以下、発明を実施するための形態(以下、これを実施の形態と呼ぶ)について、図面を用いて詳細に説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.持参薬鑑別システムの全体構成]
まず図1を用いて、第1の実施の形態による持参薬鑑別システム1の全体構成について簡単に説明する。この持参薬鑑別システム1は、病院や薬局などの医療機関に導入され、患者が持参した他の医療機関で処方された薬(以下、これを持参薬と呼ぶ)を鑑別するシステムである。この持参薬鑑別システム1は、USBなどのインタフェースで接続された制御装置2と撮影装置3とで構成される。
制御装置2は、持参薬鑑別システム1全体を制御するコンピュータであり、本体部20と、本体部20に接続された表示部21と操作部22とを有している。表示部21は液晶ディスプレイなどであり、操作部22は、キーボードやマウスなどである。
撮影装置3は、持参薬としての薬剤を撮影する装置であり、箱型の装置筐体30を有している。装置筐体30の前面には、上下方向の中央部にトレイ排出口31が設けられている。撮影装置3は、このトレイ排出口31からトレイ(図1では省略)を前方に排出することで、トレイを装置筐体30外部に露出することができ、また前方に排出したトレイを後方に引き戻すことで、トレイを装置筐体30内部に収容できるようになっている。尚、トレイ排出口31には、トレイ排出時には開き、トレイ収容時には閉じるシャッタ32が設けられている。持参薬鑑別システム1の構成は、以上のようになっている。
ここで、持参薬鑑別システム1の大まかな動作について簡単に説明する。まず薬剤師などの操作者(オペレータ)が、制御装置2を操作して、撮影装置3のトレイの排出を指示する。持参薬鑑別システム1では、この指示にしたがって、撮影装置3がトレイ排出口31からトレイを排出する。ここで操作者は、装置筐体30外部に露出しているトレイ上に鑑別したい薬剤(つまり患者の持参薬)を載置する。
そして操作者は、制御装置2を操作して、トレイ上に載置した薬剤の鑑別を指示する。持参薬鑑別システム1は、この指示にしたがって、撮影装置3がトレイを後方に引き戻してトレイを装置筐体30内部に収容し、装置筐体30内部に有するカメラ(図1では省略)でトレイ上の薬剤を撮影する。さらに持参薬鑑別システム1は、薬剤を撮影して得られた画像を、撮影装置3から制御装置2へと送る。制御装置2は、撮影装置3から送られてきた画像を用いて、薬剤の鑑別を行い、鑑別結果を表示部21に表示する。持参薬鑑別システム1の大まかな動作は、以上のようになっている。
[1-2.撮影装置の構成]
[1-2-1.撮影装置の外観構成]
次に、撮影装置3の構成について詳しく説明する。まず図2(A)、(B)を用いて、撮影装置3の外観構成について説明する。尚、図2(A)、(B)は、それぞれ撮影装置3の外観を装置筐体30の前面側から見た斜視図であり、図2(A)はトレイ収容時、図2(B)はトレイ排出時の斜視図となっている。ここで、装置筐体30の前面から後面への方向を後方向、後面から前面への方向を前方向、装置筐体30の下側から上側への方向を上方向、装置筐体30の上側から下側への方向を下方向、装置筐体30の右側から左側への方向を左方向、装置筐体30の左側から右側への方向を右方向と定義する。
図2(A)、(B)に示すように、撮影装置3の装置筐体30は、装置筐体30の天井部を形成する天井カバー33と、装置筐体30の前面上部を形成する前カバー34と、装置筐体30の前面下部を形成するとともに前方に引き出すことが可能な引き出し35とを有している。
前カバー34の下部には、トレイ排出口31とシャッタ32が設けられていて、図2(B)に示すように、シャッタ32が開いてトレイ排出口31からトレイ40の一部が排出されるようになっている。尚、トレイ40は、透明な板状部材(例えばガラス板)でなる受け皿41を有していて、トレイ排出口31から排出されたときに、少なくともこの受け皿41を装置筐体30外部に露出させ、この受け皿41上に薬剤を載置できるようになっている。
またこの前カバー34は、前面上部の左右両端に設けられたネジ36を外すことで、装置筐体30から取り外すことができるようにもなっている。撮影装置3は、装置筐体30からこの前カバー34を取り外すことで、操作者などが装置筐体30内部にアクセスできるようになっている。
引き出し35は、前板部35fのみが装置筐体30外部に露出するようにして装置筐体30内部に収容され、このとき、底板部(図2では省略)が装置筐体30内部の最下端に位置するようになっている。撮影装置3は、装置筐体30内部でトレイ40から薬剤がこぼれ落ちてしまった場合に、この薬剤が引き出し35の底板部へと落下する構造(詳しくは後述する)になっていて、操作者が引き出し35を引き出すことで、トレイ40からこぼれ落ちてしまった薬剤を取り出すことができるようになっている。撮影装置3の外観構成は、以上のようになっている。
[1-2-2.撮影装置の内部構成]
次に、図3(A)、(B)、図4(A)、(B)、図5を用いて、撮影装置3の内部構成について説明する。尚、図3(A)は、撮影装置3内部を装置筐体30の前面側から見た斜視図であり、図3(B)は、撮影装置3内部を装置筐体30の後面側から見た斜視図である。また図4(A)は、撮影装置3内部を装置筐体30の前面と平行な平面で切断した断面図であり、図4(B)は、撮影装置3内部を装置筐体30の右側面と平行な平面で切断した断面図である。さらに図5は、撮影装置3内部の主要部のみを装置筐体30の前面側から見た正面図である。これら図3乃至図5は、一部を省略したり透視したりした図となっている
図3(A)、図4(A)、(B)、図5に示すように、撮影装置3の装置筐体30内部には、上下方向の中央部(つまりトレイ排出口31の奥)に、トレイ40とトレイ40を前後方向に移動可能に支持する部品などとで構成されるトレイAssyユニット50が設けられている。さらに装置筐体30内部に収容されたトレイ40の上方には、上から順に、上側カメラ51、上側カメラ51に取り付けられたレンズ52、上側第1照明53、上側第2照明54が設けられている。一方、トレイ40の下方には、下から順に、下側カメラ55、下側カメラ55に取り付けられたレンズ56、下側第1照明57、下側第2照明58が設けられている。
これら撮影装置3の主要部は、装置筐体30の左側面を形成する左フレーム60s1と、右側面を形成する右フレーム60s2と、装置筐体30の後面に近接する後フレーム60bとで囲まれる空間に設けられている。
トレイAssyユニット50は、左フレーム60s1、右フレーム60s2、及び後フレーム60bに対して、受け皿41が水平となるように固定されている。尚、このトレイAssyユニット50の構成について詳しくは後述する。
上側カメラ51は、トレイ40の透明な受け皿41に載置された薬剤を上方から撮影するカメラであり、左フレーム60s1、右フレーム60s2、及び後フレーム60bなどに、ブラケット61を介して固定されている。具体的に、この上側カメラ51は、レンズ52から延びる光軸A1が水平な受け皿41に対して垂直となる向きで固定されている。
一方、下側カメラ55は、トレイ40の透明な受け皿41に載置された薬剤を下方から撮影するカメラであり、左フレーム60s1、右フレーム60s2、及び後フレーム60bなどに、ブラケット65を介して固定されている。具体的に、この下側カメラ55も、レンズ56から延びる光軸A2が受け皿41に対して垂直となる向きで固定されている。さらに、上側カメラ51と下側カメラ55は、それぞれの光軸A1、A2が一致する(重なる)ようにして固定されている。
上側カメラ51及び下側カメラ55は、それぞれレンズ52及びレンズ56を介して、受け皿41の上面側にピントが合うように(つまり受け皿41の上面に載置された薬剤にピントが合うように)高さ方向の位置が調整されている。
上側第1照明53は、上側カメラ51の撮影範囲の外側に位置するリング状の照明であり、左フレーム60s1、右フレーム60s2、及び後フレーム60bなどに、ブラケット63を介して固定されている。この上側第1照明53は、例えばLEDを光源とする照明であり、撮影時にトレイ40の受け皿41に対して、上方から垂直方向に(つまり上方から上側カメラ51の光軸A1と平行な方向に)光を照射するようになっている。
上側第2照明54は、上側カメラ51の撮影範囲の外側に位置するとともに、上側第1照明53の外径より大きな内径を有するリング状の照明であり、左フレーム60s1、右フレーム60s2、及び後フレーム60bなどに、ブラケット64を介して固定されている。この上側第2照明54は、例えばLEDを光源とする照明であり、図6にトレイ40周辺を装置筐体30の前面と平行な平面で切断した拡大断面図を示すように、トレイ40の受け皿41に対して、上方から上側カメラ51の光軸A1へと向かう斜め方向(図中矢印Ar1で示す方向)に光を照射するようになっている。
一方、下側第1照明57は、下側カメラ55の撮影範囲の外側に位置するリング状の照明であり、左フレーム60s1、右フレーム60s2、及び後フレーム60bなどに、ブラケット67を介して固定されている。この下側第1照明57も、例えばLEDを光源とする照明であり、撮影時にトレイ40の受け皿41に対して、下方から垂直方向に(つまり下方から下側カメラ55の光軸A2と平行な方向に)光を照射するようになっている。
下側第2照明58は、下側カメラ55の撮影範囲の外側に位置するとともに、下側第1照明57の外径より大きな内径を有するリング状の照明であり、左フレーム60s1、右フレーム60s2、及び後フレーム60bなどに、ブラケット68を介して固定されている。この下側第2照明58は、例えばLEDを光源とする照明であり、図6に示すように、トレイ40の受け皿41に対して、下方から下側カメラ55の光軸A2へと向かう斜め方向(図中矢印Ar2で示す方向)に光を照射するようになっている。
さらに、図3(B)に示すように、撮影装置3の装置筐体30内部には、後フレーム60bの後側に、トレイ40の位置をコントロールするトレイコントロール基板70と、上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、及び下側第2照明58の点灯をコントロールする照明コントロールユニット71と、撮影装置3の各部に電力を供給する照明電源ユニット72及び基板電源ユニット73とが設けられている。
さらに、図4(B)に示すように、後フレーム60bは、後側に各種ユニットを配置する必要最小限のスペースを設ける為に、装置筐体30の後面と平行な下側平面部60b1が、装置筐体30の後面と平行な上側平面部60b2より前方に突出した形状となっている。さらに後フレーム60bは、上側平面部60b2と下側平面部60b1とを繋ぐ中間平面部60b3が、上側平面部60b2から下側平面部60b1へ向かって傾斜する傾斜面となっている。具体的に、中間平面部60b3は、水平面(装置筐体30の底面)に対して35度以上の角度θを有する傾斜面となっている。
図7に、撮影装置3を装置筐体30の右側面と平行な平面で切断した断面図を示すように、この中間平面部60b3は、トレイ40より下方に位置していて、トレイ40からこの中間平面部60b3上へと薬剤がこぼれ落ちてきた場合に、この薬剤を滑らせるようにしてさらに下方の引き出し35の底板部35bへと案内するようになっている。別の言い方をすると、後フレーム60bは、中間平面部60b3が段差部分となっているが、この段差部分(つまり中間平面部60b3)が下方へと下るスロープ形状になっている為、段差部分へと落ちてきた薬剤を、段差部分にとどまらせることなく、下方の引き出し35の底板部35bへと案内するようになっている。こうすることで、撮影装置3は、トレイ40から段差部分となる中間平面部60b3上にこぼれ落ちてきた薬剤が中間平面部60b3上にとどまって操作者が取り出せなくなる状況を回避することができる。
さらに撮影装置3は、引き出し35を引き出した際に、トレイ40の下方に位置する下側第2照明58と、これを支持するブラケット68とが装置筐体30の外部に露出するようになっている。こうすることで、トレイ40から下側第2照明58上もしくはブラケット68上へと薬剤がこぼれ落ちた場合、作業者は、引き出し35を引き出すことで、この薬剤を見つけて容易に取り出すことができる。
ここで、図8(A)、(B)を用いて、トレイAssyユニット50の構成についてさらに詳しく説明する。尚、図8(A)は、トレイ収容時のトレイAssyユニット50の上面図であり、図8(B)は、トレイ排出時のトレイAssyユニット50の上面図である。
図8(A)、(B)に示すように、トレイAssyユニット50は、トレイ40と、モータ80と、第1位置センサ81と、第2位置センサ82と、左シャフト83s1と、右シャフト83s2と、駆動ベルト84と、遮蔽板85とを、ベースフレーム86に組み付けた構成となっている。
図8(A)、(B)にくわえて、図9(A)、(B)に上面側及び下面側の斜視図を示すように、トレイ40は、全体として薄板状の部材であり、長方形板状の本体部40mと、本体部40mの左右両側面の後端部から、左右両側面に対して直交する左右方向に突出する突起部40s1、40s2とを有している。
トレイ40の本体部40mには、左右の突起部40s1、40s2よりも前側に、本体部40mを厚さ方向に貫通する四角形状の孔40hが設けられている。さらに本体部40mには、この孔40hの厚さ方向の中央部分に、この孔40hを塞ぐようにして、四角形状のガラス板で形成された受け皿41が取り付けられている。具体的に、受け皿41は本体部40mの孔40hより一回り大きく、また本体部40mの下面側には、孔40hの周囲に本体部40mの下面に対して窪んだ窪み40dが形成されている。
トレイ40は、本体部40mの下面側に、孔40hを塞ぐようにして窪み40dに受け皿41を嵌め込み、さらに受け皿41の縁(孔40hの外側にはみ出ている部分)を窪み40dの底部と、窪み40dに沿った四角枠形状の固定板42とで挟み込んだ状態で、本体部40mと固定板42とをネジなどで固定することにより、受け皿41が取り付けられている。
さらにトレイ40は、図9(A)に示すように、本体部40mの上面と、この上面に対して窪んだ位置にある受け皿41の上面との間の壁面40wが、トレイ40の上面から受け皿41の上面へ向かって傾斜する傾斜面(スロープ)となっている。つまり、受け皿41の上面の周囲には、それぞれ本体部40mの上面へと向かって広がるように傾斜した壁面40wが設けられている。
こうすることで、撮影装置3は、図6に示すように、上側第2照明54から受け皿41に対して斜め方向に照射される光が受け皿41の周囲の壁面40wに遮られて受け皿41上に影ができてしまうことを防ぐことができる。これにより、撮影装置3は、例えば、受け皿41の壁面40w近傍に載置されている薬剤に対しても、上側第2照明54からの光を確実に当てることができる。
尚、受け皿41の上面の前後左右に設けられた壁面40wは、トレイ40が前後方向に移動する際に、受け皿41上に載置された薬剤Dgがこぼれ落ちないように、傾斜角度と高さが選定されている。
さらにトレイ40は、図9(B)に示すように、本体部40mの下面と、この下面に対して窪んだ位置にある受け皿41の下面との間の固定板42が、トレイ40の下面から受け皿41の下面へ向かって傾斜する傾斜面(スロープ)となっている。つまり、受け皿41の下面の周囲には、それぞれ本体部40mの下面へと向かって広がるように傾斜した固定板42が設けられている。
こうすることで、撮影装置3は、図6に示すように、下側第2照明58から受け皿41に対して斜め方向に照射される光が受け皿41の周囲の固定板42に遮られて受け皿41上に影ができてしまうことを防ぐことができる。これにより、撮影装置3は、例えば、受け皿41の壁面40w近傍に載置されている薬剤Dgに対しても、下側第2照明58からの光を確実に当てることができる。
さらにトレイ40は、図9(A)、(B)に示すように、左右の突起部40s1、40s2に、前後方向に貫通するシャフト用孔43h1、43h2が設けられている。トレイ40は、左側のシャフト用孔43h1と、右側のシャフト用孔43h2とに、ベースフレーム86(図8)に固定された前後方向に延びる左シャフト83s1と、右シャフト83s2とが挿通されていて、これら左シャフト83s1及び右シャフト83s2により、ベースフレーム86に対して水平な一方向及び他方向である前後方向に移動可能な状態で支持されている。
さらにトレイ40は、図8(A)、(B)に示すように、左側の突起部40s1の左端部が、ベースフレーム86に組み付けられた前後方向に走行する環状の駆動ベルト84に固定されている。駆動ベルト84は、左シャフト83s1の外側(左側)に位置していて、ベースフレーム86に組み付けられたモータ80の駆動により前後方向に走行することで、トレイ40を前後方向に移動させるようになっている。つまり、トレイ40は、左側の突起部40s1が、駆動ベルト84に引っ張られるようにして、前後方向に移動するようになっている。
具体的に、トレイ40は、図8(A)に示すトレイ収容時の位置と図8(B)に示すトレイ排出時の位置との間で、前後方向に移動できるようになっている。図8(A)に示す位置は、トレイ40が、撮影装置3内部で最も奥まで引き込まれたときの位置であり、以下、この位置を初期位置と呼ぶ。一方、図8(B)に示す位置は、トレイ40が、撮影装置3外部に最も引き出されたときの位置であり、以下、この位置を排出位置と呼ぶ。
初期位置にあるとき、トレイ40は、トレイ40の前端が、撮影装置3の装置筐体30の前面より距離d1だけ後方に位置している。つまりトレイ40は、撮影装置3内部に収容されたままでも、距離d1の範囲内で、前後方向に移動できるようになっている。
さらに図8(A)に示す初期位置にあるとき、トレイ40は、受け皿41の上面の中心が、少なくとも上側カメラ51の光軸A1及び下側カメラ55の光軸A2より後方に位置している。詳しくは後述するが、トレイ40は、薬剤の撮影時、撮影装置3内部で、初期位置から初期位置より前方に位置する撮影位置まで移動するようになっている。
一方、排出位置にあるとき、トレイ40は、左右の突起部40s1、40s2を有する後端部を撮影装置3内部に残したまま、受け皿41の全体を撮影装置3外部に露出させるようになっている。
尚、モータ80は、例えば、パルス信号によりトレイ40の位置制御が可能なパルスモータ、もしくはスリット板とフォトインタラプタなどによりトレイ40の位置制御が可能なDCモータである。
さらにトレイ40は、左側の突起部40s1に遮蔽板85が取り付けられている。一方、ベースフレーム86には、トレイ40が排出位置にあるときの遮蔽板85と対応する位置に、フォトインタラプタで構成される第1位置センサ81が設けられているとともに、トレイ40が初期位置にあるときの遮蔽板85と対応する位置に、フォトインタラプタで構成される第2位置センサ82が設けられている。
第1位置センサ81は、トレイ40が排出位置まで移動すると、このときフォトインタラプタの光軸が、トレイ40に取り付けられた遮蔽板85により遮られることで、トレイ40が排出位置にあることを検知するようになっている。一方、第2位置センサ82は、トレイ40が初期位置まで移動すると、このときフォトインタラプタの光軸が、トレイ40に取り付けられた遮蔽板85により遮られることで、トレイ40が初期位置にあることを検知するようになっている。尚、トレイ40が排出位置と初期位置との間に位置する場合、トレイ40の位置は、モータ80の位置制御により推定できるようになっている。
