JP7324869B2 - トラップ型量子コンピュータのための振幅、周波数、及び位相変調されたもつれゲート - Google Patents

トラップ型量子コンピュータのための振幅、周波数、及び位相変調されたもつれゲート Download PDF

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Description

本開示は、一般に、イオントラップ型量子コンピュータにおいて、もつれゲートを生成する方法に関し、より具体的にはパルスを最適化して、もつれゲートを生成する方法に関する。
量子コンピューティングでは、古典的デジタルコンピュータにおける「0」と「1」を表すビットに類似した量子ビット又はキュービットの状態をほぼ完全な精度で決定するために、量子ビット又はキュービットを計算プロセス中に準備し、操作し、測定(読み出し)する必要がある。キュービットの制御が不完全であると、計算プロセスにおいて誤差が蓄積することがあり、信頼性の高い計算を実行できる量子コンピュータのサイズが制限される。
大規模な量子コンピュータを構築するために提案されている物理システムの中に、電磁界によってトラップされて真空中に浮遊するイオンの鎖(例えば、電荷を帯びた原子)がある。イオンは、数GHz範囲内の周波数によって分離され、キュービットの計算状態(「キュービット状態」と呼ばれる)として使用することができる内部超微細状態を有する。これらの超微細状態は、レーザから提供される放射線を使用して(場合によっては本明細書ではレーザビームとの相互作用と呼ばれることもある)制御し読み取ることができる。イオンは、また、このようなレーザ相互作用を使用して、運動基底状態の近くまで冷却することができる。個々のキュービットは、2つの超微細状態のいずれかに高精度で光学的に励起し(キュービットの準備)、レーザビームにより2つの超微細状態間で操作することができ(単一キュービットのゲート操作)、共鳴レーザビームの適用時に蛍光によってそれらの内部超微細状態が検出される。1ペアのイオンは、イオン間のクーロン力の相互作用により発生する、トラップイオンの鎖の集合運動モードにイオンを結合するレーザパルスを使用して、キュービット状態に依存する力によって制御可能にもつれることができる(2キュービットのゲート操作)。量子コンピュータのサイズが大きくなると、1ペアのイオン間の2キュービットゲート演算の実装が複雑になるため、実装に伴う誤差や、レーザ出力などの実装に必要なリソースが増加する。
古典的コンピュータでは難解な問題を解決するアルゴリズムを実装できる可能性のある量子コンピュータのサイズを大きくするためには、キュービットを正確に制御して、最小限のリソースで所望の計算プロセスを実行するための手順が必要である。
本開示の実施形態は、一般に、量子コンピュータ内の2つのトラップイオン間で、もつれ操作を実行する方法に関し、この方法は、トラップイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンに適用されるパルスのゲート持続時間値を選択するステップと、選択されたゲート持続時間値とトラップイオンの鎖の運動モードの周波数に基づいて、パルスの1つ以上のトーンを決定するステップであって、各トーンは振幅値及び離調周波数値を備える、ステップと、1つ以上のトーンを有するパルスを生成するステップであって、各トーンは、決定された振幅及び決定された離調周波数値を備える、ステップと、生成されたパルスをゲート持続時間値の第一のイオンと第二のイオンに適用するステップと、を含む。トラップイオンのそれぞれは、キュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、トラップイオンの鎖の運動モードは、それぞれ異なる周波数を有する。
本開示の実施形態は、一般に、量子コンピューティングシステムに関し、このシステムは、トラップイオンの鎖であって、トラップイオンのそれぞれは、キュービット状態と励起状態を定義する2つの超微細状態を有する、トラップイオンの鎖と、トラップイオンのそれぞれに提供される2つ以上の非共伝搬レーザビームに分割されるレーザビームを放出するように構成された1つ以上のレーザであって、2つ以上の非共伝搬レーザビームは、励起状態を介して2つの超微細状態の間の前記トラップイオンのそれぞれのラビフロップを引き起こすように構成される、1つ以上のレーザと、コントローラであって、トラップイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンに適用されるパルスのゲート持続時間値を選択するステップと、選択されたゲート持続時間値とトラップイオンの鎖の運動モードの周波数に基づいて、パルスの1つ以上のトーンを決定するステップであって、各トーンは振幅値及び離調周波数値を備える、ステップと、1つ以上のトーンを有するパルスを生成するステップであって、各トーンは、決定された振幅及び決定された離調周波数を備える、ステップと、生成されたパルスをゲート持続時間値の第一のイオンと第二のイオンに適用するステップと、を行うように構成されたコントローラと、を含む。トラップイオンのそれぞれは、キュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、トラップイオンの鎖の運動モードは、それぞれ異なる周波数を有する。
本開示の実施形態は、一般に、量子コンピュータを使用して計算を実行する方法に関し、この量子コンピュータは、デジタルコンピュータの不揮発性メモリに記憶されたソフトウェアプログラムを、デジタルコンピュータのプロセッサによって実行するステップと、処理された量子情報に基づく計算結果を生成するステップを含む。実行されるソフトウェアプログラムは、実行されたソフトウェアプログラムは、少なくとも1つの計算を実行する必要があり、少なくとも1つの計算を実行することは、デジタルコンピュータのプロセッサによって、量子コンピュータに実装される量子アルゴリズムを選択するステップと、選択した量子アルゴリズムを一連のユニバーサル論理ゲートにコンパイルするステップと、一連のユニバーサル論理ゲートをレーザパルスに変換して、トラップイオンのペアに適用するステップと、デジタルコンピュータのプロセッサによって、少なくとも1つの計算を実行するプロセス中に、量子レジスタ内のトラップイオンのペアに適用されるレーザパルスのパラメータを計算するステップと、それぞれが決定された振幅および決定された離調周波数を有するレーザパルスを生成するステップと、生成されたレーザパルスを、ゲート持続時間値に等しい時間の長さにわたってトラップイオンのペアに適用するステップと、複数のトラップイオンのキュービット状態の集団を測定するステップと、キュービット状態の測定された集団に基づいて、デジタルコンピュータのプロセッサによって、複数のトラップイオンのキュービット状態に対応する量子情報を処理するステップと、を含む。量子コンピュータは、量子コンピュータの量子レジスタ内に配置された複数のトラップイオンを備え、複数のトラップイオンはそれぞれ、それぞれがキュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、複数のトラップイオンの運動モードはそれぞれ、別個の周波数を有する。パラメータを計算するステップは、デジタルコンピュータのプロセッサによって、ゲート持続時間値と複数のトラップイオンの運動モードの周波数に関するデジタルコンピュータに保存された情報に基づいて、レーザパルスの振幅関数と離調周波数関数を決定することを含む。
本開示の実施形態は、一般に、量子コンピューティングシステムに関し、このシステムは、トラップイオンの鎖であって、トラップイオンのそれぞれは、キュービット状態と励起状態を定義する2つの超微細状態を有する、トラップイオンの鎖と、トラップイオンの鎖内の第一のイオン及び第二のイオンに提供される第一の周波数及び第二の周波数を有する2つ以上の非共伝搬レーザビームに分割されるレーザビームを放出するように構成された1つ以上のレーザであって、2つ以上の非共伝搬レーザビームは、2つの超微細状態のそれぞれと励起状態との間で第一のイオン及び第二のイオンのラビフロップを引き起こすように構成される、1つ以上のレーザと、内部に記憶されたいくつかの命令を有する非揮発性メモリを備えるコントローラと、を備える。前記命令は、プロセッサによって実行されると、前記量子コンピューティングシステムに、トラップイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンに適用されるパルスのゲート持続時間値を選択するステップであって、前記トラップイオンのそれぞれは、キュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、トラップイオンの鎖の運動モードは、それぞれ異なる周波数を有する、ステップと、選択されたゲート持続時間値とトラップイオンの鎖の運動モードの周波数に基づいて、パルスの1つ以上のトーンを決定するステップであって、各トーンは振幅値及び離調周波数値を備える、ステップと、1つ以上のトーンを有するパルスを生成するステップであって、各トーンは、決定された振幅及び決定された離調周波数を備える、ステップと、生成されたパルスをゲート持続時間値の第一のイオンと第二のイオンに適用するステップと、を含む操作を実行させる。
本開示の上記特徴を詳細に理解することができるように、上で簡単に要約された本開示のより具体的な記載は、いくつかが添付の図面に示されている実施形態を参照することによって説明することができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを説明しており、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。なぜなら、本開示は、他の同等に有効な実施形態を認めることができるからである。
一実施形態に従うイオントラップ型量子コンピュータの部分図である。 一実施形態に従って、イオンを鎖に閉じ込めるためのイオントラップの概略図を示す。 図3A、図3B、及び図3Cは、5つのトラップイオンの鎖のいくつかの概略的な集合横運動モード構造を示す。 一実施形態に従って、トラップイオンの鎖内の各イオンの概略エネルギー図を示す。 ブロッホ球の表面上の点として表されるイオンのキュービット状態を示す。 図6A及び図6Bは、一実施形態に従って、各イオンの運動側波帯スペクトル及び運動モードの概略図を示す。 一実施形態に従って、2つのキュービットでXXゲート操作を実行するために使用される出力最適パルスを生成する方法を示すフローチャートを示す。 一実施形態による最適パルス関数を示す。 一実施形態による最適パルスの離調周波数を示す。 一実施形態によるパルス関数を示す。 一実施形態に従って、5つのトラップイオンの鎖に対してXXゲート操作を実行する段階的パルスセグメントの不忠実度を示す。 一実施形態に従うXXゲート操作によって得られるもつれ相互作用を示す。
