以下に、本開示の実施の形態に係るリニア搬送装置を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるリニア搬送装置の構成の一例を示す斜視図であり、図2は、実施の形態1によるリニア搬送装置の構成の一例を示す断面図である。以下では、搬送台車10の進行方向をZ方向とし、上下方向をY方向とし、Z方向およびY方向の2つの方向に垂直な方向をX方向とする。X方向は、幅方向とも称される。Y方向は、一例では鉛直方向である。さらに、以下の説明では、Y方向における2つの相対的な位置関係が、「上」または「下」を使用して表現される場合がある。リニア搬送装置1は、図示しない搬送対象の対象物を搬送する搬送台車10を、搬送台車10の幅方向に配置される固定子側架台20に沿ってリニアモータによって移動させ、固定子側架台20が幅方向の片側に配置される部分を有する装置である。リニア搬送装置1は、搬送台車10と、固定子側架台20と、を備える。
搬送台車10は、搬送台車主構造体11と、上部V字ローラ12と、下部平ローラ13と、駆動用可動子側磁気要素14と、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15と、を有する。
搬送台車主構造体11は、搬送対象の対象物を支持する部材である。具体的には、搬送台車主構造体11は、固定子側架台20に沿って搬送対象の対象物が載置されたり、固定されたりすることが可能な部材である。図1および図2の例では、搬送台車主構造体11は、板状の部材によって構成される。搬送台車主構造体11は、Z方向およびY方向に平行な面である側面が、Z方向に垂直な面である前面および後面と、Y方向に垂直な面である上面および下面と、に比して大きい。
上部V字ローラ12は、搬送台車主構造体11の上部に設けられる。X方向において、上部V字ローラ12のサイズは、搬送台車主構造体11のサイズよりも大きい。図1および図2では、固定子側架台20が搬送台車10のX方向の一方にしか配置されていないが、固定子側架台20が搬送台車10のX方向の他方に配置される場合もあれば、両側に配置される場合もある。上部V字ローラ12のそれぞれは、固定子側架台20が搬送台車10のX方向のいずれの側にあっても、固定子側架台20の上部V溝レール22と当接可能となる。図1の例では、上部V字ローラ12は、Z方向に間隔を置いて2つ設けられるが、上部V字ローラ12の個数は任意とすることができる。上部V字ローラ12は、搬送台車主構造体11の上部に設けられる回転軸121に支持され、回転軸121の周りに回転する。回転軸121はY方向に延在する。すなわち、上部V字ローラ12は水平面内で回転する。上部V字ローラ12の回転軸121を通る断面において、半径方向の周縁部に存在する転動面の形状は、後述する固定子側架台20のレールに嵌るV字形状である。
下部平ローラ13は、搬送台車主構造体11の下部に設けられる。X方向において、下部平ローラ13のサイズは、搬送台車主構造体11のサイズよりも大きい。これによって、上部V字ローラ12の場合と同様に、下部平ローラ13のそれぞれは、固定子側架台20が搬送台車10のX方向のいずれの側にあっても、固定子側架台20の下部平レール23と当接可能となる。図1の例では、下部平ローラ13は、Z方向に間隔を置いて2つ設けられるが、下部平ローラ13の個数は任意とすることができる。下部平ローラ13は、搬送台車主構造体11の下部に設けられる回転軸131に支持され、回転軸131の周りに回転する。回転軸131はY方向に延在する。すなわち、下部平ローラ13は水平面内で回転する。下部平ローラ13の回転軸131を通る断面において、半径方向の周縁部に存在する転動面の形状は平坦である。
ここでは、上部V字ローラ12は、搬送台車主構造体11に設けられる第1ローラに対応し、下部平ローラ13は、搬送台車主構造体11の第1ローラとは異なる高さに設けられる第2ローラに対応する。また、上部V字ローラ12はV字ローラに対応し、下部平ローラ13は平ローラに対応する。なお、図1および図2では、上部V字ローラ12は下部平ローラ13よりも上に配置されているが、上部V字ローラ12と下部平ローラ13との上下関係は逆でもよい。この場合、搬送台車主構造体11は、上部平ローラと下部V字ローラとを備えることになる。
駆動用可動子側磁気要素14は、搬送台車主構造体11のX方向の両側の側面に設けられ、搬送台車主構造体11を固定子側架台20に対して駆動させる。図1および図2の例では、駆動用可動子側磁気要素14は、上部V字ローラ12と下部平ローラ13との間の搬送台車主構造体11におけるX方向の両側の側面に設けられる。一例では、駆動用可動子側磁気要素14は、永久磁石または電磁石である。駆動用可動子側磁気要素14は、可動子側磁気要素に対応する。
対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15は、搬送台車主構造体11のX方向の両側の側面の上方に配置され、固定子側架台20との間で搬送台車10の倒れに対抗する対抗モーメントを発生させる。具体的には、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15は、搬送台車10が「片持ち状態」であるときに、搬送台車10の上下方向の荷重由来の倒れモーメントに対抗するモーメントである対抗モーメントを搬送台車10に発生させる。図1および図2の例では、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15は、上部V字ローラ12よりも上方に設けられる。一例では、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15は、永久磁石または電磁石である。永久磁石および電磁石は磁気要素の一例である。対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15は、可動子側対抗モーメント発生要素に対応する。
固定子側架台20は、架台構造体21と、上部V溝レール22と、下部平レール23と、駆動用固定子側磁気要素24と、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25と、を有する。
架台構造体21は、搬送台車10を移動させながら支持する支持部材である。架台構造体21は、搬送台車10の移動経路に沿って設けられる。
上部V溝レール22は、架台構造体21の上部に設けられ、走行面がV字形状を有するレールである。上部V溝レール22は、搬送台車10の上部V字ローラ12に対応する位置に設けられ、上部V字ローラ12に係合する。
下部平レール23は、架台構造体21の下部に設けられ、走行面が平坦なレールである。下部平レール23は、架台構造体21の搬送台車10が配置される側の主面の搬送台車10の下部平ローラ13に対応する位置に設けられ、下部平ローラ13に係合する。
ここでは、上部V溝レール22は、架台構造体21に設けられ、第1ローラである上部V字ローラ12に係合する第1レールに対応し、下部平レール23は、架台構造体21に設けられ、第2ローラである下部平ローラ13に係合する第2レールに対応する。また、上部V溝レール22はV溝レールに対応し、下部平レール23は平レールに対応する。なお、搬送台車10のV字ローラおよび平ローラの位置に合わせてV溝レールおよび平レールは設けられる。このため、搬送台車10で上部V字ローラ12と下部平ローラ13との上下関係が逆の場合には、固定子側架台20でも上部V溝レール22と下部平レール23との上下関係は逆となる。
駆動用固定子側磁気要素24は、駆動用可動子側磁気要素14と対となって水平方向に磁気吸引力を発生させる。図1および図2の例では、駆動用固定子側磁気要素24は、上部V溝レール22と下部平レール23との間の架台構造体21における搬送台車10と対向する側面に設けられる。一例では、駆動用固定子側磁気要素24は、永久磁石または電磁石である。駆動用固定子側磁気要素24は、固定子側磁気要素に対応する。
対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25は、架台構造体21の上方に配置され、対となる対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15との間で発生する水平方向の吸引力によって対抗モーメントを発生させる。図1および図2の例では、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25は、上部V溝レール22よりも上側の架台構造体21における搬送台車10が配置される側の側面に設けられる。一例では、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25は、電磁石または永久磁石である。永久磁石および電磁石は磁気要素の一例である。対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25は、架台構造体21に配置され、対となる可動子側対抗モーメント発生要素である対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15との間で対抗モーメントを発生させる固定子側対抗モーメント発生要素に対応する。
固定子側架台20は、分岐部を有していてもよい。固定子側架台20は、分岐部では、搬送台車10のX方向の両側に配置され、分岐部以外では、搬送台車10のX方向の一方の側に配置される。
