JP7328688B2 - 副甲状腺細胞の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、副甲状腺細胞の誘導方法に関する。より詳細には、本発明は、多能性幹細胞からの副甲状腺細胞の分化誘導方法に関する。本発明はまた、当該方法により得られる副甲状腺細胞、該細胞を含有してなる移植療法剤に関する。
副甲状腺は甲状腺の背面に位置し、副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌し、カルシウムの調節や骨代謝に重要な役割を担っている。副甲状腺に関連する疾患としては、PTHが過剰に分泌されることにより起こる副甲状腺機能亢進症があり、骨粗鬆症患者や長期透析患者でよく認められる。一方、副甲状腺機能低下症は、PTH分泌低下により低カルシウム血症や高リン血症が惹起される疾患であり、頸部術後に最も頻発する合併症の1つである。
ヒトPTHのN末端断片であるPTH1-34(テリパラチド)は、全長ヒトPTHの作用をほぼ完全に補完し、骨形成を強力に促進することから、遺伝子組換えPTH1-34が2010年に骨粗鬆症治療薬として承認され、年々骨粗鬆症治療に占める割合は増加している。しかしながら、PTHは生体内で不安定なため間歇的投与を必要とし、コストが高い等の問題がある。
一方、再生医療の分野において、内分泌細胞の移植療法が試みられている。内分泌細胞は、(i)少量の細胞で機能する、(ii)評価系が確立している、(iii)分泌物のみを通過させ、細胞自体を通過させない培養バッグを用いることで、がん化の対策が可能、(iv)細胞の補充が容易、かつ(v)移植部位が限定されない、といった利点を有する。
しかしながら、副甲状腺細胞を生体から単離し、長期培養することは困難である。これまでに、ヒト胚性幹(ES)細胞からPTHを産生する副甲状腺細胞様の細胞を分化誘導したとの報告は一応あるが(非特許文献1及び2)、副甲状腺疾患に対する移植療法の材料としては全く満足できるものではない。また、人工多能性幹(iPS)細胞から副甲状腺細胞を分化誘導したとの報告は皆無である。
Bingham, E.L. et al., Stem Cell Dev., 19(7): 1071-1080 (2009) Woods, K.M. et al., Surgery, 148: 1186-1190 (2010)
したがって、本発明の目的は、iPS細胞をはじめとする多能性幹細胞から、移植療法の材料として用いるに足る高品質の副甲状腺細胞を提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、培地組成や培地交換のタイミングを工夫することにより、iPS細胞から、生体の副甲状腺と同等レベルでPTHを分泌する副甲状腺細胞を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]以下の工程:
(1)胚体内胚葉を、レチノイン酸の存在下で培養し、第3咽頭嚢様細胞へ誘導する工程、及び
(2)(1)で得られた細胞を、ソニックヘッジホッグ(SHH)作動薬の存在下で培養し、副甲状腺細胞へ誘導する工程
を含む、胚体内胚葉から副甲状腺細胞を作製する方法。
[2]工程(2)がSHHの共存下で行われる、[1]に記載の方法。
[3]工程(1)及び(2)が無血清培地中で行われる、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]工程(1)及び(2)がフィーダー細胞の非存在下で行われる、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]胚体内胚葉が、多能性幹細胞をアクチビンAの存在下で培養することにより得られたものである、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]以下の工程:
(A)多能性幹細胞を、アクチビンAの存在下で培養し、胚体内胚葉へ誘導する工程、及び
(B)工程(1)で得られた細胞を、[1]~[4]のいずれかに記載の方法により副甲状腺細胞へ誘導する工程
を含む、多能性幹細胞から副甲状腺細胞を作製する方法。
[7]工程(A)が、
(A1)多能性幹細胞を、アクチビンA及びWntシグナル活性化剤の存在下で培養する工程、及び
(A2)工程(A1)で得られた細胞を、アクチビンA及びBMPシグナル阻害剤の存在下で培養する工程
を含む、[6]に記載の方法。
[8]工程(A)が無血清培地中で行われる、[6]又は[7]に記載の方法。
[9]工程(A)がフィーダー細胞の非存在下で行われる、[6]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の方法により得られるin vitro副甲状腺細胞。
[11][10]に記載のin vitro副甲状腺細胞を含有してなる移植療法剤。
[12]副甲状腺の機能異常を伴う疾患の治療用である、[11]に記載の剤。
本発明によれば、生体の副甲状腺と同等レベルの高濃度でPTHを分泌する副甲状腺細胞を提供することができるので、副甲状腺の異常を伴う疾患に対する移植療法剤として有用であり得る。
