JP7328883B2 - 静止誘導機器 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、静止誘導機器に関する。
例えば高電圧受配電設備に用いられる静止誘導機器である変圧器は、絶縁油や液体シリコーン等を用いる液冷変圧器、絶縁や冷却をSF(六フッ化硫黄)ガス等の不活性ガスに依拠するガス絶縁変圧器、鉄心と巻線が加圧空気中で使用される乾式変圧器に大別される。変圧器の準拠規格であるIEC(国際電気標準会議)やJEC(電気学会の電気規格調査会)等では、乾式変圧器の一種で巻線の全表面が樹脂又は絶縁材で覆われた変圧器をモールド変圧器と規定している。
近年、変圧器においては、環境適合性や不燃・難燃性という要求が高まっている。そのため、地球温暖化ガスの一種であるSFガス等の不活性ガスを使用するガス絶縁変圧器や現地での処理に手間を要する液冷変圧器に代えて、乾式変圧器の需要が高まっている。中でもモールド変圧器は絶縁機能を巻線に施した樹脂層にも依存させることで他の乾式変圧器よりも絶縁性能を高めることができ、特別高圧以上の分野でも使用が広まっている。
変圧器は、導電性の密閉タンク内に、誘導機器本体である変圧器本体を収容すると共に、絶縁性の冷却媒体を封入して構成される。この場合、密閉タンクの外壁部を貫通するようにブッシングと称される接続端子部が設けられ、その接続端子部の内側端子と、変圧器本体から導出されるリード線とが密閉タンク内において電気的に接続される。接続端子部の内側端子とリード線との接続部分は、高電圧がかかる充電露出部とされているので、その充電露出部と、接地電位とされる密閉タンクとの間で必要な沿面絶縁距離を確保する必要がある。沿面絶縁距離を確保するためには密閉タンクを大型化させる必要があるが、この点に関し、例えば特許文献1には、充電露出部を熱硬化性樹脂で覆うことで、密閉タンクの大型化を抑制しながら絶縁耐力を高める構成が開示されている。
特開2019-54204号公報
しかしながら、密閉タンク内に冷却媒体として加圧空気が封入される構成では、加圧空気の絶縁性がSFガスに比べて劣ることから、特許文献1に開示されている充電露出部を熱硬化性樹脂で覆う構成を採用したとしても、絶縁耐力を高めるには不十分である。
そこで、密閉タンクの大型化を抑制しながら、充電露出部と密閉タンクとの間の絶縁耐力を適切に高めることができる静止誘導機器を提供する。
実施形態に係る静止誘導機器は、誘導機器本体を収容すると共に、加圧空気を封入する導電性の密閉タンクと、外部と接続するために前記密閉タンクに設けられ、内側端子を有する接続端子部と、前記誘導機器本体から導出され、前記接続端子部の前記内側端子と電気的に接続されるリード線と、前記接続端子部の前記内側端子と前記リード線との接続部分である充電露出部の全体を球形状に覆い、前記充電露出部と同電位に設けられる電界緩和部材と、を備える。
第1実施形態を示し、変圧器の全体構成を概略的に示す縦断側面図 電界緩和部材及び周辺構成の縦断側面図 電界緩和部材の上方からの斜視図 電界緩和部材の下方からの斜視図 電界強度の解析地点を示す図 電界強度の解析結果を示す図 第2実施形態を示し、変圧器の全体構成を概略的に示す縦断側面図
以下、例えば高電圧受配電設備に用いられる変圧器に適用した複数の実施形態について図面を参照して説明する。複数の実施形態で共通する部分には同一符号を付して繰り返しの説明を省略することとする。
(1)第1実施形態
第1実施形態について図1から図6を参照して説明する。図1に示すように静止誘導機器としての変圧器1は、絶縁性の冷却媒体として加圧空気を用いる加圧空気用の変圧器であり、金属製の密閉タンク2内に、誘導機器本体としての変圧器本体3を収容すると共に冷却媒体として加圧空気を封入して構成されている。密閉タンク2は、接地電位とされている。変圧器本体3は、例えば巻線の全表面が樹脂又は絶縁材で覆われたモールド変圧器本体であり、その側面部3aからリード線4が導出されている。リード線4は、容易に屈曲可能なフレキシブルな特性を有し、図2に示すように、絶縁被覆4aを有するケーブルの先端から導体芯線5が露出され、その導体芯線5に接続端子6が接続されている。接続端子6には後述するボルトが挿通される挿通穴6aが形成されている。変圧器本体3は、絶縁支え7上に載置された形態で密閉タンク2内に設置されている。
