以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。図1~10は本実施形態に係る眼鏡レンズ加工装置、眼鏡レンズ加工方法及び眼鏡レンズ加工プログラムの構成について説明する図である。
[概要]
本開示の実施形態に係る眼鏡レンズ加工装置、眼鏡レンズ加工方法及び眼鏡レンズ加工プログラムの概略について説明する。
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズ(眼鏡レンズ)LEを保持するために構成された保持手段(例えば、レンズ保持ユニット100、レンズチャック軸102)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、保持手段に保持されたレンズ(レンズの面)に穴を加工するための穴加工具435を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、レンズと穴加工具との位置関係を相対的に変えるために構成された移動手段(例えば、移動ユニット300)を備える。言い換えると、移動手段はレンズに対して穴加工具を相対的に移動するために構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、所望の穴深さと穴加工具の直径より拡張した所望の輪郭形状の穴データを取得するために構成された穴データ取得手段(例えば、データ取得ユニット10)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、移動手段を制御するために構成された制御手段(例えば、制御ユニット50)を備える。
例えば、移動手段は、レンズに対して加工具を移動する構成であってもよいし、穴加工具に対してレンズを移動する構成であってもよいし、レンズに対する加工具の移動と穴加工具に対するレンズの移動の複合であってもよい。
例えば、穴データ取得手段は、穴データを入力するために構成されたデータ入力手段(例えば、データ入力ユニット13)を備える。例えば、穴データは、穴の位置(例えば、レンズチャック軸を基準にしたレンズ面における位置)のデータ、穴の方向(例えば、レンズチャック軸の軸方向に対する角度)のデータ、所望の穴の深さ(レンズ面に対する穴あけ方向の距離)のデータ、穴加工具の直径より拡張した所望の輪郭形状のデータ、を含む。穴の深さデータは、レンズに貫通穴をあける場合も含む。例えば、データ入力手段によって入力された穴データは、メモリ20に記憶され、穴加工時に制御手段によって呼び出される。また、穴データは、外部装置から入力されることで取得される構成でもよい。
例えば、制御手段は、穴データ取得手段によって取得された穴データに基づいて移動手段を制御し、レンズに所望の深さと所望の輪郭形状を持った穴を加工する。例えば、制御手段は、穴加工具の軸方向(穴の深さ方向)に穴加工具を相対的に移動させて所望の深さの距離よりも短い深さの距離で穴(穴加工具と同じ直径の穴)を加工する第1加工(深さ方向加工)を行い、次に、この第1加工での穴加工具の深さ位置(軸方向の位置)を維持した状態で穴加工具を軸方向に直交する拡張方向(横方向)に移動させて穴を拡張する第2加工(拡張加工)を行う。この第1加工と第2加工とを行うことを「短距離拡張加工」とする。そして、制御手段は、短距離拡張加工の段階を少なくとも2段階行うことで、所望の深さと所望の輪郭形状を持った穴を加工するように構成されている。言い換えると、制御手段は、前記の第1加工と第2加工を含む短距離拡張加工の段階を繰り返すように構成されている。
なお、第1加工の「所望の深さの距離よりも短い深さの距離」とは、新たに穴を加工する加工量の距離のことであり、第2段階目以降の短距離拡張加工における第1加工では前段階の加工済み位置からの距離のことである。例えば、制御手段は、1段階目の短距離拡張加工として第1加工と第2加工を行った後、2段階目の短距離拡張加工として1段階目の加工済みの軸方向の位置(深さ方向の位置)からさらに2段階目の第1加工(所望の深さの距離よりも短い深さの距離で穴を加工)を行った後、2段階目の第2加工(2段階目の第1加工の穴の深さを維持した状態で穴加工具を軸方向に直交する拡張方向に移動させて穴を拡張する加工)を行う。2段階目の短距離拡張加工で所望の深さの穴の加工が完了していないときは、制御手段は、さらに3段階目の短距離拡張加工を行う。以後、所望の深さを持つ穴が完了するまで短距離拡張加工を繰り返していく。例えば、制御手段は、短距離拡張加工の第2加工において、穴加工具を拡張方向に移動させて所望の輪郭形状に穴を拡張する加工を行う。これにより、穴加工具の負荷を低減し、穴品質(例えば、穴形状が変形する、穴の加工面が毛羽立つ、穴の加工面が粗くなる、等)を向上した穴加工が行える。
例えば、制御手段は、短距離拡張加工の第2加工においては、所望の輪郭形状に達しない形状の穴に拡張加工を行った後、最後の短距離拡張加工の段階(あるいは最後の短距離拡張加工の段階が終わった後でもよい)で、穴加工具が所望の深さの距離を達成するように軸方向に加工具を位置させた状態で穴加工具を拡張方向に移動させて所望の輪郭形状に穴を拡張する拡張加工を行うことでもよい。
