JP7339810B2 - 水密アルミ配電線及びその製造方法 - Google Patents
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Description
以下、本発明に係る水密アルミ配電線について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る水密アルミ配電線の一実施形態を示す断面図である。
図1に示されるとおり、本実施形態に係る水密アルミ配電線1は、概略として、中心に位置する中心素線2と、中心素線2の周囲に複数(ここでは6本)配置されたアルミ素線3,3と、複数のアルミ素線3,3を被覆する絶縁体(絶縁被覆)5を備え、中心素線2と複数のアルミ素線3,3との間、複数のアルミ素線3,3同士の間、及び複数のアルミ素線3,3と絶縁被覆5との間には、水密材4が隙間なく略均一な厚さで充填されている。尚、複数のアルミ素線3,3は外部コア部6と呼ぶこともできる。
複数のアルミ素線3,3の各々は例えばJISH2110(電気用アルミニウム地金)に定められる純度99.65%以上の純アルミニウムによって形成される。一方、中心素線2は、例えば、アルミ素線3,3と同じ材質(純アルミニウム)、或いはアルミ素線3,3とは異なる材質(例えばアルミニウム合金)の金属線によって形成される。但し、架線の弛度変化に対する対策が必要な場合、中心素線2には上記金属に代えて鋼線やAC(アルミ覆)線、カーボンファイバ等が使用されてもよい。また、中心素線2は、図2に示されるとおり、複数(図2では7本)の素線2a,2aで形成されてもよく、その場合は、複数の素線2a同士の間にも水密材4が隙間なく充填されるものとする。尚、アルミ素線3,3の本数は、複数本を撚り合わせた状態で外周面側(絶縁耐側)及び内周面側(中心導体側)を断面円弧状とするために、4本~8本程度(例えば6本)とするのが好ましい。また、アルミ素線3,3はそれぞれの断面が略台形状とされ、外周面側が円弧状凸面に加工されていると共に、内周面側が円弧状凹面に加工されており、アルミ素線3,3を撚り合わせた状態で外周面及び内周面が断面円形状となっている。
水密材4には、水密コンパウンド、例えば、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン-エチルアクリレート共重合体)、EMA(エチレン-メチルアクリレート共重合体)など、又は同等の性能を有する樹脂類を用いることができる。水密材4はそれぞれを単独でも或いは複数を併用してもよい。また、水密材4としてロジン系樹脂を用いることもできる。ロジン系樹脂としては、例えばロジンエステルを用いることができる。ロジンエステルは天然樹脂であるロジンから誘導される粘着特性を有するエステル樹脂である。また、ロジン系樹脂としてロジン変性フェノールを用いることもできる。尚、ロジン系樹脂は水密コンパウンドと共に水密材4として用いることもできる。
絶縁被覆5には、例えば、塩化ビニル樹脂またはポリエチレン、架橋ポリエチレン等が用いられる。そして、絶縁被覆5の表面には風圧による影響を低減するために凹凸5Aが設けられている。また、絶縁被覆5の表面には図3に示されるとおり雪害対策用として対向する位置に凸状の一対のヒレ7,7を設けることもできる。
水密アルミ配電線1は、中心素線2と複数のアルミ素線3,3との間、複数のアルミ素線3,3同士の間及び複数のアルミ素線3,3と絶縁被覆5との間の全てに水密材4を充填することによって製造することができる。
以上の本実施形態に係る水密アルミ配電線1によれば、複数のアルミ素線3,3と絶縁被覆5との間に水密材4が隙間無く充填されているだけでなく、複数のアルミ素線3,3同士の間にも水密材4が隙間なく充填され、さらには中心素線2と複数のアルミ素線3,3との間にも水密材4が隙間無く充填されているので、仮に、アルミ配電線1の接続部などから絶縁被覆5の内側へ海塩を含む雨水が浸入したとしても、複数のアルミ素線3,3が雨水に触れることはないので、複数のアルミ素線3,3の全ての腐食を防止して、隙間腐食(図6)へ進行する可能性を未然に防ぐことができるという効果がある。
以下、本実施形態の水密アルミ配電線の効果を検証するための試験結果を実施例として説明する。
(1)ACSR-OC(中心素線(鋼線)が亜鉛メッキ)からなる従来のアルミ配電線
(2)ACSR/AC-OC(中心素線(鋼線)がアルミ覆)からなる従来のアルミ配電線
(3)アルミ素線を撚り合わせる前に中心素線の周囲へ塗布した水密材の厚さが0.12mmである本実施形態の水密アルミ配電線
(4)アルミ素線を撚り合わせる前に中心素線の周囲へ塗布した水密材の厚さが0.14mmである本実施形態の水密アルミ配電線
(5)アルミ素線を撚り合わせる前に中心素線の周囲へ塗布した水密材の厚さが0.16mmである本実施形態の水密アルミ配電線
なお、(3)~(5)の間で他の仕様は共通であり、以下のとおり設定した。
・外径D:12.0mm±4%(11.76mm~12.24mm)
・撚ピッチP:174mm±11mm(163mm~185mm)
・外層の水密材の厚さ:0.3mm
・P/D:≦16(13.86~15.11)
・断面積:95mm2±4%(91.2mm2~98.8mm2)
2-2-1.液滴試験の条件
