JP7328683B2 - 下水管又は上水管の補修方法 - Google Patents
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Description
このような築年数が経過した建物等については、そこに付随する下水管又は上水管も老朽化が進んでいる。しかも、該下水管又は上水管が鉄管・鋳鉄管等の金属でできている場合には、その金属配管の劣化の方が、該建物自体を構成する鉄筋コンクリートの鉄筋の劣化よりも通常は早い。
しかしながら、約30年以上前に設置された下水管や上水管は、殆どが鉄管・鋳鉄管等の金属製のものであり、また、30年以上前に設置されたものでなくても、約15年以上前に設置されたものには、鉄管・鋳鉄管等の金属が使用されているものの場合があり、それらは耐久性が低い。
下水管や上水管を補修する場合、欠損部分が多い(連続して複数ある)場合や、配管が埋設されていてその周辺を広く掘る必要がある場合(掘ってしまった場合)等では、ユニオン、フランジ、エルボ等の継手の間に存在する配管を、その配管ごと取り換えてしまう方がよい場合もある。
また、特許文献2には、動的粘弾性が特定の範囲にある管漏洩の内面修理用ライニング樹脂が記載されており、該ライニング樹脂として、「変性エポキシ樹脂を含有する主剤と変性脂環式ポリアミンを含有する硬化剤を用いる2液混合エポキシ樹脂」が例示されている。
しかしながら、配管の内面から補修する方法は極めて面倒であり、補修の対象となる配管が細い場合は、実質的に補修不可能である。
また、特許文献4には、FRP板に硬化性エポキシ樹脂組成物を塗布し、それを鋼管に巻き付けて接着させる露出配管の防食構造が記載されている。
また、特許文献5には、二液硬化型のエポキシ樹脂をパテ状にして得られた補修部材を塗布した加圧体を用いる補修方法が記載されている。
また、特許文献6には、配管補修用ゴムバンドを漏れ箇所に巻き付けた後、その上から、水と反応して硬化する物質を備えた補修テープを巻き付ける配管補修方法が記載されている。
しかしながら、下水管や上水管の補修は短時間で行わなくてはならず、その上、エポキシ樹脂は、柔軟性が低く、補修個所が長期にはもたず、要望に応えられていなかった。
(3)欠損部分の近傍の金属管の表面にプライマー層形成液を付与してプライマー層を形成する工程
(4)補修液を金属管の外側から、該金属管の欠損部分と該欠損部分の近傍に付与し、補修構造体を形成し、次いで該補修構造体を経時的に固化させる工程
(5)該補修構造体の形成後又は該補修構造体の固化後にトップコート層形成液を付与してトップコート層を形成する工程
を有する、既存の下水管又は上水管である金属管の欠損部分の補修方法であって、
該補修液は、少なくとも、メチルメタクリレート、重合開始剤、及び、チクソトロピー付与粉体を含有することを特徴とする補修方法を提供するものである。
少なくとも、メチルメタクリレート、重合開始剤、及び、チクソトロピー付与粉体を含有するものであることを特徴とする補修液を提供するものである。
その際、掘削して配管ごと交換するのでは、コストがかかり、また下水や上水の使用停止期間が長くなり住民に不便をもたらすので、欠損箇所(水漏れ箇所等)のみに注力した補修が有力となる。
本発明によれば、補修液を付与するだけでよいので、すなわち刷毛等が入るか又はスプレーのノズルを補修部分に近づけられればよいので、更には配管に接着シートを巻き付ける必要がないので、本発明は、通常(しばしば)密集して存在する又は壁の近くに存在する下水管や上水管の補修に、極めて良くマッチングしている。
一方、「(メタ)アクリレートの有する炭素間2重結合がラジカル重合をすること」を利用したアクリル系樹脂は、空気(酸素)による重合阻害があり、硬化速度が適度でなく、密着性にも劣ると考えられていた。特に、メチルメタクリレート(MMA)モノマーは、上記した性能に加え、水による影響(硬化性悪化等)を受け易いとも考えられていたため、下水管や上水管の補修には尚更不向きであると考えられていた。
その際の重合反応によって接着性を発現するが、ラジカル重合反応は一般に空気中の酸素によって阻害されるため、空気中では重合し難いと言われており、特に薄膜の場合は、重合条件によっては、全く重合反応が進まない場合もある。
従って、本発明の補修液を使用して配管を補修した場合、補修後の長年経時で配管に応力が加わったときであっても、接着部分が剥がれることがない。