例えば、眼鏡レンズ加工装置は、穴加工モード選択手段(例えば、選択ユニット52)を備える。例えば、穴加工モード選択手段は、前述の短距離拡張加工を用いる第1モードと、第1モードとは異なる加工方法で穴を加工するための第2モードと、を選択するために構成されている。例えば、制御手段は、第2モードが選択されたときに、移動手段を制御し、穴加工具を軸方向に移動させて穴加工具が所望の深さに達した穴を加工した後、穴加工具を拡張方向に移動させて所望の輪郭形状を持つ穴に拡張する。第2モードの加工は、第1モードの加工よりも加工時間を短縮できる。例えば、穴加工モード選択手段は、選択条件に基づき、操作者が装置に備えられた選択器(例えば、モード選択ボタン641)によって選択する構成であってもよいし、制御手段が自動的に選択する構成であってよい。例えば、選択条件としては、レンズの材質、穴の所望の深さ(貫通穴の場合はレンズの厚さ)、穴の輪郭形状(例えば、穴の直径サイズ)の少なくとも1つである。
例えば、レンズの材質が加工し難い場合に第1モードが選択され、レンズの材質が加工しやすい場合に第2モードが選択される。レンズの材質が加工しやすい場合は、第2モードの穴加工であっても、穴の品質は良好であるので、加工時間を短縮した加工が行える。例えば、穴の所望の深さが予め設定された閾値以上か否かによって第1モードと第2モードの何れを使用するかが選択される。例えば、穴の所望の深さが予め設定された閾値未満の場合に第2モードが選択され、穴品質を下げることなく、加工時間が第1モードのときよりも短縮される。例えば、穴の輪郭形状の大きさが予め設定された閾値未満の場合に第2モードが選択される。
例えば、制御手段は、少なくとも短距離拡張加工の段階を完了した毎に、加工済みの穴から穴加工具の先端を抜くように移動手段を制御するように構成されていてもよい。すなわち、制御手段は、短距離拡張加工が終わると、加工済みの穴から穴加工具の先端を一旦抜いた後(レンズ面から加工具を離した後)、再び、加工済みの穴に穴加工具の先端を差し込み、加工済みの穴の深さ位置からさらに次段階の第1加工を行う。穴加工具の先端を抜く動作を行うことにより、穴加工時に発生した加工屑が穴から排出されやすくなり、次の段階で加工される穴の品質をより向上できる。
例えば、制御手段は、穴を拡張する加工(第2加工)のときに、移動手段を制御し、加工済みの穴形状に対して穴加工具の直径の所定距離以下(例えば、穴加工具の直径の半分以下の距離)で穴加工具を拡張方向に移動させて穴を拡張するように構成されていてもよい。穴の拡張加工のときに加工済みの穴形状に対して穴加工具の移動距離が大きすぎると、レンズへの穴加工具の食い込み量が多くなり、穴の品質が悪くなる場合があるが、この制御を行うことで穴の品質を良好にできる。
例えば、制御手段は、少なくとも2段階の短距離拡張加工を行うことで所望の深さと所望の輪郭形状を持った穴を加工した後、所望の深さの距離を達成するように穴加工具の軸方向に穴加工具を移動させた状態で穴加工具を所望の輪郭形状に沿って空回転させるように移動手段を制御するように構成されていてもよい。これにより、さらに穴の加工面がより綺麗に、滑らかに仕上げされ、穴の品質をより良好にできる。
例えば、眼鏡レンズと穴加工具との位置関係を相対的に変えて眼鏡レンズに穴を加工する眼鏡レンズ加工方法は、所望の穴深さと穴加工具の直径より拡張した所望の輪郭形状の穴データを取得する穴データ取得ステップと、取得された穴データに基づいて眼鏡レンズに穴を加工する加工ステップであって、穴加工具の軸方向に穴加工具を移動させて所望の深さの距離よりも短い深さの距離で穴を加工する第1加工と、第1加工での穴加工具の深さ位置を維持した状態で穴加工具を軸方向に直交する拡張方向に移動させて穴を拡張する第2加工と、を行う短距離拡張加工の段階を少なくとも2段階行う加工ステップと、を備えるように構成されている。
例えば、所望の穴深さと穴加工具の直径より拡張した所望の輪郭形状とを含む穴データに基づいて眼鏡レンズと穴加工具との位置関係を相対的に変えて眼鏡レンズに穴を加工する眼鏡レンズ加工装置で実行される眼鏡レンズ加工プログラムは、眼鏡レンズ加工装置の制御ユニットによって実行されることで、取得された穴データに基づいてレンズに穴を加工する加工ステップであって、穴加工具の軸方向に前記穴加工具を移動させて所望の深さの距離よりも短い深さの距離で穴を加工する第1加工と、第1加工での穴加工具の深さ位置を維持した状態で穴加工具を軸方向に直交する拡張方向に移動させて穴を拡張する第2加工と、を行う短距離拡張加工の段階を少なくとも2段階行う加工ステップを眼鏡レンズ加工装置に実行させるように構成されている。
背景技術に記載した従来の穴加工方法においては、レンズの材質及び穴の深さによって穴加工具に掛かる負荷が大きくなると、穴の品質が悪くなる。レンズの材質及び穴の深さごとに穴加工具の送り速度及び回転速度を設定したテーブルを用意する方法、あるいは加工具に掛かる負荷を検知しフィードバック制御によって加工条件を監視する方法を採用することで穴品質を改善できる可能性はある。しかし、穴加工具の送り速度及び回転速度を設定した制御テーブルを用意することは膨大なデータ取得が必要となり準備が大変である。また、フィードバック制御によって加工条件を監視する方法は、新たにセンサーが必要とり、コスト的に不利となる。
