JP7334699B2 - 鉄鋼プラント操業支援システム - Google Patents

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Description

本発明は、操業員による手動での鉄鋼プラントの操業を支援する鉄鋼プラント操業支援システムに関する。
鉄鋼プラントは操業員による手動での操業が可能である。この場合に懸念されるのが、操業員ごとの操業方法のばらつきよる製品の品質への影響である。特許文献1には、運転員に操作レベルに応じた操作支援内容を提供するプラント監視制御システムに係る従来技術が開示されている。この従来技術におけるプラント監視制御システムは、運転員IDを格納している携帯型通信機と、プラント制御機器に接続されるプラント運転操作卓とを備える。プラント運転操作卓は、タッチ電極、タッチパネル付表示装置、運転員情報データベース、操作支援情報データベースおよび操作履歴データベースを有している。
従来技術において、プラント運転操作卓は、タッチパネル付表示装置に入力された操作情報を操作履歴データベースに格納する。また、携帯型通信機から運転員IDを読み取り、読み取った運転員IDを、運転員情報データベースに保存されている運転員IDと照合する。運転員IDの照合により運転員の認証が成功すると、運転員情報データベースから認証が成功した運転員の操作レベルを取得する。そして、操作支援情報データベースからは、運転員の操作レベルに対応した画面展開情報を取得し、タッチパネル付表示装置にその画面展開情報に対応した操作画面を表示する。
従来技術は、運転員の操作レベルに対応した操作画面を表示することに特徴がある。しかし、現在の運転員が誰であるかは、他人との貸し借りが可能な携帯型通信機から読み取った運転員IDにより管理されている。このため、運転員IDから特定された運転員と実際の運転員とが異なる場合が有り得る。つまり、従来技術においてタッチパネル付表示装置に表示される操作画面は、必ずしも運転員の操作レベルに対応したものとは言えないおそれがあった。
特開2017-211845号公報
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、操業員が手動で鉄鋼プラントを操業する場合の操業員ごとの操業方法のばらつきを低減して製品の品質を向上させることができる鉄鋼プラント操業支援システムを提供することを目的とする。
本発明に係る鉄鋼プラント操業支援システムは、操業員による手動での鉄鋼プラントの操業を支援する鉄鋼プラント操業支援システムである。本発明に係る鉄鋼プラント操業支援システムは、鉄鋼プラントの制御機器を手動操作するためのプラント運転操作盤と、プラント運転操作盤を操作している担当操業員の画像を読み取るカメラと、操業員認証データベースを記憶した記憶装置とを備える。操業員認証データベースは、操業員ごとの操業員画像認証データを含むデータベースである。さらに、本発明に係る鉄鋼プラント操業支援システムは、操業員同定手段、担当操業員履歴データ算出手段、操作履歴データ算出手段、操作特徴データ抽出手段、製品品質実績データ算出手段、及び操業方法評価手段を備える。
操業員同定手段は、カメラで読み取った担当操業員の画像を操業員認証データベースと照合し、担当操業員を同定するように構成されている。担当操業員履歴データ算出手段は、操業員同定手段による同定結果に基づき、鉄鋼プラントで製造される製品の長さ方向の位置に対する担当操業員の履歴である操業員履歴データを算出するように構成されている。操作履歴データ算出手段は、プラント運転操作盤からの制御機器に対する操作信号を取得し、製品の長さ方向の位置に対する操作信号の履歴である操作履歴データを算出するように構成されている。そして、操作特徴データ抽出手段は、担当操業員履歴データと操作履歴データとに基づいて、操業員ごとの操作特徴を示す操作特徴データを抽出するように構成されている。
製品品質実績データ算出手段は、製品の品質実績値を取得し、製品の長さ方向の位置に品質実績値が関連付けられた製品品質実績データを算出するように構成されている。品質エラーデータ抽出手段は、製品品質実績データを製品品質設定データと比較することにより、製品の長さ方向の位置に品質エラーが関連付けられた品質エラーデータを抽出するように構成されている。
そして、操業方法評価手段は、操作特徴データと品質エラーデータとを照合し、その照合結果に基づいて操業員ごとに操業方法を評価するように構成されている。