従って、そもそもそのように十分に乾燥させるのであれば(そのことが前提であれば)、本発明において、MMAを主成分とする補修液の水に対する弱さは全く障害にならない。なお、硬化(重合)後のポリメチルメタクリレートは、水に対しては全く問題がなく耐水性は極めて高い。
従って、本発明によれば、MMAが有すると言われる弱点が表れず、それに対して柔軟性が高いと言う長所が表れて、エポキシ系樹脂の補修液より総合的に優れる。
このことより、本発明によれば、液体である補修液を使用するにもかかわらず、下水管では当然のこと、高い水圧がかかる上水管でも全く問題なく使用できることが分かった。
(3)欠損部分の近傍の金属管の表面にプライマー層形成液を付与してプライマー層を形成する工程
(4)補修液を金属管の外側から、該金属管の欠損部分と該欠損部分の近傍に付与し、補修構造体を形成し、次いで該補修構造体を経時的に固化させる工程
(5)該補修構造体の形成後又は該補修構造体の固化後にトップコート層形成液を付与してトップコート層を形成する工程
を有する、既存の下水管又は上水管である金属管の欠損部分の補修方法であって、
該補修液は、少なくとも、メチルメタクリレート、重合開始剤、及び、チクソトロピー付与粉体を含有することを特徴とする。
本発明の補修方法の補修の対象は、既存の下水管又は上水管である金属管である。本発明では該金属管を外部から補修する。ここで「金属管」とは、配管の外部表面が「主成分が金属の材質」でできているものである。
該補修の対象である該金属管としては、具体的には、鉄管;ねずみ鋳鉄管、ダクタイル鋳鉄管等の鋳鉄管;鉛管;等が挙げられる。
なお、本発明において、「下水管又は上水管」を単に「配管」と略記することがある。
本発明における後記する補修液は、鉄管、鋳鉄管等の金属管に対する接着性が良いので、(該金属管の老朽化が近年問題となっていることと相まって)、本発明の補修対象は金属管であることが必須である。
また、補修対象となる配管は、古いものは金属管であるので老朽化が進み易い;早い復旧が要求される;建物内の狭小な場所に設置されているため本発明の補修方法とのマッチング性が良い;配管の中でも専用管にも共用管にも適用できる;等の理由から、下水管又は上水管であることが必須である。
本発明によれば、刷毛等が入りさえすれば補修構造体が形成でき、接着シート・加圧体・補修テープ等のように配管に強く巻き付ける必要がないので、狭小な場所に設置されていることが多い配管の補修に好適である。
本発明において、補修液を用いて補修構造体12を形成する前に、金属でできた欠損部分等の下地(金属管表面11a等)に上にプライマー層13を形成しておくことが、強い接着性を得るために必須である(図2)。
該プライマー層13は、少なくとも、メチルメタクリレート、及び、ラジカル重合開始剤を含有するプライマー層形成液を付与して形成することが好ましい。該プライマー層形成液の組成成分は、後記する補修液と同様のものでもよいが、プライマー層13は薄くてもその機能を発揮し、層厚が薄い場合には一般にダレ難くなるので、ダレを防止するためのチクソトロピー付与粉体は含有させなくてもよい。
なお、付与方法(の好ましい方法)は、後記する補修液の付与方法と同様である。
本発明における補修液は、少なくとも、メチルメタクリレート(以下、単に「MMA」と略記することがある)、重合開始剤、及び、チクソトロピー付与粉体を含有する。
使用するMMAの純度等には特に限定はなく、汎用のもの(市販品等)が使用できる。
MMAは、炭素間の2重結合を有し、本発明では該2重結合が重合してポリメチルメタクリレートとなるが、前記した理由により、酸素(空気)が遮断されていない状況で、すなわちオープンの状況でMMAを重合させて、接着剤、補修材、充填剤(シーラント)等として使用されることは殆どない。
本発明の補修方法によれば、「配管周りの空間」と言うオープンの状況ではあるが、主にMMAの重合反応によって、配管の欠損部分を埋めたり該欠損部分の上部を補強したりして水漏れ等をなくすことができ、補修後の防錆等の役目も果たすことができる。
「MMA以外の重合性2重結合を有する化合物」(以下、括弧内を「その他重合性化合物」と略記することがある。)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(該アルキル基の炭素数6個以下が好ましい)、多官能(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本発明において、MMAは少なくともラジカル重合(リビングラジカル重合を含む)が主に進行し、「補修液」や「配管表面に構成した補修構造体」が固化(硬化)する。
