JP7219826B2 - 量子論理ゲートの設計および最適化 - Google Patents

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Description

本開示は、一般に、イオントラップ型量子コンピュータにおいて、もつれゲートを生成する方法に関し、より具体的には、パルスシーケンスを最適化してもつれゲートを生成する方法に関する。
量子コンピューティングでは、古典的なデジタルコンピュータにおける「0」と「1」を表すビットに類似した量子ビット又はキュービットの状態をほぼ完全な精度で決定するために、量子ビット又はキュービットを準備し、操作し、測定する必要がある。制御が不完全であると、計算プロセスにおいて誤差が蓄積することがあり、信頼性の高い計算が可能な量子回路のサイズが制限される。量子回路のサイズを大きくするためには、正確なゲートが必要である。これにより、量子コンピュータは、古典的なコンピュータでは扱いにくい問題を解決するアルゴリズムを実装することができるようになる。
大規模な量子コンピュータを構築するために提案されている物理システムの中に、電磁界によってトラップされて真空中に浮遊するイオンの鎖(例えば、電荷を帯びた原子)がある。イオンは、数GHz範囲内の周波数によって分離され、キュービットの計算状態(「キュービット状態」と呼ばれる)として使用することができる超微細状態を有する。これらのキュービット状態は、レーザから提供される放射線を使用して(場合によっては本明細書ではレーザビームとの相互作用と呼ばれることもある)制御し読み取ることができる。トラップされたイオンは、このようなレーザ相互作用を使用して、運動基底状態の近くまで冷却することができる。個々のキュービットは、2つの超微細状態のいずれかに高精度で光学的に励起し(キュービットの準備ステップ)、レーザビームにより2つの超微細状態間で操作することができ(単一キュービットのゲート操作)、共鳴レーザビームの適用時に蛍光によってそれらの状態が検出される。1ペアのキュービットは、トラップされたイオン間のクーロン力の相互作用により発生する、トラップされたイオンの鎖の集合運動モードに個々のキュービット状態を結合するレーザパルスを使用して、キュービット状態に依存する力によって制御可能にもつれることができる(2キュービットのゲート操作)。
イオンの鎖のサイズが大きくなると、これらのゲート操作は、外部ノイズ、デコヒーレンス、速度制限などの影響を受けやすくなる。したがって、例えば、これらの問題を回避するもつれゲートを実装するために、レーザパルスシーケンスを最適化する方法が必要である。
量子コンピュータにおいて2つのトラップされたイオン間のもつれ操作を実行する方法は、
ゲート持続時間値と、トラップされたイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンに対してゲートもつれ操作を実行するために使用されるパルスシーケンスの離調値とを選択するステップであって、トラップされたイオンのそれぞれが2つの周波数分離電子状態を有し、パルスシーケンスが複数のパルスセグメントを含む、ステップと、トラップされたイオンの鎖が整列する方向に垂直な方向で、トラップされたイオンの鎖の集合運動モードの周波数を測定するステップと、ゲート持続時間値、選択された離調値、及び測定された集合運動モードの周波数に基づいて、第一のイオンと第二のイオンの間のもつれ相互作用の値を計算し、第一のイオンと第二のイオンの集合運動モードの位相空間軌道の値を計算するステップと、計算されたもつれ相互作用の値及び計算された位相空間軌道の値に基づいて、複数のパルスセグメントのそれぞれの強度を決定するステップと、複数のパルスセグメントを接続することによってパルスシーケンスを生成するステップであって、複数のパルスセグメントのそれぞれが、決定された強度と、各パルスセグメントの開始点及び終了点にスプラインを使用して形成されたランプ(ramps)を備えたパルス形状を有する、ステップと、生成されたパルスシーケンスを第一のイオンと第二のイオンに適用するステップと、を含む。
本開示の上記特徴を詳細に理解することができるように、上で簡単に要約された本開示のより具体的な記載は、いくつかが添付の図面に示されている実施形態を参照することによって説明することができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを説明しており、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。なぜなら、本開示は、他の同等に有効な実施形態を認めることができるからである。
