以下、添付図面を参照して、本願の開示する運転支援装置、運転支援システムおよび運転支援方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
まず、図1Aおよび図1Bを用いて、実施形態に係る運転支援方法の概要について説明する。図1Aおよび図1Bは、実施形態に係る運転支援方法の概要を示す図である。図1Aおよび図1Bでは、後方の車両C1が前方の車両C2を煽っている、換言すれば、前方の車両C2が後方の車両C1に煽られている状況を示している。なお、車両C1および車両C2を区別しない場合には、車両Cと記載する場合がある。
従来、煽り運転を受けた場合、ドライブレコーダ等の記録画像を用いることで、煽った車両の後の検挙等を容易化する技術がある。また、ドライブレコーダ等で周囲を撮像していることを謳うことで煽り運転自体を抑止することが提案されている。
しかしながら、従来技術では、煽っている側が意識的に煽り運転を行っている場合に限られる。つまり、運転者本人が意識・認識せずに煽り運転の状況になってしまっている場合には、上記した従来技術では、運転者が意図せずに煽り運転を行ってしまうおそれがあった。また、煽られる側も、例えば、法定速度よりも極端に遅い速度で走行している場合や、不必要に減速操作が多い場合等の煽られやすい運転により、煽り運転を誘ってしまうおそれがあった。
そこで、実施形態に係る運転支援方法では、煽り・煽られ運転を判定し、状況に応じた処理を行う。以下、図1Aを用いて、煽り運転を判定する場合を説明し、図1Bを用いて、煽られ運転を判定する場合を説明する。
まず、図1Aを用いて、煽り運転を判定する場合について説明する。図1Aでは、運転支援方法を実行する運転支援装置1が後方の車両C1に搭載されていることとする。
図1Aに示すように、実施形態に係る運転支援方法では、まず、自車両(車両C1)の走行に関する情報である走行情報を取得する(ステップS1)。走行情報には、例えば、自車両の運転状態(アクセル操作、ブレーキ操作、車速等)や、自車両の位置、および自車両の周囲環境(道路種別、交通量、天気、路面状態等)に関する情報を含む。
つづいて、実施形態に係る運転支援方法では、取得した走行情報に基づいて、自車両が他車両(車両C2)に対して煽り運転が行っているか否かを判定する(ステップ2)。なお、煽り運転の判定には、煽り運転モデルを用いるが、煽り運転モデルの詳細については後述する。
つづいて、実施形態に係る運転支援方法では、煽り運転を行っていると判定した場合、自車両(例えば、運転者)に対して煽り運転に関する通知情報を通知する(ステップS3)。例えば、実施形態に係る運転支援方法では、自車両の運転者に対して煽り運転を行っている旨を通知する。
これにより、自車両の運転者が意図せずに煽り運転を行ってしまっている場合に、自車両の運転者に対して煽り運転を認識させることができるため、例えば、自車両の運転者が煽り運転を解消する運転操作をすることで、自車両による煽り運転を抑制することができる。
次に、図1Bを用いて、煽られ運転を判定する場合について説明する。図1Bでは、運転支援方法を実行する運転支援装置1が前方の車両C2に搭載されていることとする。
図1Bに示すように、実施形態に係る運転支援方法では、まず、自車両(車両C2)の走行に関する情報である走行情報を取得する(ステップS1)。走行情報には、例えば、自車両の運転状態(アクセル操作、ブレーキ操作、車速等)や、自車両の位置、および自車両の周囲環境(道路種別、交通量、天気、路面状態等)に関する情報を含む。
つづいて、実施形態に係る運転支援方法では、取得した走行情報に基づいて、自車両が他車両(車両C1)から煽られ易い運転である煽られ運転を行っているか否かを判定する(ステップS2)。なお、煽られ運転の判定には、煽られ運転モデルを用いるが、煽られ運転モデルの詳細については後述する。
つづいて、実施形態に係る運転支援方法では、煽られ運転の判定結果に応じた処理を行う(ステップS3)。例えば、実施形態に係る運転支援方法では、自車両の運転者に対して煽られ易い運転であることを通知する。また、実施形態に係る運転支援方法では、自車両の運転者の運転経験が浅い場合等には、煽られ運転を通知すると運転者が焦るおそれがあるため、煽られにくい経路の変更を提案するようにしてもよい。