さらにトレイAssyユニット50は、図8(A)及び図10に示すように、左シャフト83s1及び右シャフト83s2が、上側第2照明54の外周のさらに外側に配置されている。ここで、上側第2照明54は、上側カメラ51の撮影範囲の外側に位置している。つまり、トレイAssyユニット50は、左シャフト83s1及び右シャフト83s2を、上側第2照明54の外周のさらに外側に配置することで、上側カメラ51での撮影時に、左シャフト83s1及び右シャフト83s2の影が撮影画像に影響を及ぼしたり、左シャフト83s1及び右シャフト83s2に反射した光が撮影画像に影響を及ぼしたりすることを回避できるようになっている。
同様に、トレイAssyユニット50は、図10に示すように、左シャフト83s1及び右シャフト83s2が、下側第2照明58の外周のさらに外側に配置されている。つまり、トレイAssyユニット50は、左シャフト83s1及び右シャフト83s2を、下側第2照明58の外周のさらに外側に配置することで、下側カメラ55での撮影時に、左シャフト83s1及び右シャフト83s2の影が撮影画像に影響を及ぼしたり、左シャフト83s1及び右シャフト83s2に反射した光が撮影画像に影響を及ぼしたりすることを回避できるようになっている。
さらにトレイAssyユニット50は、図11に、トレイ40の部分透視図を示すとともに、図12(A)、(B)に、トレイ40の左右の突起部40s1、40s2を装置筐体30の前面と平行な平面で切断した断面図を示すように、左側の突起部40s1に設けられた左側のシャフト用孔43h1が円形の丸孔であるのに対して、右側の突起部40s1に設けられた右側のシャフト用孔43h2が左右方向に長い小判型の長孔となっている。
具体的に、左側のシャフト用孔43h1は、丸棒状の左シャフト83s1の外径の製造最大寸法よりわずかに大きな(例えば0.05mm~0.1mm程度大きな)円形の丸孔となっている。こうすることで、トレイ40の左側は、左シャフト83s1によって上下方向及び左右方向に正確に位置決めされつつ、左シャフト83s1に対してこじらずにスムーズに移動できるようになっている。
一方、右側のシャフト用孔43h2は、上下方向よりも左右方向(つまり左シャフト83s1及び右シャフト83s2の配置方向)に長い小判型の長孔であり、上下方向(短手方向)の長さが、丸棒状の右シャフト83s2の外径の製造最大寸法よりわずかに大きく(例えば0.05mm~0.1mm程度大きく)なっている。また右側のシャフト用孔43h2の左右方向(長手方向)の長さは、左シャフト83s1及び右シャフト83s2間の距離(これをシャフト間距離と呼ぶ)のバラつきと、左シャフト83s1及び右シャフト83s2のたわみ(これをシャフトたわみと呼ぶ)等による変形量とにマージン(例えば1mm~2mm程度)を加えた寸法となっている。こうすることで、トレイ40の右側は、右シャフト83s2によって上下方向に位置決めされるとともに、左右方向の遊びによってシャフト間距離のバラつき及びシャフトたわみ等の変形量を吸収しつつ、右シャフト83s2に対してこじらずにスムーズに移動できるようになっている。
このように、トレイ40は、左側のシャフト用孔43h1が円形の丸孔、右側のシャフト用孔43h2が左右方向(水平方向)に長い小判型の長孔となっていることにより、シャフト間距離がバラついていても、水平を保ちながらスムーズに移動できるようになっている。
尚、トレイAssyユニット50は、トレイ40の左側と右側のうち、位置決め精度が高い左側に、トレイ40との位置関係の精度が重要になる各種部品(第1位置センサ81、第2位置センサ82、駆動ベルト84、遮蔽板85等)を設けている。トレイAssyユニット50の構成は、以上のようになっている。
[1-3.機能構成のシステム構成]
次に、図13に示すブロック図を用いて、持参薬鑑別システム1のシステム構成について簡単に説明する。制御装置2は、制御部100、記憶部101、薬剤鑑別部102、表示部21及び操作部22を有している。一方、撮影装置3は、上側カメラ51、下側カメラ55、照明コントロールユニット71、上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、下側第2照明58、トレイコントロール基板70、モータ80、第1位置センサ81、及び第2位置センサ82を有している。
制御装置2の制御部100は、持参薬鑑別システム1全体を制御するようになっている。この制御部100は、例えば、CPUとメモリからなり、記憶部101から読み出したプログラムをメモリに展開して実行することにより動作する。具体的に、この制御部100は、記憶部101から薬剤鑑別アプリケーションのプログラムを読み出して実行することにより薬剤鑑別アプリケーションを起動する。そして、制御部100は、操作部22に対する操作者の操作に応じて、薬剤鑑別部102に薬剤の鑑別を行わせ、その鑑別結果を薬剤鑑別アプリケーションの画面上に表示させるようになっている。
記憶部101は、各種プログラムにくわえて、患者データと、薬剤データが蓄積されている薬剤データベースDbとを記憶している。ここで、患者データには、患者ごとのデータとして、少なくとも、患者を識別可能な患者識別情報と、患者の名前、年齢、性別、症状などを示す患者詳細情報と、患者の持参薬を示す持参薬情報とが含まれている。また薬剤データベースDbに蓄積される薬剤データには、薬剤ごとのデータとして、少なくとも、薬剤の名前と、薬剤を識別可能な薬剤識別情報、成分名、効果効能、規格、種別(錠剤又はカプセル剤)などを示す薬剤詳細情報と、薬剤の画像と、薬剤の外観の特徴を示す特徴量情報とが含まれている。尚、詳しくは後述するが、記憶部101には、薬剤データベースDbとして、市販の薬剤が登録されていて薬局などで利用される市販データベースと、撮影装置3もしくは撮影装置3と同等の機能を有する撮影装置で撮影された薬剤の画像をもとに作成された専用データベースとが記憶されている。
薬剤鑑別部102は、制御部100から、上側カメラ51及び下側カメラ55で撮影された薬剤の画像を受け取り、この画像と記憶部101に記憶されている薬剤データベースDbとを用いて薬剤の鑑別を行い、その鑑別結果を制御部100に出力する。尚、制御部100が、この薬剤鑑別部102の機能を兼ね備えていてもよい。
撮影装置3の上側カメラ51及び下側カメラ55は、USBなどの所定のインタフェースを介して制御装置2の制御部100と接続され、制御部100により制御される。撮影装置3の上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、下側第2照明58は、照明コントロールユニット71と接続され、照明コントロールユニット71により制御される。照明コントロールユニット71は、所定のインタフェースを介して制御装置2の制御部100と接続され、制御部100からの指示にしたがって動作する。撮影装置3のモータ80、第1位置センサ81、第2位置センサ82は、トレイコントロール基板70に接続され、トレイコントロール基板70により制御される。トレイコントロール基板70は、所定のインタフェースを介して制御装置2の制御部100と接続され、制御部100からの指示にしたがって動作する。またトレイコントロール基板70は、例えば、第1位置センサ81の出力、第2位置センサ82の出力、及びモータ80のパルス信号などをもとに、トレイ40の位置を取得して、これを制御部100に送信するようにもなっている。持参薬鑑別システム1のシステム構成は、以上のようになっている。
[1-4.一包化薬の鑑別]
次に、持参薬鑑別システム1による一包化薬の鑑別について説明する。まず図14(A)を用いて、一包化薬110について説明する。
一包化薬110は、長方形状の1枚のシートを二つ折にして、二つ折りにしたシートの間に、薬剤Dgを入れ、折った辺以外の3辺を熱融着することで、1回に服用する薬剤Dgを1袋にまとめたものである。この一包化薬110の多くは、裏面が透明、表面が透明もしくは半透明で、表面に「朝食後」といった用法等が印字されている。
尚、図14(A)に示す一包化薬110は、複数個の錠剤Dgtと1個のカプセル剤Dgcとを1袋にまとめ、裏面、表面ともに透明(ただし表面は表面加工により裏面より透過率が低くなっている)で、表面の一部に用法が印字された例である。
ここでは、図14(A)に示す一包化薬110を鑑別する場合について説明する。操作者は、この一包化薬110に含まれている薬剤Dg(錠剤Dgt及びカプセル剤Dgc)を持参薬鑑別システム1で鑑別する為に、まず、一包化薬110を、熱融着されていない辺が下側となる向きで立てることで、一包化薬110内の薬剤Dgを、熱融着されていない辺に寄せて、印字部分に隠れないようにする。またこのとき、カプセル剤Dgcについては、その長手方向が、熱融着されていない辺と平行になるようにする。
次に、操作者は、図14(B)に示すように、排出位置にあるトレイ40の受け皿41の上面に収まるように、一包化薬110を、その表面(つまり印字面)が下側で、且つ熱融着していない辺が受け皿41の奥側(後端側)となる向きで、受け皿41の前側の傾斜面(スロープ)を利用しながらセットする。このとき、カプセル剤Dgcは、その長手方向が、熱融着されていない辺と平行であり、トレイ40の移動方向と直交する。
ここで、一包化薬110の表面(印字面)を下側にするのは、一包化薬110の表面と裏面のうち、表面加工により光の拡散性が高い表面を、受け皿41の上面に密着させることで、各種照明(上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、下側第2照明58)からの光の拡散を抑制することを目的としている。
また一包化薬110内の薬剤Dgを熱融着されていない辺に寄せてトレイ40にセットするのは、一包化薬110に印字されている文字等が、撮影時に一包化薬110内の薬剤Dgに写りこんでしまうことを防ぐことを目的としている。カプセル剤Dgcを、トレイ40の移動方向と直交させる理由については、後述する。
このようにして一包化薬110をトレイ40にセットした後、操作者は、制御装置2の操作部22を操作することにより、一包化薬110を持参した患者の患者識別情報を直接入力するとともに、鑑別対象を一包化薬としたうえで、鑑別開始を指示する。すると、制御装置2の制御部100は、撮影装置3を制御して、一包化薬110内の薬剤Dgの撮影を行う。尚、患者識別情報の入力、及び鑑別対象の選択については、一包化薬110をトレイ40にセットする前に行わせるようにしてもよい。
ここで、図15(A)~(E)に、一包化薬110内の薬剤Dgを撮影する際のトレイ40の動作遷移図を示す。尚、図15(A)~(E)は、トレイ40を右側から見た側面図であり、トレイ40にセットされている一包化薬110内の薬剤Dgの位置を分かり易くする為に、トレイ40の一部を省略したり簡略化したりした図となっている。
撮影装置3は、まず一包化薬110がセットされたトレイ40を、図15(A)に示す排出位置から図15(B)に示す初期位置まで後方に移動させる。次に、撮影装置3は、トレイ40を、初期位置から所定量だけ前方に移動させることで、図15(C)に示す第1撮影位置まで移動させる。第1撮影位置にあるとき、トレイ40は、受け皿41の前後方向の中心付近に、上側カメラ51及び下側カメラ55(図15中省略)の光軸A1、A2が位置する。このとき、受け皿41に載置されている一包化薬110内の薬剤Dgは、光軸A1、A2より後方に位置するとともに、上側カメラ51及び下側カメラ55の前後方向の撮影範囲Crの後ろ寄りに位置することになる。
トレイ40を第1撮影位置まで移動させた後、撮影装置3は、トレイ40上にセットされている一包化薬110の撮影を行う。具体的に、撮影装置3は、まず上側第1照明53を点灯して上側カメラ51で一包化薬110を上から撮影する(1回目の撮影)。次に撮影装置3は、上側第1照明53を消灯し、上側第2照明54を点灯して上側カメラ51で一包化薬110を上から撮影する(2回目の撮影)。次に撮影装置3は、上側第2照明54を消灯し、下側第1照明57を点灯して下側カメラ55で一包化薬110を下から撮影する(3回目の撮影)。次に撮影装置3は、下側第1照明57を消灯し、下側第2照明58を点灯して下側カメラ55で一包化薬110を下から撮影する(4回目の撮影)。そして撮影装置3は最後に下側第2照明58を消灯する。このように撮影装置3は、トレイ40を第1撮影位置まで移動させた後、計4回の撮影を行うようになっている。
次に、撮影装置3は、トレイ40を、第1撮影位置から所定量だけ前方に移動させることで、図15(D)に示す第2撮影位置まで移動させる。第2撮影位置にあるとき、トレイ40は、受け皿41の後部に、上側カメラ51及び下側カメラ55(図15中省略)の光軸A1、A2が位置する。このとき、受け皿41に載置されている一包化薬110内の薬剤Dgは、光軸A1、A2近傍に位置するとともに、上側カメラ51及び下側カメラ55の前後方向の撮影範囲Crの中心付近に位置することになる。
トレイ40を第2撮影位置まで移動させた後、撮影装置3は、トレイ40上にセットされている一包化薬110の撮影を行う。この場合も、第1撮影位置のときと同様に、計4回の撮影を行う。
次に、撮影装置3は、トレイ40を、第2撮影位置から所定量だけ前方に移動させることで、図15(E)に示す第3撮影位置まで移動させる。第3撮影位置にあるとき、トレイ40は、受け皿41より後方に、上側カメラ51及び下側カメラ55(図15中省略)の光軸A1、A2が位置する。このとき、受け皿41に載置されている一包化薬110内の薬剤Dgは、光軸A1、A2より前方に位置するとともに、上側カメラ51及び下側カメラ55の前後方向の撮影範囲Crの前寄りに位置することになる。
トレイ40を第3撮影位置まで移動させた後、撮影装置3は、トレイ40上にセットされている一包化薬110の撮影を行う。この場合も、第1撮影位置のときと同様に、計4回の撮影を行う。そして撮影装置3は、トレイ40を、第3撮影位置から図15(A)に示す排出位置まで移動させる。
このように、撮影装置3は、一包化薬110の撮影時、トレイ40の位置を、第1撮影位置、第2撮影位置、及び第3撮影位置と変えながら、それぞれ4回ずつ計12回の撮影を行うようになっていて、撮影ごとに得られる画像を、順次、制御装置2に送信するようになっている。尚、トレイコントロール基板70は、トレイ40上にセットされている一包化薬110がトレイ40からこぼれ落ちたりしない移動速度でトレイ40を移動させるようになっている。
制御装置2の制御部100は、撮影装置3から順に送られてくる12枚の画像を、記憶部101に記憶する。このとき制御部100は、図16に示すように、各画像に対して、撮影位置(第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置)と、撮影したカメラ(上側カメラ51、下側カメラ55)と、利用した照明(上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、下側第2照明58)との組み合わせを表すファイル名(P1UA、P2UA、P3UA、P1UB、P2UB、…)を付与して、記憶部101に記憶するようになっている。
制御装置2の制御部100は、このようにして記憶部101に記憶した画像をもとに、一包化薬110内の薬剤Dgの鑑別を、薬剤鑑別部102により行う。
ところで、薬剤Dgの鑑別には、撮影して得られた画像から、薬剤Dgに印刷又は刻印された薬剤識別情報を正確に読み取ることが重要であり、特に、錠剤Dgtと比べて転がり易いカプセル剤Dgcに印刷又は刻印された薬剤識別情報を正確に読み取ることが重要になってくる。
そこで、本実施の形態の撮影装置3では、カプセル剤Dgcがトレイ40の移動方向と直交するようにして一包化薬110をトレイ40にセットするとともに、トレイ40の位置を、第1撮影位置、第2撮影位置、及び第3撮影位置と変えながら、一包化薬110内の薬剤Dgを撮影するようにした。
ここで、図17に、カプセル剤Dgcの外周のうち、トレイ40が第1撮影位置にあるときに上側カメラ51で撮影した画像に写る範囲Pr1と、トレイ40が第2撮影位置にあるときに上側カメラ51で撮影した画像に写る範囲Pr2とを視覚的に示す。尚、この図17は、トレイ40にセットされた一包化薬110内のカプセル剤Dgcを右側から見た側面図であり、上側カメラ51、レンズ52、カプセル剤Dgc以外の部分については省略している。
この図17に示すように、カプセル剤Dgcの薬剤識別情報Dcが、例えばカプセル剤Dgcの外周の前側に存在する場合、第2撮影位置での撮影では、上側カメラ51によりカプセル剤Dgcをほぼ真上から撮影する為、画像に写る範囲Pr2から、薬剤識別情報Dcの全部もしくは一部が外れて(つまり死角となり)しまう。つまり、第2撮影位置での撮影だと、上側カメラ51で撮影した画像に、薬剤識別情報Dcの全部もしくは一部が写らない。
一方で、第1撮影位置での撮影では、上側カメラ51によりカプセル剤Dgcを前方ななめ上から撮影する為、画像に写る範囲Pr1内に、薬剤識別情報Dcの全部が入る。つまり、第1撮影位置で撮影すれば、上側カメラ51で撮影した画像に、薬剤識別情報Dcの全部が写る。下側カメラ55についても同様に、第1撮影位置で撮影すれば、下側カメラ55で撮影した画像に、薬剤識別情報Dcの全部が写る。
つづけて、図18に、カプセル剤Dgcの外周のうち、トレイ40が第2撮影位置にあるときに上側カメラ51で撮影した画像に写る範囲Pr2と、トレイ40が第3撮影位置にあるときに上側カメラ51で撮影した画像に写る範囲Pr3とを視覚的に示す。
この図18に示すように、カプセル剤Dgcの薬剤識別情報Dcが、例えばカプセル剤Dgcの外周の後側に存在する場合、第2撮影位置での撮影では、上側カメラ51によりカプセル剤Dgcをほぼ真上から撮影する為、画像に写る範囲Pr2から、薬剤識別情報Dcの全部もしくは一部が外れて(つまり死角となり)しまう。つまり、第2撮影位置での撮影では、上側カメラ51で撮影した画像に、薬剤識別情報Dcの全部もしくは一部が写らない。
一方で、第3撮影位置での撮影では、上側カメラ51によりカプセル剤Dgcを後方ななめ上から撮影する為、画像に写る範囲Pr3内に、薬剤識別情報Dcの全部が入る。つまり、第3撮影位置で撮影すれば、上側カメラ51で撮影した画像に、薬剤識別情報Dcの全部が写る。下側カメラ55についても同様に、第3撮影位置で撮影すれば、下側カメラ55で撮影した画像に、薬剤識別情報Dcの全部が写る。
また図示しないが、カプセル剤Dgcの薬剤識別情報Dcが、例えばカプセル剤Dgcの外周の上側に存在する場合、上側カメラ51により第2撮影位置で撮影すれば、上側カメラ51で撮影した画像に、薬剤識別情報Dcの全部が写る。さらに、カプセル剤Dgcの薬剤識別情報Dcが、例えばカプセル剤Dgcの外周の下側に存在する場合、下側カメラ55により第2撮影位置で撮影すれば、下側カメラ55で撮影した画像に、薬剤識別情報Dcの全部が写る。