本発明における補修液は、重合開始剤を必須成分として含有するが、該重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましく、熱重合開始剤でも光重合開始剤でもそれら両方でもよいが、重合効率の点から、(特に光照射が必須ではないので)作業効率の点から、熱重合開始剤であることがより好ましい。
更に、有機過酸化物の中でも、ベンゾイルパーオキサイド(以下、「BPO」と略記する)が、重合性(硬化性)、価格、汎用性等の点から最も好ましい。
本発明における補修液には、重合開始剤の外に、硬化促進剤を含有させることができる。硬化促進剤は、夏場等の気温が高いときは不要であるが、補修時の気温が低いときには、硬化速度を上げるために含有させることが好ましい。該硬化促進剤としては、特に限定はないが、重合開始剤のラジカル発生を促進する化合物、RAFT剤、適度な連鎖移動剤、硫黄(S)原子含有化合物等が挙げられる。
重合開始剤や硬化促進剤の量は、補修液の成分の混合開始から、配管の欠損箇所に付与して補修構造体を形成するまでの時間や、該補修構造体が固化するまでの時間が適切な範囲になるように決められる。該時間は、通常、平均気温25℃以上の夏場は5分以上15分以下であり、平均気温15℃以下の冬場は20分以上40分以下であり、これ以上経過すると作業性が劣るのと共に補修液(補修構造体)が十分に硬化しない場合がある。
本発明における補修液の必須成分であるチクソトロピー付与粉体は、補修液にチクソトロピーを与えるものである。具体的には、「ずり速度の大きい補修液付与時には粘度が低く、配管に付与してずり速度がゼロになると粘度が大きくなる性質」や、「ずり速度がゼロになった後の時間経過と共に粘度が上昇する性質」を与えるものである。
該チクソトロピー付与粉体の含有によって、良好な硬化性を与えることができる。また、図1、図2及び図3に示したように、配管の欠損部分及びその近傍部分は、補修液を付与する面が下又は横に向いている場合が多く、該チクソトロピー付与粉体は、補修液をそこに付与するときに、補修液のダレを防止したり、補修構造体やそれが固化した塗膜に厚みを与えたりすることができる。
本発明における補修液は、無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーとしては、限定はされないが、例えば、炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、シリカ、ガラス、酸化第二鉄、ケイ砂、カオリン、クレー、酸化チタン等が挙げられる。中でも、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ガラス、ケイ砂等が好ましい。
無機フィラーの平均粒径は、1μm~100μmが好ましく、3μm~30μmが特に好ましい。該無機フィラーとしては、若干のチクソトロピー付与効果があるものは排除されないが、チクソトロピー付与効果が大きいものは、上記「チクソトロピー付与粉体」となるので、該無機フィラーの形状は、限定はされないが、略球状、無定形等であることが好ましい。
該無機フィラーの含有によって、MMAの硬化性が向上する、補修構造体が硬化してなるものの機械的強度が向上する;欠損部分における硬化した補修構造体の密着性・接着性等の補修性が向上する;MMAのラジカル重合が空気中の酸素によって阻害(失活)されるのを抑制する;等の効果がある。
本発明における補修液は、実質的に希釈溶媒を含有しないことが好ましい。希釈溶媒を含有しないことで、MMAの硬化性が向上する;欠損部分における硬化した補修構造体の機械的強度が向上する;等の効果がある。
本発明における補修液は、着色剤(トナー)を含有していることが好ましい。着色剤(トナー)を含有していると、補修液の付与箇所が分かり易い、増量することでダレや付着ムラが分かり難くなる、見栄えが良くなる等の効果がある。
着色剤(トナー)の種類は、特に含有されず、公知の顔料が好適に使用される。上記効果を奏するならば、色は特に限定はなく白も含まれる。
本発明における補修液は、抗菌剤を含有させることも好ましい。抗菌剤を含有させることで、滑りや黴を排除できる。抗菌剤は特に含有されず、公知のものが使用される。
補修液の各成分の組成は、配管の温度(下地温度)が10℃~20℃のときは、以下であることが好ましい。
MMA 100質量部に対して、
その他重合性化合物 0~ 15質量部
重合開始剤 0.5~ 10質量部
硬化促進剤 0~ 10質量部