このように、自車両が煽られ易い運転をしている場合には、自車両の運転者への通知により煽られ運転を解消させたり、自車両を煽られにくい経路へ移動させて煽られる状況を回避させたりすることで、他車両による煽り運転を抑制することができる。
なお、図1Bでは、実施形態に係る運転支援装置1は、自車両(C2)の走行情報に基づいて煽られ運転を判定したが、煽られ運転の判定を必ずしも行わなくてもよい。つまり、実施形態に係る運転支援装置1は、例えば、他車両(C1)と通信可能である場合には、自車両を煽っていることを示す情報を他車両から取得した場合に、自車両の運転者に対して、他車両から煽られていることを示す通知情報を通知してもよい。
次に、図2を用いて、実施形態に係る運転支援装置1の構成について説明する。図2は、実施形態に係る運転支援装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、実施形態に係る運転支援装置1は、各種車載装置10と、出力装置50と接続される。
各種車載装置10は、自車両に関する情報を検出するセンサ群や、他車両と通信する車車間通信装置、外部サーバと通信する通信装置等を含む。かかるセンサは、例えば、車内や車外を撮像するカメラ、GPS(Global Positioning System)等の自車両の位置を検出センサ、レーダ等の物体検出センサ、赤外線センサ、生体センサ等の様々なセンサを含む。
出力装置50は、通知情報を出力する装置であり、例えば、スピーカやディスプレイ等である。
実施形態に係る運転支援装置1は、制御部2と、記憶部3とを備える。制御部2は、取得部21、判定部22および処理部23を備える。記憶部3は、ユーザ情報31およびモデル情報32を記憶する。
ここで、運転支援装置1は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、データフラッシュ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部2の取得部21、判定部22および処理部23として機能する。
また、制御部2の取得部21、判定部22および処理部23の少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
また、記憶部3は、たとえば、RAMやデータフラッシュに対応する。RAMやデータフラッシュは、ユーザ情報31や、モデル情報32、各種プログラムの情報等を記憶することができる。なお、運転支援装置1は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
記憶部3に記憶されるユーザ情報31は、煽り・煽られ運転の判定対象である運転者となるユーザに関する情報である。ユーザ情報31は、ユーザから入力を受け付けたり、ユーザが所有する端末装置から情報取得してもよく、あるいは、ユーザの運転操作等から生成されてもよい。
図3は、ユーザ情報31の一例を示す図である。図3に示すように、ユーザ情報31には、「ユーザID」、「デモグラフィック属性」、「サイコグラフィック属性」および「運転履歴」といった項目が含まれる。
「ユーザID」は、各ユーザを識別する識別情報である。「デモグラフィック属性」は、ユーザの人口統計学的な属性の情報である。かかる「デモグラフィック属性」は、例えば、ユーザの「性別」、「年齢」、「住所」などの情報である。「性別」には、ユーザが女性である場合には「1」が設定され、ユーザが男性である場合には「2」が設定される。また、「年齢」には、ユーザの年齢が設定される。なお、「デモグラフィック属性」は、図3に示した属性の例に限られず、ユーザの職業、家族構成、年収、出身地、学歴など様々な属性を含んでいてもよい。
「サイコグラフィック属性」は、ユーザの心理学的な属性の情報であり、例えば、ユーザの価値観、ライフスタイル、性格、嗜好などの情報である。図3に示す例では、属性要素毎に、ユーザの嗜好が相対的に高い場合に「1」が設定され、それ以外の場合には「0」が設定される。また、「サイコグラフィック属性」は、図3に示した属性の例に限られず、経済、政治、野球、サッカー、その他スポーツ、スイーツ、パソコン、白物家電、家具など様々な属性を含んでいてもよい。なお、属性の情報は、0と1の2段階に限定されず、3段階以上の値であってもよい。
