JP7327850B1 - 全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極およびこれを用いた全固体リチウム二次電池 - Google Patents

全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極およびこれを用いた全固体リチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 負極活物質(シリコン)の微細化、孤立化がなく、サイクル特性が良好な全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極を提供する。【解決手段】 平均粒子径が0.8~2.0μmのシリコン粒子を含む負極活物質層を、金属箔上に形成し、負極活物質層内の空隙率を好ましくは50%以上、かつ、負極活物質層内の空隙の大きさを好ましくは0.5μm以下に制御する。【選択図】図3

Description

本発明は、全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極に関する。また本発明はこれを用いた全固体リチウム二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池(以下、「LiB」と略記することがある)は、二次電池の中でも高エネルギー密度を有するため、広く普及している。リチウムイオン二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な黒鉛などの活物質を含む負極とがセパレーターを介して配置され、電解液として、エチレンカーボネートなどの有機溶媒に、LiBF4等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液を満たして構成された、非水電解液系LiBが良く知られている。非水電解液系LiBの充放電は、二次電池中のリチウムイオンが非水電解液を介して正極-負極間を移動し、正極および負極の活物質にリチウムイオンが挿入・脱離することにより行われる。しかし、かかる非水電解液系LiBは、電解液の漏洩や非水電解液に用いられる有機溶媒による発火の可能性などの危険があり、安全性の点で改善が要望されている。
電池の用途拡大に伴って、自動車用電池や据え置き型電池などの大型電池が注目されている。大型電池では、小型電池に比べて安全性の確保がさらに重要になっており、上記電解液を使用した電池に対して、電解液を無機系の固体電解質に代えることで、電解液を用いるLiBに比べて、大型化しても安全性を確保し易いとして、安全で高い信頼性を有する全固体電池が提案されている。
また、LiBの負極活物質としては、従来は黒鉛をはじめとする炭素系材料が使用されていた。容量を増加する観点から負極活物質としてシリコンの利用が検討されている。シリコンは負極活物質としての理論容量密度が4200mAh/g(体積容量密度で2370mAh/cm3)であり、炭素材料と比較すると容量/重量の比で約11倍、容量/体積の比で約3倍も高く、二次電池の容量を飛躍的に増大することが期待されている。
しかし、シリコンは充放電にともなう体積変化が約400%と非常に大きいために、充放電を繰り返す過程においてシリコンの微粉化および孤立化といった劣化が生じる。その結果、充放電効率およびサイクル寿命特性が乏しく、特に長期での使用が前提となる電動化車両用の大型電池では、シリコンを負極活物質としたLiBの実用化は困難とされている。
特に、電解質溶液、イオン性液体やゲルポリマー電解質などの液系イオン伝導体を用いた従来型のリチウムイオン二次電池において、負極活物質としてシリコンを用いた場合には以下の課題が存在する。
(1)充放電時のシリコンの膨張・収縮により電極構造が崩壊し、電池性能が劣化す る。
(2)電池性能の劣化は、膨張・収縮によりシリコン粒子が微粉化するとともに、こ の微粉粒子表面に液系イオン伝導体の分解生成物が付着することにより、負極活物 質-イオン伝導体界面におけるイオン伝導性が低下するとともに、電子伝導性のパ スが切断されるために引き起こされている。
(3)微粉化しても電子伝導性を保持するために、カーボンなどの電子導電助剤を多 量に添加する必要がある。しかし、カーボンも負極活物質として作用する場合があ るため、カーボンとシリコンとの競合、カーボンによる不可逆容量の増大、および 、リチウムの局在化等の弊害が生じる。
(4)液系イオン伝導体の分解生成物が負極活物質であるシリコンとイオン伝導体と の界面に付着するため、この界面における電気抵抗が高くなり、充放電時の電流密 度を上げられず、電池性能の向上が困難である。さらに、この分解生成物の形成に 電気化学容量が消費されるため、不可逆容量が増大し、負極活物質としての電気化 学容量の減少が引き起こされる。
(5)このような現象が起こることで、シリコン微粉末が孤立化あるいは集電体から の脱落が生じ、次回の充放電に関与できなくなる。この状態でさらに充放電を行う と、集電体との接触を保っているシリコン粒子へのリチウム挿入量が増加すること になる。このため、該シリコン粒子の膨張収縮の変化がより大きくなり、さらに微 細化が進行する。これを繰り返すことで充放電に関与するシリコン粒子が減少し、 充放電容量が急激に低下する。すなわち、電極崩壊によりサイクル特性が劣化する 。
