以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、リチウムイオン二次電池用構造体を示す分解斜視図である。図2は、リチウムイオン二次電池用構造体の内部構造を表す一部を切り欠いた側面図である。図3は、電極群の概略構成を示す図である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10は、リチウムイオン二次電池に用いられる構造体である。具体的には、図1及び図2に示すように、リチウムイオン二次電池用構造体10は、正極板21及び負極板22を備える電極群20と、電極群20の正極板21又は負極板22にそれぞれ接続される一対の集電部材30と、これら電極群20及び集電部材30で構成される電極接続体が収容される外装部材である電池ケース40及び蓋部材50と、を備える。
電極群20は、図3に示すように、正極板21と負極板22とがセパレータ23を挟んで交互に多数積層されている。
正極板21及び負極板22のそれぞれは、金属箔に電極活物質層が形成されたものである。正極板21に用いられる金属箔としては、例えば、アルミ箔が挙げられる。また、負極板22に用いられる金属箔としては、例えば、銅箔が挙げられる。
電極群20の長手方向の一端部には、複数の正極板21の端部であって、電極活物質層が形成されていない部分同士が束ねられた正極結束部24が形成されている。電極群20の長手方向他端部には、複数の負極板22の端部であって電極活物質層が形成されていない部分同士が束ねられた負極結束部25が形成されている。本実施形態では、電極群20に正極結束部24及び負極結束部25がそれぞれ2つ設けられている。この正極結束部24及び負極結束部25の数は特に限定されず、例えば、それぞれ1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。そして、電極群20のこれら正極結束部24及び負極結束部25に集電部材30がそれぞれ接続されている。
集電部材30は、正極板21に電気的に接続される第1の集電板30Aと、負極板22に電気的に接続される第2の集電板30Bとを含む。第1の集電板30Aは、主材料が例えばアルミニウムからなる金属板で構成され、その一端側が電極群20の各正極結束部24に接続されている。第2の集電板30Bは、主材料が例えば銅からなる金属板で構成され、その一端側が電極群20の各負極結束部25に接続されている。なお、集電板30A,30Bはそれぞれ接続される電極板の材料と同様な主材料とすることを例としているが、電極群と接続可能で導電性を維持できるものであれば他の主材料からなる金属板であってもよい。
これらの集電部材30は、蓋部材50の内側の面に当接する上面板31と、上面板31の端部から下側に向けて延びる長尺接合板32とで構成される。長尺接合板32の両縁部には、電極群20の長手方向外側に向かって屈曲した接続板片33が設けられている。本実施形態では、接続板片33は、長尺接合板32の長手方向(図1の上下方向)に亘って連続的に設けられている。そして各集電部材30は、この接続板片33で電極群20の2列の正極結束部24又は負極結束部25にそれぞれ接続されている。集電部材30の接続板片33と、電極群20の正極結束部24及び負極結束部25との接続方法は、特に限定されないが、例えば、超音波溶着等により良好に接続することができる。
また集電部材30の上面板31には、蓋部材50に設けられた貫通孔51から外部に突出する端子部60が設けられている。すなわち第1の集電板30Aの上面板31には、正極板21に繋がる正極端子部60Aが設けられ、第2の集電板30Bの上面板31には、負極板22に繋がる負極端子部60Bが設けられている。
このような集電部材30と電極群20とは、上述したように集電部材30の接続板片33と電極群20の正極結束部24及び負極結束部25とが接続された状態で、電池ケース40内に収容されている。なお、本実施形態では、電極群20と集電部材30とを電極接続体と称する。
電池ケース40は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。もちろん、電池ケース40の材料は金属材料に限定されず、樹脂材料等であってもよい。このような電池ケース40は、内部に電極群20及び集電部材30が収容される収容室41が設けられた中空の箱形状を有し、上部が開口して設けられている。
蓋部材50は、電池ケース40の収容室41の上部開口を封止するものであり、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。もちろん、蓋部材50の材料は金属材料に限定されず、樹脂材料等であってもよい。
蓋部材50の外周部には、端部を上方に折り曲げた接合部52が設けられている。この接合部52を電池ケース40の上端とレーザー溶接することによって蓋部材50が電池ケース40に固定されている。なお、電池ケース40と蓋部材50との固定方法は特にこれに限定されず、収容室41内が密閉された状態を保てるのであれば、接着剤を用いた接着であってもよく、ネジやボルト、クリップ等を用いて固定するようにしてもよい。なお、電池ケース40と蓋部材50とを固定した後で、容易に両者の固定が解除できない固定方法が好ましく、溶接等が好適に用いられる。
蓋部材50には、各集電部材30の正極端子部60A及び負極端子部60Bがそれぞれ挿入される2つの貫通孔51が形成されている。この貫通孔51から正極端子部60A及び負極端子部60Bが蓋部材50の外側まで突出した状態で、集電部材30が蓋部材50に固定されている。
また蓋部材50と集電部材30とは、図2に示すように、絶縁された状態で固定されている。例えば、本実施形態では、蓋部材50と集電部材30とは、樹脂材料からなる接着絶縁部材70によって接合されると共に絶縁されている。接着絶縁部材70は、例えば、蓋部材50と集電部材30とを配した金型内で射出成形することによって形成される。すなわち、蓋部材50と集電部材30とは、接着絶縁部材70によって互いに固定されて一体化している。
さらに、蓋部材50には、電池ケース40の収容室41内に電解液を注入するための注液口53が設けられている。注液口53は、蓋部材50を貫通して設けられた開口であり、収容室41と外部とを連通するよう収容室41を開口するものである。このような注液口53は、封止部材80によって封止されている。
封止部材80は、注液口53を封止して、収容室41内を密閉するものである。本実施形態では、収容室41内に電解液を注入することなく、収容室41内がドライ状態(低湿度状態)で注液口53を封止部材80によって封止して収容室41を密閉したものをリチウムイオン二次電池用構造体10と称する。また、封止部材80を取り外して、または、封止部材80を介して収容室41内に注液口53から電解液を注入し、注液口53を封止部材80、または、封止部材80とは異なる封止部材によって封止することで収容室41を密閉したものをリチウムイオン二次電池と称する。