このように撮影装置3は、カプセル剤Dgcがトレイ40の移動方向と直交するようにして一包化薬110をトレイ40にセットするとともに、トレイ40の位置を、第1撮影位置、第2撮影位置、及び第3撮影位置と変えながら、一包化薬110内の薬剤Dg(カプセル剤Dgc)を撮影するようにしたことにより、カプセル剤Dgcの外周のどこに薬剤識別情報Dcが位置していても、この薬剤識別情報Dcを画像に写すことができる。よって、薬剤鑑別部102は、薬剤識別情報Dcが写った画像から薬剤識別情報Dcを正確に読み取ることができる。
次に、薬剤を鑑別するアルゴリズムの概要について図19を用いて説明する。尚、以下に説明するアルゴリズムは一例であり、他のアルゴリズムを利用してもよい。
最初のステップSP1で、撮影装置3により一包化薬110の画像が撮影され、計12枚の画像(つまり第1撮影位置、第2撮影位置、及び第3撮影位置で撮影された12枚の画像)が、制御装置2の記憶部101に記憶される。
つづくステップSP2において、薬剤鑑別部102は、記憶部101に記憶された12枚の画像のうちの1枚から、各薬剤Dgが写っている部分(以下、これを薬剤画像と呼ぶ)を切り出す。つまり、一包化薬110の場合、一包化薬110の画像から、複数個の錠剤Dgtのそれぞれが写っている複数枚の薬剤画像と、1個のカプセル剤Dgcが写っている1枚の薬剤画像とを切り出す。さらに薬剤鑑別部102は、切り出した薬剤画像のそれぞれを、画像解析により錠剤Dgtの薬剤画像(以下、これを錠剤画像と呼ぶ)とカプセル剤Dgcの薬剤画像(以下、これをカプセル剤画像と呼ぶ)とに分ける。
ここで、薬剤鑑別部102は、錠剤画像に写っている錠剤Dgtの鑑別については、第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置のうち、いずれかの位置で撮影した4枚の画像の全てもしくは一部から切り出した錠剤画像を使用する。具体的には、錠剤Dgtに印刷又は刻印された薬剤識別情報の読み取りが可能な錠剤画像を優先的に使用する。
一方で、カプセル剤画像に写っているカプセル剤Dgcの鑑別については、第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置で撮影した12枚の画像の全てもしくは一部から切り出したカプセル剤画像を使用する。この場合も、カプセル剤Dgcに印刷又は刻印された薬剤識別情報の読み取りが可能なカプセル剤画像を優先的に使用する。尚、鑑別に使用する錠剤画像及びカプセル剤画像を、以下、使用画像と呼ぶ。薬剤鑑別部102は、複数毎の使用画像を使用して薬剤Dgを鑑別する場合に、例えば、第1の使用画像に写っている各薬剤Dgと、第2の使用画像に写っている各薬剤Dgとを、各使用画像内での位置などをもとに対応付ける(つまり同一の薬剤Dgと認識する)ようになっている。
ちなみに、ここでは、薬剤画像を錠剤画像とカプセル剤画像とに分けて、鑑別を行うようにしたが、薬剤画像を錠剤画像とカプセル剤画像とに分けることなく、鑑別を行うようにしてもよい。この場合、薬剤画像に写っている薬剤の鑑別については、第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置で撮影した12枚の画像の全てもしくは一部から切り出した薬剤画像を使用する。
つづくステップSP3において、薬剤鑑別部102は、スイッチ機能102sにより、記憶部101に記憶されている市販データベースDb1及び専用データベースDb2の一方を選択する。
つづくステップSP4、さらにつづくステップSP5において、薬剤鑑別部102は、一包化薬110の画像に写っている薬剤Dgの1つを鑑別対象に選択し、その薬剤Dgについて、上述した使用画像から形状、寸法、色調を抽出し、ステップSP3で選択した市販データベースDb1又は専用データベースDb2に薬剤データとして登録されている薬剤の形状、寸法、色調と比較することにより、薬剤Dgの候補となる薬剤を絞り込む。
つづくステップSP6において、薬剤鑑別部102は、薬剤Dgについて、上述した使用画像から絵柄(薬剤識別情報を含む)を抽出し、ステップSP3で選択した市販データベースDb1又は専用データベースDb2に薬剤データとして登録されている薬剤のうち、ステップSP4、SP5によって絞り込まれた候補の薬剤の絵柄と比較することにより、薬剤Dgと、ステップSP4、SP5によって絞り込まれた各候補との類似度を算出する。
つづくステップSP7において、薬剤鑑別部102は、ステップSP6で算出された類似度の中に、予め設定された閾値を超えているものがある場合、類似度が閾値を超えている候補を、薬剤Dgの鑑別結果として制御部100に出力する。一方で、ステップSP6で算出された類似度の中に、予め設定された閾値を超えている閾値がない場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP3に戻り、スイッチ機能102sにより、使用する薬剤データベースDbを、市販データベースDb1及び専用データベースDb2のもう一方に切り替え、再度、ステップSP4~SP7において、薬剤Dgの鑑別を行う。尚、ステップSP3~SP7での鑑別は、一包化薬110の画像に写っている全ての薬剤Dgに対して行われる。
ステップSP7につづくステップSP8において、制御部100は、一包化薬110の画像に写っている薬剤Dgごとに得られた鑑別結果(つまり薬剤Dgとの類似度が閾値を超えている候補)を、薬剤鑑別アプリケーションの画面上に表示させ、操作者に、一包化薬110の画像に写っている薬剤Dgごとに、鑑別結果として得られた第1位候補を確認させる。つづくステップSP9において、操作者が、薬剤Dgの鑑別結果として第1位候補が間違っていない場合には、第1位候補を正解として選択する一方で、間違っている場合には、他の候補、もしくはキーワードをもとに検索した薬剤などを、正解として選択する。薬剤を鑑別するアルゴリズムの概要は、以上のようになっている。
次に、図19に示すアルゴリズムを利用した薬剤鑑別の具体的な手順について、図20に示すフローチャートを用いて説明する。尚、ここでは、市販データベースDb1及び専用データベースDb2の切り替えについて重点的に説明する。一方で、図19に示すアルゴリズムと重複する部分の説明については適宜省略する。
最初のステップSP10で、撮影装置3により一包化薬110の画像が撮影され、制御装置2の記憶部101に記憶される。つづくステップSP11において、薬剤鑑別部102は、記憶部101に記憶された画像から、各薬剤Dgが写っている部分(薬剤画像)を切り出す。つづくステップSP12において、薬剤鑑別部102は、専用データベースDb2を選択する。
つづくステップSP13、SP14、SP15において、薬剤鑑別部102は、一包化薬110の画像に写っている薬剤Dgの1つを鑑別対象に選択し、その薬剤Dgの形状、寸法、色調を抽出し、専用データベースDb2に登録されている薬剤の形状、寸法、色調と比較することにより、薬剤Dgの候補となる薬剤を絞り込む。
つづくステップSP16において、薬剤鑑別部102は、薬剤画像に写っている薬剤Dgの絵柄を抽出し、つづくステップSP17において、専用データベースDb2に登録されている薬剤のうち、ステップSP13、SP14、SP15によって絞り込まれた候補の薬剤と比較することにより、薬剤Dgと、ステップSP13、SP14、SP15によって絞り込まれた各候補との類似度を算出する。
つづくステップSP18において、薬剤鑑別部102は、ステップSP17で算出された類似度の中に、予め専用データベースDb2に対して設定された閾値を超えているものがあるか否かを判定する。ここで、ステップSP17で算出された類似度の中に、閾値を超えているものがある場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP18からステップSP19に移り、類似度が閾値を超えている候補を、類似度が高い順に順位を付けたうえで、薬剤Dgの鑑別結果として制御部100に出力する。尚、薬剤Dgの鑑別結果として出力される候補の数は、所定数(例えば第1位~第10位までの10個)に制限されているとする。
つづくステップSP20において、制御部100は、鑑別結果を薬剤鑑別アプリケーションの画面上に表示させ、操作者に、薬剤Dgの鑑別結果として得られた候補などから正解を選択させる。
これに対して、ステップSP17で算出された類似度の中に、閾値を超えているものがない場合、このことは、薬剤Dgが、専用データベースDb2には登録されていない可能性が高いことを意味する。この場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP18からステップSP21へと移り、市販データベースDb1を選択する。
つづくステップSP22、SP23、SP24、SP25、SP26において、薬剤鑑別部102は、市販データベースDb1を利用して、薬剤Dgと、絞り込まれた各候補との類似度を算出する。つづくステップSP27において、薬剤鑑別部102は、ステップSP26で算出された類似度の中に、予め市販データベースDb1に対して設定された閾値を超えているものがあるか否かを判定する。ここで、ステップSP26で算出された類似度の中に、閾値を超えているものがある場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP19に移り、類似度が閾値を超えている候補を、類似度が高い順に順位を付けたうえで、薬剤Dgの鑑別結果として制御部100に出力する。
これに対して、ステップSP26で算出された類似度の中に、閾値を超えているものがない場合、このことは、薬剤Dgが、専用データベースDb2にも市販データベースDb1にも登録されていない可能性が高いことを意味する。この場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP27からステップSP28へと移り、薬剤Dgの鑑別結果を「候補なし」として、制御部100に出力する。尚、ステップSP12以降の処理は、一包化薬110の画像に写っている全ての薬剤Dgに対して行われる。そして全ての薬剤Dgに対する鑑別結果の出力が完了すると、薬剤鑑別部102は、薬剤鑑別を終了する。薬剤鑑別の具体的な手順は、以上のようになっている。
ところで、上述したステップSP17、SP26で算出される類似度は、撮影装置3もしくは撮影装置3と同等の機能を有する撮影装置で撮影された薬剤の画像をもとに作成された専用データベースDb2を利用するとき(つまりステップSP17)の方が、市販データベースDb1を利用するとき(つまりステップSP26)よりも高くなる傾向にある。よって、ステップSP27で使用する、市販データベースDb1に対して設定された閾値よりも、ステップSP18で使用する、専用データベースDb2に対して設定された閾値の方が高めに設定されていることが望ましい。
さらに、本実施の形態では、薬剤鑑別部102が、薬剤Dgの鑑別結果として得られた候補のうち、類似度が最も高い第1位候補について、第1位候補として確定できるか否か(つまり薬剤Dgの鑑別結果として断定できるか否か)を判定するようにもなっている。
この判定方法について、図21(A)、(B)を用いて説明する。図21(A)は、横軸が第1位候補の類似度、縦軸が第1位候補と第2位候補との類似度の差とするグラフであり、このグラフ上の領域を、4つの領域R1、R2、R3、R4に分割している。
領域R1は、第1位候補の類似度が所定値以上と高く、且つ第1位候補の類似度と第2位候補の類似度との差が所定値以上と大きい領域である。領域R2は、第1位候補の類似度は所定値未満と低いが、第1位候補の類似度と第2位候補の類似度との差は所定値以上と大きい領域である。領域R3は、第1位候補の類似度は所定値以上と大きいが、第1位候補の類似度と第2位候補の類似度との差は所定値未満と低い領域である。領域R4は、第1位候補の類似度が所定値未満と低く、且つ第1位候補の類似度と第2位候補の類似度との差も所定値未満と低い領域である。
薬剤鑑別部102は、薬剤Dgの第1位候補が、領域R1、R2、R3、R4のどこに含まれるかを特定する。そして、薬剤鑑別部102は、図21(B)に示すように、第1位候補が、領域R1に含まれるのであれば、薬剤Dgとの類似度が高く、且つ第2位候補との類似度の差も大きいことから、第1位候補として確定できると判定する。
これに対して、第1位候補が、領域R2又は領域R3に含まれる場合、薬剤鑑別部102は、薬剤Dgとの類似度が低い、もしくは第2位候補との類似度の差が小さいことから、第1位候補として確定はできないと判定する。
さらに、第1位候補が、領域R4に含まれる場合、薬剤鑑別部102は、薬剤Dgとの類似度が低く、且つ第2位候補との類似度の差も小さいことから、不明薬(つまり第1位候補ではあるが、薬剤Dgを示す薬剤ではない可能性がある)と判定する。
薬剤鑑別部102は、薬剤Dgの第1位候補となる薬剤が、第1位候補として確定できると判定した場合、その旨を、薬剤Dgの鑑別結果に含めるようになっている。そして、制御部100は、薬剤Dgの鑑別結果を、薬剤鑑別アプリケーションの画面上に表示させる際、第1位候補が確定されているか否かを操作者が一目で確認できるように表示するようになっている。尚、実際に表示される画面については後述する。
[1-5.一包化薬の鑑別結果の表示]
次に、一包化薬110の画像に写っている薬剤Dgごとに得られた鑑別結果を表示する薬剤鑑別アプリケーションの画面構成について、図22~図25を用いて詳しく説明する。図22は、薬剤鑑別アプリケーションの鑑別結果表示画面200である。この鑑別結果表示画面200は、制御部100により、表示部21に表示される画面であり、操作部22を介して操作できるようになっている。
鑑別結果表示画面200は、撮影装置3により撮影された薬(例えば一包化薬110)の撮影画像Pdが表示される撮影画像表示エリア201と、撮影画像表示エリア201内で選択された撮影画像Pdが表示される選択画像表示エリア202と、選択画像表示エリア202に表示された撮影画像Pdに写っている各薬剤Dg(例えば錠剤Dgt及びカプセル剤Dgc)の鑑別結果を示す鑑別結果情報Drを表示する鑑別結果表示エリア203とを有している。
尚、図22では、撮影画像表示エリア201に、1枚の撮影画像Pdが表示されているが、例えば複数の一包化薬110を撮影した場合には、撮影画像表示エリア201に、複数枚の撮影画像Pdが並べて表示されるようになっている。
鑑別結果表示エリア203には、選択画像表示エリア202に表示された撮影画像Pdに写っている薬剤Dgごとに、鑑別結果情報Drとして、撮影装置3により撮影された薬剤Dgの撮影画像Pcと、撮影画像Pcに写っている薬剤Dgの鑑別結果として得られた第1位候補の薬剤情報(薬剤の画像、薬剤名、薬剤識別情報としての識別コード、成分名、効能効果、規格など)Ddとが表示されるようになっている。
鑑別結果情報Drに含まれる薬剤Dgの撮影画像Pcは、例えば、薬剤Dgの鑑別に使用した使用画像であり、図22に示す例では、上側カメラ51で撮影した画像のうちの1枚と、下側カメラ55で撮影した画像のうちの1枚との計2枚となっている。また、鑑別結果情報Drに含まれる薬剤情報Ddは、薬剤データベースDb(市販データベースDb1又は専用データベースDb2)から得られた情報である。
尚、図22では、鑑別結果表示エリア203に、2個の鑑別結果情報Drが表示されているが、鑑別対象の薬剤Dgが3個以上有り、鑑別結果情報Drが3個以上ある場合には、スクロールすることで全ての鑑別結果情報Drを表示できるようになっている。
この鑑別結果表示画面200では、鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drのうち、上述の方法で第1位候補が確定されている鑑別結果情報Drについては、他の鑑別結果情報Drと視覚的に区別できるように表示される。具体的には、第1位候補が確定されている鑑別結果情報Dr(例えば2行目の鑑別結果情報Dr)は、第1位候補が確定されていない鑑別結果情報Dr(例えば1行目の鑑別結果情報Dr)とは異なる背景色で表示される。尚、第1位候補が確定されていない鑑別結果情報Drの背景色は、例えば、鑑別結果表示画面200全体の背景色と同一色となっている。
こうすることで、操作者は、鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drのうち、第1位候補が確定されている鑑別結果情報(つまり第1位候補の鑑別信頼度が高い鑑別結果情報)Drを一目で確認することができる。尚、第1位候補が確定されている鑑別結果情報Drについては、背景色を変えるだけでなく、確定されていることを示す文字情報(例えば「確定」)を薬剤情報Ddとともに表示するようにしてもよい。
さらにこの鑑別結果表示画面200では、操作者が、鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drの1つを選択すると、選択された鑑別結果情報Drにフォーカスを当てるとともに、選択画像表示エリア202に表示されている撮影画像Pd上に、選択された鑑別結果情報Drに対応する薬剤Dgを囲う枠Frを表示するようになっている。
こうすることで、操作者は、鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drのそれぞれが、選択画像表示エリア202に表示されている撮影画像Pdに写っている薬剤Dgのどれに対応しているのかを容易に確認することができる。尚、ここでは、撮影画像Pd上に、選択された鑑別結果情報Drに対応する薬剤Dgを示すマークとして枠Frを表示するようにしたが、これに限らず、撮影画像Pd上で、選択された鑑別結果情報Drに対応する薬剤Dgを確認できるものであれば、枠Frとは異なるマークを表示するようにしてもよい。
さらにこの鑑別結果表示画面200には、鑑別結果情報Drに薬剤情報Ddとして示されている第1位候補の薬剤を他の薬剤に変更する(つまり正解となる鑑別結果を変更する)為の変更ボタン204が設けられている。
ここで、操作者が、鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drの1つを選択した状態で、変更ボタン204を押下操作すると、鑑別結果表示画面200から図23に示す鑑別結果変更画面210へと切り替わる。
鑑別結果変更画面210は、選択された鑑別結果情報Drに対応する薬剤Dgの撮影画像Pcが表示される撮影画像表示エリア211と、薬剤Dgの鑑別結果として薬剤鑑別部102から得られた全候補の薬剤情報Ddが表示される候補薬剤表示エリア212とを有している。
候補薬剤表示エリア212には、全候補の薬剤情報Ddが、類似度が高い順(つまり第1位候補、第2位候補、第3位候補、…の順に、)に上から並べて表示されるようになっている。尚、図23では、候補薬剤表示エリア212に、3個の薬剤情報Ddが表示されているが、薬剤情報Ddが4個以上ある場合には、スクロールすることで全ての薬剤情報Ddを表示できるようになっている。
この鑑別結果変更画面210では、操作者が、候補薬剤表示エリア212に表示されている薬剤情報Ddの1つを選択した状態で、決定ボタン213を押下操作することにより、鑑別結果情報Drの薬剤情報Ddを操作者が選択した薬剤情報Ddに変更する(つまり正解となる鑑別結果を変更する)ことができるようになっている。