図4(A)に示すとおり、アルミ配電線から0.3m分を試料として採取し、採取したアルミ配電線1の一方端側2cmの部分の絶縁被覆5を半割状に皮剥ぎし、その皮剥ぎ箇所に6ml/分の量及び頻度で水滴を、図4(B)に示すとおり、1時間に亘って滴下後、アルミ配電線1の内部の各層への水の浸入長(mm)を調べた。また、この試験では、図4(B)に示すとおり、電線1の内部の導体表面と電線1の切断面との双方に亘って水滴が流れるように、アルミ配電線1の姿勢を水平状態から30°だけ傾斜させた。
図5は、液滴試験の結果(浸入長mm)を示す表である。図5の上部における数字「1」,「2」,「3」,…,「8」は試験回数であり、表の一段目は非水密アルミ配電線(1)の試験結果、二段目は非水密アルミ配電線(2)の試験結果、三段目は水密アルミ配電線(3)の試験結果、四段目は水密アルミ配電線(4)の試験結果、五段目は水密アルミ配電線(5)の試験結果である。また図5における「外層」はアルミ素線3が浸水した電線長さ(mm)を示し、「中心」は、中心素線2が浸水した電線長さ(mm)を示している。
2-3-1.加圧試験の条件
加圧試験では、アルミ配電線1に49kPa(0.5kgf/cm2)の水圧をかけて24時間放置後、絶縁被覆5を剥ぎ取り水分の浸入長を調べた。なお、この加圧試験は、液滴試験で最も良好な結果を示した水密アルミ配電線(5)についてのみ行った。
図6は、加圧試験の結果(浸入長mm)を示す表である。図6の上部における数字「1」,「2」は試験回数であり、表の最下段が水密アルミ配電線(5)の試験結果である。また図6における「外層」はアルミ素線3が浸水した電線長さ(mm)を示し、「中心」は中心素線2が浸水した電線長さ(mm)を示している。
2-4-1.複合サイクル試験の条件
図7に示すとおり、JISZ8502「めっき耐腐食性試験」の海塩による腐食を想定し、中性塩水噴霧サイクル試験に準拠した条件を採用した。サイクル試験後のアルミ配電線1について絶縁被覆5を剥きアルミ素線3の腐食状態の評価を行った。この際、アルミ配電線1から750mmの試料を採取し、試料中間部を100mm皮剥ぎした。さらに皮剥ぎ箇所の中心を支点として引留クランプ部を想定したR50以下の曲げを加えた。なお、この複合サイクル試験は、液滴試験及び加圧試験で最も不良な結果を示した非水密アルミ配電線(1)と、液滴試験及び加圧試験で最も良好な結果を示した水密アルミ配電線(5)とについて行った。
アルミ配電線(1)は腐食が発生したのに対して、水密アルミ電線(5)は腐食が全く発生しなかった。
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。例えば、導体のサイズ、水密材の厚さなどは、上述した具体的数値に限定されることはなく、必要に応じて変更することが可能である。
2 中心素線
2a 中心素線を構成する素線
3 アルミ素線
4 水密材
5 絶縁被覆(絶縁体)
5A 凹凸
6 外部コア部
7 ヒレ
10 アルミ配電線
11 中心素線
12 アルミ素線
13 絶縁被覆
100 雨水
200 隙間
300 延線方向
Claims (5)
- 中心素線の周囲に複数のアルミ素線を配置すると共に、複数の前記アルミ素線を絶縁体で被覆した水密アルミ配電線の製造方法において、
前記中心素線と複数の前記アルミ素線との間、複数の前記アルミ素線同士の間及び複数の前記アルミ素線と前記絶縁体との間の全てに水密材を充填するものであって、
前記中心素線と複数の前記アルミ素線との間及び複数の前記アルミ素線同士の間に前記水密材を充填するために、前記中心素線の周囲へ0.12mm~0.16mmの厚さで水密材を塗布した後に前記アルミ素線を撚り合わせる
ことを特徴とする水密アルミ配電線の製造方法。 - 請求項1に記載の水密アルミ配電線の製造方法において、
前記中心素線の周囲に水密材を塗布するステップと、
水密材が塗布された前記中心素線の周囲に複数の前記アルミ素線を撚り合わせて撚り線とするステップと、
前記撚り線を圧縮することにより前記水密材を前記中心素線と複数の前記アルミ素線の隙間に充填するステップと、
圧縮された撚り線の周囲に水密材を塗布するステップと、
水密材が塗布された圧縮撚り線を絶縁体で被覆して前記絶縁体と前記圧縮撚り線との間に前記水密材を充填するステップと、
を含み構成されてなることを特徴とする水密アルミ配電線の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の水密アルミ配電線の製造方法において、
前記中心素線を複数の素線で形成し、複数の前記素線同士の間にも前記水密材を隙間なく充填する
ことを特徴とする水密アルミ配電線の製造方法。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の水密アルミ配電線の製造方法において、
前記水密材は、EVA、EEA、EMA、ロジン系樹脂のいずれかを含む
ことを特徴とする水密アルミ配電線の製造方法。 - 請求項1から4のいずれか1項に記載の水密アルミ配電線の製造方法において、
前記絶縁体はヒレ付き又は表面に凹凸が形成された低風圧型である
ことを特徴とする水密アルミ配電線の製造方法。
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