(第1実施形態)
まず、本実施形態に係るカプラ装置70の概要を説明する。
カプラ装置70は、電力線搬送通信装置100の一部を構成し、通信回路120と電力線P5との間を結合する。このため、カプラ装置70は、電力線P5を通信回線として利用するための装置である。
カプラ装置70は、コンデンサ75と、トランス74と、一対の電力線接続部71A、71Bと、を備える(図2参照)。トランス74は、2つの一次巻線740と、1つの二次巻線74Cと、を有する。一対の電力線接続部71A、71Bは一対の電力線P5に接続される。コンデンサ75は、2つの一次巻線740を介して、一対の電力線接続部71A、71Bに接続される。コンデンサ75と2つの一次巻線740との間を接続する電路P1、P2の長さは、第1電路長さL3、L4である。一対の電力線接続部71A、71Bと2つの一次巻線740との間を接続する電路P3、P4の長さは、第2電路長さL5である。第1電路長さL3、L4は、第2電路長さL5よりも短い。
このようなカプラ装置70によれば、コンデンサ75と一次巻線740との間を接続する電路P1、P2でインダクタンスが生じても、第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くするほど、トランス74の磁気的な結合に寄与しない電路P1、P2のインダクタンスを低減することができる。トランス74の磁気的な結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。しかもコンデンサ75と2つの一次巻線740との間を接続する電路P1、P2の各々の長さが短くなるほど、カプラ装置70での電力のロスを低減できる。
次に、本実施形態に係る電力線搬送通信装置100を、図1~図2を参照して詳細に説明する。下記説明において、トランス74と台座76とが並ぶ方向を方向D1とし、方向D1と直交する方向を方向D2とし、方向D1、D2と直交する方向を方向D3とする。方向D1、D2、D3は、それぞれ第1方向、第2方向、及び第3方向であってもよい。
電力線搬送通信装置100は、電力線P5を通信回線とし、情報端末124と外部端末との通信を可能にする装置である。ここで、外部端末とは、電力線P5を介して電力線搬送通信装置100に接続された情報端末である。外部端末として、例えば、電力線搬送通信装置、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、タブレット型コンピュータ、ゲーム機器、テレビ受像機、及びIoT機器(例えばネットワークカメラ又は各種のセンサ)等が挙げられる。
電力線搬送通信装置100は、図1のように、カプラ装置70と、通信回路120と、雑音阻止回路140と、スイッチング電源130と、を備える。
<カプラ装置>
カプラ装置70は、電力線P5と通信回路120とを結合する装置であって(図1参照)、トランス74と、コンデンサ75と、台座76とを備える(図2参照)。コンデンサ75は、図2のように、コンデンサ本体750と、第1端子751と、第2端子752とを備える。台座76は、台座本体760を備える。台座本体760には、第1貫通孔761と、第2貫通孔762と、第3貫通孔763と、第4貫通孔764と、第5貫通孔765と、第6貫通孔766とが設けられている。
カプラ装置70は、ケース71内に収容されている。ケース71は、一対の電力線接続部71A、71Bと、一対の接続部71C、71Dと、一対の接続部71E、71Fとを備える。本実施形態では、通信回路120、雑音阻止回路140、及びスイッチング電源130はケース71の外に配置されているが(図1参照)、通信回路120、雑音阻止回路140、及びスイッチング電源130もケース71内に収容されていてもよい。この場合、ケース71は一対の接続部71C、71Dと、一対の接続部71E、71Fとを備えなくてもよい。なお、電力線接続部71Aは第1電力線接続部ともいい、電力線接続部71Bは第2電力線接続部ともいう。接続部71Cは第1電源ユニット接続部ともいい、接続部71Dは、第2電源ユニット接続部ともいう。接続部71Eは、第1通信回路接続部ともいい、接続部71Fは、第2通信回路接続部ともいう。雑音阻止回路140と、スイッチング電源130とは、電源ユニットを構成する。
トランス74は、図2のように、2つの一次巻線740と、1つの二次巻線74Cと、コア74Dとを有する。2つの一次巻線740は、第1の一次巻線74Aと、第2の一次巻線74Bと、から構成される。言い換えると、2つの一次巻線740のうち、一方の一次巻線740が第1の一次巻線74Aであり、残りの一次巻線740が第2の一次巻線74Bである。コア74Dに対する、第1の一次巻線74Aの巻き方向は、第2の一次巻線74Bの巻き方向と同じである。
トランス74は、電力線P5に接続される一次側に、第1接続端子741と、第2接続端子742と、第3接続端子743と、第4接続端子744と、を備える。本実施形態では、第1~第4接続端子741~744は、台座76の端部に設けられた第1~第4貫通孔761~764に一部が挿入されたリードピンからなる端子である。
第1~第4接続端子741、742、743、744は、第1及び第2端子751、752が並ぶ方向に沿って間隔を空けて配置される。そして、第3及び第4接続端子743、744は、第1及び第2接続端子741、742の間に配置されている。ここで、第1及び第2端子751、752が並ぶ方向は、方向D3と平行であることが好ましい。
また、第1~第4接続端子741、742、743、744のうち、第1端子751に最も近い位置にあるリード端子に第1端子751が接続される。また、第1~第4接続端子741、742、743、744のうち、第2端子752に最も近い位置にあるリード端子に第2端子752が接続される。ただし、第1端子751が接続されるリード端子は、第2端子752が接続されるリード端子と異なる。
第1及び第2端子751、752が最も近いリード端子に接続されると、第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くすることが容易になる。
第1の一次巻線74Aは、銅等の金属の線材からなり、コア74Dに複数回巻き付けられている。第1の一次巻線74Aを構成する線材として、例えば、単線、複数の単線を撚り合わせたリッツ線、及び平角線が挙げられる。
第1の一次巻線74Aは、図2のように、コア74Dに巻き付けられたコイル部705と、コイル部705の両端から引き出された第1引き出し線701及び第3引き出し線703とを備える。第1引き出し線701は、台座76に設けられた第1接続端子741に、例えば第1引き出し線701の一部を巻き付けたり、第1引き出し線701を半田付けしたりすることによって、第1接続端子741に接続される。第3引き出し線703は、第1引き出し線701と同様の方法で、台座76に設けられた第3接続端子743に接続される。この第1及び第3接続端子741、743のうち、第1端子751に最も近い位置にあるリード端子に第1端子751が接続される。第1端子751は、例えば、第1接続端子741に接続される。第1端子751が最も近いリード端子に接続されると、第1電路長さL3を第2電路長さL5よりも短くすることが容易になる。
