JP7334947B2 - 折り畳み式テント及び構造材 - Google Patents

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Description

本発明は、軽量で強度が高く、低廉に製造できる折り畳み式テント及び構造材に関する。
従来、運動会や祭り、災害時などに用いられるテントは、独立した、複数の、金属製のパイプ及び連結部材を組み立てて用いるものであり、設置作業及び撤収作業の工数が多く、設置作業及び撤収作業に時間がかかることや、保管時に構成部品がかさばるという問題があった。
これに対し、例えば特許文献1では、二重以上に重ねられたマジックハンド構造体(特許文献1における蛇腹式フレーム(F))を用いた構造体の技術が開示されている。これによれば、全ての構成部品が一体化しているため、複数の構成部品を組み立てる必要はなく、マジックハンド構造体を伸縮させることで設置作業及び撤収作業を行うことができる。つまり、短時間に且つ容易に設置作業及び撤収作業を行うことができ、保管時には、マジックハンド構造体を収縮させることでコンパクトにすることができる。
特開2008-308940号公報
しかしながら、特許文献1に開示された構造体は、その構造から重量が大きくなる傾向があり、容易に設置作業及び撤収作業を行うことを一目的にしているにも拘わらず、多くの人手が必要となったり、立ち上げに動力が必要になることがあった。当業者であれば材料の最適化を考え、高強度、低重量の材料として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の構造材の使用を考えるが、製造コストが高い点や、加工が難しい点が問題であった。また、テントは適切に使用していたとしても、例えば、運搬や設営時は構造材に傷が付くことは避けられないが、CFRP製の構造材は、傷が付くと、その傷に負荷が集中して脆性的に破損される可能性があり、安全性の問題があった。
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一は、強度、重量の観点に加え、製造コストや製造の難しさ、安全性の観点等を総合的に判断し、現実的な範囲でより好適な構造材、及び、この構造材を用いた折り畳み式テントを提供することにある。
本発明の第1の側面に係る折り畳み式テントは、共に、両端に連結部を備える棒状部材と、前記連結部を除く棒状部材の外表面に積層された炭素繊維からなる外層部材とからなる、第一構造材と第二構造材とが交差するよう配され、該交差した部分が回動可能に軸支されてなるパンタグラフ構造体を一方向に複数並べ、隣接するパンタグラフ構造体間において、前記第一構造材と前記第二構造材とを前記連結部を介して回動可能に連結してなるマジックハンド構造体を複数用いたフレーム部と、前記フレーム部を覆うように配されるシート状部材と、からなり、前記フレーム部が、両端が設置面に接地するアーチ状に形成された前記マジックハンド構造体を少なくとも2つ並列させ、前記複数のマジックハンド構造体間を前記パンタグラフ構造体又は前記マジックハンド構造体で架設する。
本発明の第2の側面に係る構造材は、第一構造材と第二構造材とが交差するよう配され、該交差した交差部において回動可能に軸支されてなるパンタグラフ構造体を構成する構造材において、前記第一構造材及び第二構造材は、共に、前記交差部両者を軸支するための軸穴有する棒状部材と、前記交差部の前記軸穴を設ける位置を除く棒状部材の外表面に積層された炭素繊維からなる外層部材とで構成する。
本発明によれば、強度、重量の観点に加え、製造コストや製造の難しさ、安全性の観点等を総合的に判断し、現実的な範囲でより好適な構造材、及び、この構造材を用いた折り畳み式テントを提供することができる。
具体的には、アルミ合金製のパイプのみからなる構造材に比べ、軽量で強度が高く、また、CFRP製の構造材に比べて製造コストが低く、加工が容易である。また、例えば、棒状部材として金属製のパイプを用いれば、仮に、使用中に外層部材が脆性的に破壊したとしても、安全に使用できる。
本実施の形態に係る折り畳み式テントの模式図である。 本実施の形態に係るマジックハンド構造体の模式図である。 本実施の形態に係るパンタグラフ構造体の模式図である。 本実施の形態に係るパンタグラフ構造体の模式図である。 本実施の形態に係る構造材の模式図である。 本実施の形態に係る構造材の模式図である。 本実施の形態に係る構造材の製造方法を説明するフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための折り畳み式テント及び構造材を例示するものであって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(折り畳み式テント1)