チクソトロピー付与粉体 2~ 10質量部
無機フィラー 40~160質量部
着色剤 0~ 40質量部
MMA 100質量部に対して、
その他重合性化合物 0~ 10質量部
重合開始剤 1~ 5質量部
硬化促進剤 2~ 8質量部
チクソトロピー付与粉体 4~ 8質量部
無機フィラー 80~150質量部
着色剤 15~ 30質量部
また、配管の温度(下地温度)が20℃~30℃のときは、重合開始剤及び/又は硬化促進剤の配合量を上記の60%にすることが望ましい。
補修液の各成分は、混合容器内で、手撹拌、ミキサー撹拌等で混合する。ミキサーで混合して補修液を得ることが好ましい。各成分の添加順には特に限定はない。その際、季節を勘案して、好ましくは気温・液温や、配管・下地等の温度を測定して、各成分の配合量(特に重合開始剤や硬化促進剤の含有量)を(微)調整することが好ましい。
本発明において、補修液を用いて補修構造体12を形成した後に、その上にトップコート層14を形成することが、補修構造体12が固化後の構造体(これをも単に「補修構造体」と略記することがある)を保護するために必須である(図2)。該トップコート層14は、「少なくとも、メチルメタクリレート、及び、ラジカル重合開始剤を含有するトップコート層形成液」を付与して形成することが好ましい。
該トップコート層形成液は、前記した補修液と同様のものでもよいが、トップコート層14は薄くてもその機能を発揮する点から、また層厚が薄い場合には一般にダレ難くなる点から、ダレを防止するためのチクソトロピー付与粉体は含有させなくてもよい。
なお、着色(着色剤の含有)や柔軟性は、前記した補修液より必要性が薄く、無色でもカチカチでもよい。また、トップコート層形成液は、チクソトロピー付与粉体を含有していることが好ましい。該成分比は、上記性能を出すために適宜調整される。
また、トップコート層は、硬度を高くして表面を保護するために必要であるが、補修構造体12の厚さに加えて、層厚を単に厚くすると言った効果もある。
本発明の補修方法の特に好ましい流れ(工程)を以下に示す。また、図3に、本発明の補修方法の工程の一例を示す概略縦断面図を示した。なお、図示していない必須工程もあるので、該必須工程を追加する、及び/又は、必要に応じ他の工程を追加することもできる。以下に示す具体的な工程の幾つかは、もし省略可能ならば省略することもできる。
すなわち、「該金属管の欠損部分と該欠損部分の近傍部分」(以下、「 」内を単に「欠損部分等」と略記する場合がある)に補修液を付与して補修構造体12を形成し、その後、放置、加熱、活性線照射等をして硬化させて硬化補修構造体を形成した後の「下水管又は上水管である金属管11」の縦断面を示す。
図1(a)は、欠損部分11bが比較的小さい場合の縦断面図であり、図1(b)は、欠損部分11bが比較的大きく、後述するエポキシ樹脂等の穴埋め材21で補強した場合の縦断面図である。穴埋め材21で補強した場合には、上記「欠損部分等」には、金属管表面11aの他にも該穴埋め材21の表面も含まれる。
なお、図1~3は、配管が横に通っているが、該配管は縦でも斜めでもよく(本発明の補修方法が適用でき)、また、図1~3は、配管の下を補修しているが、配管の上でも横でも屈曲部分でも補修可能であることは言うまでもない。
そこでまず、該配管を露出させるために、配管周囲の、天井、フローリング、パイプスペースの壁、床等を斫ったり解体したりする(図示せず)。
次いで、必要に応じ、以下の工程1を行うことが好ましい。
(1)上記欠損部分の近傍の金属管に付着している汚れ及び/又は錆を除去する工程
その後、金属管11や金属管表面11aを、自然乾燥、送風乾燥等で乾燥(水分を除去)させ、特に好ましくはトーチバーナー等で加熱して更に乾燥させることが望ましい。すなわち、補修すべき配管の外部は(好ましくは内部も)、補修液の付与に先立って好ましくは水洗し、送風機等で風を送って、補修対象である欠損部分11bと該欠損部分11bの近傍部分を含む金属管表面11aを乾燥させることが好ましい。
本発明は、更に、配管表面(金属管表面)の乾燥工程を有することが好ましい。
次いで、必要に応じ、以下の工程2を行うことが好ましい。
(2)上記欠損部分を穴埋め材で補強する工程
限定はされないが、上記した補修液を欠損部分等に付与して補修構造体12を形成するにあたり、養生テープ31を用いて、付与すべきでない部分を覆っておくことも好ましい(図3(d))。養生テープ31は公知のものが使用できる。