これに対して、本開示の実施形態に係る眼鏡レンズ加工装置、眼鏡レンズ加工方法及び眼鏡レンズ加工プログラムによれば、膨大なデータ取得に基づく制御テーブルや新たにセンサーを設けることなく、良好な品質の穴を加工できる。
[実施例]
本開示の典型的な実施例の一つについて、図面を参照して説明する。図1は、実施例に係る眼鏡レンズ加工装置1が備える加工機構部の構成を説明する図である。
例えば、眼鏡レンズ加工装置1はレンズ保持手段の例であるレンズ保持ユニット100を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置1はレンズ形状測定ユニット200を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は第1加工具ユニット150を備える。第1加工具ユニット150は、レンズLEの周縁を加工する加工具を回転させるために構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は第2加工具ユニット400を備える。第2加工具ユニット400は、レンズLEの屈折面に穴を加工する加工具を回転させるために構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は移動手段の例である移動ユニット300を備える。移動ユニット300はレンズLEと第1加工具ユニット150が持つ加工具との相対的な位置関係を変える(調整)するために構成されている。また、移動ユニット300はレンズLEと第2加工具ユニット400が持つ加工具との相対的な位置関係を変える(調整)するために構成されている。
レンズ保持ユニット100は、レンズLEを狭持(保持)して回転させるためのレンズチャック軸102と、キャリッジ101と、を備える。レンズチャック軸102は、一対のレンズチャック軸102L及び102Rを備える。キャリッジ101の左腕101Lにレンズチャック軸102Lが回転可能に保持され、キャリッジ101の右腕101Rにレンズチャック軸102Rが回転可能に保持されている。レンズチャック軸102(レンズLE)は、モータ120によって回転される。
第1加工具ユニット150は、加工具回転軸161を回転するためのモータ160を備える。加工具回転軸161は、レンズチャック軸102と平行な位置関係で、本体ベース170に回転可能に保持されている。加工具回転軸161にレンズLEの周縁を加工するための複数の加工具168が取り付けられている。例えば、加工具168は、粗加工具166と、通常仕上げ加工具164と、を含む。仕上げ加工具164は、ヤゲン加工用のV溝と、平仕上げ加工用の平仕上げ面と、を備える。また、加工具168は、鏡面仕上げ加工具165を含んでいてもよい。加工具168は、前ヤゲン加工具162と、後ヤゲン加工具163と、含んでいてもよい。
図1おいて、第2加工具ユニット400はキャリッジ101の後方に配置されている。図2は、第2加工具ユニット400の概略構成図である。ベースとなる固定板401は、図1のベース170に立設されたブロック(図示を略す)に固定されている。固定板401にはZ方向(図1のXY方向に直交する方向)に延びるレール402が固定され、レール402に沿ってZ軸移動支基404が移動可能に取り付けられている。移動支基404は、モータ405がボールネジ406を回転することによってZ方向に移動される。移動支基404に回転支基410が回転可能に保持されている。回転支基410は、回転伝達機構を介してモータ416によってZ方向の軸回りに回転される。回転支基410の先端部には、回転部430が取り付けられている。回転部430には回転支基410の軸方向に直交する回転軸431が回転可能に保持されている。回転軸431の一端に穴加工具(例えば、エンドミル)435が同軸に取付けられている。また、回転軸431の他端に溝掘り加工具436が備えられていてもよい。回転軸431は、回転部430及び回転支基410の内部に配置された回転伝達機構を介してモータ440により回転される。すなわち、穴加工具435は、モータ405によってZ方向に移動され、また、モータ416によってレンズチャック102に対する角度が変えられる。モータ405及びモータ416は移動ユニット300の一部を兼ねる。
移動ユニット300は、レンズチャック軸102に保持されたレンズLEと、加工具(加工具168及び穴加工具435)と、の相対的な位置を調整するために構成されている。例えば、移動ユニット300は、レンズチャック軸102と加工具回転軸161及び回転軸431との軸間距離を変動させる第1移動ユニット310と、レンズチャック軸102の軸方向にレンズLEを移動させる第2移動ユニット330と、を備える。実施例ではレンズチャック軸102の軸方向をX方向とする。レンズチャック軸102と加工具回転軸161及び回転軸431との軸間距離を変動させる方向をY方向とする。
第1移動ユニット310は、モータ315を備える。モータ315の回転により移動支基301がX方向に移動される。これにより、移動支基301に搭載されたキャリッジ101及びレンズチャック軸102(レンズLE)がX方向に移動される。なお、第1移動ユニット310の構成は、加工具回転軸161及び回転軸431をX方向に移動させることでもよい。