本発明の一実施の形態に係る折り畳み式テント1について図1~7に基づいて説明する。
折り畳み式テント1は、図1に示すように、マジックハンド構造体111、パンタグラフ構造体112b及び連結部材114aとで構成されるフレーム部11と、幕12(特許請求の範囲における「シート状部材」の一例に対応する。)とで構成される。フレーム部11は、マジックハンド構造体111及びパンタグラフ構造体112bの伸縮によって折り畳み式テント1を設置する際の態様(以下、「設置状態」と称す。)又は折り畳み式テント1をコンパクトにし保管する際の態様(以下、「保管状態」と称す。)へ変形することが可能である。すなわち、折り畳み式テント1は、マジックハンド構造体111及びパンタグラフ構造体112bの伸縮のみで設置又は撤収できるので、従来の独立した、複数の、金属製のパイプ及びジョイントを組み立てて用いるテントに比べ、設置作業及び撤収作業が容易に、短時間でできる。また、折り畳み式テント1を構成する部材は一体のまま保管状態となるため、構成部品がかさばる問題もない。以下で、各部材について説明する。
(マジックハンド構造体111)
マジックハンド構造体111は、フレーム部11を構成する部材であって、図2に示すように、8つのパンタグラフ構造体112aからなる。折り畳み式テント1では、6つのアーチ状のマジックハンド構造体111を備える。
具体的には、マジックハンド構造体111は、パンタグラフ構造体112aを一方向に複数並べ、このパンタグラフ構造体112aを構成する構造材113の端部の軸穴SH(特許請求の範囲における「連結部」の一例に対応する。)と、隣接するパンタグラフ構造体112aを構成する構造材113の端部の軸穴SHとを連結部材114aを介して回動可能に連結した部材である。この構成により、マジックハンド構造体111は、自由に伸縮可能であり、折り畳み式テント1の設置状態又は保管状態へ短時間に且つ容易に変形できる。
なお、マジックハンド構造体111の構成は前述のものに限定されず、例えば、パンタグラフ構造体112aの個数等は適宜変更してもよい。
(パンタグラフ構造体112a、112b)
パンタグラフ構造体112a、112bは、フレーム部11を構成する部材であって、図3、図4に示すように、2つの構造材113(特許請求の範囲における「第一構造材」及び「第二構造材」の一例に対応する。)を所望の位置で交差させ、この交差した部分に軸穴SH(以下、「交差部の軸穴SH」と称す。)を設け、連結部材114bを介して回動可能に軸支した部材である。また、パンタグラフ構造体112a、112bは、図3、図4に示すように、交差部の軸穴SHを通り伸縮方向と直交する軸(図3、4中、破線で示す。)に対して線対称な形状である。これにより、折り畳み式テント1は、図2に示すように、保管状態では、構造材113の端部(連結部材114a)が略揃った状態になり、コンパクトに保管することができる。
また、パンタグラフ構造体112aは、マジックハンド構造体111を構成する部材であり、図3に示すように、交差部の軸穴SHは構造材113の中心から外れた位置に設けられる。具体的には、交差部の軸穴SHから設置状態における折り畳み式テント1の外側(図3中、上側)が長くなるよう、交差部の軸穴SHを設ける。これにより、隣接するパンタグラフ構造体112aと角度を付けて連結することができ、アーチ状のマジックハンド構造体111を構成することができる。
なお、パンタグラフ構造体112aの構成は、前述のものに限定されない。パンタグラフ構造体112aは、交差部の軸穴SHの位置を変更することで、パンタグラフを所望の形状にすることができる。具体的に、マジックハンド構造体111は、交差部の軸穴SHを構造材113の中心に近づける程、曲率が小さい(直線的な)形状となり、交差部の軸穴SHを構造材113の中心から遠ざける程、曲率が大きい形状となる。また、軸穴SHの位置がそれぞれ異なるパンタグラフ構造体112aを連結することも可能である。