密閉タンク2の上壁部2aには、外部と接続される接続端子部としてのブッシング8が取付けられている。ブッシング8は、SFガス用のT型ブッシングであり、密閉タンク2の外部に配置される外側本体部9と、密閉タンク2の内部に配置される内側本体部10とを有する。外側本体部9にはケーブルが接続される外側端子11が設けられている。図2に示すように、内側本体部10の先端(図2では下端)には内側端子12が設けられており、内側端子12の先端には後述するボルトが挿通される挿通穴12aが形成されている。ブッシング8の内側端子12とリード線4の接続端子6とが電気的に接続されることで、ブッシング8と変圧器本体3とが電気的に接続される。ブッシング8の内側端子12とリード線4の接続端子6との接続部分は、高電圧がかかる充電露出部13とされている。本実施形態では、充電露出部13の周囲に、金属を材料とする電界緩和部材14が装着されている。以下、電界緩和部材14及び周辺構成について説明する。
電界緩和部材14は、図3及び図4に示すように、横断平面が円形をなし、縦断側面が左右方向を長軸とすると共に上下方向を短軸とする楕円形をなす球面形状である。電界緩和部材14は、中空を有するように球面を構成する球面部材15と、電界緩和部材14をブッシング8に装着するための2個の同一形状の装着部材16とを有する。
球面部材15は、例えば板厚が3mmのアルミ板をヘラ絞りすることで加工成形されている。球面部材15の上部には円形の上側開口部17が形成されており、球面部材15の下部には円形の下側開口部18が形成されている。下側開口部18の円は上側開口部17の円よりも径大である。装着部材16は、それぞれ球面部材15と接合する接合部19と、ブッシング8の内側端子12と接触する上下方向に延びる接触面部20とを有するように加工成形されている。球面部材15の内部において接合部19が例えば溶接により接合されていることで、球面部材15と装着部材16とが電気的に一体化されている。尚、球面部材15と装着部材16とは、溶接に限らず、ろう付け、ねじ止め、かしめ等により一体化されていても良い。接触面部20の先端(図4では下端)には後述するボルトが挿通される挿通穴20aが形成されている。
電界緩和部材14は、以下に示す手順により密閉タンク2内においてブッシング8に装着され、充電露出部13の全体を覆うように設けられる。ブッシング8の内側端子12にリード線4の接続端子6が接続されていない状態で、ブッシング8の内側端子12を電界緩和部材14の上側開口部17に挿通して2個の接触面部20で挟みこむ。この状態から、リード線4の接続端子6の挿通穴6aと、接触面部20の挿通穴20aと、内側端子12の挿通穴12aとを位置決めし、これらの挿通穴6a、挿通穴20a、挿通穴12aにボルト21を挿通してナット22を用いてボルト締めすることで、リード線4の接続端子6と、電界緩和部材14の接触面部20と、ブッシング8の内側端子12とを電気的に接続すると共に物理的に固定する。このようにして電界緩和部材14が密閉タンク2内においてブッシング8に装着された状態では、電界緩和部材14はブッシング8の内側端子12と同電位となり、充電露出部13と同電位となる。
ここで、充電露出部13の周辺の電界強度について説明すると、電界強度は尖った部分や凸部で強くなる性質があることから、上記した構成では、充電露出部13においてボルト21やナット22の尖った部分で放電が集中する。この点に関し、本実施形態では、充電露出部13が電界緩和部材14により球面状に覆われており、その電界緩和部材14が充電露出部13と同電位となっているので、充電露出部13の形状が球面形状と等価となる。即ち、充電露出部13の形状が球面形状と等価となることで、充電露出部13の周辺の電界強度が緩和される。
図5及び図6は、電界緩和部材14を装着した場合と装着しない場合とにおける電界強度の解析結果を示す。解析地点の電界について、電界緩和部材14を装着しない場合と比較し、電界緩和部材14を装着することで充電露出部13の周辺の電界強度が緩和される解析結果が得られている。
以上に説明したように第1実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