第2移動ユニット330は、キャリッジ101(レンズチャック軸102)をY方向に移動するためモータ335を備える。キャリッジ101はシャフト333,334に沿ってY方向に移動可能に移動支基301に保持されている。モータ335の回転はY方向に延びるボールネジ337に伝達され、ボールネジ337の回転によりキャリッジ101(レンズチャック軸102とレンズLE)はY方向に移動される。なお、実施例では第2移動ユニット330はレンズチャック軸102をY方向に移動する構成であるが、加工具回転軸161及び回転軸431をY方向に移動させる構成でもよい。すなわち、第2移動ユニット330はレンズチャック軸102と加工具回転軸161及び回転軸431との軸間の距離を相対的に変化させる構成であれば良い。
図1において、キャリッジ101の上方にレンズ形状測定ユニット200が配置されている。レンズ形状測定ユニット200は、レンズLEのレンズ前面(前屈折面)の形状と、レンズ後面(後屈折面)の形状と、を測定するために使用される。レンズ形状測定ユニット200は、例えば、レンズ前面形状を測定するための測定ユニット200Fと、レンズ後面形状を測定するための測定ユニット200Rと、を備える。
図3は、測定ユニット200Fの概略構成図である。測定ユニット200Fは、レンズ前面に接触する測定子206Fを有する。測定子206Fはアーム204Fの先端に取り付けられている。アーム204Fは、X方向に移動可能に、取付支基201Fに保持されている。アーム204Fは、ラック211F、ピニオン212F、ギヤ214F等を介してモータ216Fに接続されている。モータ216Fの駆動によってアーム204FがX方向に移動され、測定子206FがレンズLEの前面に押し当てられる。ピニオン212Fは、検知器213F(例えば、エンコーダ)の回転軸に取り付けられている。検知器213FによってX方向に移動される測定子206Fの位置が検知される。
レンズ後面形状を測定するための測定ユニット200Rの構成は、測定ユニット200Fと左右対称であるので、その説明は省略する。測定ユニット200Rは、レンズ後面に接触される測定子206Rと、測定子206RをX方向に移動させるモータ216Rと、測定子206RのX方向における移動位置を検知する検知器213Rと、を備える。
レンズ形状の測定時には、測定子206Fがレンズ前面に接触され、測定子206Rがレンズ後面に接触される。この状態でレンズ保持ユニット100によってレンズLEが回転されるとともに、玉型データに基づいて移動ユニット300によってレンズチャック軸102L及び102RがY方向に移動されることにより、玉型に対応したレンズ前面及びレンズ後面のレンズ形状が同時に測定される。すなわち、測定ユニット200Fによって玉型に対応したレンズ前面のコバ位置が測定され、測定ユニット200Rによって玉型に対応したレンズ後面のコバ位置が測定される。また、穴加工が設定されているときは、穴位置データに基づき、測定子206F及び206Rがレンズ屈折面における穴位置に接触され、X方向の穴位置が測定される。
図4は眼鏡レンズ加工装置1に関する制御系ブロック図である。制御ユニット50に図1、2及び3に示した各ユニットの電気系構成要素(モータ等)が接続されている。制御ユニット50は装置全体の制御を司るために構成されている。また、制御ユニット50はレンズ加工のための各種の演算を行うように構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置1はデータ取得ユニット10を備える。データ取得ユニット10はデータ入力ユニットの機能を兼ねていてもよい。例えば、データ取得ユニット10はディスプレイ12を備える。例えば、データ取得ユニット10はデータ入力ユニット13を備える。例えば、ディスプレイ12はタッチパネルの機能を備え、データ入力ユニット13を含むように構成されていてもよい。
例えば、眼鏡レンズ加工装置1は記憶手段の例であるメモリ20を備える。メモリ20はデータ取得ユニット10によって取得された各種データが記憶される。また、メモリ20には、眼鏡レンズ加工装置1の動作を制御するための各種プログラムが記憶されている。例えば、メモリ20にはレンズLEの周縁加工に関するプログラムが記憶されている。また、メモリ20には穴加工に関する加工プログラムが記憶されている。
例えば、眼鏡レンズ加工装置1は、穴加工モードを選択するために構成された選択ユニット52を備える。選択ユニット52は、制御ユニット50が兼ねるように構成されていてもよい。選択ユニット52は、データ入力ユニット13に含まれるように構成されていてもよい。
データ取得ユニット10、メモリ20、選択ユニット52は制御ユニット50に接続されている。データ取得ユニット10は玉型形状測定装置30に接続されていてもよい。例えば、玉型形状測定装置30は、リムレスフレームに備えられていたデモレンズの輪郭形状を測定することで、リムレスフレームに取り付けるレンズLEの玉型(レンズを周縁加工するための目標形状)を得る。
以上のような構成を備える眼鏡レンズ加工装置1における動作を説明する。ここではレンズLEに穴を加工する動作を中心に説明する。
初めに、データ取得ユニット10によってレンズLEの玉型データが取得される。例えば、玉型形状測定装置30によって測定されたデモレンズの輪郭形状がデータ取得ユニット10に入力される。玉型データはメモリ20に記憶されていたデータが呼び出されることで、データ取得ユニット10によって取得されてもよい。