一実施形態に係るイオントラップ型量子コンピュータの部分図である。 一実施形態に係る、イオンを鎖に閉じ込めるイオントラップの概略図を示す。 図3A、図3B、及び図3Cは、トラップされた5つのイオンの鎖のいくつかの概略的な集合横運動モード構造を示す。 一実施形態に係る、トラップされたイオンの鎖内の各イオンの概略エネルギー図を示す。 ブロッホ球の表面上の点として表されるイオンのキュービット状態を示す。 図6A及び図6Bは、一実施形態に係る、各イオンの運動側波帯スペクトル及び運動モードの概略図を示す。 トラップされた7つのイオンの鎖に対してXXゲート操作を実行する段階的パルスセグメントのセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を示す。 XXゲート操作中の非共鳴キャリア励起の瞬間的及び時間平均集団のシミュレーション結果を示す。 一実施形態に係る、トラップされた7つのイオンの鎖に対してXXゲート操作を実行するための、段階的なランプを有するパルスのセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を示す。 XXゲート操作中の非共鳴キャリア励起の瞬間的及び時間平均集団の改善された結果を示す。 XXゲート操作中の位相空間軌道を示す。 XXゲート操作中の位相空間軌道を示す。 一実施形態に係る、XXゲート操作を実行するための改善又は最適化されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を生成する方法を説明するフローチャートを示す。 各イオンを横方向に閉じ込めるRFばね定数及びDCばね定数を有するトラップされた7つのイオンの鎖を示す。 一実施形態に係る、トラップされたイオンの鎖の実際の運動モード構造を生成し決定する方法を説明するフローチャートを示す。 一実施形態に係る方法で修正されたトラップされた7つのイオンの鎖の運動モード構造の例を示す。 一実施形態に係る方法で修正されたトラップされた7つのイオンの鎖の運動モード構造の例を示す。 理想的な運動モード構造と実際の運動モード構造を使用して得られたパルスシーケンスの比較を示す。 一実施形態に係る、位相オフセットを決定し、XXゲート操作を校正する方法を説明するフローチャートを示す。 位相オフセットを決定するゲートシーケンスの概略図を示す。 超微細基底状態の集団の例を示す。 2つのキュービットのパリティ測定のためのゲートシーケンスの概略図を示す。 解析位相がスキャンされるときのパリティ振動を示す。 一実施形態に係るゲート持続時間及び離調を最適化する方法を説明するフローチャートを示す。 一実施形態に係る、離調がスキャンされるときの、トラップされた13個のイオンの鎖に対して決定されたパルスセグメントの強度の変化を示す。 計算されたXXゲート操作の離調誘導不忠実度を示す。 トラップされた13個のイオンの鎖の運動モード周波数のシミュレートされた周波数シフトを示す。
理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用する。図及び以下の説明では、X軸、Y軸、及びZ軸を含む直交座標系を使用する。図面の矢印で表される方向は、便宜上、正の方向であると想定される。いくつかの実施形態で開示された要素は、具体的な明記なく、他の実装で有益に利用されてよいと考えられる。
本明細書に記載の実施形態は、一般に、量子計算中に2つのイオン間のゲートもつれ操作を実行するために使用されるパルスシーケンスを設計、最適化、及び供給する方法及びシステムに関し、より具体的には、2つのイオン間のゲートもつれ操作の、忠実度又は少なくとも2つのイオンが所期の量子状態にある確率を高めるパルスシーケンスに関する。最適化されたパルスシーケンスは、それぞれの少なくとも一部の強度がスプライン(例えば、1つ以上の多項式又は他の代数式によって区分的に定義された関数)を使用して開始点及び終了点で徐々に傾斜する所望の強度のレベルを有する複数の時間セグメント化パルスを含むため、ゲートもつれ操作の忠実度を高める。
量子計算では、いくつかの既知のユニバーサルゲートセットの1つを使用して、任意の数の所望の計算操作を構築することができる。ユニバーサル量子コンピュータは、ユニバーサルゲートセットを使用して構築することができる。ユニバーサルゲートセットは、通常{R、XX}で表されるユニバーサルゲートセットを含み、それは本明細書に記載のトラップされたイオンの量子コンピューティングシステムに固有のものである。ここで、ゲートRは、トラップされたイオンの個々の量子状態の操作に対応し、ゲートXXは、2つのトラップされたイオンのもつれ操作に対応する。当業者にとって明らかであるように、ゲートRは、ほぼ完全な忠実度で実装できるが、ゲートXXの形成は、複雑なので、ゲートXXの忠実度を向上させ、量子コンピュータ内の計算の誤差を回避又は削減するためには、いくつかの要因を挙げれば、トラップされたイオンの所定のタイプと、トラップされたイオンの鎖内のイオンの数と、トラップされたイオンがトラップされるハードウェア及び環境との最適化が必要である。以下では、向上した忠実度を有するゲートXXの形成に基づいて計算を実行するために使用されるパルスシーケンスを生成し最適化する方法を説明する。