このような構成を有する鉄鋼プラント操業支援システムによれば、カメラ画像が操業員ごとの操業員画像認証データと照合されることで、プラント運転操作盤を操作していた担当操業員を正しく同定することができる。そして、同定した担当操業員の操作特徴を示す操作特徴データと品質エラーデータとが照合されることで、担当操業員のどのような操作特徴が品質エラーに関係しているかが判明する。操作特徴データと品質エラーデータとの照合結果は、操業員ごとの操業方法の評価に用いられるので、操業員はその評価に基づいて自身の操業方法を改善することができる。
操業方法評価手段は、操業員ごとの操業方法を評価した操業評価レポートを作成するように構成されてもよい。操業員は、自身の操業方法が評価された操業評価レポートを受け取り、それを参考にして操業方法を改善することができる。
操作特徴データ抽出手段は、同一製品で取得された担当操業員の操作履歴データと模範操業員の操作履歴データとの差分を担当操業員の操作特徴データとして抽出するように構成されてもよい。模範操業員とは、鉄鋼プラントの操業に熟練し、製品の品質エラーを起こすことのない理想の操業員である。このような模範操業員との違いが操作特徴として抽出されることで、各操業員は、模範操業員に近づくように自身の操業方法を改善することができる。
本発明に係る鉄鋼プラント操業支援システムは、操業実績データ算出手段をさらに備えてもよい。操業実績データ算出手段は、鉄鋼プラントの操業実績値を取得し、製品の長さ方向の位置に操業実績値が関連付けられた操業実績データを算出するように構成される。この場合、操業方法評価手段は、操作特徴データと操業実績データとを照合し、その照合結果にも基づいて、操業員ごとに操業方法を評価するように構成されてもよい。操作特徴データと操業実績データとが照合されることで、担当操業員のどのような操作特徴が操業実績に関係しているかが判明する。操作特徴データと操業実績データとの照合結果は、操業員ごとの操業方法の評価に用いられるので、操業員はその評価に基づいて自身の操業方法を改善することができる。
以上説明したとおり、本発明に係る鉄鋼プラント操業支援システムによれば、カメラ画像が操業員ごとの操業員画像認証データと照合されることで、プラント運転操作盤を操作していた担当操業員を正しく同定することができる。そして、少なくとも製品の品質の観点で操業員ごとに操業方法が評価されるので、操業員はその評価に基づいて自身の操業方法を改善することができる。その結果、操業員が手動で鉄鋼プラントを操業する場合の操業員ごとの操業方法のばらつきは低減され、製品の品質が向上する。
本発明の実施形態に係る鉄鋼プラント操業支援システムの全体構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る鉄鋼プラントの構成例と信号の取得例を示す図である。 本発明の実施形態に係る鉄鋼プラントの操業状態の遷移フローの一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る時系列データから長さデータへの変換チャートのイメージを示す図である。 本発明の実施形態に係る鉄鋼プラント操業支援システムの処理フローを示す図である。 本発明の実施形態に係る操作特徴データの抽出方法のイメージを示す図である。 本発明の実施形態に係る品質エラーデータの抽出方法のイメージを示す図である。 本発明の実施形態に係る最適操業方法の解析方法のイメージを示す図である。 本発明の実施形態に係る最適操業方法の解析方法のイメージを示す図である。 本発明の実施形態に係る最適操業方法の解析方法のイメージを示す図である。 本発明の実施形態に係る操業評価レポートのイメージを示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造や方法中の工程は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
まず、本発明の実施形態に係る鉄鋼プラント操業支援システムの全体構成について、図1に基づいて説明する。本実施形態に係る鉄鋼プラント操業支援システム100は、操業員50による手動での鉄鋼プラント20の操業を支援するためのシステムである。鉄鋼プラント操業支援システム100は、鉄鋼プラント20の制御機器を手動操作することができるプラント運転操作盤3を備える。また、鉄鋼プラント操業支援システム100は、タッチパネル付表示装置2と顔認証用カメラ1とを備える。タッチパネル付表示装置2と顔認証用カメラ1は、プラント運転操作盤3に付設されている。タッチパネル付表示装置2は、製品であるコイルの所望の品質、例えば、板厚、板幅、形状等を設定できるHMIである。顔認証用カメラ1は、プラント運転操作盤3を操作している担当操業員の顔の画像を読み取るカメラである。
