JP7330854B2

JP7330854B2 - ビフィズス菌増殖用組成物

Info

Publication number: JP7330854B2
Application number: JP2019192182A
Authority: JP
Inventors: 明美伊木; 洋介砂田; 勇介谷井; 和也上原
Original assignee: Nissin Foods Holdings Co Ltd
Current assignee: Nissin Foods Holdings Co Ltd
Priority date: 2019-10-21
Filing date: 2019-10-21
Publication date: 2023-08-22
Anticipated expiration: 2039-10-21
Also published as: JP2021065133A

Description

本発明は、デビルズクロー（Harpagophytum procumbens DC）の抽出物を用いたビフィズス菌増殖用組成物に関する。

ビフィズス菌は、ヒトや動物の腸管内に存在する代表的な善玉菌であり、腸内細菌叢のバランスを改善する整腸作用だけではなく、病原菌の感染や腐敗物を生成する菌の増殖を抑える効果や、免疫賦活作用や抗アレルギー作用或いは抗ガン作用等、各種の作用を有することや、ビタミンＢ１、ビタミンＢ２、ビタミンＫ、その他ビタミンＢ群を生成することでも知られている。

ビフィズス菌の中でもビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・カテヌラータムは、ヒト由来のビフィズス菌であり、乳児から大人まで幅広い年代の腸管に存在することが知られている。非特許文献１には、ビフィドバクテリウム・ロンガムによるアレルギーリスク低減効果が、非特許文献２には、３カ月齢の乳児におけるビフィドバクテリウム・カテヌラータムの腸内細菌占有率と湿疹発症のリスクには負の相関があることが記載されている。

一方、健康維持の観点からビフィズス菌の利用が拡大しており、安定的にビフィズス菌を増殖させる技術が求められている。ビフィズス菌を増殖させるための物質として、ボタンボウフウ、N-アセチルグルコサミン含有糖類、酵母エキス、カゼイン分解物、ニンジン抽出液等を添加することが知られているが（例えば、特許文献1）、ビフィズス菌のみをよく増殖させ、腸内常在菌および腸内悪玉菌を増やさないことを両立するのは難しいという課題があった。

特開２０１７－１１９６３３号公報

Curr Microbiol. 2017; 74(8): 987-995. Pediatr Allergy Immunol. 2016 Dec;27(8):838-846.

本発明の課題は、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進効果の高いビフィドバクテリウム属細菌の増殖用組成物、増殖剤、および増殖飲食品を提供することにある。

本発明者らは、鋭意研究したところ、デビルズクロー（Harpagophytum procumbens DC）の抽出物は、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖効果が高いことを見出し、本発明を完成させた。

本発明は、ビフィドバクテリウム属細菌、特にビフィドバクテリウム・ロンガム（Bifidobacterium longum）、及び、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム（Bifidobacterium catenulatum）から選ばれる少なくとも1種のビフィズス菌を増殖させるためのビフィズス菌増殖用組成物、増殖剤、または増殖飲食品であって、デビルズクロー（Harpagophytum procumbens DC）の抽出物を含有する、ビフィズス菌増殖用組成物、増殖剤、または増殖飲食品を提供するものである。

本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、ビフィドバクテリウム属細菌のうち、特にビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・カテヌラータムを良好に増殖させることができる。

グルコースによる各種腸内細菌の増殖試験結果である。デビルズクローエキスパウダーによる各種腸内細菌の増殖試験結果である。

以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。

本発明のビフィズス菌増殖用組成物、増殖剤、または増殖飲食品は、デビルズクロー（Harpagophytum procumbens DC）の抽出物を原料として用いることを特徴の一つとしている。本発明では、デビルズクロー（Harpagophytum procumbens DC）の抽出物を用いることによって、ビフィドバクテリウム属細菌のうち、特にビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・カテヌラータムを良好に増殖させることができる。

