JP7328472B1 - 銅合金板材、および銅合金板材を用いて作製された絞り加工部品 - Google Patents

銅合金板材、および銅合金板材を用いて作製された絞り加工部品 Download PDF

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Abstract

高強度と高導電率を有しながら、絞り加工、特に小型化の部品を想定した難形状へのより厳しい加工条件で絞り加工を行った場合であっても、優れた絞り加工性を有する銅合金板材、および銅合金板材を用いて作製された絞り加工部品を提供する。銅合金板材は、NiとCoのうちの少なくとも一方の成分を、合計で1.0~5.0質量%、およびSiを0.2~1.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有し、EBSD法によって測定される、R方位{1 2 4}<2 1 -1>を有する結晶粒の面積率が20~50%であり、かつ平均KAM値が0.5~2.0°である。

Description

本発明は、銅合金板材、および銅合金板材を用いて作製された絞り加工部品に関する。
銅合金板材は、例えば電子機器用、またはバッテリーおよび自動車車載用のコネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット、シールドケース、シールドキャン、カメラモジュール、液晶や有機ELディスプレイの放熱部品などの各種部品を製造するための素材として使用されている。このような各種部品は、素材に、曲げ加工、エッチング加工、絞り加工などの加工方法を施すことによって製造される。
それぞれの加工方法に適した銅合金板材が検討されており、結晶方位に着目することで所望の特性と加工性を有する銅合金板材が知られている。
例えば、特許文献1では、曲げ加工について検討がされており、結晶の局所的な方位差を示すKAM値およびその標準偏差を制御することで、曲げ加工性、疲労特性、0.2%耐力および導電性を向上させた電子材料用銅合金を開示している。
特許文献2は、エッチング加工について検討がされており、S1方位{2 4 1}<1 1 2>からの所定の結晶方位差、S2方位{2 3 1}<1 2 4>からの所定の結晶方位差の少なくとも一方の条件を満たす領域の面積と、Brass方位{0 1 1}<2 1 1>からの所定の結晶方位差である領域の面積の比を所定の数値範囲になるように結晶配向にコントロールすることによって、強度、導電性、曲げ加工性などの特性バランスを良好のまま維持しつつ、エッチングファクタを改善した銅合金板材を開示している。
特許文献3は、Goss方位密度{1 1 0}<0 0 1>、KAMの平均値、および結晶粒界の全粒界長さに対する特殊粒界の全特殊粒界長さの比率の適正化を図ることで、優れた耐疲労特性および深絞り加工性を有するCu-Ni-Si系銅合金板を開示している。
特開2018-162510号公報 特開2021-110038号公報 特開2012-122114号公報
ところで近年、電子機器や自動車に搭載される各種部品は、小型化する傾向があり、小型化した部品には、より高い剛性(強度)が求められる。部品の剛性(強度)を向上させるための手段としては、例えば絞り加工を適用することによって、一体成形品として部品を製造することが有用である。また、絞り加工部品の素材として用いるのに好適な銅合金板材としては、優れた熱伝導性(導電性)、高い剛性(強度)に加えて、優れた絞り加工性を具備することが求められる。
特許文献1に記載の電子材料用銅合金は、より多くの歪が導入された状態で、溶体化処理を行なう工程を含んでいる。そのため得られた銅合金は、絞り加工性を向上させるための結晶方位制御が困難であると推定される。加えて、特許文献1は、絞り加工性について何ら教示も示唆もしていない。
特許文献2に記載の銅合金板材は、エッチング性の改善を課題としているものであり、絞り加工について教示や示唆を与えるものではない。特許文献2は、エッチングファクタを向上させる作用を呈する結晶配向を得るために、最終的な冷間圧延の圧延率を18%以上と高い加工率で行なっていることから、絞り加工性については劣るものと考えられる。
特許文献3に記載のCu-Ni-Si系銅合金板は、電子部品の小型化及び薄肉化に伴って、優れた深絞り加工性を有することが記載されているものの、ここで記載されている深絞り加工性の評価は、エリクセン社製試験機を用い、銅合金板から採取したブランク材に対して、直径が10mmと大きい球状の先端を有するポンチ(パンチ)を押し付けてカップを作製した比較的緩い絞り加工条件で測定したときのものであって、小型化の部品を想定した難形状(例えば絞り比が大きい場合やパンチ肩の曲率半径Rが小さい場合など)へのより厳しい加工条件で絞り加工したときの評価については検討がなされていないという問題がある。また、特許文献3には、順送プレス加工時に絞り加工を行ったときの製品(部品)の歩留りの向上についても着目していないという問題もある。