玉型データが取得されたら、操作者はレンズLEの周縁を加工するための加工条件をディスプレイ12によって設定(入力)する。図5は、加工条件を設定するときのディスプレイ12の画面例である。図5において、ディスプレイ12の画面には右眼用玉型TGRと左眼用玉型TGLが表示されている。レンズLEの周縁加工のために、玉型に対するレンズLEの光学中心位置を配置するためのレイアウトデータが入力される。例えば、レイアウトデータは、左右の玉型中心間距離FPD(右眼用玉型TGRの幾何学中心TCRと左眼用玉型TGLの幾何学中心TCLとの中心間距離)と、瞳孔間距離PD(右眼用光学中心OCRと左眼用光学中心OCLとの距離)と、左右の玉型中心に対する光学中心の高さ距離と、を含む。これらの値を画面上の表示欄をタッチすることで表示されるテンキーによって入力できる。また、加工条件として、レンズの材質、フレームのタイプ(メタル、セル、リムレス、等)、レンズ周縁加工タイプ(ヤゲン加工、平加工、等)、鏡面加工の有無、面取り加工の有無を入力欄611、612、613、614及び615によって入力できる。例えば、レンズの材質は、プラスチック(通常の加工しやすい材質)、ポリカーボネイト、トライベックス等が選択できる。
穴加工の場合は、穴データを入力するための穴編集画面をディスプレイ12に表示させる。図6は、右眼用レンズの穴データを入力するための穴編集画面例である。画面上には右眼用の玉型TGRの図形が表示されている。例えば、操作者によって穴選択ボタン620から所望の穴タイプが選択される。例えば、穴タイプとして単穴(一つの丸穴)、長穴、2つ穴、ノッチ穴、ザグリ穴、等を選択できる。ここでは、例えば、レンズLEにリムレスフレームのテンプルを取り付けるための1つの穴H11と、リムレスフレームのブリッジを取り付けるための一つの穴H12と、を加工する場合を説明する。この場合、操作者によって単穴ボタン621がタッチペンで選択され、玉型TGRの図形内にドラッグされることで穴H11が配置される。その後、玉型TGRに対する穴H11の穴位置が細かく設定される。例えば、穴位置の水平方向(x座標)は、玉型の左エッジからの距離で設定され、穴位置の上下方向は玉型中心(幾何中心)TCRからの距離で設定される。距離は画面上の表示値がタッチされることで表示されるテンキーによって入力できる。穴位置の設定方法はこれに限らず、レンズの下エッジからの距離等、種々の方法が選択できる。穴H12も同様に設定できる。
次に、穴H11の条件(穴径、穴深さ、穴の角度)が設定される。穴の所望の輪郭形状のサイズは、穴径欄631で入力できる。穴の所望の深さは穴深さ欄632で入力できる。例えば、実施例では穴の深さとして貫通穴が選択されるものとする。また、穴の角度は角度欄634に設定(入力)される。例えば、穴の角度はレンズチャック軸102に対する角度を数値で入力できる他、レンズ前面の穴位置における法線方向に設定することもできる。
なお、左眼用レンズの穴データは、右眼用レンズの穴データを左右反転させたデータを使用できるので、その設定を省略することができる。
以上のように設定された穴データは、穴編集画面を閉じることによりデータ取得ユニット10で取得され、メモリ20に記憶される。
必要なデータの入力が完了したら、レンズLEの加工に移る。操作者によってレンズLEがレンズチャック軸102に保持された後、加工スタートスイッチ(図示を省略)のスタート信号が入力されることで加工動作が開始される。
初めに制御ユニット50によってレンズ形状測定ユニット200が駆動され、レンズLEの前面及び後面の形状が測定される。例えば、玉型データに基づき、玉型に沿った軌跡におけるレンズ全周のレンズ前面及び後面の形状(レンズチャック軸102の軸方向の形状)が測定され、次に、玉型に対して外側に一定距離(例えば、2mm)だけ離れた軌跡における全周のレンズ前面及び後面の形状が測定される。この2回の測定によりレンズのエッジ付近でのレンズ前面及び後面の傾斜角が制御ユニット50によって求められる。
穴加工の設定がある場合は、さらにレンズ形状測定ユニット200が駆動され、穴の位置データ(図6で設定されたデータ)基づき、穴位置におけるレンズ前面及び後面の形状(レンズチャック軸102の軸方向の形状)が測定される。この穴位置におけるレンズ前面及び後面の形状の測定結果と、先に求められたレンズ前面及び後面の傾斜角と、穴加工の角度データ(図6の穴角度欄634で設定された角度)と、に基づき、穴位置における穴あけ方向のレンズLEの厚さが制御ユニット50によって演算される。
レンズ形状の測定が完了すると、レンズLEの周縁加工の段階に移行される。制御ユニット50の制御により玉型データに基づいて移動ユニット300の駆動が制御され、初めに粗加工具166によってレンズLEの周縁が粗加工され、続いて仕上げ加工具164によってレンズLEの周縁が平仕上げ加工される。
