JP7334959B2 - 熱伝導性組成物及び熱伝導性部材 - Google Patents
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ナノセルロースには化学酸化処理による10nm以下の繊維径をもったセルロースナノファイバー(CNF)(TEMPO酸化CNFやリン酸化CNFと呼ばれ、シングルナノファイバーとも呼ばれる)、機械的・物理的な解繊による化学処理に比べて繊維径が大きなCNFや、ミクロフィブリル、パルプを強酸等で処理して結晶性の高い部分を取り出したセルロースナノクリスタル(CNC)、さらには微生物によって産生されたバクテリアセルロースなどが知られている。ナノセルロースは、カーボンファイバーやアラミド繊維に近い強度を持ち、鋼鉄の1/5の重量で、かつ5倍以上の強度である。
これに対し、本発明は、後述する通り、セルロース繊維をマトリックス材料とするのではなく、マトリックス材料にセルロース繊維を分散させるものである。
そして、マトリックス材料へのセルロース繊維の分散、複合化には様々なアプローチがなされている。例えば、パルプと樹脂、さらには必要に応じて膨潤剤とを混合し、混練機を使って解繊する方法や、直径が10nm未満のシングルナノサイズのCNF分散溶液を樹脂に混合して同様に混練機を使って解繊する方法などである。
その理由の一つは、セルロース繊維の多くはその表面に親水性官能基を持っているために水への親和性や分散性には優れるが、一般的に疎水性の高い樹脂への分散性は著しく悪いためである。特に、TEMPO酸化法やリン酸処理法で作製されたCNFはシングルナノレベルの繊維径であって有用であるが、表面にはカルボン酸塩基やリン酸塩基を持っているために疎水性樹脂への馴染みが極めて悪い。
その一つは、セルロース繊維の表面に存在する水酸基等を利用して化学反応によって疎水性官能基を導入する方法である。例えば、カプロラクトンのグラフト化(例えば、特許文献3など参照)や無水酢酸の付加反応によるアセチル化(例えば、特許文献4など参照)が知られている。
しかしながら、カプロラクトンのグラフトや無水酢酸等の付加反応によって疎水化する方法では、化学反応を伴うためにコストが著しく高くなること、また化学修飾によって導入された基の疎水性が十分ではなく分散できる樹脂が限られるという問題がある。
すなわち、本発明に係る熱伝導性組成物は、マトリックス材料中に、セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体にビニル系ポリマーがグラフトされた構造を備えるセルロース繊維分散用複合体と、放熱性無機粒子とを含有する。
また、本発明に係る熱伝導性部材は、上記本発明に係る熱伝導性組成物からなる。
本発明で用いるセルロース繊維分散用複合体(以下、単に「複合体」ということがある)は、セルロース誘導体にビニル系ポリマーがグラフトされた構造を備える。
セルロース誘導体は、セルロースの水酸基の一部が置換されたものである。ただし、本発明において、後述のビニル系ポリマーがグラフトされたものについては、「複合体」と称して、「セルロース誘導体」とは用語上区別する。
なかでも有機溶剤への溶解度の高さやビニル系ポリマーのグラフトし易さ、入手性の観点からエチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、トリアセチルセルロース、カチオン化セルロースが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」の表記は、メタアクリル酸とアクリル酸の双方を含む表記である。「(メタ)アクリレート」などの表記も同様である。
また、導入される重合性不飽和基やチオール基の数は、セルロース誘導体1分子当たり平均で20以下であることが望ましい。20を超える数の導入ではグラフト重合時にゲル化する恐れがある。
上記の反応溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ピリジンなどの非プロトン性溶媒を、単独あるいは混合して使用することができる。
セルロース誘導体がカチオン基を有することで、特に、TEMPO酸化法やリン酸処理法で作製されたCNFの分散性に優れた複合体となる。これらのCNFは、その表面にカルボン酸塩基やリン酸塩基を持っているが、これらCNF表面の官能基と、セルロース誘導体のカチオン基との親和性により、CNFの分散が促進されるためである。