したがって本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高強度と高導電率を有しながら、絞り加工、特に小型化の部品を想定した難形状へのより厳しい加工条件で絞り加工を行った場合であっても、優れた絞り加工性を有する銅合金板材、および銅合金板材を用いて作製された絞り加工部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、NiとCoのうち少なくとも一方の成分を1.00~5.00質量%、およびSiを0.20~1.50質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金板材において、R方位{1 2 4}<2 1 -1>を有する結晶粒の面積率および平均KAM値を制御することで、高強度および高導電率を有しつつ、特に厳しい加工条件で絞り加工を行った場合であっても、優れた絞り加工性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)NiとCoのうちの少なくとも一方の成分を、合計で1.00~5.00質量%、およびSiを0.20~1.50質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有し、EBSD法によって測定される、R方位{1 2 4}<2 1 -1>を有する結晶粒の面積率が20~50%であり、かつ平均KAM値が0.5~2.0°である銅合金板材。
(2)EBSD法で測定されるCube方位{1 0 0}<0 0 1>を有する結晶粒の面積率が10%以下である、上記(1)に記載の銅合金板材。
(3)Mg、Sn、Zn、Cr、Zr、およびFeからなる群から選択される少なくとも1種の成分を合計で0.10~1.00質量%含有する、上記(1)または(2)に記載の銅合金板材。
(4)絞り加工部品を作製するための素材として用いる上記(1)~(3)のいずれかに記載の銅合金板材。
(5)上記(1)~(3)のいずれかに記載の銅合金板材を用いて作製された絞り加工部品。
本発明によれば、高強度と高導電率を有しながら、絞り加工、特に小型化の部品を想定した難形状へのより厳しい加工条件で絞り加工を行った場合であっても、優れた絞り加工性を有する銅合金板材、および銅合金板材を用いて作製された絞り加工部品を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
<銅合金板材の合金組成>
本実施形態に係る銅合金板材は、NiとCoのうちの少なくとも一方の成分を1.00~5.00質量%、およびSiを0.20~1.50質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金からなる。
[NiとCoのうちの少なくとも一方の成分:合計で1.00~5.00質量%]
Ni(ニッケル)とCo(コバルト)は、ともに銅合金板材の強度を高める作用を有する重要な成分である。この作用を発揮させるために、NiとCoのうち少なくとも一方の含有量は、これらの合計で1.00質量%以上とする必要がある。また、前記含有量が合計で5.00質量%以下であれば、導電率をさほど低下させることなく、電子部品の材料として適した導電率を維持することができる。このため、NiとCoのうちの少なくとも一方の成分の含有量は、合計で1.00~5.00質量%とする。なお、NiとCoのうちの少なくとも一方の成分の含有量は、高強度と高導電率の双方をバランスよく両立させる観点から、合計で1.50~4.00質量%とすることが好ましく、より好ましくは、合計で2.00~3.50質量%とする。
[Si:0.20~1.50質量%]
Si(ケイ素)は、銅合金板材の強度を高める作用を有する重要な成分である。この作用を発揮させるために、Siの含有量は、0.20質量%以上とする必要がある。また、Si含有量が1.50質量%以下であれば、Si成分を起点とするクラック発生のおそれがなく、導電率をさほど低下させることなく、電子部品の材料として適した導電率を維持することができる。このため、Si含有量は、0.20~1.50質量%とする。なお、Si含有量は、高強度と高導電率の双方をバランスよく両立させる観点から、0.40~1.00質量%であることが好ましく、より好ましくは0.50~0.80質量%とする。
[残部:Cuおよび不可避不純物]
銅合金板材を構成する銅合金は、上記した成分以外は、残部がCu(銅)および不可避不純物である合金組成を有する。なお、ここでいう「不可避不純物」とは、おおむね金属製品において、原料中に存在するものや、製造工程において不可避的に混入するもので、本来は不要なものであるが微量であり、金属製品の特性に影響を及ぼさないため許容されている不純物である。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、S(硫黄)、C(炭素)、O(酸素)などの非金属元素、およびSb(アンチモン)などの金属元素などが挙げられる。不可避不純物は、含有量が多いと導電率を低下させる要因にもなりうるため、導電率の低下を考慮して不可避不純物の含有量を抑制することが好ましい。なお、不可避不純物の銅合金全体に対する含有量の上限は、例えば上記成分ごとに0.05質量%、上記成分の総量で0.20質量%とすることができる。
[任意添加元素]