また、補修構造体12の他に、プライマー層13やトップコート層14等を設けるが、該養生テープ31は、上層の分だけずらして最初に2個以上貼っておくことも好ましい。また、該下層を塗布したら下層用の養生テープ31は完全硬化前に剥がして、上層用の養生テープ31を再度貼り直してもよい。
次いで、以下の工程3を行う。
(3)該欠損部分の近傍の金属管の表面にプライマー層形成液を付与してプライマー層を形成する工程
また、プライマー層の(好ましい)形成方法は、以下の補修構造体の(好ましい)形成方法と同様である。
次いで、以下の工程4を行う。
(4)補修液を金属管の外側から、該金属管の欠損部分と該欠損部分の近傍に付与し、補修構造体を形成し、次いで該補修構造体を経時的に固化させる工程
単位面積当たりの付与液の付与量は、700g/m2以上2500g/m2以下がより好ましく、1000g/m2以上2000g/m2以下が特に好ましい。
この範囲であると、好適な「欠損部分等の補修」が可能である。
その際、付与量を小さくした回に限っては、垂れ難くなるのでチクソトロピー付与の必要性が減少するため、チクソトロピー付与粉体の量を、前記含有量の0.1/10~5/10の範囲になるまで減量することも好ましい。
補修液を付与して補修構造体12を形成してからの固化時間は、下地温度が22℃以上であれば、5分以上20分以下が好ましく、7分以上15分以下が特に好ましい。また、下地温度が15~22℃であれば、7分以上25分以下が好ましく、10分以上20分以下が特に好ましい。また、下地温度が15℃以下であれば、10分以上30分以下が好ましく、15分以上25分以下が特に好ましい。
ここで、「固化時間」とは、補修液を付与して補修構造体12を形成してから、下水又は上水を流し始めてもよい、とするまでの時間を言う。
次いで、以下の工程5を行う。
(5)該補修構造体の形成後又は該補修構造体の固化後にトップコート層形成液を付与してトップコート層を形成する工程
また、トップコート層の(好ましい)形成方法は、上記の補修構造体の(好ましい)形成方法と同様である。
養生テープ31を使用した場合は、補修液を付与して補修構造体12を形成した後に、養生テープ31を剥離する(図3(f)、図4(f))。養生テープ31の剥離は、上記した固化の最中に行うことが好ましい。完全に固化した後だと、養生テープ31を剥離し難い場合、硬化した補修構造体12の縁が乱れる場合等がある。
MMAを含有する補修液を、例えば、浴室、通路、便所等の床の補修に使用する場合があったとしても、その場合、床の補修では、使用不可期間が長くても住人に許容される。
しかし、下水を流す便器等は使用不可期間が長いと極めて問題であり住人に許容されない。上水も使用不可期間が長いことは住人に許容され難い。従って、本発明のMMAを含有する補修方法は、下水管又は上水管を対象としたとき、特に下水管を対象にしたときに、上記した「固化時間を含む補修時間が短い」と言う効果を特に発揮する。
また、本発明においては、補修構造体12の下にプライマー層13を設け、補修構造体12の上若しくは最表面にトップコート層14を設ける。
図2に、欠損部分等(欠損部分11bと該欠損部分11bの近傍部分)に、プライマー層13、補修構造体12及びトップコート層14を形成したときの金属管11の概略縦断面図を示す。
本発明の補修方法で補修をすると、最終的に、硬化した補修構造体12が形成され、上記した通り、該補修構造体の下に更にプライマー層13が形成され、該補修構造体の上に更にトップコート層14が形成される。
図2に示したように、下から順に、プライマー層13、補修構造体12及びトップコート層14が形成されている形態であり、その場合、該プライマー層13と該補修構造体12と該トップコート層14の合計付着量は、700g/m2以上5000g/m2以下であることが好ましい。該3層の合計付着量は、より好ましくは1000g/m2以上4000g/m2以下であり、特に好ましくは1500g/m2以上3000g/m2以下である。
本発明における補修液を用いて補修すれば、プライマー層13、補修構造体12及びトップコート層14の3層を形成させても、前記した補修構造体12のみの固化時間の(3層分である)約3倍あれば十分である。すなわち、下水若しくは上水の使用不可期間は、例えば約30分~約60分である。
現場で各成分を混合して補修液を調製する時間、その他の準備時間を考慮しても1日で終了するので、上下水管関係(特に下水管関係)の補修には最適である。
通常下水管には水圧がかからないが、上水管には水圧がかかる。本発明の補修方法を用いれば、補修部分が十分高い水圧に耐えるので、特に水圧のかかる上水管に好適である。