ここで、搬送台車10の上部V字ローラ12が固定子側架台20の上部V溝レール22に係合され、搬送台車10の下部平ローラ13が固定子側架台20の下部平レール23に係合されることによって、搬送台車10は、固定子側架台20に沿って移動可能となる。駆動用可動子側磁気要素14と駆動用固定子側磁気要素24とはリニアモータを構成する。この場合、駆動用可動子側磁気要素14および駆動用固定子側磁気要素24の少なくとも一方は電磁石である。図示しない制御装置によるリニアモータへの通電制御によって、固定子側架台20の延在方向であるZ方向への駆動推力と、X方向の磁気吸引力と、が制御可能となる。
搬送台車10に配される上部V字ローラ12と、上部V字ローラ12に係合する固定子側架台20上の上部V溝レール22と、によって、搬送台車10の上下方向の挙動が拘束される。また、搬送台車10の上部V字ローラ12および下部平ローラ13のそれぞれが、上部V溝レール22および下部平レール23に接触し、前述の駆動用可動子側磁気要素14と駆動用固定子側磁気要素24とによって、図2において搬送台車10を固定子側架台20に押さえ付けるように図中左側、すなわちX方向の負側へ磁気吸引力を発生させることで、搬送台車10の横方向の挙動が拘束される。ここで示される実施の形態1における構成および動作については特許文献1と同じである。
しかし、実施の形態1においては、搬送台車10は、搬送台車主構造体11の上方に吸引力発生要素である対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15を備え、固定子側架台20は、架台構造体21の上方に吸引力発生要素である対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25を備えるようにした。これらの対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15と対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25との間で水平方向の磁気吸引力が発生する。つまり、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15は、固定子側架台20が搬送台車10のX方向の一方の側に配置される場合、一例では搬送台車10が分岐部以外の位置に存在する場合に、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25との間で吸引力を発生させる。これによって、搬送台車10の上部が固定子側架台20に吸引され、搬送台車10が「片持ち状態」において、上下方向の荷重由来の倒れモーメントによる搬送台車10の倒れを抑制することができる。なお、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15および対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25の少なくとも一方は電磁石とし、制御装置が、リニアモータへの通電制御と同期させて電磁石に通電制御するようにしてもよい。
なお、図1および図2では、吸引力発生要素が磁気要素である場合を例に挙げたが、吸引力発生要素が磁気要素以外の他の方法に基づくものであってもよい。吸引力発生要素として、空気圧を用いる方法がある。一例では搬送台車10の上方に、搬送台車10の上方と固定子側架台20の上部との間の空気を吸い込む吸引力発生要素を設ける場合である。このような空気圧を用いる方法などと比較すれば、磁気要素を用いる方法によれば吸引力の発生にあたり電力などが不要となる。
図3は、実施の形態1によるリニア搬送装置の効果を説明するための図である。ここでは、図3中に表示される下部平ローラ13と下部平レール23との係合面の最下部である点Pの周りの回転モーメントの釣合について考える。点Pは、搬送台車10が固定子側架台20と接触している状態で、搬送台車10が倒れるときの中心である回転中心に対応する。点Pの周りには、上下方向であるY方向の搬送台車10の重力Fgと、点Pから搬送台車10の全体の重心位置Gまでの水平方向距離xgと、の積から成るモーメントである倒れモーメントMtが作用する。なお、この例では、水平方向距離xgは、X方向の距離となる。この倒れモーメントMtは、点Pの周りに搬送台車10を倒す効果がある。特許文献1では、この倒れモーメントMtに対して、駆動用可動子側磁気要素14と駆動用固定子側磁気要素24とによる水平方向の磁気吸引力Fmag.dと、点Pから搬送台車10の磁気吸引力Fmag.dの中心までのY方向の距離ymag.dと、の積から成るモーメントが対抗モーメントになる。しかし、特許文献1では、倒れモーメントMtが対抗モーメントを上回ってしまうと、搬送台車10は倒れてしまう。このため、特許文献1では、搬送物の重量、または搬送台車10の重心位置と点Pとの間の水平方向距離xgに制限を設ける必要があった。
一方、実施の形態1においては、搬送台車10および固定子側架台20のそれぞれの上方に配された対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15と対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25との間で水平方向の磁気吸引力Fmag.addを発生させるようにした。これによって、倒れモーメントMtに対する対抗モーメントを増加させることができる。
上述の搬送台車10の倒れが発生しないための条件を定式化する。搬送台車10にかかる重力をFgとし、点Pから搬送台車10の全体の重心位置Gの位置までの水平方向距離をxgとし、駆動用可動子側磁気要素14および駆動用固定子側磁気要素24による水平方向の磁気吸引力をFmag.dとし、点Pから搬送台車10の磁気吸引力Fmag.dの中心までの上下方向であるY方向の距離をymag.dとし、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15と対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25との間の水平方向の磁気吸引力をFmag.addとし、点Pから対抗モーメントの発生要素による磁気吸引力Fmag.addの中心までのY方向の距離をymag.addとすると、搬送台車10の倒れが発生しないための条件は次式(1)が成立することである。
xgFg<ymag.dFmag.d+ymag.addFmag.add ・・・(1)
(1)式からもわかるように、搬送物の重量、または搬送台車10の重心位置と点Pとの間の距離の制限を大きく緩和するには、対抗モーメントの発生要素における磁気吸引力Fmag.addを大きくするか、点Pから対抗モーメントの発生要素の磁気吸引力Fmag.addの中心までの距離ymag.addを広く取ればよい。
一例では、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15と対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25との間の吸引力、および吸引力の中心と点Pとの間のY方向の距離は、駆動用可動子側磁気要素14と駆動用固定子側磁気要素24との間の磁気吸引力と、この磁気吸引力の中心と点Pとの間のY方向の距離と、に基づいて決定される。
図4は、実施の形態1によるリニア搬送装置の分岐部付近の一例を示す俯瞰図である。実施の形態1では、分岐部32においては搬送台車10のX方向の両側に固定子側架台20が存在する。分岐部32では、搬送台車10は、両側の固定子側架台20に同時に吸着することはなく、どちらかの固定子側架台20に吸着するように、図示しない制御装置によって制御されている。分岐部32より前の軌道である分岐前軌道31および分岐部32よりも後の軌道である分岐後軌道33のように、搬送台車10が「片持ち状態」にある場合には、駆動用可動子側磁気要素14と駆動用固定子側磁気要素24とによって搬送台車10を固定子側架台20に押さえつけるように磁気吸引力を発生させることで、搬送台車10の進行方向に対して横方向の挙動は拘束される。これは特許文献1と同じ構成および動作である。
実施の形態1では、搬送台車10は、上方に対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15を備え、全軌道上の固定子側架台20は、上方に対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25を備える。そして、分岐部32を除いた分岐前軌道31および分岐後軌道33では、常に搬送台車10の対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15と固定子側架台20の対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25との間で磁気吸引力を発生させるようにした。これによって、搬送台車10の上下方向の荷重により発生する倒れモーメントが、駆動用可動子側磁気要素14と駆動用固定子側磁気要素24との間で発生する磁気吸引力により発生するモーメントと、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15と対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25との間で発生する磁気吸引力により発生するモーメントと、を含む対抗モーメントによって相殺される。この結果、搬送台車10が「片持ち状態」であるときに、搬送台車10の上下方向の荷重由来の倒れモーメントによる搬送台車10の倒れを抑制することができるという効果を奏する。
実施の形態2.