参考例1において、種々の濃度のSHH及びSAGの存在下で胚体内胚葉を培養した場合の、副甲状腺前駆細胞への分化誘導を示す図である。副甲状腺細胞マーカーGcm2遺伝子の発現をRT-PCRで調べた。 本発明の多能性幹細胞から副甲状腺細胞を作製する方法の培養プロトコルを、従来法(Bingham protocol)及び参考例1の方法と比較した模式図である。 本発明により誘導された副甲状腺細胞のPTH産生能を示す図である。(上)本発明及びコントロール(分化誘導なし)の培養プロトコルを示す模式図である。(中)本発明の方法により分化誘導された副甲状腺細胞及びコントロール細胞の培養液中に分泌されたPTH濃度を示す。(下)本発明の方法により分化誘導された副甲状腺細胞におけるPTH遺伝子及びCaSR遺伝子のmRNAレベルでの発現を示す。 本発明の分化誘導法の各ステージにおける多能性マーカー(OCT4)及び種々の分化マーカー(FOXA2、TBX1、HOXA3、GCM2)の発現を示す図である。
本発明は、多能性幹細胞から副甲状腺細胞を作製する方法(以下、「本発明の方法」ともいう。)を提供する。当該方法は、
(I)多能性幹細胞から胚体内胚葉を作製する方法(以下、「本発明の方法(I)」ともいう。)、及び
(II)胚体内胚葉から副甲状腺細胞を作製する方法(以下、「本発明の方法(II)」ともいう。)を含む。
本明細書において「副甲状腺細胞」とは、PTHを分泌生産し、かつ副甲状腺細胞マーカーであるGcm2 (glial cell missing-2 homolog)遺伝子を少なくとも発現する細胞をいう。好ましくは、本発明における副甲状腺細胞は、さらにCaSR (calcium sensing receptor)、CCL21等の他の副甲状腺細胞マーカー遺伝子を発現する細胞である。
(I)多能性幹細胞から胚体内胚葉を作製する方法
本発明の方法(I)は、多能性幹細胞を、アクチビンAの存在下で培養し、胚体内胚葉へ誘導する工程を含む。ここで「胚体内胚葉(DE)」とは、副甲状腺や胸腺をはじめとする内胚葉系列の種々の組織、器官に分化し得る細胞であり、Sox17、FoxA2、CXCR4、CER1等の1以上の胚体内胚葉マーカー遺伝子を発現する細胞を意味する。
本発明の方法(I)に使用される多能性幹細胞(PSC)は、未分化状態を保持したまま増殖できる「自己複製能」と、三つの一次胚葉すべてに分化できる「分化多能性」とを有する、単離された未分化細胞であればいずれでもよい。ここで「単離された」とは、生体内(インビボ)から生体外(インビトロ)の状態におかれたことを意味し、必ずしも純化されている必要はない。例えば、単離された多能性幹細胞として、iPS細胞、ES細胞、胚性生殖(EG)細胞、胚性癌(EC)細胞、Muse細胞などが挙げられるが、好ましくはiPS細胞又はES細胞である。
本発明の方法(I)は、いずれかのPSCが樹立されているか、樹立可能である、任意の哺乳動物種において適用することができる。このような哺乳動物の例として、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ブタ、ウシ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ハムスター等が挙げられるが、好ましくはヒト、マウス、ラット、サル、イヌ等、より好ましくはヒト又はマウス、特に好ましくはヒトである。
(1)多能性幹細胞の作製
(i)ES細胞
多能性幹細胞は自体公知の方法により取得することができる。例えば、ES細胞の作製方法としては、哺乳動物の胚盤胞ステージにおける内部細胞塊を培養する方法(例えば、Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1994)を参照)、体細胞核移植によって作製された初期胚を培養する方法(Wilmut et al., Nature, 385, 810(1997);Cibelli et al.,Science, 280, 1256(1998);入谷明ら, 蛋白質核酸酵素, 44, 892(1999);Baguisi etal., Nature Biotechnology, 17, 456(1999);Wakayama et al., Nature, 394, 369(1998);Wakayama et al., Nature Genetics, 22, 127(1999);Wakayama et al., Proc.Natl. Acad. Sci. USA, 96, 14984(1999);RideoutIII et al., Nature Genetics, 24,109(2000))などが挙げられるが、これらに限定されない。また、ES細胞は、所定の機関より入手でき、さらには市販品を購入することもできる。例えば、ヒトES細胞株であるH1及びH9は、ウィスコンシン大学のWiCell Instituteより入手可能であり、KhES-1、KhES-2及びKhES-3は、京都大学再生医科学研究所より入手可能である。ES細胞を体細胞核移植により作製する場合、体細胞の種類や体細胞を採取するソースは下記iPS細胞作製の場合に準ずる。
(ii)iPS細胞
iPS細胞は、特定の初期化因子を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNA、またはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-coding RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、Kim JB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720、Maekawa M, et al. (2011), Nature. 474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。