本実施形態の銅合金板材は、主成分のCuに加え、NiとCoのうちの少なくとも一方の成分とSiを必須含有成分とするが、必要に応じて、任意添加成分として、さらにMg、Sn、Zn、Cr、Zr、およびFeからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を、合計で0.10~1.00質量%含有することができる。
〔Mg:0.10~0.30質量%〕
Mg(マグネシウム)は、耐応力緩和特性を向上させる作用を有する成分である。この作用を発揮させるには、Mg含有量を0.10質量%以上とすることが好ましい。一方、Mg含有量が0.30質量%よりも多いと、導電率が低下する傾向があるため、Mg含有量は、0.10~0.30質量%とすることが好ましい。
〔Sn:0.10~0.30質量%〕
Sn(スズ)は、耐応力緩和特性を向上させる作用を有する成分である。この作用を発揮させるには、Sn含有量を0.10質量%以上とすることが好ましい。一方、Sn含有量が0.30質量%よりも多いと、導電率が低下する傾向があるため、Sn含有量は、0.10~0.30質量%とすることが好ましい。
〔Zn:0.10~0.50質量%〕
Zn(亜鉛)は、Snめっきの密着性やマイグレーション特性を改善する作用を有する成分である。この作用を発揮させるには、Zn含有量を0.10質量%以上とすることが好ましい。一方、Zn含有量が0.50質量%よりも多いと、導電率が低下する傾向があるため、Zn含有量は、0.10~0.50質量%とすることが好ましい。
〔Cr:0.05~0.30質量%〕
Cr(クロム)は、溶体化熱処理における結晶粒の粗大化を抑制し、粒径の制御を容易にする作用を有する成分である。この作用を発揮させるには、Cr含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Cr含有量が0.30質量%を超えると、鋳造時にCrを含有する粗大な晶出物を生じて、クラックの起点が形成され易くなるため、Cr含有量は、0.05~0.30質量%とすることが好ましい。
〔Zr:0.05~0.20質量%〕
Zr(ジルコニウム)は、材料中に固溶し、材料の再結晶温度を上昇させることで溶体化熱処理における再結晶粒の成長を抑制する作用を有する成分である。この作用を発揮させるには、Zr含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Zr含有量が0.20質量%を超えると、鋳造時に粗大な晶出物を生じてプレス加工時の破断の起点になるおそれが高まることから、Zr含有量は、0.05~0.20質量%とすることが好ましい。
〔Fe:0.05~0.30質量%〕
Fe(鉄)は、溶体化熱処理における結晶粒の粗大化を抑制し、粒径の制御を容易にする作用を有する成分である。この作用を発揮させるには、Fe含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。一方、Fe含有量が0.30質量%を超えると、鋳造時にFeを含有する粗大な晶出物を生じて、クラックの起点が形成され易くなるため、Fe含有量は、0.05~0.30質量%とすることが好ましい。
<結晶方位>
本実施形態に係る銅合金板材は、銅合金を構成する結晶粒において、特定の結晶方位を制御することによって、絞り加工性を向上させたものである。具体的には、本実施形態に係る銅合金板材は、EBSD法によって測定される、R方位{1 2 4}<2 1 -1>を有する結晶粒の面積率が20~50%であり、かつ平均KAM値が0.5~2.0°である。これらが同時に満たされることにより、相乗効果により銅合金板材の絞り加工性が大きく向上し、例えば小さな曲率半径を含む、難形状の厳しい加工条件の場合においても、優れた精度で絞り加工を行うことが可能となるため、有用性が飛躍的に向上する。
なお本明細書における結晶方位の表示方法は、銅合金板材の圧延方向(RD)をX軸、板幅方向(TD)をY軸、圧延法線方向(ND)をZ軸の3次元直交座標系を取り、銅合金板材中の各領域がZ軸に垂直な(すなわち圧延方向に平行な)結晶面の指数(h k l)と、X軸に平行な結晶方向の指数[u v w]とを用いて、(h k l)[u v w]の形で示す。また(1 3 2)[6 -4 3]と(2 3 1)[3 -4 6]などのように、銅合金の立方晶の対称性のもとで等価な方位については、ファミリーを表すカッコ記号を使用し、{h k l}<u v w>と示す。
[EBSD(電子後方散乱回折)法]
「EBSD」とは、Electron BackScatter Diffractionの略で、走査型電子顕微鏡(SEM)内で試料に電子線を照射したときに生じる反射電子菊池線回折を利用した結晶方位解析技術のことである。
本実施形態におけるEBSD法による測定は、電解研磨した銅合金板材の表面に対し、ステップサイズ0.5μmで、1000μm×1000μmの面積に対して行なった。測定面は、圧延平行断面でも良く、測定面積は圧延平行方向に1000μm×板厚分としても良い。断面の場合は、板材を樹脂に埋め、コロイダルシリカで機械研磨することで面出しを行う。なお、いずれの場合でも、信頼性指数CI値が0.1以上の測定点および2ピクセル以上からなる結晶粒をTolerance angleを10°として解析の対象とした。また、結晶方位の面積率の解析には等価な方位を含めた。
