以下の説明では、各図に示す実施形態の駆動装置1が水平な路面R上に位置する車両100に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置1が搭載される車両100の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両100の前側であり、-X側は、車両100の後側である。本実施形態ではX軸方向を、第1方向と呼ぶ場合がある。Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向であって、車両100の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両100の左側であり、-Y側は、車両100の右側である。Y軸方向は、第2方向と言い換えてもよい。前後方向(第1方向)および左右方向(第2方向)は、鉛直方向と直交する水平方向である。
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両100の後側であり、-X側が車両100の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両100の右側であり、-Y側は、車両100の左側である。
各図に適宜示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両100の左右方向に延びる。モータ軸J1は、駆動装置1が備えるモータ2の中心軸である。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において第1方向(X軸方向)は、モータ2のモータ軸J1と直交する方向である。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータ2を動力源とする車両100に搭載され、その動力源として使用される。
図1に示すように、車両100は、駆動装置1と、駆動装置1が取り付けられる車体101と、駆動装置1により回転する車軸55と、車軸55に接続される車輪102と、アンダーカバー103と、バッテリ104と、を備える。車輪102は、複数設けられる。本実施形態では駆動装置1が、複数の車輪102のうち前輪102の車軸55を回転させる。つまり駆動装置1は、車両100の車軸55を回転させる。なお駆動装置1は、後輪の車軸を回転させてもよい。アンダーカバー103は、車体101の下部に配置される。アンダーカバー103は、車体101に取り外し可能に固定される。アンダーカバー103は、路面Rと対向する。アンダーカバー103は、駆動装置1の後述する銘板9を下側から覆う。本実施形態ではアンダーカバー103が、駆動装置1全体を下側から覆う。バッテリ104は、駆動装置1に供給される電力を蓄える。バッテリ104と駆動装置1とは、図示しない配線部材により電気的に接続される。
図2~図6に示すように、駆動装置1は、モータ2と、減速装置4と、差動装置5と、ハウジング6と、オイルポンプ(補機)70と、インバータ7と、インバータケース8と、銘板9と、を備える。ハウジング6は、内部にモータ2を収容するモータ収容部81と、内部に減速装置4および差動装置5を収容するギヤ収容部82と、を有する。つまりハウジング6は、モータ2、減速装置4および差動装置5を収容する。ギヤ収容部82は、モータ収容部81の左側に位置する。
本実施形態においてモータ2は、インナーロータ型のモータである。図2に示すように、モータ2は、ロータ20と、ステータ30と、ベアリング26,27と、を備える。ロータ20は、水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転する。ロータ20は、シャフト21と、ロータ本体24と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体24は、ロータコアと、ロータコアに固定されるロータマグネットと、を有する。ロータ20のトルクは、減速装置4に伝達される。
シャフト21は、モータ軸J1を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J1を中心として回転する。シャフト21は、内部に中空部22が設けられた中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを繋ぐ。
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容部81とギヤ収容部82とに跨って延びる。シャフト21の左側の端部は、ギヤ収容部82の内部に位置する。シャフト21の左側の端部には、減速装置4の後述する第1のギヤ41が固定される。シャフト21は、ベアリング26,27により回転可能に支持される。
ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間をあけて対向する。本実施形態ではステータ30が、ロータ20の径方向外側に位置する。ステータ30は、ステータコア32と、コイルアセンブリ33と、を有する。ステータコア32は、モータ収容部81の内周面に固定される。図示は省略するが、ステータコア32は、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。