上記初期化因子には、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸 (VPA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool(登録商標)(Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸性発現阻害剤など]、MEK阻害剤(例えば、PD184352、PD98059、U0126、SL327およびPD0325901)、Glycogen synthase kinase-3阻害剤(例えば、BioおよびCHIR99021)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-azacytidine)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX-01294 等の低分子阻害剤、Suv39hl、Suv39h2、SetDBlおよびG9aに対するsiRNAおよびshRNA等の核酸性発現阻害剤など)、L-channel calcium agonist (例えばBayk8644)、酪酸、TGFβ阻害剤またはALK5阻害剤(例えば、LY364947、SB431542、616453およびA-83-01)、p53阻害剤(例えばp53に対するsiRNAおよびshRNA)、ARID3A阻害剤(例えば、ARID3Aに対するsiRNAおよびshRNA)、miR-291-3p、miR-294、miR-295およびmir-302などのmiRNA、Wnt Signaling活性化剤(例えば、soluble Wnt3a)、神経ペプチドY、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2およびプロスタグランジンJ2)、hTERT、SV40LT、UTF1、IRX6、GLISl、PITX2、DMRTBl等の樹立効率を高めることを目的として用いられる因子も含まれており、本明細書においては、これらの樹立効率の改善目的にて用いられた因子についても初期化因子と別段の区別をしないものとする。
初期化因子は、タンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション、細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよい。
一方、DNAの形態の場合、例えば、ウイルス、プラスミド、人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウィルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター (Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体 (HAC)、酵母人工染色体 (YAC)、細菌人工染色体 (BAC、PAC) などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる (Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーター、エンハンサー、リボゾーム結合配列、ターミネーター、ポリアデニル化サイトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子 (例えばカナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列、緑色蛍光タンパク質 (GFP)、βグルクロニダーゼ (GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、初期化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する初期化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にloxP配列を有してもよい。
また、RNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies) を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell. 7:618-630)。
iPS細胞誘導のための培養液としては、例えば、10~15% FBSを含有するDMEM、DMEM/F12又はDME培養液(これらの培養液にはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)または市販の培養液 [例えば、マウスES細胞培養用培養液 (TX-WES培養液、トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培養液(霊長類ES/iPS細胞用培養液、リプロセル社)、無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社)] などが含まれる。
培養法の例としては、たとえば、37℃、5% CO2存在下にて、10% FBS含有DMEM又はDMEM/F12培養液上で体細胞と初期化因子とを接触させ約4~7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞 (たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等) 上にまきなおし、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培養液で培養し、該接触から約30~約45日又はそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。