一方、固体電解質を用いた全固体電池におけるシリコン負極材料の課題は次のように考えられる。
(1)充電の際、すなわち、シリコンへのリチウムの挿入反応が起こる際には、活物 質の膨張が生じる。この時、固体電解質と活物質が稠密に充填されている電極層内 にはこの体積変化を緩和する機構がないため、電極層の上に形成されている固体電 解質層、さらには対極である正極層にも応力が生じ、これにより、固体電解質層の 破壊、負極層―正極層の短絡などが生じ、電池としての機能が損なわれる。
(2)さらに放電時、すなわち、負極活物質からのリチウムの引抜き反応が起こる際 には、活物質の体積収縮が生じる。この時、固体電解質層に引っ張り応力がかかり 、固体電解質粒子間の距離が離れるという現象が生じる。このため、活物質へのイ オン伝導パスが切断される。さらには、集電体や電極層に電子導電助剤として加え たカーボン系材料と活物質との接触も、活物質の収縮により解離する。このため、 電子伝導性パスも切断される。このようなことが原因となり、シリコン粒子が電気 化学反応系から外れるため、孤立化し、電気化学容量の急速な劣化が生じることに なる。また、充電時の膨張における問題が生じなかった場合においても、放電時の 活物質の収縮により、電池性能劣化が生じる。
このため、シリコンを負極活物質としたリチウムイオン二次電池は、高い容量密度が期待されながらも、その実用化は困難であった。充放電時のシリコンの膨張収縮にともなう電極崩壊を抑制する観点から、種々の技術的提案がある。特許文献1(特開2003-109590号公報)では、シリコンにリン、ホウ素またはアルミニウムをドープすることで、体積変化を緩和した負極材が開示されている。特許文献2(特開2005-11699号公報)には、負極の密度と電池内の隙間の大きさを制御することで、負極の体積変化を吸収し、体積変化の影響を低減した電池構造が提案されている。しかし、これらの特許文献に記載されている二次電池は非水電解液を用いたものであり、上記したように安全性の観点からは好ましいものではない。
また、特許文献3(特開2021-68706号公報)には、全固体電池の負極材のひとつとしてシリコンを例示されているが、使用例はなく、したがって充放電の繰り返しによるシリコンの微細化、孤立化という課題の記載もなく、その解決方法を示唆するところはない。また、全固体とは記載されているが、イオン性液体を用いるものであり、厳密な意味での全固体電池ではなく、液が漏出する危険は払拭できていない。
シリコンの微細化による容量低下は非水電解液系LiBおよび全固体電池の両者における課題であるが、その原因は異なっている。全固体電池での容量低下は、固体電解質あるいは電子導電材や集電体と、電極活物質であるシリコンとの接触不良が大きな要因である。このため、全固体電池作製プロセスにおいては比較的大きな成型圧を印加する工程がある。さらには、電池稼働時においても、接触通電を維持するために拘束圧と称する圧力がかけられる場合がある。これにより、全固体電池では、非水電解液系LiBよりは、シリコンの微細化による容量低下は起こり難いとされている。
全固体LiBにおいてもシリコンの適用が進められているが、特許文献4~6では、充放電容量:1200mAh/g程度と低い上、容量維持率も50%程度に留まっている。また、特許文献7では、シリコンのアモルファス化率の制御によって容量維持率を100%に改善しているが、容量自体は1200mAh/g程度のままである。特許文献8、9では、製造方法や充放電条件などによって拘束圧の増加抑制が記載されているが、充放電容量については触れられていない。更に、特許文献10では、シリコン粒子径及び負極層内の空隙率を規定しているが、空隙増加に伴って電池特性が低下するため、空隙率を抑制することが好ましいと記載されている。また、特許文献4~10のいずれにおいても空隙の大きさに係る記述はない。さらに、特許文献4~10のいずれにおいても、負極層中に活物質以外の添加剤として、イオン伝導体としての固体電解質ならびに電子導電剤を含む構成となっており、実質的に固体電解質や電子導電剤を含まない負極層に関する記述はない。
また、全固体電池において、一般的に負極活物質層は、電子伝導性を付与するための電子導電材としてアセチレンブラック等の微細カーボン粒子や金属微粉末、及び/または、イオン伝導性付与剤として固体電解質などを混合して形成されている。拘束圧下において充放電を行うと、シリコンの膨張収縮の際に、固体電解質内にクラック等が発生し、シリコンの孤立化が徐々に進み容量が低下する。また、電子導電材およびイオン伝導性付与剤を多量に添加することで、負極におけるシリコンの相対的体積が減少し、容量向上の観点からは好ましいものではない。
特開2003-109590号公報 特開2005-11699号公報 特開2021-68706号公報 特開2013-069416号公報 特開2013-222530号公報 特開2014-192093号公報 特開2017-059534号公報 特開2019-091547号公報 特開2019-140042号公報 特開2019-185897号公報