「運転履歴」は、ユーザの運転履歴の情報である。「運転履歴」には、例えば、免許取得日や、実際の運転年数、運転操作の特性(平均車速や、ブレーキング特性、車間距離特性)等が含まれる。
次に、記憶部3に記憶されたモデル情報32は、ユーザの煽り・煽られ運転を判定するためのモデルの情報である。図4は、モデル情報32の一例を示す図である。図4に示すように、モデル情報32には、「モデルID」および「判定内容」といった情報が含まれる。
例えば、モデルID「M1」は、運転者の煽り運転を判定するための煽り運転モデルである。煽り運転モデルは、例えば、煽り運転を行ったか否かの情報と、走行情報とが対応付いた情報である。
走行情報は、例えば、運転操作の情報や、車両の走行状態(車速、車間距離、旋回の有無等)の情報、位置情報(高速道路、一般道)、環境情報(天気情報や、混雑情報、路面状況、前方または後方の車両の有無)等を含む。
また、煽り運転モデルは、煽り運転を行ったか否かの情報と、走行情報とを用いた機械学習により生成された学習モデルであってもよい。具体的には、学習モデルとしての煽り運転モデルは、煽り運転を行ったか否かの情報を目的変数(正解データ)とし、走行情報を説明変数(素性)とする回帰モデルとして求めることができる。
また、モデルID「M2」は、運転者の煽られ運転を判定するための煽られ運転モデルである。煽られ運転モデルは、煽られ運転であるか否かの情報と、上記した走行情報とが対応付いた情報である。
また、煽られ運転モデルは、煽られ運転であるか否かの情報と、走行情報とを用いた機械学習により生成された学習モデルであってもよい。具体的には、学習モデルとしての煽られ運転モデルは、煽られ運転であるか否かの情報を目的変数(正解データ)とし、走行情報を説明変数(素性)とする回帰モデルとして求めることができる。
次に、制御部2の各機能(取得部21、判定部22および処理部23)について説明する。
取得部21は、各種情報を取得する。例えば、取得部21は、自車両の走行に関する走行情報を取得する。走行情報には、自車両の運転状態(アクセル操作、ブレーキ操作、車速等)や、自車両の位置、自車両の周囲環境(道路種別、交通量、天気、路面状態等)、前方または後方の車両の有無、緊急車両の有無に関する情報を含む。
また、取得部21は、自車両の前方や後方にいる他車両から各種情報を取得することができる。取得部21は、自車両の後方にいる他車両から、自車両を煽っていることを示す情報(煽られ情報の一例)を取得する。また、取得部21は、自車両の前方にいる他車両から、自車両に煽られていることを示す情報(煽り情報の一例)を取得する。つまり、取得部21は、自車両が他車両を煽っているかの情報や、他車両から煽られているかの情報を取得する。
判定部22は、自車両が煽り運転または煽られ運転を行っているか否かを判定する。具体的には、判定部22は、取得部21によって取得された走行情報に基づいて、自車両が他車両に対して煽り運転を行っているか否かを判定する。
また、判定部22は、取得部21によって取得された走行情報に基づいて、自車両が他車両から煽られ易い運転である煽られ運転を行っているか否かを判定する。
例えば、判定部22は、記憶部3に記憶されたモデル情報32に含まれるモデルと、走行情報とを照合して、煽り運転であるか否か、あるいは、煽られ運転であるか否かを判定する。
また、判定部22は、学習モデルとしてもモデルを含むモデル情報32を用いる場合、取得部21によって取得された走行情報を入力してモデルから出力された煽り運転または煽られ運転の度合いを示すスコアに基づいて煽り運転または煽られ運転を判定する。これにより、煽り運転または煽られ運転を高精度に判定することができる。
また、判定部22は、煽り運転または煽られ運転を行っていると判定した場合、煽り運転または煽られ運転の度合いを示す煽り運転レベルまたは煽られ運転レベルを判定する。煽り運転レベルまたは煽られ運転レベルは、上記したモデルから出力されるスコアに基づいて判定してもよく、走行情報に基づいて判定してもよい。
また、判定部22は、後述する通知部231によって通知情報が通知された後に、煽り運転または煽られ運転が解消したか否かを判定する。具体的には、判定部22は、通知部231によって通知情報が通知された後の所定期間中に、取得部21によって取得された走行情報に基づいて、煽り運転または煽られ運転の判定処理を行う。