搬送台車10には重力などによって常時上下方向の荷重が作用する。搬送物の重量によっては特許文献1に記載の技術では上下方向荷重を受け持つU型またはV型のローラが脱落したり摩耗が激しくなったりする。そこで、下記に示す先行技術1には、分岐部を除く全軌道上で常時搬送台車の両側に固定子側架台を配置し、搬送台車の幅方向の両側に配置された上下のローラを幅方向の両側の固定子側架台の各レールに係合させるリニアモータが開示されている。さらに、先行技術1には、固定子側架台の上面に追加されたレールに係合し、搬送台車を上下方向に支持するローラを搬送台車の左右両側の上部に追加した構造として、搬送台車の上下方向の支持耐荷重を向上させている。
(先行技術1)米国特許出願公開第2020/0028427号明細書
先行技術1に記載の技術は、分岐部以外の軌道上では搬送台車の幅方向の両側面のローラと、搬送台車の幅方向の両側の固定子側架台に備えられるレールと、が係合する「両持ち状態」になり、搬送台車が倒れることはない。しかし、分岐部において、搬送台車の幅方向の両側の固定子側架台が分岐し、一時的に、片側の固定子側架台の磁気要素の磁気吸引力によってどちらかの一方の固定子側架台のみに搬送台車が吸着する状態になる。このとき反対側の上下方向荷重支持用のローラはレールに係合せず、吸着側の固定子側架台のレールおよびこれに係合するローラのみで上下方向荷重を支持する「片持ち状態」になる。
先行技術1に記載の技術では、分岐部で「片持ち状態」になるときに、下部ローラと下部レールとの間の係合面の最下部の周りの回転モーメントの釣合の問題が発生する。追加されたローラとレールとの間の水平方向の摩擦力が対抗モーメントになる効果はあるものの、水平方向の摩擦力自体は小さいため、搬送台車の倒れを抑制する効果は期待できない。そこで、実施の形態2では、先行技術1に記載の技術で、「片持ち状態」になる場合において、搬送台車の上下方向の荷重由来の倒れモーメントによる搬送台車の倒れを抑制することができるリニア搬送装置について説明する。
図5は、実施の形態2によるリニア搬送装置の構成の一例を示す斜視図である。図6は、実施の形態2によるリニア搬送装置の構成の一例を示す分岐部以外の位置における断面図である。図7は、実施の形態2によるリニア搬送装置の構成の一例を示す分岐部の位置における断面図である。図5は、分岐部におけるリニア搬送装置1Aの状態を示している。また、図6および図7は、Z方向に垂直な断面を示している。実施の形態2のリニア搬送装置1Aでは、分岐部以外で図6に例示されるように、搬送台車10AがX方向両側の固定子側架台20Aa,20Abによって支持される「両持ち状態」となり、分岐部で図5および図7に例示されるように、搬送台車10AがX方向の片側の固定子側架台20Aaによって支持される「片持ち状態」となる。リニア搬送装置1Aは、搬送台車10Aと,固定子側架台20Aa,20Abと、を備える。
搬送台車10Aは、搬送台車主構造体11Aと、上部V字ローラ12Aと、下部平ローラ13Aと、駆動用可動子側磁気要素14Aa,14Abと、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aa,15Abと、追加ローラ16Aと、を有する。
搬送台車主構造体11Aは、搬送対象の対象物を支持する部材である。図5から図7の例では、搬送台車主構造体11Aは、Z方向から見たときにT字状である。搬送台車主構造体11Aは、YZ面の面積が他の面に比して大きい板状の本体部111と、本体部111の上端部にX方向の両側に突出して設けられる2つの板状の張出部112と、を有する。
上部V字ローラ12Aは、搬送台車主構造体11AのX方向の両側に設けられ、Y方向に延在する軸である回転軸121Aの周りに回転する。図5から図7の例では、上部V字ローラ12Aは、搬送台車主構造体11Aの上部に設けられる。具体的には、上部V字ローラ12Aは、搬送台車主構造体11Aの張出部112よりも下側の本体部111のX方向に垂直な側面に設けられる。上部V字ローラ12Aは、X方向において間隔を置いて2つ設けられるとともに、Z方向に間隔を置いて2つ設けられる。すなわち、上部V字ローラ12Aは、4つ設けられる。ただし、上部V字ローラ12Aの数は限定されるものではない。上部V字ローラ12Aは、搬送台車主構造体11Aの本体部111の上部に設けられる回転軸121Aに支持される。上部V字ローラ12Aは、水平面内で回転する。上部V字ローラ12Aの回転軸121Aを通る断面において、半径方向の周縁部に存在する転動面の形状は、後述する固定子側架台20Aのレールに嵌るV字形状である。
下部平ローラ13Aは、搬送台車主構造体11AのX方向の両側に設けられ、Y方向に延在する軸である回転軸131Aの周りに回転する。図5から図7の例では、下部平ローラ13Aは、搬送台車主構造体11Aの本体部111の下部に設けられる。下部平ローラ13Aは、X方向において間隔を置いて2つ設けられるとともに、Z方向に間隔を置いて2つ設けられる。すなわち、下部平ローラ13Aは、4つ設けられる。ただし、下部平ローラ13Aの数は限定されるものではない。下部平ローラ13Aは、搬送台車主構造体11Aの本体部111の下部に設けられる回転軸131Aに支持される。下部平ローラ13Aは水平面内で回転する。下部平ローラ13Aの回転軸131Aを通る断面において、半径方向の周縁部に存在する転動面の形状は平坦である。
ここでは、上部V字ローラ12Aは、搬送台車主構造体11Aに設けられる第1ローラに対応し、下部平ローラ13Aは、搬送台車主構造体11Aの第1ローラとは異なる高さに設けられる第2ローラに対応する。また、上部V字ローラ12AはV字ローラに対応し、下部平ローラ13Aは平ローラに対応する。なお、図5から図7では、上部V字ローラ12Aは下部平ローラ13Aよりも上に配置されているが、上部V字ローラ12Aと下部平ローラ13Aとの上下関係は逆でもよい。この場合、搬送台車主構造体11Aは、上部平ローラと下部V字ローラとを備えることになる。
駆動用可動子側磁気要素14Aaは、搬送台車主構造体11AのX方向の側面111aに設けられ、搬送台車主構造体11Aを固定子側架台20Aaに対して駆動させる。図5から図7の例では、駆動用可動子側磁気要素14Aaは、上部V字ローラ12Aと下部平ローラ13Aとの間の搬送台車主構造体11Aの本体部111におけるX方向の側面111aに設けられる。駆動用可動子側磁気要素14Abは、搬送台車主構造体11AのX方向の側面111bに設けられ、搬送台車主構造体11Aを固定子側架台20Abに対して駆動させる。図5から図7の例では、駆動用可動子側磁気要素14Abは、上部V字ローラ12Aと下部平ローラ13Aとの間の搬送台車主構造体11Aの本体部111におけるX方向に垂直な側面111bに設けられる。一例では、駆動用可動子側磁気要素14Aa,14Abは、永久磁石または電磁石である。駆動用可動子側磁気要素14Aa,14Abは、可動子側磁気要素に対応する。なお、以下では、駆動用可動子側磁気要素14Aaおよび駆動用可動子側磁気要素14Abは、個別に区別しない場合には、駆動用可動子側磁気要素14Aと称される。
対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aaは、搬送台車主構造体11Aの上方のX方向の側面112aに配置され、固定子側架台20Aaとの間で搬送台車10Aの倒れに対抗する対抗モーメントを発生させる。具体的には、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aaは、搬送台車主構造体11Aの張出部112のX方向に垂直な側面112aに設けられる。対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Abは、搬送台車主構造体11Aの上方のX方向の側面112bに配置され、固定子側架台20Abとの間で搬送台車10Aの倒れに対抗する対抗モーメントを発生させる。具体的には、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Abは、搬送台車主構造体11Aの張出部112のX方向に垂直な側面112bに設けられる。一例では、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aa,15Abは、電磁石または永久磁石である。対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aa,15Abは、搬送台車10Aが「片持ち状態」であるときに、搬送台車10Aの上下方向の荷重由来の倒れモーメントに対抗するモーメントである対抗モーメントを搬送台車10Aに発生させる。対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aa,15Abは、可動子側対抗モーメント発生要素に対応する。なお、以下では、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aaおよび対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Abは、個別に区別しない場合には、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aと称される。
追加ローラ16Aは、搬送台車主構造体11AのX方向の両側に設けられ、X方向に延在する軸である回転軸161Aの周りに回転する。図5から図7の例では、追加ローラ16Aは、搬送台車主構造体11Aの張出部112の下面に設けられる。追加ローラ16Aは、張出部112のそれぞれにZ方向に間隔を置いて2つ設けられる。ただし、追加ローラ16Aの数は限定されるものではない。追加ローラ16Aは、張出部112に設けられる回転軸161Aに支持される。追加ローラ16AはYZ面内で回転する。追加ローラ16Aの回転軸161Aを通る断面において、半径方向の周縁部に存在する転動面の形状は平坦である。
実施の形態2では、分岐部以外の部分では、固定子側架台20Aa,20Abは、搬送台車10AのX方向の両側に設けられる。すなわち、固定子側架台20Aa,20Abは、分岐部以外の部分では、「両持ち状態」となる。このため、本体部111の側面111aと対向する固定子側架台20Aaと、本体部111の側面111bと対向する固定子側架台20Abと、が存在する。なお、以下では、固定子側架台20Aaおよび固定子側架台20Abは、個別に区別しない場合には、固定子側架台20Aと称される。
固定子側架台20Aは、架台構造体21Aと、上部V溝レール22Aと、下部平レール23Aと、駆動用固定子側磁気要素24Aと、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aと、追加レール26Aと、を有する。