上記のように、安全性および容量向上の観点から、シリコンを負極活物質とした全固体リチウム二次電池を実現する要望は高いものの、多くの技術的課題があった。これらの課題を解決すべく、鋭意検討したところ、本発明者らは、特定の粒径を有するシリコンを負極活物質として用いることで、負極層内の空隙率を50容量%以上とし、活負極層内の空隙の大きさを0.5μm以下に制御できることを見出すとともに、全固体リチウム二次電池に固有の技術的課題の多くを解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、負極活物質(シリコン)の微細化、孤立化がなく、サイクル特性が良好な全固体リチウム二次電池を提供することを目的としている。
かかる課題を解決するため、本発明は、以下の要旨を包含する。
(1)平均粒子径が0.8~2.0μmのシリコン粒子を含む負極活物質層を、金属箔上に塗布形成した、全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極。
(2)前記負極活物質層が、前記シリコン粒子100質量部に対し、5質量部以下のカーボン系電子導電材、および20質量部以下のバインダーを含む、(1)に記載の全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極。
(3)負極活物質層内の空隙率が50容量%以上であり、かつ、負極活物質層内の空隙の大きさが0.5μm以下である(1)または(2)に記載の全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極。
(4)前記負極活物質層に固体電解質を含まない(1)~(3)のいずれかに記載の全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の負極を用いた全固体リチウム二次電池。
上記(3)における負極活物質層内の空隙率は、以下の手順により算出された値を指す。
(a)走査電子顕微鏡の画像から負極活物質層の膜厚を求め、単位面積当たりの負 極活物質層の体積V0を算出する。
(b)負極活物質層中の単位面積当たりのシリコン質量をシリコンの密度で除する 事によりシリコン自体の体積V1を算出する。
(c)負極活物質層に電子導電材やイオン導電性助剤を含む場合は、単位面積当た りの負極活物質層に含まれる電子導電材ならびにイオン導電性助剤の合算された 体積をV2とする。
(d)負極活物質層の空隙率は(V0-V1-V2)/V0×100(%)として 算出する。
また、上記(3)における負極活物質層内の空隙の大きさは、負極活物質層断面の走査電子顕微鏡写真に認められる独立して存在する100個以上の空隙の最大径を測定し、このメジアン径を意味する。
本発明では、特定の粒径を有するシリコン粒子を負極集電体である金属箔上に塗布することにより形成されるシリコン塗布膜を全固体リチウム二次電池の負極として使用する。このシリコン塗布膜を負極として全固体リチウム二次電池を組み立て、負極活物質であるシリコンにリチウムを挿入する(充電する)と、シリコンの一部、あるいは全部がアモルファス化するとともに、体積が膨張し、リチウムが挿入されたシリコン粒子が合一し、負極活物質層が緻密化する。このシリコンの膨張は元の体積の200~400%に及ぶが、シリコン塗布膜形成時に生成した空隙がこの体積膨張を緩和し、負極活物質層全体としては、膜厚方向へ1.5~2倍程度の膨張に抑えられる。これは、従来のシリコン塗布膜と比べて、大きな空隙率を有することによる。また、シリコンに吸蔵されたリチウムが引き抜かれる(放電)時には、負極活物質層は膜厚方向に収縮するとともに、負極活物質層内に縦割れが生じる。この時、集電体として粗面化した金属箔を用いると、アンカー効果により負極活物質層と負極集電体との接着性が良く、負極活物質層が負極集電体から剥がれ難くなることから、粗面化した金属箔を集電体として用いることが好ましい。また、負極活物質層内に縦割れが生じた膜構造を呈する。この時、膜厚は初期塗布膜の130~200%程度にとどまる。その後の充放電サイクルにおいては、このような膜厚変化を繰り返す。すなわち、初回の充放電時を除いて、充電時と放電時の膜厚方向への膨張・収縮量が比較的少なく抑えられるため、充放電サイクル特性が安定し、良好な特性を維持する。
上述したように、放電時には、負極活物質層は膜厚方向に収縮するとともに、層内に縦割れが生じる。この縦割れに固体電解質層から固体電解質が貫入する部分が形成され、この貫入構造は負極活物質層内でのイオン伝導パスとして機能する。さらに上述した負極活物質層は負極集電体および固体電解質層に密着しているため、電子導電材やイオン伝導性助剤を用いなくても、十分に負極として機能する電極膜を作製できる。これらの結果、電池充放電サイクル特性が良好で、かつ、充放電時の電流密度を高くできる全固体電池が得られる。
例示的な全固体リチウム二次電池の断面図である。 シリコン塗布膜形成後の負極活物質層上面を示す走査電子顕微鏡写真である。 シリコン塗布膜形成後の負極活物質層断面を示す走査電子顕微鏡写真である。 負極活物質層作製時のシリコンの平均粒子径と、負極活物質層内の空隙率および空隙の大きさとの関係を示すグラフである。 初回放電後(リチウムを引抜いた後)の負極活物質層断面を示す走査電子顕微鏡写真である。 初回放電後(リチウムを引抜いた後)の負極活物質層の断面写真であり、形成される縦割れに固体電解質が貫入している様子を示す。 シリコン負極を用いた全固体半電池の充放電曲線を示す。
