成した。トラウザーの各脚をZwick Z010引張試験機の対向するクランプに固定し、100mm/分で破損するまで負荷をかけた。
[実験CE1及びEx2]
これらの(及び次の)実験でベースフィルムとして使用される多孔質ポリオレフィンフィルムは、約15μmの厚さ、83体積%の多孔度、及び約1μmの平均フロー細孔サイズを有する、医療グレードの二軸延伸された微細多孔質UHMWPE膜である(DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能なDyneema Purity(登録商標)膜)。
まずポリウレタンペレットを70℃で一晩乾燥させ、次に、THF及びペレットを室温で一晩攪拌することにより、ショア硬度80ShAの熱可塑性シリコーン-ポリカーボネートウレタン(DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能なCarbosil(登録商標)TSPCU)のTHF(Lichrosolve)中の10質量%溶液を調製した。この溶液は、478mPa.sのブルックフィールド粘度を有することが分かった。
マイクロピペットを用いて、5つのUHMWPEフィルム片のほぼ中心に1滴のポリウレタン溶液を適用し、サンプルを空気中で乾燥させた。乾燥スポットは約1mmの直径を有した。これは、試験したフィルム片の1面積%未満を占める。
続いて、膜片を針で穿刺し、適用されたスポットの中央に直径約0.2mmの孔を生じさせた。同様に、未処理の5つのUHMWPEフィルム片を針で穿刺した。次に、引裂き挙動の変化の最初の所見を得るために、フィルムの縦方向に手動で、これらの穿刺サンプルに応力を負荷した。天然のUHMWPEフィルムが全ての場合に穿刺孔を引き裂いた(比較実験1)のに対して、ポリウレタン含浸スポットが設けられたフィルム(実施例2)はランダムに裂けて、穿刺孔を引き裂かないことが分かった。これらの表示試験は、少なくとも、負荷における引裂きが危機的であることが分かった位置において熱可塑性ポリウレタンにより微細多孔質UHMWPEフィルムを局所的に含浸させると、微細多孔質フィルムの引裂き挙動及び/又は引裂き抵抗が著しく変化し、恐らく改善されることを強く示唆する。
図2A及び図2Bには、穿刺され、引き裂かれたフィルムの写真が示されており、図2Aは、非改質フィルム(CE1)を示し、図2Bは、局所的に含浸されたUHMWPEフィルム(Ex2)を示す。
[実験CE3及びEx4]
これらの実験では、無極性末端基及びショア硬度80ShAを有する熱可塑性ポリカーボネートウレタンの3質量%のTHF溶液(DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能なBionate(登録商標)II PCU)を、上記と同様に作製した。作製した溶液は、約22mPa.sのブルックフィールド粘度を有した。
いくつかの方向付け実験に基づいて、より再現可能な含浸スポット、すなわち微細多孔質UHMWPEフィルム上に1滴のポリウレタン溶液を適用することから得られるスポットのサイズ及び形態は、狭い先端又は皮下針のような先端を用いるよりも、比較的広い先端開口部を有するマイクロピペットを用いて小滴を適用することで得られることが分かった。このような手順を用いて、トラウザー引裂き試験のためにUHMWPEフィルムサンプル内に作製されたスリットの端部に3滴の約0.5μlのポリウレタン溶液を置き、空気中室温で乾燥させた。乾燥したスポットは、約2mmの直径を有した。
ポリウレタンスポットにおけるフィルムのモルホロジーは、フィルムの断面においてSEMにより評価した。画像は、繊維状材料の間の細孔が(ポリウレタン)材料によりほぼ完全に充填されることを明白に示した。
天然UHMWPEフィルム(比較実験3)のトラウザー引裂き試験の結果は、サンプルをその全長(約100mm)にわたって引き裂くために低く且つほぼ一定の力を示した。ポリウレタンを局所的に含浸させたフィルムサンプル(実施例4)を引き裂くために必要な力は、天然フィルムの場合よりも実質的に高かった。特に、最初の25mmの引裂きにおいて、測定された力のピークは、非改質フィルムの平均値の約20倍までであった。これらの結果は、負荷がかけられたときに多孔質フィルムサンプルの引裂きに対する危機的な位置にある比較的小さく隔離されたスポットにおいて、フィルムの細孔内にポリウレタンを適用することによる引裂き抵抗の増大の有効性を実証する。