プラント運転操作盤3は、鉄鋼プラント制御用コントローラ35のI/Oに接続されている。鉄鋼プラント制御用コントローラ35は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)である。鉄鋼プラント制御用コントローラ35には、鉄鋼プラント20の制御機器が接続されている。また、鉄鋼プラント制御用コントローラ35には、鉄鋼プラント20で製造されるコイル25の品質に係る物理量を計測する図示しないセンサが接続されている。
鉄鋼プラント操業支援システム100は、データ収集サーバ36、HMIサーバ37、及びプリンタ38を備える。データ収集サーバ36及びHMIサーバ37は、データをインターフェースする専用制御LAN39によって鉄鋼プラント制御用コントローラ35に接続されている。また、HMIサーバ37、及びプリンタ38は、顔認証用カメラ1、タッチパネル付表示装置2、及び鉄鋼プラント制御用コントローラ35と汎用制御LAN40によって接続されている。
ここで、図2は、鉄鋼プラント20の構成例と信号の取得例を示す図である。本実施形態では、鉄鋼プラント20はシングルスタンドミルラインである。シングルスタンドミルラインは、主要な制御機器として、入側ペイオフリール200、入側シャー201、ミル202、出側テンションリール203、及び出側シャー204を備えている。入側ペイオフリール200は、母材コイルを払い出してラインへ板を送り出す装置である。入側シャー201は、入側ペイオフリール200より母材コイルを払い出す際に母材先端の不良部を切り落とす装置である。ミル202は、母材コイルを圧延する装置である。出側テンションリール203は、圧延後の圧延材を巻き取る装置である。そして、出側シャー204は、出側テンションリール203で巻き取った製品コイルの尾端の不良部を切り落とす装置である。
鉄鋼プラント制御用コントローラ35は、鉄鋼プラント20から信号をI/Oに取り込む。鉄鋼プラント20から取り込まれる信号には、ライン速度207、入側シャーカット信号206、圧延材の伸び率205、及び出側シャーカット信号208が含まれる。入側シャーカット信号206は、製品コイルの尾端位置を決定する信号である。出側シャーカット信号208は、製品コイルの先端位置を決定する信号である。伸び率205は、入側ペイオフリール200の速度と出側テンションリール203の速度との差から算出される。これらの信号は、鉄鋼プラント操業支援システム100で扱うデータを、時系列データから製品コイル単位での長さデータに換算するために用いられる。
鉄鋼プラント操業支援システム100は、時系列データを製品コイル単位での長さデータに変換し、その長さデータを用いて各種の処理を行う。時系列データでは、センサ値や計算値或いはイベントは時刻に関連付けられるのに対し、長さデータでは、それらは製品コイルの長さ方向の位置に関連付けられる。このような長さデータであれば、実際の製品コイルと比較することが容易であるので、製品コイルの品質管理におけるメリットは大きい。例えば、センサで得られた品質データを実際の製品コイルと照合することによって、実際の製品コイルの状態を容易に確認することができる。
図3は、時系列データから長さデータへの変換処理についての理解を容易にするため、鉄鋼プラント20の操業状態の遷移をフローで示したものである。ステップ1では、入側母材コイル209が入側ペイオフリール200から払い出されていき、母材先端部が入側シャー201にてカットされる。入側シャーカット部先端は、出側テンションリール203に巻き付いた際には製品コイルの尾端となる。
ステップ2では、入側ペイオフリール200から払い出された入側母材コイル209がミル202にて圧延される。圧延された板が出側テンションリール203に巻き付けられることにより、製品コイル210が生成されていく。
ステップ3では、出側テンションリール203にて圧延材が巻き取り終わり製品コイル210が生成されると、出側巻付材の尾端部に発生する不良部が出側シャー204にてカットされる。出側シャーカット部は、製品コイル210の先端部となる。
図4は、時系列データから長さデータへ変換する際のチャートイメージを製品品質の実績データの1つである板厚を例に示したものである。上述のとおり、製品コイル210の先端部は、出側シャーカット信号で決定され、製品コイル210の尾端部は、入側シャーカット信号で決定される。具体的には、母材先端部が入側シャー201にてカットされた時刻が検出され、その時刻は製品コイル210の尾端部の位置に変換される。また、出側巻付材の尾端部が出側シャー204にてカットされた時刻が検出され、その時刻は製品コイル210の先端部の位置に変換される。これに、ライン速度207と圧延にて発生する板の伸び率205が加味されることで、時系列データとして取り込まれていた板厚実績は、製品コイル210における長さデータに変換される。