理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用する。図及び以下の説明では、X軸、Y軸、及びZ軸を含む直交座標系を使用する。図面の矢印で表される方向は、便宜上、正の方向であると想定される。いくつかの実施形態で開示された要素は、具体的な明記なく、他の実装で有益に利用されてよいと考えられる。
本明細書に記載の実施形態は、一般に、量子計算中に2つのイオン間でもつれ操作を実行するためのパルスを設計、最適化、及び送達するための方法及びシステムに関し、より具体的には、もつれゲート操作の忠実度、または2つのイオン間でエもつれゲート操作を実行した後、少なくとも2つのイオンが意図したキュービット状態にある確率を向上させ、さらに、もつれゲート操作を実行するのに必要なレーザ出力を減少させるパルスに関する。
トラップイオンを使用して量子コンピューティングを実行できるシステム全体には、古典的コンピュータ、システムコントローラ、及び量子レジスタが含まれる。古典的コンピュータは、グラフィックス処理ユニット(GPU)などのユーザインターフェイスを使用して実行する量子アルゴリズムの選択、選択した量子アルゴリズムの一連のユニバーサル論理ゲートへのコンパイル、一連のユニバーサル論理ゲートを量子レジスタに印加するためのレーザパルスへの変換、中央処理ユニット(CPU)を使用してレーザパルスを最適化するパラメータの事前の計算などのサポート及びシステム制御タスクを実行する。量子アルゴリズムを分解して実行するタスクを実行するためのソフトウェアプログラムは、古典的コンピュータ内の不揮発性メモリに記憶されている。量子レジスタには、様々なハードウェアと結合されたトラップイオンが含まれ、これらのハードウェアには、トラップイオンの内部超微細状態(キュービット状態)を操作するレーザや、トラップイオンの内部超微細状態(キュービット状態)を読み取る音響光学変調器が含まれる。システムコントローラは、古典的コンピュータから、量子レジスタで選択されたアルゴリズムの実行の開始時に出力最適パルスの事前計算されたパラメータを受け取り、量子レジスタで選択されたアルゴリズムを実行するために使用されるすべての側面の制御に関連する様々なハードウェアを制御し、量子レジスタの読み取り値を返し、こうして、アルゴリズムの実行の最後に、量子コンピューティングの結果を古典的コンピュータに出力する。
本明細書に記載の方法及びシステムは、論理ゲートを量子レジスタに適用されるレーザパルスに変換するためのプロセスと、量子レジスタに適用され、量子コンピュータの性能を向上させるために使用されるレーザパルスを最適化するパラメータを事前計算するためのプロセスを含む。
任意の量子アルゴリズムを分解することができるユニバーサル論理ゲートのいくつかの既知のセットのうち、一般的に{R,XX}と表記されるユニバーサル論理ゲートのセットは、本明細書に記載されているトラップイオンの量子コンピューティングシステムに固有のものである。ここで、Rゲートは、トラップイオンの個々の量子状態の操作に対応し、XXゲート(もつれゲートとも呼ぶ)は、2つのトラップイオンのもつれ操作に対応する。当業者にとって明らかであるように、Rゲートは、ほぼ完全な忠実度で実装できるが、XXゲートの形成は、複雑なので、XXゲートの忠実度を向上させ、量子コンピュータ内の計算の誤差を回避又は削減するためには、いくつかの要因を挙げれば、トラップイオンの所定のタイプと、トラップイオンの鎖内のイオンの数と、トラップイオンがトラップされるハードウェア及び環境との最適化が必要である。以下では、向上した忠実度を有するXXゲートの形成に基づいて計算を実行するために使用されるパルスを生成し,最適化する方法を説明する。
量子コンピュータのサイズが大きくなるにつれて、量子計算を実行するために使用されるもつれゲート操作がますます複雑さになり、これらのもつれゲート操作を実行するために使用されるパルスもますます複雑になる。そのような複雑なパルスを実装するために必要なレーザ出力は、その後増加し、したがって、利用可能なレーザ出力は、実装できる量子コンピュータのサイズを制限する可能性がある。本開示で説明される方法及びシステムは、パルスの構築を単純化し、パルスを実装するのに必要なレーザ出力をさらに低減して、量子コンピュータをより大きなサイズにスケールアップして、より複雑な計算操作を実行できるようにする。これは、所与の出力バジェットに対して、もつれゲートの実行が高速であることを意味する。提供されるレーザ出力に比例する誤差は、必要なレーザ出力が小さいほど減少する。
(一般的なハードウェア構成)
図1は、一実施形態に係るイオントラップ型量子コンピュータ又はシステム100の部分図である。システム100は、古典的コンピュータ101と、システムコントローラ118と、Z軸に沿って延びる、トラップイオン(例えば、5つを示す)の鎖102である量子レジスタとを含む。古典的コンピュータ101は、中央処理ユニット(CPU)、メモリ、及びサポート回路(及びI/O)を含む。メモリは、CPUに接続されており、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フロッピーディスク、ハードディスク、及びその他の形式のデジタルストレージなどで、ローカル及びリモートで、すぐに利用できるメモリの1つ及び複数であり得る。ソフトウェア命令、アルゴリズム、及びデータは、CPUに命令するためにコード化され、メモリ内に記憶される。サポート回路(図示せず)も、従来の方法でプロセッサをサポートするためにCPUに接続されている。サポート回路は、従来のキャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路、サブシステムなどを含み得る。
例えば、開口数(NA)が0.37の対物レンズなどのイメージング対物レンズ104は、イオンからY軸に沿って蛍光を収集し、個々のイオンを測定するために、各イオンをマルチチャネル光電子増倍管(PMT)106にマッピングする。X軸に沿って提供される、レーザ108からの非共伝搬ラマンレーザビームは、イオンに対して操作を実行する。回折ビームスプリッタ110は、マルチチャネル音響光学変調器(AOM)114を使用して個別に切り替えられる静的ラマンビーム112のアレイを作成し、かつ個々のイオンに選択的に作用するように構成される。グローバルラマンレーザビーム116は、すべてのイオンを一度に照射する。システムコントローラ(「RFコントローラ」とも呼ばれる)118は、AOM114を制御する。システムコントローラ118は、中央処理ユニット(CPU)120、読み取り専用メモリ(ROM)122、ランダムアクセスメモリ(RAM)124、記憶ユニット126などを含む。CPU120は、RFコントローラ118のプロセッサである。ROM122は、様々なプログラムを記憶し、RAM124は、様々なプログラム及びデータの作業メモリである。記憶ユニット126は、ハードディスクドライブ(HDD)又はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含み、電源が切られても様々なプログラムを記憶する。CPU120、ROM122、RAM124、及び記憶ユニット126は、バス128を介して相互接続されている。RFコントローラ118は、ROM122又は記憶ユニット126に記憶され、RAM124を作業領域として使用する制御プログラムを実行する。制御プログラムは、データの受信、分析、及び本明細書で説明されたイオントラップ型量子コンピュータシステム100を作成するために使用される方法及びハードウェアの全ての態様の制御に関連する様々な機能を実行するためにプロセッサによって実行することができるプログラムコード(例えば、命令)を含む1つ以上のソフトウェアアプリケーションを含む。
図2は、一実施形態に係る、鎖102内にイオンを閉じ込めるイオントラップ200(ポールトラップとも呼ばれる)の概略図を示す。閉じ込め電位は、静的(DC)電圧と無線周波数(RF)電圧の両方によって印加される。静的(DC)電圧VSがエンドキャップ電極210及び212に印加されて、Z軸(「軸方向」又は「長手方向」とも呼ばれる)に沿ってイオンを閉じ込める。鎖102内のイオンは、イオン間のクーロン相互作用のために、軸方向にほぼ均等に分布している。いくつかの実施形態では、イオントラップ200は、Z軸に沿って延びる4つの双曲線形状の電極202、204、206、及び208を含む。
操作中、(振幅VRF/2を有する)正弦波電圧Vは、対向する一対の電極202、204に印加され、正弦波電圧Vから180°の位相シフト(及び振幅VRF/2を有する正弦波電圧Vは、駆動周波数ωRFで対向する他対の電極206、208に印加されて、四重極電位を生成する。いくつかの実施形態では、正弦波電圧は、対向する一対の電極202、204のみに印加され、対向する他対の206、208は、接地される。四重極電位は、トラップされた各イオンに対してZ軸に垂直なX-Y平面(「半径方向」又は「横方向」とも呼ばれる)に有効な閉じ込め力を生成し、その閉じ込め力は、RF電界が消失する鞍点(すなわち、軸方向(Z方向)の位置)からの距離に比例する。各イオンの半径方向(すなわち、X-Y平面の方向)の運動は、半径方向の鞍点に向かう復元力を伴う調和振動(経年運動と呼ばれる)として近似され、それぞれ以下でより詳細に説明されるようなばね定数kとkによってモデル化できる。いくつかの実施形態では、半径方向のばね定数は、四重極電位が半径方向に対称である場合に等しいものとしてモデル化される。しかしながら、望ましくない場合には、半径方向のイオンの運動は、物理的なトラップ構成のある程度の非対称性、電極の表面の不均一性による小さなDCパッチ電位などのために歪む場合があり、これら及び他の外部の歪みの原因により、イオンは、鞍点から中心を外れる場合がある。
(トラップイオン構成とキュービット情報)
図3A、図3B、及び図3Cは、例えば、5つのトラップイオンの鎖102のいくつかの概略的な集合横運動モード構造(単に「運動モード構造」とも呼ばれる)を示す。本明細書では、エンドキャップ電極210及び212に印加された静的電圧Vによる閉じ込め電位は、半径方向の閉じ込め電位と比較して弱い。トラップイオンの鎖102の横方向の集合運動モードは、イオントラップ200によって生成された閉じ込め電位とトラップイオン間のクーロン相互作用との組み合わせによって決定される。トラップイオンは、集合横方向運動(「集合横運動モード」、「集合運動モード」、又は単に「運動モード」と呼ばれる)を起こし、各モードには、それに関連する異なるエネルギー(及び同等に、周波数)がある。以下では、エネルギーがp番目に低い運動モードを│nphと呼び、ここで、nphは、運動モードの運動量子の数(エネルギー励起の単位で、フォノンと呼ばれる)を表し、所定の横方向の運動モードの数Pは、鎖102内のトラップイオンの数Nに等しい。図3A~図3Cは、鎖102内に配置された5つのトラップイオンによって経験され得る異なるタイプの集合横運動モードの例を概略的に説明する。図3Aは、最も高いエネルギーを有する一般的な運動モード│nphの概略図であり、ここで、Pは、運動モードの数である。一般的な運動モード│n>では、すべてのイオンは、横方向に同位相で振動する。図3Bは、2番目に高いエネルギーを有する傾斜運動モード│nphP-1の概略図である。傾斜運動モードでは、両端のイオンは、横方向に位相がずれて(すなわち、反対方向に)移動する。図3Cは、傾斜運動モード│nphP-1よりもエネルギーが低く、イオンがより複雑なモードパターンで移動する高次運動モード│nphP-3の概略図である。