ここで、収容室41内が低湿度状態であるとは、収容室41内の電極群20や後に収容室41内に注入される電解液が、電池としての機能を損なわせるような水分を含まない程度の水分量の環境、例えば、露点温度が-20℃以下の状態の高い乾燥状態である。このように、収容室41内が低湿度状態で密閉されることで、収容室41内の気体に含まれる水分を電極群20が吸収するのを抑制して、最終的に電池として電池性能が低下するのを抑制することができる。また、収容室41内が低湿度状態で密閉されることで、後に収容室41内に電解液を注入してリチウムイオン二次電池を製造した際に、電解液に収容室41内の水分が含まれるのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池の性能低下を抑制することができる。具体的には、リチウムイオン二次電池は、一般的に非水電解液が用いられる。水分が非水電解液に取り込まれてしまうことでリチウムイオン二次電池として所望の性能を得ることができない。
また、収容室41内は、低湿度状態であれば収容される気体は特に限定されず、例えば、空気であってもよく、また窒素や希ガス等の不活性ガスが充填されていてもよい。例えば、収容室41内に不活性ガスを充填することで、収容室41内への水分の混入がより確実に抑制でき、電池性能が低下するのを抑制することができる。
また、収容室41内は、大気圧(101325Pa)よりも低い圧力(負圧)としてもよい。このように収容室41内を大気圧よりも低い圧力(負圧)とすることで、航空機などを用いた低圧環境での輸送時に、気圧の差によって外装部材が変形したり、注液口43を封止する封止部材80が外れるのを抑制することができる。
つまり、収容室41内は、真空引きした状態で封止されていてもよい。すなわち、収容室41内が真空状態であってもよい。なお、真空状態とは、例えば、101325Paよりも低く、好ましくは、10132.5Pa以下の圧力のことを言う。収容室41内が真空引きされているので、空輸時において気圧差により発生し得る課題の発生を抑えることができる。
このようなリチウムイオン二次電池用構造体10では、収容室41内に電解液が注入されておらず、収容室41内が低湿度状態で注液口53が封止されて収容室41内が密閉されているため、空輸等において電解液に起因する輸送制限されることなく、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができ、安全に且つ短時間で輸送を行うことができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10の輸送後は、リチウムイオン二次電池用構造体10の注液口53から電解液を注入し、注液口53を封止すればリチウムイオン二次電池を容易に製造することができる。
また、このようなリチウムイオン二次電池用構造体10は、輸送可能に梱包された梱包体となって輸送される。ここで梱包体の一例を図4に示す。図4に示すように、梱包体100は、複数のリチウムイオン二次電池用構造体10と、複数のリチウムイオン二次電池用構造体10が内部に収容された梱包ケース101と、梱包ケース101の内部においてリチウムイオン二次電池用構造体10の周囲に設けられた緩衝材102と、を具備する。
梱包ケース101は、段ボール、樹脂、金属等で形成された中空箱形形状を有するものである。このような梱包ケース101の内部に複数のリチウムイオン二次電池用構造体10が周囲を緩衝材102に包まれた状態で配置されている。
緩衝材102は、発泡スチロールやスポンジ等の多孔質材料、紙、空気を内包する袋(エアー緩衝材)などを用いることができる。緩衝材を設けることで、リチウムイオン二次電池用構造体10が搬送時に互いに当接し合うことによる破壊を抑制することができる。
このようにリチウムイオン二次電池用構造体10は、梱包体100の状態で複数が一括して搬送される。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10の製造方法について図5を参照して説明する。なお、図5は、リチウムイオン二次電池用構造体の製造方法を説明するフローチャートである。
図5に示すステップS1の混練工程によって、正極及び負極となる電極を形成するための複数の材料を混ぜ合わせて(混練して)、例えば、アルミニウム(正極)や銅(負極)となる金属箔シート上に塗布すべき電極スラリーを形成する。電極スラリーは正極用と負極用とがそれぞれ作成されるものの、混練工程では、正極用スラリー形成のための混練装置と負極用スラリー形成のための混練装置とが準備され、これら2種類のスラリーの形成が並行して行われる。もちろん、2種類のスラリーを順番に形成するようにしてもよい。
次いでステップS2の塗布工程において、ステップS1の混練工程で形成した正極用スラリーと負極用スラリーとは、それぞれ金属泊シート上に塗布される。正極用スラリーは、正極電極板となるアルミニウム泊シート上に塗布され、負極用スラリーは、負極電極板となる銅箔シート上に塗布される。一般的には、金属箔シートは長尺状で、この金属箔シートの表面あるいは表裏面の両面に所望の電極スラリーが塗布される。
次いで、ステップS3の乾燥工程において、ステップS2の塗布工程において金属箔シートに塗布された電極スラリーを乾燥し、乾燥した電極スラリーからなる電極活物質層が形成される。
次いで、ステップS4のプレス工程において、電極活物質層と金属箔シートとを押圧(プレス)処理する。このプレス工程によって電極活物質層と金属箔シートとの密着力を高めることができる。
次いで、ステップS5の切断工程において、プレス工程によって押圧処理した電極活物質層と金属箔シートとを所望の大きさに切断することで金属箔シートの上に電極活物質層が形成された電極板を製造する。
なお、ステップS1の混練工程と同様に、ステップS2の塗布工程からステップS5の切断工程は、正極と負極とでそれぞれ並行して行うことができる。この結果、切断工程を経た時点で、複数の正極板21と複数の負極板22とを用意することができる。
次いでステップS6の積層工程では、セパレータ23を間に介在させながら正極板21と負極板22とを交互に複数積層して束ねる。あるいは、それぞれ所定の長さに切断された長尺状の正極板21と負極板22とを、長尺状のセパレータ23を間に介在させた状態で重ね合わせて券回する。この結果、正極板21、セパレータ23、負極板22を重ね合わせて構成された電極群20が製造される。
次いで、ステップS7の電極組立工程で、積層工程で製造された電極群20に集電部材30の取り付けを行うことで電極群20と集電部材30とが一体化された電極接続体が製造される。なお、本実施形態では、上述したように集電部材30と蓋部材50とは接着絶縁部材70によって一体化されているため、電極群20には蓋部材50と一体化された集電部材30が取り付けられる。つまり、蓋部材50に電極接続体が取り付けられる。
次いで、ステップS8の電極接続体収容工程で、蓋部材50に取り付けられた電極接続体を電池ケース40の収容室41内に収容し、蓋部材50と電池ケース40とを接合する。