次に、鉄鋼プラント操業支援システム100の処理フローについて図5を用いて説明する。以下に説明するデータの取得処理、演算処理、及び記憶処理は、鉄鋼プラント操業支援システム100を構成する鉄鋼プラント制御用コントローラ35、データ収集サーバ36、及びHMIサーバ37の何れかにおいて実行される。
まず、準備段階において、顔認証データ登録処理5が行われる。顔認証データ登録処理5では、各操業員の生体情報である顔写真が顔認証用カメラ1で読み取られ、操業員認証データベース6に操業員認証データとして登録される。操業員認証データベース6は、例えば、HMIサーバ37の記憶装置に記憶される。
鉄鋼プラントの運転時には、顔認証データ取得処理4が行われる。顔認証データ取得処理4では、プラント運転操作盤3を操作している操業員50の顔写真(顔認証データ)が顔認証用カメラ1で読み取られる。顔認証用カメラ1は、プラント運転操作盤3もしくはタッチパネル付表示装置2が操作された際、顔認証用カメラ1の前にいる操業員50の顔を撮像する。
顔認証データ取得処理4に続いて、操業員同定処理7が行われる。操業員同定処理7では、顔認証データ取得処理4で取得された顔写真が操業員認証データベース6と照合され、現在、プラント運転操作盤3を操作している操業員50、すなわち、担当操業員50が同定される。同定された担当操業員50の履歴は、担当操業員履歴時系列データベース8に格納される。
担当操業員履歴時系列データベース8に格納されたデータは、時系列データである。この時系列データに対してデータ変換処理9が行われる。データ変換処理9では、担当操業員履歴の時系列データが長さデータに変換され、担当操業員履歴長さデータベース10に格納される。担当操業員履歴長さデータベース10には、製品単位で、且つ、製品の長さ方向の位置に関連付けて担当操業員が登録されている。
一方、担当操業員50によるプラント運転操作盤3の操作に対して、操作データ取得処理15が行われる。操作データ取得処理15では、プラント運転操作盤3からの制御機器に対する操作信号が鉄鋼プラント制御用コントローラ35のI/O経由で取得される。操作信号が取得される制御機器は、鉄鋼プラント20の制御機器のうち、製品の製造において常に操作される必要はないが、製品品質の制御に効果的な制御機器である。以下、このような制御機器を操作用品という。具体例を挙げると、制御対象の製品品質が板厚の場合、ミルの圧下操作や、テンションリールの張力付与操作が操作用品に該当する。制御対象の製品品質が板幅であるなら、サイドトリマーが操作用品に該当する。一方、入側シャーや出側シャーは製品の製造において常に操作される必要のある制御機器であるので、ここでいう操作用品には含まれない。取得された操作信号の履歴は、操作履歴時系列データベース16に格納される。
操作履歴時系列データベース16に格納されたデータは、時系列データである。この時系列データに対してデータ変換処理17が行われる。データ変換処理17では、操作履歴の時系列データが長さデータに変換され、操作履歴長さデータベース18に格納される。操作履歴長さデータベース18には、製品単位で、且つ、製品の長さ方向の位置に関連付けて操作信号が登録されている。なお、制御機器の操作がタッチパネル付表示装置(HMI)2でも行われる場合には、タッチパネル付表示装置2からの操作信号の履歴も操作履歴データに含まれる。
また、担当操業員50がタッチパネル付表示装置2にて製品品質の設定データを入力した場合、製品品質設定データ取得処理11が行われる。製品品質設定データ取得処理11では、板幅、板厚、形状等の製品品質設定データが製品品質設定時系列データベース12に格納される。製品品質設定時系列データベース12に格納されたデータは、時系列データである。この時系列データに対してデータ変換処理13が行われ、長さデータに変換された製品品質設定データが製品品質設定長さデータベース14に格納される。製品品質設定長さデータベース14には、製品単位で、且つ、製品の長さ方向の位置に関連付けて製品品質の設定値が登録されている。