コイルアセンブリ33は、ステータコア32に装着される。コイルアセンブリ33は、複数のコイル31を有する。複数のコイル31は、図示しないインシュレータを介してステータコア32の各ティースにそれぞれ装着される。複数のコイル31は、周方向に並んで配置される。複数のコイル31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。図示は省略するが、コイルアセンブリ33は、各コイル31を結束する結束部材等を有してもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。
コイルアセンブリ33は、ステータコア32から軸方向に突出するコイルエンド33a,33bを有する。コイルエンド33aは、ステータコア32から右側に突出する部分である。コイルエンド33bは、ステータコア32から左側に突出する部分である。コイルエンド33aは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも右側に突出する部分を含む。コイルエンド33bは、コイルアセンブリ33に含まれる各コイル31のうちステータコア32よりも左側に突出する部分を含む。本実施形態においてコイルエンド33a,33bは、モータ軸J1を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド33a,33bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
ベアリング26,27は、ロータ20を回転可能に支持する。ベアリング26,27は、例えば、ボールベアリングである。ベアリング26は、ロータ20のうちステータコア32よりも右側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング26は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも右側に位置する部分を支持する。ベアリング26は、モータ収容部81のうちロータ20およびステータ30の右側を覆う壁部に保持される。
ベアリング27は、ロータ20のうちステータコア32よりも左側に位置する部分を回転可能に支持するベアリングである。本実施形態においてベアリング27は、シャフト21のうちロータ本体24が固定される部分よりも左側に位置する部分を支持する。ベアリング27は、後述する隔壁61cに保持される。
減速装置4は、モータ2に接続される。減速装置4は、シャフト21の左側の端部に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1のギヤ41と、第2のギヤ42と、第3のギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。
第1のギヤ41は、シャフト21の左側の端部における外周面に固定される。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J1を中心に回転する。中間シャフト45は、中間軸J2に沿って延びる。本実施形態において中間軸J2は、モータ軸J1と平行である。図3に示すように、本実施形態において中間軸J2は、モータ軸J1よりも下側に位置する。中間軸J2は、モータ軸J1よりも後側(-X側)に位置する。中間シャフト45は、中間軸J2を中心として回転する。
図2に示すように、第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に固定される。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J2を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5の後述するリングギヤ51と噛み合う。第2のギヤ42の外径は、第3のギヤ43の外径よりも大きい。本実施形態において第2のギヤ42の下側の端部は、減速装置4のうちで最も下側に位置する部分である。
モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。より詳細には、モータ2から出力されるトルクは、シャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
差動装置5は、減速装置4に接続される。これにより、差動装置5は、減速装置4を介してモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両100の車輪102に伝達する装置である。差動装置5は、車両100の旋回時に、左右の車輪102の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、車軸55を差動軸J3回りに回転させる。これにより、駆動装置1は、車両100の車軸55を回転させる。
本実施形態において差動軸J3は、モータ軸J1と平行である。すなわち、本実施形態において差動軸J3の軸方向は、モータ軸J1の軸方向と同じ方向である。図3に示すように、本実施形態において差動軸J3は、モータ軸J1および中間軸J2よりも後側(-X側)に位置する。差動軸J3は、モータ軸J1よりも下側に位置する。差動軸J3は、鉛直方向において中間軸J2とほぼ同じ位置に位置する。差動軸J3は、中間軸J2よりも僅かに上側に位置する。