架台構造体21Aは、搬送台車10Aを移動させながら支持する支持部材である。架台構造体21Aは、搬送台車10Aの移動経路に沿って設けられる。実施の形態2では、架台構造体21Aは、本体部211Aと、本体部211Aの搬送台車10Aが配置される側とは反対側の上部に設けられる側壁部212Aと、を有する。側壁部212Aは、本体部211Aの上面に、Y方向に突出して設けられる。本体部211Aの上面と側壁部212Aとによって囲まれる本体部211Aの上部の空間は、搬送台車主構造体11Aの張出部112が通過可能となる。
上部V溝レール22Aは、架台構造体21Aの本体部211Aの上部に設けられ、走行面がV字形状を有するレールである。上部V溝レール22Aは、搬送台車10Aの上部V字ローラ12Aに対応する位置に設けられ、上部V字ローラ12Aに係合する。
下部平レール23Aは、架台構造体21Aの本体部211Aの下部に設けられ、走行面が平坦なレールである。下部平レール23Aは、架台構造体21Aの搬送台車10Aと対向する側面の搬送台車10Aの下部平ローラ13Aに対応する位置に設けられ、下部平ローラ13Aに係合する。
ここでは、上部V溝レール22Aは、架台構造体21Aに設けられ、第1ローラである上部V字ローラ12Aに係合する第1レールに対応し、下部平レール23Aは、架台構造体21Aに設けられ、第2ローラである下部平ローラ13Aに係合する第2レールに対応する。また、上部V溝レール22AはV溝レールに対応し、下部平レール23Aは平レールに対応する。なお、搬送台車10AのV字ローラおよび平ローラの位置に合わせてV溝レールおよび平レールは設けられる。このため、搬送台車10Aで上部V字ローラ12Aと下部平ローラ13Aとの上下関係が逆の場合には、固定子側架台20Aでも上部V溝レール22Aと下部平レール23Aとの上下関係は逆となる。
駆動用固定子側磁気要素24Aは、駆動用可動子側磁気要素14Aと対となって水平方向に磁気吸引力を発生させる。図5から図7の例では、駆動用固定子側磁気要素24Aは、上部V溝レール22Aと下部平レール23Aとの間の架台構造体21Aの本体部211Aにおける搬送台車10Aと対向する側面に設けられる。一例では、駆動用固定子側磁気要素24Aは、永久磁石または電磁石である。なお、以下では、固定子側架台20Aaおよび固定子側架台20Abが有する駆動用固定子側磁気要素24Aを区別する場合には、固定子側架台20Aaの駆動用固定子側磁気要素24Aは、駆動用固定子側磁気要素24Aaと称され、固定子側架台20Abの駆動用固定子側磁気要素24Aは、駆動用固定子側磁気要素24Abと称される。駆動用固定子側磁気要素24Aは、固定子側磁気要素に対応する。
対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aは、架台構造体21Aの上方に配置され、対となる対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aとの間で発生する水平方向の吸引力によって対抗モーメントを発生させる。図5から図7の例では、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aは、架台構造体21Aの側壁部212Aにおける搬送台車10Aと対向する側面に設けられる。一例では、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aは、電磁石または永久磁石である。対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aは、架台構造体21Aに配置され、対となる可動子側対抗モーメント発生要素である対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aとの間で対抗モーメントを発生させる固定子側対抗モーメント発生要素に対応する。なお、以下では、固定子側架台20Aaおよび固定子側架台20Abが有する対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aを区別する場合には、固定子側架台20Aaの対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aは、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aaと称され、固定子側架台20Abの対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aは、対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Abと称される。
追加レール26Aは、架台構造体21Aの本体部211Aの上面に設けられ、走行面が平坦なレールである。追加レール26Aは、追加ローラ16Aに係合する。
実施の形態2では、分岐部では、搬送台車10AのX方向の両側の固定子側架台20Aa,20Abが分岐し、搬送台車10AのX方向の一方にのみ固定子側架台20Aが配置される。また、分岐部以外では、固定子側架台20Aa,20Abは、搬送台車10AのX方向の両側に配置される。
実施の形態2では、先行技術1と同様に、搬送台車10AのX方向の両側に駆動用可動子側磁気要素14Aa,14Ab、上部V字ローラ12Aおよび下部平ローラ13Aを有する。分岐部以外の軌道上では図6に示されるように、搬送台車10AのX方向の両側に固定子側架台20Aa,20Abが存在し、駆動用可動子側磁気要素14Aa,14Abと駆動用固定子側磁気要素24Aa,24Abとによってリニアモータが構成される。この場合、駆動用可動子側磁気要素14Aa,14Abおよび駆動用固定子側磁気要素24Aa,24Abの少なくとも一方は電磁石である。また、実施の形態2では、搬送台車10AにX方向に延在する回転軸161Aを有する追加ローラ16Aが追加され、固定子側架台20Aの本体部211Aの上面に追加レール26Aが追加されている。そして、搬送台車10Aの上部V字ローラ12Aと固定子側架台20Aの上部V溝レール22Aとが係合し、搬送台車10Aの下部平ローラ13Aと固定子側架台20Aの下部平レール23Aとが係合し、搬送台車10Aの追加ローラ16Aと固定子側架台20Aの追加レール26Aとが係合する。これによって、搬送台車10Aは、固定子側架台20Aに沿って移動可能となる。
分岐部以外の軌道上では図6に示されるように、搬送台車10AのX方向の両側の上部V字ローラ12A、下部平ローラ13A、および追加ローラ16Aのそれぞれが、左右両側の固定子側架台20Aa,20Abの上部V溝レール22A、下部平レール23A、および追加レール26Aと係合する「両持ち状態」であり、搬送台車10Aの倒れは問題にならない。しかし、分岐部などの固定子側架台20Aが搬送台車10AのX方向の一方の側に配置される場合においては、搬送台車10AのX方向の両側の固定子側架台20Aa,20Abが分岐する。この結果、図7に示されるように、X方向の両側の固定子側架台20Aのうち片側の固定子側架台20Aの駆動用固定子側磁気要素24Aaと搬送台車10Aの駆動用可動子側磁気要素14Aaとの間の磁気吸引力によって、片側の固定子側架台20Aaのみに搬送台車10Aが吸着しつつ駆動される。
このとき、固定子側架台20Abが存在しない反対側の上部V字ローラ12A、下部平ローラ13Aおよび追加ローラ16Aのそれぞれは、上部V溝レール22A、下部平レール23Aおよび追加レール26Aとは係合していない。すなわち、搬送台車10Aは吸着側の上部V字ローラ12Aと上部V溝レール22Aとの係合、下部平ローラ13Aと下部平レール23Aとの係合、および追加ローラ16Aと追加レール26Aとの係合によって支持される「片持ち状態」になる。この「片持ち状態」となる分岐部では実施の形態1と同様に、搬送台車10Aの倒れを考慮する必要がある。
実施の形態2においては、搬送台車10Aは、搬送台車主構造体11Aの上方に吸引力発生要素である対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aa,15Abを備え、固定子側架台20Aは、架台構造体21Aの上方の側壁部212Aに吸引力発生要素である対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aa,25Abを備えるようにした。これらの対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aaと対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aaとの間、または対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Abと対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Abとの間で水平方向の磁気吸引力が発生する。これによって、搬送台車10Aが「片持ち状態」においても、搬送台車10Aの上部が固定子側架台20Aに吸引され、上下方向の荷重由来の倒れモーメントによる搬送台車10Aの倒れを抑制することができる。なお、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aa,15Abおよび対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aa,25Abの少なくとも一方は電磁石とし、制御装置が、リニアモータへの通電制御と同期させて電磁石に通電制御するようにしてもよい。
図8は、実施の形態2によるリニア搬送装置の効果を説明するための図である。実施の形態1と同様に下部平ローラ13Aおよび下部平レール23Aの係合面の最下部である点P1の周りの回転モーメントの釣合について考える。この点P1の周りには、上下方向であるY方向の搬送台車10Aの重力Fgと、点P1から搬送台車10Aの全体の重心位置G1までの水平方向距離xgと、の積から成るモーメントである倒れモーメントMtが作用する。この例では、水平方向はX方向に対応する。この倒れモーメントMtは点P1の周りに搬送台車10Aを倒す作用がある。この倒れモーメントMtに対して、駆動用可動子側磁気要素14Aaと駆動用固定子側磁気要素24Aaとによる水平方向の磁気吸引力Fmag.dと、点P1から搬送台車10Aの磁気吸引力Fmag.dの中心までの上下方向であるY方向の距離ymag.dと、の積から成るモーメントが対抗モーメントになる。
また実施の形態2では、追加ローラ16Aと追加レール26Aとの間の横方向摩擦力Ffric.addと、点P1から追加レール26Aまでの上下方向であるY方向の距離yfric.addと、の積から成るモーメントも対抗モーメントになる。ここまでの構成と効果とは先行技術1と同様であり、実施の形態1と同様に、倒れモーメントMtが対抗モーメントを上回ってしまうと、搬送台車10Aは倒れてしまう。このため、先行技術1に記載の技術でも、搬送物の重量、または搬送台車10Aの重心位置と点P1との間の水平方向距離xgに制限を設ける必要があった。