次に、レンズLEの面に穴を加工する段階に移行される。制御ユニット50の制御によりメモリ20に記憶された(データ取得ユニット10によって取得された)穴データに基づいて移動ユニット300の駆動が制御される。例えば、穴H11(図6参照)が始めに加工される。実施例においては、図6の角度欄634で設定された角度に基づき、モータ416の駆動が制御され、穴加工具435の軸方向(回転軸431)の角度(レンズチャック軸102に対する角度)が変えられる。そして、穴位置データ及レンズ形状測定ユニット200によって測定されたレンズ前面の位置データに基づいてモータ405の駆動が制御され、穴加工435が退避位置からZ方向の加工位置に移動される。続いて、モータ315及びモータ335の駆動が制御され、レンズLEの前面における穴H11の位置に穴加工具435の先端が位置するように、レンズLE(レンズチャック軸102)がX及びY方向に移動される。そして、さらに穴の深さデータ及び輪郭形状に基づいてレンズLEがX及びY方向に移動されることにより、レンズLEに所望の深さと所望の輪郭形状を持った穴が加工される。
この穴加工に当たり、本実施形態に係る特徴的な第1加工プログラムの穴加工方法を図7~図9に基づいて説明する。なお、以下では、説明を分かりやすくするために、相対的にレンズLEに対して穴加工具435が移動されるものとして説明する。
図7~図9は、第1加工プログラムに係る穴加工方法を説明する図である。例えば、所望の穴の深さの距離T0は貫通穴が設定されているとする。すなわち、深さの距離T0は、穴あけ角度(方向)におけるレンズLEの厚さとされる。また、所望の輪郭形状D0は、丸穴で、穴加工具435(例えば、エンドミル)の直径より大きな直径に設定されているものとする。例えば、加工具の直径が0.8mmであり、レンズLEの厚さとなる所望の深さの距離T0が7mmであり、所望の輪郭形状D0の例である丸穴の直径が1.8mmであるとする。
制御ユニット50は、穴加工具435の軸方向(穴の深さ方向)に穴加工具435を移動させて所望の深さの距離T0よりも短い深さの距離で穴を加工する第1加工を行い、次に、この第1加工での穴加工具535の深さ位置(穴加工具435の軸方向の位置)を維持した状態で穴加工具435を軸方向に直交する拡張方向(横方向)に移動させて穴を拡張する第2加工を行う。この第1加工と第2加工とを行うことを「短距離拡張加工」とする。この例では、第2加工において穴加工具435を拡張方向に移動させて所望の輪郭形状に穴を拡張するものとする。そして、制御ユニット50は、短距離拡張加工の段階を少なくとも2段階行うことで所望の深さ距離T0と所望の輪郭形状D0を持った穴を加工する。言い換えれば、制御ユニット50は、短距離拡張加工の段階を繰り返すことで所望の深さ距離T0と所望の輪郭形状D0を持った穴を加工する。以下、より具体的な例を説明する。
図7は、1段階目と2段階目の短距離拡張加工の説明図である。まず、図7(a)に示すように、制御ユニット50により穴加工具435の先端がレンズLEの前面の穴位置に位置された後、第1加工として、穴加工具435の軸方向AXに穴加工具435が移動(送り移動)され、所望の深さの距離T0よりも短い深さの距離t1で穴(穴加工具435と同じ直径の穴)が加工される。この距離t1はレンズ材質が穴加工しにくい場合(例えば、ポリカーボネイト、トライベックス(TRIVEX)等)であっても、穴の品質を確保できる距離として設定されている。例えば、距離t1は2mmである。
次に、図7(b)に示すように、第2加工として、第1加工での穴加工具435の深さの距離t1が維持された状態(相対的に軸方向AXへの穴加工具435の移動がない状態)で穴加工具435が拡張方向EX(軸方向AXに直交する方向)に移動され、所望の輪郭形状D0を持つ穴に拡張される。この第2加工は図9のように行われる。
図8は穴の拡張加工の例を説明する図である。例えば、図8(a)に示すように、第1加工においては、目標の穴の中心に穴加工具435の直径で穴H1aが加工される。次に、穴加工具435が拡張方向に移動される。この時、図8(b)に示すように、例えば、加工済の穴H1aの輪郭形状に対して穴加工具435の直径の半分以下の距離M1で穴加工具435が拡張方向に移動される。言い換えれば、穴H1aの輪郭形状に対して距離M1分だけ拡張された穴H1bが加工される。例えば、穴加工具435の直径が0.8mmの場合、距離M1は0.3mmである。加工具435の直径の半分より大きな距離で穴加工具435が拡張方向に移動されて穴加工が行われると、レンズLEの未加工部分への穴加工具435の食い込み量が多くなり、穴加工具435の軸振れが起こりやすくなる。この結果、穴の品質が悪くなる(穴の変形、穴の毛羽立ちの発生、等)。これを避けるために、距離M1は穴加工具435の直径の半分以下に設定されている。そして、最終的な所望の輪郭形状D0を持つ穴に拡張されるまで、距離M1で拡張する穴加工が繰り返される。なお、図8(c)のように、所望の輪郭形状D0を穴H1cに拡張するための残りの拡張距離M2が距離M1に満たないときには、距離M2で穴加工具435が拡張方向に移動されて穴が加工される。
再び図7の説明に戻り、図7(c)、(d)は、2段階目の短距離拡張加工の説明図である。図7(c)に示すように、第1加工として、1段階目の短距離拡張加工の加工済みの穴に対して、さらに軸方向AXに穴加工具435が前進するように移動され、距離T0よりも短い深さの距離t1で穴が加工される。次に、図7(d)に示すように、第2加工として、2段階目の深さの距離t1が維持された状態で穴加工具435が拡張方向EXに移動され、輪郭形状D0を持つ穴に拡張される穴加工が行われる。以後、所望の深さ距離T0と所望の輪郭形状D0を持った穴が加工されるまで、短距離拡張加工が繰り返される。