本発明の補修方法は、すなわち本発明の補修液(固化した補修構造体)は、下水管と上水管の両方の補修に共通して好適に適用可能である。
このように、本発明によれば、液体である補修液を使用するにもかかわらず、下水管では当然のこと、高い水圧がかかる上水管でも全く問題なく使用できる。
「本発明の補修方法を使用して補修してなるものであることを特徴とする補修下水金属管又は補修上水金属管」は、補修部分の耐久性に優れている。本発明は、上記の補修方法を使用して補修することを特徴とする補修下水金属管又は補修上水金属管の製造方法でもある。
前記組成の補修液の各成分の1種又は2種以上(全成分である場合も含む)は、本発明用に現場で混合するために、単身で別々に販売・譲渡することができる。例えば、重合開始剤は、前もって配合しておくと、熱分解したり、容器内のMMAを重合させたりするため、単身で保管、販売、譲渡することが好ましい。混合して本発明の補修液になれば、本発明の範囲内に入る。
トイレの下水管の専用部が共用部に接続している付近の欠損部分11bを一箇所だけ補修した(図4(a))。補修が必要な下水管は、約40年前に設置された鋳鉄管であり、欠損部分11bは比較的大きかった。
ヘラとブラシを用いて、手で該欠損部分11bの錆・汚れ11cを除去した(ケレンを行った)(図4(b))。
次いで、送風機で風を送り欠損部分等(金属管11の欠損部分11bと該欠損部分11bの近傍部分)を乾燥させ、トーチバーナーをあてることで更に乾燥させた(図4(c))。
欠損部分等が冷却しほぼ一定温度になったところで、補修すべき欠損部分等の下地の温度と気温を測定したところ、何れも22℃であった。
該プライマー層形成液を調製後、直ちに、上記エポキシ樹脂21の上面も含んで該欠損部分等の上面に刷毛を用いて付与してプライマー層13を形成した。
プライマー層13の付着量は、200g/m2であった。チクソトロピー付与粉体を含有していなかったが、層厚が薄いので液はダレなかった。
MMA 100質量部
BPO(重合開始剤) 2質量部
硬化促進剤 2質量部
セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)(チクソトロピー付与粉体) 5質量部
ケイ砂(無機フィラー) 100質量部
着色剤 15質量部
補修構造体12は、補修液を4回に分けて付与することによって形成させた。1回目の付着量は400g/m2、2回目から4回目までの付着量はそれぞれ300g/m2として、合計で、1300g/m2の補修構造体12を形成させた。1回の付与は、刷毛を用いて、ダレない程度に、できるだけ厚く付与するようにした。
補修液を付与後、固化中に、補修構造体12の表面には、前記したパラフィン現象が見られた。
固化進行中に養生テープ31を剥離した。最後に流水テストをして補修を完了させた(図4(f))。
また、ウレタン系樹脂を使用した場合には、プライマー層、主層(中塗り)、トップコート層の3層の形成に3日間かかり、上水管や下水管の補修には適していなかった。
実施例1とほぼ同様な状況の配管に対して、プライマー層13を形成させなかった以外は、実施例1と同様にして、補修構造体12を形成し固化させて金属管11を補修した。
その結果、補修構造体12は欠損部分等に良好に接着(密着)せず、長期間が経時すると剥げてくる恐れがあった。
実施例1とほぼ同様な状況の配管に対して、トップコート層14を形成させなかった以外は、実施例1と同様にして、補修構造体12を形成し固化させて金属管11を補修した。
その結果、補修構造体12は、表面の硬度に劣り表面保護の性能が悪くなった。また、全体の層厚も薄くなり、外観も良くなかった。
実施例1の補修液に代えて、2液性の熱硬化型エポキシ樹脂(コニシ株式会社製、E380)を用いた以外は、実施例1と同様にして、補修構造体12を形成し固化させて金属管11を補修した。
その結果、欠損部分等の補修箇所は約3年しか持たず、該補修は一時的なものに過ぎなかった。また、作業性が悪かった。
実施例1の補修方法に代えて、現在汎用されている市販の接着シート(補修シート)(株式会社折原製作所製、「マホータイ」(登録商標))を使用して補修をした。
図6(a)(b)(c)に示したような狭小の場所であったので、作業するための手や該接着シートを、空隙に差し入れることができず、密集した場所(近接した場所)では、該接着シートを該配管に、強く巻き付けることができず、作業が極めて難かった。
図5に示したような方法で、上水管で水圧試験を行った。
