以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
<第1実施形態>
図1~10を参照して、本実施形態に係る治具10の構造について説明する。本実施形態に係る治具10は、構造物の壁面や天井等に当接するようにして用いられるものである。また、治具10は、ポリエチレン等の可撓性を有し透明または半透明のプラスチックにより成型されている。なお、治具10は全体が板状であり、以下の説明において、治具10の厚さ方向を前後方向又は表裏方向と称し、治具10を使用する際に構造物の壁面や天井等に対向する側を正面とし、その反対側を背面とする。
図1及び図2に示すように、治具10は、2つの第1分割体20と2つの第2分割体50とにより構成されている。第1分割体20及び第2分割体50は中心角が90°の略扇型であり、治具10を正面から見て、第1分割体20が右上と左下に配置され、第2分割体50が左上と右下に配置される。なお、図1及び図2において、同一の構成に対する符号の付与を省略している。
まず、第1分割体20について、図3~8を参照して説明する。なお、第1分割体20の説明においては、治具10の右上に配置されるものとして左右方向及び上下方向を定義する。
第1分割体20は、前後方向に一定の厚みを有する板状の、中心角が概ね90°の扇型である基部21を備えている。基部21の外形は、円弧状の外周縁22、上下方向に垂直に延び、中心よりもやや右に設けられる略直線状の左端縁23、及び、左右方向に水平に延びる下端縁24により規定される。下端縁24は、中心から右方向へ向けての所定範囲において、中心よりも下方へ張り出した張出部25を備えており、かつ、その張出部25の下端は左右方向に水平である。そして、下端縁24において張出部25よりも右側は、中心よりも上側に位置する。
基部21の、左端縁23側の上端の背面側には、背面側から正面側へ向けて矩形状に凹んだ凹部26が設けられている。この凹部26は、反時計回りに厚みが徐々に薄くなっていき、凹部の左右方向の中間よりもやや右側から厚みが一定となっている。凹部26には、背面側へと突出した、前後方向における断面が略均一な長円形である凸部27が設けられている。この凸部27の前後方向の高さは、基部21の背面の大部分を構成する平面から、概ね、基部21の厚みの半分程度だけ突出する高さとなっている。その凸部27の背面側の端部には、凸部27よりも拡径された円盤状であり、厚みが略均一なフランジ28が設けられている。
基部21の左端縁23の下方には、左端縁23から左側へ突出するように、正面側において基部21と連続する平面を形成し、厚みが基部21よりも薄い係合部29が設けられている。この係合部29の形状は、上端部及び下端部が中心を共有する円弧状であり、その中心は外周縁22を構成する円弧の中心と略一致し、中心角は30°程度である。
左端縁23の係合部29よりも下方には、左側から右側へと切れ込んだ切れ込み31が設けられている。この切れ込み31は、円弧の中心から右へ向けて水平に設けられている。すなわち、この切れ込み31は、張出部25へ切れ込んでいる。この切れ込み31の上下の幅は、左端から右へ向けて上下対称な円弧状に狭まっていき、一定の地点から右に向けて上下幅が均等となっている。
下端縁24において、張出部25の右側には、中心を通り左右方向へ向けて水平に延びる軸を中心軸とし、高さよりも直径のほうが大きい略円柱の第1基台32が設けられている。この第1基台32の正面側の端は、基部21の正面を構成する面と連続する平面を構成している。第1基台32の右側には、第1基台32と中心軸を共有し、直径が第1基台32よりも小さく左右方向の長さが第1基台32よりも大きい、略円柱形の第1係合部33が設けられている。この第1係合部33の中心軸は左右方向へ向けて水平に延びており、且つ、その延長線は基部21の背面よりも後ろ側に位置する。
下端縁24の右端近傍には、中心を通り左右方向へ向けて水平に延びる軸を中心軸とし、第1基台32とは略同形状の第2基台34が設けられている。この第2基台34の正面側の端も、基部21の正面を構成する面と連続する平面を構成している。第2基台34の右側には、第2基台34と中心軸を共有し、直径が第2基台34よりも小さく左右方向の長さが第2基台34よりも大きい、略円柱形の第2係合部35が設けられている。この第2係合部35の中心軸は、第1係合部33の中心軸と一致する。第2係合部35には、右端から左側へ向けて前後方向で貫通している切れ込みが設けられており、この切れ込みにより上下方向で撓ませることが可能となっている。また、この第2係合部35の右端には、左方に向かうにつれ徐々に拡径する返し36が設けられている。下端縁24の右端近傍には、下方へ垂直に向く矢印37が形成されている。