一方、実施の形態2においては、搬送台車10Aおよび固定子側架台20Aのそれぞれの上方に配された対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aaと対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aaとの間で水平方向の磁気吸引力Fmag.addを発生させるようにした。これによって、倒れモーメントMtに対する対抗モーメントを増加させることができる。
上述の搬送台車10Aの倒れが発生しないための条件を定式化する。実施の形態1での変数定義に加え、追加ローラ16Aと追加レール26Aとの間の横方向摩擦力をFfric.addとし、点P1から追加レール26AまでのY方向の距離をyfric.addとすると、搬送台車10Aの倒れが発生しないための条件は次式(2)が成立することである。
xgFg<ymag.dFmag.d+yfric.addFfric.add+ymag.addFmag.add ・・・(2)
実施の形態1と同様に、搬送物の重量、または搬送台車10Aの重心位置と点P1との間の水平方向距離xgの制限を緩和するには、対抗モーメントの発生要素における磁気吸引力Ffric.addを大きくするか、点P1から対抗モーメントの発生要素の磁気吸引力Ffric.addの中心までの距離yfric.addを広く取ればよい。
一例では、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aと対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aとの間の吸引力、および吸引力の中心と点P1との間のY方向の距離は、駆動用可動子側磁気要素14Aと駆動用固定子側磁気要素24Aとの間の磁気吸引力と、この磁気吸引力の中心と点P1との間のY方向の距離と、に基づいて決定される。
なお、対抗モーメントとして、追加ローラ16Aと追加レール26Aとの横方向摩擦力Ffric.addの効果があるものの、一般的には横方向摩擦力Ffric.addは他の成分と比較して非常に小さく、対抗モーメントとしての効果は微小である。
図6に示されるように、分岐部以外では搬送台車10AのX方向の両側に固定子側架台20Aが配置され、搬送台車10Aは「両持ち状態」である。しかし、分岐部においては、X方向の両側の固定子側架台20Aのうち一方しか存在しないので、搬送台車10Aは局所的に「片持ち状態」となる。この分岐部で搬送台車10Aが倒れる可能性があるため、先行技術1では搬送台車10Aの全体の重量または重心位置に制限があった。しかし、実施の形態2では、対抗モーメントの発生要素で水平方向磁気吸引力を発生させることで、搬送台車10Aの倒れを防止し、搬送台車10Aの全体の重量または重心位置の制限を緩和する。
図9は、実施の形態2によるリニア搬送装置の分岐部付近の他の例を示す俯瞰図である。上記したように、「片持ち状態」となるのは、分岐部32のみである。このため、図9に示されるように、固定子側架台20Aは、搬送台車10Aが「片持ち状態」となる分岐部32にのみ対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25Aを配置して、それ以外の軌道上、すなわち分岐前軌道31上および分岐後軌道33上では省略、すなわち配置されなくてもよい。
実施の形態2によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態3.
下記に示す先行技術2では、分岐部を除く全軌道上で常時搬送台車の両側に固定子側架台を配置し、転動面が鉛直方向に対して等しい傾斜角を有するローラを搬送台車の左右両側の上下に設け、これらのローラを固定子側架台のレールと係合させることで、搬送台車を上下方向に支持する輸送システムが開示されている。
(先行技術2)国際公開第2015/042409号
分岐部で「片持ち状態」になるときに、先行技術2に記載の技術の場合には、上下のローラの各係合面に接する円である接円の中心の回りの回転の釣合が問題になる。この接円の中心の周りに作用するモーメントは、搬送台車の上下方向荷重と、接円の中心から搬送台車全体の重心位置までの水平方向の距離と、の積から成る倒れモーメントである。この倒れモーメントは、搬送台車を接円の中心の周りに倒す効果がある。設計上は、接円の中心から搬送台車の磁気吸引力の中心までの上下方向の距離はゼロ、または非常に小さくなるため、搬送台車と固定子側架台との磁気要素による水平方向の磁気吸引力による対抗モーメントは非常に小さくなる。また、ローラとレールとの間の摩擦力による対抗モーメントも先行技術1と同様に微小であるため、搬送台車は接円の中心の周りに容易に転倒してしまう。つまり、上下のローラの各係合面上を滑るように回転脱落が発生する。この結果、特許文献1および先行技術1と同様に搬送物の重量または重心位置を制限する必要があるという問題があった。実施の形態3では、転動面が鉛直方向に対して等しい傾斜角を有するローラを左右両側の上下に設けた搬送台車が「片持ち状態」にある場合に、接円の中心の周りに搬送台車が転倒してしまうことを従来に比して抑制することができるリニア搬送装置について説明する。
図10は、実施の形態3によるリニア搬送装置の構成の一例を示す分岐部以外の位置における断面図である。図11は、実施の形態3によるリニア搬送装置の構成の一例を示す分岐部の位置における断面図である。図10および図11は、Z方向に垂直な断面を示している。実施の形態3のリニア搬送装置1Bは、実施の形態2の場合と同様に、分岐部以外で図10に示されるように「両持ち状態」となり、分岐部で図11に示されるように「片持ち状態」となる。リニア搬送装置1Bは、搬送台車10Bと、固定子側架台20Ba,20Bbと、を備える。
搬送台車10Bは、搬送台車主構造体11Bと、上部平ローラ12Ba,12Bbと、下部平ローラ13Ba,13Bbと、駆動用可動子側磁気要素14Ba,14Bbと、対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbと、対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbと、を有する。
搬送台車主構造体11Bは、搬送対象の対象物を支持する部材である。図10および図11の例では、搬送台車主構造体11Bは、Z方向およびY方向に平行な面である側面111c,111dが、Z方向に垂直な面である前面および後面と、Y方向に垂直な面である上面および下面と、に比して大きい板状の部材によって構成される。
上部平ローラ12Baは、搬送台車主構造体11BのX方向の上方、具体的には、搬送台車主構造体11Bの固定子側架台20Ba側の上部に設けられる。上部平ローラ12Baは、Y方向から定められた傾斜角で傾斜する回転軸121Baに支持され、回転軸121Baの周りに回転する。上部平ローラ12Bbは、搬送台車主構造体11BのX方向の上方、具体的には、搬送台車主構造体11Bの固定子側架台20Bb側の上部に設けられる。上部平ローラ12Bbは、Y方向から定められた傾斜角で傾斜する回転軸121Bbに支持され、回転軸121Bbの周りに回転する。回転軸121Ba,121BbはY方向からX方向に向かって0度よりも大きく90度以下の定められた傾斜角の方向に延在する。回転軸121Baと回転軸121Bbとは、XY面内で鉛直方向からそれぞれ逆方向に定められた角度となるように設けられる。つまり、上部平ローラ12Ba,12Bbの転動面は、Y方向に対して傾斜している。上部平ローラ12Ba,12Bbの回転軸121Ba,121Bbを通る断面において、半径方向の周縁部に存在する転動面の形状は平坦である。上部平ローラ12Ba,12Bbは、搬送台車主構造体11Bに設けられる第1ローラに対応する。回転軸121Baおよび回転軸121Bbは、上部回転軸に対応する。
下部平ローラ13Baは、搬送台車主構造体11BのX方向の下方、具体的には、搬送台車主構造体11Bの固定子側架台20Ba側の下部に設けられる。下部平ローラ13Baは、Y方向から定められた傾斜角で傾斜する回転軸131Baに支持され、回転軸131Baの周りに回転する。下部平ローラ13Bbは、搬送台車主構造体11BのX方向の下方、具体的には、搬送台車主構造体11Bの固定子側架台20Bb側の下部に設けられる。下部平ローラ13Bbは、Y方向から定められた傾斜角で傾斜する回転軸131Bbに支持され、回転軸131Bbの周りに回転する。回転軸131Ba,131BbはY方向からX方向に向かって0度よりも大きく90度以下の定められた傾斜角の方向に延在する。回転軸131Baと回転軸131Bbとは、XY面内でY方向負側からそれぞれ逆方向に定められた角度となるように設けられる。つまり、下部平ローラ13Ba,13Bbの転動面は、Y方向に対して傾斜している。下部平ローラ13Ba,13Bbの回転軸131Ba,131Bbを通る断面において、半径方向の周縁部に存在する転動面の形状は平坦である。下部平ローラ13Ba,13Bbは、搬送台車主構造体11Bの第1ローラとは異なる高さに設けられる第2ローラに対応する。回転軸131Baおよび回転軸131Bbは、下部回転軸に対応する。
駆動用可動子側磁気要素14Baは、搬送台車主構造体11BのX方向の側面111cに設けられ、搬送台車主構造体11Bを固定子側架台20Baに対して駆動させる。図10および図11の例では、駆動用可動子側磁気要素14Baは、上部平ローラ12Baと下部平ローラ13Baとの間の搬送台車主構造体11BにおけるX方向の側面111cに設けられる。駆動用可動子側磁気要素14Bbは、搬送台車主構造体11BのX方向の側面111dに設けられ、搬送台車主構造体11Bを固定子側架台20Bbに対して駆動させる。図10および図11の例では、駆動用可動子側磁気要素14Baは、上部平ローラ12Bbと下部平ローラ13Bbとの間の搬送台車主構造体11BにおけるX方向の側面111dに設けられる。一例では、駆動用可動子側磁気要素14Ba,14Bbは、永久磁石または電磁石である。駆動用可動子側磁気要素14Ba,14Bbは、可動子側磁気要素に対応する。駆動用可動子側磁気要素14Ba,14Bbは、個別に区別しない場合には、駆動用可動子側磁気要素14Bと称される。
対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Baは、上部平ローラ12Baの回転軸121Baの先端部に配置され、固定子側架台20Baとの間で吸引力を発生させる。対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Bbは、上部平ローラ12Bbの回転軸121Bbの先端部に配置され、固定子側架台20Baとの間で吸引力を発生させる。一例では、対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbは、電磁石または永久磁石である。対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbは、搬送台車10Bが「片持ち状態」であるときに、搬送台車10Bの上下方向の荷重由来の倒れモーメントに対抗するモーメントである対抗モーメントを搬送台車10Bに発生させる。対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbは、可動子側吸引力発生要素に対応する。