まず、欠損部分を模してサンダーで切り込みを入れ(図5(X))、金属管に付着している汚れ及び/又は錆を除去した(ケレンを行った)(工程1)(図5(a))
次いで、欠損部分を穴埋め材で補強し(図5(b)工程2)、上記実施例1で用いたプライマー層形成液を付与してプライマー層を形成した(図5(c)工程3)。
その結果、0.3MPaで問題がなく(図5(f))、1.0MPaでも水漏れが起らず問題がなかった(図5(f’))。通常、上水の水圧で1週間、水が漏れなければ半永久的に漏れないので、1.0MPaの水圧に1週間耐えれば十分である。
以上より、本発明の補修方法は、下水管は勿論のこと上水管にも適用できることが分かった。
本発明の補修方法は、建築分野、下水管・上水管の設置・管理点検・修理(補修)・清掃分野、建物の管理分野、接着剤・シーラント・補修材等の化学品製造分野等において広く利用されるものである。
11a 金属管表面
11b 欠損部分
11c 錆・汚れ
12 補修構造体
13 プライマー層
14 トップコート層
21 穴埋め材
31 養生テープ
Claims (13)
- 以下の工程3、工程4、及び、工程5
(3)欠損部分の近傍の金属管の表面にプライマー層形成液を付与してプライマー層を形成する工程
(4)補修液を、鉄管又は鋳鉄管である金属管の外側から、該金属管の欠損部分と該欠損部分の近傍に、接着シートを巻き付けて補修することなく、刷毛若しくはスプレー装置を用いて付与する方法、又は、ぶちまけ付与する方法で補修構造体を形成し、次いで該補修構造体を経時的に固化させる工程
(5)該補修構造体の形成後又は該補修構造体の固化後にトップコート層形成液を付与してトップコート層を形成する工程
を有する、水圧がかかる既存の上水管である金属管の欠損部分の補修方法であって、
該補修液は、少なくとも、メチルメタクリレート、重合開始剤、及び、チクソトロピー付与粉体を含有することを特徴とする補修方法。 - 更に、以下の工程1を有する請求項1に記載の補修方法。
(1)上記欠損部分の近傍の金属管に付着している汚れ及び/又は錆を除去する工程 - 更に、以下の工程2を有する請求項1又は請求項2に記載の補修方法。
(2)上記欠損部分を穴埋め材で補強する工程 - 上記既存の上水管が、0.3MPa(0.3kgf/cm 2 )以上の水圧がかかる上水管である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の補修方法。
- 上記重合開始剤が有機過酸化物である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の補修方法。
- 上記補修液が、更に、無機フィラーを含有する請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の補修方法。
- 上記補修液が、実質的に希釈溶媒を含有しない請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の補修方法。
- 上記補修液を、500g/m2以上3000g/m2以下で、該金属管の欠損部分と該欠損部分の近傍部分に付与して補修構造体を形成する請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の補修方法。
- 上記プライマー層形成液が、少なくとも、メチルメタクリレート、及び、ラジカル重合開始剤を含有する請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の補修方法。
- 上記トップコート層形成液が、少なくとも、メチルメタクリレート、及び、ラジカル重合開始剤を含有する請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の補修方法。
- 上記プライマー層、上記補修構造体、及び、上記トップコート層の合計付着量が、700g/m2以上5000g/m2以下である請求項1ないし請求項10の何れかの請求項に記載の補修方法。
- 請求項1ないし請求項11の何れかの請求項に記載の補修方法を使用して補修することを特徴とする補修上水金属管の製造方法。
- 請求項1ないし請求項11の何れかの請求項に記載の補修方法に使用されるためのものであり、
少なくとも、メチルメタクリレート、重合開始剤、及び、チクソトロピー付与粉体を含有するものであることを特徴とする補修液。
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