すなわち、例えば、アミノ基を導入する方法として、塩化チオニル/アンモニアを反応させる方法、エポキシ基を導入した後にアンモニアや多価アミノ化合物を反応させる方法が知られている。さらには、アミノ基とカルボキシル基の双方を分子内にもった化合物を上記した縮合剤等を用いて反応させて導入する方法が実施できる。
上記の反応溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ピリジンなどの非プロトン性溶媒を、単独あるいは混合して使用することができる。
カチオン基は、セルロース誘導体1分子あたりに平均で1~30個の範囲が望ましい。
セルロース誘導体へのビニル系ポリマーのグラフトは、例えば、上述のようにして重合性不飽和基やチオール基が導入されたセルロース誘導体の存在下で、ビニル系モノマーをラジカル重合することにより行うことができる。重合性不飽和基やチオール基を基点としてビニル系ポリマーであるグラフト鎖が形成される。
また、ビニル系モノマーとして、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマーやポリアルキレンオキサイド系のモノマー成分、特に、繰り返しユニット数が1~30のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、繰り返しユニット数が1~30のメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートを使用すると、セルロースナノファイバー中に酸塩基等が存在した場合にも有効な相互作用の効果が期待できるため、共重合する一成分として使用することが望ましい。
さらにはまた、生成したビニル系ポリマー中に反応性基を導入し、分散対象の樹脂等との結合を形成させることも可能である。その一つの方法は、前記したグリシジル(メタ)アクリレートや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基をもったビニル系モノマーを共重合することである。他の方法としては、生成したビニル系ポリマー中の官能基、例えば水酸基やカルボキシル基等を利用して重合可能な(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基等を化学反応で導入することである。このような反応性基の導入にはイソシアネート基含有(メタ)アクリレートであるカレンズMO-IやAO-I等(昭和電工製)、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどを使用した付加反応で実現できる。
なお、上記した重合において、ビニル系モノマーから形成されるビニル系ポリマーがすべてセルロース誘導体にグラフト(化学結合)される必要はない。ビニル系モノマーの単独重合によって生成するポリマーが含まれていてもよい。
なお、セルロース誘導体、このセルロース誘導体にグラフトされるビニル系ポリマー、及びそれらの複合体の各重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値である。
なお、GPC法によって測定される上記複合体の分子量は、セルロース誘導体固有の溶液特性が原因と思われるが、単純にセルロース誘導体とビニル系ポリマーとの総和とはならない場合がある。詳細は不明であるがセルロース誘導体にビニル系ポリマーが結合することによって、高分子鎖の広がり等やセルロース誘導体間の相互作用が変化する可能性がある。したがって、あくまでもGPC法での測定分子量となる。
次に、本発明の熱伝導性組成物及びこれを用いた熱伝導性部材について説明をする。
本発明の熱伝導性組成物(以下、単に「組成物」という場合がある。)は、上で詳述した複合体と、セルロースナノファイバーと放熱性無機粒子を含むものである。
以下、マトリックス材料として樹脂前駆体を含む第1の構成と、マトリックス材料として樹脂を含む第2の構成を、本発明に係る熱伝導性組成物の好適例として例示する。
本発明の組成物の第1の構成は、前記複合体と、セルロースナノファイバーと、放熱性無機粒子と、樹脂前駆体を含む組成物である。