以下、本発明の実施形態を説明する。まず、全固体リチウム二次電池用負極に用いる負極活物質であるシリコン粒子について説明し、ついで該粒子を含む、全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物、さらにこれを用いて得られる全固体リチウム二次電池用負極、該負極を含む全固体リチウム二次電池について説明する。なお、本明細書において全固体リチウム二次電池とは、電解質として非水電解液やイオン液体などの液状物を含まない電池をいう。
(全固体リチウム二次電池用負極活物質粒子)
本発明に係る全固体リチウム二次電池用負極に用いる活物質粒子は、平均粒子径が0.8~2.0μmのシリコンからなる。このシリコン粒子を用いて負極集電体である粗面化された金属箔上に負極活物質層を形成すると、負極活物質層内の空隙率および空隙の大きさが最適化され、充放電時の負極活物質の膨張、収縮に伴う体積変化が緩和され、サイクル特性が向上する。
負極活物質層内の空隙率ならびに空隙の大きさが制御された負極を用いた全固体リチウム二次電池では、活物質であるシリコンへのリチウムの挿入(充電)を行うと、シリコン粉末の一部あるいは全部がアモルファス化するとともに、粉末同士が合一し、緻密化する。また、シリコンに吸蔵されたリチウムイオンが引き抜かれた場合(放電の場合)、緻密化した負極活物質層内に縦割れ構造が形成される。このような効果のため、充放電に伴うシリコン活物質の体積膨張、収縮において膜厚方向への伸長、収縮が緩和される。
シリコンとは、多結晶、単結晶あるいは、非晶質のいずれの状態のシリコンであってもよい。したがって、本発明の負極活物質粒子は、多結晶シリコン粉末であってもよく、単結晶シリコン粉末であってもよく、非晶質シリコンであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。
シリコン粒子の平均粒子径は、負極活物質層の空隙率および空隙の大きさ最適化する観点から、0.8~2.0μmである。なお、平均粒子径は、レーザー散乱法による粒度分布測定結果における50%累積径(D50)を意味する。
シリコン粒子は、好ましくは以下の特性を有する。
粒子の比表面積は、3~50m2/gの範囲であり、10~25m2/gのものがより好ましい。比表面積は、定容法によるガス吸着測定により求められる。
なお、シリコン粒子が結晶性の場合、シリコンの平均結晶子径は、30~110nmの範囲であり、50~90nmのものがより好ましい。平均結晶子径は、X線回折パターンからScherrer法、Willamson-Hall法、Halder-Wagner法などの方法で解析できる。
粒子形状は、粉砕によって得られる場合は不定形を成すが、球状などの他の形状も特に制限なく採用される。
シリコン粒子と後述するバインダー成分との密着性を向上させるために、シリコン粒子に表面処理を施してもよい。
シリコンの純度は特に限定はされないが、本発明においてはシリコンの純度は、90%以上であることが好ましい。しかしながら、硫化物系固体電解質に対する化学的安定性が向上する可能性、あるいはリチウムの拡散性を向上させる可能性が考えられるため、本発明においては、ドープされたシリコンを用いることができる。
(全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物)
上記負極活物質を、負極を構成する成分と混合し、負極形成用組成物とし、集電体上に負極活物質層を形成することで、負極が得られる。上記負極活物質を含む組成物により負極を構成すると、負極の空隙率が適切な範囲に制御され、また負極内の空隙の大きさも適切な範囲となる。これにより、充放電時の負極活物質の膨張、収縮に伴う体積変化が緩和され、サイクル特性ならびに出力特性が向上する。また、負極の構造的な変化が抑制されるため、負極活物質と集電体および固体電解質との密着性が維持され、電子導電材やイオン伝導性付与剤を用いなくても、十分に負極として機能する電極膜を作製できる。
全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物は、上記した負極用活物質粒子を含み、カ-ボン系電子導電材の含有量が、負極活物質粒子100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましい。本発明によれば、カーボン系電子導電材の割合が低減されるため、活物質粒子の相対量を増加でき、容量向上に寄与できる。全固体電池負極形成用組成物におけるカーボン系電子導電材の含有量は好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは実質的に含まない。
全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物は、イオン伝導性を向上するため、イオン伝導性付与剤を含有することができる。かかるイオン伝導性付与剤としては、後述する固体電解質を用いることができる。イオン伝導性付与剤の配合量が多すぎると、活物質粒子の相対量が低下し、サイクル特性も低下するため、全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物におけるイオン伝導性付与剤の含有量は好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは実質的に含まない。