製品コイル25の製造中には、製品品質実績データ取得処理26が行われる。製品品質実績データ取得処理26では、ライン上に配置されたセンサによって板幅、板厚、形状等の製品の品質実績値が取得される。取得された製品の品質実績値は、製品品質実績時系列データベース27に格納される。製品品質実績時系列データベース27に格納されたデータは、時系列データである。この時系列データに対してデータ変換処理28が行われ、長さデータに変換された製品品質実績データが製品品質実績長さデータベース29に格納される。製品品質実績長さデータベース29には、製品単位で、且つ、製品の長さ方向の位置に関連付けて製品品質の実績値が登録されている。
さらに、鉄鋼プラント20の操業中には、操業実績データ取得処理21が行われる。操業実績データ取得処理21では、鉄鋼プラント20におけるライン速度、ライン稼働時間等の操業実績値が取得される。取得された操業実績値は、操業実績時系列データベース22に格納される。操業実績時系列データベース22に格納されたデータは、時系列データである。この時系列データに対してデータ変換処理23が行われ、長さデータに変換された操業実績データが操業実績長さデータベース24に格納される。操業実績長さデータベース24には、製品単位で、且つ、製品の長さ方向の位置に関連付けて操業実績値が登録されている。
以上のように、鉄鋼プラント操業支援システム100は、担当操業員履歴長さデータベース10、操作履歴長さデータベース18、製品品質設定長さデータベース14、製品品質実績長さデータベース29、及び操業実績長さデータベース24に各種の長さデータを蓄える。
鉄鋼プラント操業支援システム100は、担当操業員履歴長さデータベース10と操作履歴長さデータベース18とを用いて、操作特徴データ抽出処理19を行う。操作特徴データ抽出処理19では、担当操業員履歴データと操作履歴データとに基づいて、操業員ごとの操作特徴を示す操作特徴データが抽出される。ここで、図6は、操作特徴データの抽出方法のイメージを示す図である。以下、図6を用いて、操作特徴データ抽出処理19の内容について説明する。
図6に示す例では、製品Xの担当操業員は操業員Aであり、製品Yの担当操業員は操業員Bである。担当操業員履歴データより、どの操業員がその製品の製造を担当していたかが分かる。この例では、製品Xと製品Yともに製造途中での担当操業員の交代はないが、1つの製品の製造途中で担当操業員が交代することもあり得る。担当操業員履歴データによれば、製品の長さ方向のどの位置で担当操業員が交代したのかが分かる。
また、図6に示す例では、操作用品αの操作に対する操作履歴データが操業員Aと操業員Bのそれぞれについて示されている。評価対象となる製品品質が板厚であるとすると、操作用品αは、例えば、ミルの圧下操作である。なお、図6では単純化のために操作用品αの操作の有無のみが表されているが、操作量を設定できる操作用品の場合には、製品の長さ方向に対する操作量のデータが操作履歴データに含まれる。
操作特徴データ抽出処理19では、操業員Aを基準にして操業員Aの操作履歴データと操業員Bの操作履歴データとの差分が、操業員Bの操作特徴データとして抽出される。基準となる操業員Aは、模範操業員として認定された操業員である。模範操業員とは、鉄鋼プラント20の操業に熟練し、製品の品質エラーを起こすことのない模範的な操業員を意味する。模範操業員は予め登録されている。
模範操業員である操業員Aの操作履歴データでは、製品コイルの尾端部で操作用品αが操作され、製品コイルの先端部でも操作用品αが操作されている。一方、操業員Bの操作履歴データでは、製品コイルの尾端部と先端部のどちらでも操作用品αは操作されていない。よって、操作特徴データ抽出処理19によれば、製品コイルの尾端部で操作用品αを操作しないことと、製品コイルの先端部で操作用品αを操作しないことが操業員Bの操作特徴データとして抽出される。
なお、操作特徴データ抽出処理19は、同一種類の製品に対して行われる。つまり、製品Xと製品Yは同一種類の製品である。同一種類の製品とは、鋼種、板厚、及び板幅が同一の製品を意味する。より詳しくは、板厚及び板幅が同一とは、母材コイルにおいて板厚及び板幅が同一であり、製品コイルにおいても板厚及び板幅が同一であることを意味する。板厚及び板幅に関する情報は、上位システムから目標値として供給される。
再び図5に戻り、鉄鋼プラント操業支援システム100の処理フローについての説明を続ける。鉄鋼プラント操業支援システム100は、製品品質設定長さデータベース14と製品品質実績長さデータベース29とを用いて、品質エラーデータ抽出処理30を行う。品質エラーデータ抽出処理30では、製品品質実績データを製品品質設定データと比較することにより、製品の長さ方向の位置に品質エラーが関連付けられた品質エラーデータが抽出される。ここで、図7は、品質エラーデータの抽出方法のイメージを示す図である。以下、図7を用いて、品質エラーデータ抽出処理30の内容について説明する。