(一般的なハードウェア構成)
図1は、一実施形態に係るイオントラップ型量子コンピュータ又はシステム100の部分図である。システム100は、Z軸に沿って延びる、トラップされたイオン(例えば、5つが示される)の鎖102を含む。例えば、開口数(NA)が0.37の対物レンズなどのイメージング対物レンズ104は、イオンからY軸に沿って蛍光を収集し、個々のイオンを測定するために、各イオンをマルチチャネル光電子増倍管(PMT)106にマッピングする。X軸に沿って提供される、レーザ108からの逆伝播ラマンレーザビームは、イオンに対して操作を実行する。回折ビームスプリッタ110は、マルチチャネル音響光学変調器(AOM)114を使用して個別に切り替えられる静的ラマンビーム112のアレイを作成し、かつ個々のイオンに選択的に作用するように構成される。グローバルラマンレーザビーム116は、すべてのイオンを一度に照射する。AOM114は、中央処理装置(CPU)120、読み取り専用メモリ(ROM)122、ランダムアクセスメモリ(RAM)124、記憶部126などを含むRFコントローラ118(「情報処理システム」と呼ばれる)によって制御される。CPU120は、RFコントローラ118のプロセッサである。ROM122は、様々なプログラムを記憶し、RAM124は、様々なプログラム及びデータの作業メモリである。記憶部126は、ハードディスクドライブ(HDD)又はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含み、電源が切られても様々なプログラムを記憶する。CPU120、ROM122、RAM124、及び記憶部126は、バス128を介して相互接続されている。RFコントローラ118は、ROM122又は記憶部126に記憶され、RAM124を作業領域として使用する制御プログラムを実行する。制御プログラムは、データの受信、分析、及び本明細書で説明されたイオントラップ型量子コンピュータシステム100を作成するために使用される方法及びハードウェアの全ての態様の制御に関連する様々な機能を実行するためにプロセッサによって実行することができるプログラムコードを含むソフトウェアアプリケーションを含む。
図2は、一実施形態に係る、鎖102内にイオンを閉じ込めるイオントラップ200(ポールトラップとも呼ばれる)の概略図を示す。閉じ込め電位は、静的(DC)電圧と無線周波数(RF)電圧の両方によって印加される。静的(DC)電圧VSがエンドキャップ電極210及び212に印加されて、Z軸(「軸方向」又は「縦方向」とも呼ばれる)に沿ってイオンを閉じ込める。鎖102内のイオンは、イオン間のクーロン相互作用のために、軸方向にほぼ均等に分布している。いくつかの実施形態では、イオントラップ200は、Z軸に沿って延びる4つの双曲線形状の電極202、204、206、及び208を含む。
操作中、(振幅VRF/2を有する)正弦波電圧V1は、対向する一対の電極202、204に印加され、正弦波電圧Vから180°の位相シフト(及び振幅VRF/2を有する正弦波電圧Vは、駆動周波数ωRFで対向する他対の電極206、208に印加されて、四重極電位を生成する。いくつかの実施形態では、正弦波電圧は、対向する一対の電極202、204のみに印加され、対向する他対の206、208は、接地される。四重極電位は、トラップされた各イオンに対してZ軸に垂直なX-Y平面(「半径方向」又は「横方向」とも呼ばれる)に有効な閉じ込め力を生成し、その閉じ込め力は、RF電界が消失する鞍点(すなわち、軸方向(Z方向)の位置)からの距離に比例する。各イオンの半径方向(すなわち、X-Y平面の方向)の運動は、半径方向の鞍点に向かう復元力を伴う調和振動(経年運動と呼ばれる)として近似され、それぞれ以下でより詳細に説明されるようなばね定数kとkによってモデル化できる。いくつかの実施形態では、半径方向のばね定数は、四重極電位が半径方向に対称である場合に等しいものとしてモデル化される。しかしながら、望ましくない場合には、半径方向のイオンの運動は、物理的なトラップ構成のある程度の非対称性、電極の表面の不均一性による小さなDCパッチ電位などのために歪む場合があり、これら及び他の外部の歪みの原因により、イオンは、鞍点から中心を外れる場合がある。