変圧器1において、ブッシング8の内側端子12とリード線4との接続部分である充電露出部13の全体を球形状に覆い、内側端子12と同電位に設けられる電界緩和部材14を備える構成とした。充電露出部13が電界緩和部材14により球面状に覆われ、その電界緩和部材14が充電露出部13と同電位となっていることで、充電露出部13の形状が球面形状と等価となり、充電露出部13の周辺の電界強度が緩和することができる。これにより、充電露出部13と密閉タンク2との間で沿面絶縁距離を抑えることができ、密閉タンク2の大型化を抑制しながら、充電露出部13と密閉タンク2との間の絶縁耐力を適切に高めることができる。
又、電界緩和部材14を球面部材15と装着部材16とが接合されている構成とした。充電露出部13の全体を球形状に覆う球面部材15と、内側端子12に装着される装着部材16とを別々の部材とすることで、例えば要求される絶縁耐力を満たすように球面形状やサイズが異なる複数の球面部材15を用意する場合でも、要求される絶縁耐力に応じて球面部材15を選択すれば良く、複数の球面部材15に対して1つの装着部材16を共有することができる。又、ブッシング8としてSF6ガス用のブッシングを採用したことで、SF6ガス用のブッシングを加圧空気用の変圧器に流用することができる。
又、充電露出部13を熱硬化性樹脂で覆う従来構成とは異なり、充電露出部13を熱硬化性樹脂で覆わない構成としたので、例えば変圧器1を輸送等により移動させる際に充電露出部13に負荷がかかる事態を未然に回避することができる。即ち、充電露出部13を熱硬化性樹脂で覆う従来構成では、充電露出部13が熱硬化性樹脂により固着されているので、変圧器1を移動させる際に変圧器1が振動すると、その振動を吸収することができず、充電露出部13に負荷がかかる。これに対し、充電露出部13を熱硬化性樹脂で覆わない本実施形態の構成では、変圧器1を移動させる際に変圧器1が振動しても、その振動を吸収することができ、充電露出部13に負荷がかかる事態を未然に回避することができる。
(2)第2実施形態
第2実施形態について図7を参照して説明する。第2実施形態は、上記した第1実施形態に対し、ブッシングの形状が異なる。即ち、変圧器31において、密閉タンク2の上壁部2aには、ブッシング32が取付けられている。ブッシング32は、SFガス用のダイレクトモールドブッシングであり、密閉タンク2の外部に配置される外側本体部33の先端に外側端子34が設けられ、密閉タンク2の内部に配置される内側本体部35の先端に内側端子36が設けられている。ブッシング32の内側端子36とリード線4の接続端子6とが接続される態様は第1実施形態と同様であり、ブッシング32の内側端子36とリード線4の接続端子6との接続部分である充電露出部37の周囲に電界緩和部材14が装着されている構成も第1実施形態と同様である。第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(その他の実施形態)
静止誘導機器としては、変圧器に限らず、例えばリアクトルに適用することもできる。
ブッシングの種類は、例示したT型ブッシングやダイレクトモールドブッシング以外でも良い。又、ブッシングの個数は、複数であっても良い。
以上に説明した複数の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図面中、1,31は変圧器(静止誘導機器)、2は密閉タンク、3は変圧器本体(誘導機器本体)、4はリード線、8,32はブッシング(接続端子部)、12,36は内側端子、13,37は充電露出部、14は電界緩和部材、15は球面部材、16は装着部材である。

Claims (4)

  1. 誘導機器本体を収容すると共に、加圧空気を封入する導電性の密閉タンクと、
    外部と接続するために前記密閉タンクに設けられ、内側端子を有する接続端子部と、
    前記誘導機器本体から導出され、前記接続端子部の前記内側端子と電気的に接続されるリード線と、
    前記接続端子部の前記内側端子と前記リード線との接続部分である充電露出部の全体を球形状に覆い、前記充電露出部と同電位に設けられる電界緩和部材と、を備える静止誘導機器。
  2. 前記電界緩和部材は、前記充電露出部の全体を球形状に覆う球面部材と、前記内側端子に装着される装着部材とが接合されて構成されている請求項1に記載した静止誘導機器。
  3. 前記電界緩和部材は、下方から前記内側端子に装着される請求項2に記載した静止誘導機器。
  4. 前記接続端子部は、六フッ化硫黄ガス用の接続端子部である請求項1から3の何れか一項に記載した静止誘導機器。
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