[R方位]
R方位は、{1 2 4}<2 1 -1>と表記される結晶方位である。本実施形態では、EBSD法によって測定されるR方位を有する結晶粒の面積率は20~50%であることが必要である。R方位を有する結晶粒を集積し、R方位を有する結晶粒の面積率を上記の範囲内とすることで順送プレス絞り加工時に、局所的に面積の小さいフランジを確実に残すことができ、その結果、製品(絞り加工部品)の歩留まりが向上する。R方位を有する結晶粒の面積率が20%未満の場合は、適度なフランジを残しづらく、順送プレス加工時にフランジとブリッジの間での破断が起こり易くなり、製品(絞り加工部品)の歩留まりが低下する。一方、R方位を有する結晶粒の面積率が50%超えの場合は、フランジ面積が大きくなりすぎて、材料ロスが多くなる結果、製品(絞り加工部品)の歩留まりが低下する。なお、R方位を有する結晶粒の面積率は、25~45%であることが好ましく、30~40%であることがさらに好ましい。
[平均KAM値]
KAM値とは、Kernel Average Misorientation値の略称であり、結晶粒内の各ピクセルの結晶方位をEBSD法によって測定し、測定した各ピクセルと、結晶粒界を超えない範囲(すなわち15°未満)に存在し隣接するピクセルとの方位差の平均値を算出したものである。また本実施形態では、銅合金板材の任意の1視野において測定面を設定し、EBSD法による測定を行ない、測定面内の複数の測定点から算出した平均値を平均KAM値とする。
本実施形態では、平均KAM値は0.5~2.0°であることが必要である。平均KAM値が0.5°より小さい場合は、銅合金板材の強度が低下し、絞り加工部品として十分な剛性を付与することができなくなる。一方、平均KAM値が2.0°より大きい場合は、絞り加工性が低下し、厳しい加工条件での絞り加工ができなくなる。また、平均KAM値は、0.5~1.4°であることがより好ましく、この範囲とすることで、さらに小さい曲率半径Rでの絞り加工が可能となる。
[Cube方位]
Cube方位は、{1 0 0}<0 0 1>と表記される結晶方位である。本実施形態では、上記のR方位および平均KAM値の制御に加えて、EBSD法によって測定されるCube方位を有する結晶粒の面積率が、10%以下に制御されることが好ましい。Cube方位を有する結晶粒の面積率が10%より大きい場合は、絞り加工後のうねりの高低差が小さくなる。この結果、適度なフランジを残しづらくなり、順送プレス加工時にフランジとブリッジの間での破断が起こり易くなり、製品歩留まりの低下を招くおそれがある。また、フランジとブリッジの間での破断を防ぐために、あえてフランジ面積を大きくすることも可能であるが、その場合は、材料ロスが増えるため好ましくない。なお、Cube方位を有する結晶粒の面積率は、2~8%であることがより好ましい。
[その他の結晶方位]
R方位およびCube方位以外の方位を有する結晶粒の面積率は、特に限定されないが、例えば、Brass方位{1 1 0}<1 -1 2>を有する結晶粒の面積率は5.0%未満、Goss方位{1 1 0}<0 0 1>を有する結晶粒の面積率は2.0%未満、および/またはCopper方位{1 1 2}<1 1 -1>を有する結晶粒の面積率は5.0%未満に制御されることが好ましい。
<製造方法>
本実施形態に係る銅合金板材は、合金組成や製造プロセスを組み合わせて制御することによって製造することが可能である。熱伝導性(導電性)、高い剛性(強度)に加えて、優れた絞り加工性を得ることが可能な製造プロセスの一例として、限定されないが以下の方法を挙げることができる。
本実施形態の銅合金板材の製造方法の一例は、上記した銅合金板材の合金組成と同等の合金組成を有する銅合金素材に、少なくとも、溶解鋳造工程[工程1]、再熱・熱間圧延工程[工程2]、第一冷間圧延工程[工程3]、第一焼鈍工程[工程4]、第二冷間圧延工程[工程5]、第二焼鈍工程[工程6]、溶体化熱処理工程[工程7]、時効熱処理工程[工程8]、第三冷間圧延工程[工程9]、および第四焼鈍工程[工程10]を順次行なうものである。
これらの工程の中で、R方位の面積率を規定の範囲に制御するためには、特に第一冷間圧延から溶体化熱処理工程[工程3~工程7]の工程を適切な条件で実施することが重要である。また、平均KAM値を規定の範囲に制御するためには、特に第三冷間圧延と第四焼鈍工程[工程9、10]を適切な条件で実施することが重要である。
また、Cube方位の面積率を規定の範囲に制御するためには、特に第一焼鈍工程[工程4]を適切な条件で実施することが重要である。
(i)溶解鋳造工程[工程1]
溶解鋳造工程[工程1]は、上記の合金組成を有する銅合金素材を溶融させ、これを鋳造することによって、所定形状(例えば厚さ30mm、幅100mm、長さ150mm)の鋳塊(インゴット)を作製する工程である。[工程1]は、高周波溶解炉を用いて、大気中、不活性ガス雰囲気中または真空中で、銅合金素材を溶融および鋳造することが好ましい。なお、銅合金素材の合金組成は、製造の各工程において、添加成分によっては溶解炉に付着したり揮発したりして、製造される銅合金板材の合金組成と必ずしも完全に一致しない場合があるが、銅合金板材の合金組成と実質的に同じ合金組成を有している。