なお、判定部22は、取得部21によって取得された走行情報に基づいて、自車両の周囲に緊急車両(救急車や、パトカー等)がいる場合、煽り運転および煽られ運転の判定処理の実行を禁止する。なお、判定処理の実行の禁止については、図5Bで後述する。
処理部23は、判定部22の判定結果に応じた処理を行う。具体的には、処理部23は、通知部231と、提案部232と、走行制御部233とを備える。
通知部231は、自車両の運転者に対して各種情報を通知する。例えば、通知部231は、判定部22によって煽り運転を行っていると判定された場合、自車両の運転者に対して煽り運転に関する通知情報を通知する。また、通知部231は、取得部21が他車両が煽られていることを示す情報を取得した場合、自車両の運転者に対して煽り運転に関する通知情報を通知する。
また、通知部231は、判定部22によって煽られ運転を行っていると判定された場合、自車両の運転者に対して煽られ運転に関する通知情報を通知する。また、通知部231は、取得部21が他車両が煽っていることを示す情報を取得した場合、自車両の運転者に対して煽られ運転に関する通知情報を通知する。なお、通知部231が通知する通知情報の具体例については、図5A~5Cで後述する。
また、通知部231は、自車両の運転者への通知に限らず、他車両の運転者へ通知してもよい。例えば、通知部231は、判定部22によって煽り運転を行っていると判定された場合、他車両の運転者に対して自車両が煽っていることを示す情報を通知する。また、通知部231は、判定部22によって煽られ運転を行っていると判定された場合、他車両の運転者に対して自車両が煽られていることを示す情報を通知する。
提案部232は、判定部22の判定結果に基づいて、自車両に対して経路の変更を提案する。例えば、提案部232は、判定部22によって煽られ運転を行っていると判定された場合、自車両の運転者に対して煽られにくい経路への変更を提案する。
具体的には、提案部232は、自車両が追い越し車線を走行している場合には、追い越し車線以外の車線への車線変更を提案する。また、提案部232は、自車両の走行している道路の交通量が比較的多い場合には、交通量が比較的少ない道路への経路変更を提案する。また、提案部232は、法定速度が比較的遅い道路や、車線数が比較的多い道路への経路変更を提案してもよい。
このように、提案部232は、煽られにくい経路への変更を提案することで、他車両が自車両を煽る状況を回避できるため、煽り運転の発生自体を抑制することができる。
また、提案部232は、判定部22によって煽り運転を行っていると判定された場合、自車両の運転者に対して煽り運転が発生しにくい経路への変更を提案する。例えば、提案部232は、自車両が追い越し車線以外の車線を走行している場合には、追い越し車線への車線変更を提案する。
また、提案部232は、自車両の走行している道路の交通量が比較的多い場合には、交通量が比較的少ない道路への経路変更を提案する。また、提案部232は、法定速度が比較的速い道路や、車線数が比較的多い道路への経路変更を提案してもよい。
このように、提案部232は、煽り運転が発生しにくい経路への変更を提案することで、自車両が他車両を煽る状況を回避できるため、煽り運転の発生自体を抑制することができる。
走行制御部233は、自車両の走行を制御する。具体的には、走行制御部233は、自車両の制御について、手動運転および自動運転を切り替えて走行制御する。
例えば、走行制御部233は、判定部22によって煽り運転または煽られ運転が解消されていないと判定された場合、手動運転から自動運転へ切り替えて煽り運転または煽られ運転を解消するように走行制御する。なお、走行制御部233は、通知情報を所定回数通知した後に、手動運転から自動運転へ切り替えるようにしてもよい。このように、走行制御部233は、通知情報が通知された後も、煽り運転または煽られ運転が解消しない場合に自動運転に切り替えることで、悪質な煽り運転または煽られ運転を強制的に止めさせることができる。
次に、図5A~図5Cを用いて、制御部2が実行する処理の具体例について説明する。図5A~図5Cは、制御部2が実行する処理の具体例を示す図である。
図5Aでは、後方の車両C1(以下、後方車両C1)が前方の車両C2(以下、前方車両C2)を煽っている状況、換言すれば、前方車両C2が後方車両C1に煽られている状況を示している。