第1及び第3引き出し線701、703は、それぞれ、コイル部705の両端から引き出すようにして形成される。
第1接続端子741は、コイル部705から離れた位置にあり、かつ第1引き出し線701の先端に接続される。第1引き出し線701と第1接続端子741とを接続するにあたって、ラピング、半田付け等の任意の接続方法を採用できる。第1接続端子741は、第1貫通孔671に挿入されている。そして、第1接続端子741は、第1引き出し線701が接続されていない端部で配線W1に接続され、この配線W1は第1端子751に接続される。このため、電路P1は、第1引き出し線701と、第1接続端子741と、配線W1とにより構成される。また、接続部71Cと第1端子751との間を配線W7が接続する。
第3接続端子743は、コイル部705から離れた位置にあり、かつ第3引き出し線703の先端に接続する。第1引き出し線701と第1接続端子741とを接続するにあたって、ラピング、ハンダ等の任意の接続方法を採用できる。第3接続端子743は、第3貫通孔763に挿入されている。そして、第3接続端子743は、第3引き出し線703が接続されていない端部で配線W2に接続され、この配線W2は電力線接続部71Aに接続される。このため、コイル部705と電力線接続部71Aとの間の電路P3は、第3引き出し線703と、第3接続端子743と、配線W3とにより構成される。
本実施形態のカプラ装置70において、コイル部705と第1端子751との間を接続する電路P1の長さは第1電路長さL3であり、コイル部705と電力線接続部71Aとの間を接続する電路W3の長さは第2電路長さL5である。第1電路長さL3は第2電路長さL5よりも短い。このため、通電時に、コイル部705と第1端子751との間の電路P1でインダクタンスが生じても、第1電路長さL3を第2電路長さL5よりも短くするほど、このインダクタンスを低減することができる。コイル部705と第1端子751との間の電路P1は、トランス74の結合に寄与しないので、この電路P1の長さを短くしてインダクタンスを低減させることで、トランス74の結合を高めることができ、通信信号の減衰を抑制できる。しかも第1電路長さL3を第2電路長さL5よりも短くするほど、コイル部705及び第1端子751の間の電路P1で電力のロスを低減できる。なお、図2の長さL5は、トランス74の外周縁と電力線接続部71A、71Bとの直線的な距離を示しているのではない。すなわち、長さL5は、コイル部705の一端と電力線接続部71Aとの間の電路P3と、コイル部706の一端と電力線接続部71Bとの間の電路P4との各々の長さを示す。
第2の一次巻線74Bは、銅等の金属の線材からなり、コア74Dに複数回巻き付けられている。第2の一次巻線74Bを構成する線材として、例えば、単線、複数の単線を撚り合わせたリッツ線、及び平角線が挙げられる。第2の一次巻線74Bを構成する線材は、第1の一次巻線74Aを構成する線材と同じであることが好ましい。
第2の一次巻線74Bは、図2のように、コア74Dに巻き付けられたコイル部706と、第2引き出し線702と、第4引き出し線704とを備える。台座76に設けられた第2接続端子742に、例えば第2引き出し線702の一部を巻き付けたり、第2引き出し線702を半田付けしたりすることによって、第2引き出し線702は、第2接続端子742に接続される。第4引き出し線704は、第2引き出し線702と同様の方法で、台座76に設けられた第4接続端子744に接続される。この第2及び第4接続端子742、744のうち、第2端子752に最も近い位置にあるリード端子に第2端子752が接続される。第2端子752は、例えば、第2接続端子742に接続される。第2端子752が最も近いリード端子に接続されると、第1電路長さL4を第2電路長さL5よりも短くできる。
第2接続端子742は、コイル部706から離れた位置にあり、かつ第2引き出し線702の先端に接続される。第2引き出し線702と第2接続端子742とを接続するにあたって、ラピング、半田付け等の任意の接続方法を採用できる。第2接続端子742は、第2貫通孔672に挿入されている。そして、第2接続端子742は、第2引き出し線702が接続されていない端部で配線W2に接続され、この配線W2は第2端子752に接続される。このため、電路P2は、第2引き出し線702と、第2接続端子742と、配線W2とにより構成される。また、接続部71Dと第2端子752との間を配線W8が接続する。
第4接続端子744は、コイル部706から離れた位置にあり、かつ第4引き出し線704の先端に接続される。第4引き出し線704と第4接続端子744とを接続するにあたって、ラピング、半田付け等の任意の接続方法を採用できる。第4接続端子744は、第4貫通孔674に挿入されている。そして、第4接続端子744は、第4引き出し線704が接続されていない端部で配線W4に接続され、この配線W4は電力線接続部71Bに接続される。このため、コイル部706と電力線接続部71Bとの間の電路P4は、第4引き出し線704と、第4接続端子744と、配線W4とにより構成される。
本実施形態のカプラ装置70において、コイル部706と第2端子752との間を接続する電路P2の長さは第1電路長さL4であり、コイル部706と電力線接続部71Bとの間を接続する電路P4の長さは第2電路長さL5である。第1電路長さL4は第2電路長さL5よりも短い。このため、通電時に、コイル部706と第2端子752との間の電路P2でインダクタンスが生じても、第1電路長さL4を第2電路長さL5よりも短くするほど、このインダクタンスを低減することができる。コイル部706と第2端子752との間の電路P2は、トランス74の結合に寄与しないので、この電路P2の長さを短くしてインダクタンスを低減させることで、トランス74の結合を高めることができ、通信信号の減衰を抑制できる。しかも第1電路長さL4を第2電路長さL5よりも短くするほど、コイル部706及び第2端子752の間の電路P2で電力のロスを低減できる。
第2及び第4引き出し線702、704は、それぞれ、コイル部706の両端から引き出すようにして形成される。
本実施形態では、上記の通り、コンデンサ75と2つの一次巻線740との間を接続する電路P1、P2でインダクタンスが生じても、第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くするほど、このインダクタンスを低減することができる。例えば、コンデンサ75と2つの一次巻線740との間に生じるインダクタンスは、2つの一次巻線740で生じるインダクタンスに対して、1/10以下である。この場合、コイル部705及び第1端子751の間の電路P1と、コイル部706及び第2端子752の間の電路P2との各々で電力のロスを低減できる。すなわち、スイッチング電源130側に電力を供給する効率を高めることができる。