次いで、ステップS9の予備封止工程で、蓋部材50の注液口53を封止部材80によって封止して、収容室41内を密閉する。封止部材80による封止は、本ステップ終了後に大気中にリチウムイオン二次電池用構造体10を配置しても水分が収容室41内に入らず、かつ、リチウムイオン二次電池用構造体10を空輸等の輸送時に封止部材80が取れてしまうことがないようにする。例えば、封止部材80として、電池ケース40や蓋部材50より融点が低い金属材を溶融して注入口を塞ぐようにしたり、空輸時の気圧の影響で剥がれない粘着力を有するような防湿性の高いアルミ製のテープで封止するようにしてもよい。また、注液口53を封止するのでなく、リチウムイオン二次電池用構造体10全体をラミネートフィルムのような封止体で包んでこのラミネートフィルム内を真空引きして、リチウムイオン二次電池用構造体10全体を密閉することで注液口53を封止してしまってもよい(注液口を封止でき、輸送時に破れるような心配がなければ、ラミネートフィルムの代わりに、単層のビニールフィルムのような絶縁性フィルムとしてもよい)。このラミネートフィルムによる封止も低湿度環境下で行うようにすることで、電池ケース40内は低湿度状態を保つことができる。本実施形態では、ステップS8の電極接続体収容工程とステップS9の予備封止工程とを低湿度環境下で行うことで、収容室41内を低湿度状態で密閉することができる。ちなみに、低湿度環境下で電池ケース40と蓋部材50とを密閉する方法としては、例えば、低湿度状態に湿度調整されたドライルーム内に電池ケース40と蓋部材50とを密閉する密閉装置を配置し、ドライルーム内の密閉装置で電池ケース40と蓋部材50との接合と注液口53の封止とを行うようにすればよい。また、別の方法としては、密閉装置がドライルームの外に配置されていたとしても、密閉装置内の密閉処理を行う空間を低湿度状態に保ちながら電池ケース40と蓋部材50との接合と注液口53の封止とを行うようにすればよい。この時、ステップS8の電極接続体収容工程からステップS9の予備封止工程まで低湿度状態が保たれるよう注意する。例えば、ステップS8の電極接続体収容工程とステップS9の予備封止工程とが同じ低湿度環境下(同じドライルーム内)で連続して行われるようにする。ステップS8の電極接続体収容工程とステップS9の予備封止工程の少なくとも一方が低湿度環境でない(ドライルーム外)の装置(装置内は低湿度状態として必要な処理を行う)を用いて行われる場合は、この2つの工程間での被処理物の搬送時においても被処理物の周辺環境が低湿度状態であることを維持しておくようにする。ちなみに低湿度環境下とは、例えば、露点温度が-20℃以下の状態の高い乾燥状態のことである。低湿度環境における気体の種類は限定されず、空気であってもよく、また窒素や希ガス等の不活性ガスであってもよい。
なお、本実施形態では、電極接続体収容工程と予備封止工程とを低湿度環境下で行うようにしたが、少なくとも図5のステップS3の乾燥工程を経た後、望ましくは、図5に示すリチウムイオン二次電池用構造体10の製造工程の全てを低湿度環境下で行うようにし、さらに、低湿度環境下で行う工程は同じドライルーム内で行うようにするのがよい。また、収容室41内に不活性ガスを充填する場合、収容室41内に窒素等の不活性ガスを充填する方法は上述した封止の方法に応じて最適な方法で行えばよい。例えば、電池ケース40に蓋部材50を接合する段階から低湿度環境下でかつ不活性ガス雰囲気中で行いうようにすればいい。その後に予備封止工程が必要な場合(蓋部材50に注液口53が形成されている場合)はこの予備封止工程までは低湿度環境下でかつ不活性ガス雰囲気中で行うようにすればいい。なお、その後に予備封止工程が必要な場合(蓋部材50に注液口53が形成されている場合)は、電池ケース40に蓋部材50を接合する段階では不活性ガス雰囲気でなくともよく、予備封止の際、注液口53自体を予備封止する場合には、注液口53から強制的に不活性ガスを電池ケース40の収容室41内に導入するようにすればいい。この場合、収容室41内の排気用の口を注液口53とは別に設けておく必要がある(この排気用の口も注液口53同様に予備封止が必要)。また、リチウムイオン二次電池用構造体10自体を封止体で封止する場合には、封止体で完全に封止する前に、封止体におけるリチウムイオン二次電池用構造体10の収容された空間内に強制的に不活性ガスを導入するようにすればいい。
また、このようなリチウムイオン二次電池用構造体10を用いたリチウムイオン二次電池の製造方法について図6を参照して説明する。なお、図6は、リチウムイオン二次電池の製造方法を説明する図である。
図6に示すように、工場Xにおいて上述したステップS1からステップS9によってリチウムイオン二次電池用構造体10を製造する。上述のようにリチウムイオン二次電池用構造体10は、収容室41内に電解液Tが未注入であって、収容室41内が低湿度状態で電解液Tを注入する注液口53が封止されたものである。
工場Xで製造したリチウムイオン二次電池用構造体10は、工場Xから離れた場所にある工場Yに輸送される。例えば、工場Xが青森県にあり工場Yが広島県にある場合や、工場Xが北海道にあり、工場Yが沖縄にある場合など、工場X及び工場Yの両方が国内にある場合や、工場Xが日本国内、工場Yが中国やアメリカ合衆国などの国外にある場合などが挙げられる。本実施形態では、リチウムイオン二次電池用構造体10を製造する工場Xが日本国内にある場合として説明しているが、もちろん、工場Xが国外にあり、工場Yが日本国内の場合でも適用できるものである。
工場Xと工場Yとは、車、列車、船舶、飛行機等の輸送手段を用いて輸送する必要がある距離だけ離れた場所に位置する。工場Xで製造されたリチウムイオン二次電池用構造体10は、電解液Tが未注入であることから、電解液Tに起因する輸送制限がされることがないため、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができる。
なお、リチウムイオン二次電池用構造体10の輸送は、上述した梱包体100の状態で複数が一括して行われる。
工場Yへ輸送されたリチウムイオン二次電池用構造体10は、工場Yで収容室41内に電解液Tが注入されることでリチウムイオン二次電池が製造される。
ここで、リチウムイオン二次電池用構造体10を用いたリチウムイオン二次電池の製造方法について図7を参照して説明する。なお、図7は、リチウムイオン二次電池の製造方法を説明するフローチャートである。
まず、ステップS10の注液口の開口工程で、リチウムイオン二次電池用構造体10の注液口53を開封する。本実施形態では、注液口53を封止している封止部材80を除去することで注液口53を開封する。この除去の方法としては、例えば、金属材を溶融して封止してあった場合は、その金属材を加熱して溶かしながら、溶けた金属材が収容室41内に入り込まないよう吸引除去する。また、アルミ製のテープで封止していた場合は、このテープの粘着力を弱めるよう加熱等してテープを除去する。また、ラミネートフィルムのような封止体でリチウムイオン二次電池用構造体10全体を密閉して封止していた場合は、封止体を開封する。これらの工程は低湿度環境下で行うようにすることで、開口後に収容室41内に水分が取り込まれることはない。この開封工程においても、前述するような収容室41内に不活性ガスを充填した場合は、不活性ガス雰囲気中で行うようにし、以降の電解液注液工程、再封止工程までは不活性雰囲気中で行うようにする。さらに、不活性ガスを導入する際に排出口を設けた蓋部材である場合、この排出口の再開封は特に必要ではないが、脱気など開封が必要となった場合は開封するようにすればいい。
次に、ステップS11の注液工程で、リチウムイオン二次電池用構造体10の注液口53から収容室41内に電解液Tを注入する。この注液工程も低湿度環境下で行うようにする。