図9は、最後の短距離拡張加工を説明する図である。この例では3回の深さの距離t1での穴加工を行った後(3段階目の短距離拡張加工の説明図は省略している)、残り距離(残りの深さ距離)s1が深さの距離t1以下になったときである。図9(a)のように、貫通穴における最後の加工段階では、残り距離s1と、レンズLEの後面から穴加工具435の先端が突出する距離s2と、を合わせた距離が深さの距離teに設定される。例えば、距離s2は1.5mmである。貫通穴においては穴加工具435の先端がレンズLEの面から距離s2だけ突出することにより、穴加工時のレンズLEの割れ及び欠けを防止できる。また、レンズLEの厚さ(距離T0)は演算された値であるので、多少の誤差があったとしても吸収できる。
第1加工の終了後は、図9(b)のように、第2加工として深さの距離teが維持された状態で穴加工具435が拡張方向EXに移動され、輪郭形状D0を持つ穴に拡張される穴加工が行われる。これにより、所望の深さ距離T0と所望の輪郭形状D0を持った穴が加工される。
なお、上記の説明では2段階目以降の短距離拡張加工における深さの距離t1は、何れも同じとしたが、最初の深さの距離t1よりも長くしてもよい。例えば、実験の結果では、1段階目の深さの距離t1の2mmに対して、2段階目以降の深さの距離t1が1mm長い距離の3mmであっても穴品質に大きな差はなかった。1段階目の深さの距離t1が長すぎない方が良いのは、加工屑の排出が影響していることが考えられる。また、1段階目の深さの距離t1が長すぎると、初めにレンズLEの面に穴を加工する際に加工具435の軸振れ等が生じ易いが、2段階目以降は加工済みの穴にガイドされることで穴加工具435の軸振れが抑えられる傾向にあると考えられる。このため、2段階目以降の深さの距離t1を1段階目より多少長くしても穴品質を低下することなく、短距離拡張加工の回数が減少することで、全体の穴加工の時間を短くできる。
また、短距離拡張加工で1回ごとに加工する深さの距離t1は固定値でなく、所望の深さ距離T0に対しての比率で定められる構成であってもよい。例えば、所望の深さ距離T0が、初めに定められた距離t1では5回以上の短距離拡張加工を必要とする場合、4回の短距離拡張加工で加工を終えるように距離T0を4等分した距離とする。あるいは、1段階目の距離t1は固定値(初めは加工し難いため)であるが、残りを3等分した距離としてもよい。こうすると、加工時間を大幅に長引かせずに、少なくとも従来よりは穴の品質を向上させた穴加工が行える。
また、上記の実施例では短距離拡張加工の各段階で所望の輪郭形状D0に拡張加工を行うものとしたが、短距離拡張加工の各段階では所望の輪郭形状D0に達しない形状の穴に拡張加工を行った後、最後の短距離拡張加工の段階で所望の輪郭形状D0に穴を拡張する拡張加工を行うことでもよい。例えば、深さ距離t1で加工する3段階目までの第2加工では、図8(b)のように距離M1で拡張された穴H1bの形状に加工される。そして、最終段階の第2加工においては、穴加工具435が所望の深さの距離D0を達成するように軸方向に加工具が位置した状態で穴加工具435が距離M1で移動されて穴H1bの形状に拡張された後、図8(c)のように、さらに距離M2で拡張方向に移動されることで、未加工であった部分も含めて所望の輪郭形状D0の穴H1cに拡張される。この加工では、図7の例に比べて加工時間を短くできる。
また、少なくとも前述の短距離拡張加工を行った毎に、加工済みの穴(レンズLEの面)から穴加工具435の先端が抜かれる(離される)ように移動されてもよい。すなわち、1回の短距離拡張加工が終わると、加工済みの穴から穴加工具435の先端が一旦抜かれた後(レンズ面から加工具が離された後)、再び、加工済みの穴に穴加工具435の先端が差し込まれ、加工済みの穴の深さ位置からさらに次段階の短距離拡張加工は行われる。穴加工具435の先端が抜かれる動作が行われることにより、穴加工時に生じた加工屑が穴加工具435と一緒に加工済みの穴から排出されやすくなり、その後の穴加工時に加工屑が影響することを軽減できる。これにより、穴の品質をより向上できる。
なお、穴加工具435がレンズLEの面から抜かれる制御は、第1加工の終了後で第2加工の穴の拡張加工前にも行われるようにしてもよいし、第2加工の穴の拡張加工の途中(段階的な拡張加工が終了した後)に行われるようにしてもよい。
また、所望の深さT0と所望の輪郭形状D0を持った穴を加工した後、所望の深さ距離T0を達成するように軸方向AXに穴加工具435が移動された状態で、穴加工具435が所望の穴の輪郭形状D0に沿って空回転されるように構成されていてもよい。これにより、例えば、段階的な短距離拡張加工での繋ぎ部分の段差や穴が小さく加工された部分等が有った場合にも、その除去が行われ、さらに穴の加工面がより綺麗に、滑らかに仕上げされることになり、穴の品質をより良好にできる。この空回転は複数回行われてもよい。なお、穴加工具435の空回転の速度(穴加工具が穴の輪郭形状に沿って移動する速度)は、穴の拡張加工時の速度よりも速くしてもよい。これにより加工時間を短くできる。
メモリ20には前述の短距離拡張加工を用いる穴加工方法の第1加工プログラムとは別の穴加工方法の第2加工プログラムが記憶されている。