対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Baは、下部平ローラ13Baの回転軸131Baの先端部に配置され、固定子側架台20Baとの間で反発力を発生させる。対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Bbは、下部平ローラ13Bbの回転軸131Bbの先端部に配置され、固定子側架台20Bbとの間で反発力を発生させる。一例では、対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbは、電磁石または永久磁石である。対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbは、搬送台車10Bが「片持ち状態」であるときに、搬送台車10Bの上下方向の荷重由来の倒れモーメントに対抗するモーメントである対抗モーメントを搬送台車10Bに発生させる。対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbは、可動子側反発力発生要素に対応する。
対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbと対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbとは、可動子側対抗モーメント発生要素を構成する。可動子側対抗モーメント発生要素は、搬送台車主構造体11BのX方向の両側の側面に配置され、固定子側架台20Bとの間で搬送台車10Bの倒れに対抗する対抗モーメントを発生させる。
実施の形態3でも、実施の形態2と同様に、分岐部以外の部分では、固定子側架台20Ba,20Bbは、搬送台車10BのX方向の両側に設けられる。すなわち、固定子側架台20Ba,20Bbは、分岐部以外の部分では、「両持ち状態」となる。このため、搬送台車主構造体11Bの側面111cと対向する固定子側架台20Baと、搬送台車主構造体11Bの側面111dと対向する固定子側架台20Bbと、が存在する。なお、以下では、固定子側架台20Baおよび固定子側架台20Bbは、個別に区別しない場合には、固定子側架台20Bと称される。
固定子側架台20Bは、架台構造体21Bと、上部平レール22Bと、下部平レール23Bと、駆動用固定子側磁気要素24Bと、対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bと、対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bと、を有する。
架台構造体21Bは、搬送台車10Bを移動させながら支持する支持部材である。架台構造体21Bは、搬送台車10Bの移動経路に沿って設けられる。実施の形態3では、架台構造体21Bは、Z方向に垂直な断面が台形状である本体部211Bと、本体部211Bの搬送台車10Bが配置される側とは反対側の上部に設けられる上部側壁部212Bと、本体部211Bの搬送台車10Bが配置される側とは反対側の下部に設けられる下部側壁部213Bと、を有する。本体部211BのY方向と交差する上側の面と上部側壁部212Bとによって囲まれる本体部211Bの上部の空間は、上部平ローラ12Ba,12Bbおよび対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbが通過可能となる。本体部211BのY方向と交差する下側の面と下部側壁部213Bとによって囲まれる本体部211Bの下部の空間は、下部平ローラ13Ba,13Bbおよび対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbが通過可能となる。
上部平レール22Bは、架台構造体21Bの本体部211BのY方向と交差する上面に設けられ、走行面が平坦なレールである。上部平レール22Bは、搬送台車10Bの上部平ローラ12Ba,12Bbに対応する位置に設けられ、上部平ローラ12Ba,12Bbに係合する。上部平レール22Bは、架台構造体21Bに設けられ、第1ローラである上部平ローラ12Ba,12Bbに係合する第1レールに対応する。
下部平レール23Bは、架台構造体21Bの本体部211BのY方向と交差する下面に設けられ、走行面が平坦なレールである。下部平レール23Bは、搬送台車10Bの下部平ローラ13Ba,13Bbに対応する位置に設けられ、下部平ローラ13Ba,13Bbに係合する。下部平レール23Bは、架台構造体21Bに設けられ、第2ローラである下部平ローラ13Ba,13Bbに係合する第2レールに対応する。
駆動用固定子側磁気要素24Bは、駆動用可動子側磁気要素14Bと対となって水平方向に磁気吸引力を発生させる。図10および図11の例では、駆動用固定子側磁気要素24Bは、上部平レール22Bと下部平レール23Bとの間の架台構造体21Bの本体部211Bにおける搬送台車10Bと対向する側面に設けられる。一例では、駆動用固定子側磁気要素24Bは、永久磁石または電磁石である。なお、以下では、固定子側架台20Baおよび固定子側架台20Bbが有する駆動用固定子側磁気要素24Bを区別する場合には、固定子側架台20Baの駆動用固定子側磁気要素24Bは、駆動用固定子側磁気要素24Baと称され、固定子側架台20Bbの駆動用固定子側磁気要素24Bは、駆動用固定子側磁気要素24Bbと称される。駆動用固定子側磁気要素24Bは、固定子側磁気要素に対応する。
対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bは、対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbと対となって回転軸121Ba,121Bbの方向に吸引力を発生させる。図10および図11の例では、対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bは、架台構造体21Bの上部側壁部212Bにおける搬送台車10Bと対向する側面に設けられる。一例では、対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bは、電磁石または永久磁石である。対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bは、固定子側吸引力発生要素に対応する。なお、以下では、固定子側架台20Baおよび固定子側架台20Bbが有する対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bを区別する場合には、固定子側架台20Baの対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bは、対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Baと称され、固定子側架台20Bbの対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bは、対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bbと称される。
対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bは、対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbと対となって回転軸131Ba,131Bbの方向に反発力を発生させる。図10および図11の例では、対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bは、架台構造体21Bの下部側壁部213Bにおける搬送台車10Bと対向する側面に設けられる。一例では、対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bは、電磁石または永久磁石である。対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bは、固定子側反発力発生要素に対応する。なお、以下では、固定子側架台20Baおよび固定子側架台20Bbが有する対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bを区別する場合には、固定子側架台20Baの対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bは、対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Baと称され、固定子側架台20Bbの対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bは、対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bbと称される。
対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Ba,25Bbと対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Ba,27Bbとは、固定子側対抗モーメント発生要素を構成する。固定子側対抗モーメント発生要素は、架台構造体21Bに配置され、対となる可動子側対抗モーメント発生要素との間で対抗モーメントを発生させる。
ここで、実施の形態3のリニア搬送装置1Bの実施の形態2との差異について説明する。実施の形態2では、搬送台車10Aに備えられる上部V字ローラ12Aおよび追加ローラ16Aと、これらに対応する固定子側架台20Aの上部V溝レール22Aおよび追加レール26Aと、で搬送台車10Aの上下方向荷重を支持していた。一方、実施の形態3では、転動面が上下方向であるY方向に対して等しい傾斜角を有する上部平ローラ12Ba,12Bbおよび下部平ローラ13Ba,13Bbによって、搬送台車10Bの上下方向荷重を支持している。