具体的には、操作者が、候補薬剤表示エリア212に表示されている薬剤情報Ddの1つを選択した状態で、決定ボタン213を押下操作すると、鑑別結果変更画面210から鑑別結果表示画面200へと切り替わり、鑑別結果表示画面200で選択されている鑑別結果情報Drの薬剤情報Ddが、鑑別結果変更画面210で選択された薬剤情報Ddに変更される。
これにより、操作者は、鑑別結果情報Drに薬剤情報Ddとして示されていた第1位候補の薬剤が、鑑別結果変更画面210で選択した薬剤情報Ddが示す薬剤(つまり他の候補の薬剤)に変更されたことを確認することができる。
さらにこの鑑別結果変更画面210には、鑑別結果情報Drに薬剤情報Ddとして示されている薬剤(つまり第1位候補の薬剤)を、キーワード検索により薬剤データベースDb(例えば市販データベースDb1)から検索した薬剤に変更する為のキーワード検索ボタン215と、直接入力した薬剤に変更する為の直接入力ボタン216が設けられている。
この鑑別結果変更画面210では、操作者が、キーワード検索ボタン215を押下操作すると、図24に示すように、候補薬剤表示エリア212がキーワード検索エリア220に切り替わる。キーワード検索エリア220には、薬剤に関するキーワードを入力する為のキーワード入力欄221と、キーワード入力欄221に入力されたキーワードで検索を開始する検索ボタン222と、検索の結果得られた薬剤の薬剤情報Ddが表示される検索結果表示欄223が設けられている。
この鑑別結果変更画面210では、操作者が、キーワード入力欄221に所望のキーワードを入力して、検索ボタン222を押下操作すると、制御部100によって、入力されたキーワードに対応する薬剤が薬剤データベースDbから検索され、検索の結果得られた薬剤の薬剤情報Ddが検索結果表示欄223に表示される。
そしてこの鑑別結果変更画面210では、操作者が、検索結果表示欄223に表示されている薬剤情報Ddの1つを選択した状態で、決定ボタン213を押下操作することにより、鑑別結果情報Drの薬剤情報Ddを、操作者が選択した薬剤情報Ddに変更することができるようになっている。
また鑑別結果変更画面210では、操作者が、直接入力ボタン216を押下操作すると、図25に示すように、候補薬剤表示エリア212が直接入力エリア230に切り替わる。直接入力エリア230には、薬剤名、識別コード、成分名、効能効果、規格などの薬剤情報Ddを直接入力する為の薬剤情報入力欄231が設けられている。
この鑑別結果変更画面210では、操作者が、薬剤情報入力欄231に薬剤情報Ddを直接入力した状態で、決定ボタン213を押下操作することにより、鑑別結果情報Drの薬剤情報Ddを、操作者が直接入力した薬剤情報Ddに変更することができるようになっている。
このように、鑑別結果表示画面200では、鑑別結果情報Drに薬剤情報Ddとして示されている薬剤が正解ではなく、鑑別結果情報Drに示されている鑑別結果が正解ではなかった場合、鑑別結果変更画面210に切り替えて、鑑別結果情報Drに薬剤情報Ddとして示されている薬剤を、他の候補の薬剤に変更したり、キーワード検索により検索された薬剤に変更したり、直接入力した薬剤に変更したりして、鑑別結果情報Drを正解となる鑑別結果に変更できるようになっている。
ちなみに、鑑別結果変更画面210には、決定ボタン213とは別に取消ボタン214が設けられていて、取消ボタン214が押下操作された場合には、鑑別結果情報Drの薬剤情報Ddを変更することなく(つまり鑑別結果情報Drに示されている鑑別結果を変更することなく)、鑑別結果変更画面210から鑑別結果表示画面200へと切り替わるようになっている。
そして、鑑別結果表示画面200(図22)では、操作者が、一包化薬110の撮影画像Pdに写っている全ての薬剤Dgについて、鑑別結果情報Drに示されている鑑別結果が正解であることを確認し終えると、鑑別結果確定ボタン205を押下操作することにより、各薬剤Dgの鑑別結果を、鑑別結果情報Drに示されている薬剤に確定することができるようになっている。
制御部100は、このようにして一包化薬110の撮影画像Pdに写っている各薬剤Dgの鑑別結果が操作者により確定されると、確定された鑑別結果と、先に入力された患者識別情報とに基づいて、鑑別した一包化薬110を持参した患者の持参薬情報を生成し、これを記憶部101に記憶する。これにより、記憶部101には、持参薬鑑別システム1によって鑑別された患者の持参薬情報が記憶されることになる。薬剤鑑別アプリケーションの画面構成は、以上のようになっている。
ここで、薬剤Dgの鑑別結果として正しい鑑別結果を選択する具体的な作業手順について、図26に示すフローチャートを用いて簡単に説明する。
操作者は、まずステップSP30において、鑑別結果表示画面200の撮影画像表示エリア201に表示されている撮影画像Pdのうち、鑑別結果を確認したい薬剤Dgが写っている撮影画像Pdを選択する。これにより、選択画像表示エリア202には、選択された撮影画像Pdが表示され、鑑別結果表示エリア203には、選択された撮影画像Pdに写っている各薬剤Dgの鑑別結果情報Drが表示される。
つづくステップSP31において、操作者は、鑑別結果表示エリア203に表示された薬剤Dgの鑑別結果情報Drが正しい鑑別結果となっているかを確認する。ここで、操作者が、鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drの1つを選択すると、選択された鑑別結果情報Drにフォーカスが当てられる。具体的には、選択された鑑別結果情報Drが四角形の枠で囲われる。さらにこのとき、選択画像表示エリア202に表示されている撮影画像Pd上に、選択された鑑別結果情報Drに対応する薬剤Dgを囲う枠Frが表示される。これにより、操作者は、選択した鑑別結果情報Drが、選択画像表示エリア202に表示されている撮影画像Pdに写っている薬剤Dgのどれに対応しているのかを容易に確認することができる。
また、鑑別結果表示エリア203に表示された鑑別結果情報Drのうち、第1位候補が確定されている鑑別結果情報Drについては、確定されていない鑑別結果情報Drとは異なる背景色(例えば黄色)で表示される。これにより、操作者は、鑑別結果表示エリア203に表示された鑑別結果情報Drのうち、例えば黄色の背景色で表示されている鑑別結果情報Drについては確認する必要がなく、それ以外の鑑別結果情報Drについては確認する必要があるというような判断をすることができる。
つづくステップSP32において、操作者は、鑑別結果表示エリア203に表示された薬剤Dgの鑑別結果情報Drを変更するかどうかを判断する。ここで、操作者は、鑑別結果情報Drが正しく変更する必要はないと判断した場合、一連の作業手順を終了する。
これに対して、鑑別結果情報Drが正しい鑑別結果ではなく、変更する必要があると判断した場合、操作者は、ステップSP33において、変更したい鑑別結果情報Drを選択した状態で変更ボタン204を押下操作する。これにより、鑑別結果表示画面200から鑑別結果変更画面210に切り替わる。
つづくステップSP34において、操作者は、鑑別結果変更画面210の候補薬剤表示エリア212に表示されている全候補の薬剤情報Ddを確認する。つづくステップSP35において、操作者は、候補薬剤表示エリア212に表示されている全候補の薬剤情報Ddの中に、正しい鑑別結果となる薬剤情報Ddが存在するかどうかを判断する。ここで、操作者は、正しい鑑別結果となる薬剤情報Ddが存在すると判断した場合、ステップSP36において、正しい薬剤情報Ddを選択した状態で決定ボタン213を押下操作する。これにより鑑別結果変更画面210から鑑別結果表示画面200に切り替わり、選択していた鑑別結果情報Drが正しい鑑別結果に変更される。ここで、操作者は、一連の作業手順を終了する。
これに対して、候補薬剤表示エリア212に表示されている全候補の薬剤情報Ddの中に、正しい鑑別結果となる薬剤情報Ddが存在しないと判断した場合、操作者は、ステップSP37において、キーワード検索ボタン215を押下操作する。これにより、鑑別結果表示画面200の候補薬剤表示エリア212がキーワード検索エリア220に切り替わる。
つづくステップSP38において、操作者は、キーワード検索エリア220上で正しい薬剤に関するキーワードを入力して検索ボタン222を押下操作する。これによりキーワード検索エリア220には、検索の結果得られた薬剤の薬剤情報Ddが表示される。
つづくステップSP39において、操作者は、検索の結果得られた薬剤の薬剤情報Ddの中に、正しい鑑別結果となる薬剤情報Ddが存在するかどうかを判断する。ここで、操作者は、正しい鑑別結果となる薬剤情報Ddが存在すると判断した場合、ステップSP40において、正しい薬剤情報Ddを選択した状態で決定ボタン213を押下操作する。これにより鑑別結果変更画面210から鑑別結果表示画面200に切り替わり、選択していた鑑別結果情報Drが正しい鑑別結果に変更される。ここで、操作者は、一連の作業手順を終了する。
これに対して、検索の結果得られた薬剤の薬剤情報Ddの中に、正しい鑑別結果となる薬剤情報Ddが存在しないと判断した場合、もしくは入力したキーワードに対応する薬剤が検索されなかった場合、操作者は、ステップSP41において、直接入力ボタン216を押下操作する。これにより、鑑別結果表示画面200のキーワード検索エリア220が直接入力エリア230に切り替わる。
つづくステップSP42において、操作者は、直接入力エリア230上で正しい鑑別結果となる薬剤情報Ddを直接入力する。つづくステップSP43において、操作者は、決定ボタン213を押下操作する。これにより鑑別結果変更画面210から鑑別結果表示画面200に切り替わり、選択していた鑑別結果情報Drが正しい鑑別結果に変更される。ここで、操作者は、一連の作業手順を終了する。薬剤Dgの鑑別結果として正しい鑑別結果を選択する具体的な作業手順は、以上のようになっている。持参薬鑑別システム1による一包化薬110の鑑別についての説明は以上である。
[1-6.バラ薬の鑑別]
次に、持参薬鑑別システム1によるバラ薬の鑑別について説明する。尚、バラ薬とは、一包化されてなくバラの薬剤のことである。
バラ薬を鑑別する場合、図27(A)に示すシャーレ300を使用する。このシャーレ300は、丸く浅いガラス皿300gの底面の外周寄りに、カプセル剤Dgcを載置する為のカプセル載置部300cを設けたものである。
具体的に、シャーレ300は、透明なガラス皿300gの底面に、カプセル載置部300cとして、断面三角形状の角棒部材が2本平行に並べて配置されていて、2本の角棒部材の間にできる隙間にカプセル剤Dgcを置くことで、カプセル剤Dgcの転がりを防ぐようになっている。また、2本の角棒部材は、シャーレ300の内壁面に接触しないように配置されている。これにより、例えば、カプセル剤Dgcがシャーレ300の内壁面付近に置かれる可能性を低減できる。尚、このカプセル載置部300cは、2本の角棒部材が、例えば不透明な樹脂により形成されている。またこのシャーレ300は、錠剤Dgtについては、ガラス皿300gの底面のうち、カプセル載置部300c以外の箇所に載置するようになっている。
操作者は、バラ薬Dg(錠剤Dgt及びカプセル剤Dgc)を持参薬鑑別システム1で鑑別する為に、まず、バラ薬Dgのうち、錠剤Dgtを、シャーレ300の底面のカプセル載置部300c以外の箇所に置き、カプセル剤Dgcを、薬剤識別情報Dcが上側となる向きで、カプセル載置部300cに置く。
次に、操作者は、図27(B)に示すように、排出位置にあるトレイ40の受け皿41の上面に収まるように、シャーレ300を、受け皿41の前側の傾斜面(スロープ)を利用しながらセットする。尚、シャーレ300は、その外径が受け皿41の前後方向の長さよりわずかに小さなサイズとなっている。
このようにしてバラ薬Dgが置かれたシャーレ300をトレイ40にセットした後、操作者は、制御装置2の操作部22を操作することにより、バラ薬Dgを持参した患者の患者識別情報を入力するとともに、鑑別対象をバラ薬としたうえで、鑑別開始を指示する。すると、制御装置2の制御部100は、撮影装置3を制御して、シャーレ300上の薬剤Dgの撮影を行う。
ここで、図28(A)~(C)に、シャーレ300上の薬剤Dgを撮影する際のトレイ40の動作遷移図を示す。尚、図28(A)~(C)は、トレイ40を右側から見た側面図であり、トレイ40にセットされているシャーレ300上の薬剤Dgの位置を分かり易くする為に、トレイ40及びシャーレ300の一部を省略したり簡略化したりした図となっている。
撮影装置3は、まずシャーレ300がセットされたトレイ40を、図28(A)に示す排出位置から図28(B)に示す初期位置まで後方に移動させる。次に、撮影装置3は、トレイ40を、初期位置から所定量だけ前方に移動させることで、図28(C)に示す第1撮影位置まで移動させる。第1撮影位置にあるとき、トレイ40は、受け皿41の前後方向の中心付近に、上側カメラ51及び下側カメラ55(図28中省略)の光軸A1、A2が位置する。このとき、シャーレ300上のバラ薬Dg(錠剤Dgt及びカプセル剤Dgc)は、上側カメラ51及び下側カメラ55の撮影範囲Cr内に位置することになる。
トレイ40を第1撮影位置まで移動させた後、撮影装置3は、シャーレ300上のバラ薬Dgの撮影を行う。具体的に、撮影装置3は、まず上側第1照明53を点灯して上側カメラ51でバラ薬Dgを上から撮影する(1回目の撮影)。次に撮影装置3は、上側第1照明53を消灯し、上側第2照明54を点灯して上側カメラ51でバラ薬Dgを上から撮影する(2回目の撮影)。次に撮影装置3は、上側第2照明54を消灯し、下側第1照明57を点灯して下側カメラ55でバラ薬Dgを下から撮影する(3回目の撮影)。次に撮影装置3は、下側第1照明57を消灯し、下側第2照明58を点灯して下側カメラ55でバラ薬Dgを下から撮影する(4回目の撮影)。そして撮影装置3は最後に下側第2照明58を消灯する。
このように撮影装置3は、トレイ40を第1撮影位置まで移動させた後、計4回の撮影を行うようになっている。そして撮影装置3は、トレイ40を、第1撮影位置から図28(A)に示す排出位置まで移動させる。
このように撮影装置3は、バラ薬Dgの撮影時、トレイ40を第1撮影位置に移動させ、4回の撮影を行うようになっていて、撮影ごとに得られる画像を、順次、制御装置2に送信するようになっている。尚、トレイコントロール基板70は、シャーレ300上に置かれたバラ薬Dgがシャーレ300からこぼれ落ちたりしない移動速度でトレイ40を移動させるようになっている。
制御装置2の制御部100は、撮影装置3から順に送られてくる4枚の画像を、記憶部101に記憶する。このとき制御部100は、各画像に対して、撮影したカメラ(上側カメラ51、下側カメラ55)と、利用した照明(上側第1照明53、上側第2照明54、下側第1照明57、下側第2照明58)との組み合わせを表すファイル名を付与して、記憶部101に記憶するようになっている。
制御装置2の制御部100は、このようにして記憶部101に記憶した画像をもとに、バラ薬Dgの鑑別を、薬剤鑑別部102により行う。尚、バラ薬Dgの鑑別では、第1撮影位置で撮影した4枚の画像の全てもしくは一部から切り出した薬剤画像を使用する。バラ薬Dgの鑑別のアルゴリズム、鑑別結果の表示などについては、一包化薬110の場合と同様の為、説明は省略する。持参薬鑑別システム1によるバラ薬Dgの鑑別についての説明は以上である。
[1-7.ここまでのまとめと効果]
ここで、ここまでのまとめと効果について説明する。ここまで説明したように、第1の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、カプセル剤Dgcがトレイ40の移動方向と直交するようにして一包化薬110をトレイ40にセットするとともに、トレイ40の位置を、第1撮影位置、第2撮影位置、及び第3撮影位置と変えながら、一包化薬110内の薬剤Dgを上側カメラ51及び下側カメラ55で撮影するようにした。
こうすることで、持参薬鑑別システム1では、トレイ40上にセットされた薬剤Dgを複数の角度から撮影することができるので、例えば、カプセル剤Dgcの外周のどこに薬剤識別情報Dcが位置していても、この薬剤識別情報Dcを画像に写して正確に読み取ることができる。この結果、持参薬鑑別システム1では、従来よりも鑑別精度を向上させることができる。かくして、持参薬鑑別システム1では、操作者による鑑別結果を正しい鑑別結果に変更する作業を削減することができ、鑑別に要する時間を短縮することができる。
また持参薬鑑別システム1では、従来、中身の薬剤Dgを取り出してバラ薬にしないと鑑別できなかった一包化薬110を、そのままトレイ40にセットして鑑別できるので、一包化薬110から薬剤Dgを取り出してもよいかを患者に確認したり、一包化薬110から薬剤Dgを取り出したりする作業を省略することができる。
さらに持参薬鑑別システム1では、鑑別結果表示画面200上で、操作者が、鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drの1つを選択すると、選択された鑑別結果情報Drにフォーカスを当てるとともに、選択画像表示エリア202に表示されている一包化薬110の撮影画像Pd上に、選択された鑑別結果情報Drに対応する薬剤Dgを囲う枠Frを表示するようにした。
こうすることで、持参薬鑑別システム1では、鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drのそれぞれが、一包化薬110の撮影画像Pdに写っている薬剤Dgのどれに対応しているのかを操作者に対して容易に確認させることができる。これにより、持参薬鑑別システム1では、操作者による鑑別結果の確認作業の効率を向上させることができる。
さらに持参薬鑑別システム1では、トレイAssyユニット50に、トレイ40が排出位置にあることを検知する第1位置センサ81と、トレイ40が初期位置にあることを検知する第2位置センサ82を設けるようにした。
こうすることで、持参薬鑑別システム1では、例えば薬剤鑑別時に、撮影装置3の外部に排出されてきたトレイ40を、操作者が触って排出位置の手前で止めてしまい、トレイ40の実際の位置とモータ80の位置制御により推定できる位置とがずれてしまっても、第1位置センサ81がトレイ40を検知するまで、トレイ40を移動させつづけることにより、トレイ40を正確に排出位置まで移動させることができる。
また持参薬鑑別システム1では、例えば排出位置まで移動させたトレイ40を初期位置まで移動させる際に、トレイ40が操作者によって後方に押し込まれて、トレイ40の実際の位置とモータ80の位置制御により推定できる位置とがずれてしまっても、第2位置センサ82がトレイ40を検知するまで、トレイ40を移動させつづけることにより、トレイ40を正確に初期位置まで移動させることができる。このように、持参薬鑑別システム1では、トレイ40を正確に初期位置まで移動させることができるので、その後、撮影装置3内部で、トレイ40を、第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置まで正確に移動させることができる。