(ii)再熱・熱間圧延工程[工程2]
再熱・熱間圧延工程[工程2]では、まず上記の鋳塊を800~1000℃で1~6時間保持し熱処理(再熱)を行なう。この[工程2]において、鋳塊に含有される粗大な凝固偏析や晶出物は、できるだけ母相に固溶させて小さくし、可能な限り無くして均質化する。均質化した直後に所定の厚さになるまで熱間圧延を行なう。熱間圧延の温度は、700℃以上であり、上記の熱処理(再熱)時と同じ800~1000℃の範囲とすることもでき、熱間圧延における加工率は50~90%の範囲で行なうことができる。熱間圧延終了後は直ちに冷却する。なお、熱延材の表面に酸化スケールが多い場合は、0.5~4.0mmの面削を行ない、酸化スケールを除去することが好ましい。
ここで本願明細書において「加工率」とは、圧延前の断面積から圧延後の断面積を引いた値を圧延前の断面積で除して100を乗じ、パーセントで表した値であり、下記式(1)で算出されるものである。なお[工程2]の加工率のみならず、以下の[工程3]、[工程5]、および[工程9]における加工率についても、同様に下記式(1)によって算出することができる。
[加工率]={([圧延前の断面積]-[圧延後の断面積])/[圧延前の断面積]}×100(%) ・・・式(1)
(iii)第一冷間圧延工程[工程3]
第一冷間圧延工程[工程3]は、[工程2]を行なった後の熱延材に、冷間圧延を施す工程である。[工程3]における圧延は、製品板厚に合わせて任意の圧下率で行なうことができる。この[工程3]における加工率は、30%以上とすることが好ましく、40%以上とすることがより好ましく、50%以上とすることがさらに好ましい。なお加工率の上限値は特に限定されないが、例えば99.9%以下とすることができる。加工率が30%未満の場合は、その後に行なう第一焼鈍工程[工程4]において生成される析出物の量が少なく、溶体化熱処理工程[工程7]でのR方位を有する結晶粒の集積度が低下する傾向がある。
(iv)第一焼鈍工程[工程4]
第一焼鈍工程[工程4]は、第一冷間圧延工程[工程3]を行なった後の冷延材に対して、合金組成に応じて熱処理を施す工程である。この[工程4]での焼鈍条件は、到達温度を450~550℃、保持時間を1~6時間とすることができる。到達温度が450℃未満の場合は、その後に行なう溶体化熱処理工程[工程7]でのR方位を有する結晶粒の集積度が低下する。またこの工程における析出物の量、および/またはサイズが、溶体化熱処理工程[工程7]でのR方位を有する結晶粒の集積度に影響していると推定される。一方、到達温度が550℃を超える場合は、母相の再結晶化が進み、Cube方位の面積率が増加し、絞り加工性が低下する傾向がある。
(v)第二冷間圧延工程[工程5]
第二冷間圧延工程[工程5]は、第一冷間圧延工程[工程4]を行なった後の材料に対して、圧延ワークロールを用いてさらに冷間圧延を施す工程である。この[工程5]における加工率は、50%以上とすることが好ましく、60%以上とすることがより好ましく、70%以上とすることがさらに好ましい。なお加工率の上限値は特に限定されないが、例えば99.9%以下とすることができる。加工率が50%未満の場合は、その後に行なう溶体化熱処理工程[工程7]でのR方位を有する結晶粒の集積度が低下する傾向がある。
(vi)第二焼鈍工程[工程6]
第二焼鈍工程[工程6]は、第二冷間圧延工程[工程5]を行なった後の冷延材に対して熱処理を施して再結晶させる焼鈍し、歪量を調製する工程である。ここで[工程6]における熱処理の条件は、例えば、到達温度が300~400℃、かつ到達温度での保持時間が1~6時間にすることができる。到達温度が300℃未満の場合は、歪量が多くなり、その後に行なう溶体化熱処理工程[工程7]でのR方位を有する結晶粒の集積度が低下する傾向がある。一方、到達温度が400℃を超える場合は、部分的な再結晶化が進み、その後に行なう溶体化熱処理工程[工程7]でのR方位を有する結晶粒の集積度が低下する傾向がある。
(vii)溶体化熱処理工程[工程7]
溶体化熱処理工程[工程7]は、第二焼鈍工程[工程6]を行なった後の材料に対して、熱処理を行なう工程である。この[工程7]での焼鈍条件は、到達温度を750~1000℃、保持時間を10~60秒とすることができる。到達温度が750℃未満の場合は、R方位を有する結晶粒の集積度が低下する傾向がある。一方、到達温度が1000℃を超える場合は、結晶粒が粗大化し、強度が低下し、また絞り加工部品の外観を損なうおそれがある。なお、その後に行なう時効熱処理工程[工程8]での析出強化を得るために、熱処理後には直ちに50℃/s以上で急冷することが好ましい。
(viii)時効熱処理工程[工程8]
時効熱処理工程[工程8]は、溶体化熱処理工程[工程7]を行なった後の材料に対して、熱処理を行なう工程である。この[工程8]では、例えば、400~600℃で1~6時間の熱処理を行なう。400℃未満の場合、または600℃を超える場合、充分な析出強化が得られない。
(ix)第三冷間圧延工程[工程9]