全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物は、バインダーを含むことができる。バインダーの配合量は、負極活物質粒子100質量部に対し、好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下である。バインダーの配合量が多すぎると、負極活物質層における活物質量が相対的に低下するため、電池容量を増加する上では好ましくない。
バインダーとしては、たとえば熱硬化性ポリイミド、熱硬化性ポリアミドイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体またはポリビニルアルコール等の水溶性高分子;ポリプロピレンカーボネート等のポリカーボネート系樹脂;ポリフッ化ビニリデン等;スチレン-ブタジエン共重合体(いわゆるSBRゴム系)やスチレン-プロピレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体(いわゆるSES系やSEPS系)が挙げられる。
また、全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物は、塗料化のために分散媒を含むことができる。分散媒としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アミド類、イミド類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、複素環類などから適宜選択され、たとえば、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルアセテート、ノルマルプロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ノルマルブチルアセテート、イソブチルアセテート、ヘキシルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ヘキサン、ノナン、デカン、イソデカン、ドデカン、イソドデカン、ターペン、ナフテン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、アルキルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、芳香族系高沸点溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、及びジヒドロターピネオールアセテート、NMP(N-メチルピロリドン)、メトキシベンゼン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等を挙げる事ができる。これらは単独で用いて良いし、組み合わせて用いても良い。分散媒の使用量は、全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物の粘度が、厚塗りが可能となる量であれば良い。かかる分散媒は、全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物を塗工後、乾燥することで除去可能される。
(全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極)
上記全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物からなる負極活物質層を集電体上に塗布形成することで、全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極が得られる。負極は、電池を構成する部品のひとつであり、電池を組み立て、充放電を行うと、活物質であるシリコンによるリチウムイオンの吸蔵・放出により充放電が行われる。
上記全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物からなる負極活物質層を集電体上に形成する場合、負極活物質層中に存在する空隙の大きさは、好ましくは0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.2~0.5μmの範囲にあり、特に好ましくは0.25~0.4μmである。また負極活物質層中の空隙率は、好ましくは50容量%以上であり、さらに好ましくは50~65容量%の範囲である。上記負極の空隙の大きさ、空隙率は、主に活物質粒子の平均粒子径により制御される。なお、負極活物質層中の空隙率とは、負極活物質層の体積から、負極活物質、電子導電材、イオン伝導性付与剤の体積を差し引いた、空隙の体積の割合を意味する。
全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物からなる負極活物質層を集電体上に形成するには、全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物を集電体上に塗布、乾燥すれば良い。塗布法は特に限定はされず、たとえばドクターブレードを用いた塗工であってもよく、グラビアコート、スクリーンコート、ダイコート、バーコート、スピンコート、ニップコート等の一般的な塗工であってもよい。乾燥は使用した分散媒が十分に揮発する程度の温度で行えばよい。