一方、パンタグラフ構造体112bは、隣接するマジックハンド構造体111間を架設するための部材であり、図4に示すように、交差部の軸穴SHは構造材113の中心に設けられる。これにより、隣接するマジックハンド構造体111間を平行に架設することができる。折り畳み式テント1では、図1に示すように、隣接するマジックハンド構造体111間を9つのパンタグラフ構造体112bで連結部材114aを介して回動可能に連結する。
なお、折り畳み式テント1において、隣接するマジックハンド構造体111間を架設する部材としては、パンタグラフ構造体112bに代えて、直線状のマジックハンド構造体を用いることもできる。この構成は、マジックハンド構造体111の間隔が広くなるので、単位面積あたりのマジックハンド構造体111の数が減少する。これにより、折り畳み式テント1の重量は軽くなる一方、強度は低下する。言い換えれば、同サイズの折り畳み式テント1において、隣接するマジックハンド構造体111間をパンタグラフ構造体112bで架設するか、マジックハンド構造体で架設するかによって、また、マジックハンド構造体の長さによって、折り畳み式テント1の重さと強度を調整することができる。この点において、折り畳み式テント1の重さと強度はトレードオフの関係にあるため、状況に応じて適宜変更する。
(構造材113)
図5に示すように、構造材113は、アルミ合金製の角パイプSP(特許請求の範囲における「棒状部材」の一例に対応する。)の両端部を除く外表面に矩形状の炭素繊維シートCS(特許請求の範囲における「外層部材」の一例に対応する。)を巻き付け、硬化させた部材であって、パンタグラフ構造体112a、112bを形成する際に交差する部分と両端部との計3箇所に軸穴SHが設けられる。つまり、構造材113は、炭素繊維シートCSが両端部の軸穴SHを設ける位置に積層されないよう構成したものである。
前述の構成により、折り畳み式テント1は、アルミ合金製のパイプのみからなる構造材を用いた場合に比べ、軽量化でき、且つ、同程度、あるいは、より高強度の折り畳み式テントを実現することが可能である。具体的には、例えば、1.5mm厚のアルミ合金製のパイプを用いた折り畳み式テントに対して、1.0mm厚のアルミ合金製の角パイプSPを用いた本発明に係る構造材を適用することで、全体として約30%の軽量化が可能となり、且つ、より高強度にできる。
また、炭素繊維シートCSは、高強度であるがゆえに加工が難しく、穴開け加工をした場合、経年劣化により穴から細かいクラックが入ることがあり、また、非常に高価であるといったことから、炭素繊維のみからなる構造材を折り畳み式テントに用いることは困難であった。これに対し、本発明に係る構造材は、角パイプSPと炭素繊維シートCSとを併用し、角パイプSPの両端部の軸穴SHを設ける位置に炭素繊維シートCSを積層しない態様なので、製造が簡単で(詳細は後述する。)、炭素繊維シートCSへの穴開け加工を要する箇所を減らし、且つ、炭素繊維シートCSの使用量も抑えることができる。また、アルミ合金製の角パイプSPと炭素繊維シートCSとを併用しているため、仮に、使用中に炭素繊維シートCS部分が脆性的に破壊したとしても、折り畳み式テント1が倒壊する危険性が少なく安全である。
なお、角パイプSPはアルミ合金製に限られず、所望の強度、材質に応じて適宜変更してよい。また、断面形状も四角形に限られず、例えば、円形や三角形であってもよい。また、炭素繊維シートCSも前述のものに限定されず、例えば、帯状の炭素繊維シートCSを螺旋状に巻き付ける態様であってもよい。さらにまた、構造材113の構成も前述のものに限定されず、例えば、図6に示すように、2枚の炭素繊維シートCSを用いて、炭素繊維シートCSが交差部の軸穴SHを設ける位置においても積層されないよう構成してもよい。この構成であれば、炭素繊維シートCSへの穴開け加工が不要となる一方、部材数や製造工程が増加するので、炭素繊維シートCSを1枚用いるか、2枚用いるかは状況に応じて適宜選択すればよい。
(構造材113の製造方法)
以下で、構造材113の製造方法について、図7に基づいて説明する。
まず、ステップST101で、角パイプSPに未硬化の炭素繊維シートCSを巻き付け、次に、ステップST102で、炭素繊維シートCSの外側にテープ状の剥離材PMを螺旋状に巻き付ける。この工程により、角パイプSPと炭素繊維シートCSとの間の気泡を除去することができる。
次に、ステップST103で、未硬化の炭素繊維シートCSを巻き付けた角パイプSPを150℃の工業用加熱炉に30分間入れて熱硬化させる。なお、熱処理の温度や時間は、炭素繊維シートCSの種類や厚みによって変わるため、前述の時間や温度に限定されない。