基部21には、前後方向に貫通した孔である第1~第6貫通孔41~46が設けられている。第1~第6貫通孔41~46は、いずれも外周縁22と中心が共通する弧状であり、一対の平行な弧状の辺と、その弧状の辺の両端をそれぞれ結ぶ直線により形状が規定されている。第1~第6貫通孔41~46はいずれも幅が等しく、且つ、径方向に隣接するものどうしの間隔はいずれも略等しい。また、第1~第6貫通孔41~46の順に、円弧の半径が大きくなる。第1~第6貫通孔41~46のそれぞれにおいて、両端を規定する端部の一方は上下方向へ向けて垂直であり、且つ、他方の端部は左右方向へ向けて水平である。
続いて、図9~14を参照して、第2分割体50について説明する。第2分割体50の説明においては、治具10の左上に配置されるものとして左右方向及び上下方向を定義する。
第2分割体50は、前後方向に一定の厚みを有する板状の、中心角が概ね90°の扇型である基部51を備えている。基部51の外形は、円弧状の外周縁52、中心よりも左側に位置し、上下方向に垂直に延びる右端縁53、及び、中心よりもやや上方に位置し、左右方向に水平に延びる下端縁54により規定される。右端縁53の上方の端には、右側へと張り出した略矩形である突出部55が設けられている。この突出部55の上部は、外周縁52と連続する円弧を形成している。この突出部55は、右側へ向かうにつれ徐々に背面側へ傾斜しており、第1分割体20と連結され正面が連続する平面を形成した場合に、第1分割体20の凹部25と略全面が当接する。右端縁53の下方には、正面側から背面側へ窪んだ被係合部56が設けられている。この被係合部56の外形は、第1分割体20に設けられている係合部29と略同一形状であり、その係合部29の厚み分だけ背面側へ向けて窪んでいる。
下端縁54の右端縁53寄りには、略円筒形の第1被係合部61が下側へ張り出すように設けられている。この第1被係合部61の中心軸は、左右方向へ向けて水平に延びており、且つ、その延長線は基部21の背面よりも後ろ側に位置する。第1被係合部61の正面側の端は、基部51の正面を構成する面と連続する平面を構成している。第1被係合部61の内周の直径は、第1分割体20の第1係合部33の直径と略等しい。この第1被係合部61の下方の側面には、左右方向へ水平に延びる半円柱状の係合突起62が設けられている。
下端縁54の左端近傍には、略円筒形の第2被係合部63が下側へ張り出すように設けられている。この第2被係合部63の中心軸は、第1被係合部61の中心軸と一致する。第2被係合部63の正面側の端は、基部51の正面を構成する面と連続する平面を構成している。第2被係合部63の内周の直径は、右端から所定の区間は第1分割体20の第2係合部35の直径と略等しく、第1分割片22に設けられた反し36が係合するように、その先はやや拡径されている。この第2被係合部63の下方の側面には、左右方向へ水平に延びる半円柱状の係合突起64が設けられている。下端縁24の左端近傍には、下方へ垂直に向く矢印65が形成されている。
基部51には、厚み方向に貫通した円弧状の孔である第1~第6貫通孔71~76が設けられている。第1~第6貫通孔71~76は、いずれも外周縁51と中心が共通する弧状であり、一対の平行な弧状の辺と、その弧状の辺の両端をそれぞれ結ぶ直線により形状が規定されている。第1~第6貫通孔71~76はいずれも幅が等しく、且つ、径方向に隣接するものどうしの間隔はいずれも略等しい。また、第1~第6貫通孔71~76の順に、円弧の半径が大きくなる。第1~第6貫通孔71~76のそれぞれにおいて、両端を規定する端部の一方は上下方向にへ向けて垂直であり、且つ、他方の端部は左右方向へ向けて水平である。
基部51には、さらに、前後方向に貫通した円弧状の孔である誘導レール77が設けられている。誘導レール77は、外周縁51と中心が共通する弧状であり、一対の平行な弧状の辺により外径が規定されており、下端は第1~第6貫通孔71~76の下端よりもやや上方に位置しており、右端は突出部55の右端の近傍に至るまで設けられている。その弧状の辺の下端縁54側は両端を結び左右方向に対して水平な直線状の辺であり、右端縁53側は両端を結ぶ略弧状の辺である。この誘導レール77の一対の平行な弧状の辺の間隔は、第1分割体20の凸部27の長辺間の幅よりも大きく、フランジ28の直径よりも小さい。