なお、上記特定の構成は、本開示のイオンを閉じ込めるトラップのいくつかの可能な例のうちの1つに過ぎず、本開示によるトラップの可能な構成、仕様などを限定するものではない。例えば、電極の形状は、上記双曲線電極に限定されない。他の例では、調和振動として半径方向にイオンの運動を引き起こす実効電界を生成するトラップは、複数の電極層が積層され、対角線上にある2つの電極にRF電圧が印加される多層トラップでも、あるいは全ての電極がチップ上の単一平面に配置されている表面トラップであってよい。さらに、トラップは、複数のセグメントに分割することができ、その隣接するペアが1つ以上のイオンを往復させてリンクすることも、あるいは光子相互接続によって結合することもできる。トラップは、また、微細加工されたイオントラップチップ上に互いに近接して配置された個々のトラップ領域のアレイであってよい。いくつかの実施形態では、四重極電位は、上記RF成分に加えて、空間的に変化するDC成分を有する。
図4は、一実施形態に係る、トラップイオンの鎖102内の各イオンの概略エネルギー図400を示す。一例では、各イオンは、ω01/2π=12.642821GHzの周波数差(「キャリア周波数」と呼ばれる)に対応するエネルギー分割を有する1/2超微細状態(すなわち、2つの電子状態)を有する正のイッテルビウムイオン171Ybであってよい。キュービットは、│0>と│1>で表される2つの超微細状態で形成され、超微細基底状態(すなわち、1/2超微細状態のうちの低エネルギー状態)が│0>を表すために選択される。以下、「超微細状態」、「内部超微細状態」及び「キュービット」という用語は、│0>と│1>を表すために交換可能に使用されることがある。各イオンは、ドップラー冷却又は分解サイドバンド冷却などの既知のレーザ冷却方法で、フォノン励起なし(すなわち、nph=0)で任意の運動モードpの運動基底状態│0>の近くまで冷却し(すなわち、イオンの運動エネルギーが低下することができる)、次にキュービット状態が光ポンピングによって超微細基底状態│0>で準備することができる。ここで、│0>は、トラップイオンの個々のキュービット状態を表し、下付き文字pが付いた│0>は、トラップイオンの鎖102の運動モードpの運動基底状態を表す。
各トラップイオンの個々のキュービット状態は、例えば、励起された1/2レベル(|e>で表される)を介して355ナノメートル(nm)のモードロックレーザ(mode-locked laser)によって操作することができる。図4に示すように、レーザからのレーザビームは、ラマン構成で一対の非共伝搬レーザビーム(周波数ωを有する第一のレーザビームと周波数ωを有する第二のレーザビーム)に分割され、図4で説明するように、|0>と|e>の間の遷移周波数ω0eに関して、一光子遷移離調周波数Δ=ω-ω0eによって離調されてよい。二光子遷移離調周波数δは、トラップイオンに第一及び第二のレーザビームによって提供されるエネルギー量の調整を含み、それらを組み合わせて使用すると、トラップイオンが超微細状態|0>と|1>との間で移動する。一光子遷移離調周波数Δが二光子遷移離調周波数(単に「離調周波数」とも呼ばれる)δ=ω-ω-ω01(以下、±μで表され、μは正の値である)よりもはるかに大きい場合、それぞれ状態|0>と|e>の間、状態|1>と|e>の間でラビフロップが発生する単一光子ラビ周波数Ω0e(t)とΩ1e(t)(時間に依存し、第一と第二のレーザビームの振幅と位相によって決定される)、励起状態|e>からの自然放出率、2つの超微細状態│0>と│1>の間のラビフロップ(「キャリア遷移」と呼ばれる)は、二光子ラビ周波数Ω(t)で誘導される。二光子ラビ周波数Ω(t)は、Ω0eΩ1e/2Δに比例する強度(すなわち、振幅の絶対値)を有し、ここで、Ω0eとΩ1eは、それぞれ第一と第二のレーザビームによる単一光子ラビ周波数である。以下、キュービットの内部超微細状態(キュービット状態)を操作するためのラマン構成におけるこの非共伝搬レーザビームのセットは、「複合パルス」又は単に「パルス」と呼ばれてよく、結果として生じる二光子ラビ周波数Ω(t)の時間依存パターンは、パルスの「振幅」又は単に「パルス」と呼ばれてよく、それらは、以下で図示され、さらに説明される。離調周波数δ=ω-ω-ω01は、複合パルスの離調周波数又はパルスの離調周波数と呼ばれてよい。第一及び第二のレーザビームの振幅によって決定される二光子ラビ周波数Ω(t)の振幅は、複合パルスの「振幅」と呼ばれてよい。
なお、本明細書に提供される説明で使用される特定の原子種は、イオン化されたときに安定し、かつ明確に定義された2レベルエネルギー構造と、光学的にアクセス可能な励起状態とを有する原子種の一例にすぎないため、本開示のイオントラップ型量子コンピュータの可能な構成、仕様などを限定することを意図するものではない。例えば、他のイオン種は、アルカリ土類金属イオン(Be、Ca、Sr、Mg、及びBa)又は遷移金属イオン(Zn、Hg、Cd)を含む。
図5は、方位角φ及び極性角θを有するブロッホ球500の表面上の点として表されるイオンのキュービット状態を視覚化するのを助けるために提供される。上記のように、複合パルスを適用すると、キュービット状態│0>(ブロッホ球の北極として表される)と│1>(ブロッホ球の南極として表される)との間でラビフロップが発生する。複合パルスの持続時間と振幅を調整すると、キュービット状態を│0>から│1>に(すなわち、ブロッホ球の北極から南極へ)反転させるか、あるいはキュービット状態│1>から│0>に(すなわち、ブロッホ球の南極から北極に)反転させる。複合パルスのこの適用は、「πパルス」と呼ばれる。さらに、複合パルスの持続時間と振幅を調整することにより、キュービット状態│0>を、2つのキュービット状態│0>と│1>が加算され、同位相で均等に重み付けされた重ね合わせ状態│0>+│1>(重ね合わせ状態の正規化係数は、一般性を失うことなく、以下省略される)に変換することができ、そして、キュービット状態│1>を、2つのキュービット状態│0>と│1>が加算され、均等に重み付けされているが、位相がずれる重ね合わせ状態│0>-│1>に変換することができる。複合パルスのこの適用は、「π/2パルス」と呼ばれる。より一般的には、加算されて均等に重み付けされた2つのキュービット状態│0>と│1>の重ね合わせは、ブロッホ球の赤道上にある点によって表される。例えば、重ね合わせ状態│0>±│1>は、方位角φがそれぞれゼロとπである赤道上の点に対応する。方位角φの赤道上の点に対応する重ね合わせ状態は、│0>+eiφ│1>(例えば、φ=±π/2の場合は│0>±i│1>φである)として表される。赤道上の2点間の変換(すなわち、ブロッホ球のZ軸の周りの回転)は、複合パルスの位相をシフトすることで実装できる。
イオントラップ型量子コンピュータでは、運動モードは、2つのキュービット間のもつれを仲介するデータバスとして機能することができ、このもつれは、XXゲート操作を実行するために使用される。つまり、2つのキュービットのそれぞれが運動モードともつれて、そして、以下に説明するように、もつれは、運動側波帯励起を使用することによって、2つのキュービット間のもつれに転送される。図6A及び図6Bは、一実施形態に係る、周波数ωpを有する運動モード│nph>pでの鎖102内のイオンの運動側波帯スペクトルの図を概略的に示す。図6Bに示すように、複合パルスの離調周波数がゼロの場合(すなわち、第一と第二のレーザビーム間の周波数差がキャリア周波数δ=ω-ω-ω01=0に調整される場合)、キュービット状態│0>と│1>の間で単純なラビフロップ(キャリア遷移)が発生する。複合パルスの離調周波数が正の場合(すなわち、第一と第二のレーザビーム間の周波数差が、キャリア周波数よりも高く調整されている場合、δ=ω-ω-ω01=μ>0、青側波帯と呼ばれる)、組み合わされたキュービット運動状態│0>│nphと│1>│nph+1>の間でラビフロップが発生する(すなわち、キュービット状態│0>が│1>に反転する場合、│nph>pで表されるnph-フォノン励起を伴うp番目の運動モードから│nph+1>で表されるnph+1-フォノン励起を伴うp番目の運動モードへの遷移が発生する)。複合パルスの離調周波数が負の場合(すなわち、第一と第二のレーザビーム間の周波数差が、運動モード│nphの周波数ωによってキャリア周波数よりも低く調整されている場合、δ=ω-ω-ω01=-μ<0、赤側波帯と呼ばれる)、組み合わされたキュービット運動状態│0>│nphと│1>│nph-1>の間のラビフロップが発生する(すなわち、キュービット状態│0>から│1>に反転する場合、運動モード│nphから、フォノン励起が1つ少ない運動モード│nph-1>への遷移が発生する)。キュービットに適用された青側波帯のπ/2パルスは、組み合わされたキュービット運動状態│0>│nphを、│0>│nphと│1>│nph+1>の重ね合わせに変換する。キュービットに適用された赤側波帯のπ/2パルスは、組み合わされたキュービット運動状態│0>│n>mを、│0>│nphと│1>│nph-1>の重ね合わせに変換する。二光子ラビ周波数Ω(t)が離調周波数δ=ω-ω-ω01=±μと比較して小さい場合、青側波帯遷移又は赤側波帯遷移を選択的に駆動することができる。したがって、キュービットは、π/2パルスなどの適切なタイプのパルスを適用することにより、所望の運動モードでもつれることができ、その後、別のキュービットともつれることができ、2つのキュービット間のもつれをもたらす。イオントラップ型量子コンピュータでXXゲート操作を実行するには、キュービット間のもつれが必要である。
上記のように、組み合わされたキュービット運動状態の変換を制御及び/又は指示することにより、2つのキュービット(i番目及びj番目のキュービット)に対してXXゲート操作を実行することができる。一般に、(最大もつれを有する)XXゲート操作は、2キュービット状態|0>|0>、|0>|1>、|1>|0>及び|1>|1>をそれぞれ次のように変換する。
Figure 0007324869000001