次いで、ステップST104で、炭素繊維シートCSの外側に貼り付いている剥離材PMを取り除く。
最後に、ステップST105で、パンタグラフ構造体112a、112bを形成する際に交差する部分と両端部との計3箇所に軸穴SHを開ける。
以上の通り、構造材113は、少ない工程で容易に製造可能である。
(連結部材114a、114b)
連結部材114a、114bはフレーム部11を構成する部材であって、軸穴SHにはめ合わせる軸を備え、連結部材114aは、隣接する構造材113の端部同士を回動可能に連結し、連結部材114bは、パンタグラフ構造体112a、112bを形成する際に交差する部分を回動可能に連結する部材である。
連結部材114a、114bの構成は特に限定されず、構造材113がマジックハンド構造体111又はパンタグラフ構造体112a、112bの態様を維持する強度を備えるものであればよい。また、折り畳み式テント1において、端部の軸穴SHを特許請求の範囲における「連結部」の一例として説明したが、連結部の構成はこれに限定されず、ひいては、連結部材114a、114bの構成も連結部の構成に合わせて適宜変更可能である。
なお、折り畳み式テント1は、図1に示すように、隣接するパンタグラフ構造体112a間の連結と、隣接するマジックハンド構造体111間の連結とに、連結部材114aを共用する態様であるが、この態様に限定されず、例えば、隣接するパンタグラフ構造体112a間の連結と、隣接するマジックハンド構造体111間の連結とには異なる連結部材を用いるようにしてもよい。
(幕12)
幕12は、防水性のシート状物からなり、図1に示すように、フレーム部11を覆うよう配され、フレーム部11を構成するマジックハンド構造体111及びパンタグラフ構造体112a、112bにボルト、ナットを用いて着脱自在に固定される。この構成により、幕12は、フレーム部11の展開・縮小と共に展開、縮小するため、折り畳み式テント1は容易に設置、撤収することが可能である。
以上説明したように、本発明に係る折り畳み式テント1は、角パイプSPと炭素繊維シートCSとを併用した構造材113を用いることで、従来品の問題点を解決したものである。
特に、テントの構造材としては、強度と重量の観点が重要視されるため、通常の創作能力であれば、単に炭素繊維のみからなる高強度、低重量に特化した構造材の発明に留まるところ、本発明は、強度と重量の観点に加え、製造コストや製造の難しさ、安全性等の商業的な観点を含め、現実的な範囲で調和を取った画期的な発明である。また本発明に係る構造材は、折り畳み式テントに限らず、あらゆる構造体への適用が可能である。
本発明に係る折り畳み式テント及び構造材は、被災地などで、長時間屋外に設置される仮設テントの用途に使用できる。
1…折り畳み式テント
11…フレーム部
111…マジックハンド構造体
112a、112b…パンタグラフ構造体
113…構造材
114a、114b…連結部材
12…幕
SP…角パイプ
CS…炭素繊維シート
SH…軸穴
PM…剥離材

Claims (2)

  1. 共に、両端に連結部を備える棒状部材と、前記連結部を除く棒状部材の外表面に積層された炭素繊維からなる外層部材とからなる、第一構造材と第二構造材とが交差するよう配され、該交差した部分が回動可能に軸支されてなるパンタグラフ構造体を一方向に複数並べ、隣接するパンタグラフ構造体間において、前記第一構造材と前記第二構造材とを前記連結部を介して回動可能に連結してなるマジックハンド構造体を複数用いたフレーム部と、
    前記フレーム部を覆うように配されるシート状部材と、
    からなり、
    前記フレーム部が、両端が設置面に接地するアーチ状に形成された前記マジックハンド構造体を少なくとも2つ並列させ、前記複数のマジックハンド構造体間を前記パンタグラフ構造体又は前記マジックハンド構造体で架設してなる折り畳み式テント。
  2. 第一構造材と第二構造材とが交差するよう配され、該交差した交差部において回動可能に軸支されてなるパンタグラフ構造体を構成する構造材において、
    前記第一構造材及び第二構造材は、共に、
    前記交差部両者を軸支するための軸穴有する棒状部材と、
    前記交差部の前記軸穴を設ける位置を除く棒状部材の外表面に積層された炭素繊維からなる外層部材と、
    を備えることを特徴とする構造材。
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