またこれに限らず、持参薬鑑別システム1では、例えば排出位置にあるトレイ40が操作者によって後方に押し込まれた際に、トレイ40が排出位置から外れたことを第1位置センサ81により検知して、制御装置2の制御部100が所定の異常系動作(例えば表示部21にトレイ40を触らないよう警告する画面を表示するとともに、トレイ40を排出位置に戻す動作)を行うようにしてもよい。
さらに持参薬鑑別システム1では、撮影装置3の装置筐体30の下部に、装置筐体30内部でトレイ40からこぼれ落ちてしまった薬剤が収容される引き出し35を設けた。これにより、持参薬鑑別システム1では、装置筐体30内部でトレイ40からこぼれ落ちてしまった薬剤を、この引き出し35を引き出すことで、容易に取り出すことができる。
さらに、持参薬鑑別システム1では、引き出し35を引き出した際に、トレイ40の下方に位置する下側第2照明58と、これを支持するブラケット68とが装置筐体30の外部に露出するようにした。こうすることで、持参薬鑑別システム1では、トレイ40から下側第2照明58上もしくはブラケット68上へとこぼれ落ちてしまった薬剤についても、引き出し35を引き出すことで、容易に取り出すことができる。
さらに持参薬鑑別システム1では、撮影装置3の装置筐体30内部に設けられた後フレーム60bの段差部分(つまり中間平面部60b3)を下方へと下るスロープ形状にした。こうすることで、持参薬鑑別システム1では、後フレーム60bの段差部分へと落ちてきた薬剤を、段差部分にとどまらせることなく、下方の引き出し35へと案内することができる。これにより、持参薬鑑別システム1では、トレイ40から後フレーム60bの段差部分にこぼれ落ちてきた薬剤が段差部分にとどまって操作者が取り出せなくなる状況を回避することができる。
さらに持参薬鑑別システム1では、トレイ40を移動可能に支持する左シャフト83s1及び右シャフト83s2を、上側第2照明54及び下側第2照明58の外周のさらに外側に配置するようにした。こうすることで、持参薬鑑別システム1では、上側カメラ51及び下側カメラ55での撮影時に、左シャフト83s1及び右シャフト83s2の影が撮影画像に影響を及ぼしたり、左シャフト83s1及び右シャフト83s2に反射した光が撮影画像に影響を及ぼしたりすることを回避できる。この結果、持参薬鑑別システム1では、撮影画像から薬剤Dgが写っている部分を正確に切り出したり、薬剤Dgの特徴を正確に抽出したりすることができ、鑑別精度を向上させることができる。
第1の実施の形態の持参薬鑑別システム1は、上述した効果を有することにより、従来と比べて、各段と使い勝手が向上している。
[1-8.その他の機能]
次に、持参薬鑑別システム1が有するその他の機能について説明する。持参薬鑑別システム1は、その他の機能として、トレイ40の受け皿41上に薬剤が置かれているかどうかを検知する薬剤有無検知機能と、患者の診察券から患者識別情報を読み取る患者識別情報読取機能とを有している。以下、薬剤有無検知機能と患者識別情報読取機能について、順に説明する。
[1-8-1.薬剤有無検知機能]
まず薬剤有無検知機能について、図29、図30に示すフローチャートを用いて説明する。図29は、持参薬鑑別システム1の設置時に実行される初期化処理の手順であり、図30は、薬剤鑑別時に実行される薬剤有無検知処理の手順である。薬剤検知有無機能は、これらの処理により実現されている。
図29に示すように、初期化処理では、持参薬鑑別システム1の管理者などにより、操作部22を介して初期化処理の実行が指示されると、制御装置2の制御部100が、ステップSP50において、撮影装置3を制御してトレイ40を排出位置まで移動させるとともに、表示部21に、トレイ40上に何か置かれている場合にはそれを取り除くよう指示する画面を表示する。ここで、管理者は、トレイ40上に何が置かれている場合には、それを取り除き、例えば、画面上のOKボタン(図示せず)を押下操作する。
つづくステップSP51において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3を制御してトレイ40を初期位置まで移動させ、その後、トレイ40を、所定の撮影位置(例えば第1撮影位置)まで移動させて撮影する。このとき、トレイ40上には何も置かれていない為、撮影された画像には、何も置かれていないトレイ40が写っていることになる。尚、トレイ40の画像は、例えば、上側カメラ51と上側第1照明53とを利用して撮影すればよい。
つづくステップSP52において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3から送られてくる撮影画像を、基準画像として記憶部101に記憶して、初期化処理を終了する。初期化処理の手順は、以上のようになっている。
つづけて図30に示すように、薬剤有無検知処理では、作業者により、操作部22を介して薬剤鑑別の実行が指示されると、制御装置2の制御部100が、ステップSP60において、撮影装置3を制御してトレイ40を排出位置まで移動させるとともに、表示部21に、トレイ40上に薬剤を置くよう指示する画面を表示する。ここで、操作者は、トレイ40上に薬剤をセットするとともに、操作部22を介して鑑別開始を指示する。
つづくステップSP61にておいて、制御装置2の制御部100は、トレイ40を初期位置まで移動させた後、撮影位置まで移動させて、トレイ40上の薬剤を撮影する。尚、具体的な撮影手順については、上述した為、説明を省略する。
つづくステップSP62において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3から送られてきた撮影画像のうち、基準画像と同一の撮影条件で撮影された撮影画像(例えば第1撮影位置で上側カメラ51と上側第1照明53とを利用して撮影された画像)と、記憶部101に記憶されている基準画像とを比較する。
つづくステップSP63において、制御装置2の制御部100は、撮影画像と基準画像とを比較した結果、これらの画像に差分があるか否かを判定する。ここで撮影画像と基準画像とに差分がない場合、このことは、この時点でトレイ40上に薬剤がセットされていないことを意味する。この場合、制御装置2の制御部100は、ステップSP60に戻り、トレイ40を排出位置まで移動させるとともに、表示部21に、トレイ40上に薬剤を置くよう指示する画面を再度表示する。
これに対して、撮影画像と基準画像とに差分がある場合、このことは、この時点でトレイ40上に薬剤がセットされていることを意味する。この場合、制御装置2の制御部100は、ステップSP64に写り、薬剤鑑別部102により薬剤を鑑別し、つづくステップSP65において、表示部21に鑑別結果を表示する。尚、具体的な鑑別方法及び鑑別結果の表示については、上述した為、説明を省略する。
つづくステップSP66において、制御装置2の制御部100は、トレイ40を排出位置まで移動させるとともに、表示部21に、トレイ40上の薬剤(つまり鑑別し終えた薬剤)を取り除くよう指示する画面を表示する。ここで、操作者は、トレイ40上の薬剤を取り除き、例えば、画面上のOKボタン(図示せず)を押下操作する。
つづくステップSP67において、制御装置2の制御部100は、トレイ40を初期位置まで移動させ、その後、トレイ40を基準画像と同一の撮影条件で撮影(つまり第1撮影位置で上側カメラ51と上側第1照明53とを利用して撮影)する。
つづくステップSP68において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3から送られてくる撮影画像と、記憶部101に記憶されている基準画像とを比較する。つづくステップSP69において、制御装置2の制御部100は、撮影画像と基準画像とを比較した結果、これらの画像に差分があるか否かを判定する。ここで撮影画像と基準画像とに差分がある場合、このことは、トレイ40上の薬剤が取り除かれていないことを意味する。この場合、制御装置2の制御部100は、ステップSP66に戻り、トレイ40を排出位置まで移動させるとともに、表示部21に、トレイ40上に薬剤を取り除くよう指示する画面を再度表示する。
これに対して、撮影画像と基準画像とに差分がない場合、このことは、トレイ40上の薬剤が取り除かれたことを意味する。この場合、制御装置2の制御部100は、薬剤有無検知処理を終了する。薬剤有無検知処理の手順は、以上のようになっている。
このように薬剤有無検知機能では、薬剤検知用のセンサなどを別途必要とせず、撮影装置3が有する上側カメラ51又は下側カメラ55を用いてトレイ40上の薬剤の有無を検知することができる。これにより、持参薬鑑別システム1では、鑑別開始時にトレイ40上への薬剤の置き忘れを作業者に指摘したり、鑑別終了時にトレイ上の薬剤の取り忘れた作業者に指摘したりすることができる。すなわち、持参薬鑑別システム1では、薬剤有無検知機能により、鑑別作業の効率向上と、ハードウェアの低コスト化を実現できる。
尚、本実施の形態では、鑑別開始時と鑑別終了時にトレイ40上の薬剤の有無を検知するようにしたが、鑑別開始時と鑑別終了時のどちらか一方でのみ薬剤の有無を検知するようにしたり、装置起動時などにトレイ40上の薬剤の有無を検知したりしてもよい。
[1-8-2.患者識別情報読取機能]
つづけて、患者識別情報読取機能について、図31に示すフローチャートを用いて説明する。図31は、薬剤鑑別時に実行される患者識別情報読取処理の手順である。患者識別情報読取機能は、この処理により実現されている。
持参薬鑑別システム1では、操作者が、制御装置2の操作部22を操作して、薬剤を持参した患者の患者識別情報を直接入力するようになっているが、制御装置2の操作部22を操作して、患者識別情報の入力に関する設定を直接入力から自動読取に変更することで、患者の診察券から患者識別情報を自動的に読み取ることができるようになっている。
このように患者識別情報の入力が自動読取に設定されている場合、制御装置2の制御部100は、図31に示す患者識別情報読取処理を実行する。すなわち、制御装置2の制御部100は、作業者により、操作部22を介して薬剤鑑別の実行が指示されると、ステップSP70において、トレイ40を排出位置まで移動させるとともに、表示部21に、トレイ40上に患者の診察券を置くよう指示する画面を表示する。ここで、操作者は、トレイ40の受け皿41上に診察券を置き、例えば、画面上のOKボタン(図示せず)を押下操作する。
つづくステップSP71において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3を制御してトレイ40を初期位置まで移動させ、その後、トレイ40を、所定の撮影位置(例えば第1撮影位置)まで移動させてトレイ40上の診察券を撮影する。尚、診察券の画像は、例えば、上側カメラ51と上側第1照明53とを利用して撮影すればよい。
つづくステップSP72において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3から送られてきた診察券の撮影画像から、診察券に刻印又は印字されている患者識別番号(診察券番号、患者番号など)を取得する。尚、患者識別番号の取得には、例えばOCR(光学的文字認識)の技術を利用する。
つづくステップSP73において、制御装置2の制御部100は、トレイ40を排出位置まで移動させるとともに、表示部21に、トレイ40上の診察券を取り除いて鑑別する薬剤を置くよう指示する画面を表示する。ここで、操作者は、トレイ40の受け皿41から診察券を取り除いて鑑別する薬剤を置き、例えば、画面上のOKボタン(図示せず)を押下操作する。
つづくステップSP74において、制御装置2の制御部100は、トレイ40を初期位置まで移動させた後、撮影位置まで移動させて、トレイ40上の薬剤を撮影する。尚、具体的な撮影手順については、上述した為、説明を省略する。つづくステップSP75において、制御装置2の制御部100は、薬剤鑑別部102により薬剤を鑑別し、つづくステップSP76において、表示部21に鑑別結果を表示する。尚、具体的な鑑別方法及び鑑別結果の表示については、上述した為、説明を省略する。そして、制御装置2の制御部100は、操作者により、鑑別結果が確定されると、確定された鑑別結果と、診察券から取得した患者識別情報とに基づいて、鑑別した薬剤を持参した患者の持参薬情報を生成し、これを記憶部101に記憶して、患者識別情報読取処理を終了する。患者識別情報読取処理の手順は、以上のようになっている。
このように患者識別情報読取機能では、診察券から患者識別情報を読み取る装置を別途必要とせず、撮影装置3が有する上側カメラ51又は下側カメラ55を用いてトレイ40上に置かれた診察券を撮影して、診察券から患者識別情報を読み取ることができる。これにより、持参薬鑑別システム1では、患者識別情報の入力ミスを削減することができる。すなわち、持参薬鑑別システム1では、薬剤有無検知機能により、患者識別情報を正確に取得できるとともに、ハードウェアの低コスト化を実現できる。
尚、本実施の形態では、診察券から患者識別情報を読み取るようにしたが、これに限らず、患者識別情報が刻印又は印字されていて、且つトレイ40上に置くことのできる媒体であれば、診察券以外の媒体(例えば薬手帳など)から患者識別情報を読み取るようにしてもよい。
[1-9.第1の実施の形態の変形例]
[1-9-1.第1の実施の形態の変形例1]
ここで、上述した第1の実施の形態の変形例について説明する。上述した第1の実施の形態の鑑別アルゴリズムでは、図19に示したように、薬剤Dgの鑑別結果として第1位候補を表示して(ステップSP8)、操作者に第1位候補が薬剤Dgの鑑別結果として正解であるかを確認させ、正解であるものについてはそのまま正解と選択され、間違っているものについては、他の候補が選択されたり、キーワード検索又は直接入力により得られた薬剤が選択されたりしていた(ステップSP9)。ここで、操作者による正解の選択を学習して、次回以降の鑑別に反映させるようにしてもよい。
具体的には、図32に示すように、ステップSP9での操作者による正解選択終了後、制御装置2の制御部100は、ステップSP80において、正解として選択された薬剤ごとに、鑑別結果の候補から選択されたものであるか、候補以外から選択(つまりキーワード検索又は直接入力により選択)されたものであるか、これまでに何回鑑別されたのかといったログ情報を取得する。
そして、制御装置2の制御部100は、これら3つのログ情報を、それぞれ候補正解状況Sd1、候補外正解状況Sd2、薬剤鑑別数Sd3として、記憶部101に設けられた運用データベースDb3に記録するようになっている。
つづくステップSP81において、制御装置2の制御部100は、運用データベースDb3に記録されている候補正解状況Sd1、候補外正解状況Sd2、薬剤鑑別数Sd3に基づいて、検索初期条件の設定、正解候補重み付け、専用データベースDb2への登録といった処理を実行する。
ここで、検索初期条件の設定とは、薬剤鑑別数Sd3が多い薬剤と、その薬剤の鑑別結果で候補となった薬剤を別途登録しておき、鑑別時に、市販データベースDb1内、及び専用データベースDb2内で、まず登録されている薬剤のみ検索するように設定する処理である。こうすることで、薬剤Dgの鑑別時に、これまでの薬剤鑑別数Sd3が多い薬剤ほど、市販データベースDb1又は専用データベースDb2から早く検索されることになる。これにより、同一の薬剤Dgを何度も鑑別していると、市販データベースDb1又は専用データベースDb2からの候補の検索時間が短縮されることになる。
また正解候補重み付けとは、正解として選択された薬剤が、第1位候補以外の候補である状況が所定回数繰り返されるごとに、この薬剤については、鑑別時に算出された類似度を高くしていく(例えば算出された類似度×1.2、1.3、1.4……としていく)処理である。こうすることで、例えば、同一の薬剤Dgを何度も鑑別していて、且つ何度も第1位候補以外の候補を正解として選択していると、次第に選択した候補の順位が上がっていき、最終的には第1位候補になる。これにより、操作者による正解選択操作が簡略化されることになる。
さらに専用データベースDb2への登録とは、正解として選択された薬剤が、候補以外から選択(つまりキーワード検索又は直接入力により選択)される状況が所定回数繰り返された場合に、この薬剤については、鑑別時に撮影された画像と、キーワード検索又は直接入力により得られた薬剤情報とを、専用データベースDb2に登録する処理である。こうすることで、例えば、同一の薬剤Dgを何度も鑑別していて、且つ何度も候補以外から正解を選択していると、或る時点を境に、これまで候補以外から正解として選択していた薬剤が、候補に現れ、候補から正解を選択できるようになる。これにより、操作者による正解選択操作が簡略化されることになる。
このように、操作者による正解の選択を学習して、次回以降の鑑別に反映させることで、市販データベースDb1又は専用データベースDb2からの候補の検索時間を短縮したり、操作者による正解選択操作を簡略化したりすることができる。
[1-9-2.第1の実施の形態の変形例2]
また上述した第1の実施の形態の患者識別情報読取機能では、まずトレイ40に診察券を置き、診察券を撮影した撮影画像から患者識別情報を取得し、その後、トレイ40に薬剤を置き、薬剤を撮影した撮影画像を使用して薬剤を鑑別するようにした。これに限らず、例えば、トレイ40に診察券と薬剤の両方を置き、診察券と薬剤の両方を撮影した撮影画像から患者識別情報を取得するとともに、この撮影画像を用いて薬剤を鑑別するようにしてもよい。
このようにした場合の患者識別情報読取処理の手順を図33に示すフローチャートを用いて説明する。制御装置2の制御部100は、作業者により、操作部22を介して薬剤鑑別の実行が指示されると、ステップSP90において、トレイ40を排出位置まで移動させるとともに、表示部21に、トレイ40上に患者の診察券と薬剤を重ならないように置くよう指示する画面を表示する。ここで、操作者は、トレイ40の受け皿41上に診察券と薬剤を重ならないように置き、例えば、画面上のOKボタン(図示せず)を押下操作する。尚、ここでは、トレイ40の受け皿41が、診察券と一包化薬110内の薬剤、又は診察券とシャーレ300上の薬剤とを、重ならないように置くことができる大きさになっているとする。
つづくステップSP91において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3を制御してトレイ40を初期位置まで移動させ、その後、トレイ40を、撮影位置まで移動させてトレイ40上の診察券と薬剤を撮影する。尚、このときの撮影位置は、トレイ40上の薬剤が一包化薬であるかバラ薬であるかによって変わる。
つづくステップSP92において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3から送られてきた撮影画像から、診察券が写っている部分を切り出し、切り出した部分から患者識別番号(診察券番号、患者番号など)を取得する。
つづくステップSP93において、制御装置2の制御部100は、撮影装置3から送られてきた撮影画像から、薬剤が写っている部分を切り出し、切り出した部分を使用して、薬剤鑑別部102により薬剤を鑑別し、つづくステップSP94において、表示部21に鑑別結果を表示する。そして、制御装置2の制御部100は、操作者により、鑑別結果が確定されると、確定した鑑別結果と、診察券から取得した患者識別情報とに基づいて、鑑別した薬剤を持参した患者の持参薬情報を生成し、これを記憶部101に記憶して、患者識別情報読取処理を終了する。患者識別情報読取処理の手順は、以上のようになっている。