例えば、2つのキュービット(i番目とj番目のキュービット)が両方とも最初に超微細基底状態|0>(|0>|0>で表される)にあり、その後、青側波帯のπ/2パルスがi番目のキュービットに適用される場合、i番目のキュービットと運動モード|0>|nphの組み合わせ状態は、|0>|nphと|1>|nph+1>の重ね合わせに変換されるため、2つのキュービットと運動モードの組み合わせ状態は、|0>|0>|nphと|1>|0>|nph+1>pの重ね合わせに変換される。赤側波帯のπ/2パルスがj番目のキュービットに適用される場合、j番目のキュービットと運動モード|0>|nphの組み合わせ状態は、|0>|nphと|1>|nph-1>の重ね合わせに変換されるため、組み合わせ状態|0>|n+1>は、|0>|nph+1>と|1>|nphの重ね合わせに変換される。
したがって、i番目のキュービットにπ/2青側波帯のパルスを適用し、j番目のキュービットにπ/2赤側波帯のパルスを適用すると、2つのキュービットと運動モード|0>|0>|nphの組み合わせ状態を|0>|0>|nphと|1>|1>|nphの重ね合わせに変換することができ、2つのキュービットは、今やもつれ状態にある。当業者にとって明らかであるように、フォノン励起の初期数nとは異なる数(すなわち、|1>|0>|nph+1>と|0>|1>|nph-1>)のフォノン励起を有する運動モードともつれる2キュービット状態は、十分に複雑なパルスシーケンスによって除去できるため、XXゲート操作後の2つのキュービットと運動モードの組み合わせ状態は、p番目の運動モードでのフォノン励起の初期数nphがXXゲート操作の終了時に変化しないので、もつれが解消された(disentangled)と考えてもよい。したがって、XXゲート操作の前後のキュービット状態は、一般に、運動モードを含まずに、以下で説明する。
より一般的には、側波帯の複合パルスを持続時間τ(「ゲート持続時間」と呼ばれる)にわたって適用することによって変換され、振幅Ω(t)と離調周波数μ(t)を有するi番目とj番目のキュービットの組み合わせ状態は、もつれ相互作用χi,j(τ)の観点から次のように記述することができる。
Figure 0007324869000002
ここで、
Figure 0007324869000003
である。
ηi,pは、i番目のイオンと周波数ωを有するp番目の運動モードの間の結合強度を定量化するラムディッケパラメータであり、
ψ(t)はパルスの累積位相
Figure 0007324869000004
であり、ψは、一般性を失うことなく、簡単にするために以下ゼロ(0)と見なすことができる初期位相であり、Pは運動モードの数(鎖102内のイオンの数Nに等しい)である。
(ゲートもつれ操作のためのパルスの構築)
上記の2つのキュービット間のもつれ相互作用を使用して、XXゲート操作を実行できる。XXゲート操作(XXゲート)は、単一キュービット操作(Rゲート)とともに、所望の計算プロセスを実行するように構成された量子コンピュータを構築するために使用できるユニバーサルゲート{R、XX}のセットを形成する。i番目とj番目のキュービット間でXXゲート操作を実行するには、条件χi,j(τ)=θi,j(0<θi,j≦π/8)を満たすパルス(すなわち、もつれ相互作用χi,j(τ)が所望の値θi,jを有することで、もつれ相互作用がゼロでない条件と呼ばれる)が構築され、i番目とj番目のキュービットに適用される。上記のi番目とj番目のキュービットの結合状態の変換は、θi,j=π/8のときに最大のもつれを伴うXXゲート操作に対応する。iパルスの振幅Ω(t)と離調周波数μ(t)とは、i番目とj番目のキュービットのゼロ以外の調整可能なもつれを保証するように調整でき、i番目とj番目のキュービットで所望のXXゲート操作を実行する制御パラメータである。以下に説明する例では、同じパルスがi番目とj番目のキュービットの両方に適用される。しかしながら、いくつかの実施形態では、異なるパルスがi番目及びj番目のキュービットに適用される。
パルスの制御パラメータ、振幅及び離調周波数も、また、パルスの送達によって運動モードが励起されたときに、初期位置から変位しているトラップイオンが初期位置に戻るという条件も満たす必要がある。重ね合わせ状態のl番目のキュービット│0>±│1>(l=i,j)は、ゲート持続時間τの間のp番目の運動モードの励起により変位し、p番目の運動モードの位相空間(位置と運動量)内の軌道±αl,p(t’)に従う。軌道
Figure 0007324869000005
は、パルスの振幅Ω(t)と累積位相
Figure 0007324869000006
によって決定される。ここで、g(t)は、g(t)=Ω(t)sin(ψ(t))として定義されるパルス関数である。したがって、N個のトラップイオンの鎖102に対して、条件αl,p(τ)=0(l=i,j)(すなわち、l番目のキュービットの位相空間軌道αl,p(τ)を閉鎖する必要があることで、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件とも呼ばれる)(及び位相空間軌道の閉鎖)は、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件χi,j(τ)=θi,j(0<θi,j≦π/8)に加えて、P個(p=1,2,…,P)の全ての運動モードに対して課されなければならない。
パルスの制御パラメータ、振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)も、結果として生じるパルスが出力最適であるように調整され、必要なレーザ出力が最小化される(出力最小化の条件と呼ばれる)。必要なレーザ出力はゲート持続時間τに反比例するため、出力最適パルスは、ゲート持続時間τが固定されている場合は最小出力要件で、又はレーザ出力バジェットが固定されている場合は最短ゲート持続時間で、XXゲート操作を実装する。
いくつかの実施形態では、振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)は、ゲート持続時間の中間点t=τ/2に対して、時間的に対称又は反対称になるように選択され、すなわち、
Figure 0007324869000007
となる。以下に説明する例では、振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)は、簡単にするために、対称になるように選択されており(Ω(+)(t)とμ(+)(t))、上付き文字(+)なしでΩ(t)及びμ(t)と呼ぶこともできる。対称離調周波数μ(t)の場合、累積位相ψ(t)は反対称、つまり
Figure 0007324869000008
となる。トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件は、パルス関数g(t)の反対称成分g(-)(t)(以下で、「負のパリティパルス関数」及び単に「パルス関数」とも呼ぶ)で、
Figure 0007324869000009
として書き直すことができる。ここで、Mpnは、
Figure 0007324869000010
として、定義することができる。ここで、パルス関数g(-)(t)は完全に展開され、たとえば、基底関数sin(2πnt/τ)とフーリエ係数A(n=1,2,…,N)を使用して、ゲート持続時間τにわたってフーリエ正弦基底で
Figure 0007324869000011
となる。同様に、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件は、行列形式で
Figure 0007324869000012
と書くことができ、ここで、MはMpnのP×N係数行列であり、
Figure 0007324869000013
はAのN個のフーリエ係数ベクトルである。基底関数の数Nは、運動モードPの数よりも大きく、パルス関数g(-)(t)の計算で収束を達成するのに十分な大きさになるように選択される。したがって、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件を満たし、自明ではない(すなわち、フーリエ係数Aの少なくとも1つがゼロでない)フーリエ係数ベクトル
Figure 0007324869000014
は、N(=N-P)個ある。
もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件は、パルス関数g(-)(t)の観点から
Figure 0007324869000015
として書き直すことができる。ここで、Dmnは、
Figure 0007324869000016
及び同等に、行列形式で
Figure 0007324869000017
と定義される。ここで、DはDmnのN×N係数行列であり、
Figure 0007324869000018
は、
Figure 0007324869000019
の転置ベクトルである。
出力最小化の条件は、出力関数
Figure 0007324869000020
を最小化することに対応する。これは、ゲート持続時間τにわたって平均化されたパルス関数g(-)(t)の絶対二乗値である。したがって、出力最適パルスは、フーリエ係数ベクトル
Figure 0007324869000021
の線形結合
Figure 0007324869000022
を計算することによって構築できる。係数Λαは、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件も、出力を最小化する条件も満たされることを決定する。
したがって、XXゲートを実行するために使用されるパルスの振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)は、パルス関数g(-)(t)に基づいて計算できる。パルス関数g(-)(t)は、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件も、出力を最小化する条件も満たすフーリエ係数A(n=1,2,…,N)(すなわち、パルス関数g(-)(t)の周波数成分)及び同等なフーリエ係数ベクトル
Figure 0007324869000023
を有する。なお、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件と、ゼロ以外のもつれ相互作用の条件は、フーリエ係数ベクトル
Figure 0007324869000024
に関して線形代数形式である。したがって、これらの条件を、出力最小化の条件とともに満たすフーリエ係数Aは、近似や反復なしで既知の線形代数計算方法によって計算できる。