ここで、工場Yで用いられる電解液Tは、工場Xから工場Yへリチウムイオン二次電池用構造体10とは別に輸送するものとしている。工場Xから注入すべき電解液を送れば、本来注入すべき電解液とは異なる組成の電解液を注入してしまうことを低減できるが、このような誤りをしないように注意すれば、もちろん、工場Yで用いられる電解液Tの入手は、特にこれに限定されない。例えば、工場Yの近くの電解液メーカーから直接、リチウムイオン二次電池用構造体10に注入すべき電解液Tと同じものを調達すれば、電解液Tの輸送にかかわる制限もなく必要な電解液Tを工場Yが準備できるので好ましい。特に、工場Xと工場Yとが異なる国にある場合には、工場Yのある国の国内で必要な電解液Tを調達するのが好適である。また、工場Xと工場Yとが異なる会社である場合には、リチウムイオン二次電池用構造体10を購入した工場Yを所有する会社が、リチウムイオン二次電池用構造体10に注入すべき電解液Tを自社のルートで安価に調達することができる可能性もあるため好適である。
次いで、図示しない化成充電が行われる。この時は注液口53はまだ封止していないので、化成充電で発生したガスは注液口53から収容室41外へ排出される。ステップS12の本封止工程で、注液口53が封止されて収容室41が密閉されることでリチウムイオン二次電池が製造される。この本封止工程も低湿度環境下で行うものとする。注液口53の封止は、例えば、金属材を溶融して封止する。この時、使用する金属材は仮封止工程で用いた金属材と同じ材質ものでもいいし、注液口53が形成される蓋部材50の材料との融着力の強い金属材を用いるようにしてもよい。
その後は、ステップS13の充放電検査工程において、充放電検査等の検査を経て、所定の基準を満たすものがリチウムイオン二次電池として出荷される。
このようなリチウムイオン二次電池の製造工程において、上述したように、ステップS10~ステップS12までの工程、すなわち、注液口53の開口工程と注液工程と本封止工程とは、低湿度環境下で行われる。ちなみに低湿度環境下とは、例えば、露点温度が-40℃以下の状態の高い乾燥状態のことである。低湿度環境における気体の種類は限定されず、空気であってもよく、また窒素や希ガス等の不活性ガスであってもよい。
このように低湿度環境下で注液口53の開口工程と注液工程と本封止工程とを行うことで、収容室41内が低湿度状態で密閉されるため、収容室41内に水分が取り込まれるのを抑制することができ、電解液に水分が含まれることが抑えられるので、リチウムイオン二次電池となった場合にも不具合を抑制して所望の電池性能を得ることができる。
そして、上述のように電解液Tが注入されておらず収容室41が低湿度状態のリチウムイオン二次電池用構造体10を工場Xから工場Yに輸送することで、空輸等において輸送量が制限されることなく、安全に輸送することができる。したがって、電解液Tを注入したリチウムイオン二次電池を工場Xから工場Yに輸送する場合に比べて、空輸などを用いて少ない輸送日数で安全に輸送することができる。
以上説明したように本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10では、電極接続体である電極群20及び集電部材30と、電極群20及び集電部材30を収容した収容室41を有する外装部材である電池ケース40及び蓋部材50と、を具備し、収容室41内には電解液Tが注入されておらず、当該収容室41内が低湿度状態で密閉されている。
このように電解液Tが注入されていない収容室41が低湿度状態で密閉されることで、空輸等において電解液Tに起因する輸送量が制限されることなく、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができ、安全に且つ短時間で輸送を行うことができる。
また、リチウムイオン二次電池用構造体10の輸送後は、リチウムイオン二次電池用構造体10の注液口53から電解液Tを注入し、注液口53を封止するだけでリチウムイオン二次電池を容易に製造することができる。
また、収容室41内が低湿度状態で密閉されることで、収容室41内の気体に含まれる水分が電極接続体を構成する電極群20に吸収されることを抑制することができ、リチウムイオン二次電池となった場合に不具合を抑制して所望の電池性能を得ることができる。また、収容室41内が低湿度状態で密閉されることで、収容室41内に電解液Tを注入してリチウムイオン二次電池を製造した際に、電解液Tが収容室41内で水分を含んでしまうことを抑制することができ、リチウムイオン二次電池の性能低下を抑制することができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10では、外装部材である電池ケース40及び蓋部材50は、収容室41内に電解液Tを注入可能な注液口53を有し、注液口53が封止材である封止部材80で封止されていることが好ましい。
これによれば、封止材を除去して注液口53を開封するだけで収容室41内に容易に電解液Tを注入することが可能となる。特に、外装部材である電池ケース40及び蓋部材50としては注液口53を有するものとしているため、1つの場所で電解液Tまで注入するリチウムイオン二次電池のものと同じ金型で作ることができるので、コストが高くなることを抑えてリチウムイオン二次電池用構造体10を提供することができる。
なお、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10では、外装部材を構成する蓋部材50に注液口53を設け、封止部材80によって注液口53を封止するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、図8に示すように、蓋部材50に注液口53を設けなくてもよい。すなわち、リチウムイオン二次電池用構造体10を製造する際に、注液口53の仮封止を行うことなく、電極接続体収容工程を低湿度環境下で行うことで収容室41内を低湿度状態で密閉することができる。
そして、リチウムイオン二次電池を製造する際には、リチウムイオン二次電池用構造体10の外装部材に開口部(注液口53)を形成し、この開口部を注液口53として電解液Tを注入すればよい。ちなみに、注液口53の形成は、低湿度環境下で行うようにすれば、収容室41内の電極接続体及び注入する電解液Tが収容室41内の水分を含んでしまうのを抑制することができる。なお、注液口53を外装部材に新たに形成する場合には、金属くず等が収容室41内に入り込まないようにする必要がある。このため、本実施形態では、図8に示すように、リチウムイオン二次電池用構造体10の外装部材を構成する蓋部材50に他の領域よりも厚さが薄く、電解液Tを注入するための注液口53(図2参照)が形成される注液口形成領域54を設けておく。この注液口形成領域54に注液口53を機械的あるいは熱溶融等によって形成することで、注液口53を形成する際の金属くずの発生を低減して、収容室41内に金属くずが入り込むのを抑制することができる。なお、この注液口形成領域54が外装部材である電池ケース40及び蓋部材50の外観からわかるように、注液口形成領域54は図8に示されるように凹状部分にしておき、この凹状部分に開口を形成することで、注液口53を必要な部分に確実に形成することができる。もちろん、注液口形成領域54は図8に示す凹状部分に限定されず、例えば、凸部分の頂面の厚さを蓋部材50に他の領域よりも薄くした凸状である凸状部分としてもよい。このように凸状部分としても、注液口53を形成する注液口形成領域54を外装部材である電池ケース40及び蓋部材50の外観から容易に認識することができる。