第三冷間圧延工程[工程9]は、時効熱処理工程[工程8]を行なった後の材料に対して、さらに冷間圧延を施す工程である。[工程9]における加工率は、1~10%であることが好ましく、1~5%であることがさらに好ましい。加工率が1%未満の場合は、強度向上の効果が小さい。一方、加工率が10%を超える場合、平均KAM値が大きくなり、絞り加工性が低下する。
(x)第四焼鈍工程[工程10]
第四焼鈍工程[工程10]は、第三冷間圧延工程[工程9]を行なった後の材料に対して熱処理を施して、歪取り焼鈍を行なう。この[工程10]での焼鈍条件は、到達温度を300~600℃、保持時間を10~60秒とすることが好ましい。到達温度が300℃未満の場合は、平均KAM値が高くなり、絞り加工性が低下する。600℃を超える場合は析出物の再固溶により、強度と導電性が低下する。到達温度は、350~550℃がさらに好ましく、400~500℃が特に好ましい。
<絞り加工部品>
本実施形態に係る銅合金板材は、R方位を有する結晶粒および平均KAM値を制御することによって、製品(絞り加工部品)の歩留まりを向上したものであり、絞り加工部品を作製するための素材として用いることに適したものである。また、本実施形態に係る銅合金板材は、優れた絞り加工性と同時に、高い強度と導電性を有するため、例えば、電子機器部品(コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチ、ソケット、シールドケース、シールドキャン、およびカメラモジュールなど)、液晶や有機ELディスプレイ用部品(放熱部品、およびバッテリーなど)、自動車車載用部品(コネクタ、シールドケース、およびシールドキャンなど)など絞り加工部品の材料として好適に用いることができる。特にコネクタのホールドダウンまたはシェル、カメラモジュールケース、バッテリーケース、あるいはシールドケースなどの絞り加工部品の材料として最適である。
本実施形態に係る銅合金板材に対する絞り加工は、順送プレス加工とすることができる。順送プレス加工は、加工装置内に複数の異なる金型が順番に装着されており、コイル材から巻き出された帯状の金属板材(銅合金板材)が、加工装置内に送られると、金型の順番どおりに加工工程が進行するものであって、最後の工程で帯状の金属板材から複数の製品(絞り加工部品)を別個に切り離す加工方法である。順送プレス加工は、複数の工程を1つの装置で行なえるため、複雑な形状であっても、効率的かつ手早く加工することができ、生産能力を向上させることが可能である。
順送プレス加工では、第n工程で加工された銅合金板材は、装置内の次の第n+1工程へと送られるが、このとき加工途中の絞り加工部品は、外周の銅合金板材(キャリア)から切り離されておらず、フランジとブリッジによって接続されている必要がある。このように接続されていることによって、材料の金型に対する位置決めが可能となる。ここでフランジ面積が小さすぎる場合、フランジとブリッジの間で破断が起こり易く、位置決めできなくなり、歩留まりが低下するおそれがある。しかし本実施形態に係る銅合金板材は、結晶方位を制御することにより、局所的に適度なフランジを残すことが容易であり、フランジとブリッジの間で破断が起こりにくいため、順送プレス加工に用いるための材料として適したものである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例および比較例の製造>
表1に示す合金組成を有する種々の銅合金素材を溶解し、これを大気雰囲気で冷却して鋳造する溶解鋳造工程[工程1]を行なって鋳塊を得た。
これらの鋳塊に再熱・熱間圧延工程[工程2]として、800~1000℃の保持温度、および1~6時間の保持時間で熱処理を行なった後、直ちに、加工率が50~90%になるように、鋳塊の長手方向が圧延方向になるように圧延を行なって熱延材を得た。その後、水冷により室温まで冷却した。
冷却後の熱延材に対して、面削を行なって表裏両面から0.5~4.0mm程度を削り取って表面の酸化スケールを除去した後、表2に記載される加工率で、熱延材の長手方向が圧延方向になるようにして圧延する、第一冷間圧延工程[工程3]を行なった。
第一冷間圧延工程[工程3]を行なった後の圧延材に対して、表2に記載される到達温度、および保持時間を2時間として熱処理を行なう第一焼鈍工程[工程4]を行ない、次いで、表2に記載される加工率で、圧延材の長手方向が圧延方向になるようにして圧延する第二冷間圧延工程[工程5]を行なった。
第二冷間圧延工程[工程5]を行なった後の圧延材に対して、表2に記載される到達温度、および保持時間を2時間として熱処理を行なう第二焼鈍工程[工程6]を行ない、すぐに水冷により室温まで冷却した。
冷却後の圧延材について、表2に記載される到達温度、および保持時間を30秒として熱処理を行なう溶体化熱処理工程[工程7]を行ない、次いで、400~600℃の到達温度、および1~6時間の保持時間で熱処理を行なう時効熱処理工程[工程8]を行なった。
時効熱処理工程[工程8]を行なった後の圧延材に対して、表2に記載される加工率の条件で、長手方向が圧延方向になるようにして圧延する第三冷間圧延工程[工程9]を行ない、次いで、表2に記載される到達温度および4時間の保持時間で熱処理を行なう第四焼鈍工程[工程10]を行なった。