また第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くするほど、コア74Dとコンデンサ75との間の距離が短くなるため、カプラ装置70のサイズを小さくすることもできる。これにより、電力線搬送通信装置100の小型化を図ることができる。
二次巻線74Cは、一次巻線740から離れ、かつ一次巻線740と対向する位置にある。二次巻線74Cは、銅等の金属の線材からなり、コア74Dに巻き付けられている。二次巻線74Cを構成する線材として、例えば、単線、複数の単線を撚り合わせたリッツ線、及び平角線が挙げられる。
二次巻線74Cは、図2のように、コア74Dに巻き付けられたコイル部707と、コイル部707の両端からそれぞれ引き出された引き出し線708,709とを備える。引き出し線708は、台座76に設けられた第5接続端子745に、例えば引き出し線708の一部を巻き付けたり、引き出し線708を半田付けしたりすることによって、第5接続端子745に接続される。引き出し線709は、引き出し線708と同様の方法で、台座76に設けられた第6接続端子746に接続される。
第5接続端子745は、第5貫通孔765に挿入されている。第5接続端子745は、電線を介して、ケース71の接続部71Eに接続される。第6接続端子746は、第6貫通孔766に挿入されている。第6接続端子746は、電線を介して、ケース71の接続部71Fに接続される。本実施形態では、コア74Dに対する、二次巻線74Cの巻き方向は、一次巻線740の巻き方向と同じであるが、一次巻線740の巻き方向と逆であってもよい。また、二次巻線74Cは、第1の一次巻線74Aを構成する線材と同じであることが好ましい。
コア74Dは、一次巻線740と二次巻線74Cとの間で磁束を伝達する部材である。このようなコア74Dの一例は、トロイダルコアである。コア74Dは、磁性材料により構成される。この磁性材料として、例えば、フェライト、及びカーボニル鉄等が挙げられる。
台座76は、トランス74を搭載する板状の部材である。この台座76は、上記の通り、台座本体760を備える。台座本体760は、台座76の本体を構成し、かつ台座76の外形状を規定する。第1~第6貫通孔761、762、763、764、765、766の各々は、方向D1において、台座本体760を貫通する孔である。
台座76の平面形状は、例えば、矩形である(図2参照)。台座76とコンデンサ75とは、方向D2において並んでいる。第1~第4貫通孔761、762、763、764は、台座76の周縁のうち、コンデンサ75に対向する一辺(第1辺)76Aに沿って配置されている。そして、第1及び第2貫通孔761、762は、それぞれ、第1辺76Aの両端付近(図2の上下両端付近)に配置されている。第3及び第4貫通孔763、764は、方向D3において、第1及び第2貫通孔761、762の間に配置されている。
また、第5及び第6貫通孔765、766は、台座76の周縁のうち、第2辺76Bに沿って配置されている。そして、第5及び第6貫通孔765、766は、それぞれ、第2辺76Bの両端付近(図2の上下両端付近)に配置されている。ここで、第2辺76Bは、方向D2において、第1辺76Aの、コンデンサ75とは反対側に位置する。
台座76の幅方向は方向D3と平行であり、コンデンサ75の長さ方向は方向D3と平行である。台座76の幅は、コンデンサ75の長さよりも短い。言い換えると、コンデンサ75の長さは、台座76の幅よりも長い。
コンデンサ75は、図2のように、第1及び第2の一次巻線74A、74Bを介して、一対の電力線接続部71A、71Bに接続される。コンデンサ75は、上記の通り、コンデンサ本体750と、第1端子751と、第2端子752とを備える。コンデンサ本体750は、コンデンサ75の本体を構成し、通電時に電荷を蓄えたり、コンデンサ75が接続する回路内に電荷を放出したりする。第1端子751と、第2端子752とは、互いに離れた位置にある。本実施形態では、上記の通り、第1及び第2端子751、752は、それぞれ、第1及び第2接続端子741、742に接続される。
第1端子751が第1接続端子741に接続され、第2端子752が第2接続端子742に接続されると、第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くなる。第1及び第2端子751、752間の寸法は、第1及び第2接続端子741、742間の寸法と同じか、あるいは第1及び第2接続端子741、742間の寸法よりも長いことが好ましい。第1及び第2端子751、752の各々の形状は、特に限定されない。第1及び第2端子751、752の各々の例は、例えば、リード端子、及びリードレス端子を含む。また、コンデンサ75の例は、セラミックコンデンサ、及びフィルムコンデンサを含む。
コンデンサ75は、商用交流電源の周波数の交流電流に対して大きなインピーダンスを有し、商用周波数(例えば50/60Hz)よりも高い周波数(例えば2~30MHz)の通信信号に対して小さいインピーダンスを有する。特に第1及び第2端子751、752間のインピーダンスが通知信号に対して小さくなることで、トランス74を介して通信信号を入出力することが優先され、通信信号はスイッチング電源130側に漏れにくくなる。
本実施形態では、コンデンサ75は、方向D1のうちトランス74と台座76とがこの順で並ぶ方向に第1及び第2端子751、752を向けるようにして、コンデンサ75が配置されている。これにより、第1及び第2接続端子741、742をそれぞれ第1貫通孔761、762に挿入しても、第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くすることができる。
ケース71は、その内部にカプラ装置70を少なくとも収容する部材である。そして、ケース71は、一対の電力線接続部71A、71Bを有する。本実施形態では、ケース71は、一対の接続部71C、71Dと、一対の接続部71E、71Fとをさらに備える。電力線接続部71A、71Bは、図1のように電力線P5に接続される。接続部71E、71Fは、通信回路120に接続される。接続部71C、71Dは、それぞれ配線W5、W6に接続される。ここで、配線W5、W6は、雑音阻止回路140等に接続される。
<雑音阻止回路>
雑音阻止回路140は、図1のように、カプラ装置70とスイッチング電源130との間に設けられている。雑音阻止回路140は、通電時に、スイッチング電源130で生じた雑音がカプラ装置70及び電力線P5に流れ出るのを防止する。このようような雑音阻止回路140は、2つの配線W5、W6の間に接続するコンデンサC3,C4と、コモンモードチョークコイルT2とを備える。