このように図8に示すリチウムイオン二次電池用構造体10では、外装部材である電池ケース40及び蓋部材50には、他の領域よりも厚さが薄く、電解液Tを注入するための注液口53が形成される注液口形成領域54が設けられたものでもよい。
これによれば、注液口53を形成する際の金属くずの発生を低減して、収容室41内に金属くずが入り込むのを抑制することができる。
また、注液口形成領域54は電池ケース40及び蓋部材50に設けられた凸状あるいは凹状部分であることが好ましい。これによれば、注液口形成領域54を凸状あるいは凹状部分によって外装部材の外観から注液口53とすべき領域を容易に認識することができる。
また、本実施形態の梱包体100では、リチウムイオン二次電池用構造体10が、複数搬送可能に梱包されている。
このように梱包体100とすることで、複数のリチウムイオン二次電池用構造体10を効率的に搬送することができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10の製造方法は、電極接続体である電極群20及び集電部材30と、電極群20及び集電部材30を収容可能な収容室41が設けられた外装部材である電池ケース40及び蓋部材50と、を具備するリチウムイオン二次電池用構造体10の製造方法であって、収容室41に電解液Tを注入することなく、収容室41内に電極群20及び集電部材30を収容して低湿度環境下で収容室41を密閉する工程を有する。
このように電解液Tを注入することなく、低湿度環境下で収容室41を密閉することで、収容室41内を低湿度状態に維持することができる。したがって、リチウムイオン二次電池用構造体10を空輸する際に、電解液Tに起因する輸送量が制限されることなく、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができ、安全に且つ短時間で輸送を行うことができる。
また、収容室41内を低湿度状態で密閉することで、収容室41内に水分が含まれるのを抑制することができ、この後に電解液を注入してリチウムイオン二次電池となった場合にも不具合の発生を抑制して所望の電池性能を得ることができる。また、収容室41内を低湿度状態で密閉することで、収容室41内に電解液Tを注入してリチウムイオン二次電池を製造した際に、電解液Tに水分が含まれるのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池の性能低下を抑制することができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10の製造方法では、外装部材である電池ケース40及び蓋部材50は、電解液Tを注入可能な注液口43を有し、収容室41を密閉する工程は、収容室41に電極接続対である電極群20及び集電部材30を収容する工程と、収容室41に電解液Tを注入することなく注液口53を封止して密閉する工程と、を具備し、注液口53を封止する工程は、低湿度環境下で行うことが好ましい。
これによれば、注液口53を封止する際に収容室41内を低湿度状態とすることができる。また、注液口53を封止するだけで容易に収容室41の低湿度状態を維持することが可能である。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10の製造方法では、収容室41に電極接続体である電極群20及び集電部材30を収容する工程は、低湿度環境下で行うことが好ましい。このように電極群20及び集電部材30を収容する工程も低湿度環境下で行うことで、電極群20が水分を吸収するのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池となった場合に不具合を抑制して所望の電池性能を得ることができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法は、電極接続体である電極群20及び集電部材30と、電極群20及び集電部材30を収容した収容室41を有する外装部材である電池ケース40及び蓋部材50と、を具備し、収容室41内に電解液Tが注入されておらず、当該収容室41内が低湿度状態で密閉されたリチウムイオン二次電池用構造体10に対して、低湿度環境下で収容室41内を開口して当該収容室41内に電解液Tを注入し、収容室41を密閉する工程を有する。
このように、低湿度環境下で収容室41を開口して収容室41内に電解液Tを注入して密閉することで、電解液Tに水分が含まれるのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池の不具合を抑制して所望の電池性能を得ることができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法では、外装部材である電池ケース40及び蓋部材50は、予め封止された、電解液Tを注入可能な注液口53を有し、低湿度環境下での収容室41の開口は、注液口53を開封し、収容室41内への電解液Tの注入は、注液口53から行い、収容室41の密閉は、注液口53の封止であることが好ましい。これによれば、注液口53を開封するという容易な工程によって収容室41を開口することができると共に、注液口53から電解液Tを容易に注入することができる。また、注液口53を封止するだけで、収容室41を容易に密閉することができる。特に、注液口53を有する外装部材である電池ケース40及び蓋部材50を従来のものと同様に用いることができるので、外装部材である電池ケース40及び蓋部材50を形成するための金型を注液口53があるものとないものとの2つを用意する必要がなく、コスト増となることを抑制することができる。
また、図8に示すリチウムイオン二次電池用構造体10を用いたリチウムイオン二次電池の製造方法では、低湿度環境下での収容室41の開口は、外装部材である電池ケース40及び蓋部材50に電解液Tを注入可能な開口部である注液口53を形成し、収容室41への電解液Tの注入は、開口部である注液口53から行い、収容室41の密閉は、開口部である注液口53の封止である。このように、注液口53を新たに形成することによっても収容室41内に電解液Tを注入することが可能となる。また、この場合、注液口53となる領域を他の部分より厚さを薄くした注液口形成領域54を有する外装部材である電池ケース40及び蓋部材50を用いるのがよい。特に、外装部材である電池ケース40及び蓋部材50の外観から注液口53とすべき領域がわかるように、注液口形成領域54は凸状あるいは凹状部分であることが望ましい。
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係るリチウムイオン二次電池用構造体の平面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aは、外装部材であるラミネートフィルム110で電極群20を取り囲んで封止してなる電池用構造体であり、ラミネートフィルム110の収容室111内に電極群20を封入したものである。ラミネートフィルム110は、合成樹脂フィルムからなり、その表裏面は絶縁材からなっている。ラミネートフィルム110に覆われた電極群20に接続された一対のタブリード120の一部が開口部から突出して設けられている。タブリード120は、一方(120Aとする)が正極用タブリード、他方(120Bとする)が負極用タブリードである。なお、図9に示す2つのタブリード120は、収容室111内で電極群20のそれぞれの端部にある正極側の集電体、負極側の集電体と接続されている。