本明細書に記載の実施形態では、振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)は、パルスの中間点t=/2に関して対称になるように選択される。したがって、パルス関数g(t)には反対称成分g(-)(t)のみが含まれる。次に、(非対称性のため、反対称基底関数sin(2πnt/τ)を使用する)パルス関数g(-)(t)がフーリエ基底で展開される。フーリエ基底は完全なセットを形成するため、出力最小化の条件を満たすと決定されたフーリエ係数Aを有するパルス関数(g)(-)(t)は、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件も、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件も満たす全ての可能なパルスの中で出力が最適であることが保証されている。さらに、パルス関数g(-)(t)の拡張は、周波数領域(周波数2πn/τ)でのパルスの構築に対応し、したがって、パルス関数g(-)(t)によって構築されたパルスは、マルチトーンレーザ(つまり、複数のトーンを有し、各トーンが異なる振幅と対応する振幅を有するレーザビーム)によって直接実装できる。すなわち、それぞれが周波数2πn/τと振幅A(n=1,2,….N)を有し、レーザビームの位相が固定されたN個のトーンレーザビームは、XXゲート操作を直接実行できる。パルス関数は、ゲート持続時間にわたって完全なセット及び不完全なセットを形成する任意の関数を使用して拡張できる。しかしながら、パルス関数が不完全なセットで展開された場合、上記の方法で計算されたパルス関数g(-)(t)が出力最適であるという保証はない。
上記の特定の例示的な実施形態は、本開示によるパルス関数の構築方法の単なるいくつかの可能な例であり、パルス関数の構築方法の可能な構成、仕様などを制限するものではないことに留意されたい。例えば、振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)の対称性は、システム100の構成、仕様等に関連する利便性に基づいて、反対称である(負のパリティを有する)ように、あるいは混合対称を有する(混合パリティを有する)ように選択することができる。しかしながら、振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)に対称性を課すことは、振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)の対称性及び/及びエコー技術を適切に選択することにより、ラムディッケパラメータηi,p又はパルス関数g(-)(t)の相対オフセットなどの外部パラメータの誤差を排除することにつながる可能性がある。
(モード周波数変動に対する安定化とXXゲートの較正)
出力最適パルスの構築において、係数ベクトル
Figure 0007324869000025
に課せられる条件の線形代数形式のために、フーリエ係数ベクトル
Figure 0007324869000026
を計算する際の複雑さを実質的に増加させることなく、追加の条件を追加することができる。例えば、すべての条件の線形代数形式を維持しながら、運動モードの周波数ωの変動やレーザビームの強度などの外部エラーに対してパルスを安定化させるための条件を追加で課すことができる。イオントラップ型量子コンピュータ及びシステム100では、漂遊電場、光イオン化及び温度変動によって引き起こされるイオントラップ200内の蓄積電荷のために、運動モードの周波数に変動があり得る。通常、数分の時間にわたって、運動モードの周波数ωは、Δω/(2π)≒1kHzの偏位(excursion)でドリフトする。ゼロでないもつれ相互作用、トラップイオンの元の位置と運動量値への復帰、及び運動モードの周波数ωに基づく最小化された出力の条件は、運動モードの周波数がω+Δωにドリフトしたときに、もはや満たされなくなる。結果として、XXゲート操作の忠実度が低下する。運動モードフォノンのゼロ温度でのi番目とj番目のキュービット間のXXゲート操作の不忠実度1-Fは、
Figure 0007324869000027
によって与えられることが知られている。これは、XXゲート操作が、ωの変動Δωに対してαl,p(l=i、j)がk次まで静止していること、
Figure 0007324869000028
(k次安定化と呼ばれる)を要求することにより、運動モードの周波数ωの変動Δωに対して安定させることができることを示唆している。ここで、Kは望ましい最大安定化度である。安定化のためにこの条件を要求することによって計算されたパルスは、ノイズ(すなわち、運動モードの周波数ωのドリフト)に対して回復力のあるXXゲート操作を実行できる。
もつれ相互作用χi,j(τ)は運動モードの周波数ωpに関連しているため、運動モードの周波数ωの変動も、もつれ相互作用χi,j(τ)の値に影響を与えることがある。すなわち、結果として生じるもつれ相互作用χi,j(τ)は、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件で設定された所望の値θi,jとは異なる値を有することがある。したがって、いくつかの実施形態では、運動モードの周波数ωの変動に対しパルスを安定化するための条件は、また、もつれ相互作用χi,j(τ)のω成分がωの変動Δωに関してのk次まで静止していること(k次安定化)を必要とすることがあり、
Figure 0007324869000029
である。ここで、Kは望ましい最大安定化度である。
もつれ相互作用χi,j(τ)は各トーンの振幅A(n=1,2,…,N)に関連しているために、レーザビームの強度とラムディッケパラメータηi,pの変動も、もつれ相互作用χi,j(τ)の値に影響を与えることがある。すなわち、結果として生じるもつれ相互作用χi,j(τ)は、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件で設定された所望の値θi,jとは異なる値を有することもある。したがって、いくつかの実施形態では、Solovay-Kitaev(SK)シーケンス及びSuzuki-Trotterシーケンスなどの単一キュービットゲート操作に通常適用可能な既知の広帯域パルスシーケンスを使用して、例えば、ラムディッケパラメータηi,pのオフセットに関して、もつれ相互作用χi,j(τ)の誤差を軽減することができる。同じ手法を使用して、もつれ相互作用χi,j(τ)値を乱す誤差のソースに対して、もつれ相互作用χi,j(τ)を安定させることができる。
もつれ相互作用χi,j(τ)の安定化の代替及び追加として、結果として生じるもつれ相互作用χi,j(τ)は、パルスの振幅Ω(t)を変更することによって所望の値θi,jに較正することができる。
(パルスの復調)
出力最適で誤差に強いパルスをi番目とj番目のキュービットに適用するために、出力最適パルスの振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)を決定されたパルス関数g(-)(t)=Ω(t)sin(ψ(t))から復調する必要がある(すなわち、振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)が抽出され、パルス関数g(-)(t)は、単一のレーザビームの一連の時間依存パルスセグメントを有するパルスに変換される)。ここで、
Figure 0007324869000030
は、離調周波数μ(t)による累積位相である。この復調プロセスが固定離調周波数で実行される場合、すなわち、μ(t)=μの場合、結果として生じるパルスは振幅変調(AM)パルスであり、振幅Ω(t)は変調される。復調プロセスが固定振幅で、すなわち、Ω(t)=Ωで実行される場合、結果として生じるパルスは位相変調(PM)パルスであり、位相ψ(t)は変調される。位相ψ(t)が離調周波数μ(t)を変調することによって実装される場合、結果として生じるパルスは周波数変調(FM)パルスになる。復調プロセスは、振幅Ω(t)、位相ψ(t)(これにより、離調周波数μ(t))、信号処理の分野で知られている従来の復調方法によって出力最適パルスを構築するための周波数の任意の組み合わせ変調で実行できる。
例示的な復調プロセスの最初のステップは、t=ζ(j=0,1,…,N-1)でパルス関数g(-)(t)=Ω(t)sin(ψ(t))の零点を見つけることである。ここで、Nzはパルス関数g(-)(t)の零点の総数である。振幅Ω(t)は、振幅Ω(t)がゼロにならないように選択できる。したがって、sin(ψ(t))がゼロの場合(つまり、sin(ψ(ζ))=0)、パルス関数g(-)(t)はゼロになる。正弦関数の性質により、ψ(ζ)=jπ(j=0,1,…,N-1)の場合、パルスのゲート持続時間τの開始時と終了時の零点(すなわち、t=ζ=0及びt=ζNz-1=τ)も含め、sin(ψ(ζ))=0となる。
復調プロセスの第二のステップは、パルス関数g(-)(t)の零点に基づいて離調周波数μ(t)を計算することである。いくつかの実施形態では、離調周波数μ(t)は、パルス関数g(-)(t)の隣接する零点間の定数値として近似される(すなわち、ζj-1<t<ζに対してμ(t)≒μで,j=1,2,…,N-1)。
Figure 0007324869000031
のように離調周波数μ(t)により位相ψ(t)が蓄積されるため、t=ζとt=ζj-1の位相差は、
Figure 0007324869000032
となる。したがって、t=ζj-1とt=ζの間の離調周波数μは、μ=π/(ζ-ζj-1)して決定される。
復調プロセスの第三のステップは、振幅Ω(t)を計算することである。t=ζでのパルス関数g(-)(t)=Ω(t)sin(ψ(t))の時間微分は、
Figure 0007324869000033
であり、ここで、ψ(ζ)=jπ及び
Figure 0007324869000034
を使用する。したがって、t=ζでの振幅Ω(t)は、計算されたパルス関数
Figure 0007324869000035
(つまり、
Figure 0007324869000036
)の時間微分を使用して
Figure 0007324869000037
として計算される。
いくつかの実施形態では、計算された離調周波数μ(j=1,2,…,N-1)のセットがスプライン(例えば、1つ以上の多項式及び他の代数式によって区分的に定義された関数)で補間され、離調周波数μ(t)の補間された値は、振幅Ω(ζ)を計算するためのμ(ζ)に使用される。いくつかの実施形態では、μ(ζ)は、(i)μ、(ii)μj+1、及び(iii)(μ+μj+1)/2であり、振幅Ω(ζ)を計算するためにμ(ζ)として使用される。
いくつかの実施形態では、計算された振幅Ω(ζ)のセットも、またスプラインで補間して、時間依存振幅Ω(t)を計算する。
位相変調(PM)パルスの復調プロセスの場合、計算された位相ψ(ζ)のセットをスプラインで補間して、時間依存位相ψ(t)を計算することができる。
(XXゲート操作を実行するための出力最適パルスを生成する方法)