図5Aに示す場合、前方車両C2における運転支援装置1は、前方車両C2の走行情報に基づいて、前方車両C1が煽られ運転を行っていると判定する。また、後方車両C1における運転支援装置1は、後方車両C1の走行情報に基づいて、後方車両C1が煽り運転を行っていると判定する。
なお、図5Aでは、後方車両C1が煽り運転と判定され、前方車両C1が煽られ運転と判定される場合を示しているが、例えば、後方車両C1が煽り運転と判定され、前方車両C2が煽られ運転と判定されない場合もあれば、後方車両C1が煽り運転と判定されず、前方車両C2が煽られ運転と判定される場合もある。
図5Aに示す場合、前方車両C2における運転支援装置1は、例えば、「法定速度よりもかなり遅いため、後方の車の煽りを誘発するおそれがあります。車線変更、もしくは、速度を少し上げませんか?」といった通知情報を通知する。
具体的には、図5Aに示す通知情報には、前方車両C2の運転が煽られ易い運転であることを示す情報や、前方車両C2の煽られ運転の解消を提案する情報等が含まれる。このような通知情報を通知することで、前方車両C2の運転者に煽られ易い運転を行っていることを認識させることができるとともに、煽られ運転の解消をさせ易くすることができる。
また、図5Aに示す場合、後方車両C1における運転支援装置1は、例えば、「前方の車が煽られていると感じているかもしれません。後方に注意しながら車間距離を空けてみませんか?」といった通知情報を通知する。
具体的には、図5Aに示す通知情報には、後方車両C1が煽っていることを示す情報や、後方車両C1の煽り運転の解消を提案する情報等が含まれる。このような通知情報を通知することで、後方車両C1の運転者に煽り運転を行っていることを認識させることができるとともに、煽り運転の解消をさせ易くすることができる。
次に、図5Bでは、図5Aと同様に、後方車両C1および前方車両C2が煽り・煽られの関係にあり、かつ、後方車両C1および前方車両C2の近くを緊急車両が通り過ぎようとしている状況を示している。
このような状況下では、後方車両C1および前方車両C2は、緊急車両が通過しやすいように、道路脇に移動して低速走行する場合がある。つまり、後方車両C1は急いで退避するために速度を上げて前方車両C2に一時的に近づくことで、後方車両C1の運転者の意思に反して煽り運転の状況になる。また、前方車両C2は、退避場所で急減速して低速走行になり、後方車両C1との車間距離が一気に縮まることで、前方車両C2の運転者の意思に反して煽られ運転の状況になる。
そこで、判定部22は、各種センサにより、後方車両C1の周囲に緊急車両が検知された場合、後方車両C1の煽り運転の判定処理の実行を禁止する。また、判定部22は、各種センサにより、前方車両C2の周囲に緊急車両が検知された場合、前方車両C2の煽られ運転の判定処理の実行を禁止する。
これにより、自車両が緊急車両を避けるために一時的に煽り・煽られ運転になる場合であっても、判定処理の実行を禁止することで、煽り・煽られ運転と判定されないようにできる。従って、通知部231による通知情報が通知されないため、通知情報が通知されることによる運転者の焦りや、煩わしさを低減することができる。
次に、図5Cを用いて、自車両Cにおける前方や後方に、煽り・煽られ運転の対象車両がいない場合について説明する。図5Cでは、自車両Cの前方また後方に他車両がいない状況であることとする。
図5Cに示す場合であっても、判定部22は、自車両Cの走行情報に基づいて、煽り運転または煽られ運転を行っていると判定する場合がある。つまり、判定部22は、仮に、自車両Cの前方または後方に他車両がいたとするならば、自車両Cと他車両が煽り・煽られの関係になる場合には、煽り運転または煽られ運転を行っていると判定する。
そして、かかる場合、判定部22は、実際には他車両がいないため、煽り運転レベルまたは煽られ運転レベルが低いと判定する。そして、通知部231は、判定部22によって煽り運転レベルまたは煽られ運転レベルが低いと判定された場合、運転アドバイスや過去の事故事例の紹介等を含む通知情報を通知する。つまり、通知部231は、煽り運転または煽られ運転を行っていることを直接的に示す情報を通知しない。
図5Cに示す例では、通知部231は、判定部22によって煽り運転を行っていると判定された場合、「ブレーキを踏む回数が多いようです。アクセルやブレーキをゆっくり踏むと、1回につきガソリンが○○ml節約できるんです!」といった運転アドバイスを含む通知情報を通知する。これにより、自車両Cの運転者が通知情報を基に、運転操作を改善することで、後の煽り運転の発生を抑制することができる。