誘導レール77の突出部55よりもやや左側には、誘導レール77の両側壁を拡幅するように設けられ、その外形が誘導レール77の幅方向の中心を通る線上に中心を持つ円弧で規定される孔である、拡幅部78が設けられている。第2分割体50の背面側において、誘導レール77の全周を囲うように、正面側へ向けて均一な深さで陥没した段差79が設けられている。この段差79は、一対の平行な弧状の辺により外形が規定されており、段差79の外形を規定する辺と誘導レール77の外形を規定する辺との間隔は一定である。また、段差79の一対の平行な辺の間隔は、第1分割体20のフランジ28の直径と略等しい。
以上のように構成される第1分割体20及び第2分割体を用いて治具10を組み立てる場合について説明する。まず、第1分割体20の第1係合部33を第2分割体50の第1被係合部61に挿入して係合させ、第1分割体20の第2係合部35を第2分割体50の第2被係合部63に挿入して係合させる。このとき、第1分割体20の矢印37と第2分割体50の矢印65とを目印とし、それらを対向させるようにする。第2係合部35に設けられた反し36により、第1分割体20と第2分割体50との左右方向への相対位置の変化が抑制される。また、第2分割体50の係合突起62,64が第1分割体20の基部21の背面に当接し、第1分割体20と第2分割体50との、第1係合部33等の中心軸周りの相対的な回動が抑制される。なお、係合突起62,64は回動を抑制する機構であるため、ロック機構と称することができる。
続いて、第1分割体20と第2分割体50が組み合わされたものを2対用意し、一方の第1分割体20の凸部27に設けられたフランジ28を、他方の第2分割体50の誘導レール77に設けられた拡幅部78に挿入する。このとき、フランジ28の正面が誘導レール77の段差79の背面に当接し、凸部27が誘導レール77に沿って円弧状の軌道で摺動可能となる。そして、凸部27を拡幅部78よりも右方へ位置させ、第1分割体20の凹部26の背面を第2分割体50の突出部55の正面に当接させ、第1分割体20の係合部29の背面を第2分割体50の被係合部56の正面に当接させる。
以上のようにして、2つの第1分割体20と2つの第2分割体50との相対的な移動が抑制され、図1及び図2に示す治具10の組み立てが完成する。完成した治具10において、2つの第1分割体20の第1貫通孔41と2つの第2分割体20の第1貫通孔71は、中心及び半径が共通する円弧上の孔であるため、非連続の円環状の孔である環状貫通孔を形成している。同様に、第2~第6貫通孔42~46,72~76も、非連続の円環状の孔である環状貫通孔を形成している。
また、第1分割体20の左端縁23が円弧の中心よりも右側に位置しており、第2分割体50の右端縁53が中心よりも左側に位置しているため、中心から上下方向のそれぞれへ、係合部29に至るまでの空隙が形成される。また、張出部25には切れ込み31が設けられているため、その切れ込み31により、中心から左右方向のそれぞれへ延びる空隙が形成される。これらの空隙により、治具の中心には十字状の空隙が形成されることとなる。この十字状の空隙の中心には、切れ込み31により形成される円形の孔が生じている。この十字状の空隙のうち、特に上下方向に延びる空隙については、第1分割体20と第2分割体50との間に生じているため、第1分割体20と第2分割体50との境界ということができ、その境界中に円弧の中心を通る直線が位置することとなる。
加えて、第1分割体20と第2分割体50との左右方向の間には、係合部29から突出部55に至るまでの、上下方向のそれぞれへ延びる空隙が形成され、中心を通り上下方向のそれぞれへ延びる仮想線がその空隙中に位置することとなる。一方、第1分割体20と第2分割体50との上下方向の間には、第1被係合部61から第2基台34に至るまでの、左右方向へそれぞれ伸びる空隙が形成され、中心を通り左右方向のそれぞれへ延びる仮想線がその空隙中に位置することとなる。これらの空隙は、第1分割体20と第2分割体50との間に生じているため、第1分割体20と第2分割体50との境界ということができ、その境界中に円弧の中心を通る直線が位置することとなる。