負極活物質層の厚みに特に制限はないが、薄すぎると電池容量が低くなり、また厚すぎると電子伝導性やイオン伝導性が低下することがある。したがって、負極活物質層の厚みは、通常5~40μm厚、好ましくは10~30μm厚とする。
負極に用いる集電体としては、一般に銅箔、ニッケル箔、鉄箔あるいはSUS箔が用いられるが、他の導電性金属箔を用いてもよい。集電体は、表面が粗面化されていてもよい。粗面化の方法は特に限定はされず、公知の表面処理が施されていてもよく、例えば、機械的表面加工、エッチング、化成処理、陽極酸化、ウォッシュプライマー、コロナ放電、グロー放電などの処理が挙げられる。粗面化された表面の粗さ(算術平均粗さRa)は1.2~2.5であることが好ましい。また、集電体は、防錆処理をされた電解銅であってもよい。集電体の厚さは、特に制限されないが、電池の小型化やハンドリング性などの観点から、通常3μm~100μm厚、ロール・トゥー・ロール製法を行う場合、好ましくは5μm厚~50μm厚のものが用いられる。集電体の形状は、孔の開いていないシート状でもよいし、二次元状のメッシュ、三次元状の網状やパンチングメタルなど、孔の開いているシート状でもよい。
全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極は、集電体上に上記負極活物質層を有するが、負極活物質層上に、さらに固体電解質層が形成されていてもよい。固体電解質は特に限定はされないが、汎用されている硫化物系固体電解質および酸化物系固体電解質を例示できる。硫化物系固体電解質は、リチウムイオン伝導度が高い点から有利である。酸化物系固体電解質は、化学的に比較的安定であり、高電圧耐性の観点から有利である。固体電解質層に酸化物系固体電解質を用いる場合には、必要に応じて汎用のイオン伝導材を併用し、リチウムイオン伝導度を向上させてもよい。
硫化物系固体電解質は、例えば、リチウム、リン、および硫黄を含有し、さらに、O、Al、B、Si、Ge、I、Br、Clなどの元素を含有しても良い。具体的には、非晶質Li3PS4、非晶質40LiI・60Li3PS4(mol%)、Li10312Br、Li728I、β-Li3PS4、α-Li3PS4、Li7311結晶などが用いられる。Li10GeP212に代表されるいわゆるLGPS系固体電解質やLi6PS5X(X=I,Br,Cl)に代表されるアルジロダイト系固体電解質を用いても良い。
酸化物系固体電解質は、例えば、Li5+XLa3(ZrX,A2-X)O12(式中、AはSc,Ti,C,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,Ga,Ge,Snからなる群より選ばれた1種類以上の元素、Xは1.4≦X≦2)、Li1+XAlXTi2-X(PO43(Xは0≦X≦1)、Li3XLa2/3-XTiO3(Xは0≦X≦2/3)などが挙げられる。これらは、室温におけるイオン伝導度が高く、電気化学的安定性が高い。
酸化物系固体電解質は、電気化学的安定性の観点から、シリカ(SiO2)粒子、γ-アルミナ(Al23)粒子、セリア(CeO2)粒子、ジルコニア(ZrO2)粒子等の絶縁性粒子を追加してもよい。また、他の公知の金属酸化物粒子を用いてもよい。
上記固体電解質は、ヤング率(25℃)が好ましくは10~70GPa、さらに好ましくは15~30GPaであるものが、負極活物質間に生じる隙間に固体電解質が貫入し易く、イオン伝導性をより高く維持することができるために好ましい。ヤング率(25℃)が10~70GPaの固体電解質としては、非晶質Li3PS4、LiX-Li3PS4(X=I,Br,Cl)系ガラス、β-Li3PS4、α-Li3PS4、LI7311結晶、Li10GeP212に代表されるLGPS結晶系固体電解質、Li6PS5X(X=I,Br,Cl)に代表されるアルジロダイト系結晶などが挙げられる。
固体電解質層の膜厚に特に制限はないが、充放電に伴うシリコン負極の膨張・収縮に耐えうる強度を保つという観点から10μm以上であることが好ましい。
負極活物質としてシリコンを使用する場合、シリコン負極の充電量の理論最大値はおおよそ4200mAhg-1程度であるが、実用的な充放電の使用範囲は、約1000~3000mAhg-1の範囲である。
また、負極活物質として従来のシリコンを使用する場合、全固体電池の充放電時の電流密度は、電流密度の増加に伴って充放電容量の低下が生じるため、実用的には0.1~0.4mA/cm-2の範囲で使用される。これに対して、本発明においては、電流密度を0.6mA/cm-2以上に増加させても顕著な容量低下を示さず良好なサイクル特性を維持した。即ち、本発明にかかる全固体リチウム二次電池が長期間安定してサイクル特性が良好な電池性能を発揮するのは、負極活物質の体積変化が空隙により緩和され、負極活物質層と固体電解質との界面が安定していることもその一因として考えられる。
(全固体リチウム二次電池)