また、通知部231は、判定部22によって煽られ運転を行っていると判定された場合、「法定速度に対して現在の速度が遅いようです。高速の追い越し車線で低速で走って煽られ事故が起こった件数が、今年現在で○○件発生しますのでご注意ください。」といった過去の事故事例の紹介を含む通知情報を通知する。これにより、自車両Cの運転者が通知情報を基に、運転操作を改善することで、後の煽られ運転の発生を抑制することができる。
なお、図5Cに示す状況において、例えば、自車両Cが交差点手前を走行する場合等のように、運転者に余裕が無い場合には、通知情報を通知しないようにしてもよい。
また、図5Cでは、煽り運転レベルまたは煽られ運転レベルが低い場合の通知情報を示したが、煽り運転レベルまたは煽られ運転レベルが低い場合(例えば、前方車両や後方車両がいる場合)、煽り運転または煽られ運転を直接的に示す通知情報を通知するようにしてもよい。このように、煽り運転レベルまたは煽られ運転レベルに応じた内容の通知情報を通知することで、適切な内容の通知情報を通知することができる。
次に、図6および図7を用いて、実施形態に係る運転支援装置1が実行する処理の処理手順について説明する。図6は、実施形態に係る運転支援装置1が実行する全体処理の処理手順を示すフローチャートである。図7は、実施形態に係る運転支援装置1が実行する自動運転切替処理の処理手順を示すフローチャートである。
まず、図6を用いて、実施形態に係る運転支援装置1が実行する全体処理について説明する。図6に示す処理は、運転支援装置1が搭載された車両の走行中(エンジン駆動中)、繰り返し実行される。
図6に示すように、まず、取得部21は、自車両の走行に関する走行情報を取得する(ステップS101)。つづいて、判定部22は、走行情報に基づいて、自車両の周囲における緊急車両の有無を判定する(ステップS102)。
判定部22は、自車両の周囲に緊急車両がいない場合(ステップS102:Yes)、自車両が煽り運転を行っているか否かを判定する(ステップS103)。
判定部22は、自車両が煽り運転を行っている場合(ステップS103:Yes)、煽り運転の度合いを示す煽り運転レベルを判定する(ステップS104)。
通知部231は、煽り運転に関する情報であって、煽り運転レベルに応じた内容の通知情報を自車両の運転者へ通知し(ステップS105)、処理を終了する。
一方、ステップS102において、判定部22は、緊急車両がいる場合(ステップS102:No)、判定処理を行わず処理を終了する。
また、ステップS103において、判定部22は、煽り運転を行っていないと判定した場合(ステップS103:No)、自車両が煽られ運転を行っているか否かを判定する(ステップS106)。
判定部22は、煽られ運転を行っていると判定した場合(ステップS106:Yes)、煽られ運転レベルを判定する(ステップS107)。
つづいて、通知部231は、煽られ運転に関する情報であって、煽られ運転レベルに応じた内容の通知情報を自車両の運転者へ通知し(ステップS108)、処理を終了する。
一方、ステップS106において、判定部22では、煽られ運転を行っていないと判定した場合(ステップS106:No)、処理を終了する。
次に、図7を用いて、実施形態に係る運転支援装置1が実行する自動運転切替処理について説明する。図7に示す処理は、自車両が判定部22により煽り運転または煽られ運転を行っていると判定された場合に実行される。
図7に示すように、通知部231は、自車両の運転者に対して煽り運転または煽られ運転に関する通知情報を通知する(ステップS201)。
つづいて、判定部22は、通知情報の通知後に、自車両の煽り運転または煽られ運転が解消したか否かを判定する(ステップS202)。
通知部231は、判定部22によって自車両の煽り運転または煽られ運転が解消したと判定された場合(ステップS202:Yes)、通知情報の通知を終了し(ステップS203)、処理を終了する。
一方、通知部231は、判定部22によって自車両の煽り運転または煽られ運転が解消していないと判定された場合(ステップS202:No)、通知情報を再度通知する(ステップS204)。
つづいて、判定部22は、通知情報の再通知後に、自車両の煽り運転または煽られ運転が解消したか否かを判定する(ステップS205)。