図7に示す例では、製品品質は板厚である。製品品質設定データは、目標値と目標精度の上限と下限とで与えられている。目標精度の下限から下限までの範囲が製品品質の正常範囲である。製品品質の実績値が目標精度下限より低い場合、及び、目標精度上限より高い場合には品質エラーとなる。図7には、製品Xと製品Yの2つの例が示されている。製品Xの例では、製品品質の実績値は、製品コイルの先端部から尾端部までの全ての領域で、目標精度の範囲に内に収まっている。つまり、製品Xには品質エラーはない。
一方、製品Yの例では、製品品質の実績値は、製品コイルの先端部において目標精度上限からはみ出し、製品コイルの尾端部においても目標精度上限からはみ出している。よって、製品Yについては、製品の長さ方向の先端部と尾端部とに品質エラーを有する品質エラーデータが抽出される。
再び図5に戻り、鉄鋼プラント操業支援システム100の処理フローについての説明を続ける。鉄鋼プラント操業支援システム100は、操作特徴データ抽出処理19により抽出された操作特徴データと、品質エラーデータ抽出処理30により抽出された品質エラーデータと、操業実績長さデータベース24とを用いて、最適操業方法解析処理31を行う。ここで、図8乃至図10は、最適操業方法の解析方法のイメージを示す図である。以下、図8乃至図10を用いて、最適操業方法解析処理31の内容について説明する。
最適操業方法解析処理31では、同一製品について得られた操作特徴データ、品質エラーデータ、及び操業実績データが操業員ごとにデータがまとめられる。図8に示す例では、操業実績データとしてライン速度が用いられている。また、操作特徴データとして操作用品αの操作の有無が示されている。品質エラーは製品コイルの先端部と尾端部において起こりやすいことから、製品コイルの先端部における品質エラーデータと操作特徴データとが紐づけられ、また、製品コイルの尾端部における品質エラーデータと操作特徴データとが紐づけられる。
図8に示す操業員Aと操業員Bとの比較では、操業員Aは製品コイルの先端部でも尾端部でも品質エラーを起こしていない。具体的には、操業員Aは、製品コイルの先端部と尾端部で操作用品αを操作することで品質エラーを起こしていないのに対し、操業員Bは、そのような操作を行わないことで、製品コイルの先端部と尾端部で品質エラーを起こしている。よって、操業員が操業員Aと操業員Bのみであるなら、製品コイルの先端部で操作用品αを操作し、製品コイルの尾端部でも操作用品αを操作する操業員Aの操業方法が最適操業方法であると言える。操業実績データであるライン速度は、生産性の良し悪しの判断に用いられる。操業員Aによる製造時のライン速度が、操業員Bによる製造時のライン速度以上であれば、操業員Aの操業方法は、生産性においても最適な操業方法であると判断することができる。
また、図9に示すように、同じ品質エラーの無い操業方法であっても、ライン速度によっては、操作用品αの操作タイミングや期間に違いが生じる可能性もある。図9において実線で示すライン速度と実線で示す操作特徴データとは、操業員Aによるものである。破線で示すライン速度と破線で示す操作特徴データとは、操業員Cによるものである。このような場合、品質エラーを生じさせず、且つ、ライン速度がより高くなる操業員Aによる操作方法の方が、品質と生産性の両面においてより適した操業方法として判断される。なお、ここで比較されるデータは同一種類の製品において取得されたデータである。
最適操業方法解析処理31の別の例では、最適操業方法の解析に機械学習が利用される。図10に示す例では、操作特徴データに含まれる操作タイミング及び操作期間、そのときの製造条件、及び、操作特徴データに対応する品質エラーデータが、教師信号として機械学習装置に入力される。製造条件には、鋼種、板厚、板幅のような製品の種類に関する条件や、目標ライン速度のような鉄鋼プラント20の運転条件などが含まれる。機械学習装置としては、例えば、中間層が1つであるニューラルネットワークによる学習を行う装置や、中間層が複数から成るニューラルネットワークによる深層学習を行う装置を用いることができる。
機械学習装置は、入力された教師信号を用いて、品質エラーを生じさせない製造条件と操作タイミング及び操作期間との関係を学習する。機械学習装置による学習結果は、最適操業方法解析モデルに反映される。最適操業方法解析モデルの学習完了後、最適操業方法解析処理31は、製造条件を最適操業方法解析モデルに与え、その出力である操作タイミング及び操作期間を、付与された製造条件に対する最適な操業方法とする。以上のような機械学習の方法の他にも、最適操業方法の解析には様々な機械学習の方法を適用することができる。