差動装置5は、ギヤ収容部82の内部において減速装置4の後側(-X側)に位置する。差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。図2に示すように、リングギヤ51は、差動軸J3回りに回転するギヤである。リングギヤ51は、第3のギヤ43と噛み合う。これにより、リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。リングギヤ51の下側の端部は、減速装置4よりも下側に位置する。本実施形態においてリングギヤ51の下側の端部は、差動装置5のうちで最も下側に位置する。
ハウジング6は、駆動装置1の外装筐体の一部を構成する。ハウジング6は、例えば金属製であり、導電性を有する。ハウジング6は、下面部6aと、ボス部6bと、隔壁61cと、を有する。
図3~図6に示すように、下面部6aは、ハウジング6の外面の一部を構成する。下面部6aは、鉛直方向(Z軸方向)のうち、下側(-Z側)を向く。すなわち下面部6aは、ハウジング6の外面のうち、下側を向く外面部を構成する。下面部6aは、アンダーカバー103(図1参照)と対向する。ハウジング6の最下部6cは、下面部6aに配置される。ハウジング6の最下部6cは、下面部6aのうちオイルポンプ70の直下に位置する部分を含む。下面部6aのうちオイルポンプ70の直下に位置する部分(最下部6c)は、平面状の部分を有する。この平面状の部分は、鉛直方向と直交する方向に拡がる。
図6に示すように、下面部6aは、肉抜き部6fと、刻印部6gと、を有する。肉抜き部6fおよび刻印部6gは、下面部6aのうちオイルポンプ70の直下に位置する部分(最下部6c)に配置される。肉抜き部6fは、下面部6aのうちオイルポンプ70の直下に位置する部分から上側に窪む。肉抜き部6fは、銘板9により下側から塞がれる。すなわち肉抜き部6fは、下側から見て、銘板9の外周の内側に配置される。刻印部6gは、平面状である。刻印部6gは、鉛直方向と直交する方向に拡がる。刻印部6gは、肉抜き部6fの前側(+X側)に位置する。刻印部6gは、銘板9の前側に隣り合って配置される。刻印部6gには、例えば各種番号などの各種情報が表示される。刻印部6gには、各種情報が刻印により表示される。
例えば本実施形態とは異なり、下面部6aのうちオイルポンプ70の直下に位置する部分(最下部6c)の全体が平面状であると、オイルポンプ70の形状等ハウジング6の形状上の制約条件があるため、最下部6cに肉厚が不均一な場所ができて、ヒケや巣が発生するおそれがある。一方、本実施形態によれば、肉抜き部6fを設けることによりヒケや巣の発生を抑制することができる。これにより、最下部6cの刻印部6gを平面にすることができ、刻印が可能である。また、肉抜き部6fが銘板9により下側から塞がれる。これにより、肉抜き部6fを設けたとしても銘板9で覆うことができるため、最下部6cに各種情報を集約できる。
ボス部6bは、柱状であり、鉛直方向に延びる。ボス部6bは、下面部6aから下側に突出する。ボス部6bは、ハウジング6の最下部6cに配置される。ボス部6bは、互いに間隔をあけて複数設けられる。複数のボス部6bは、第1方向(X軸方向)、および、第2方向つまりモータ軸J1の軸方向(Y軸方向)に、互いに間隔をあけて配置される。複数のボス部6bのうち少なくとも1つは、下面部6aにおいてオイルポンプ70の直下に配置される。つまりボス部6bは、下面部6aのうちオイルポンプ70の直下に位置する部分に配置される。ボス部6bは、第1部分6dと、第2部分6eと、を有する。第1部分6dおよび第2部分6eについては、別途後述する。
図2に示すように、隔壁61cは、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とを軸方向に区画する。隔壁61cは、隔壁61cを軸方向に貫通する隔壁開口68を有する。モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とは、隔壁開口68を通して互いに繋がる。
ハウジング6の内部には、オイルOが収容される。すなわち、モータ収容部81の内部およびギヤ収容部82の内部には、オイルOが収容される。ギヤ収容部82の内部における下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。オイル溜りPの油面Sは、リングギヤ51の下側の端部よりも上側に位置する。これにより、リングギヤ51の下側の端部は、ギヤ収容部82内のオイルOに浸漬される。オイル溜りPの油面Sは、差動軸J3および車軸55よりも下側に位置する。
オイル溜りPのオイルOは、後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られる。モータ収容部81の内部に送られたオイルOは、モータ収容部81の内部における下部領域に溜まる。モータ収容部81の内部に溜まったオイルOの少なくとも一部は、隔壁開口68を通してギヤ収容部82に移動し、オイル溜りPに戻る。
なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルOが収容される」とは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際には、ある部分の内部にオイルOが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部81の内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部81の内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部81の内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部82に移動してしまっていてもよい。なお、後述する油路90によってモータ収容部81の内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部81の内部に残っていてもよい。