あるいは、37℃、5% CO2存在下にて、フィーダー細胞 (たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等) 上で10% FBS含有DMEM培養液(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25~約30日又はそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009), PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。
この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。
上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100 cm2あたり約5×103~約5×106細胞の範囲である。
iPS細胞は、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。一方、体細胞が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、Oct3/4、Nanog)と連動して発現する薬剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として導入した場合は、対応する薬剤を含む培養液(選択培養液)で培養を行うことにより樹立したiPS細胞を選択することができる。また、マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場合は発色基質を加えることによって、iPS細胞を選択することができる。
(2)多能性幹細胞から胚体内胚葉(DE)への分化誘導
DE分化誘導用の基本培地としては、例えば、Neurobasal培地、Neural Progenitor Basal培地、NS-A培地、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、最小必須培地(MEM)、Eagle MEM培地、αMEM培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、DMEM/F12培地、ハム培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、及びこれらの混合培地などが挙げられるが、これらに限定されない。
培地は、血清含有培地又は無血清培地であり得る。好ましくは、無血清培地が使用され得る。無血清培地(SFM)とは、未処理又は未精製の血清をいずれも含まない培地を意味
し、従って、精製された血液由来成分又は動物組織由来成分(増殖因子など)を含有する培地が挙げられ得る。血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清など)の濃度は、0~20%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%、最も好ましくは0%(すなわち、無血清)であり得る。血清を用いる場合、血清濃度を徐々に増加させてもよい(例、0→0.2→2→5%)。SFMは任意の血清代替物を含んでよく、又は含まなくてもよい。血清代替物としては、例えば、アルブミン(例えば、脂質リッチアルブミン、組換えアルブミン等のアルブミン代替物、植物デンプン、デキストラン及びタンパク質加水分解物等)、トランスフェリン(又は他の鉄輸送体)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオグリセロールあるいはこれらの均等物などを適宜含有する物質が挙げられ得る。かかる血清代替物は、例えば、WO 98/30679に記載の方法により調製できる。また、より簡便にするため、市販のものを利用できる。かかる市販の物質としては、Knockout(商標)Serum Replacement(KSR)、Chemically-defined Lipid concentrated、及びGlutamax(Invitorogen)が挙げられる。
培地は、自体公知のその他の添加物を含んでもよい。当該添加物は特に限定されないが、例えば、成長因子(例えば、インスリンなど)、ポリアミン類(例えば、プトレシンなど)、ミネラル(例えば、セレン酸ナトリウムなど)、糖類(例えば、グルコースなど)、有機酸(例えば、ピルビン酸、乳酸など)、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸(NEAA)、L-グルタミンなど)、還元剤(例えば、2-メルカプトエタノールなど)、ビタミン類(例えば、アスコルビン酸、d-ビオチンなど)、ステロイド(例えば、[ベータ]-エストラジオール、プロゲステロンなど)、抗生物質(例えば、ストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシンなど)、緩衝剤(例えば、HEPESなど)、栄養添加物(例えば、B27 supplement、N2 supplement、StemPro-Nutrient Supplementなど)を挙げることができる。各添加物は自体公知の濃度範囲で含まれることが好ましい。