このように、診察券と薬剤との両方をトレイ40に置き、診察券と薬剤の両方を撮影した撮影画像から患者識別情報を取得するとともに、この撮影画像を用いて薬剤を鑑別するようにすれば、診察券と薬剤とを別々に撮影する場合と比べて、操作者による作業効率を向上させることができる。
[1-9-3.第1の実施の形態の変形例3]
さらに上述した第1の実施の形態では、トレイAssyユニット50に、トレイ40が排出位置にあることを検知する第1位置センサ81と、トレイ40が初期位置にあることを検知する第2位置センサ82を設けた。これに限らず、トレイAssyユニット50に、これら第1位置センサ81と第2位置センサ82のどちらか一方を設けるようにしてもよい。
第1位置センサ81のみを設けるようにした場合、制御装置2の制御部100は、トレイ40が排出位置より後方に位置する間は、トレイ40の位置を、モータ80の位置制御により推定する。この場合、制御部100は、例えば、トレイ40が排出位置から外れたことを第1位置センサ81により検知すると、所定の異常系動作を行うようにすればよい。
一方で、第2位置センサ82のみを設けるようにした場合、制御装置2の制御部100は、トレイ40が初期位置より前方に位置する間は、トレイ40の位置を、モータ80の位置制御により推定する。この場合、制御部100は、第2位置センサ82がトレイ40を検知するまでトレイ40を移動させつづけることで、トレイ40を初期位置まで確実に移動させるようにすればよい。
[2.第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、薬剤鑑別アプリケーションの画面構成が、第1の実施の形態と異なっていて、それ以外の部分については、第1の実施の形態と同一もしくはほぼ同一になっている。ゆえに、ここでは主に薬剤鑑別アプリケーションの画面構成について説明する。
[2-1.薬剤鑑別アプリケーションの画面構成]
一包化薬110の画像に写っている薬剤Dgごとに得られた鑑別結果を表示する薬剤鑑別アプリケーションの画面構成について、図34~図36を用いて詳しく説明する。図34は、薬剤鑑別アプリケーションの鑑別結果表示画面400である。この鑑別結果表示画面400は、図22に示した第1の実施の形態の鑑別結果表示画面200とほぼ同様の画面構成となっている。この鑑別結果表示画面400が、鑑別結果表示画面200と異なるのは、鑑別結果表示エリア203に、薬剤Dgごとの鑑別結果情報Drとして、薬剤Dgの撮影画像Pcと、薬剤Dgの鑑別結果として得られた第1位候補の薬剤情報Ddとともに、拡大ボタン401が表示されている点である。
この拡大ボタン401は、鑑別結果情報Drとして表示されている薬剤Dgの撮影画像Pcと、鑑別結果として得られた薬剤情報Ddに含まれている画像Psとを拡大表示する為のボタンである。尚、この画像Psは、市販データベースDb1又は専用データベースDb2から得られた画像であり、以下、DB画像Psと呼ぶ。ここで、操作者が、この拡大ボタン401を押下操作すると、鑑別結果表示画面400から図35に示す拡大画像表示画面410に切り替わる。尚、鑑別結果表示画面400の上に拡大画像表示画面410が別ウインドウとして重ねて表示されるようにしてもよい。
拡大画像表示画面410は、押下操作された拡大ボタン401と同一の鑑別結果情報Drに含まれている、鑑別結果として得られたDB画像Psと、薬剤Dgの撮影画像Pcとが所定方向(例えば上下方向)に並べて拡大表示される。尚、図35に示す拡大画像表示画面410は、薬剤Dgの撮影画像Pcとして、上側カメラ51で撮影した画像のうちの1枚と、下側カメラ55で撮影した画像のうちの1枚との計2枚が拡大表示されている例である。
さらにこの拡大画像表示画面410には、薬剤Dgの撮影画像Pcの近傍に、撮影画像Pcに写っている薬剤Dgを回転させて角度を調整する為のスライドバーSb1と、薬剤Dgを拡大縮小して大きさ調整する為のスライドバーSb2とが設けられている。尚、図35に示す拡大画像表示画面410は、薬剤Dgの撮影画像Pcとして表示されている2枚の画像のそれぞれの近傍に、スライドバーSb1、Sb2が表示されている例である。
この拡大画像表示画面410では、操作者が、スライドバーSb1、Sb2をスライド操作することにより、撮影画像Pcに写っている薬剤Dgを回転させて角度を調整したり、拡大縮小して大きさ調整したりすることができるようになっている。つまり、この拡大画像表示画面410では、操作者が、撮影画像Pcの大きさ及び角度を調整しながら、撮影画像PcとDB画像Psとの詳細を見比べることで、撮影画像Pcに写っている薬剤Dgの鑑別結果として、DB画像Psに写っている薬剤が正解であるかを容易に判断できるようになっている。
さらにこの拡大画像表示画面410には、閉じるボタン411が設けられていて、操作者が、この閉じるボタン411を押下操作すると、拡大画像表示画面410から鑑別結果表示画面400に切り替わるようになっている。
ここで、操作者が、鑑別結果表示画面400の鑑別結果表示エリア203に表示されている鑑別結果情報Drの1つを選択するとともに、この鑑別結果情報Drに薬剤情報Ddとして示されている第1位候補の薬剤を他の薬剤に変更する(つまり鑑別結果を変更する)為に、変更ボタン204を押下操作すると、鑑別結果表示画面400から図36に示す鑑別結果変更画面420に切り替わる。
この鑑別結果変更画面420は、図23に示した第1の実施の形態の鑑別結果変更画面210とほぼ同様の画面構成となっている。この鑑別結果変更画面420が、鑑別結果変更画面210と異なるのは、候補薬剤表示エリア212に表示されている各候補の薬剤情報Ddに含まれているDB画像Psが、候補の順位が高いほど(つまり類似度が高いほど)大きく表示される点と、候補薬剤表示エリア212に表示されている各候補を、錠剤の候補又はカプセル剤の候補に切り替える為の候補切替ボタン421が設けられている点である。
この鑑別結果変更画面420では、候補薬剤表示エリア212に表示されている各候補のDB画像Psを、薬剤Dgと各候補との類似度が高いほど大きく表示するようにしたことで、操作者が、DB画像Psの大きさから、各候補の鑑別信頼度を容易に把握できるようになっている。
またこの鑑別結果変更画面420では、鑑別結果として得られた候補の中に錠剤の候補とカプセル剤の候補とが混在している場合に、候補薬剤表示エリア212に錠剤の候補とカプセル剤の候補のうちのどちらか一方の候補のみを表示するようにした。そして、操作者が、候補切替ボタン421を押下操作すると、候補薬剤表示エリア212に表示されている候補を、もう一方の候補に切り替えて表示するようにした。尚、候補薬剤表示エリア212に最初に表示される候補は、例えば、錠剤の候補とカプセル剤の候補のうち、第1位候補を有している方とする。
こうすることで、この鑑別結果変更画面420では、候補薬剤表示エリア212に表示される候補を、錠剤の候補のみもしくはカプセル剤の候補のみに絞ることができるので、操作者が鑑別結果の変更作業を確実且つ効率的に行うことができるようになっている。
尚、この鑑別結果変更画面420上で、鑑別結果を変更する場合には、鑑別結果変更画面210と同様、候補薬剤表示エリア212に表示されている薬剤情報Ddの1つを選択した状態で、決定ボタン213を押下操作したりすればよい。薬剤鑑別アプリケーションの画面構成は、以上のようになっている。
[2-2.正しい鑑別結果の選択]
ここで、薬剤Dgの鑑別結果として正しい鑑別結果を選択する具体的な作業手順について、図37に示すフローチャートを用いて簡単に説明する。
操作者は、まずステップSP100において、鑑別結果表示画面400の撮影画像表示エリア201に表示されている撮影画像Pdのうち、鑑別結果を確認したい薬剤Dgが写っている撮影画像Pdを選択する。これにより、選択画像表示エリア202には、選択された撮影画像Pdが表示され、鑑別結果表示エリア203には、選択された撮影画像Pdに写っている各薬剤Dgの鑑別結果情報Drが表示される。
つづくステップSP101において、操作者は、鑑別結果表示エリア203に表示された薬剤Dgの鑑別結果情報Drが正しい鑑別結果となっているかを確認する。つづくステップSP102において、操作者は、鑑別結果表示エリア203に表示された鑑別結果情報Drの中に、薬剤Dgの撮影画像Pcと、鑑別結果として得られたDB画像Psとの詳細を確認すべき鑑別結果情報Drがあるかどうかを判断する。ここで、操作者は、撮影画像PcとDB画像Psとの詳細を確認すべき鑑別結果情報Drがあると判断した場合、ステップSP103において、確認したい撮影画像PcとDB画像Psとともに鑑別結果情報Drとして表示されている拡大ボタン401を押下操作する。これにより、鑑別結果表示画面400から拡大画像表示画面410に切り替わる。
つづくステップSP104において、操作者は、この鑑別結果表示画面400上で、撮影画像PcとDB画像Psとの詳細を確認し、閉じるボタン411を押下操作する。これにより、拡大画像表示画面410から鑑別結果表示画面400に切り替わる。これに対して、撮影画像PcとDB画像Psとの詳細を確認すべき鑑別結果情報Drがないと判断した場合、操作者は、ステップSP103とステップSP104の作業を省略する。
つづくステップSP105において、操作者は、鑑別結果表示エリア203に表示された薬剤Dgの鑑別結果情報Drを変更するかどうかを判断する。ここで、操作者は、鑑別結果情報Drが正しく変更する必要はないと判断した場合、一連の作業手順を終了する。
これに対して、鑑別結果情報Drが正しい鑑別結果ではなく、変更する必要があると判断した場合、操作者は、ステップSP106において、変更したい鑑別結果情報Drを選択した状態で変更ボタン204を押下操作する。これにより、鑑別結果表示画面400から鑑別結果変更画面420に切り替わる。
つづくステップSP107において、操作者は、鑑別結果変更画面420の候補薬剤表示エリア212に表示されている全候補の薬剤情報Ddの中から、正しい薬剤情報Ddを選択した状態で決定ボタン213を押下操作する。これにより鑑別結果変更画面420から鑑別結果表示画面200に切り替わり、選択していた鑑別結果情報Drが正しい鑑別結果に変更される。ここで、操作者は、一連の作業手順を終了する。
尚、このステップSP107では、操作者が、鑑別結果変更画面420の候補薬剤表示エリア212に表示されている全候補の薬剤情報Ddの中から、正しい薬剤情報Ddを選択するようにしたが、キーワード検索により得られた薬剤の薬剤情報、もしくは直接入力した薬剤情報を、正しい薬剤情報として選択するようにしてもよい。薬剤Dgの鑑別結果として正しい鑑別結果を選択する具体的な作業手順は、以上のようになっている。
[2-3.まとめと効果]
ここまで説明したように、第2の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、鑑別結果表示画面400の鑑別結果表示エリア203に、鑑別結果情報Drとして、薬剤Dgの撮影画像Pcと、第1位候補のDB画像Psなどとともに、拡大ボタン401を表示するようにした。そして、拡大ボタン401が押下操作されると、拡大画像表示画面410上に、薬剤Dgの撮影画像Pcと、第1位候補のDB画像Psとを拡大表示するようにした。
こうすることで、第2の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、操作者が、撮影画像PcとDB画像Psとの詳細を見比べて、撮影画像Pcに写っている薬剤Dgの鑑別結果として、DB画像Psに写っている薬剤が正解であるかを容易に判断することができる。
また第2の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、鑑別結果変更画面420の候補薬剤表示エリア212に表示されている各候補のDB画像Psを、候補の順位が高いほど大きく表示するようにした。こうすることで、第2の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、操作者が、DB画像Psの大きさから、各候補の鑑別信頼度を容易に把握することができる。
さらに第2の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、薬剤Dgの鑑別結果として得られた候補の中に錠剤の候補とカプセル剤の候補とが混在している場合に、鑑別結果変更画面420の候補薬剤表示エリア212に、錠剤の候補とカプセル剤の候補のうちのどちらか一方の候補のみを表示し、候補切替ボタン421を押下操作することで、候補薬剤表示エリア212に表示されている候補を、もう一方の候補に切り替えて表示するようにした。
こうすることで、第2の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、鑑別結果変更画面420の候補薬剤表示エリア212に表示される候補を、錠剤の候補のみもしくはカプセル剤の候補のみに絞ることができるので、操作者が鑑別結果の変更作業を確実且つ効率的に行うことができる。
[2-4.第2の実施の形態の変形例]
[2-4-1.第2の実施の形態の変形例1]
ここで、上述した第2の実施の形態の変形例について説明する。上述した第2の実施の形態では、鑑別結果表示画面400の鑑別結果表示エリア203に、薬剤Dgごとの鑑別結果情報Drとして、薬剤Dgの撮影画像Pcと、鑑別結果として得られた第1位候補の薬剤情報Ddとともに、拡大ボタン401を表示するようにした。ここで例えば、鑑別結果として得られた候補の中に錠剤の候補とカプセル剤の候補とが混在している場合に、図38に示すように、鑑別結果表示エリア203に、鑑別結果情報Drとして、薬剤Dgの撮影画像Pcと、鑑別結果として得られたカプセル剤の候補のうち最上位の候補の薬剤情報Ddcと、錠剤の候補のうち最上位の候補の薬剤情報Ddtとを表示するようにしてもよい。
またこの場合、拡大ボタン401については、カプセル剤の候補の薬剤情報Ddcと、錠剤の候補の薬剤情報Ddtのそれぞれに対して1個ずつの計2個表示される。さらに鑑別結果表示エリア203では、カプセル剤の候補の薬剤情報Ddc又は錠剤の候補の薬剤情報Ddtを選択できるようになっている。ここで、カプセル剤の候補の薬剤情報Ddcが選択された状態で、変更ボタン204が押下操作されると、鑑別結果表示画面400から鑑別結果変更画面420に切り替わり、候補薬剤表示エリア212に、カプセル剤の候補が表示される。一方で、錠剤の候補の薬剤情報Ddtが選択された状態で、変更ボタン204が押下操作されると、鑑別結果表示画面400から鑑別結果変更画面420に切り替わり、候補薬剤表示エリア212に、錠剤Dgtの候補が表示される。
こうすることで、鑑別結果として得られた候補の中に錠剤の候補とカプセル剤の候補とが混在していることを操作者に正確に認識させることができるとともに、鑑別結果変更画面420に表示されている候補が、カプセル剤の候補であるのか、錠剤の候補であるのかを操作者に正確に認識させることができる。これにより、操作者による鑑別結果の変更作業の確実性を向上することができるとともに、作業時間の短縮を図ることができる。
尚、鑑別結果変更画面420上で鑑別結果が変更されると、変更された鑑別結果に応じて、鑑別結果表示画面400に表示されている鑑別結果情報Drが、カプセル剤の薬剤情報Ddc又は錠剤の薬剤情報Ddtのどちらか一方に絞られるようになっている。
[3.第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態は、シャーレ300上のバラ薬Dgを撮影した撮影画像に写っている各薬剤Dgを、錠剤Dgt又はカプセル剤Dgcに分類する方法が、第1の実施の形態とは異なっていて、それ以外の部分については、第1の実施の形態と同一もしくはほぼ同一になっている。ゆえに、ここでは、主に薬剤Dgの分類方法について説明する。
[3-1.薬剤の分類方法]
上述した第1の実施の形態では、シャーレ300上のバラ薬Dgを撮影した撮影画像から、各薬剤Dgが写っている部分(薬剤画像)を切り出し、切り出した薬剤画像のそれぞれを画像解析により錠剤Dgtの薬剤画像(錠剤画像)と、カプセル剤の薬剤画像(カプセル剤画像)とに分けるようになっていた。
これに対して、第3の実施の形態では、図39(A)に示す、バラ薬Dg(錠剤Dgt及びカプセル剤Dgc)が置かれたシャーレ300全体を撮影した撮影画像Ppに対して、図39(B)に示すように、錠剤Dgtが配置される錠剤配置領域Taとカプセル剤Dgcが配置されるカプセル剤配置領域Caとを予め設定しておくようになっている。尚、本実施の形態では、シャーレ300が、図27(B)に示す向きで、トレイ40上にセットされることを前提としている。
具体的には、撮影画像Pp全体のうち、カプセル載置部300c全体とその周辺とを含んだ領域をカプセル剤配置領域Caに設定し、残りの領域を錠剤配置領域Taに設定しておく。尚、図39(B)は、四角形の撮影画像Ppを、カプセル載置部300c側に位置する全体の1/3程度の大きさでなる四角形のカプセル剤配置領域Caと、全体の2/3程度の大きさでなる四角形の錠剤配置領域Taとに分割した例である。
そして、この第3の実施の形態では、撮影画像Ppから切り出した薬剤画像が、カプセル剤配置領域Caと錠剤配置領域Taのどちらから切り出したものであるのかに応じて、切り出した薬剤画像を錠剤画像とカプセル剤画像とに分けるようになっている。
ここで、図40に示すフローチャートを用いて、薬剤を分類して鑑別するときの具体的な処理手順について説明する。最初のステップSP110で、制御装置2の薬剤鑑別部102は、バラ薬Dgが置かれたシャーレ300全体を撮影した撮影画像Ppから、1つの薬剤Dgが写っている薬剤画像を切り出す。つづくステップSP111において、薬剤鑑別部102は、切り出した薬剤画像の撮影画像Pp内の位置を算出する。具体的には、例えば、切り出した薬剤画像の中心の撮影画像Pp内の位置を算出する
つづくステップSP112において、薬剤鑑別部102は、ステップSP111で算出した位置が、錠剤配置領域Ta内であるか否かを判断する。ここで、算出した位置が錠剤配置領域Ta内である場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP113に移り、切り出した薬剤画像を、錠剤Dgtが写っている錠剤画像に分類して、錠剤Dgtに対する鑑別を行う。これに対して、算出した位置が錠剤配置領域Ta外である場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP114に移り、切り出した薬剤画像を、カプセル剤Dgcが写っているカプセル剤画像に分類し、カプセル剤Dgcに対する鑑別を行う。尚、錠剤Dgtに対する鑑別、及びカプセル剤Dgcに対する鑑別の具体的なアルゴリズムについては、上述した為、説明を省略する。