再び図5に戻り、鉄鋼プラント操業支援システム100の処理フローについての説明を続ける。鉄鋼プラント操業支援システム100は、最適操業方法解析処理31の次に、操業改善点抽出処理32と操業評価レポート生成処理33とを行う。操業改善点抽出処理32は、操業員ごとに操業上の改善点を抽出する処理である。最適操業方法解析処理31で得られた最適操業方法と、操業員の操業方法との相違点が改善点として抽出される。
例えば、図8に示す例において操業員Aの操業方法が最適操業方法であったとする。この場合、製品コイルの先端部で操作用品αを操作すべきことと、製品コイルの尾端部で操作用品αを操作すべきこととが、操業員Bに対する操業改善点として抽出される。また、図9に示す例において操業員Aの操業方法が最適操業方法であったとする。この場合、製品コイルの先端部での操作用品αの操作期間をより短くすべきことと、製品コイルの尾端部での操作用品αの操作期間をより短くすべきこととが、操業員Cに対する操業改善点として抽出される。
操業評価レポート生成処理33は、操業改善点抽出処理32で抽出された操業改善点に基づいて操業評価レポート34を作成する処理である。操業評価レポート34は、操業方法を評価したレポートであって、操業員ごとに作成される。図11は、操業評価レポート34のイメージを示す図である。図11に示すように、操業評価レポート34には、ライン名、操業日時、製品コイルNo、操業者名、操業条件、操業履歴を示すチャート図、製品評価、操業評価が記載されている。操業評価レポート34はプリンタ38によって印刷されてもよいし、PDFなどの電子ファイルで各操業員に提供されてもよい。
以上のように、本実施形態に係る鉄鋼プラント操業支援システム100よれば、プラント運転操作盤3或いはタッチパネル付表示装置2を操業員50が操作すれば、顔認証用カメラ1によって瞬時に認証処理が行われる。これにより、どの操業員によって操業が行われたか正しく同定することができる。
また、本実施形態に係る鉄鋼プラント操業支援システム100よれば、時系列データとして収集された担当操業員履歴データ、操作履歴データ、製品品質設定データ、製品品質実績データ、及び操業実績データは、製品ごとの長さデータに変換される。これにより、異なる操業員の操業方法の差異に拠る製品コイルへの品質への影響を、製品コイルの長さ基準で抽出することができる。
そして、同定した担当操業員の操作特徴を示す操作特徴データと品質エラーデータとが照合されることで、担当操業員のどのような操作特徴が品質エラーに関係しているかを明らかにすることができる。さらに、操作特徴データと操業実績データとが照合されることで、担当操業員のどのような操作特徴が操業実績に関係しているかも明らかにすることができる。各操業員は、自身の操業方法が評価された操業評価レポートを受け取ることができるので、それを参考にして操業方法を改善することができる。
以上説明したとおり、本実施形態に係る鉄鋼プラント操業支援システム100によれば、製品の品質と生産性の観点で操業員ごとに操業方法が評価されるので、操業員はその評価に基づいて自身の操業方法を改善することができる。その結果、操業員が手動で鉄鋼プラントを操業する場合の操業員ごとの操業方法のばらつきは低減され、鉄鋼プラントにおける生産性向上と品質向上とを図ることができる。
なお、本実施形態において、操業員同定処理7は、請求項1に係る発明の「操業員同定手段」としての機能に相当する。担当操業員履歴時系列データベース8、データ変換処理9、及び担当操業員履歴長さデータベース10は、請求項1に係る発明の「担当操業員履歴データ算出手段」としての機能に相当する。操作データ取得処理15、操作履歴時系列データベース16、データ変換処理17、及び操作履歴長さデータベース18は、請求項1に係る発明の「操作履歴データ算出手段」としての機能に相当する。操作特徴データ抽出処理19は、請求項1及び請求項3に係る発明の「操作特徴データ抽出手段」としての機能に相当する。製品品質実績データ取得処理26、製品品質実績時系列データベース27、データ変換処理28、及び製品品質実績長さデータベース29は、請求項1に係る発明の「製品品質実績データ算出手段」としての機能に相当する。品質エラーデータ抽出処理30は、請求項1に係る発明の「品質エラーデータ抽出手段」に相当する。操業実績データ取得処理21、操業実績時系列データベース22、データ変換処理23、及び操業実績長さデータベース24は、請求項4に係る発明の「操業実績データ算出手段」に相当する。最適操業方法解析処理31、操業改善点抽出処理32、及び操業評価レポート生成処理33は、請求項1、請求項2及び請求項4に係る発明の「操業方法評価手段」に相当する。