本発明の方法において、多能性幹細胞は、フィーダー細胞の存在下又は不在下にて培養されてよい。フィーダー細胞は特に限定されない;ESC、iPSCなどの多能性幹細胞の培養に使用するために自体公知のフィーダー細胞を使用することができる;例えば、線維芽細胞(マウス胚性線維芽細胞、マウス線維芽細胞株STOなど)が挙げられ得る。フィーダー細胞は、自体公知の方法、例えば、放射線(ガンマ線など)、抗癌剤(マイトマイシンCなど)での処理などにより不活性化されていることが好ましい。しかし、本発明の好ましい実施態様において、多能性幹細胞は、無フィーダー条件下で培養される。
多能性幹細胞からDEへの分化誘導用培地(培地A)は、基本培地にアクチビンAを必須の添加物として含有する。アクチビンAは、そのソースに関して限定を受けず、任意の哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、サル、ブタ、ラット、イヌなど)の細胞から単離及び精製されてよい。培養に供する多能性幹細胞と同種のアクチビンAを使用することが好ましい。アクチビンAは、化学的に合成されてもよく、無細胞翻訳系を用いて生化学的に合成されてもよく、或いは各タンパク質をコードする核酸を有する形質転換体から製造されてもよい。アクチビンAの組換え産物は市販されている。
培地Aに含まれるアクチビンAの濃度は、例えば、約15 ng/ml以上、好ましくは約50 ng/ml以上、より好ましくは約75 ng/ml以上、また、例えば、約500 ng/ml以下、好ましくは約300 ng/ml以下、より好ましくは200 ng/ml以下である。特に好ましくは、アクチビンAの濃度は約100 ng/mlである。
多能性幹細胞は、前方原始線条を介して胚体内胚葉へと分化する。アクチビンAは、Wntシグナルと組み合わせることで前方原始線条の分化を促進し得る。一方、前方原始線条から胚体内胚葉への分化に関しては、WntとBMPシグナルが抑制的に働き得る。
従って、好ましい一実施態様において、本発明の方法(I)は、以下の工程:
(A1)多能性幹細胞を、アクチビンA及びWntシグナル活性化剤の存在下で培養する工程、及び
(A2)工程(A1)で得られた細胞を、アクチビンA及びBMPシグナル阻害剤の存在下で培養する工程
を含むことができる。
工程(A1)と(A2)との間に、アクチビンの存在下で、かつWntシグナル活性化剤及びBMPシグナル阻害剤の非存在下で、細胞を培養する工程をさらに含んでもよい。
培地Aに添加されるWntシグナル活性化剤としては、Wntにより媒介されるシグナル伝達を増強し得る物質であれば特に制限はなく、例えば、Wntファミリーに属するタンパク質(例えば、Wnt1、Wnt3a、Wnt7a)、Wnt受容体、Wnt受容体アゴニスト、GSK3β阻害剤(例えば、6-Bromoindirubin-3'-oxime(BIO)、CHIR99021、Kenpaullone)等を挙げることができる。好ましくはCHIR99021である。Wntシグナル活性化剤の濃度は、薬剤の種類に応じて適宜選択することができるが、例えばCHIR99021の場合、例えば、約0.1 μM以上、好ましくは約0.2 μM以上、より好ましくは約0.5 μM以上、また、例えば、約10 μM以下、好ましくは約5 μM以下、より好ましくは約4 μM以下である。特に好ましくは、CHIR99021の濃度は約3 μMである。
培地Aに添加されるBMPシグナル阻害剤としては、BMP(bone morphogenetic protein)とBMP受容体(I型又はII型)との結合を介するBMPシグナル伝達を阻害する限り特に制限はなく、Noggin、chordin、follistatinなどのタンパク質、例えばDorsomorphin (すなわち、6-[4-(2-ピペリジン-1-イル-エトキシ)フェニル]-3-ピリジン-4-イル-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン)及びその誘導体が包含される(P. B. Yu et al. (2007), Circulation, 116:II_60; P. B. Yu et al. (2008), Nat. Chem. Biol., 4:33-41; J. Hao et al. (2008), PLoS ONE (www.plozone.org), 3(8):e2904)。Dorsomorphinは市販されており、例えばSigma-Aldrich などから入手可能である。この他に、BMP I型受容体キナーゼ阻害剤の具体例として、LDN-193189(すなわち、4-(6-(4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)キノリン)およびその誘導体を挙げることができる (Yu PB et al. Nat Med, 14: 1363-9, 2008)。LDN-193189は、例えばStemgent社から市販されている。BMPシグナル阻害剤の濃度は、薬剤の種類に応じて適宜選択することができるが、例えばDorsomorphinの場合、例えば、1~20 μM、好ましくは、1~10 μM、より好ましくは、1~4 μMが挙げられる。特に好ましくは、Dorsomorphinの濃度は約2 μMである。