本発明の全固体リチウム二次電池は、正極と、負極と、固体電解質層とを有する。負極は前記した全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極からなる。固体電解質層は、前記固体電解質からなる。本発明の全固体リチウム二次電池において、負極以外の構成は、公知の全固体電池と同様の構成を採用することができ、特に限定はされない。正極は、正極活物質層及び正極集電体からなり、公知の正極活物質、集電体を用いればよい。全固体電池の構成を図1に示す。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
(シリコンの平均粒子径)
シリコンの平均粒子径・標準偏差等は、LA-950S2(堀場製作所製)を使用し、レーザー回折/散乱光強度から求めた。
(シリコンの比表面積)
シリコン粒子の比表面積は、BELSORP-miniX(MicrotracBEL社製)を使用し、定容法によるガス吸着測定により求めた。
(シリコンの結晶子径)
シリコンの結晶子径は、Smart Lab(リガク社製)を使用しX線回折プロファイルからHalder-Wagner法により求めた。
(負極活物質層の空隙率)
充放電前の負極活物質層の空隙率を以下のように測定した。
(a)走査電子顕微鏡の画像から負極活物質層の膜厚を求め、単位面積当たりの負極活物質層の体積V0を算出する。
(b)負極活物質層中の単位面積当たりのシリコン質量をシリコンの密度で除する事によりシリコン自体の体積V1を算出する。
(c)負極活物質層に電子導電材やイオン導電性助剤を含む場合は、単位面積当たりの負極活物質層に含まれる電子導電材ならびにイオン導電性助剤の合算された体積をV2とする。
(d)負極活物質層の空隙率は(V0-V1-V2)/V0×100(%)として算出する。
以下に示す実施例においては、電子導電材およびイオン導電性助剤を含まない。
(負極活物質層の空隙の大きさ)
充放電前の負極活物質層の空隙の大きさを以下のように測定した。
(1)走査電子顕微鏡の画像により、シリコン塗布膜断面を観察し、この画像から空隙の大きさ(長手方向の軸径)を測定した。
(2)の測定を、100ケ所以上の空隙について行い、そのメジアン径を求めた。
(サイクル特性)
充放電試験は、BTS-2004H(Nagano社製)を使用し、電流密度:0.1 mAcm-2とした定電流密度試験を行った。測定温度:25℃として、初回の充電量のみ3000mAhg-1とするが、初回の放電量は2000mAhg-1とした。また、2回目以降は初回放電後の状態を0mAhg-1として、そこからの充電量を2000mAhg-1、放電量は2000mAhg-1とすることにより実施した。前記2000mAhg-1の充放電を繰り返して行い、サイクル毎に充放電容量の推移を監視した。
尚、充放電中、上記設定容量に達する前に、負極の電位が、金属Li電極に対して充電時の下限電圧である+0.02Vあるいは放電時の上限電圧である+1.00Vに達した場合は、容量限度に到達したと判断し、充電あるいは放電操作を一旦中断する。この際の充電容量あるいは放電容量が設定容量である2000mAhg-1に対して1800mAhg-1(容量維持率90%)以上の場合は、次の放電あるいは充電操作を再開しサイクル試験を継続した。
充放電試験において、サイクル回数が100回に達した時点あるいは容量維持率が90%未満となった時点でテストを終了した。容量低下を開始したサイクル回数及びテスト終了のサイクル回数によって電池性能の優劣を評価した。
(電池材料)
下記材料を用いて半電池(ハーフセル)を組み立て、負極の構造、特性を評価した。
対極
リチウム(Li)箔:膜厚0.1mm(本城金属株式会社製)
インジウム(In)箔:膜厚0.127mm(アルドリッチ社製)
負極
負極集電体:CF-T7F-35(福田金属箔粉工業株式会社製、算術平均粗さRa:2.07)
バインダー:熱硬化性ポリイミド樹脂(株式会社アイ・エス・テイ社製DreamBond(商品名))を用い、また溶媒としてNMPを用いた。
カーボン系電子導電材
固体電解質:a-40LiI・60Li3PS3(メカニカルミリング法により作製) シリコン粉末として、株式会社トクヤマ製多結晶シリコンを原料に用い、遊星ミルにより粉砕し、下記の粉末をそれぞれ調製して使用した。
Figure 0007327850000002
(実施例1~4、比較例1~3)
(負極の製造)
上記の多結晶シリコン粉末360mgと、ポリイミド溶液を固形分約40mgとなる量で混合し、さらにNMP(N-メチルピロリドン)を加え、全固体リチウム二次電池用負極形成用組成物を得た。該組成物を2時間撹拌(自転1056rpm、公転1600rpm)し、6分脱泡(自転290rpm、公転1360rpm)した。実施例4、比較例3では、電子導電材も配合した。
得られた塗布液を、負極集電体上にドクターブレードを用いて塗工した(送り速度1.9mm/秒、ブレードのギャップ12.5μm)。室温で半日以上乾燥後、真空下でヒーター加熱(250~300℃、30分)し、ポリイミドを硬化して負極を得た。負極の空隙率を測定した。図2Aに負極活物質層上面の走査電子顕微鏡写真を、図2Bに負極活物質層の断面写真を示す。活物質層の厚みは11~14μmの範囲であった。負極活物質層内に存在する空隙の大きさを走査電子顕微鏡写真から測定した。結果を表2に示す。
(シリコン粒子の粒径による負極活物質層の空隙率と空隙の大きさの制御)