コンデンサC3,C4は、アクロスコンデンサとも呼ばれ、ノーマルモードの雑音を除去する。コモンモードチョークコイルT2は、コモンモードの雑音を除去する。言い換えると、2つの配線W5、W6の間で逆位相のノーマルモードノイズは、コンデンサC3,C4により短絡して除去され、2つの配線W5、W6の間で同相のコモンモードノイズは、コモンモードチョークコイルT2のインダクタンスにより除去される。
上記の通り、スイッチング電源130で雑音が生じても、この雑音は、雑音阻止回路140で除去されるため、カプラ装置70及び電力線P5に流れ出るのを防止することができる。
<スイッチング電源>
スイッチング電源130は、電力線P5からの交流電流を直流電流に変換し、この直流電流を通信回路120に出力する。スイッチング電源130は、例えば、電力線P5からの交流電圧を整流する整流回路と、整流回路で整流された脈流電圧を所定の電圧値の直流電圧に変換する降圧チョッパ回路とを有している。降圧チョッパ回路は、脈流電圧をスイッチング素子でスイッチングすることによって、脈流電圧を所定の電圧値の直流電圧に変換する。降圧チョッパ回路のスイッチング動作によって高周波のノイズが発生する可能性があるが、このノイズは雑音阻止回路140によって除去される。
<通信回路>
通信回路120は、図1のように、カプラ装置70と、カプラ装置70に接続される電力線P5と、を介して外部端末101と通信する回路である。通信回路120は、送信部121と、受信部122と、データ処理部123とを備える。送信部121は、接続部71E、71Fの両方に接続すると共に、データ処理部123に接続する。受信部122は、接続部71E、71Fの両方に接続すると共に、データ処理部123に接続する。データ処理部123は、情報端末124と通信する。
受信部122は、電力線P5からの通信信号(受信信号)をトランス74を介して受信し、かつ受信信号をデータ処理部123に出力する。このような受信部122は、例えば、A/D変換器と、マルチキャリア変換器と、等化器と、P/S変換器と、デマッパとを備える。A/D変換器は、トランス74の二次巻線74Cからアナログ信号として入力される受信信号をデジタル信号に変換する。マルチキャリア変換器は、フーリエ変換(FFT)またはウェーブレット変換器(DWT)等により所望の時間-周波数変換を行う。等化器は、電力線P5の影響を除去して受信信号を補正する。P/S変換器は、パラレルデータをシリアルデータに変換する。デマッパは、マッピングされたシンボルデータを受信信号であるビットデータに変換する。
送信部121は、情報端末124の通信信号(送信信号)がデータ処理部123を介して入力され、かつ送信信号をトランス74を介して電力線P5に送信する。このような送信部121は、例えば、ボルマッパと、S/P変換器と、逆マルチキャリア変換器と、D/A変換器とを備える。ボルマッパは、送信信号であるビットデータをシンボルデータに変換してシンボルマッピングを行う。S/P変換器は、シリアルデータをパラレルデータに変換する。逆マルチキャリア変換器は、逆フーリエ変換(IFFT)または逆ウェーブレット変換(IDWT)等により所望の周波数-時間変換を行う。D/A変換器は、デジタル信号として入力された送信信号をアナログ信号に変換してトランス74の二次巻線74Cに出力する。
データ処理部123は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、及びメモリを備える。この場合、CPUがメモリ内のプログラムを実行する。これにより、データ処理部123は、受信部122から入力された受信信号を情報端末124と通信できるように処理し、情報端末124からの送信信号を送信部121に入力できるように処理する。データ処理部123は、情報端末124と無線通信してもよく、情報端末124と有線通信してもよい。
情報端末124として、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、タブレット型コンピュータ、ゲーム機器、テレビ受像機、及びIoT機器(例えばネットワークカメラ又は各種のセンサ)等が挙げられる。
電力線搬送通信装置100は、電力線P5に接続された外部端末101との間で電力線搬送通信方式により通信を行う。これにより、情報端末124は、電力線搬送通信装置100を介して電力線P5に接続された外部端末101と通信を行うことができる。外部端末101は、電力線搬送通信の通信モジュールを有する端末装置でもよいし、別の電力線搬送通信装置でもよい。外部端末101が、電力線P5に接続された別の電力線搬送通信装置である場合、電力線搬送通信装置100に接続される情報端末124は、別の電力線搬送通信装置に接続される情報端末との間で通信を行うことができる。なお、外部端末101は、例えばインターネットのような広域ネットワークに接続されるゲートウェイ装置を含み得る。外部端末101がゲートウェイ装置の場合、情報端末124は、電力線搬送通信装置100と、外部端末101であるゲートウェイとを介して、インターネットに接続されたサーバとの間で通信を行うことができる。
本実施形態の電力線搬送通信装置100は、上記の通り、小型化を図ることができる。このため、電力線搬送通信装置100は任意のコンセント用フレームに固定することができる。これにより、プラグ等を用いることなく電力線接続部71A、71Bを電力線P5に接続することができる。
(第2実施形態)
次に本実施形態に係る電力線搬送通信装置100を、図1、及び図3を参照して説明する。下記説明において、第1実施形態と重複する構成は、図面に同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電力線搬送通信装置100は、カプラ装置70の代わりに、図3のようなカプラ装置70Aを備える。
カプラ装置70Aは、図3のように、トランス74と、コンデンサ75と、台座76とを備える。コンデンサ75は、コンデンサ本体750と、第1端子751と、第2端子752とを備える。台座76は、台座本体760を備える。台座本体460には、一対の貫通孔763、764と、一対の貫通孔765、766とが設けられている。台座76にトランス74が搭載された状態で、一対の貫通孔763、764はトランス74の一次側にあり、一対の貫通孔765、766はトランス74の二次側にある。このような台座76は、図2に示す第1及び第2貫通孔761、762が設けられていない。
カプラ装置70Aは、ケース71内に収容されている。ケース71は、一対の電力線接続部71A、71Bと、一対の接続部71C、71Dと、一対の接続部71E、71Fとを備える。
本実施形態では、コンデンサ75は、第1及び第2端子751、752が方向D1のうち台座76とトランス74とがこの順で並ぶ方向に向くようにして配置されている。そして、第1端子751には第1引き出し線701の先端が直接的に接続されており、第2端子752には第2引き出し線702の先端が直接的に接続されている。ここで、第1引き出し線701は第1の一次巻線74Aの一端から引き出されている。第2引き出し線702は第2の一次巻線74Bの一端から引き出されている。