多能性幹細胞をDEに誘導するために使用される培養器は、特に限定されないが、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、及びローラーボトルが挙げられ得る。培養器は細胞接着性であり得る。細胞接着性の培養器は、培養器表面の細胞への接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス(ECM)などの任意の細胞接着用基質でコートされたものであり得る。細胞接着用基質は、多能性幹細胞又はフィーダー細胞(用いられる場合)の接着を目的とする任意の物質であり得る。細胞接着用基質としては、コラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ポリ-L-オルニチン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、並びにそれらの混合物、例えばマトリゲル、並びに溶解細胞膜調製物(lysed cell membrane preparations)が挙げられる(Klimanskaya I et al 2005. Lancet 365:p1636-1641)。フィブロネクチン、ビトロネクチンは、多能性幹細胞からDEへの分化を促進することが知られている。
この培養において、多能性幹細胞を上記培養器上に播き、例えば、培地A中に約104~105細胞/cm2、好ましくは約5×104~1×105細胞/cm2、特に好ましくは、1×105細胞/cm2の細胞密度とし、1~10% CO2/99~90%大気の雰囲気下、インキュベーター中で約30~40℃、好ましくは約37℃で、3~14日間、好ましくは5~12日間、より好ましくは7~10日間培養する。
培地AにWntシグナル活性化剤を添加する場合(工程(A1))、例えば最初の1~2日間添加することができる。また、培地AにBMPシグナル阻害剤を添加する場合(工程(A2)、例えば、最後の2~4日間添加することができる。
DEへの分化の事実は、例えば、培養により得られた細胞における1以上の胚体内胚葉マーカー(例、Sox17、FoxA2、CXCR4、CER1等)の発現レベルを測定し、分化誘導前の多能性幹細胞のものと発現レベルを比較することにより確認できる。
(II)胚体内胚葉から副甲状腺細胞を作製する方法
本発明はまた、胚体内胚葉から副甲状腺細胞を作製する方法(本発明の方法(II))を提供する。当該方法は、以下の工程:
(1)胚体内胚葉を、レチノイン酸の存在下で培養し、第3咽頭嚢様細胞へ誘導する工程、及び
(2)(1)で得られた細胞を、ソニックヘッジホッグ(SHH)作動薬の存在下で培養し、副甲状腺細胞へ誘導する工程
を含む。
ここで「第3咽頭嚢様細胞」とは、胚体内胚葉から分化した副甲状腺又は胸腺に分化し得る細胞を意味し、Hoxa3陽性により特徴づけられる。当該細胞は、Pax1、Eya1、Pax9、Six1及びPbx1等の1以上の転写因子をさらに発現しているものが好ましい。
(1)胚体内胚葉から第3咽頭嚢様細胞(3rd PPE)への分化誘導
工程(1)では、胚体内胚葉(DE)(好ましくは、上記本発明の方法(I)により得られたDE)を、レチノイン酸の存在下で培養する。本培養に使用される培地の基本培地としては、上記本発明の方法(I)において使用するために例示した基本培地が同様に好ましく使用される。培地は、DEから3rd PPEへの分化に好ましくない影響を及ぼさない限り、本発明の方法(I)で使用するために例示した添加物と同じ添加物を含有してよい。
培地は、血清含有培地又は無血清培地(SFM)であり得る。好ましくは、無血清培地が使用され得る。血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清など)の濃度は、0~20%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%、最も好ましくは0%(すなわち無血清)であり得る。SFMは、KSRなど任意の血清代替物を含んでよく、又は含まなくともよい。
DEから3rd PPEへの分化誘導培地(培地B)は、添加物としてレチノイン酸を含有する。レチノイン酸は、レチノイン酸そのものでもよいし、天然のレチノイン酸が有する分化誘導機能を保持するレチノイン酸誘導体でもよい。レチノイン酸誘導体として、例えば、3-デヒドロレチノイン酸、4-[[(5,6,7,8-tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2-naphthalenyl)carbonyl]amino]-Benzoic acid(AM580)(Tamura K,et al.,Cell Differ.Dev.32:17-26(1990))、4-[(1E)-2-(5,6,7,8-tetrahydro-5,5,8,8-tetramethyl-2-naphthalenyl)-1-propen-1-yl]-Benzoic acid(TTNPB)(Strickland S,et al.,Cancer Res.43:5268-5272(1983))、およびTanenaga,K.et al.,Cancer Res.40:914-919(1980)に記載されている化合物、パルミチン酸レチノール、レチノール、レチナール、3-デヒドロレチノール、3-デヒドロレチナール等が挙げられる。
培養液に含まれるレチノイン酸またはその誘導体の濃度は、例えば、1 nM~10 μM、好ましくは、100 nM~5 μM、より好ましくは、250 nM~2 μMである。
BMPシグナルやWntシグナルの活性化は、3rd PPEから胸腺への分化を促進するので、培地Bには、Wntシグナル阻害剤やBMPシグナル阻害剤をさらに添加してもよい。Wntシグナル阻害剤としては、例えばIWR1、XAV939等が挙げられるがそれらに限定されない。また、BMPシグナル阻害剤としては、上記本発明の方法(I)において例示したものが同様に挙げられる。これらの阻害剤は、従来公知の使用濃度の範囲で適宜培地Bに添加され得る。
この培養において、自体公知の細胞非接着性又は低接着性培養器にDEを播種し、例えば、培地B中に約3~10×104細胞/mL、好ましくは約4~8×104細胞/mLの細胞密度とし、1~10%CO2/99~90%大気の雰囲気中、インキュベーター中で約30~40℃、好ましくは約37℃で、約2~7日間、好ましくは約3~5日間、より好ましくは約4日間培養する。