治具10を使用する場合には、建造物の壁面に十字状のレーザーを投射したうえで、建造物の壁面に治具10の正面を当接させる。そして、そのレーザーの十字の交点を、治具10の十字状の空隙の中心の円形の孔に一致させ、十字状のレーザーの直線のそれぞれを、十字状の空隙の直線のそれぞれに一致させる。この場合に、第1分割体20と第2分割体50との左右方向の間の空隙や、上下方向の空隙についても、レーザーの直線を一致させる場合に利用してもよい。そして、貫通孔41~46,71~76を利用して、罫書き又は墨出しを行う。また、治具10の全体形状が略円形であるため、治具10の外形、すなわち、外周縁22,52を利用して罫書き又は墨出しを行うこともできる。
続いて、治具10を畳む場合について、図15~17を参照して説明する。まず、図15に示すように、第2分割体50の係合突起62,64による係合を解除し、第1分割体20と第2分割体50とを、第1係合部33等の中心軸周りに相対的に回動させる。第1分割体20と第2分割体50とを、互いの背面が対向するまで回動させれば、図16に示すように、治具10全体が正面視にて半円状となる。続いて、第1分割体20の凸部27を誘導レール77に沿って摺動させる。このとき、図17に示すように、2つの第1分割体20と2つの第2分割体50との大部分が重畳し、全体の形状は中心角が90°よりもやや大きい略扇型となる。このようにして治具10を畳むことができるため、第1係合部33、第2係合部35、第1被係合部61、第2被係合部63は纏めて折り畳み部と称することができる。
なお、治具10において、第1分割体20及び第2分割体50を重畳させた状態から再び展開する場合には、上述した重畳手順を逆に行えばよい。
上記構成により、本実施形態に係る治具は、以下の効果を奏する。
・治具10を持ち運んだりする場合において治具10を折り畳んだり、4の分割体20,50に分割したりすることができるため、持ち運びを容易に行うことができる。
・十字状のレーザーや十字状の墨出し線を用いて治具の位置決めをする場合に、その十字の交点を環状貫通孔の中心と一致させ、十字の直線を分割体20,50どうしの境界と一致させることで、使用時に正確な位置決めを可能とすることができる。
・第1分割体20と第2分割体50との連結を維持しつつそれらを重畳させることができるため、治具を持ち運んだりする場合に分割体どうしを分離させる必要がない。したがって、持ち運んだ後に再び使用する場合において、組み立てる手間を省くことができる。
・板状の部材を重畳させる場合、一回の折り畳みは可能であるが2回以上の折り畳みは困難である場合が多い。この点、困難である2回目の折り畳みを行うことなく、摺動させることを可能としているため、4つの分割体20,50が組み合わされている場合においても、重畳させることができる。
・係合突起62,64により第1分割体20と第2分割体50との相対的な回動を抑制しているため、治具10の使用時に自重などにより折り畳まれてしまう事態を抑制することができ、使用時の利便性を向上させることができる。
・各分割体20,50が複数の貫通孔41~46,71~76を有しているため、大きさの異なる複数の罫書き又は墨出しを行うことができる。
・第1分割体20と第2分割体50との間に空隙があるため、壁面等に十字状の墨出し線がある場合において、その空隙により墨出し線を目視可能となる。加えて、十字状のレーザーを用いる場合には、その空隙を利用して直線状の罫書きや墨出しを行うこともできる。
・第1分割体20及び第2分割体50の外周縁22,52を、中心及び半径が共通する円弧状としているため、第1分割体20と第2分割体50とを重畳させた場合に、治具10全体の大きさをより小さくすることができる。
<第2実施形態>
本実施形態に係る治具110は、構成の一部が第1実施形態と異なっている。本実施形態に係る治具について、図18を参照して説明する。なお、図18において、第1実施形態に係る治具10と同等の構成については、第1実施形態と同じ符号を付与しており、説明を省略する。
本実施形態に係る治具110は、第1実施形態と同様に、2つの第1分割体120と2つの第2分割体150とにより構成されている。第1分割体120及び第2分割体150は中心角が90°の略扇型であり、治具110を正面から見て、第1分割体120が右上と左下に配置され、第2分割体150が左上と右下に配置される。
まず、第1分割体120について説明する。なお、第1分割体120の説明においては、治具110の右上に配置されるものとして左右方向及び上下方向を定義する。