また、ラミネートフィルム110の外周は、電解液Tを収容室111内に注入するための注液口112以外の部分を封止する第1封止領域113と、第1封止領域113の外側にラミネートフィルム110の外周の全周に亘って封止する第2封止領域114と、が設けられている。
また、ラミネートフィルム110の収容室111内には、電解液Tが注入されておらず、収容室111の内部は低湿度状態で密閉されている。
ここで、収容室111内が低湿度状態であるとは、例えば、露点温度が-20℃以下の状態の高い乾燥状態のことである。このように、収容室111内が低湿度状態で密閉されることで、収容室111内の気体に含まれる水分を電極群20が吸収するのを抑制することができ、最終的にリチウムイオン二次電池となった場合に不具合が生ずることを抑制して所望の電池性能を得ることができる。また、収容室111内が低湿度状態で密閉されることで、後に収容室111内に電解液Tを注入してリチウムイオン二次電池を製造した際に、電解液Tに収容室111内の水分が含まれるのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池の性能低下を抑制することができる。
また、収容室111内は、低湿度状態であれば収容される気体は特に限定されず、例えば、空気であってもよく、また窒素や希ガス等の不活性ガスが充填されていてもよい。例えば、収容室111内に不活性ガスを充填することで、収容室111内への水分の混入がより確実に抑制でき、電池性能が低下するのを抑制することができる。
また、収容室111内は、大気圧(101325Pa)よりも低い圧力(負圧)としてもよい。このように収容室41内を大気圧よりも低い圧力(負圧)とすることで、航空機などを用いた低圧環境での輸送時に、気圧の差によってラミネートフィルム110が破損するなどの不具合を抑制することができる。
つまり、収容室111内は、真空引きした状態で封止されていてもよい。すなわち、収容室111内が真空状態であってもよい。なお、真空状態とは、例えば、101325Paよりも低く、好ましくは、10132.5Pa以下の圧力のことを言う。収容室111内が真空引きされているので、空輸時において気圧差により発生し得る課題の発生を抑えることができる。
このようなリチウムイオン二次電池用構造体10Aでは、収容室111内に電解液Tが注入されておらず、収容室111内が低湿度状態で密閉されているため、空輸等において電解液Tに起因する輸送制限されることなく、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができ、安全に且つ短時間で輸送を行うことができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aの輸送後は、リチウムイオン二次電池用構造体10Aのラミネートフィルム110の第2封止領域114の一部(注液口112の近傍)を開いて注液口112を露出させ、注液口112から電解液Tを注入する。その後、注液口112を封止し、第1封止領域113全域で封止するとともに、再開封した第2封止領域114の一部も再び封止して第2封止領域114全域で封止することでリチウムイオン二次電池を容易に製造することができる。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aの製造方法について図10を参照して説明する。なお、図10は、実施形態2に係るリチウムイオン二次電池用構造体の製造方法を説明するフローチャートである。
上述した実施形態1のステップS1~ステップS6と同じ工程、すなわち、混練工程、塗布工程、乾燥工程、プレス工程、切断工程、積層工程によって、正極板、セパレータ、負極板を重ね合わせた電極群20を形成する。その後、ステップS20のタブリード取付工程において、電極群20の正極側の集電体、負極側の集電体のそれぞれにタブリード120を接続する。このタブリード120は最終的に外部端子となる。
次に、ステップS21のラミネート内収容工程で、タブリード120が接合された電極群20は、タブリード120との接合部分を含む電極群20を、ラミネートフィルム110で包み込むようにして覆い、ラミネートフィルム110の周囲を注液口112が残るように接合することで第1封止領域113を形成する。
次に、ステップS22の予備封止工程で、ラミネートフィルム110の第1封止領域113の外側を全周に亘って封止することで第2封止領域114を形成する。これにより、注液口112が封止されたリチウムイオン二次電池用構造体10Aを製造することができる。
本実施形態では、ステップS21のラミネート内収容工程とステップS22の予備封止工程とを低湿度環境下で行うことで、収容室111内を低湿度状態としてラミネートフィルム110を密閉することができる。ちなみに、低湿度環境下でラミネートフィルム110を密閉する方法としては、実施形態1と同様に、低湿度状態に湿度調整されたドライルーム内にラミネートフィルム110を密閉する密閉装置を配置し、ドライルーム内の密閉装置でラミネートフィルム110を接合して密閉するか、または、密閉装置の密閉処理する空間を低湿度状態にして接合すれば良い。この時、ステップS21のラミネート内収容工程からステップS22の予備封止工程まで低湿度状態が保たれるよう注意する。例えば、ステップS21のラミネート内収容工程とステップS22の予備封止工程とが同じ低湿度環境下(同じドライルーム内)で連続して行われるようにする。ステップS21のラミネート内収容工程とステップS22の予備封止工程の少なくとも一方が低湿度環境でない(ドライルーム外)装置(装置内は低湿度状態として必要な処理を行う)を用いて行われる場合は、この2つの工程間での被処理物の搬送時においても被処理物の周辺環境が低湿度状態であることを維持しておくようにする。ちなみに低湿度環境下とは、例えば、露点温度が-20℃以下の状態の高い乾燥状態のことである。低湿度環境における気体の種類は限定されず、空気であってもよく、また窒素や希ガス等の不活性ガスであってもよい。
なお、本実施形態では、ラミネート内収容工程と予備封止工程とを低湿度環境下で行うようにしたが、少なくとも図10のステップS3の乾燥工程を経た後、望ましくは、図10に示す全てのリチウムイオン二次電池用構造体10Aの製造工程の全てを低湿度環境下で行うようにし、さらに、低湿度環境下で行う工程は同じドライルーム内で行うようにするのがよい。また、収容室111内に不活性ガスを充填する場合、収容室111内に窒素等の不活性ガスを充填する方法は上述した封止の方法に応じて最適な方法で行えばよい。例えば、ラミネート内収容工程から低湿度環境下でかつ不活性ガス雰囲気中で行いうようにすればいい。その後に予備封止工程が必要な場合(ラミネートフィルム110に注液口112が形成されている場合)はこの予備封止工程までは低湿度環境下でかつ不活性ガス雰囲気中で行うようにすればいい。なお、その後に予備封止工程が必要な場合(ラミネートフィルム110に注液口112が形成されている場合)は、ラミネート内収容工程では不活性ガス雰囲気でなくともよく、予備封止の際、注液口112自体を予備封止する場合には、注液口112から強制的に不活性ガスをラミネートフィルム110の収容室111内に導入するようにすればいい。この場合、収容室111内の排気用の口を注液口112とは別に設けておく必要がある(この排気用の口も注液口112同様に予備封止が必要)。また、リチウムイオン二次電池用構造体10A自体を封止体で封止する場合には、封止体で完全に封止する前に、封止体におけるリチウムイオン二次電池用構造体10Aの収納された空間内に強制的に不活性ガスを導入するようにすればいい。