1 顔認証用カメラ、2 タッチパネル付表示装置、3 プラント運転操作盤、4 顔認証データ取得処理、5 顔認証データ登録処理、6 操業員認証データベース、7 操業員同定処理、8 担当操業員履歴時系列データベース、9 データ変換処理、10 担当操業員履歴長さデータベース、11 製品品質設定データ取得処理、12 製品品質設定時系列データベース、13 データ変換処理、14 製品品質設定長さデータベース、15 操作データ取得処理、16 操作履歴時系列データベース、17 データ変換処理、18 操作履歴長さデータベース、19 操作特徴データ抽出処理、20 鉄鋼プラント(シングルスタンドミル)、21 操業実績データ取得処理、22 操業実績時系列データベース、23 データ変換処理、24 操業実績長さデータベース、25 製品コイル、26 製品品質実績データ取得処理、27 製品品質実績時系列データベース、28 データ変換処理、29 製品品質実績長さデータベース、30 品質エラーデータ抽出処理、31 最適操業方法解析処理、32 操業改善点抽出処理、33 操業評価レポート生成処理、34 操業評価レポート、35 鉄鋼プラント制御用コントローラ、36 データ収集サーバ、37 HMIサーバ、38 プリンタ、39 専用制御LAN、40 汎用制御LAN、50 操業員

Claims (4)

  1. 操業員による手動での鉄鋼プラントの操業を支援する鉄鋼プラント操業支援システムであって、
    前記鉄鋼プラントの制御機器を手動操作するためのプラント運転操作盤と、
    前記プラント運転操作盤を操作している担当操業員の画像を読み取るカメラと、
    操業員ごとの操業員画像認証データを含む操業員認証データベースを記憶した記憶装置と、
    前記カメラで読み取った前記担当操業員の画像を前記操業員認証データベースと照合し、前記担当操業員を同定する操業員同定手段と、
    前記操業員同定手段による同定結果に基づき、前記鉄鋼プラントで製造される製品の長さ方向の位置に対する前記担当操業員の履歴である担当操業員履歴データを算出する担当操業員履歴データ算出手段と、
    前記プラント運転操作盤からの前記制御機器に対する操作信号を取得し、前記製品の長さ方向の位置に対する前記操作信号の履歴である操作履歴データを算出する操作履歴データ算出手段と、
    前記担当操業員履歴データと前記操作履歴データとに基づいて、操業員ごとの操作特徴を示す操作特徴データを抽出する操作特徴データ抽出手段と、
    前記製品の品質実績値を取得し、前記製品の長さ方向の位置に前記品質実績値が関連付けられた製品品質実績データを算出する製品品質実績データ算出手段と、
    前記製品品質実績データを製品品質設定データと比較することにより、前記製品の長さ方向の位置に品質エラーが関連付けられた品質エラーデータを抽出する品質エラーデータ抽出手段と、
    前記操作特徴データと前記品質エラーデータとを照合し、その照合結果に基づいて操業員ごとに操業方法を評価する操業方法評価手段と、を備える
    ことを特徴とする鉄鋼プラント操業支援システム。
  2. 前記操業方法評価手段は、操業員ごとの操業方法を評価した操業評価レポートを作成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼プラント操業支援システム。
  3. 前記操作特徴データ抽出手段は、同一製品で取得された前記担当操業員の前記操作履歴データと模範操業員の前記操作履歴データとの差分を前記担当操業員の操作特徴データとして抽出する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄鋼プラント操業支援システム。
  4. 前記鉄鋼プラントの操業実績値を取得し、前記製品の長さ方向の位置に前記操業実績値が関連付けられた操業実績データを算出する操業実績データ算出手段と、
    前記操業方法評価手段は、前記操作特徴データと前記操業実績データとを照合し、その照合結果にも基づいて、操業員ごとに操業方法を評価する
    ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の鉄鋼プラント操業支援システム。
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