3rd PPEへの分化の事実は、例えば、RT-PCRなどによりHoxa3、Pax1、Eya1、Pax9、Six1及びPbx1等の1以上の転写因子の発現を分析することによって確認できる。
(2)第3咽頭嚢様細胞(3rd PPE)から副甲状腺細胞への分化誘導
工程(2)では、(1)で得られた3rd PPEを、SHH作動薬の存在下で培養する。本培養に使用される培地の基本培地としては、上記本発明の方法(I)において使用するために例示した基本培地が同様に好ましく使用される。培地は、3rd PPEから副甲状腺細胞への分化に好ましくない影響を及ぼさない限り、本発明の方法(I)で使用するために例示した添加物と同じ添加物を含有してよい。
培地は、血清含有培地又は無血清培地(SFM)であり得る。好ましくは、無血清培地が使用され得る。血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清など)の濃度は、0~20%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~2%、最も好ましくは0%(すなわち無血清)であり得る。SFMは、KSRなど任意の血清代替物を含んでよく、又は含まなくともよい。
3rd PPEから副甲状腺細胞への分化誘導培地(培地C)は、添加物としてSHH作動薬を含有する。SHH作動薬としては、Shh受容体アゴニスト、Purmorphamine、又はSAGなどが挙げられる。好ましくはSAGである。SHH作動薬の濃度は、薬剤の種類に応じて適宜選択することができるが、例えばSAGの場合、例えば、10 nM~50 μM、好ましくは、30 nM~100 μM、より好ましくは、100 nM~10 μMが挙げられる。
培地Cは、上記のSHH作動薬に加えて、さらにSHH自体やSHH受容体を含有してもよい。好ましくはSHHである。SHHの濃度は特に制限されないが、例えば、10~500 ng/ml、好ましくは30~300 ng/ml、より好ましくは50~200 ng/mlである。
この培養において、自体公知の細胞非接着性又は低接着性培養器中で、例えば、培地C中に約3~10×104細胞/mL、好ましくは約4~8×104細胞/mLの細胞密度とし、1~10%CO2/99~90%大気の雰囲気中、インキュベーター中で約30~40℃、好ましくは約37℃で、例えば約7日間以上、好ましくは約10日間以上、より好ましくは約14日間以上培養する。培養期間の上限は特に制限はないが、例えば約60日間以下(例、60、50、40、30日間)が挙げられる。
3rd PPEへの分化の事実は、例えば、RT-PCRなどによりHoxa3、Pax1、Eya1、Pax9、Six1及びPbx1等の1以上の転写因子の発現を分析することによって確認できる。
尚、本発明の方法(II)において、工程(2)に代えて、工程(1)で得られた3rd PPEを、BMP4シグナル活性化剤及びWntシグナル活性化剤の存在下で培養することにより、胸腺細胞へと分化誘導することができる。BMP4シグナル活性化剤としては、BMPにより媒介されるシグナル伝達経路を増強し得る物質であれば特に制限はないが、BMP4、BMP2もしくはBMP7等のBMP蛋白、GDF7等のGDF蛋白、抗BMP受容体抗体、又は、BMP部分ペプチドなどが挙げられる。好ましくは、BMP4である。また、Wntシグナル活性化剤としては、上記本発明の方法(I)において例示したのと同様のものを用いることができる。好ましくはWnt3Aである。
(III)in vitro副甲状腺細胞及びその用途
上記のようにしてin vitro培養により得られた副甲状腺細胞(本明細書において「本発明のin vitro副甲状腺細胞」ともいう。)は、生体中の副甲状腺細胞と同等レベル又はそれ以上の高濃度でPTHを分泌生産することができるので、従来のPTH製剤の代替品として、PTH製剤が治療上有効な種々の疾患、例えば、副甲状腺の機能異常を伴う疾患の治療の目的で、移植療法剤として使用することができる。副甲状腺細胞は、(1)各細胞が副甲状腺の完全な機能を有し、必要な細胞数が少ない;(2)機能を発現するのに副甲状腺細胞の立体的配置を必要としない;(3)副甲状腺細胞の自家移植が正常な副甲状腺機能を再構成することが実証されている;等の理由から、細胞移植療法に最適な細胞種の1つである。
副甲状腺の機能異常を伴う疾患としては、例えば、副甲状腺機能亢進症、特に骨粗鬆症や長期透析患者で認められる同疾患、あるいは、頸部術後に頻発する合併症として知られる副甲状腺機能低下症、放射線治療後、または悪性腫瘍浸潤、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病に伴う副甲状腺機能低下症、あるいは先天性副甲状腺機能低下症等が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明のin vitro副甲状腺細胞は、従来の自家移植療法と同様にして製剤化し、移植することができる。患者自身の体細胞から樹立したiPS細胞から分化誘導したin vitro副甲状腺細胞の自家移植の他、HLAクラスの一致するヒト由来のin vitro副甲状腺細胞の他家移植も可能である。
あるいは、免疫隔離膜(例、エチレン-ビニルアルコール共重合体製膜)を用いて作製したバッグ内に本発明のin vitro副甲状腺細胞を封入して、例えば、患者の皮下等に移植することにより、HLAクラスの異なるヒト由来の細胞も使用可能となる。