本実施形態では、第1及び第2端子751、752が、それぞれ第1及び第2引き出し線701、702の先端に直接的に接続されており、コンデンサ75と2つの一次巻線740との間を接続する電路P1は第1及び第2引き出し線701、702によって構成されている。ここで、コンデンサ75と2つの一次巻線740との間を接続する電路P1の長さである第1電路長さL3、L4は、第2電路長さL5よりも短い。
本実施形態では、コイル部705と第1端子751との間を接続する電路P1の長さは第1電路長さL3であり、コイル部705と電力線接続部71Aとの間を接続する電路P3の長さは第2電路長さL5である。第1電路長さL3は第2電路長さL5よりも短い。このため、通電時に、コイル部705と第1端子751との間の電路P1でインダクタンスが生じても、第1電路長さL3を第2電路長さL5よりも短くするほど、このインダクタンスを低減することができる。コイル部705と第1端子751との間の電路P1は、トランス74の結合に寄与しないので、この電路P1の長さを短くしてインダクタンスを低減させることで、トランス74の結合を高めることができ、通信信号の減衰を抑制できる。しかも第1電路長さL3を第2電路長さL5よりも短くするほど、コイル部705及び第1端子751の間の電路P1で電力のロスを低減できる。
コイル部706と第2端子752との間を接続する電路P2の長さは第1電路長さL4であり、コイル部706と電力線接続部71Bとの間を接続する電路P4の長さは第2電路長さL5である。第1電路長さL4は第2電路長さL5よりも短い。このため、通電時に、コイル部706と第2端子752との間の電路P2でインダクタンスが生じても、第1電路長さL4を第2電路長さL5よりも短くするほど、このインダクタンスを低減することができる。コイル部706と第2端子752との間の電路P2は、トランス74の結合に寄与しないので、この電路P2の長さを短くしてインダクタンスを低減させることで、トランス74の結合を高めることができ、通信信号の減衰を抑制できる。しかも第1電路長さL4を第2電路長さL5よりも短くするほど、コイル部706及び第2端子752の間の電路P2で電力のロスを低減できる。
第1及び第2端子751、752の各々がリード端子である場合、第1引き出し線701の先端を第1端子751の根元に接続することが好ましく、第2引き出し線702の先端を第2端子752の根元に接続することが好ましい。この場合、第1及び第2端子751、752の長さを短くできるため、第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くすることができる。本明細書において、第1端子751の根元は、コンデンサ本体750が有する外表面のうちの一表面と第1端子751とが接続する部分付近を意味する。そして、第2端子752の根元は、コンデンサ本体750が有する外表面のうちの一表面と第2端子752とが接続する部分付近を意味する。第1及び第2引き出し線701、702をそれぞれ第1及び第2端子751、752に接続するにあたって、ラピング、半田付け等の任意の接続方法を採用できる。
(第3実施形態)
次に本実施形態に係る電力線搬送通信装置100を、図1、及び図4~図5Bを参照して説明する。下記説明において、第1実施形態と重複する構成は、図面に同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電力線搬送通信装置100は、カプラ装置70の代わりに、図4のようなカプラ装置70Bを備える。
カプラ装置70Bは、図4のように、トランス74と、コンデンサ75と、台座76とを備える。台座76は、台座本体760を備える。台座本体760には、第1貫通孔761と、第2貫通孔762と、第3貫通孔763と、第4貫通孔764と、第5貫通孔765と、第6貫通孔766とが設けられている。
カプラ装置70Bは、ケース71内に収容されている。ケース71は、一対の電力線接続部71A、71Bと、一対の接続部71C、71Dと、一対の接続部71E、71Fとを備える。
トランス74は、第1の一次巻線74Aと、第2の一次巻線74Bとを備える。第1の一次巻線74Aは、コア74Dに巻き付けられたコイル部705と、コイル部705の両端から引き出された第1引き出し線701及び第3引き出し線703とを備える。第2の一次巻線74Bは、コア74Dに巻き付けられたコイル部706と、コイル部706の両端から引き出された第2引き出し線702及び第4引き出し線704とを備える。
コンデンサ75は、コンデンサ本体750と、第1端子751と、第2端子752とを備える。第1及び第2端子751、752の各々は、本実施形態では、リード端子である。
第1端子751は、図5Bのように、第1の一次巻線の一端に接続することで第1接続端子741を兼ねる。第2端子752は、第2の一次巻線74Bの一端に接続することで第2接続端子742を兼ねる。具体的には、第1端子751は第1引き出し線701の先端に接続し、第2端子752は第2引き出し線702の先端に接続する。第1及び第2端子751、752をそれぞれ第1及び第2引き出し線701、702に接続するにあたって、ラピング、半田付け等の任意の接続方法を採用できる。
また、第1の一次巻線74Aの他端は第3接続端子743の一端に接続する。第2の一次巻線74Bの他端は、第4接続端子744の一端に接続する。具体的には、第3引き出し線703の先端は第3接続端子743の一端に接続し、第4引き出し線704の先端は第4接続端子744の一端に接続する。第3及び第4引き出し線703、704をそれぞれ第3及び第4接続端子743、744に接続するにあたって、ラピング、半田付け等の任意の接続方法を採用できる。
上記の通り、第1及び第2端子751、752にそれぞれ第1及び第2引き出し線701、702の一端に接続すると、第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも小さ短くなる。このため、通電時に、コイル部705と第1端子751との間の電路P1と、コイル部706と第2端子752との間の電路P2とでインダクタンスが生じても、第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くするほど、このインダクタンスを低減することができる。しかも第1電路長さL3、L4を第2電路長さL5よりも短くするほど、コイル部705及び第1端子751の間の電路P1と、コイル部706及び第2端子752の間の電路P2との各々で電力のロスを低減できる。すなわち、スイッチング電源130側に電力を供給する効率を高めることができる。
第1端子751は、第1引き出し線701に接続した状態で、第1貫通孔761に挿入されている。そして、第1端子751の先端は配線W7の一端に接続されており、この配線W7の他端は接続部71Cに接続されている。第1端子751と配線W7とを接続するにあたって、ラピング、半田付け等の任意の接続方法を採用できる。