また、本明細書において「リングギヤ51の下側の端部がギヤ収容部82内のオイルOに浸漬される」とは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、リングギヤ51の下側の端部がギヤ収容部82内のオイルOに浸漬されればよく、モータ2が駆動している最中またはモータ2が停止している間の一部において、リングギヤ51の下側の端部がギヤ収容部82内のオイルOに浸漬されなくてもよい。例えば、オイル溜りPのオイルOが後述する油路90によってモータ収容部81の内部に送られた結果として、オイル溜りPの油面Sが下がり、一時的にリングギヤ51の下側の端部がオイルOに浸漬しない状態となってもよい。
オイルOは、後述する油路90内を循環する。オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOとしては、潤滑油および冷却油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
ギヤ収容部82の底部82aおよびモータ収容部81の底部81aは、ハウジング6の下面部6aを構成する。図2に示すように、ギヤ収容部82の底部82aは、モータ収容部81の底部81aよりも下側に位置する部分を有する。そのため、ギヤ収容部82内からモータ収容部81内に送られたオイルOが隔壁開口68を通してギヤ収容部82内に流れやすい。
図4および図5に示すように、ギヤ収容部82は、第1方向(X軸方向)に延びる。ギヤ収容部82は、モータ収容部81の左側の端部から後側に突出する。ギヤ収容部82は、第1収容部82cと、第2収容部82dと、を有する。第1収容部82cは、ギヤ収容部82のうちモータ収容部81の左側に位置する部分である。第1収容部82cは、モータ軸J1の軸方向(Y軸方向)から見て、モータ収容部81と重なる。第2収容部82dは、ギヤ収容部82のうちモータ収容部81よりも後側に突出する部分である。第1収容部82cは、第2収容部82dよりも左側に突出する。第1収容部82cの内部には、減速装置4が収容される。第2収容部82dの内部には、差動装置5が収容される。差動装置5の前側の一部は、第1収容部82cの内部に位置する。
第2収容部82dは、孔部82eを有する。つまりギヤ収容部82は、孔部82eを有する。図2に示すように、孔部82eは、ギヤ収容部82のうち差動装置5と軸方向(Y軸方向)に対向する壁部を貫通する。孔部82eは、差動軸J3を中心とする円形状の孔である。孔部82eには、車軸55が通される。
駆動装置1には、ハウジング6の内部においてオイルOが循環する油路90が設けられる。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給し、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ収容部81の内部とギヤ収容部82の内部とに跨って設けられる。
なお、本明細書において「油路」とは、オイルの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルの流動を作る「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。オイルを一時的に滞留させる経路とは、例えば、オイルを貯留するリザーバ等を含む。
油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ収容部82内に設けられる。
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからオイルOをかき上げて、第1のリザーバ93でオイルOを受ける経路である。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面が高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。ロータ内経路91dは、オイルOがシャフト21の連通孔23からロータ本体24の内部を通過して、ステータ30に飛散する経路である。
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30と熱交換することでステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を通してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第1の油路91は、オイルOをロータ20およびステータ30に供給する。
第2の油路92においてオイルOは、オイル溜りPからステータ30の上側まで引き上げられてステータ30に供給される。すなわち、第2の油路92は、オイルOをステータ30の上側からステータ30に供給する。第2の油路92には、オイルポンプ70と、クーラー97と、第2のリザーバ94と、が設けられる。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、を有する。