このように製造したリチウムイオン二次電池用構造体10Aは、上述した実施形態1と同様に、複数個が1つの梱包ケース101内に収容されて梱包体100として容易に輸送することができる。
また、このようなリチウムイオン二次電池用構造体10Aを用いたリチウムイオン二次電池の製造方法は、上述した実施形態1と同様であるため、上述した実施形態1の図7を参照して説明する。
図7に示すように、ステップS10の注液口112の開口工程で、第2封止領域114の一部(注液口112の近傍)を開いて注液口112を露出する。本実施形態では、リチウムイオン二次電池用構造体10Aの第2封止領域114の一部を開封することで、注液口112を露出する。
次に、ステップS11の注液工程で、リチウムイオン二次電池用構造体10Aの注液口112から収容室111内に電解液Tを注入する。
次いで、図示しない化成充電が行われる。この時は注液口112はまだ封止していないので、化成充電で発生したガスは注液口112から収容室111外へ排出される。ステップS12の本封止工程で、注液口112が封止されて収容室111が密閉され、さらに、第2封止領域114の開封した部分を再度封止することでリチウムイオン二次電池が製造される。
その後は、ステップS13の充放電検査工程において、充放電検査等の検査を経て、所定の基準を満たすものがリチウムイオン二次電池として出荷される。
このようなリチウムイオン二次電池の製造工程において、ステップS10~ステップS12までの工程、すなわち、注液口112の開口工程と注液工程と本封止工程とは、低湿度環境下で行われる。ちなみに低湿度環境下とは、例えば、露点温度が-20℃以下の状態の高い乾燥状態のことである。低湿度環境における気体の種類は限定されず、空気であってもよく、また窒素や希ガス等の不活性ガスであってもよい。
このように低湿度環境下で注液口112の開口工程と注液工程と本封止工程とを行うことで、収容室111内が低湿度状態で密閉されるため、収容室111内の水分を電極群20が吸収するのを抑制することができ、最終的にリチウムイオン二次電池となった場合に不具合が生ずることを抑制して所望の電池性能を得ることができる。また、収容室111内の電解液Tに収容室111内の水分が含まれるのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池の性能低下を抑制することができる。
そして、電解液Tが注入されておらず収容室111が低湿度状態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aを工場Xから工場Yに輸送することで、空輸等において輸送量が制限されることなく、安全に輸送することができる。したがって、電解液Tを注入したリチウムイオン二次電池を工場Xから工場Yに輸送する場合に比べて、空輸などを用いて少ない輸送日数で安全に輸送することができる。
なお、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aでは、外装部材を構成するラミネートフィルム110に注液口112を設け、注液口112及び注液口112の外側の第2封止領域114で接合することで注液口112を封止するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池用構造体10Aには、注液口112及び第1封止領域113を設けずに、第2封止領域114のみを設けるようにしてもよい。この場合には、リチウムイオン二次電池用構造体10Aの作製時には第2封止領域114の全域で封止すればよく、リチウムイオン二次電池を製造する注液工程では、第2封止領域114の一部を開封して注液口を形成するようにしてもよく、第2封止領域114の一部を開封することなく注射針のような注液針で電解液Tを収容室111内に注液するようにしてもよい。電解液を注液した後は第2封止領域114の開封部分を再び封止すればよく、注液針にて開封せずに注液した場合は、ラミネートフィルム110における注液針の挿入された部分を、例えば、密着力の強くはがれにくい絶縁性のテープを貼りつけて塞ぐようにすればよい。第2封止領域114のみを設ける方が封止する箇所が少ない分、工程が少なくなることや封止する領域が少なくなる分、ラミネートセルとして完成品の形状自体も小さくできるといったメリットがあるが、注液口112部分を開封したり、再封止したりするため、ラミネートフィルムの材質によっては注液口112部分やその周辺部分が破れやすくなる場合がある。一方、第1封止領域113を設けるようにすればこのようなことはない。また、第1封止領域113と第2封止領域114との両方で封止することになるので、収容室111の密閉性を高めることができ、外部からの水分の侵入も二重に抑制できる。
以上説明したように本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aでは、電極接続体である電極群20及びタブリード120と、電極群20及びタブリード120を収容した収容室111を有する外装部材であるラミネートフィルム110と、を具備し、収容室111内には電解液Tが注入されておらず、当該収容室111内が低湿度状態で密閉されている。
このように電解液Tが注入されていない収容室111が低湿度状態で密閉されることで、空輸等において電解液Tに起因する輸送量が制限されることなく、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができ、安全に且つ短時間で輸送を行うことができる。
また、リチウムイオン二次電池用構造体10Aの輸送後は、リチウムイオン二次電池用構造体10Aの注液口112から電解液Tを注入し、注液口112を封止するだけでリチウムイオン二次電池を容易に製造することができる。
また、収容室111内が低湿度状態で密閉されることで、収容室111内の気体に含まれる水分を電極群20が吸収するのを抑制することができ、最終的にリチウムイオン二次電池となった場合に不具合が生ずることを抑制して所望の電池性能を得ることができる。また、収容室111内が低湿度状態で密閉されることで、収容室111内に電解液Tを注入してリチウムイオン二次電池を製造した際に、電解液Tに収容室111内の水分が含まれるのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池の性能低下を抑制することができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aでは、外装部材であるラミネートフィルム110は、収容室111内に電解液Tを注入可能な注液口112を有し、注液口112が封止されていることが好ましい。
これによれば、注液口112を開封するだけで収容室111内に容易に電解液Tを注入することが可能となる。
また、本実施形態の梱包体100は、リチウムイオン二次電池用構造体10Aが、複数搬送可能に梱包されている。