第2端子752は、第2引き出し線702に接続した状態で、第2貫通孔672に挿入されている。そして、第2端子752の先端は配線W8の一端に接続されており、この配線W8の他端は接続部71Dに接続されている。第2端子752と配線W8とを接続するにあたって、ラピング、半田付け等の任意の接続方法を採用できる。
第1及び第2端子751、752は、それぞれ、上記の通り、第1及び第2接続端子741、742と兼ねる。そして、第1~第4接続端子741、742、743、744をそれぞれ第1~第4貫通孔761、762、763、764に挿入されている。このため、第1~第4接続端子741、742、743、744は台座76に保持される。
第1~第4接続端子741、742、743、744は台座76に保持されると、トランス74の位置決めがしやすくなる。
第1及び第2端子751、752を第1及び第2貫通孔761、762に挿入することにより、コンデンサ75も台座76に搭載される。カプラ装置70Bを方向D1で見たとき、コンデンサ75の側面はトランス74の一次側にある第1辺76Aと同じ位置にあってもよい(図4及び図5A参照)。本実施形態では、台座76に対してコンデンサ75とトランス74とが位置決めされるため、カプラ装置70Bを量産する際、複数のカプラ装置70Bにおいて、第1電路長さL3、L4にバラツキが生じにくくなる。このため、配線W1、W2のインダクタンスを安定して低減できる。また、台座76とコンデンサ75との間に、第3及び第4接続端子743、744に接続される第3及び第4引き出し線703、704があってもよい(図4及び図5A参照)。
本実施形態では、方向D2において、第1及び第2貫通孔761、762の各々とトランス74の二次側にある第2辺76Bとの間の距離は、第3及び第4貫通孔763、764の各々と第2辺76Bとの間の距離よりも短い(図4及び図5A参照)。本実施形態の他例では、台座76にコンデンサ75を搭載した状態の第1及び第2端子751、752の位置に対応するようにして第1及び第2貫通孔761、762を設けることができる。
(第4実施形態)
次に本実施形態に係る電力線搬送通信装置100を、図1、及び図6~図7Bを参照して説明する。下記説明において、第1実施形態と重複する構成は、図面に同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態の電力線搬送通信装置100は、カプラ装置70の代わりに、図6のようなカプラ装置70Cを備える。
カプラ装置70Cは、図6のように、トランス74と、コンデンサ75と、台座76とを備える。台座76は、台座本体760を備える。台座本体760には、第1貫通孔761と、第2貫通孔762と、第3貫通孔763と、第4貫通孔764と、第5貫通孔765と、第6貫通孔766とが設けられている。
カプラ装置70Cは、ケース71内に収容されている。ケース71は、一対の電力線接続部71A、71Bと、一対の接続部71C、71Dと、一対の接続部71E、71Fとを備える。
本実施形態では、方向D1に沿って、トランス74と台座76とコンデンサ75とがこの順で並んでいる(図6~図7B参照)。言い換えると、カプラ装置70CをD1方向で見た平面視において、トランス74と、コンデンサ75の少なくとも一部とが重なり合っている。図6の例では、カプラ装置70CをD1方向で見た平面視において、トランス74と、コンデンサ75の一部とが重なり合っている。
トランス74と台座76とコンデンサ75とがこの順で並ぶと、カプラ装置70Cのサイズを小さくすることもできる。これにより、電力線搬送通信装置100の小型化を図ることができる。さらに、カプラ装置70Cを基板に実装する場合、カプラ装置70Cの実装面積を小さくすることができる。そして基板と台座76との間にコンデンサ75が位置することで、基板と台座76との間にコンデンサ本体750の厚みに相当する隙間が生じる。これにより、基板とトランス74との間の絶縁距離を確保できる。
コンデンサ75は、コンデンサ本体750と、第1端子751と、第2端子752とを備える。第1及び第2端子751、752の各々は、本実施形態では、リード端子である。そして、第1及び第2端子751、752は、方向D2にコンデンサ本体750から突出するようにして設けられている。
トランス74は、第1の一次巻線74Aと、第2の一次巻線74Bとを備える。第1の一次巻線74Aは、コイル部705と、コイル部705の両端から引き出された第1引き出し線701及び第3引き出し線703とを備える。第2の一次巻線74Bは、コイル部706と、コイル部706の両端から引き出された第2引き出し線702及び第4引き出し線704とを備える。
第1接続端子741は、第1貫通孔761に挿入された状態で、第1端子751に接続されている。具体的には、第1接続端子741は、第1引き出し線701が接続していない端部で第1端子751及び配線7に接続されている。第1接続端子741が第1端子751に接続することにより、コイル部705と第1端子751との間を接続する電路P1の長さは第1電路長さL3となる。第1電路長さL3は、第1引き出し線701の長さL31、第1接続端子741の長さL32、及び第1端子751の長さL33の和である(図6及び図7B参照)。
コイル部705と電力線接続部71Aとの間を接続する電路P3の長さは第2電路長さL5である。第1電路長さL3は第2電路長さL5よりも短い。このため、通電時に、コイル部705と第1端子751との間の配線W1でインダクタンスが生じても、第1電路長さL3を第2電路長さL5よりも短くするほど、このインダクタンスを低減することができる。コイル部705と第1端子751との間の電路P1は、トランス74の結合に寄与しないので、この電路P1の長さを短くしてインダクタンスを低減させることで、トランス74の結合を高めることができ、通信信号の減衰を抑制できる。しかも第1電路長さL3を第2電路長さL5よりも短くするほど、コイル部705及び第1端子751の間の配線W1で電力のロスを低減できる。
第2接続端子742は、第2貫通孔762に挿入された状態で、第2端子752に接続されている。具体的には、第2接続端子742は、第2引き出し線702が接続していない端部で第2端子752及び配線8に接続されている。第2接続端子742が第2端子752に接続することにより、コイル部706と第2端子752との間を接続する電路P2の長さは第1電路長さL4となる。第1電路長さL4は、第2引き出し線702の長さL41、第2接続端子742の長さL42、及び第2端子752の長さL43の和である(図7A参照)。