上記の方法によって、実施例1~30および比較例1~13に係る銅合金板材を製造した。
Figure 0007328472000001
Figure 0007328472000002
<EBSD法による測定>
上記のとおり製造した実施例1~30および比較例1~13に対して、EBSD法による測定を行ない、R方位を有する結晶粒の面積率、Cube方位を有する結晶粒の面積率、および平均KAM値を得た。
より具体的には、実施例1~30および比較例1~13の板表面を電解研磨によって鏡面仕上げし、測定試料とした。鏡面仕上げした測定試料の1000μm×1000μmの視野領域を測定対象とし、ステップサイズ0.5μmとして、高分解能走査型分析電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-7001FA)に付属するEBSD検出器を用いて結晶方位データを連続して測定した。測定で得られた結晶方位データに対して解析ソフト(TSL社製、OIM Analysis)を用いて、結晶方位解析データを算出した。算出した結晶方位解析データからR方位を有する結晶粒の面積率、およびCube方位を有する結晶粒の面積率を得た。続いて、上記の解析ソフトを用いて、結晶方位差が15°以上を境界として、測定領域の平均KAM値を算出した。なお、CI値が0.1以上となる測定点を解析の対象とした。
<引張強さの測定>
銅合金板材の剛性(強度)を示す指標として引張強さを採用し、実施例1~30および比較例1~13の剛性(強度)について、引張強さを測定することで評価した。引張強さの測定は、圧延方向に対して平行な方向が長手方向になるように供試材を切り出した、JIS Z2241に規定されている13B号の2本の試験片で行ない、2本の試験片から得られた引張強さの平均値を測定値とした。なお本実施例では、銅合金板材の引張強さが500MPa以上を合格レベルとした。
<導電率の測定>
端子間距離を100mmとし、20℃(±0.5℃)に保たれた恒温槽中で四端子法により比抵抗を2回測定し、この平均値を算出し、この値を導電率とした。なお本実施例では、銅合金板材の導電率が30%IACS(International Annealed Copper Standard)以上である場合を合格レベルとした。
<絞り加工性の評価>
実施例1~30および比較例1~13を板厚0.50mmの板材として、プレス打ち抜きで直径61mmのブランクを作製した。このブランクに対してエリクセン社製薄板成形試験機を用いて、直径33mmのパンチでカップ形状に絞り加工を行なった。また、絞り加工は、先端の角部(肩部)の曲率半径Rが0.50mmであるパンチと、0.75mmであるパンチの2種類のパンチを使用して行った。なお絞り加工は、潤滑油(商品名:プレトンR-303P、スギムラ化学工業社製)を板材に塗布して行なった。得られたカップ縁のうねりにおける山から谷までの高さ(うねりの高低差)をそれぞれ測定した。このときのうねりの高低差の評価(うねり評価)、およびパンチ先端のコーナー部の曲率半径Rの評価(パンチR評価)を以下の基準で行なった。なお、うねり評価の判断基準は、うねりが低すぎると絞りブリッジを残しづらく、高すぎると絞り形状を損なうため、うねりの高低差が小さすぎても大きすぎても絞り加工性が劣ると判断した。
[うねり評価]
A(優):うねりの高低差の平均が0.75mm以上1.25mm未満の場合
B(良):うねりの高低差の平均が0.25mm以上0.75mm未満の場合
C(不可):うねりの高低差の平均が0.25mm未満または1.25mm以上の場合
D(破断):カップ縁のうねりが破断して測定不可の場合
なお、うねりの高低差の平均は、下記式(2)で算出されるものである。
[うねりの高低差の平均(mm)]=[山高さの平均(mm)]-[谷高さの平均(mm)] ・・・式(2)
なお、山高さは、絞り加工して成形されたカップの底からカップ上縁に形成されるうねりの頂点位置までを測定したときの高さを意味し、谷高さは、絞り加工して成形されたカップの底からカップ上縁に形成されるうねりの谷位置までを測定したときの高さを意味する。
[パンチR評価]
A(優):先端肩部の曲率半径Rが0.75mmであるパンチを用いた絞り加工条件だけではなく、先端肩部の曲率半径Rが0.50mmであるパンチを用いた厳しい絞り加工条件でも、破断や側壁のシワが発生することなく、良好な絞り加工部品が試作できた場合
B(良):上記A(優)よりは評価が劣るものの、先端肩部の曲率半径Rが0.75mmであるパンチを用いた絞り加工条件では、破断や側壁のシワが発生することなく、良好な絞り加工部品が試作できた場合
C(不可):先端肩部の曲率半径Rが0.75mmであるパンチを用いた絞り加工条件で、絞り加工部品に破断または側壁のシワが発生した場合
<測定および評価の結果>
R方位を有する結晶粒の面積率、Cube方位を有する結晶粒の面積率、平均KAM値、引張強さ、導電率、うねり評価、およびパンチR評価の結果を表3に示す。
Figure 0007328472000003