通知部231は、判定部22よって自車両の煽り運転または煽られ運転が解消したと判定された場合(ステップS205:Yes)、ステップS203を実行する。
一方、走行制御部233は、判定部22よって自車両の煽り運転または煽られ運転が解消していないと判定された場合(ステップS205:No)、自車両を自動運転へ切り替え煽り運転または煽られ運転が解消するように走行制御し(ステップS206)、処理を終了する。
上述してきたように、実施形態に係る運転支援装置1は、取得部21と、判定部22と、通知部231とを備える。取得部21は、自車両の走行に関する情報である走行情報を取得する。判定部22は、取得部21によって取得された走行情報に基づいて、自車両が他車両に対して煽り運転を行っているか否かを判定する。通知部231は、判定部22によって煽り運転を行っていると判定された場合、自車両の運転者に対して煽り運転に関する通知情報を通知する。これにより、煽り運転を抑制することができる。
また、上述してきたように、実施形態に係る運転支援装置1は、取得部21と、判定部22と、処理部23とを備える。取得部21は、自車両の走行に関する情報である走行情報を取得する。判定部22は、取得部21によって取得された走行情報に基づいて、自車両が他車両から煽られ易い運転である煽られ運転を行っているか否かを判定する。処理部23は、判定部22の判定結果に応じた処理を行う。これにより、煽り運転を抑制することができる。
次に、実施形態に係る運転支援装置1を含む運転支援システムについて説明する。図8A~図8Cは、運転支援システムSを示す図である。
図8Aに示すように、実施形態に係る運転支援システムSは、サーバ装置100と、車両V-1,V-2,V-3…にそれぞれ搭載された運転支援装置1-1,1-2,1-3…と、利用者端末200とを含む。なお、以下では、車両全般を指す場合には「車両V」と、また、運転支援装置全般を指す場合には「運転支援装置1」と、それぞれ記載する。
サーバ装置100は、たとえばインターネットや携帯電話回線網等のネットワークを介したクラウドサービスを提供するクラウドサーバとして構成され、データ利用者から車両Vに関するデータ(走行情報の一例。以下、車両データと記載する)の収集要求を受け付ける。収集要求には、収集する車両データのトリガ条件や、収集するデータ内容、取得するデータ条件等が含まれる。サーバ装置100は、受け付けた収集要求に基づき、各運転支援装置1から車両データを収集し、データ利用者へ提供する。
運転支援装置1は、例えば、車載装置(以下、車載装置1と記載)に搭載される。車載装置1は、たとえばカメラや、加速度センサ、GPS(Global Positioning System)センサといった各種センサ、記憶デバイス、マイクロコンピュータなどを有するドライブレコーダであって、サーバ装置100が受け付けた収集要求を取得し、かかる収集要求に応じた車両データを車両Vから取得する。
また、車載装置1は、取得した車両データをサーバ装置100へ適宜アップロードする。なお、車載装置1と運転支援装置1とを別体で構成してもよい。
利用者端末200は、データ利用者が利用する端末であり、たとえばノート型PC(Personal Computer)や、デスクトップ型PC、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、眼鏡型や時計型の情報処理端末であるウェアラブルデバイス(wearable device)などである。
実施形態に係る運転支援システムSでは、利用者端末200を介して指定された収集条件を元に、サーバ装置100が車載装置1から煽り運転または煽られ運転に関する情報が対応付けられた車両データを収集し、利用者端末200へ提供する。以下、図8A~図8Cを用いて、運転支援システムSにおいてデータ利用者へ車両データが提供されるまでの一連の流れについて説明する。
図8Aに示すように、まずデータ利用者は、サーバ装置100と接続された利用者端末200により収集条件を指定する。収集条件には、煽り運転または煽られ運転の判定処理に関する判定条件が含まれる。