また、対抗モーメント発生用磁気要素について、実施の形態2では搬送台車10Aの上部に備えられる対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15Aa,15Abと、固定子側架台20Aの上部に備えられる対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Aa,25Abと、によって、水平方向の磁気吸引力を発生させていた。一方、実施の形態3では搬送台車10Bの対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbと、固定子側架台20Bの対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Ba,25Bbと、によって、上部平ローラ12Ba,12Bbに回転軸121Ba,121Bb方向の磁気吸引力を発生させている。また、搬送台車10Bの対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbと、固定子側架台20Bの対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Ba,27Bbと、によって、下部平ローラ13Ba,13Bbに回転軸131Ba,131Bb方向の磁気反発力を発生させている。
分岐部以外の軌道上では、図10に示されるように、搬送台車10BのX方向両側に配置される転動面が上下方向であるY方向に対して定められた傾斜角を有する上部平ローラ12Ba,12Bbおよび下部平ローラ13Ba,13Bbと、X方向両側の固定子側架台20Ba,20Bb上の上部平レール22Bおよび下部平レール23Bと、が係合する「両持ち状態」であり、搬送台車10Bの倒れは問題にならない。しかし、図11に例示される分岐部などでは、搬送台車10BのX方向両側の固定子側架台20Ba,20Bbが分岐し、固定子側架台20Bが搬送台車10BのX方向の一方の側に配置される。図11の例では、搬送台車10Bは固定子側架台20Baに沿って移動する結果、固定子側架台20Baが搬送台車10BのX方向の一方の側に配置される。この場合には、片側の固定子側架台20Baの駆動用固定子側磁気要素24Baと、対向する搬送台車10Bの駆動用可動子側磁気要素14Baと、の間の磁気吸引力によって、固定子側架台20Baのみに搬送台車10Bが吸着しつつ駆動される。ここで、駆動用可動子側磁気要素14Baと駆動用固定子側磁気要素24Baとはリニアモータを構成する。この場合、駆動用可動子側磁気要素14Baおよび駆動用固定子側磁気要素24Baの少なくとも一方は電磁石である。このとき、搬送台車10Bの固定子側架台20Baと吸着している側とは反対側の上部平ローラ12Bbおよび下部平ローラ13Bbは、上部平レール22Bおよび下部平レール23Bと係合していない状態である。つまり、搬送台車10Bは、吸着している側の上部平ローラ12Baと上部平レール22Bとの係合、および下部平ローラ13Baと下部平レール23Bとの係合によって支持される「片持ち状態」になる。この「片持ち状態」となる分岐部では実施の形態1,2と同様に、搬送台車10Bの倒れを考慮する必要がある。
実施の形態3においては、搬送台車10Bは、対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbと、対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbと、を備える。また、固定子側架台20Ba,20Bbは、対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Ba,25Bbと、対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Ba,27Bbと、を備える。対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Baと対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Baとの間、および対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Bbと対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Bbとの間では、それぞれ上部平ローラ12Ba,12Bbの回転軸121Ba,121Bbの方向に吸引力、この場合には磁気吸引力を発生させる。また、対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Baと対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Baとの間、および対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Bbと対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bbとの間では、それぞれ下部平ローラ13Ba,13Bbの回転軸131Ba,131Bbの方向に反発力、この場合には磁気反発力を発生させる。これによって、搬送台車10Bの上部が固定子側架台20Bに吸引され、搬送台車10Bが「片持ち状態」において、上下方向の荷重由来の倒れモーメントによる搬送台車10Bの倒れを抑制することができる。なお、対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbおよび対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Ba,25Bbの少なくとも一方は電磁石とし、制御装置が、リニアモータへの通電制御と同期させて電磁石に通電制御するようにしてもよい。同様に、対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbおよび対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Ba,27Bbの少なくとも一方は電磁石とし、制御装置が、リニアモータへの通電制御と同期させて電磁石に通電制御するようにしてもよい。
なお、ここでは、反発力発生要素が磁気要素である場合を例に挙げたが、反発力発生要素が磁気要素以外の他の方法に基づくものであってもよい。反発力発生要素として、空気圧を用いる方法がある。一例では搬送台車10Bの上方に、下部平ローラ13Ba,13Bbと下部側壁部213Bとの間の空気圧を高めるために空気を送り込む反発力発生要素を設ける場合である。このような空気圧を用いる方法などと比較すれば、磁気要素を用いる方法によれば反発力の発生にあたり電力などが不要となる。
図12は、実施の形態3によるリニア搬送装置の効果を説明するための図である。ここでは、搬送台車10Bが固定子側架台20Baに吸着されている場合を例に挙げる。実施の形態3で考慮する回転モーメントの釣合では、実施の形態1,2とは異なり、XY面内で上部平ローラ12Baおよび上部平レール22Bの係合面と、下部平ローラ13Baおよび下部平レール23Bの係合面と、に接する円である接円Cの中心Oの回りの回転の釣合が問題になる。
この接円Cの中心Oの周りには、上下方向であるY方向の搬送台車10Bの重力Fgと、接円Cの中心Oから搬送台車10Bの全体の重心位置までの水平方向距離xgと、の積から成るモーメントである倒れモーメントMtが作用する。この倒れモーメントMtは、接円Cの中心Oの周りに搬送台車10Bを倒す効果がある。なお、ここでは、水平方向はX方向に対応する。
この倒れモーメントMtに対して、実施の形態1,2と同様に駆動用可動子側磁気要素14Baと駆動用固定子側磁気要素24Baとによる水平方向の磁気吸引力Fmag.dと、接円Cの中心Oから搬送台車10Bの磁気吸引力Fmag.dの中心までの上下方向であるY方向の距離ymag.dと、の積から成るモーメントが対抗モーメントになる。しかし、設計上、磁気吸引力Fmag.dで横方向に吸着される搬送台車10Bを、上部平ローラ12Baと上部平レール22Bとの係合、および下部平ローラ13Baと下部平レール23Bとの係合で支持するにあたって、それぞれの支持荷重に差が出ないようにすることが好ましい。このために、接円Cの中心Oから搬送台車10Bの磁気吸引力Fmag.dの中心までのY方向の距離ymag.dはゼロかまたは非常に小さな値となる。この結果、実施の形態3の駆動用可動子側磁気要素14Baと駆動用固定子側磁気要素24Baとによる水平方向の磁気吸引力Fmag.d由来の対抗モーメントはゼロ、または非常に小さくなってしまう。
つぎに、上部平ローラ12Baおよび上部平レール22Bの係合面の荷重と、下部平ローラ13Baおよび下部平レール23Bの係合面の荷重と、による対抗モーメントについて考える。まず、上下の平ローラ12Ba,13Baおよび上下の平レール22B,23Bの接触面外方向荷重と、上部平ローラ12Baおよび下部平ローラ13Baの係合面に接する接円Cの中心Oの周りに発生するモーメントは幾何学的に必ずゼロになる。上部平ローラ12Baおよび上部平レール22Bの接触面内の摩擦力Ffric.3A、および下部平ローラ13Baおよび下部平レール23Bの接触面内の摩擦力Ffric.4Aと、接円Cの半径Rと、の積から成るモーメントが倒れモーメントに対する対抗モーメントになる。しかし、実施の形態2でも述べたように、ローラおよびレールの係合面における摩擦力は倒れモーメントと比較して非常に小さい。
この結果、先行技術2の搬送台車10Bは倒れモーメントが対抗モーメントを上回り、搬送台車10Bは接円Cの中心Oの周りに容易に転倒してしまう。具体的には、搬送台車10Bは、上部平ローラ12Baおよび上部平レール22Bの係合面上と、下部平ローラ13Baおよび下部平レール23Bの係合面上と、を滑るように回転脱落してしまう。このため、搬送物の重量、または搬送台車10Bの重心位置と接円Cの中心Oとの間の距離xgに大幅な制限を設ける必要があった。
一方、実施の形態3においては、搬送台車10Bおよび固定子側架台20Baのそれぞれの上方に配された対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Baと対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Baとの間で、上部平ローラ12Baの回転軸121Baの方向に磁気吸引力を発生させる。また、搬送台車10Bおよび固定子側架台20Baのそれぞれの下方に配された対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Baと対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Baとの間で、下部平ローラ13Baの回転軸131Baの方向に磁気反発力を発生させる。これによって、倒れモーメントに対する対抗モーメントを増加させることができる。