第1分割体120の基部121には、下端縁24側から左端縁23側へ向けて45°の角度で傾斜した直線状の孔である第1~第6貫通孔141~146が設けられている。第1~第6貫通孔141~146は、一対の平行な直線状の長辺と、その長辺の両端をそれぞれ結ぶ直線状の短辺により形状が規定されている。第1~第6貫通孔141~146はいずれも幅が等しく、且つ、径方向に隣接するものどうしの間隔はいずれも略等しい。第1~第6貫通孔141~146のそれぞれにおいて、短辺の一方は上下方向へ向けて垂直であり、且つ、他方の短辺は左右方向へ向けて水平である。また、いずれも左端の左右方向の位置及び下端の上下方向の位置は等しいため、第1~第6貫通孔141~146の順に長くなる。
続いて、第2分割体150について説明する。なお、第2分割体150の説明においては、治具110の左上に配置されるものとして左右方向及び上下方向を定義する。
第2分割体150の基部151には、下端縁54側から右端縁53側へ向けて45°の角度で傾斜した直線状の孔である第1~第6貫通孔171~176が設けられている。これら第1~第6貫通孔171~176の形状については、第1分割体120の第1~第6貫通孔141~146に対して左右対称な形状であるため、具体的な説明は省略する。
治具110を組み立てた場合には、第1~第6貫通孔141~146,171~176により、第1分割体120と第2分割体150との境界を対角線とする正方形の外形をなす非連続の環状貫通孔が形成される。なお、治具110の使用方法は第1実施形態に係る治具10と同等であるため、具体的な説明を省略する。
上記構成により、本実施形態に係る治具110は、第1実施形態が奏する効果に加えて、矩形の罫書き又は墨出しを可能とすることができる。
<第3実施形態>
本実施形態に係る治具210は、構成の一部が第1実施形態と異なっている。本実施形態に係る治具について、図19を参照して説明する。なお、図19において、第1実施形態に係る治具10と同等の構成については、第1実施形態と同じ符号を付与しており、説明を省略する。
本実施形態に係る治具210は、第1実施形態と同様に、2つの第1分割体220と2つの第2分割体250とにより構成されている。第1分割体220及び第2分割体250は中心角が90°の略扇型であり、治具210を正面から見て、第1分割体220が右上と左下に配置され、第2分割体250が左上と右下に配置される。
まず、第1分割体220について説明する。なお、第1分割体220の説明においては、治具210の右上に配置されるものとして左右方向及び上下方向を定義する。
第1分割体220の基部221には、下端縁24近傍から上方へ向けて垂直に延びる孔と、左端縁23近傍から右側へ向けて水平に延びる孔とが連結しており、幅が均一で、直角に屈曲した折れ線状の孔である第1~第4貫通孔241~244が設けられている。第1貫通孔241において、上下方向に延びる部分と左右方向に延びる部分との長さは等しい。さらに、上下方向に延びる部分の下端の位置と中心との距離と、左右方向に延びる部分の左端の位置と中心との距離とは、等しい。これらは、第2~第4貫通孔242~244についても同様である。また、第1~第4貫通孔241~244はいずれの幅が等しく、等間隔に設けられており、いずれも左端の左右方向の位置及び下端の上下方向の位置は等しい。
続いて、第2分割体250について説明する。なお、第2分割体250の説明においては、治具210の左上に配置されるものとして左右方向及び上下方向を定義する。
第2分割体250の基部251には、直角に屈曲した折れ線状の孔である第1~第4貫通孔271~274が設けられている。これら第1~第4貫通孔271~274の形状については、第1分割体220の第1~第4貫通孔241~244に対して左右対称な形状であるため、具体的な説明は省略する。
治具210を組み立てた場合には、第1~第4貫通孔241~244,271~274により、治具210と共通の中心を有し、上下方向に垂直な一対の辺と左右方向に水平な一対の辺とにより構成される正方形の外形をなす、非連続の環状貫通孔が形成される。なお、治具120の使用方法は第1実施形態に係る治具10と同等であるため、具体的な説明を省略する。
上記構成により、本実施形態に係る治具110は、第2実施形態が奏する効果と同等の効果を奏する。
<第4実施形態>
本実施形態に係る治具310は、構成の一部が第1実施形態と異なっている。本実施形態に係る治具について、図20を参照して説明する。本実施形態に係る治具310は、第1実施形態等と異なり、複数の分割体に分割されておらず、一枚の板状の部材により構成されている。治具310の基部321は厚みが略均一な板であり、全体形状は、中心角が90°の扇型である。この基部321の外形は、中心角が90°の円弧である外縁部322、中心から上方へ延びる右端縁323、及び、中心から左方へ延びる下端縁324により規定される。