図7は、一実施形態に従って、N個のトラップイオンの鎖102の2つのイオン(i番目及びj番目のイオン)に対してXXゲート操作を実行するために使用される出力最適パルスを生成する方法700を表すフローチャートを示す。この例では、N個のトラップイオンの鎖102が量子レジスタである。上記の古典的コンピュータ内のソフトウェアプログラム及びコントローラは、方法700の実行中に生成された出力最適パルスの生成、及び量子レジスタ内の2つのイオンへの送達を決定して、制御するために使用される。
ブロック702において、運動モード(p=1,2,…,P)の周波数ωは、イオントラップ型量子コンピュータシステム100から直接測定され得、その結果、運動モード構造は、測定された周波数ωに基づいて計算され得る。ラムディッケパラメータηi,pは、運動モード構造、運動側波帯遷移を駆動するレーザビームの光子運動量、イオン質量、及び測定周波数ωによって決定される。ゲート持続時間τの値は、例えば、鎖102内のトラップイオンの数N、利用可能なレーザ出力などに基づいて選択され、出力最適パルスを生成するための入力パラメータとして使用される。
ブロック704~708では、出力最適パルスの振幅Ω(t)と離調周波数μ(t)を、選択されたゲート持続時間値と測定された周波数ωに基づいて、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件、及び出力最小化の条件が満たされるように、計算される。
ブロック704では、パルス関数
Figure 0007324869000038
のフーリエ係数A(n=1,2,…,N)は、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件
Figure 0007324869000039
を満たすように計算される。トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件を満たすフーリエ係数
Figure 0007324869000040
の自明でないセットは、N(=N-P)個ある。
ブロック706では、フーリエ係数
Figure 0007324869000041
の線形結合
Figure 0007324869000042
は、もつれ相互作用
Figure 0007324869000043
がゼロ以外であるという条件が満たされ、出力関数
Figure 0007324869000044
が最小化されるように計算される。計算された線形結合
Figure 0007324869000045
を使用して、パルス関数
Figure 0007324869000046
は計算される。
ブロック708では、計算されたパルス関数g(-)(t)が復調され、g(-)(t)=Ω(t)sin(ψ(t))を介して、振幅Ω(t)と離調周波数μ(t)が計算される。ここで、累積位相
Figure 0007324869000047
は離調周波数μ(t)に関連している。計算されたパルス関数g(-)(t)を復調するには、第一に、t=ζ(j=0,1,…,N-1)で計算されたパルス関数g(-)(t)の零点である(すなわち、g(ζ)=0)。ここで、Nzは計算されたパルス関数g(-)(t)の零点の数である。パルスのゲート持続時間τの開始時と終了時(t=ζ=0及びt=ζNz-1=τ)に、計算されたパルス関数g(-)(t)はゼロである。第二に、離調周波数μ(t)は、パルス関数g(-)(t)の零点に基づいて計算される。いくつかの実施形態では、離調周波数μ(t)は、パルス関数g(-)(t)の隣接する零点間の定数値として近似され(すなわち、ζj-1<t<ζに対してμ(t)≒μで,=1,2,…,N-1)、各値μはμ=π/(ζ-ζj-1)して計算される。第三に、振幅Ω(t)は、計算された離調周波数μ(t)と、計算されたパルス関数g(-)(t)の時間微分g’(t)に基づいて、
Figure 0007324869000048
として計算される。いくつかの実施形態では、計算された離調周波数μ(j=1,2,…,N-1)のセットがスプライン(例えば、1つ以上の多項式及び他の代数式によって区分的に定義された関数)で補間され、離調周波数μ(t)の補間された値は、振幅Ω(ζ)を計算するためのμ(ζ)に使用される。いくつかの実施形態では、μ(ζ)は、(i)μ、(ii)μj+1、及び(iii)(μ+μj+1)/2であり、振幅Ω(ζ)を計算するためにμ(ζ)として使用される。いくつかの実施形態では、計算された振幅Ω(ζ)のセットも、またスプラインで補間して、時間依存振幅Ω(t)を計算する。
位相変調(PM)パルスの復調プロセスの場合、計算された位相ψ(ζ)のセットをスプラインで補間して、時間依存位相ψ(t)を計算することができる。
ブロック710において、決定された振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)を有するパルスが、レーザの振幅及び周波数を調整することによって生成される。生成されたパルスは、N個のトラップイオンの鎖102の2つのキュービット(i番目及びj番目のキュービット)に適用されて、2つのキュービットに対してXXゲート操作を実行する。ブロック702~710で生成されるパルスは、必要なレーザ出力が最小化されるという点で最適である。
ブロック710の間に生成されたパルスを2つのキュービットに適用することは、選択された量子アルゴリズムが分解される一連のユニバーサルゲート{R、XX}操作の中でXXゲート操作を実装する。一連のユニバーサルゲート{R、XX}操作のすべてのXXゲート操作(XXゲート)は、選択された量子アルゴリズムを実行するために、単一キュービット操作(Rゲート)とともに上記の方法700によって実装される。選択された量子アルゴリズムの実行の最後に、量子レジスタ(トラップイオンの鎖102)内のキュービット状態(トラップイオン)の集団が、イメージング対物レンズ104によって測定(読み出し)され、PMT106にマッピングされる。こうして、選択された量子アルゴリズム内の量子コンピューティングの結果を決定し、古典的コンピュータ(例えば、デジタルコンピュータ)への入力として提供できるようにする。次に、量子コンピューティングの結果を古典的コンピュータで使用することで、所望のアクティビティを実行したり、古典的コンピュータだけでは通常は解明できない、及び妥当な時間内に解明できない問題の解決策を取得したりすることができる。今日の従来のコンピュータ(すなわち、古典的コンピュータ)によって手に負えない、及び解明できないことが知られているが、実行された量子コンピューティングから得られた結果を使用することによって解決できる問題には、複雑な分子の特性のシミュレーション及び材料、大きな整数の因数分解が含まれるが、これらに限定されない。
以下に、上記の方法700に従って生成された出力最適パルスの例を示す。実施例1では、振幅Ω(t)と離調周波数μ(t)を制御パラメータとして調整する。実施例2では、振幅Ω(t)のみを制御パラメータとして調整する。
(実施例1)
図8Aは、5つのトラップイオンの鎖102の第一のイオンと第三のイオンでXXゲート操作(最大もつれ、θi,j=π/8)を引き起こすために使用される出力最適パルス関数g(-)(t)の例を示す。この例では、パルスの振幅Ω(t)と離調周波数μ(t)は、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件(θi,j=π/8)、及び出力最小化の条件が満たされるように、決定される制御パラメータである。ゲート持続時間τは80μsである。鎖102のp番目の運動モードの周波数ωと、i番目のイオン及びp番目の運動モードηi,pのラムディッケパラメータは、それぞれ表I及び表IIに列挙されている。出力最適パルス関数g(-)(t)を決定する際に、N=1000を使用した。
Figure 0007324869000049
Figure 0007324869000050
図8に示す出力最適パルス関数g(-)(t)=Ω(t)sin(ψ(t))は、パルスの振幅Ω(t)に対応するゆっくりと変化する包絡波関数802と、sin(ψ(t))に対応する速く変化する振動804とに分解できる。ここで、累積位相
Figure 0007324869000051
は離調周波数μ(t)に関連している。急速に変化する振動804を生じさせる離調周波数μ(t)806が図8Bに示されている。5つのトラップイオンの鎖102の第一のイオンと第三のイオンとの間でXXゲート操作を実行するために使用される出力最適パルスは、パルスの振幅Ω(t)802及び離調周波数μ(t)806に基づいて構築することができる。本明細書で説明するように、イオンのペアに適用してイオンのペアに対してXXゲート操作を実行するパルスを構築する方法は、(i)パルス関数g(-)を決定するステップと、(ii)決定されたパルス関数g(-)を生じさせる振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)を決定するステップと、(iii)決定された振幅Ω(t)及び離調周波数μ(t)を有するパルスを構築するステップと、を含む。
(実施例2)
図9は、5つのトラップイオンの鎖102の第一のイオンと第三のイオンでXXゲート操作(最大もつれ、θi,j=π/8)を引き起こすために使用される出力最適パルス関数g(-)(t)の例を示す。この例では、パルスは11の段階的なパルスセグメントに分割され、離調周波数μ(t)はμ/(2π)=2.42MHzに固定され、パルスの振幅(つまり、一連の振幅)のみが、トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件、もつれ相互作用がゼロ以外であるという条件(θi,j=π/8)、及び出力最小化の条件が満たされるように決定される制御パラメータである。この例で選択されたゲート持続時間τは、76.45μsである。鎖102のp番目の運動モードの周波数ωと、i番目のイオン及びp番目の運動モードηi,pのラムディッケパラメータは、それぞれ表I及び表IIに列挙されている。
実施例2(離調周波数μ(t)は固定されている)のパルスを構成するために必要なレーザ出力は、実施例1の図8A及び図8B(離調周波数μ(t)は調整する制御パラメータである)に関連してパルスを構成するために必要なレーザ出力よりも約30%高いことが見出された。これは、離調周波数が固定されたパルスには、必要なレーザ出力を最小化するように変調できる離調周波数μ(t)に関連する追加の自由度がないために、予想される。さらに、パルスの決定された振幅Ω(t)は、隣接する段階的なパルスセグメント間の遷移で、必要なレーザ出力(パルスの振幅の絶対値に関連)に急激な変化をもたらし、リンギングとギブズ現象として知られる現象が発生し、実際のXXゲート操作の忠実度が低下する可能性がある。実施例1で構築されたパルスは、急激な変化を排除するため、XXゲート操作の忠実度が向上する。