デビルズクロー（Harpagophytum procumbens DC）は、主に南部アフリカのカラハリ砂漠に自生するゴマ科の植物であり、硬いトゲのある実ができることからデビルズクローと呼ばれ、薬用植物として利用されている。特に、その効用として、肌荒れ改善効果、肌のハリ、シワ改善効果、また抗炎症・抗菌作用が知られている。

本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、デビルズクローの抽出物を含み、その形態としては、例えば、粉や顆粒、細粒等の粉末状、タブレット状、球状、ソフトカプセル及びハードカプセル、カプレット状、液状等の形状を採用することができる。

本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、デビルズクローの抽出物のみからなるものであってもよいが、デビルズクローの抽出物以外に、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖質、オリゴ糖、多糖類、脂質、核酸、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維等の食物繊維、乳酸菌、酵母等の微生物等その他健康の維持・増進作用を有する食品素材等を挙げることができる。これらの成分の各含有量は、本発明のビフィズス菌増殖用組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。

本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、以下に示す、ビフィズス菌用培地及びビフィズス菌の培養方法において好適に用いることができる。

（ビフィズス菌用培地及びビフィズス菌の培養方法）
ビフィズス菌用培地は、ビフィズス菌増殖用組成物を含有してなり、更に必要に応じてビフィズス菌の生育に好適な成分を含有してなる。ビフィズス菌の培養方法は、ビフィズス菌用培地を用いてビフィズス菌を培養する方法である。

ビフィズス菌増殖用組成物及びビフィズス菌用培地は、上述のビフィドバクテリウム属細菌を増殖させるためのものである。

ビフィズス菌用培地における滅菌条件としては、目的に応じて適宜選択することができるが、１１５℃、１５分間で高圧蒸気滅菌することが好ましい。

デビルズクローの抽出物は、蒸留水に溶解させた後にフィルター滅菌することが望ましい。

ビフィズス菌の培養条件（培地中のｐＨ、溶存酸素、培養温度、及び培養時間等）としては、通常ビフィズス菌に使用される培養条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。

本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、ヒトや動物の腸内においてビフィズス菌を増殖させるものであることは言うまでもない。また、本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、生体外であってもビフィズス菌の増殖を促進させることができる。

本発明のビフィズス菌増殖用組成物は、これを用いることによりビフィドバクテリウム属細菌、特にビフィドバクテリウム・ロンガム、及び、ビフィドバクテリウム・カテヌラータムを増殖させることができるので、例えば、ビフィズス菌を含有する食品やサプリメント等の添加物として好適に利用することができる。

以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。

〔実施例１〕
生体内でのビフィズス菌増殖効果のモデル試験として、以下の増殖試験を実施した。

＜ビフィズス菌増殖試験＞
（ビフィズス菌用のデビルズクロー試料添加ＧＡＭ培地の作製）
市販のデビルズクローエキスパウダー（日本粉末薬品株式会社製）を蒸留水に０．８重量％となるように溶解したのち、０．２μｍフィルターでろ過し、ろ液をデビルズクローエキスパウダー溶液とした。次に、市販のGAMブイヨン培地（日水製薬株式会社製）を１．３３倍濃縮になるよう蒸留水を用いて調製し、１１５℃、１５分間で高圧蒸気滅菌した。これにデビルズクローエキスパウダー溶液を２５重量％となるように添加し、デビルズクロー試料添加ＧＡＭ培地とした（デビルズクローエキスパウダーの終濃度は０．２重量％）。対象群として、デビルズクローエキスパウダー溶液の代わりに０．２μｍフィルター滅菌済み蒸留水を添加したＧＡＭ培地を調製した。

（ビフィズス菌の賦活培養および前培養）
ビフィドバクテリウム属細菌の試験菌株として、Bifidobacterium longum ssp. longum JCM1217、Bifidobacterium catenulatum JCM1194を用いた。これらを各々ＧＡＭブイヨン培地（日水製薬株式会社）に植菌し、３７℃で２４時間、市販のアネロパック・ケンキ（三菱ガス化学株式会社）を用いて嫌気的に培養した。これを賦活培養液とした。ＧＡＭブイヨン培地に賦活培養液を１％量接種した。これを上記条件と同様に培養し、前培養液とした。前培養液の生菌数をＴＯＳプロピオン酸寒天培地（ヤクルト薬品工業株式会社）で測定した。