また、この際に、サーバ装置100は、収集することとなる実データR(車両データの一例)に付加され、かかる実データRの検索や概要把握に用いられるインデックスデータとしての特性を有するタグデータTの生成用データを生成する。すなわち、タグデータTとは、実データRがメタ情報化されたメタデータである。なお、かかるタグデータTの生成用データは、利用者端末200あるいはサーバ装置100に記憶されたプログラムや生成用データを用いつつ、データ利用者の操作に基づいて生成される。
そして、指定された収集条件や、生成されたタグデータTの生成用データは、サーバ装置100に記憶されるとともに、データ収集の対象となる車両Vへ配信されて、車載装置1にも記憶される。
次に、各車載装置1は、各種センサの出力データを監視し、記憶している収集条件を満たすイベントが発生した場合に、出力データや映像データ等の実データRを記憶デバイスに記憶する。
具体的には、車載装置である運転支援装置1は、煽り運転または煽られ運転と判定される判定条件を満たした場合、判定条件を満たした時刻の前後の所定期間の車両データに煽り運転または煽られ運転を示す情報や、煽り運転レベルまたは煽られ運転レベルを対応付けた実データR(走行情報の一例)を記憶する。また、各車載装置1は、記憶しているタグデータTの生成用データと実データRとに基づき、当該実データRに対応するタグデータTを生成して記憶する。このタグデータTには、煽り運転または煽られ運転に関する情報の有無が対応付けられる。そして、各車載装置1は、タグデータTをサーバ装置100にアップロードし、サーバ装置100はそのタグデータTを記憶する。なお、このとき、実データRは、サーバ装置100へはアップロードされない。つまり、図8Aに示すように、サーバ装置100は、タグデータTのみを保有した状態となる。
そして、データ利用者が、利用者端末200により、データ収集状況の確認や実データRの収集のためにサーバ装置100と接続すると、サーバ装置100により収集されたタグデータTに基づくメタ情報が利用者端末200に表示される。
そして、図8Bに示すように、データ利用者が、利用者端末200により、収集する実データRに対応するタグデータTを指定すると、サーバ装置100を介して該当の車載装置1へ実データRを指定する指示データが送信される。
その後、図8Cに示すように、指定された実データRが、各車載装置1からサーバ装置100へアップロードされ、サーバ装置100に記憶される。そして、データ利用者が、利用者端末200により、サーバ装置100に記憶された実データRにアクセスして、かかる実データRの閲覧やダウンロードなどを行う。
これにより、データ利用者が、実データRに基づいて、煽り運転または煽られ運転に関するデータ解析を詳細に行うことができる。
なお、車載装置1のデータ容量の観点からは、サーバ装置100にアップロードされた実データRおよびこれに対応するタグデータTは、サーバ装置100へのアップロード後に車載装置1から削除されることが好ましい。
また、タグデータTは、実データRの一部を単純に抜粋したようなデータではなく、データ利用者が参照したときに実データRの概要を把握し、実データRの要否を判断できる程度にメタ情報化されていることが好ましい。
なお、サーバ装置100は、車載装置1から走行情報を取得し、かかる走行情報に基づいて煽り運転、または、煽られ運転の発生の有無を判定してもよい。具体的には、サーバ装置100は、様々な車載装置1から取得した走行情報に基づいて、煽り運転モデル、または、煽られ運転モデルを生成し、判定処理を行う。これにより、サーバ装置100で多くの走行情報に関するデータを収集・蓄積できるため、機械学習における学習データが豊富に収集できることで、高精度なモデルを生成できる。つまり、煽り運転、または、煽られ運転の判定精度を向上させることができる。
さらに、サーバ装置100で様々な車載装置1から走行情報を収集して、煽り運転、または、煽られ運転の判定を行うことで、例えば場所や時間等による「煽り/煽られ」易さのデータ等も層別して得ることができる。これにより、例えば、「煽り/煽られ」が発生し易い場所や、日時、さらには、場所・日時に応じた「煽り/煽られ」易い運転方法等の多種多様な情報を取得でき、データ利用者へ提供することができる。具体例を挙げると、例えば、旅行等で初めて走行する地域において、その地域特有の「煽り/煽られ運転」のデータに応じた判定処理や、情報提供が可能となる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。