図10は、第2加工プログラムに係る穴加工方法を説明する図である。例えば、穴データは、前述の第1加工プログラムの例と同じであるとする。第2加工プログラムの加工方法では、第1加工プログラムと異なり、制御ユニット50は、移動ユニット300を制御し、初めに所望の穴の深さの距離を達成するように穴加工具435と同じ直径の穴を加工させた後、穴加工具435を拡張方向に移動させて穴を拡張する加工を行うことで所望の深さ距離と所望の輪郭形状を持った穴を加工する。
まず、図10(a)に示すように、制御ユニット50により穴加工具435の先端がレンズLEの前面の穴位置に位置された後、所望の深さの距離T0が達成されるように、穴加工具435の軸方向AXに穴加工具435が移動され、穴加工具435と同じ直径の穴が加工される。貫通穴の場合、例えば、レンズLEの後面から距離s2(例えば、1.5mm)まで穴加工具435の先端が突出するように穴加工具435が移動され、穴が加工される。次に、図10(b)に示すように、相対的に穴加工具435の軸方向AXの深さ位置が維持された状態で、穴加工具435が拡張方向に移動され、所望の輪郭形状D0に拡張加工される。
この第2加工プログラムの穴加工方法は、レンズLEの穴か加工がしやすい場合に適用されることで、第1加工プログラムの方法よりも短時間で穴加工される。
なお、第2加工プログラムの穴の拡張加工においては、図8の例と同じく、加工済の穴の輪郭形状に対して穴加工具435の直径の半分以下の距離M1、M2で穴加工具435が拡張方向に移動されるように制御されるとよい。
また、この拡張加工が行われた後に、深さ距離T0を達成するように穴加工具435が軸方向AXに移動された状態で、穴加工具435が穴の輪郭形状D0に沿って空回転されるように構成されていてもよい。空回転は複数回行われてもよい。これにより、穴の加工面がより滑らかになり、穴の品質がより良好にされる。
また、穴加工具435と同じ直径の穴が加工される工程においては、1回の穴加工具435の送り移動で所望の深さの距離T0の穴加工が達成されるのではなく、所望の深さの距離T0よりも短い送り移動距離(例えば、2mm)で複数回に分けて行われるようにし、短い送り移動距離の穴加工が終了する毎に、加工済みの穴(レンズLEの面)から穴加工具435の先端が抜かれるように制御されてもよい。これにより、穴加工時に生じた加工屑が穴加工具435と一緒に加工済みの穴から排出されやすくなり、穴品質を向上できる。
レンズLEに対する穴加工として、前述の短距離拡張加工を用いた第1加工プログラムと第2加工プログラムとを選択的に使用できると都合がよい。そのため、眼鏡加工装置1には第1加工プログラムの加工方法を用いる第1モードと、第2加工プログラムを用いる第2モードと、を選択するために構成された穴加工モード選択ユニット52が設けられている。
例えば、第1モードによる加工方法は、穴加工がしにくい条件の場合に選択され、第2モードによる加工方法は穴加工がし易すい条件の場合に選択される。例えば、選択条件としては、レンズの材質、穴の所望の深さ(貫通穴の場合はレンズの厚さ)、穴の輪郭形状(穴のサイズ等)、等の少なくとも1つが挙げられる。
第1モードと第2モードとの選択は、制御ユニット50がデータ取得ユニット10によって取得されたデータに基づいて自動的に選択するようにしてもよい。すなわち、制御ユニット50が穴加工モード選択ユニット52の機能を兼ねてもよい。例えば、図5のディスプレイ12の画面において、レンズの材質を設定する入力欄611で加工し難い材質(ポリカーボネイト、トライベックス等)が入力された場合は第1モードが選択され、加工しやすい材質(プラスチック等)が入力された場合は第2モードが選択される。例えば、穴の所望の深さ距離T0が予め設定された閾値以上か否かによって第1モードと第2モードの何れを使用するかが選択されてもよい。例えば、図6における穴深さ欄632で入力された穴の所望の深さ距離T0が予め設定された閾値未満の場合に第2モードが選択されることで、穴品質を下げることなく、加工時間が第1モードのときよりも短縮される。例えば、加工しやすい材質の場合でも、閾値以上の所望の深さ距離T0が入力された場合(貫通穴においてはレンズの厚さデータが閾値以上の場合)に、第1モードが選択される。この場合、例えば、短距離拡張加工の深さの距離t1は、閾値以下の距離となるように、所望の深さ距離T0を分割した距離に設定される。例えば、図6における穴径欄631で入力された穴の輪郭形状の大きさが予め設定された閾値未満の場合に第2モードが選択される。例えば、加工しやすい材質の場合でも、閾値以上の大きさの輪郭形状が入力された場合に、第1モードが選択される。これら以外にも穴加工の条件に基づき、制御ユニット50によって第1モードと第2モードの何れを使用するかが自動的に選択されてもよい。
また、第1モードと第2モードとの選択は、操作者が選択ユニット52によって選択することでもよい。例えば、図6の画面例におけるモード選択ボタン641で、操作者が第1モードと第2モードとを選択する構成であってもよい。この場合、制御ユニット50による自動的な選択以外にも、操作者の経験や眼鏡店の方針に応じて任意に選択できる。
以上、本開示の典型的な実施例を説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、本開示の技術思想を同一にする範囲において種々の変容が可能である。