水媒体中にセルロースナノファイバーが分散した形態はCNFやCNCの市販品として入手可能であるが、例えば、これを原料として用いて水と有機溶剤を樹脂前駆体へと置換することによって、セルロースナノファイバーが樹脂前駆体に分散した組成物を製造することができ、さらに放熱性無機粒子を混合分散することで樹脂前駆体分散組成物となる。
特に、黒鉛、窒化ホウ素、アルミナ、窒化アルミニウム及びシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
以下、放熱性無機粒子の平均粒子径の値について記載するときは、レーザー回折散乱法で測定した値を記載している。
また、樹脂前駆体は(セルロースナノファイバー+複合体)の重量に対して、5倍重量~200倍重量の範囲となることが好ましく、放熱性無機粒子は樹脂前駆体の重量に対して0.5倍重量~20倍重量の範囲となることが好ましい。この範囲を超えると熱伝導性付与の効果が不十分となる恐れや、高粘度により分散性が低下する恐れがある。
また、(メタ)アクリレート系化合物を用いる場合は、保存安定性を向上させる目的でハイドロキノン類などの重合禁止剤を添加することも従来技術同様に実施可能である。
本発明の組成物の第2の構成は、前記複合体と、セルロースナノファイバー、樹脂と放熱性無機粒子を含む組成物である。
例えば、前記した複合体とセルロースナノファイバー(及び必要に応じて水や有機溶剤)を混合し、これに前記した樹脂と放熱性無機粒子を混合した上、必要に応じて加熱しながらニーダーや連続式二軸混練機等を用いて機械的に混練する方法が挙げられる。
また、その他の方法として、前記複合体とセルロースナノファイバーと有機溶剤からなる分散液を減圧下で脱水した後、前記した樹脂のなかで有機溶剤への溶解性のあるものを選択の上、それを溶解させた溶液に放熱性無機粒子を混合分散し、セルロースナノファイバーと放熱性無機粒子が均一に分散した溶液を調製後に有機溶剤を除去する方法も挙げられる。
これらの方法は使用する樹脂の種類によって使い分けることが好ましい。
また、樹脂は(セルロースナノファイバー+複合体)の重量に対して、5倍重量~100倍重量の範囲となることが好ましく、放熱性無機粒子は樹脂の重量に対して0.5倍重量~20倍重量の範囲となることが好ましい。
本熱伝導性部材は、放熱部材や放熱と電磁波シールド機能を併せ持った部材、放熱と高周波ノイズ抑制効果を併せ持った部材などとして使用可能な有用なものである。
上記した本発明の組成物には、前記した複合体、セルロースナノファイバー、放熱性無機粒子、樹脂前駆体や樹脂の他にも様々な材料を配合しても構わない。
これらを例示すれば、有機溶剤、界面活性剤、可塑剤、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤や酸化防止剤などの安定剤、カーボンブラック、色素、ポリマー粒子、金属粒子、エポキシ硬化剤、硬化促進触媒、重合開始剤などである。これらの材料は、組成物の全体重量に対して、例えば、0.001重量%~90重量%の範囲内で配合することができる。
<合成例A>
エチルセルロース(ダウケミカル社製の「エトセルSTD-4」、数平均分子量:1.37万)100重量部、酢酸エチル400重量部を反応容器に加えて混合し、エチルセルロースを酢酸エチルに均一溶解させた溶液を調製した。
上記溶液に、縮合剤としてジイソプロピルカルボジイミド2.82重量部、反応促進剤としてジメチルアミノピリジン0.05重量部、及びメタクリル酸1.92重量部を添加、混合した。引き続き、40℃で24時間撹拌して反応を実施し、エチルセルロースにメタクリレート基を導入した。
反応の進行状態は酸価測定によって確認でき、上記40℃での24時間の撹拌によって反応は完了していた。得られたサンプルを採取し、乾燥させて、1H-NMR分析を実施した結果、仕込んだメタクリル酸と同モル量のメタクリレート基がエチルセルロースに導入されていることがわかった。また、導入されたメタクリレート基は、エチルセルロース鎖1本あたり平均で3個であった。
エチルセルロース(ダウケミカル社製の「エトセルSTD-4」、数平均分子量:1.37万)100重量部、酢酸エチル400重量部を反応容器に加えて混合し、エチルセルロースを酢酸エチルに均一溶解させた溶液を調製した。
上記溶液に、縮合剤としてジイソプロピルカルボジイミド4.59重量部、反応促進剤としてジメチルアミノピリジン0.09重量部、及びメタクリル酸3.13重量部を添加、混合した。引き続き、40℃で24時間撹拌して反応を実施し、エチルセルロースにメタクリレート基を導入した。