図10は、実施例1で構築されたパルスを適用することによって実行されるXXゲート操作の不忠実度の例を示す。この例では、p番目の運動モード(p=1,2,…,5)の周波数ωがΔωだけ等しくシフトされる。安定化1002を伴わないXXゲート操作の不忠実度は、運動モードの周波数ωの変動Δωが増加するにつれて実質的に増加する。その理由は、パルスを決定するために、トラップイオンを元の位置及び運動量値に戻すための条件及びもつれ相互作用がゼロ以外であるという条件が、p番目の運動モードの周波数ωpに関連し、運動モードの周波数ωのシフトに敏感だからである。したがって、不正確な周波数ω(すなわち、実際の周波数とは異なる周波数)を使用して決定されたパルスは、XXゲート操作を不正確にする(すなわち、所望のXXゲート操作とは異なる)。一次安定化1004が適用されるXXゲート操作の不忠実度は、運動モードの周波数の小さな変動Δωに対して低いまま(最大3kHz)である。すなわち、XXゲート操作は、一次安定化により、運動モードの周波数の変動に対してロバストになる。しかしながら、安定化に伴って、必要なレーザ出力は、例えば、本明細書に記載の例では最大40%増加する。したがって、安定化の程度と必要なレーザ出力の最適化の間にはトレードオフがある。
図11は、実施例1で上記のように構築されたパルスを適用することによって得られ、結果として生じるもつれ相互作用χi,j(τ)の例を示す。p番目の運動モード(p=1,2,…,5)の周波数ωがΔωだけ等しくシフトされる例では、結果として生じるもつれ相互作用χi,j(τ)は、図11で1102として示されるように変化する。p番目の運動モード(p=1,2,…,5)の周波数ωが独立してシフトするように選択される例では、結果として生じるもつれ相互作用χi,j(τ)は、運動モードp=1の周波数ωのシフトΔωとして変化し、図11で1104として示されるように変化する。結果として生じるもつれ相互作用の値が不正確な場合(すなわち、結果として生じるもつれ相互作用が所望の値θi,jとは異なる場合)、XXゲート操作が不正確になり(すなわち、所望のXXゲート操作とは異なる)、XXゲート操作の不忠実度が増加する。もつれ相互作用の値を較正することにより、XXゲート操作の不忠実度を減らすことができる。運動モードの周波数ωに変動がある場合、結果として生じるもつれ相互作用χi,j(τ)は、パルスΩ(t)の振幅を変更することにより、所望の値θi,j(τ)に較正できる。
上記のように、2つのキュービット間でもつれゲート操作を実行するためのパルスを生成する際に、制御パラメータ(パルスの振幅及び離調周波数)は、必要なレーザ出力が最小化されるように決定され、結果として生じるパルスは、ゲート持続時間τが固定されている場合は最小出力の要件で、又はレーザ出力バジェットが固定されている場合は最短ゲート持続時間で、2つのキュービットに適用される。さらに、もつれゲート操作が外部エラーに対して安定化され、もつれゲート操作の忠実度が向上するようにパルスを構築することができる。
さらに、制御パラメータを決定することは、一組の線形方程式を解くことを含む。したがって、制御パラメータを決定し、続いて出力最適なパルスを構築することは、所望のXXゲート操作を実行するために効率的な方法で実行することができる。XXゲート操作は、異なるパルスを使用して他のイオンのペアに対して実行され、量子レジスタで所望の量子アルゴリズムを実行する。所望の量子アルゴリズムの実行の最後に、量子レジスタ内のキュービット状態(トラップイオン)の集団が測定(読み出し)されるため、所望の量子アルゴリズムを使用した量子コンピューティングの結果を決定し、古典的コンピュータに提供し、古典的コンピュータでは手に負えないこともある問題の解決策を得るために使用することができる。
さらに、出力最適パルスの周波数成分が計算される。したがって、そのような出力最適パルスは、複数の周波数を有するマルチトーンレーザによって直接実装することができる。
上記は特定の実施形態を対象としているが、他のさらなる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。

Claims (40)

  1. 量子コンピュータ内の2つのトラップイオン間のもつれ操作を実行する方法であって、
    量子コンピュータにおいてトラップイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンにシステムコントローラによって適用されるレーザビームのパルスのゲート持続時間値を古典的コンピュータによって選択するステップであって、
    前記トラップイオンのそれぞれは、キュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、
    トラップイオンの前記鎖の運動モードは、それぞれ異なる周波数を有する、ステップと、
    選択された前記ゲート持続時間値とトラップイオンの前記鎖の前記運動モードの周波数に基づいて、前記パルスのパルス関数のフーリエ係数を前記古典的コンピュータによって計算するステップと、
    計算された前記フーリエ係数を有する前記パルスの前記パルス関数を前記古典的コンピュータによって復調して、前記パルスの振幅及び離調周波数値を計算するステップと、
    計算された前記振幅と計算された前記離調周波数値を有する前記パルスを、前記ゲート持続時間値の前記第一のイオンと前記第二のイオンに前記システムコントローラによって適用することによって、前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間でもつれ操作を実行するステップと、
    含む、方法。
  2. 前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を前記古典的コンピュータによって選択するステップ
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための前記条件が、前記鎖の前記運動モードの前記周波数のドリフトに関して一次まで静止するように、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を前記古典的コンピュータによって選択するステップ
    をさらに含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記第一のイオンと前記第二のイオンの間のもつれ相互作用がゼロ以外であるという条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を前記古典的コンピュータによって選択するステップ
    をさらに含む、請求項2に記載の方法。
  5. 前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間のゼロ以外のもつれ相互作用値が、ゼロとπ/8との間である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記鎖の前記運動モードの前記周波数のドリフトに対して、前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間に生じるもつれ相互作用を安定化するための条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を前記古典的コンピュータによってさらに選択するステップ
    をさらに含む、請求項4に記載の方法。
  7. 前記パルスを適用する前に、前記振幅を修正して、前記レーザビームの強度に前記ゼロ以外のもつれ相互作用値の変動が存在する中で、結果として生じるもつれ相互作用を前記古典的コンピュータによって較正するステップ
    をさらに含む、請求項5に記載の方法。
  8. 広帯域パルスシーケンスをトラップイオンの前記鎖内の全てのトラップイオンに前記システムコントローラによって適用して、前記第一のイオン及び前記第二のイオンの前記運動モードとの結合強度に変動が存在する中で、結果として生じるもつれ相互作用を安定化するステップ
    をさらに含む、請求項4に記載の方法。
  9. 前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記パルスの間に前記第一のイオン及び前記第二のイオンに提供される前記レーザビームの出力を最小化することに基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を前記古典的コンピュータによってさらに選択するステップ
    をさらに含む、請求項4に記載の方法。
  10. 前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間のもつれ相互作用がゼロ以外であるという条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を前記古典的コンピュータによってさらに選択するステップ
    をさらに含む、請求項4に記載の方法。
  11. 前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間のゼロ以外のもつれ相互作用値が、ゼロとπ/8との間である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記鎖の前記運動モードの前記周波数のドリフトに対して、前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間に生じるもつれ相互作用を安定化するための条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を前記古典的コンピュータによってさらに選択するステップ
    をさらに含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記パルスを適用する前に、前記振幅を修正して、前記レーザビームの強度に前記ゼロ以外のもつれ相互作用値の変動が存在する中で、結果として生じるもつれ相互作用を前記古典的コンピュータによって較正するステップ
    をさらに含む、請求項11に記載の方法。
  14. 広帯域パルスシーケンスをトラップイオンの前記鎖内の全てのトラップイオンに前記システムコントローラによって適用して、前記第一のイオン及び前記第二のイオンの前記運動モードとの結合強度に変動が存在する中で、結果として生じるもつれ相互作用を安定化するステップ
    をさらに含む、請求項10に記載の方法。
  15. 前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記パルスの間に前記第一のイオン及び前記第二のイオンに提供される前記レーザビームの出力を最小化することに基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を前記古典的コンピュータによってさらに選択するステップ