以下の実施例等により本発明をより具体的に説明するが、実施例等は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
参考例1 Bingham protocolの改良法
ヒトES細胞から副甲状腺細胞様の細胞を分化誘導したとの報告(Bingham protocol:非特許文献1)を改良した。ヒトiPS細胞にaccutaseを加えて単一細胞に分散し、マトリゲルでコートしたプレートに播種した。2% B27およびPenicillin/Streptomycinを含有するRPMI培地に100ng/mL アクチビンAおよび3μM CHIR99021を加えて、1日間培養した。2日目に、100ng/mL アクチビンAおよび2μM Dorsomorphinを含む培地に交換した。5日目に、1μM レチノイン酸および 2.5μM IWR-1を含む培地へ交換した。6日目に、100ng/mL Activin、1μM レチノイン酸および 2.5μM IWR1を含む培地に、0から250ng/mL SHHおよび0から500nM SAGを加えて4日間培養した。次に細胞を回収して、副甲状腺細胞マーカーGCM2遺伝子の発現をRT-PCRで調べた。SHHおよびSAGを加えた培養で、副甲状腺細胞マーカーGCM2遺伝子が発現していたことから、Bingham protocolを改良して、本発明の培養プロトコルを決定した(図1、図2)。
実施例1 本発明の方法により得られた副甲状腺細胞のPTH分泌生産能
本発明の培養プロトコルを示す(図3上)。単一細胞にしたヒトiPS細胞を、マトリゲルでコートしたプレートに播種した。2% B27およびPenicillin/Streptomycinを含有するRPMI培地に100ng/mL アクチビンAおよび3μM CHIR99021を加えて、1日間培養した。2日目に、100ng/mL アクチビンAを含む培地に交換し、4日間培養した。6日目に、100ng/mL アクチビンAおよび2μM Dorsomorphinを含む培地に交換した。9日目に、1μM レチノイン酸を含む培地に交換し、4日間培養した。13日目に、100ng/mL SHHおよび100nM SAGを加えて10日間培養した。次に、分化誘導された副甲状腺細胞がPTHを産生および分泌するかを確認した。分化誘導された副甲状腺細胞はPTHを培養液中に分泌し、その濃度は分化誘導していない細胞に比較して高値であった(図3中)。分化誘導された副甲状腺細胞はPTHおよびCaSRをmRNAレベルで発現していた(図3下)。
実施例2 分化誘導過程におけるマーカー遺伝子発現
本発明の培養プロトコルにおけるマーカー遺伝子の発現を示す(図4)。未分化細胞のマーカーであるOCT4は誘導の過程で減少し、それぞれ分化の過程に合致して胚体内胚葉のマーカーであるFOXA2、第3咽頭嚢様細胞のマーカーであるTBX1、HOXA3、副甲状腺細胞の分化に必須のGCM2が増加していた。培養分化プロトコルにおいて、発生過程と同様に各タイムポイントのマーカー遺伝子が発現していることを確認した。
本発明の方法により得られるin vitro副甲状腺細胞は、生体の副甲状腺と同等レベルの高濃度でPTHを分泌することができる。遺伝子組換えPTH製剤が骨粗鬆症治療薬と上市され、年々骨粗鬆症治療に占める割合は増加しているが、PTHは生体内で不安定なため間歇的投与を必要とし、コストが高い。一方、本発明のin vitro副甲状腺細胞は、原則一回の移植により、レシピエント患者体内でPTHを産生し、供給し続けることができるので、PTH製剤に対する代替療法としてきわめて有用である。

Claims (7)

  1. 以下の工程:
    (1)胚体内胚葉を、レチノイン酸の存在下で培養し、第3咽頭嚢様細胞へ誘導する工程、及び
    (2)(1)で得られた細胞を、SAGおよびSHHの存在下で培養し、副甲状腺細胞へ誘導する工程
    を含む、胚体内胚葉から副甲状腺細胞を作製する方法。
  2. 工程(1)及び(2)が無血清培地中で行われる、請求項1に記載の方法。
  3. 工程(1)及び(2)がフィーダー細胞の非存在下で行われる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 胚体内胚葉が、多能性幹細胞をアクチビンAの存在下で培養することにより得られたものである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  5. 以下の工程:
    (A1)多能性幹細胞を、アクチビンA及びCHIR99021の存在下で培養する工程、
    (A2)工程(A1)で得られた細胞を、アクチビンA及びDorsomorphinの存在下で培養する工程、
    及び(B)工程(A2)で得られた細胞を、請求項1~のいずれか1項に記載の方法により副甲状腺細胞へ誘導する工程
    を含む、多能性幹細胞から副甲状腺細胞を作製する方法。
  6. 工程(A)が無血清培地中で行われる、請求項に記載の方法。
  7. 工程(A)がフィーダー細胞の非存在下で行われる、請求項5または6に記載の方法。
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Surgery,2010年,Vol. 148,p. 1186-1190
中塚隆介,ヒトiPS 細胞を用いた副甲状腺細胞分化誘導同法の開発,関西医科大学雑誌,2019年12月28日,p. 38, 39,doi: 10.5361/jkmu.70.21

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