（ビフィズス菌の増殖試験）
デビルズクロー試料添加ＧＡＭ培地およびＧＡＭ培地にそれぞれ前培養液を１％量接種し、嫌気チャンバー内で３７℃、１６時間培養した。培養終了時の生菌数をＴＯＳプロピオン酸寒天培地で測定した。結果を下記表１に示す。

表１に示す通り、ビフィドバクテリウム・ロンガム、及びビフィドバクテリウム・カテヌラータムに対するデビルズクローの増殖促進効果を確認することができた。

〔実施例２〕
生体内での各種腸内細菌増殖効果のモデル試験として、以下の増殖試験を実施した。

＜各種腸内細菌を用いた選択的増殖促進評価試験＞
（ビフィズス菌の賦活培養および前培養）
表２に、本評価試験で使用する試験菌株を示す。試験菌株には、ヒト腸内ビフィズス菌としてBifidobacterium longum ssp. longum JCM1217、Bifidobacterium catenulatum JCM1194の２種を用いた。また、ヒト腸内常在優勢菌の試験菌株としてCollinsella aerofaciens ATCC25986、Bacteroides uniformis ATCC8492、Bacteroides fragilis ATCC25285、Bacteroides vulgatus ATCC8482を用いた。さらに、ヒト腸内腐敗菌の試験菌株としてClostridium perfringens ATCC13124、Clostridium difficile ATCC9689を用いた。

これらを各々ＧＡＭブイヨン培地（日水製薬株式会社）に植菌し、嫌気チャンバー内で３７℃にて培養した。これを賦活培養液とした。次に、ＧＡＭブイヨン培地に賦活培養液を１％量接種した。これを上記条件と同様に培養し、前培養液とした。培養時間は、ビフィドバクテリウム属細菌の２種は24時間、それ以外の６種は48時間とした。

（各種腸内細菌の増殖試験）
デビルズクロー試料添加ＧＡＭ培地およびＧＡＭ培地にそれぞれ前培養液を１％量接種し、嫌気チャンバー内で３７℃培養した。ビフィドバクテリウム属細菌２種は24時間後、それ以外の６種は48時間後に培養液の濁度（吸光度600nm）を測定した。次の式により、デビルズクロー試料の試験菌株に対する増殖促進率を算出した。

増殖促進率（％）＝｛（ＯＤｄｃ－ＯＤｄ）／（ＯＤｇｃ－ＯＤｇ）｝× １００
ＯＤｄｃ：デビルズクロー試料添加ＧＡＭ培地培養液の濁度
ＯＤｄ：デビルズクロー試料添加ＧＡＭ培地の濁度
ＯＤｇｃ：ＧＡＭ培地培養液の濁度
ＯＤｇ：ＧＡＭ培地の濁度

また、対照試験として、デビルズクローエキスパウダーの代わりにグルコースを用いた試験を上記と同様の方法で行った。これらの試験の結果を図１、図２に示す。グルコースは各菌種に対して非特異的な増殖促進作用を示した。一方で、本発明のデビルズクロー試料添加培養液は、ビフィドバクテリウム属細菌２種に対して増殖促進作用を示した。またヒト腸内常在優勢菌に対しては増殖促進作用を示さず、腐敗菌に対しては増殖抑制作用を示した。

Claims

デビルズクローの抽出物を含有することを特徴とする、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖用組成物。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム（Bifidobacterium longum）、またはビフィドバクテリウム・カテヌラータム（Bifidobacterium catenulatum）である、請求項１に記載の増殖用組成物。
デビルズクローの抽出物を含有することを特徴とする、ビフィドバクテリウム属細菌の増殖剤。
前記ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム（Bifidobacterium longum）、またはビフィドバクテリウム・カテヌラータム（Bifidobacterium catenulatum）である、
請求項３に記載の増殖剤。