図3に、結晶性シリコンの平均粒子径と、これを用いて負極活物質層を形成した際の、負極活物質層内の空隙率および空隙の大きさの変化を示した。Si粒径の増加とともに、塗布膜中の空隙率は増加し、粒径が1.0μm付近でほぼ一定になる。この空隙は、シリコンの膨張緩和に寄与する。一方、空隙の大きさを示すメジアン径はSi粒径の増加とともに大きくなるが、空隙1つの大きさが大きくなるほど、膨張の緩和に有効に働くことが難しくなる。このようにSi粒径により、塗膜中の空隙率と空隙の大きさを変化させることができる。
(半電池製造)
負極のシートを9mmΦに打ち抜いたものを絶縁性のダイに入れ、負極シートの上から固体電解質粉末65mgを装填し、成型圧:560MPaで一軸プレスを行った。プレス後の固体電解質層の厚みは、300~400μmであった。上部のパンチを一旦外したのち、6mmΦに打ち抜いたInとLiの金属箔をIn/Li/Inの順に重ねた対極を、固体電解質層の上側に載せ、50MPa程度の圧力で再度一軸プレスすることにより、全固体型ハーフセル(半電池)を作製した。上記ハーフセルの組立は、全て酸素、窒素、水分等による影響を排除するため、外気を遮断したグローブボックス内アルゴン雰囲気下で実施した。得られたハーフセルについて上記の電池評価を行った。初回放電後の負極活物質層断面の走査電子顕微鏡写真を図4および図5に示す。また、実施例2として表2に示した半電池の充放電曲線を図6に示す。
図4および図5から明らかなように、放電後には負極活物質層内に縦割れ構造が形成されている。この効果のため、充放電に伴うシリコン活物質の体積膨張、収縮において膜厚方向への伸長、収縮が緩和される。また、この縦割れの一部には、固体電解質層から固体電解質が貫入する部分が形成され、この貫入構造は負極活物質層内でのイオン伝導パスとして機能する。さらに縦割れ構造を有する負極活物質層は負極集電体および固体電解質層に密着しているため、電子導電材やイオン伝導性助剤を用いなくても、高い電子伝導性およびイオン伝導性を達成できる。これらの効果により、図6に示したように、1.0mA/cm2の電流密度による充放電においても、2,000mAh/gの電気化学容量を維持し、電池充放電サイクル特性が良好で、かつ、充放電時の電流密度を高くできる全固体リチウム二次電池用シリコン負極として機能する。
実施例として、平均粒径が0.8、1.0および1.6μmのシリコン粒子を用いて作製したシリコン負極ならびに平均粒径1.0μmのシリコン粒子と電子導電材を1.1質量部含むシリコン負極の特性を表2に示す。また、この表2には、比較例として平均粒径0.5および3.9μmのシリコン粒子を用いて作製したシリコン負極ならびに平均粒径1.0μmシリコン粒子と電子導電材を5.9質量部含むシリコン負極の特性を併せて示した。表中の電子導電材添加量およびバインダー添加量は、シリコン粒子100質量部に対する割合を示す。
Figure 0007327850000003
A:100サイクル後の充放電容量2,000mAh/g(容量維持率100%)
F1:初回充電量3,000mAh/gに到達せず、放電量1,300mAh/gのためテスト終了
F2:20サイクルで充放電容量低下、50サイクル目で容量維持率90%未満となりテスト終了
F3:25サイクルで充放電容量低下、50サイクル目で容量維持率90%未満となりテスト終了
1 全固体電池
11 負極集電体
12 負極活物質層
13 固体電解質層
14 正極活物質層
15 正極集電体
21 負極活物質層に形成される縦割れ
31 負極活物質層の縦割れに貫入した固体電解質
32 負極活物質層の縦割れに残った空隙

Claims (3)

  1. 平均粒子径が0.8~2.0μmのシリコン粒子を含む負極活物質層を、金属箔上に塗布形成した、全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極であって、
    前記負極活物質層が、前記シリコン粒子100質量部に対し、5質量部以下のカーボン系電子導電材、および20質量部以下のバインダーを含み、
    前記負極活物質層内の空隙率が50%以上であり、かつ、前記負極活物質層内の空隙の大きさが0.5μm以下である全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極
    なお、負極活物質層内の空隙率は以下の手順により算出された値を指す。
    (a)走査電子顕微鏡の画像から負極活物質層の膜厚を求め、単位面積 当たりの負極活物質層の体積V0を算出する。
    (b)負極活物質層中の単位面積当たりのシリコン質量をシリコンの密 度で除する事によりシリコン自体の体積V1を算出する。
    (c)負極活物質層に電子導電性助剤やイオン導電性助剤を含む場合は 、単位面積当たりの負極活物質層に含まれる電子導電性助剤ならびにイオン 導電性助剤の合算された体積をV2とする。
    (d)負極活物質層の空隙率は(V0-V1-V2)/V0×100( %)として算出する。
    また、負極活物質層内の空隙の大きさは、負極活物質層断面の走査電子顕微鏡写真に認められる独立して存在する100個以上の空隙の最大径を測定し、このメジアン径を意味する。
  2. 前記負極活物質層に固体電解質を含まない請求項1に記載の全固体リチウム二次電池用塗布型シリコン負極。
  3. 請求項1または2に記載の負極を用いた全固体リチウム二次電池。

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