反応の進行状態は酸価測定によって確認でき、上記40℃での24時間の撹拌によって反応は完了していた。得られたサンプルを採取し、乾燥させて、1H-NMR分析を実施した結果、仕込んだメタクリル酸と同モル量のメタクリレート基がエチルセルロースに導入されていることがわかった。また、導入されたメタクリレート基は、エチルセルロース鎖1本あたり平均で5個であった。
<合成例1>
合成例Aで得られたセルロース誘導体15重量部、酢酸エチル170重量部(セルロース誘導体とビニル系モノマーの合計量に対して、反応後のポリマー成分が15~30重量%となるように濃度を酢酸エチルにて調整)を反応容器へ加え混合し、セルロース誘導体を溶解した。そこへブチルメタクリレート15重量部、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)0.6重量部を加え、反応容器内を窒素ガスで十分にした後、80℃で8時間重合反応を実施した。
用いたセルロース誘導体、ビニル系モノマー組成、セルロース誘導体とビニル系モノマーの比率を表1に示す条件とした以外は合成例1と同様な条件で複合体の合成を行った。
BMA:ブチルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
FM-0711:シリコーン系メタクリレート(JNC製、商品名サイラプレーン(登録商標)「FM-0711」)
GMA:グリシジルメタクリレート
GPC装置:東ソー社製「HLC-8320GPC」、
カラム:TSKgel GMHXL、
測定温度(設定温度):40℃、
移動相:テトラヒドロフラン
比較評価のためにセルロース誘導体を含まない単独のビニル系ポリマーを合成した。
具体的には、ブチルメタクリレート30重量部、酢酸エチル70重量部、重合開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)0.6重量部を加え、反応容器内を窒素ガスで十分にした後、80℃で8時間重合反応を実施した。重量平均分子量が20万のポリブチルメタクリレートを得た。
<実施例1A>
ガラス製フラスコ容器にTEMPO酸化法CNF(CNF固形分量2重量%水分散液:第一工業製薬製)を50重量部(CNF固形分1重量部)、合成例4で得られた複合体(セルロース誘導体-ビニル系ポリマー複合体)を固形分として1重量部(酢酸エチル溶液として添加)、YD-8125(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を50重量部投入し、高速攪拌機を用いて30分間撹拌・混合を行った。その後、ロータリーエバポレータを用いて減圧下で脱水を行い、YD-8125に対して2重量%の濃度にてCNFを分散した液体を得た。その後、放熱性無機粒子としてトーヤルナイト(登録商標)TFZ-A15P(窒化アルミニウム、東洋アルミニウム(株)製、平均粒子径15μm)を121重量部投入しロール分散機にて混合分散を実施して樹脂前駆体分散組成物を作製した。
CNF1:第一工業製薬製のセルロースナノファイバー(レオクリスタ/2重量%水分散液)
CNF2:中越パルプ製のNanoforest-S(10重量%水分散液)
YD-8125:ビスフェノールAタイプ2官能エポキシ(日鉄ケミカル&マテリアル製)
KE-1935-A:LIM用シリコーンゴム(信越化学工業製)
なお、複合体は、有効成分10重量%酢酸エチル溶液として用いた。
実施例1Aと同様の操作で複合体を種々に変更して、CNFを種々樹脂前駆体に分散した組成物を作製した。なお、実施例7AにおいてはCNFとして非TEMPO酸化の中越パルプ製のNanoforest-Sを使用した。
CNFを含まない状態で樹脂前駆体に放熱性無機粒子を混合分散した。
<比較例3A>
比較合成例1で作製したセルロース誘導体を含まないビニル系ポリマーのみを使用し、水分散CNF中のCNF量に対してポリマー固形分が100重量%となる量を添加し、実施例1Aと同様の方法でYD-8125への分散を実施した。
樹脂前駆体にYD-8125を使用した場合は硬化触媒として1-ベンジル-2-メチルイミダゾールを組成物100重量部に対して2重量部配合し、100℃×2時間+150℃×5時間加熱して硬化した。