表1~表3の結果から、合金組成が本発明の適正範囲内であるとともに、R方位を有する結晶粒の面積率が20~50%であり、平均KAM値が0.5~2.0%である実施例1~30の銅合金板材は、パンチR評価、およびうねり評価ともに「A(優)」または「B(良)」であり、絞り加工性に優れた銅合金板材であった。また実施例1~30は、引張強さが500MPa以上であり、導電率が30%IACS以上であり、引張強さおよび導電性にも優れた銅合金板材であった。このことから実施例1~30は、電子部品の材料として好適であると考えられる。
また、実施例1~30の中で、特に実施例12、実施例13、実施例15、実施例16、および実施例28は、いずれも平均KAM値が0.5~1.4と本発明の好適範囲内であるため、パンチR評価が「A(優)」であった。
また、実施例1~30の中で、特に実施例4、実施例6、実施例7、実施例16、実施例22、実施例23、実施例24、実施例28、実施例29、および実施例30は、R方位を有する結晶粒の面積率が30以上と大きいが、これらはうねり評価が「A(優)」であった。実施例16および実施例28は、R方位を有する結晶粒の面積率および平均KAM値がともに特に好ましい数値範囲内にあり、パンチR評価とうねり評価がともに「A(優)」であった。
実施例1~30の中で、特に実施例28は、任意添加元素として適正量のFeを含み、かつR方位を有する結晶粒の面積率と平均KAM値も適正範囲であるので、引張強さ、導電率、および絞り加工性のバランス特性が最も優れていた。
なお実施例1~30は、いずれも引張強さが500MPa以上で絞り加工部品に適用する銅合金板材として優れたものであるが、合金組成および製造工程における差異によって引張強さに差が見られた。引張強さが比較的低いもの(600MPa未満)は、特にカメラモジュールケース、バッテリーケース、またはシールドケースなどの絞り加工部品に好適に適用できると考えられる。一方で引張強さが比較的高いもの(600MPa以上)は、特にコネクタのホールドダウンまたはシェルなどの絞り加工部品に好適に適用できると考えられる。しかし上記の適用は一例であり、本発明はこれに限定して解釈されるべきではない。それぞれの電子部品が要求する性能に合わせて、適切な銅合金板材を選択し使用することができる。
他方で、比較例1~13に係る銅合金板材は、合金組成、R方位を有する結晶粒の面積率、および平均KAM値の少なくとも1つが本発明の範囲外である。それゆえに、引張強さ、導電率、および絞り加工性の少なくとも1つが合格レベルにはないことが分かる。
特に、比較例1~4および比較例12は、平均KAM値は本発明範囲を満たしているがR方位を有する結晶粒の面積率が本発明の範囲外であるため、うねり評価が「C(不可)」となった。また、比較例5および比較例9~11は、R方位を有する結晶粒の面積率が本発明の範囲を満たしているが平均KAM値が本発明の適正範囲外であるため、パンチR評価が「C(不可)」となり、またうねり評価が「D(破断)」となった。
さらに、比較例6は、Niの含有量が本発明の範囲よりも少なく、また、比較例7は、Siの含有量が本発明の範囲よりも少ないため、いずれも引張強さが合格レベルにはなく不足していた。比較例8は、NiおよびCoの合計の含有量が本発明の範囲よりも多いため、導電率が合格レベルにはなかった。比較例13は、平均KAM値が本発明の範囲よりも小さいため、引張強さおよび導電率が合格レベルにはないことが分かる。
以上の結果から、本発明の銅合金板材は、合金組成、R方位を有する結晶粒の面積率および平均KAM値が本発明の範囲になるように制御することによって、高強度と高導電率を有しながら、絞り加工、特に小型化の部品を想定した難形状へのより厳しい加工条件で絞り加工を行った場合であっても、優れた絞り加工性を有することが確認された。

Claims (5)

  1. NiとCoのうちの少なくとも一方の成分を、合計で1.00~5.00質量%、およびSiを0.20~1.50質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有し、
    EBSD法によって測定される、R方位{1 2 4}<2 1 -1>を有する結晶粒の面積率が20~50%であり、かつ平均KAM値が0.5~2.0°である銅合金板材。
  2. EBSD法で測定されるCube方位{1 0 0}<0 0 1>を有する結晶粒の面積率が10%以下である、請求項1に記載の銅合金板材。
  3. 前記組成は、
    Mg:0.10~0.30質量%
    Sn:0.10~0.30質量%
    Zn:0.10~0.50質量%
    Cr:0.05~0.30質量%
    Zr:0.05~0.20質量%および
    Fe:0.05~0.30質量%からなる群から選択される少なくとも1種の任意添加成分をさらに含有し、
    前記任意添加成分の含有量は、合計で0.10~1.00質量%の範囲である、請求項1に記載の銅合金板材。
  4. 絞り加工部品を作製するための素材として用いる請求項1~3のいずれかに記載の銅合金板材。
  5. 請求項1~3のいずれかに記載の銅合金板材を用いて作製された絞り加工部品。
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