このように梱包体100とすることで、複数のリチウムイオン二次電池用構造体10Aを効率的に搬送することができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aの製造方法は、電極接続体である電極群20及びタブリード120と、電極群20及びタブリード120を収容可能な収容室111が設けられた外装部材であるラミネートフィルム110と、を具備するリチウムイオン二次電池用構造体10Aの製造方法であって、収容室111に電解液Tを注入することなく、収容室111内に電極群20及びタブリード120を収容して低湿度環境下で収容室111を密閉する工程を有する。
このように電解液Tを注入することなく、低湿度環境下で収容室111を密閉することで、収容室111内を低湿度状態に維持することができる。したがって、リチウムイオン二次電池用構造体10Aを空輸する際に、電解液Tに起因する輸送制限されることなく、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができ、安全に且つ短時間で輸送を行うことができる。
また、収容室111内を低湿度状態で密閉することで、収容室111内の気体に含まれる水分を電極群20が吸収するのを抑制することができ、最終的にリチウムイオン二次電池となった場合に不具合が生ずることを抑制して所望の電池性能を得ることができる。また、収容室111内を低湿度状態で密閉することで、収容室111内に電解液Tを注入してリチウムイオン二次電池を製造した際に、電解液Tに収容室111内の水分が含まれるのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池の性能低下を抑制することができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aの製造方法では、外装部材であるラミネートフィルム110は、電解液Tを注入可能な注液口112を有し、収容室111を密閉する工程は、収容室111に電極接続体である電極群20及びタブリード120を収容する工程と、収容室111に電解液Tを注入することなく注液口112を封止して密閉する工程と、を具備し、注液口112を封止する工程は、低湿度環境下で行うことが好ましい。
これによれば、注液口112を封止する際に収容室111内を低湿度状態とすることができる。また、注液口112を封止するだけで容易に収容室111の低湿度状態を維持することが可能である。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aの製造方法では、収容室41に電極接続体である電極群20及びタブリード120を収容する工程は、低湿度環境下で行うことが好ましい。このように電極群20及びタブリード120を収容する工程も低湿度環境下で行うことで、電極群20に水分が吸収されるのを抑制することができ、最終的にリチウムイオン二次電池となった場合に不具合が生ずることを抑制して所望の電池性能を得ることができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法は、電極接続体である電極群20及びタブリード120と、電極群20及びタブリード120を収容した収容室111を有する外装部材であるラミネートフィルム110と、を具備し、収容室111内に電解液Tが注入されておらず、当該収容室111内が低湿度状態で密閉されたリチウムイオン二次電池用構造体10Aに対して、低湿度環境下で収容室111内を開口して当該収容室111内に電解液Tを注入し、収容室111を密閉する工程を有する。
このように、低湿度環境下で収容室111を開口して収容室111内に電解液Tを注入して密閉することで、電解液Tに水分が含まれるのを抑制することができ、最終的にリチウムイオン二次電池に不具合が生ずることを抑制して所望の電池性能を得ることができる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法では、外装部材であるラミネートフィルム110は、電解液Tを注入可能な注液口112を有し、低湿度環境下での収容室111の開口は、注液口112を開口し、収容室111内への電解液Tの注入は、注液口112から行い、収容室111の密閉は、注液口112の封止であることが好ましい。これによれば、注液口112を開封するという容易な工程によって収容室111を開口することができると共に、注液口112から電解液Tを容易に注入することができる。また、注液口112を封止するだけで、収容室111を容易に密閉することができる。
また、本実施形態の外装部材としてラミネートフィルムを用いたリチウムイオン二次電池用構造体の変形例及びリチウムイオン二次電池の製造方法について図11~図13を参照してに説明する。
図11(a)に示すように、リチウムイオン二次電池用構造体10Bは、外装部材としてラミネートフィルム110Aを有するものであり、ラミネートフィルム110Aの収容室111内に電極群20を封入したものである。
ラミネートフィルム110Aは、収容室111内に電極群20が収容された状態で、外周の三方を封止領域201で封止し、ラミネートフィルム110の収容室111内を低湿度状態として残りの一方を封止領域202で予備封止されている。この状態が本発明のリチウムイオン二次電池用構造体10Bとなる。
このようなリチウムイオン二次電池用構造体10Bは、輸送先にて、図11(b)に示すように、低湿度環境下で、破線Vで示す位置でラミネートフィルム110Aを切断することでラミネートフィルム110Aの開封をして、ラミネートフィルム110Aの収容室111内への電解液の注入を行う。電解液の注入が終了したら図12(a)に示すように、低湿度環境下で、十分に内部の脱気を行いながら封止領域203で封止する。さらに、図12(b)に示すように、所望のサイズとするため、封止領域204で封止し、図13に示すように、破線Wで示す位置でラミネートフィルム110Aを切断することでラミネート型のリチウムイオン二次電池を作製する。図12(b)の処理は低湿度環境下でもよいし、そうでなくてもよい。
このようなリチウムイオン二次電池用構造体10Bであっても、電解液が注入されていない収容室111が低湿度状態で密閉されることで、空輸等において電解液に起因する輸送量が制限されることなく、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができ、安全に且つ短時間で輸送を行うことができる。また、リチウムイオン二次電池用構造体10Bの輸送後は、リチウムイオン二次電池用構造体10Bの収容室111内に電解液を注入して封止領域203又は204で封止するだけでリチウムイオン二次電池を容易に製造することができる。
また、収容室111内が低湿度状態で密閉されることで、収容室111内の水分が電解液に含まれるのを抑制することができ、リチウムイオン二次電池となった場合に不具合が生ずることを抑制して所望の電池性能を得ることができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1及び2では、リチウムイオン二次電池用構造体10、10Aが、複数搬送可能に梱包された梱包体100を例示したが、特にこれに限定されず、リチウムイオン二次電池用構造体10、10Aは、それぞれが個別に梱包されていてもよい。