ステップSP113又はステップSP114による鑑別終了後、薬剤鑑別部102は、ステップSP115に移り、撮影画像Pp内に写っている全ての薬剤(バラ薬)Dgについて鑑別し終えたかどうかを判断する。ここで、まだ鑑別していない薬剤Dgがある場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP110に戻り、撮影画像Ppから、まだ鑑別していない薬剤Dgが写っている薬剤画像を切り出す。
これに対して、全ての薬剤(バラ薬)Dgについて鑑別し終えた場合、薬剤鑑別部102は、一連の処理を終了する。薬剤を分類して鑑別するときの具体的な処理手順は、以上のようになっている。
[3-2.まとめと効果]
ここまで説明したように、第3の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、バラ薬Dgが置かれたシャーレ300全体を撮影した撮影画像Ppに対して、錠剤Dgtが配置される錠剤配置領域Taとカプセル剤Dgcが配置されるカプセル剤配置領域Caとを予め設定しておき、撮影画像Ppから切り出した薬剤画像が、カプセル剤配置領域Caと錠剤配置領域Taのどちらに位置していたかに応じて、切り出した薬剤画像を錠剤画像とカプセル剤画像とに分けるようにした。
こうすることで、この第3の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、切り出した薬剤画像を画像解析することで分類する場合と比べて、より確実に分類することができるとともに、分類時間を大幅に短縮することができ、結果として、薬剤の鑑別精度を向上させることができるとともに、鑑別時間を短縮することができる。
[3-3.第3の実施の形態の変形例]
ここで、上述した第3の実施の形態の変形例について説明する。上述した第3の実施の形態では、シャーレ300が、図27(B)に示す向きで、トレイ40上にセットされることを前提としている。しかしながら、シャーレ300は、円形の為、図27(B)に示す向き(これを基準向きとする)から或る方向に或る量だけ回転した状態で、トレイ40上にセットされることがある。
このときにシャーレ300全体を撮影した撮影画像Ppを図41に示す。このように、撮影画像Ppに写っているシャーレ300が基準向きから或る方向に或る量だけ回転している場合、基準向きを前提として設定されている錠剤配置領域Taとカプセル剤配置領域Caとを用いて薬剤を分類すると正確に分類することができない。
そこで、このようにシャーレ300が基準向きから或る方向に或る量だけ回転している場合を想定して、例えば、薬剤鑑別部102が、図39(A)に示す基準向きにあるときのカプセル載置部300cと、図41に示す撮影画像Ppに写っているシャーレ300のカプセル載置部300cとのなす角度(つまり基準位置からの回転方向と回転量)を算出して、この角度をもとに、図41に示す向きの撮影画像Ppに対して正しい位置となるように錠剤配置領域Taとカプセル剤配置領域Caとを設定するようにしてもよい。このようにすれば、シャーレ300が、基準向きから或る方向に或る量だけ回転した状態でトレイ40上にセットされていたとしても、錠剤配置領域Taとカプセル剤配置領域Caとを用いて薬剤を正確に分類することができる。
尚、ここでは、撮影画像Ppに写っているカプセル載置部300cをもとに、シャーレ300の基準向きから回転方向及び回転量を算出したが、これに限らず、例えば、シャーレ300の所定位置にマーカーを印字又は刻印しておき、このマーカーを用いてシャーレ300の基準向きから回転方向及び回転量を算出するなどしてもよい。
[4.第4の実施の形態]
次に第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態は、薬剤鑑別の具体的な手順が、第1の実施の形態とは異なる実施の形態であり、それ以外の部分については、第1の実施の形態と同一もしくはほぼ同一になっている。ゆえに、ここでは、主に薬剤鑑別の具体的な手順について説明する。
[4-1.薬剤鑑別]
図42に示すように、この第4の実施の形態では、制御装置2の記憶部101に、薬剤データベースDbにくわえて、候補絞り込み用データベースRDbが記憶されている。この候補絞り込み用データベースRDbは、薬剤鑑別部102が薬剤鑑別を行う際に、候補となる薬剤の絞り込みに使用するデータベースであり、本実施の形態では、この候補絞り込み用データベースRDbに、飲み合わせ薬剤情報が登録されている。
図43(A)に、候補絞り込み用データベースRDbに登録されている飲み合わせ薬剤情報を示す。この図43(A)に示すように、飲み合わせ薬剤情報には、持参薬として同時に飲み合わせる薬剤を示す、飲み合わせ薬剤群と飲み合わせ薬剤数とが示されている。飲み合わせ薬剤群は、1度に飲むよう決められている複数の薬剤のそれぞれの薬剤識別情報であり、飲み合わせ薬剤数は、飲み合わせ薬剤群に含まれる薬剤の数である。
図43(A)に示す例では、1行目(No.1)の飲み合わせ薬剤情報に、3つの薬剤A、B、Cが、持参薬として同時に飲み合わせる薬剤であることが示され、2行目(No.2)の飲み合わせ薬剤情報に、3つの薬剤A、D、Eが、持参薬として同時に飲み合わせる薬剤であることが示されている。
これら2つの飲み合わせ薬剤情報から、例えば一包化薬110に3つの薬剤が含まれていて、そのうちの1つが薬剤Aであれば、残り2つの薬剤は、薬剤B、C、もしくは薬剤D、Eであることが分かる。つまり、一包化薬110に含まれている3つの薬剤のうちの1つが薬剤Aと鑑別された場合、残り2つの薬剤を、薬剤B、C、D、Eに絞ることができる。
本実施の形態では、このような飲み合わせ薬剤情報を利用して、薬剤鑑別部102が、薬剤鑑別を行う際に、候補となる薬剤を絞り込むようになっている。以下、本実施の形態による、薬剤鑑別の具体的な処理手順について、図44に示すフローチャートを用いて説明する。尚、ここでは、一包化薬110に含まれている薬剤を鑑別する場合を例に説明する。
最初のステップSP200で、薬剤鑑別部102は、一包化薬110の画像から各薬剤Dgが写っている部分(薬剤画像)を切り出し、薬剤Dgの1つを鑑別対象に選択し、その薬剤Dgが写っている薬剤画像から薬剤Dgの特徴(形状、寸法、色調、絵柄)を抽出する。このステップSP200での特徴抽出は、第1の実施の形態と同様の為、詳しい説明は省略する。このとき、薬剤鑑別部102は、一包化薬110の画像から切り出した薬剤画像の数をもとに、一包化薬110に含まれている薬剤の数を特定しておく。
つづくステップSP201において、薬剤鑑別部102は、鑑別対象に選択した薬剤Dgの特徴と、薬剤データベースDbに登録されている薬剤情報とを比較することで、薬剤Dgを鑑別する。このステップSP201での鑑別についても、第1の実施の形態と同様の為、詳しい説明は省略する。
つづくステップSP202において、薬剤鑑別部102は、1個目の薬剤Dgの鑑別結果として得られた第1位候補の薬剤が確定できるか否か(つまり薬剤Dgの鑑別結果として断定できるか否か)を判定する。このステップSP202での確定についても、第1の実施の形態と同様の為、詳しい説明は省略する。
ここで、1個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、第1位候補の薬剤が確定できた場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP203に移る。ステップSP203において、薬剤鑑別部102は、ここまでに確定した薬剤が飲み合わせ薬剤群に含まれていて、且つ一包化薬110に含まれている薬剤の数と飲み合わせ薬剤数とが一致するという条件に合致する飲み合わせ薬剤情報を、候補絞り込み用データベースRDbから取得する。
つづくステップSP204において、薬剤鑑別部102は、上述の条件に合致する飲み合わせ薬剤情報が、候補絞り込み用データベースRDbから取得できたか否かを判定する。ここで、上述の条件に合致する飲み合わせ薬剤情報が取得できた場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP205に移る。ステップSP205において、薬剤鑑別部102は、n(n=2)個目の鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を、取得した飲み合わせ薬剤情報に示されている薬剤のうち、1個目の鑑別対象である薬剤Dg以外の薬剤に絞り込む。例えば、1個目の鑑別対象である薬剤Dgが薬剤Aに確定されている場合、2個目の鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を、薬剤B、C、D、Eに絞り込む。
つづくステップSP206において、薬剤鑑別部102は、n個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、薬剤データベースDbに登録されている薬剤の中から絞り込まれた薬剤(例えば薬剤B、C、D、E)と特徴を比較することで鑑別する。
つづくステップSP207において、薬剤鑑別部102は、薬剤鑑別部102は、n個目の薬剤Dgの鑑別結果として得られた第1位候補の薬剤が確定できるか否かを判定する。
ここで、n個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、第1位候補の薬剤が確定できた場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP208に移る。ステップSP208において、薬剤鑑別部102は、一包化薬110に含まれている全ての薬剤Dgについての鑑別が完了したか否かを判定する。ここで、全ての薬剤Dgについて鑑別が完了している場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP212に移り、全ての薬剤Dgについての鑑別結果を出力する。
これに対して、まだ鑑別していない薬剤Dgが残っている場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP203に戻り、上述した条件に合致する飲み合わせ薬剤情報を、候補絞り込み用データベースRDbから取得して、ステップSP204以降の処理(つまりn(n=n+1)個目の鑑別対象である薬剤Dgの鑑別を行う)を実行する。ここで、1個目の鑑別対象である薬剤Dgと、2個目の鑑別対象である薬剤Dgとが、ともに確定しているとすると、確定している2個の薬剤Dgの両方が、飲み合わせ薬剤群に含まれていて、且つ一包化薬110に含まれている薬剤の数と飲み合わせ薬剤数とが一致するという条件に合致する飲み合わせ薬剤情報を、候補絞り込み用データベースRDbから取得することになる。
また一方で、上述のステップSP207で、n個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、第1位候補の薬剤が確定できなかった場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP209に移り、薬剤の絞り込みを解除した後、ステップSP210に移る。ステップSP210において、薬剤鑑別部102は、n(n=n+1)個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、薬剤データベースDbのみを使用する通常の鑑別を行う。
つづくステップSP211において、薬剤鑑別部102は、一包化薬110に含まれている全ての薬剤Dgについての鑑別が完了したか否かを判定する。ここで、全ての薬剤Dgについて鑑別が完了している場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP212に移り、全ての薬剤Dgについての鑑別結果を出力する。これに対して、まだ鑑別していない薬剤Dgが残っている場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP210に戻り、n(n=n+1)個目の鑑別対象となる薬剤Dgを鑑別する。
また、上述のステップSP202で、1個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、第1位候補の薬剤が確定できなかった場合と、上述のステップSP204で、上述の条件に合致する飲み合わせ薬剤情報が取得できなかった場合も、薬剤鑑別部102は、ステップSP210に移り、n(n=n+1)個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、薬剤データベースDbのみを使用する通常の鑑別を行う。薬剤鑑別の具体的な処理手順は、以上のようになっている。
[4-2.まとめと効果]
ここまで説明したように、第4の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、候補絞り込み用データベースRDbに登録されている飲み合わせ薬剤情報を利用して、薬剤鑑別部102が、薬剤鑑別を行う際に、候補になり得る薬剤(つまり薬剤Dgの比較対象となる薬剤)を絞り込むようにした。こうすることで、この第4の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、薬剤Dgを鑑別する際に、比較対象となる薬剤の数を減らすことができるので、鑑別時間を短縮することができる。
また飲み合わせ薬剤情報を利用して、薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞り込んでいる為、例えば、特徴は似ているが薬剤Dgとは別の薬剤を比較対象から除外することができるので、鑑別精度を向上することもできる。
[4-3.第4の実施の形態の変形例]
[4-3-1.第4の実施の形態の変形例1]
ここで、上述した第4の実施の形態の変形例について説明する。上述した第4の実施の形態では、候補絞り込み用データベースRDbに登録されている飲み合わせ薬剤情報を利用して、鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞り込むようにした。これに限らず、例えば、候補絞り込み用データベースRDbに、薬剤別否飲み合わせ薬剤情報を登録するようにして、この薬剤別否飲み合わせ薬剤情報を利用して、鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞り込むようにしてもよい。
ここで、図43(B)に、薬剤別否飲み合わせ薬剤情報を示す。この図43(B)に示すように、薬剤別否飲み合わせ薬剤情報には、対象薬剤と、対象薬剤と飲み合わせてはならない薬剤である否飲み合わせ薬剤とが示されている。対象薬剤は、対象となる薬剤の薬剤識別情報であり、否飲み合わせ薬剤は、対象薬剤と飲み合わせてはならない薬剤の薬剤識別情報である。
図43(B)に示す例では、1行目(No.1)の薬剤別否飲み合わせ薬剤情報に、薬剤Aに対して、飲み合わせてはならない薬剤F、Gが存在することが示されている。この薬剤別否飲み合わせ薬剤情報から、例えば一包化薬110に薬剤Aが含まれている場合に、一包化薬110に含まれている他の薬剤は、少なくとも薬剤F、Gではないことが分かる。つまり、一包化薬110に含まれている薬剤A以外の薬剤については、薬剤F、G以外に絞ることができる。
以下、薬剤別否飲み合わせ薬剤情報を利用して候補を絞り込む場合の薬剤鑑別の具体的な処理手順について、図45に示すフローチャートを用いて説明する。尚、ここでは、一包化薬110に含まれている薬剤を鑑別する場合を例に説明する。
最初のステップSP220で、薬剤鑑別部102は、一包化薬110の画像から各薬剤Dgが写っている部分(薬剤画像)を切り出し、薬剤Dgの1つをn(n=1)個目の鑑別対象に選択し、その薬剤Dgが写っている薬剤画像から薬剤Dgの特徴(形状、寸法、色調、絵柄)を抽出する。
つづくステップSP221において、薬剤鑑別部102は、n個目の鑑別対象である薬剤Dgの特徴と、薬剤データベースDbに登録されている薬剤情報とを比較することで、薬剤Dgを鑑別する。つづくステップSP222において、薬剤鑑別部102は、n個目の薬剤Dgの鑑別結果として得られた第1位候補の薬剤が確定できるか否かを判定する。
ここで、n個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、第1位候補の薬剤が確定できた場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP223に移る。ステップSP223において、薬剤鑑別部102は、ステップSP222で確定した薬剤が対象薬剤に含まれているという条件に合致する薬剤別否飲み合わせ薬剤情報を、候補絞り込み用データベースRDbから取得する。
つづくステップSP224において、薬剤鑑別部102は、次の鑑別対象(つまりn=n+1個目の鑑別対象)となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を、取得した薬剤別飲み合わせ薬剤情報に示されている否飲み合わせ薬剤以外の薬剤に絞り込む。例えば、1個目の鑑別対象である薬剤Dgが薬剤Aに確定されている場合、2個目の鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を、薬剤F、G以外の薬剤に絞り込む。
つづくステップSP225において、薬剤鑑別部102は、一包化薬110に含まれている全ての薬剤Dgについての鑑別が完了したか否かを判定する。ここで、まだ鑑別していない薬剤Dgが残っている場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP221に戻り、n(n=n+1)個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、薬剤データベースDbに登録されている薬剤の中から絞り込まれた薬剤(例えば薬剤F、G以外の候補)と特徴を比較することで鑑別する。
これに対して、上述のステップSP225で、全ての薬剤Dgについて鑑別が完了したと判断した場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP226に移り、全ての薬剤Dgについての鑑別結果を出力する。薬剤鑑別の具体的な処理手順は、以上のようになっている。
このように、薬剤別否飲み合わせ薬剤情報を利用して、鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞り込むようにすることで、薬剤Dgを鑑別する際に、比較対象となる薬剤の数を減らすことができるので、鑑別時間を短縮することができる。
また薬剤別否飲み合わせ薬剤情報を利用して、薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞り込んでいる為、例えば、一包化薬110に含まれている各薬剤Dgの鑑別結果に、一緒に飲み合わせてはいけない薬剤が含まれることがなく、鑑別信頼度を向上することもできる。
[4-3-2.第4の実施の形態の変形例2]
またこれに限らず、例えば、候補絞り込み用データベースRDbに、症状別否飲み合わせ薬剤情報を登録するようにして、この症状別否飲み合わせ薬剤情報を利用して、鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞り込むようにしてもよい。