この基部321は、厚み方向に貫通する孔である第1~第6貫通孔331~336が設けられている。これらは第1実施形態における第1~第6貫通孔71~76と同等の形状であるため、具体的な説明は省略する。
基部321の中心側には、基部321と中心を共有する円形である中央部341が設けられている。この中央部341は、基部321と連続する平面を表裏に有する板状であり、基部321に設けられた第1貫通孔331よりも半径が小さい。また、基部321とは、左上側の中心角が90°の扇型の部分を共有している。この中央部341が設けられているため、基部321の右端縁323の延長線と下端縁324の延長線とが円弧の中心で直交することとなる。
中央部341には、中心から所定間隔を空けた上下左右のそれぞれに、厚み方向に貫通した長方形の孔である中央孔342~345が設けられている。これら中央孔342~345は、上下左右のそれぞれへ向けて垂直に延びている。
以上のように構成される治具310を用いて罫書き又は墨出しを行う場合には、十字状のレーザー又は墨出し線を右端縁323及び下端縁324に一致させて行う。この場合に、十字状のレーザー又は墨出し線を中央孔342~345に一致させてもよい。このようにして罫書き又は墨出しを行えば、治具310を構成する円弧と中心が共通する仮想的な円環の一部をなす、弧状の罫書き線又は墨出し線を形成することができる。続いて、治具310をレーザー又は墨出し線に従い中心廻りに90°回転させ、同様に罫書き線又は墨出し線を設ける。これと同等の作業をあと2回行うことで、治具310を構成する円弧と中心が共通する非連続の円環状の罫書き線又は墨出し線を設けることができる。
上記構成により、本実施形態に係る治具310は、以下の効果を奏する。
・通常の治具よりも小さい構成で、環状の罫書き線又は墨出し線を設けることができる。
<第5実施形態>
本実施形態に係る治具410は、構成の一部が第1実施形態と異なっている。本実施形態に係る治具について、図21を参照して説明する。本実施形態に係る治具410は、第1実施形態等と異なり、1枚の第1分割体420と、1枚の第2分割体450により構成されている。
第1分割体420の基部421は厚みが略均一な板であり、全体形状は、中心角が90°の扇型である。この基部421の外形は、中心角が略90°の円弧である外縁部422、中心から上方へ延び、中心よりもやや右方に位置する左端縁424、及び、中心から右方へ延び、中心を通り右へ水平に延びる直線上に位置する下端縁423により規定される。左端縁424の下端には、左方へ中心よりも張り出した張出部425が設けられており、この張出部425には、中心から上方へ向けて垂直に切り込まれた切れ込み431が形成されている。
基部421には、表裏方向に貫通した第1~第6貫通孔441~446が設けられている。この第1~第6貫通孔441~446は、第1実施形態における第1~第6貫通孔41~46と同等の形状であるため、具体的な説明を省略する。
第2分割体450の基部451は厚みが略均一な板であり、全体形状は、中心角が90°の扇型である。この基部451の外形は、中心角が略90°の円弧である外縁部452、中心から上方へ延び、中心よりもやや左方に位置する右端縁454、及び、中心から左方へ延び、中心を通り左へ水平に延びる直線上に位置する下端縁453により規定される。
基部451には、表裏方向に貫通した第1~第6貫通孔471~476が設けられている。この第1~第6貫通孔471~476は、第1実施形態における第1~第6貫通孔71~76と同等の形状であるため、具体的な説明を省略する。
第1分割体420と第2分割体450とは、連結部461,462により連結されており、中心を通り上方へ垂直に延びる直線よりもやや背面側を軸として相対的に回動可能である。この連結部461,462については、第1実施形態における第1、2係合部33,35及び第1、2被係合部61,63に準ずる構造であればよいため、具体的な説明を省略する。
本実施形態に係る治具410を使用する場合には、十字状のレーザー又は墨出し線の一方の直線を下端縁423,453に一致させ、他方の直線を切れ込み431や左端縁424と右端縁454との間の境界に一致させる。そして、罫書き又は墨出しを行った後、治具410を180°回転させ、同様に罫書き又は墨出しを行う。この治具410の非使用時には、連結部461,462回りに回動させ、治具410全体の形状を中心角が90°の扇型とすればよい。