第1の流路92aは、オイル溜りPとオイルポンプ70とを繋ぐ経路であり、図示しないストレーナの内部を通る。第2の流路92bおよび第3の流路92cは、ハウジング6の壁部に設けられる。第2の流路92bは、オイルポンプ70とクーラー97とを繋ぐ。第2の流路92bは、モータ収容部81の底部81aに設けられる。第3の流路92cは、クーラー97から上側に延びる。第3の流路92cは、モータ収容部81の壁部に設けられる。図示は省略するが、第3の流路92cは、ステータ30の上側においてモータ収容部81の内部に開口する供給口を有する。この供給口は、モータ収容部81の内部にオイルOを供給する。
オイルポンプ70は、駆動装置1の補機である。つまり本実施形態において補機は、オイルポンプ70である。補機は、ハウジング6の下部に設けられる。図3~図6に示すように、補機は、モータ収容部81の底部81aに埋め込まれる埋込部70aを有する。埋込部70aは、モータ収容部81の底部81aに設けられる図示しない凹所に、モータ軸J1の軸方向(Y軸方向)から挿入される。これによりハウジング6の下面部6aは、補機の直下に位置する部分(最下部6c)を有する。オイルポンプ70は、電気により駆動する電動オイルポンプである。図2に示すように、オイルポンプ70は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92cおよび第2のリザーバ94を介して、オイルOをモータ2に供給する。
オイルポンプ70は、図示しないハーネス部材を介してインバータ7と電気的に接続される。ハーネス部材は、ハウジング6の外部かつインバータケース8の外部に配置される。本実施形態ではハーネス部材が、冷却水用配管97jの一部に沿って引き回される。
クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97には、第2の流路92bおよび第3の流路92cが接続される。第2の流路92bおよび第3の流路92cは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、図示しないラジエータで冷却された冷却水を通過させる冷却水用配管97jが接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管97jを通過する冷却水との間で熱交換されて冷却される。なお、冷却水用配管97jの経路の一部は、インバータケース8内に配置される。冷却水用配管97jを通過する冷却水は、インバータ7を冷却する。
第2のリザーバ94は、第2の油路92の一部を構成する。第2のリザーバ94は、モータ収容部81の内部に位置する。第2のリザーバ94は、ステータ30の上側に位置する。第2のリザーバ94は、ステータ30によって下側から支持され、モータ2に設けられる。第2のリザーバ94は、例えば樹脂製である。
本実施形態において第2のリザーバ94は、上側に開口する樋状である。第2のリザーバ94は、オイルOを貯留する。本実施形態において第2のリザーバ94は、第3の流路92cを介してモータ収容部81内に供給されたオイルOを貯留する。第2のリザーバ94は、コイルエンド33a,33bにオイルOを供給する供給口94aを有する。これにより、第2のリザーバ94に貯留されたオイルOをステータ30に供給できる。
第2のリザーバ94からステータ30に供給されたオイルOは、下側に滴下され、モータ収容部81内の下部領域に溜る。モータ収容部81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を通してギヤ収容部82に移動する。以上のようにして、第2の油路92は、オイルOをステータ30に供給する。
インバータ7は、モータ2と電気的に接続される。インバータ7は、モータ2に電力を供給する。インバータ7は、図示しないバスバーを介してステータ30と電気的に接続され、ステータ30に電力を供給する。バスバーは、モータ2とインバータ7とを電気的に接続する。バスバーは、ハウジング6の内部とインバータケース8の内部とにわたって延びる。バスバーは、第1方向(X軸方向)に延びる。バスバーは、複数設けられる。複数のバスバーは、モータ軸J1の軸方向(Y軸方向)に互いに間隔をあけて配置される。インバータ7は、モータ2に供給される電流を制御する。図示を省略するが、インバータ7は、回路基板と、コンデンサと、を有する。
インバータケース8は、インバータ7を収容し、ハウジング6と固定される。図3~図5に示すように、インバータケース8は、駆動装置1の外装筐体の一部を構成する。インバータケース8は、例えば金属製であり、導電性を有する。ハウジング6とインバータケース8とは、第1方向(X軸方向)に並んで配置される。インバータケース8は、モータ収容部81とモータ軸J1の径方向に隣り合って配置される。インバータケース8とモータ収容部81とは、第1方向(X軸方向)に並んで配置される。つまりインバータケース8とハウジング6とは、水平方向に接続される。本実施形態によれば、駆動装置1の鉛直方向の外形寸法が小さく抑えられる。このため、駆動装置1を車両100の限られた設置スペースに収容しやすい。インバータケース8は、有底筒状のケース本体8dと、ケース蓋部8eと、を有する。ケース蓋部8eは、ケース本体8dの上側の端部に固定される。ケース蓋部8eは、ケース本体8dの上側の開口を塞ぐ。ケース蓋部8eは、板面が鉛直方向を向く板状である。