ここで、図43(C)に、症状別否飲み合わせ薬剤情報を示す。この図43(C)に示すように、症状別否飲み合わせ薬剤情報には、患者の症状別に、飲んではならない否飲み合わせ薬剤が示されている。
図43(C)に示す例では、1行目(No.1)の症状別否飲み合わせ薬剤情報に、患者が症状xxxである場合に、飲んではならない薬剤O、P、Qが存在することが示されている。この症状別否飲み合わせ薬剤情報から、例えば症状xxxである患者の持参薬は、少なくとも薬剤O、P、Qではないことが分かる。つまり、症状xxxである患者の持参薬については、薬剤O、P、Q以外に絞ることができる。
以下、症状別否飲み合わせ薬剤情報を利用して候補を絞り込む場合の薬剤鑑別の具体的な処理手順について、図46に示すフローチャートを用いて説明する。尚、ここでは、一包化薬110に含まれている薬剤を鑑別する場合を例に説明する。
最初のステップSP230で、操作者は、制御装置2の操作部22を操作して、患者の症状を入力する。つづくステップSP231において、薬剤鑑別部102は、ステップSP230で入力された症状に合致する症状別否飲み合わせ薬剤情報を、候補絞り込み用データベースRDbから取得する。
つづくステップSP232において、薬剤鑑別部102は、一包化薬110に含まれている各薬剤Dgの候補になり得る薬剤を、取得した症状別飲み合わせ薬剤情報に示されている否飲み合わせ薬剤以外の薬剤に絞り込む。例えば、患者の症状が症状xxxである場合、一包化薬110に含まれている各薬剤Dgの候補になり得る薬剤を、薬剤O、P、Q以外の薬剤に絞り込む。
つづくステップSP233において、薬剤鑑別部102は、一包化薬110の画像から各薬剤Dgが写っている部分(薬剤画像)を切り出し、薬剤Dgの1つをn(n=1)個目の鑑別対象に選択し、その薬剤Dgが写っている薬剤画像から薬剤Dgの特徴(形状、寸法、色調、絵柄)を抽出する。
つづくステップSP234において、薬剤鑑別部102は、n個目の鑑別対象である薬剤Dgについて、薬剤データベースDbに登録されている薬剤の中から絞り込まれた薬剤(例えば薬剤O、P、Q以外の薬剤)と特徴を比較することで鑑別する。つづくステップSP235において、薬剤鑑別部102は、一包化薬110に含まれている全ての薬剤Dgについての鑑別が完了したか否かを判定する。ここで、まだ鑑別していない薬剤Dgが残っている場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP234に戻り、n(n=n+1)個目の鑑別対象である薬剤Dgの鑑別を行う。
これに対して、上述のステップSP235で、全ての薬剤Dgについて鑑別が完了したと判断した場合、薬剤鑑別部102は、ステップSP236に移り、全ての薬剤Dgについての鑑別結果を出力する。薬剤鑑別の具体的な処理手順は、以上のようになっている。
このように、症状別否飲み合わせ薬剤情報を利用して、鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞り込むようにすることで、薬剤Dgを鑑別する際に、比較対象となる薬剤の数を減らすことができるので、鑑別時間を短縮することができる。
また症状別否飲み合わせ薬剤情報を利用して、薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞り込んでいる為、例えば、一包化薬110に含まれている各薬剤Dgの鑑別結果に、患者が飲んではならない薬剤が含まれることがなく、鑑別信頼度を向上することもできる。
尚、上述した、飲み合わせ薬剤情報、薬剤別否飲み合わせ薬剤情報、及び症状別否飲み合わせ薬剤情報のうちのどれを利用して、鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞りこむかを、制御装置2の操作部22を操作して、操作者が選択できるようにしてもよい。
またこれに限らず、候補絞り込み用データベースRDbを利用して、鑑別対象となる薬剤Dgの候補になり得る薬剤を絞りこむか否かを、制御装置2の操作部22を操作して、操作者が選択できるようにしてもよい。
[4-3-3.第4の実施の形態の変形例3]
さらに上述した第4の実施の形態では、1個目の薬剤Dgについて第1位候補の薬剤が確定できなかった場合に、候補になり得る薬剤の絞り込みを行わないようにした。これに限らず、例えば、1個目の薬剤Dgについて第1位候補の薬剤が確定できなかった場合でも、2個目以降の薬剤Dgで、第1位候補が確定できた薬剤Dgがあれば、第1位候補が確定できた薬剤Dgの次に鑑別する薬剤Dgについて、候補になり得る薬剤の絞り込みを行うようにしてもよい。
[5.第5の実施の形態]
次に第5の実施の形態について説明する。この第5の実施の形態は、トレイAssyユニット50の構成と動作が、第1の実施の形態とは異なる実施の形態であり、それ以外の部分については、第1の実施の形態と同一もしくはほぼ同一になっている。ゆえに、ここでは、主にトレイAssyユニット50の構成と動作について説明する。尚、ここでは、第1の実施の形態と区別する為、トレイAssyユニットの符号を50xとする。
[5-1.トレイAssyユニットの構成]
図47を用いて、第5の実施の形態のトレイAssyユニット50xの構成について説明する。尚、図47は、トレイ40xが初期位置に位置している状態のトレイAssyユニット50xを右側から見た側面図であり、トレイ40xと駆動ベルト84との位置関係を分かり易くする為、一部(受け皿41、左シャフト83s1、右シャフト83s2、ベースフレーム86など)を省略したり、簡略したりした模式図となっている。
このトレイAssyユニット50xが、第1の実施の形態のトレイAssyユニット50と異なる点は、トレイ40xがトレイ上層部500とトレイ下層部501とに分かれている点と、トレイ40xが初期位置よりさらに奥へ行くことを防止するトレイストッパ502を有している点の2点である。ゆえに、ここでは主にトレイ40xとトレイストッパ502とについて説明する。
トレイ40xは、上述したようにトレイ上層部500とトレイ下層部501とで構成されている。トレイ下層部501は、駆動ベルト84に固定されている。つまり、駆動ベルト84は、モータ80の駆動により前後方向に走行することで、トレイ下層部501を前後方向に移動させるようになっている。尚、図47に示す位置PtEは、トレイ下層部501が初期位置にあるときのトレイ下層部501の前後方向の中心の位置であり、位置Pt1、Pt3は、それぞれトレイ下層部501が第1撮影位置、第3撮影位置にあるときのトレイ下層部501の前後方向の中心の位置であり、位置PtSは、トレイ下層部501が排出位置にあるときのトレイ下層部501の前後方向の中心の位置である。
一方、トレイ上層部500は、板状であり、トレイ下層部501の上端に形成されている窪み501d上に載置されている。ここで、この窪み501dは、左右方向の長さがトレイ上層部500の左右方向の長さよりわずかに長く、前後方向の長さがトレイ上層部500の前後方向の長さより所定長だけ長くなっている。これにより、トレイ上層部500は、トレイ下層部501の窪み501d内を、前後方向に滑るように移動可能となっている。このトレイ上層部500には、図示しない受け皿41が設けられている。尚、トレイ40xは、トレイ上層部500に設けられた受け皿41上の薬剤を、下からも撮影できるようにトレイ下層部501に図示しない孔が設けられている。
トレイストッパ502は、上下方向に延びる部材であり、初期位置にあるトレイ下層部501の後端に近接する位置に設けられ、トレイ下層部501が初期位置よりさらに後方に移動すると、トレイ下層部501の後端と接触することにより、それ以上、トレイ下層部501が後方に移動すること(つまり初期位置を超えて移動すること)、を防ぐようになっている。トレイAssyユニット50xの構成は、以上のようになっている。
[5-2.トレイAssyユニットの動作]
つづけて、トレイ40xにセットされた薬剤を撮影する際のトレイAssyユニット50xの動作について説明する。尚、トレイAssyユニット50xも、制御装置2の制御部100により制御される。
制御装置2の制御部100は、まずトレイ40xのトレイ下層部501を排出位置(位置PtS)まで移動させる。ここで、操作者によりトレイ上層部500の受け皿41上に鑑別対象となる薬剤がセットされる。
次に制御部100は、トレイ下層部501を後方の第3撮影位置(位置Pt3)まで移動させて停止させ、1回目の撮影を行う。このとき、トレイ上層部500は、トレイ下層部501の加速減についていくことができずに、トレイ下層部501の窪み501d内を前後方向に滑る。この結果、トレイ上層部500は、トレイ下層部501の移動開始時には、トレイ下層部501よりもゆるやかに加速し、停止時には、トレイ下層部501よりゆるやかに減速する。
このときのトレイ上層部500及びトレイ下層部501のそれぞれの時間と速度の関係を、図48のグラフに示す。このグラフからも、図中点線で示すトレイ上層部500の速度の方が、図中実線で示すトレイ下層部501の速度と比べて、ゆるやかに変化していることが分かる。
次に制御部100は、トレイ下層部501を後方の第1撮影位置(位置Pt1)まで移動させて停止させ、2回目の撮影を行う。その後、制御部100は、トレイ下層部501を前方の排出位置まで移動させて停止させる。ここで、操作者によりトレイ上層部500の受け皿41上の薬剤が取り除かれる。最後に、制御部100は、トレイ下層部501を排出位置から初期位置(位置PtE)まで移動させて停止させる。これらの移動開始時と停止時も、トレイ上層部500は、トレイ下層部501よりもゆるやかに加減速する。トレイ40xにセットされた薬剤を撮影する際のトレイAssyユニット50xの動作は、以上のようになっている。
尚、ここでは、第3撮影位置と第1撮影位置との2箇所で薬剤を撮影するようにしたが、第3撮影位置と第2撮影位置と第1撮影位置との3箇所で薬剤を撮影するようにしてもよい。また上述した第1の実施の形態などと同様に、トレイ40xを初期位置から第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置へと前方に移動させながら撮影するようにしてもよい。さらにトレイ上層部500の下面側にローラを設けるなどして、トレイ上層部500とトレイ下層部501との間の摩擦係数を下げることで、トレイ上層部500の加速減がさらにゆるやかになるようにしてもよい。
[5-3.まとめと効果]
ここまで説明したように、第5の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、トレイ40xをトレイ上層部500とトレイ下層部501とに分けた構造にして、トレイ上層部500が、トレイ下層部501の窪み501d内を、前後方向に滑るように移動できるようにした。
これにより、この第5の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、薬剤を載せているトレイ上層部500を、トレイ下層部501よりゆるやかに加減速させることができるので、トレイ40x移動時に、薬剤が滑ったり転がったりしてしまうことを防止することができる。こうすることで、この第5の実施の形態の持参薬鑑別システム1では、薬剤がトレイ40xからこぼれ落ちてしまう状況を極力回避することができる。さらにトレイ40xを移動させながら、複数の撮影位置でトレイ40x上の薬剤を撮影した際に、複数の撮影位置で撮影した複数の画像のそれぞれに写っている各薬剤の位置関係が変わらない為、複数の画像のそれぞれに写っている各薬剤を正確に対応付けることができる。
[5-4.第5の実施の形態の変形例]
ここで、上述した第5の実施の形態の変形例について説明する。図49に、第5の実施の形態の変形例となるトレイAssyユニット50zを示す。このトレイAssyユニット50zは、トレイストッパ502とは異なる形状のトレイストッパ510を有している。
トレイストッパ510は、下部より上部が前方に突き出した形状であり、トレイ上層部500がトレイ下層部501の窪み501dの前壁側に寄った状態で、トレイ下層部501が初期位置まで移動してきた際に、トレイストッパ510の下部がトレイ下層部501の後端と接触するよりも先に、トレイストッパ510の上部の突き出た部分が、トレイ上層部500の後端に接触する構造となっている。
ここで、トレイAssyユニット50zの動作について説明する。トレイ下層部501を排出位置まで移動させて薬剤がセットされた後、第3撮影位置、第1撮影位置へと移動させて薬剤の撮影を行い、その後、再び排出位置まで移動させて薬剤が取り除かれるまでの動作は、上述した第5の実施の形態と同様である。
次に制御部100は、トレイ下層部501を排出位置から初期位置まで移動させる。このとき、制御部100は、加速時にはゆるやかに加速して、減速時には急速に減速することで、意図的にトレイ上層部500をトレイ下層部501の窪み501dの後壁面に寄せる。またこのとき制御部100は、トレイ上層部500がトレイストッパ510に衝突するときの衝撃力をできるだけ弱める為に、トレイ下層部501の減速を初期位置よりも十分手前側から開始して、十分に速度を落とした状態で、初期位置まで移動させる。
こうすることで、トレイ下層部501が初期位置に到達する前に、トレイ上層部500がトレイストッパ510の上部の突き出た部分と接触して、さらにトレイ下層部501が初期位置へと移動する間に、トレイ上層部500がトレイ下層部501の窪み501dの後壁面から離れていく。この結果、トレイ下層部501が初期位置で停止したときには、トレイ上層部500がトレイ下層部501の窪み501dの前後方向の中央付近に位置することになる。
このときのトレイ上層部500及びトレイ下層部501のそれぞれの時間と速度の関係を、図50のグラフに示す。このグラフからも、図中点線で示すトレイ上層部500の速度が、十分に落ちた状態で、トレイストッパ510と衝突していることが分かる。トレイAssyユニット50zの動作は、以上のようになっている。
このように、トレイストッパ510を、トレイ下層部501が初期位置に到達するよりも先にトレイ上層部500の後端に接触する構造としたことにより、トレイ下層部501が初期位置で停止したときに、トレイ上層部500をトレイ下層部501の窪み501dの前後方向の中央付近に戻すことができる。こうすることで、トレイ上層部500がトレイ下層部501の移動時に窪み501dの前壁面又は後壁面と衝突して、ゆるやかな加減速ができなくなってしまう状況を回避することができる。
[6.他の実施の形態]
[6-1.他の実施の形態1]
次に、上述した第1乃至第5の実施の形態とは異なる他の実施の形態について説明する。上述した各実施の形態では、図27(A)に示したように、円形のシャーレ300を使用して、バラ薬の鑑別を行うようにした。これに限らず、図51に示すように四角形のシャーレ600を使用して、バラ薬の鑑別を行うようにしてもよい。
具体的にこのシャーレ600は、トレイ40の受け皿41よりわずかに小さい板状部材の中央部分がシャーレ300と同様のシャーレ部601になっている。このシャーレ600を使用すると、受け皿41にセットしたときに、シャーレ部601が回転してしまうことを防止できるので、シャーレ部601に置かれた薬剤Dgを錠剤Dgtとカプセル剤Dgcとに正確に分類できるようになる。
[6-2.他の実施の形態2]
また上述した第1乃至第4の実施の形態では、第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置でトレイ40上の薬剤を撮影するようにした。これに限らず、第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置のうちの2箇所、もしくはこれら以外の複数個所で、トレイ40上の薬剤を撮影するようにしてもよい。
さらに上述した第1乃至第4の実施の形態では、トレイ40を排出位置から初期位置まで戻してから、第1撮影位置、第2撮影位置、第3撮影位置へと前方に移動させながら、トレイ40上の薬剤を撮影するようにした。これに限らず、トレイ40を排出位置から、第3撮影位置、第2撮影位置、第1撮影位置へと後方に移動させながら、トレイ40上の薬剤を撮影するようにしてもよい。
[6-3.他の実施の形態3]
さらに上述した各実施の形態では、薬剤鑑別装置の具体例である制御装置2と、薬剤撮影装置の具体例である撮影装置3とを別々に設けた。これに限らず、例えば、撮影装置3に制御装置2の機能(制御部100、記憶部101、薬剤鑑別部102、表示部21、操作部22の機能)を持たせることで、制御装置2と撮影装置3とを一体の薬剤鑑別装置としてもよい。
[6-4.他の実施の形態4]
さらに上述した各実施の形態では、本発明を、薬剤鑑別システムとしての持参薬鑑別システム1に適用したが、これに限らず、制御装置2と撮影装置3を、複数の薬剤を自動的に一包化する薬剤分包システムに適用して、薬剤分包システムで正確に薬剤が一包化されているか否かを確認する際などに、制御装置2と撮影装置3による薬剤鑑別を用るようにしてもよい。またこれに限らず、本発明を、例えば持参薬以外の薬を鑑別する薬剤鑑別システムに適用してもよい。
[6-5.他の実施の形態5]
さらに上述した各実施の形態では、撮影装置3に、トレイ40、40xを水平な一方向及び他方向である前後方向に移動させる駆動部の具体例として、モータ80及び駆動ベルト84を設けたが、これに限らず、トレイ40、40xを水平な一方向及び他方向に移動させることができるものであれば、モータ80及び駆動ベルト84とは異なる駆動部を、撮影装置3に設けてもよい。さらに上述した各実施の形態では、トレイ40、40xを、左シャフト83s1及び右シャフト83s2により、水平な一方向及び他方向に移動可能に支持するようにしたが、これに限らず、左シャフト83s1及び右シャフト83s2とは異なる機構で、トレイ40、40xを、水平な一方向及び他方向に移動可能に支持するようにしてもよい。
[6-6.他の実施の形態6]
さらに上述した各実施の形態では、カプセル載置部300cとして、断面三角形状の角棒部材を2本平行に並べて配置する場合を例に挙げたが、これに限らず、3本又は4本以上の上記断面三角形状の角棒部材を平行に並べて配置するようにしてもよい。さらに上述した各実施の形態では、角棒部材をシャーレ300の内壁面に接触しないように配置したが、これに限らず、例えば、シャーレ300の内壁面付近にカプセル剤Dgcを置かない旨を表示部21に表示したり図示しない音声出力部から音声として出力したりする場合には、角棒部材をシャーレ300の内壁面に接触するように配置してもよい。さらに上述した各実施の形態では、カプセル載置部300cとして、断面三角形状の角棒部材を配置する場合を例に挙げたが、これに限らず、例えば、断面蒲鉾形状、断面半楕円形状、断面半円形状、または断面矩形状等の角棒部材を配置するようにしてもよい。シャーレ600についても同様である。
[6-7.他の実施の形態7]
さらに、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した第1乃至第5の実施の形態とそれらの変形例及び他の実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。