一方、樹脂前駆体にKE-1935-Aを使用した場合は硬化剤としてKE-1935-Bを組成物100重量部に対して17重量部配合し、120℃×1時間+150℃×1時間加熱して硬化した。
(株)アイフェイズ製 ai-Phase Mobile M3 type1を用いて熱伝導率を測定した。
結果を表2に記載するが、CNFと複合体を配合することにより非配合品と比較して熱伝導率の向上が見られた。
<実施例1B>
ガラス製容器にTEMPO酸化法CNF(CNF固形分量2重量%水分散液:第一工業製薬製)を50重量部(CNF固形分1重量部)、合成例2で得られた複合体(セルロース誘導体-ビニル系ポリマー複合体)を固形分として1重量部(酢酸エチル溶液として添加)、EP65(EPDMゴム)の10%トルエン溶液を500重量部投入し、高速攪拌機を用いて30分間撹拌・混合を行った。その後、ロータリーエバポレータを用いて減圧下で脱水と溶剤置換を行い、EP65に対して2重量%の濃度にてCNFを分散したトルエン溶液を得た。その後、放熱性無機粒子としてトーヤルナイトTFZ-A15P(窒化アルミニウム)を208重量部投入し混合分散を実施した。その後、離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム上にワイヤバーでコーティング、乾燥させて、厚み約100μmの熱伝導性フィルムを作製した。樹脂前駆体分散組成物の場合と同様に熱伝導率を測定した。CNFを配合したフィルムでは11W/m・Kであったが、配合していないフィルムでは9W/m・Kであり、向上が見られた。
ガラス製容器にTEMPO酸化法CNF(CNF固形分量2重量%水分散液:第一工業製薬製)を50重量部(CNF固形分1重量部)、合成例2で得られた複合体(セルロース誘導体-ビニル系ポリマー複合体)を固形分として1重量部(酢酸エチル溶液として添加)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂(自社製造の重量平均分子量Mw=55万)50重量部、トルエン450重量部投入し、高速攪拌機を用いて30分間撹拌・混合を行った。その後、ロータリーエバポレータを用いて減圧下で脱水と溶剤置換を行った後、放熱性無機粒子としてトーヤルナイトTFZ-A15P(窒化アルミニウム)を208重量部投入し混合分散を実施した。その後、離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム上にワイヤバーでコーティング、乾燥させて、厚み約100μmの熱伝導性フィルムを作製した。樹脂前駆体分散組成物の場合と同様に熱伝導率を測定した。CNFを配合したフィルムでは10W/m・Kであったが、配合していないフィルムでは8.5W/m・Kであり、向上が見られた。
実施例1Bで作製した熱伝導性フィルムに粘着層として日東電工製のPET基材両面テープNo.5605を用いて電解銅箔と積層することで電磁波シールド機能を併せ持った部材を作製することが出来る。また、同様に実施例2Bで作製した熱伝導性フィルムの上にUV硬化型のハードコート剤を5μmの厚みでコーティングすることにより表面に保護層を有する熱伝導性フィルムとすることが可能である。
Claims (6)
- マトリックス材料中に、セルロースナノファイバーと、セルロース誘導体にビニル系ポリマーがグラフトされた構造を備えるセルロース繊維分散用複合体と、放熱性無機粒子とを含有する、熱伝導性組成物。
- 前記セルロース繊維分散用複合体は、セルロースの水酸基の一部に重合性不飽和基及び/又はチオール基が導入された反応性セルロース誘導体に対し、前記重合性不飽和基及び/又はチオール基を基点としてビニル系ポリマーがグラフトされた構造を備えるものである、請求項1記載の熱伝導性組成物。
- 前記放熱性無機粒子が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から2までのいずれかに記載の熱伝導性組成物。
- 前記マトリックス材料として樹脂前駆体を含む、請求項1から3までのいずれかに記載の熱伝導性組成物。
- 前記マトリックス材料として樹脂を含む、請求項1から4までのいずれかに記載の熱伝導性組成物。
- 請求項1から5までのいずれかに記載の熱伝導性組成物からなる、熱伝導性部材。
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