上述の搬送台車10Bの倒れが発生しないための条件を定式化する。上部平ローラ12Baおよび上部平レール22Bの係合面と下部平ローラ13Baおよび下部平レール23Bの係合面の接円Cの半径をRとし、上部平ローラ12Baおよび上部平レール22Bの接触面内の摩擦力をFfric.3Aとし、下部平ローラ13Baおよび下部平レール23Bの接触面内の摩擦力をFfric.4Aとし、接円Cの中心Oから対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Baと対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Baとの間の磁気吸引力の中心までの半径をRmとし、対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Baと対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Baとの間の磁気吸引力をFmag.3Aとし、対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Baと対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Baとの間の磁気反発力をFmag.4Aとすると、搬送台車10Bの倒れが発生しないための条件は次式(3)が成立することである。なお、Rmは、接円Cの中心Oから対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Baと対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Baとの間の磁気反発力Fmag.4Aの中心までの半径でもある。
xgFg<ymag.dFmag.d+R(Ffric.3A+Ffric.4A)+Rm(Fmag.3A+Fmag.4A) ・・・(3)
実施の形態1と同様に、搬送台車10B全体の重量、または重心位置の制限を大きく緩和するには、対抗モーメントの発生要素における磁気吸引力Fmag.3A、磁気反発力Fmag.4Aを大きくするか、上下の平ローラ12Ba,13Baおよび上下の平レール22B,23Bの係合面の接円Cの中心Oから対抗モーメント発生用磁気要素の磁気吸引力Fmag.3Aおよび磁気反発力Fmag.4Aの中心までの半径Rmを広く取ればよい。
一例では、対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbと対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Ba,25Bbとの間の磁気吸引力および対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbと対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Ba,27Bbとの間の磁気反発力の和、並びに磁気吸引力の中心および磁気反発力の中心と接円Cの中心Oとの間の距離は、駆動用可動子側磁気要素14Bと駆動用固定子側磁気要素24Bとの間の磁気吸引力、およびこの磁気吸引力の中心と接円Cの中心Oとの間の距離と、上部平ローラ12Baと上部平レール22Bとの接触面内の摩擦力、および下部平ローラ13Baと下部平レール23Bとの接触面内の摩擦力の和、並びに接円Cの半径Rに基づいて決定される。
実施の形態3によるリニア搬送装置1Bの分岐部付近の俯瞰図は、実施の形態2の図9の分岐部付近の俯瞰図と類似するため省略するが、実施の形態2と同様に、対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Ba,25Bbおよび対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Ba,27Bbは、搬送台車10Bが「片持ち状態」となる分岐部32にのみ配置して、それ以外の軌道である分岐前軌道31上および分岐後軌道33上では省略、すなわち配置されなくてもよい。
図10から図12の例では、可動子側反発力発生要素および固定子側反発力発生要素は、磁石または電磁石によって実現されていたが、ローラおよびレールの組み合わせによって実現されるものであってもよい。図13は、実施の形態3によるリニア搬送装置の構成の他の例を示す断面図である。図10から図12までと同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。図13のリニア搬送装置1Cでは、磁気反発力を発生させる磁気反発力発生要素を図10から図12に示したものとは異ならせている。つまり、搬送台車10Bは、磁気反発力を発生させる対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbに代えて、対抗モーメント発生用可動子側追加ローラ18Ca,18Cbを備える。また、固定子側架台20Bが、対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bに代えて、対抗モーメント発生用固定子側追加レール28Cを備える。対抗モーメント発生用可動子側追加ローラ18Ca,18Cbは、可動子側反発力発生要素に対応する。対抗モーメント発生用固定子側追加レール28Cは、固定子側反発力発生要素に対応する。
このとき、下部平ローラ13Baを支持する回転軸131Caは鈎型に曲がった構造を有し、鈎型に曲がった先端部に対抗モーメント発生用可動子側追加ローラ18Caが支持される。同様に、下部平ローラ13Bbを支持する回転軸131Cbは鈎型に曲がった構造を有し、鈎型に曲がった先端部に対抗モーメント発生用可動子側追加ローラ18Cbが支持される。この対抗モーメント発生用可動子側追加ローラ18Ca,18Cbの回転軸131Ca,131Cbを通る断面において、半径方向の周縁部に存在する転動面の形状は平坦である。
対抗モーメント発生用固定子側追加レール28Cは、対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Bが設けられていた架台構造体21Bの下部側壁部213Bに設けられ、走行面が平坦なレールである。対抗モーメント発生用固定子側追加レール28Cは、搬送台車10Bの対抗モーメント発生用可動子側追加ローラ18Ca,18Cbに対応する位置に設けられる。
この場合にも、図9と同様に、対抗モーメント発生用固定子側追加レール28Cは分岐部32のみに設置され、それ以外の軌道である分岐前軌道31上および分岐後軌道33上では省略、すなわち配置されなくてもよい。
反発力を発生させる対抗モーメントの発生要素として磁気要素を用いる場合には各磁気要素間のギャップによって磁気反発力が大きく変動するため、別途ギャップの管理が必要になる。しかし図13に示されるように、対抗モーメントの発生要素をローラおよびレールに変更することで、ギャップの管理は不要になる。一方でローラおよびレールで対抗モーメントの発生要素を実現する場合には、ローラとレールとの間の摩擦抵抗が存在するため、搬送台車10Bの進行方向駆動力で補償する必要がある。
図14は、実施の形態3によるリニア搬送装置の構成の他の例を示す断面図である。図10から図13までと同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。図14のリニア搬送装置1Dでは、磁気反発力発生要素の構成を図13に示したものとは異ならせている。つまり、搬送台車10Bが、対抗モーメント発生用可動子側追加ローラ18Ca,18Cbに代えて、対抗モーメント発生用可動子側追加レール19Da,19Dbを備える。また、固定子側架台20Bが、対抗モーメント発生用固定子側追加レール28Cに代えて、対抗モーメント発生用固定子側追加ローラ29Dを備える。なお、架台構造体21Bは、下部側壁部213Bを有さない構造となる。この場合には、固定子側架台20B上に対抗モーメント発生用固定子側追加ローラ29Dを走行方向に複数配置する必要がある。対抗モーメント発生用固定子側追加ローラ29Dは、架台構造体21Bに設けられる回転軸291Dに支持される。
対抗モーメント発生用可動子側追加レール19Da,19Dbは、可動子側反発力発生要素に対応する。対抗モーメント発生用固定子側追加ローラ29Dは、固定子側反発力発生要素に対応する。
また、図9と同様に、対抗モーメント発生用固定子側追加ローラ29Dは分岐部32のみに設置し、それ以外の軌道である分岐前軌道31上および分岐後軌道33上では省略、すなわち配置されなくてもよい。
このように、搬送台車10Bにローラではなくレールを搭載することで、図13の例よりも搬送台車10Bの軽量化が可能になる。
実施の形態3によっても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
以上で述べた実施の形態1,2,3において、「片持ち状態」の搬送台車10,10A,10Bの吸着力は、駆動用磁気要素で発生する磁気吸引力Fmag.dと、対抗モーメント発生要素の磁気吸引力Fmag.addと、の水平方向成分の総和になる。従来技術では、搬送台車10,10A,10Bの吸着力はすべて駆動用磁気要素でのみ発生させる必要があるが、実施の形態1,2,3では駆動用磁気要素は対抗モーメント発生要素の磁気吸引力の水平方向成分を出力せずに済む。
実施の形態1の場合を例に挙げると、駆動用可動子側磁気要素14と駆動用固定子側磁気要素24との間で発生する磁気吸引力の大きさは、搬送台車10のX方向の一方に存在する固定子側架台20への吸着に必要となる吸着力の値から、対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15と対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25との間の磁気吸引力の水平方向成分を減算した値とすることができる。
また、実施の形態1,2,3において、可動子側対抗モーメント発生要素および固定子側対抗モーメント発生要素の少なくとも一方は、電磁石で構成され、リニア搬送装置1,1A,1Bは、電磁石への通電制御を行い、可動子側対抗モーメント発生要素と固定子側対抗モーメント発生要素との間に働く力を変化させる制御装置をさらに備えるようにしてもよい。実施の形態1,2,3における対抗モーメント発生用可動子側磁気要素15,15Aa,15Ab、対抗モーメント発生用可動子側上部磁気要素15Ba,15Bbおよび対抗モーメント発生用可動子側下部磁気要素17Ba,17Bbは、可動子側対抗モーメント発生要素に対応する。また、実施の形態1,2,3における対抗モーメント発生用固定子側磁気要素25,25Aa,25Ab、対抗モーメント発生用固定子側上部磁気要素25Ba,25Bbおよび対抗モーメント発生用固定子側下部磁気要素27Ba,27Bbは、固定子側対抗モーメント発生要素に対応する。可動子側対抗モーメント発生要素と固定子側対抗モーメント発生要素との間に働く力は、磁気吸引力または磁気反発力を含む。これによって、通電制御によって、可動子側対抗モーメント発生要素と固定子側対抗モーメント発生要素との間の磁気吸引力または磁気反発力を可変とすることができる。この結果、搬送台車10,10A,10Bの重量および重心位置、あるいは可動子側対抗モーメント発生要素と固定子側対抗モーメント発生要素との間のギャップなどの変動に応じて発生させる磁気吸引力または磁気反発力を変化させることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。