上記構成により、本実施形態に係る治具は、以下の効果を奏する。
・通常の治具よりも小さい構成で環状の罫書きまたは墨出しを可能とすることができ、且つ、折り曲げが可能であるため非使用時の大きさをより小さくすることができる。
<変形例>
・実施形態では、第1分割体20,120,220の張出部25に切れ込み31を設け、治具10,110,210を形成した場合に中心を通る直線がその切れ込み31を通るものとした。この点、張出部25や切れ込み31を設けず、第1分割体20,120,220と第2分割体50,150,250との間に空隙が生ずるようにし、中心を通る直線がその空隙中に位置するようにしてもよい。
・実施形態では、第1分割体20,120,220及び第2分割体50,150,250を重畳させる場合に、一方の側へ向けて折り畳んだうえで、摺動させるものとしている。この点、一方の側へ折り畳んだうえで、さらに外側へ向けて折り畳むことを可能とし、折り畳みのみにより重畳させるものとしてもよい。
・第1分割体20,120,220,420及び第2分割体50,150,250,450に設ける貫通孔の数は、実施形態に示したものに限られず、1以上の貫通孔が設けられていればよい。第4実施形態に係る治具310についても同様である。
・各実施形態において、第1分割体20,120,220,420及び第2分割体50,150,250,450の接続状態を維持したうえで重畳可能としているが、非使用時には接続を解除するものとしてもよい。この場合には、再使用時には再度組み立てが必要となるものの、各実施形態に準ずる効果を得ることができる。
・第2実施形態や第3実施形態において、第1分割体120,220及び第2分割体150,250の外形を扇型としたが、貫通孔141~146,171~176の形状に合わせて三角形としたり、貫通孔241~244,271~274の形状に合わせて四角形としたりしてもよい。これらの場合において、分割体120,150,220,250の重畳方法は、外形に合わせて適宜設計すればよい。
・第1~第3実施形態において、2つの第1分割体20,120,220と、2つの第2分割体50,150,250とにより4分割するものとしたが、半円状の2つの分割体を組み合わせるものとしてもよい。この場合には、その半円状の分割体の境界を、十字の一方の直線に沿わせるものとし、他方の直線を沿わせるための目印等を設けたり、他方の直線を沿わせず、中心を一致させたりすることで位置決めをするものとすればよい。
・第1~3、5実施形態では、複数の分割体を連結させて治具10,110,210,410を構成するものとしたが、全体の形状が各実施形態と同等の形状である一枚の板状の部材により治具を構成するものとしてもよい。この場合には、非連続の環状の孔である環状貫通孔の中心で直交する2直線を薄肉状とする等し、その2直線で屈曲又は湾曲可能とすることで、概ね1/4の大きさにまで重畳可能とすればよい。また、非連続の環状の孔である環状貫通孔の中心を通る直線で屈曲又は湾曲させ、1/2の大きさにまで重畳可能としてもよい。なお、薄肉状とした2直線で折り畳み可能であるため、折り畳み部と称することができる。また、薄肉状とする代わりに、短く薄い線と帯状の部材で結合し、折り畳み可能としてもよい。
・第1~3実施形態では、第1分割体20,120,220及び第2分割体50,150,250の外形について、中心及び半径が共通する円弧状の外縁部22,52を有するものとしているが、この点を異ならせてもよい。第4、5実施形態についても同様である。
・実施形態では、環状貫通孔として非連続の円環状の環状貫通孔と、非連続の正方形の外環状の環状貫通孔を示したが、楕円環状等の環状貫通孔や、他の異なる多角形状の環状貫通孔を形成するように、それぞれの貫通孔の形状を変更してもよい。
・第4実施形態や第5実施形態において、貫通孔の形状として第2、第3実施形態に準ずる形状を採用してもよい。
・第1~3実施形態や第5実施形態において、分割体をさらに再分割するものとしてもよい。すなわち、さらに再分割された分割体を組み合わせて直交する2直線を有する分割体を形成可能であればよい。同様に、第4実施形態に係る治具310についても分割片を組み合わせて実施形態と同等の形状を形成するものとしてもよい。
・第4実施形態において、中央部341は設けなくてもよい。この場合には、基部321が直交する2辺を備えることとなる。