銘板9は、例えばアルミニウム製等の金属製である。本実施形態では銘板9が、四角形板状である。つまり銘板9は、板状である。特に図示しないが、銘板9の板面には、例えばモータ2の仕様、番号、製造年月および製造者等の各種情報が表示される。本実施形態では銘板9に、各種情報が刻印により表示される。銘板9は、ハウジング6の外面に配置される。図3~図6に示すように、銘板9は、ハウジング6の外面のうち下面部6aに位置する。銘板9の一対の板面は、鉛直方向(Z軸方向)を向く。銘板9の一対の板面のうち、一方の板面は下面部6aに接触し、他方の板面は下側に向けて露出される。銘板9の各種情報は、他方の板面つまり下面に刻印される。本実施形態では、銘板9のモータ軸J1の軸方向(Y軸方向)の外形寸法が、第1方向(X軸方向)の外形寸法よりも大きい。つまり銘板9は、軸方向に延びる。
本実施形態によれば、駆動装置1に銘板9を取り付けやすく、組み立てが容易である。また本実施形態では、車両100の車軸55が差動軸J3回りに回転させられるため、図1に示すように駆動装置1は、車両100の車軸55および車輪102の近傍に配置される。このため、例えばエンジンが搭載される車両へのエンジンの搭載位置に比べて、本実施形態では車両100への駆動装置1の搭載位置が、車両100の下部の奥まった位置となりやすい。また駆動装置1の上側のスペースには、駆動装置1とは別の部材等が設置される。この場合であっても、銘板9がハウジング6の下面部6aに位置するため、アンダーカバー103を取り外して車両100の下側から銘板9を目視したり、銘板9にアクセスしたりすることが容易である。つまり本実施形態によれば、銘板9が確認しやすい。
また本実施形態では、アンダーカバー103が銘板9を下側から覆うので、路面Rから上側へ跳ねた石等によって銘板9が傷付くことが抑えられる。また本実施形態では、アンダーカバー103が駆動装置1全体を下側から覆うので、路面Rから上側へ跳ねた石等によって駆動装置1が損傷することを抑制できる。
また本実施形態では、モータ2、減速装置4および差動装置5を収容するハウジング6と、インバータ7を収容するインバータケース8とが、互いに固定される。つまり駆動装置1は、ハウジング6とインバータケース8とを一体的に備える。本実施形態によれば、銘板9がハウジング6の下面部6aに設けられるため、ハウジング6とインバータケース8とを固定する向きの自由度が高められる。具体的には、本実施形態のようにインバータケース8をハウジング6と水平方向に並べて配置することができ、または、インバータケース8をハウジング6の上側に配置できる。そしていずれの場合もインバータケース8に対して外部から電気配線や配管等を接続しやすい。
図5および図6に示すように、銘板9は、ハウジング6の下面部6aのうちオイルポンプ70の直下に位置する部分、つまり最下部6cに設けられる。本実施形態によれば、車両100の下側から銘板9を目視したり、銘板9にアクセスしたりすることがより容易となる。なお本実施形態において、車両100にアンダーカバー103が設けられなくてもよく、この場合には銘板9が、路面Rから上側へ跳ねた石等からオイルポンプ70およびハウジング6を保護する機能を備える。つまり銘板9が、保護板として機能する。
銘板9は、銘板9を板厚方向に貫通する取付孔9aを有する。本実施形態では銘板9の板厚方向が、鉛直方向(Z軸方向)に相当する。取付孔9aには、ボス部6bが挿入される。取付孔9aは、互いに間隔をあけて複数設けられる。複数の取付孔9aは、第1方向(X軸方向)およびモータ軸J1の軸方向(Y軸方向)に、互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では複数の取付孔9aが、四角形板状の銘板9の四隅に配置される。
ボス部6bの第1部分6dおよび第2部分6eについて説明する。第1部分6dは、柱状であり、鉛直方向に延びる。第1部分6dは、下面部6aと繋がる。第1部分6dは、ボス部6bのうち基端部(上端部)を構成する。第1部分6dは、取付孔9a内に配置される。第2部分6eは、柱状であり、鉛直方向に延びる。第2部分6eは、ボス部6bのうち先端部(下端部)を構成する。第2部分6eは、第1部分6dと繋がり、取付孔9aよりも下側に位置する。第2部分6eは、鉛直方向に潰し変形可能である。つまりボス部6bは、潰し変形可能である。なお図6においては、潰し変形前の第2部分6eを示す。図3~図5に示すように、潰し変形後の第2部分6eの外径は、第1部分6dの外径よりも大きく、かつ取付孔9aの内径よりも大きい。これにより第2部分6eは、銘板9に下側から対向する。第2部分6eは、銘板9の下面に接触する。
本実施形態では、銘板9の取付孔9aにボス部6bを挿入し、ボス部6bを潰し変形させてかしめることによって、ハウジング6の下面部6aに銘板9を固定できる。ねじやリベット等の固定部材を用いることなく、部品点数を削減しつつ、下面部6aに銘板9を簡単に固定できる。すなわち、銘板9を下面部6aに取り付ける作業が容易である。また、複数のボス部6bおよび複数の取付孔9aにより、銘板9を安定して固定できる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
前述の実施形態では、駆動装置1の補機としてオイルポンプ70が設けられる例を挙げたが、これに限らない。図示を省略するが、補機としてオイルポンプ70以外に、例えばパーキングロック機構の電動アクチュエータ等が設けられてもよい。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。