コイル部706と電力線接続部71Bとの間を接続する電路P4の長さは第2電路長さL5である。第1電路長さL4は第2電路長さL5よりも短い。このため、通電時に、コイル部706と第2端子752との間の配線W2でインダクタンスが生じても、第1電路長さL4を第2電路長さL5よりも短くするほど、このインダクタンスを低減することができる。コイル部706と第2端子752との間の電路P2は、トランス74の結合に寄与しないので、この電路P2の長さを短くしてインダクタンスを低減させることで、トランス74の結合を高めることができ、通信信号の減衰を抑制できる。しかも第1電路長さL4を第2電路長さL5よりも短くするほど、コイル部706及び第2端子752の間の配線W2で電力のロスを低減できる。
第1及び第2接続端子741、742の先端は、それぞれ、配線W1、W2にさらに接続される。これにより、配線W1は第1端子751と接続部71Cとの間を接続し、配線W2は第2端子752と接続部71Dとの間を接続する。
(変形例)
上記実施形態1~4は、本開示の様々な実施形態の例に過ぎない。上記実施形態1~4は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
以下、上記実施形態1~4の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態1~4を「基本例」と呼ぶこともある。
基本例では、コンデンサ本体750の形状は直方体であるが、変形例では、円柱状、及び円盤状等の任意の形状であってもよい。
基本例では、台座76は平板状であるが、変形例では、台座76は、半球状であってもよく、あるいは方向D1においてトランス74とは反対側に凸部等の任意の構造を有してもよい。
基本例では、台座76を方向D1で見たときに台座76は矩形であるが、変形例では、台座76を方向D1で見たときの形状は、周縁が3辺以上の多角形、楕円形、及び円形等の任意の形状であってもよい。
基本例では、トランス74を方向D1で見たときにコア74Dの形状は円形であるが、変形例では、コア74Dは、複数の磁性体を接続するようにして形成された多角形、及び楕円形等の任意の形状であってもよい。
基本例では、配線W3、W4の各々の途中に何も設けられていないが、変形例では、配線W3、W4の各々の途中に、ヒューズ、バリスタ、及びコモンモードチョーク等の任意の電子部品が設けられてもよい。
基本例では、電力線搬送通信装置100はコンセント用フレームに固定されるが、変形例では、電力線搬送通信装置100はコンセント用フレームに固定されていなくてもよい。すなわち、電力線搬送通信装置100はプラグを介して電力線P5に接続されてもよい。
基本例では、第1~第6接続端子741、742、743、744、745、746はそれぞれ第1~第6貫通孔761、762、763、764、765、766に挿入されている。しかし、変形例では、基板に形成された導体パターンに第1~第6接続端子741、742、743、744、745、746を半田付け等で接続することでトランス74を基板に面実装してもよい。この変形例であっても、第1電路長さL3、L4は、第2電路長さL5よりも短い。
第1及び第4実施形態では、第1端子751は第1接続端子741に接続されているが、変形例では、第1端子751は第3接続端子743に接続されてもよい。
第1及び第4実施形態では、第2端子752は第2接続端子742に接続されているが、変形例では、第2端子752は第4接続端子744に接続されてもよい。
第2及び第3実施形態では、第1端子751は第1引き出し線701に接続されているが、変形例では、第1端子751は第3引き出し線703に接続されてもよい。
第2及び第3実施形態では、第2端子752は第2引き出し線702に接続されているが、変形例では、第2端子751は第4引き出し線704に接続されてもよい。
第1実施形態では、第1及び第2端子751、752はトランス74と台座76とがこの順で並ぶ方向に向いている。しかし、変形例では、方向D3と交差するコンデンサ本体750の両側面にそれぞれ第1及び第2端子751、752が設けられてもよい。
第2実施形態では、第1及び第2端子751、752は台座76とトランス74とがこの順で並ぶ方向に向いている。しかし、変形例では、方向D3と交差するコンデンサ本体750の両側面にそれぞれ第1及び第2端子751、752が設けられてもよい。
第3実施形態では、カプラ―装置70Bを方向D1で見たとき、コンデンサ75と台座76とが重なる部分に第3及び第4貫通孔763、764が設けられている。しかし、変形例では、コンデンサ75と台座76とが重ならない部分に第3及び第4貫通孔763、764が設けられてもよい。
第4実施形態では、第1及び第2端子751、752の各々はリード端子であるが、変形例では、第1及び第2端子751、752はリードレス端子であってもよい。
第4実施形態では、カプラ装置70CをD1方向で見たときにトランス74はコンデンサ75の一部と重なり合っている。しかし変形例では、トランス74はコンデンサ75の全部と重なり合ってもよい。この変形例の場合、トランス74の外周形状と大きさが同じコンデンサ本体750を有するコンデンサ75を用いることができる。
(態様)
上記の通り、本開示の第1態様は、電力線搬送通信用のカプラ装置(70;70A;70B;70C)であって、コンデンサ(75)と、トランス(74)と、一対の電力線接続部(71A、71B)と、を備える。一対の電力線接続部(71A、71B)は一対の一対の電力線に接続される。トランス(74)は、2つの一次巻線(740)と、1つの二次巻線(74C)と、を有する。コンデンサ(75)は、2つの一次巻線(740)を介して、一対の電力線接続部(71A、71B)に接続される。コンデンサ(75)と2つの一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)の長さは、第1電路長さ(L3、L4)である。一対の電力線接続部(71A、71B)と2つの一次巻線(740)との間を接続する電路(P3、P4)の長さは、第2電路長さ(L5)である。第1電路長さ(L3、L4)は、第2電路長さ(L5)よりも短い。
第1態様によれば、コンデンサ(75)と一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)でインダクタンスが生じても、第1電路長さ(L3、L4)を第2電路長さ(L5)よりも短くするほど、トランス(74)の結合に寄与しない部分のインダクタンスを低減することができ、トランス(74)の結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。
第2態様は、第1態様のカプラ装置(70;70B;70C)であって、コンデンサ(75)は、第1端子(751)と、第2端子(752)とを有する。トランス(74)は、その一次側に、第1接続端子(741)と、第2接続端子(742)と、第3接続端子(743)と、第4接続端子(744)と、を有する。2つの一次巻線(740)のうちの一方の一次巻線(740)は第1接続端子(741)と第3接続端子(743)とに接続される。2つの一次巻線(740)のうちの残りの一次巻線(740)は第2接続端子(741)と第4接続端子(744)とに接続される。第1端子(751)は、第1接続端子(741)及び第3接続端子(743)、第1端子(751)に最も近い位置にあるリード端子に接続される。第2端子(752)は、第2接続端子(742)及び第4接続端子(744)のうち、第2端子(752)に最も近い位置にあるリード端子に接続される。