    をさらに含む、請求項4に記載の方法。
  16. 前記パルスは、前記ゲート持続時間値の中間点に関して対称である、請求項1に記載の方法。
  17. 前記パルスは、前記ゲート持続時間値の中間点に関して反対称である、請求項1に記載の方法。
  18. 前記パルスの前記パルス関数を復調するステップは、
    計算された前記フーリエ係数を有する前記パルス関数を一連の時間依存パルスセグメントに前記古典的コンピュータによって変換するステップであって、各時間依存パルスセグメントは、別個の振幅値、別個の離調値、及びレーザビームの位相を有する、ステップ
    を含む、請求項1に記載の方法。
  19. 前記時間依存パルスセグメントがスプラインで補間される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記古典的コンピュータのプロセッサによって、前記古典的コンピュータの不揮発性メモリに記憶されているソフトウェアプログラムを実行するステップ
    をさらに含み、実行された前記ソフトウェアプログラムは、少なくとも1つの計算を実行する必要があり、少なくとも1つの計算を実行することは、
    前記古典的コンピュータの前記プロセッサによって、トラップイオンの前記鎖に実装される量子アルゴリズムを選択するステップと、
    選択した前記量子アルゴリズムを一連のユニバーサル論理ゲートにコンパイルするステップと、
    前記一連のユニバーサル論理ゲートをパルスに変換して、トラップイオンの前記鎖内のイオンのペアに適用するステップと、
    トラップイオンの前記鎖内のイオンのキュービット状態の集団を測定するステップと、
    前記キュービット状態の測定された前記集団に基づいて、前記古典的コンピュータの前記プロセッサによって、トラップイオンの前記鎖内のイオンの前記キュービット状態に対応する量子情報を処理するステップと、
    処理された前記量子情報に基づいて計算結果を生成するステップと
    を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
  21. トラップイオンの鎖であって、前記トラップイオンのそれぞれは、キュービット状態と励起状態を定義する2つの超微細状態を有する、トラップイオンの鎖と、
    前記トラップイオンのそれぞれに提供される2つ以上の非共伝搬レーザビームに分割されるレーザビームを放出するように構成された1つ以上のレーザであって、前記2つ以上の非共伝搬レーザビームは、前記励起状態を介して2つの超微細状態の間の前記トラップイオンのそれぞれのラビフロップを引き起こすように構成される、1つ以上のレーザと、
    内部に記憶されたいくつかの命令を有する不揮発性メモリを備えるコントローラと、
    を含む、量子コンピューティングシステムであって、
    前記命令は、プロセッサによって実行されると、前記量子コンピューティングシステムに、
    トラップイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンに適用されるレーザビームのパルスのゲート持続時間値を選択するステップであって、
    前記トラップイオンのそれぞれは、キュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、
    トラップイオンの前記鎖の運動モードは、それぞれ異なる周波数を有する、ステップと、
    選択された前記ゲート持続時間値とトラップイオンの前記鎖の前記運動モードの周波数に基づいて、前記パルスのパルス関数のフーリエ係数を計算するステップと、
    計算された前記フーリエ係数を有する前記パルスの前記パルス関数を復調して、前記パルスの振幅及び離調周波数値を計算するステップと、
    計算された前記振幅と計算された前記離調周波数値を持つパルスを、前記ゲート持続時間値の前記第一のイオンと前記第二のイオンに適用することによって、前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間でもつれ操作を実行するステップと、
    を含む操作を実行させる、量子コンピューティングシステム。
  22. 前記トラップイオンのそれぞれは、1/2の超微細状態を有する171Ybであり、前記レーザは、355nmのモードロックレーザである、
    請求項21に記載の量子コンピューティングシステム。
  23. 前記操作は、前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を選択するステップ
    をさらに含む、請求項21に記載の量子コンピューティングシステム。
  24. 前記操作は、前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記トラップイオンを元の位置と運動量値に戻すための前記条件が、前記鎖の前記運動モードの前記周波数のドリフトに関して一次まで静止するように、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を選択するステップ
    をさらに含む、請求項23に記載の量子コンピューティングシステム。
  25. 前記操作は、前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記第一のイオンと前記第二のイオンの間のもつれ相互作用がゼロ以外であるという条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を選択するステップ
    をさらに含む、請求項23に記載の量子コンピューティングシステム。
  26. 前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間のゼロ以外のもつれ相互作用値が、ゼロとπ/8との間である、請求項25に記載の量子コンピューティングシステム。
  27. 前記操作は、前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記鎖の前記運動モードの前記周波数のドリフトに対して、前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間に生じるもつれ相互作用を安定化するための条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数をさらに選択するステップ
    をさらに含む、請求項25に記載の量子コンピューティングシステム。
  28. 前記パルスを適用する前に、前記振幅を修正して、前記レーザビームの強度に前記ゼロ以外のもつれ相互作用値の変動が存在する中で、結果として生じるもつれ相互作用を較正するステップ
    をさらに含む、請求項25に記載の量子コンピューティングシステム。
  29. 広帯域パルスシーケンスをトラップイオンの前記鎖内の全てのトラップイオンに適用して、前記第一のイオン及び前記第二のイオンの前記運動モードとの結合強度に変動が存在する中で、結果として生じるもつれ相互作用を安定化する、請求項25に記載の量子コンピューティングシステム。
  30. 前記操作は、前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記パルスの間に前記第一のイオン及び前記第二のイオンに提供される前記レーザビームの出力を最小化することに基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数をさらに選択するステップ
    をさらに含む、請求項25に記載の量子コンピューティングシステム。
  31. 前記操作は、前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記第一のイオンと前記第二のイオンの間のもつれ相互作用がゼロ以外であるという条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を選択するステップ
    をさらに含む、請求項21に記載の量子コンピューティングシステム。
  32. 前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間のゼロ以外のもつれ相互作用値が、ゼロとπ/8との間である、請求項31に記載の量子コンピューティングシステム。
  33. 前記操作は、前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記鎖の前記運動モードの前記周波数のドリフトに対して、前記第一のイオンと前記第二のイオンとの間に生じるもつれ相互作用を安定化するための条件に基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数を選択するステップ
    をさらに含む、請求項31に記載の量子コンピューティングシステム。
  34. 前記操作は、前記ゲート持続時間値を修正して、前記レーザビームの強度に前記ゼロ以外のもつれ相互作用値の変動が存在する中で、結果として生じるもつれ相互作用値を較正するステップ
    をさらに含む、請求項31に記載の量子コンピューティングシステム。
  35. 広帯域パルスシーケンスをトラップイオンの前記鎖内のすべてのトラップイオンに適用して、前記第一のイオン及び前記第二のイオンの前記運動モードとの結合強度に変動が存在する中で、結果として生じるもつれ相互作用値を較正する、請求項31に記載の量子コンピューティングシステム。
  36. 前記操作は、前記パルスの前記パルス関数を復調する前に、前記パルスの間に前記第一のイオン及び前記第二のイオンに提供される前記レーザビームの出力を最小化することに基づいて、前記パルス関数の計算された前記フーリエ係数をさらに選択するステップ
    をさらに含む、請求項31に記載の量子コンピューティングシステム。
  37. 前記パルスは、前記ゲート持続時間値の中間点に関して対称である、請求項21に記載の量子コンピューティングシステム。
  38. 前記パルスは、前記ゲート持続時間値の中間点に関して反対称である、請求項21に記載の量子コンピューティングシステム。
  39. 前記パルスの前記パルス関数を復調するステップは、
    計算された前記フーリエ係数を有する前記パルス関数を一連の時間依存パルスセグメントに変換するステップであって、各時間依存パルスセグメントは、別個の振幅値、別個の離調値、及びレーザビームの位相を有する、ステップ
    をさらに含む、請求項31に記載の量子コンピューティングシステム。
  40. 前記時間依存パルスセグメントがスプラインで補間される、請求項39に記載の量子コンピューティングシステム。
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