第2態様によれば、コンデンサ(75)と一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)でインダクタンスが生じても、第1電路長さ(L3、L4)を第2電路長さ(L5)よりも短くするほど、トランス(74)の結合に寄与しない部分のインダクタンスを低減することができ、トランス(74)の結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。
第3態様は、第2態様のカプラ装置(70;70B;70C)であって、第1接続端子(741)、第2接続端子(742)、第3接続端子(743)、及び第4接続端子(744)は、第1端子(751)と第2端子(752)とが並ぶ方向に沿って配置される。第3接続端子(743)及び第4接続端子(744)は、第1接続端子(741)及び第2接続端子(742)の間に配置される。第1端子(751)及び第2端子(752)の間の寸法は、第1接続端子(741)及び第2接続端子(742)の間の寸法よりも長い。第1端子(751)は、第1接続端子(741)に接続される。第2端子(752)は、第2接続端子(742)に接続される。
第3態様によれば、コンデンサ(75)と一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)でインダクタンスが生じても、第1電路長さ(L3、L4)を第2電路長さ(L5)よりも短くするほど、トランス(74)の結合に寄与しない部分のインダクタンスを低減することができ、トランス(74)の結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。
第4態様は、第1態様のカプラ装置(70B)であって、2つの一次巻線(740)のうち、一方の一次巻線(740)は第1の一次巻線(74A)であり、残りの一次巻線(740)は第2の一次巻線(74B)である。コンデンサ(75)は、第1端子(751)と、第2端子(752)と、を有する。第1端子(751)は、第1の一次巻線(74A)の一端に直接的に接続される。第2端子(752)は、第2の一次巻線(74B)の一端とに直接的に接続される。
第4態様によれば、コンデンサ(75)と一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)でインダクタンスが生じても、第1電路長さ(L3、L4)を第2電路長さ(L5)よりも短くするほど、トランス(74)の結合に寄与しない部分のインダクタンスを低減することができ、トランス(74)の結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。
第5態様は、第4態様のカプラ装置(70B)であって、トランス(74)は、その一次側に、第1接続端子(741)と、第2接続端子(742)と、第3接続端子(743)と、第4接続端子(744)と、を有する。第1端子(751)は、第1の一次巻線(74A)の一端に接続することで第1接続端子(741)を兼ねる。第2端子(752)は、第2の一次巻線(74B)の一端に接続することで第2接続端子(742)を兼ねる。第1の一次巻線(74A)の他端は、第3接続端子(743)の一端に接続する。第2の一次巻線(74B)の他端は、第4接続端子(744)の一端に接続する。
第5態様によれば、コンデンサ(75)と一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)でインダクタンスが生じても、第1電路長さ(L3、L4)を第2電路長さ(L5)よりも短くするほど、トランス(74)の結合に寄与しない部分のインダクタンスを低減することができ、トランス(74)の結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。
第6態様は、第5態様のカプラ装置(70B)であって、トランス(74)を搭載する台座(76)を更に備える。第1接続端子(741)、第2接続端子(742)、第3接続端子(743)、及び第4接続端子(744)が台座(76)に保持される。
第6態様によれば、コンデンサ(75)と一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)でインダクタンスが生じても、第1電路長さ(L3、L4)を第2電路長さ(L5)よりも短くするほど、トランス(74)の結合に寄与しない部分のインダクタンスを低減することができ、トランス(74)の結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。
第7態様は、第1~第6態様のいずれか1つのカプラ装置(70C)であって、トランス(74)と、コンデンサ(75)の少なくとも一部とが、平面視において、重なり合っている。
第7態様によれば、カプラ装置(70C)のサイズを小さくすることもできる。さらに、カプラ装置(70C)を基板に実装する場合、カプラ装置(70C)の実装面積を小さくすることができる。
第8態様は、第1~第7態様のいずれか1つのカプラ装置(70;70A;70B;70C)であって、コンデンサ(75)と2つの一次巻線(740)との間に生じるインダクタンスは、2つの一次巻線(740)で生じるインダクタンスに対して、1/10以下である。
第8態様によれば、コンデンサ(75)と一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)でインダクタンスが生じても、第1電路長さ(L3、L4)を第2電路長さ(L5)よりも短くするほど、トランス(74)の結合に寄与しない部分のインダクタンスを低減することができ、トランス(74)の結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。
第9態様は、電力線搬送通信装置(100)であって、第1~第8態様のいずれか1つのカプラ装置(70;70A;70B;70C)と、通信回路(120)と、を備える。通信回路(120)は、カプラ装置(70;70A;70B;70C)とカプラ装置(70;70A;70B;70C)に接続される電力線(91)とを介して外部端末(101)と通信する。
第9態様によれば、コンデンサ(75)と一次巻線(740)との間を接続する電路(P1、P2)でインダクタンスが生じても、第1電路長さ(L3、L4)を第2電路長さ(L5)よりも短くするほど、トランス(74)の結合に寄与しない部分のインダクタンスを低減することができ、トランス(74)の結合を高めることによって通信信号の減衰を抑制できる。