(トラップされたイオン構成と量子ビット情報)
図3A、図3B、及び図3Cは、例えば、トラップされた5つのイオンの鎖102のいくつかの概略的な集合横運動モード構造(単に「運動モード構造」とも呼ばれる)を示す。本明細書では、エンドキャップ電極210及び212に印加された静的電圧Vsによる閉じ込め電位は、半径方向の閉じ込め電位と比較して弱い。トラップされたイオンの鎖102の横方向の集合運動モードは、イオントラップ200によって生成された閉じ込め電位とトラップされたイオン間のクーロン相互作用との組み合わせによって決定される。トラップされたイオンは、集合横方向運動(「集合横運動モード」、「集合運動モード」、又は単に「運動モード」と呼ばれる)を起こし、各モードには、それに関連する異なるエネルギーがある。以下では、エネルギーがm番目に低い運動モードを│n>と呼び、ここで、nは、運動モードの運動量子の数(エネルギー励起の単位で、フォノンと呼ばれる)を表し、所定の横方向の運動モードの数は、鎖102内のトラップされたイオンの数Nに等しい。図3A~図3Cは、鎖102内に配置された5つのトラップされたイオンによって経験され得る異なるタイプの集合横運動モードの例を概略的に説明する。図3Aは、最も高いエネルギーを有する一般的な運動モード│n>の概略図であり、ここで、Nは、鎖102内のトラップされたイオンの数である。一般的な運動モード│n>では、すべてのイオンは、横方向に同位相で振動する。図3Bは、2番目に高いエネルギーを有する傾斜運動モード│n>N-1の概略図である。傾斜運動モードでは、両端のイオンは、横方向に位相がずれて(すなわち、反対方向に)移動する。図3Cは、傾斜運動モード│n>N-1よりもエネルギーが低く、イオンがより複雑なモードパターンで移動する高次運動モード│n>N-3の概略図である。
なお、上記特定の構成は、本開示のイオンを閉じ込めるトラップのいくつかの可能な例のうちの1つに過ぎず、本開示によるトラップの可能な構成、仕様などを限定するものではない。例えば、電極の形状は、上記双曲線電極に限定されない。他の例では、調和振動として半径方向にイオンの運動を引き起こす実効電界を生成するトラップは、複数の電極層が積層され、対角線上にある2つの電極にRF電圧が印加される多層トラップでも、あるいは全ての電極がチップ上の単一平面に配置されている表面トラップであってよい。さらに、トラップは、複数のセグメントに分割することができ、その隣接するペアが1つ以上のイオンを往復させてリンクすることも、あるいは光子相互接続によって結合することもできる。トラップは、また、微細加工されたイオントラップチップ上に互いに近接して配置された個々のトラップ領域のアレイであってよい。いくつかの実施形態では、四重極電位は、上記RF成分に加えて、空間的に変化するDC成分を有する。
図4は、一実施形態に係る、トラップされたイオンの鎖102内の各イオンの概略エネルギー図400を示す。一例では、各イオンは、ω01/2π=12.642821GHzの周波数差(「キャリア周波数」と呼ばれる)に対応するエネルギー分割を持つ1/2超微細状態(すなわち、2つの電子状態)を有する正のイッテルビウムイオン171Ybであってよい。キュービットは、│0>と│1>で表される2つの超微細状態で形成され、超微細基底状態(すなわち、1/2超微細状態のうちの低エネルギー状態)が│0>表すように選択される。以下、「超微細状態」と「キュービット」という用語は、│0>と│1>を表すために交換可能に使用されることがある。各イオンは、ドップラー冷却又は分解サイドバンド冷却などの既知のレーザ冷却方法で、フォノン励起なし(すなわち、n=0)で任意の運動モードmの運動基底状態│0>の近くまで冷却し(すなわち、イオンの運動エネルギーが低下することができる)、次にキュービット状態が光ポンピングによって超微細基底状態│0>で準備することができる。ここで、│0>は、トラップされたイオンの個々のキュービット状態を表し、下付き文字mが付いた│0>は、トラップされたイオンの鎖102の運動モードmの運動基底状態を表す。
各トラップされたイオンの個々のキュービット状態は、例えば、励起された1/2レベル(|e>で表される)を介して355ナノメートル(nm)のモードロックレーザ(mode-locked laser)によって操作することができる。図4に示すように、レーザからのレーザビームは、ラマン構成で一対の非共伝搬レーザビーム(周波数ωを有する第一のレーザビームと周波数ωを有する第二のレーザビーム)に分割され、図4で説明するように、|0>と|e>の間の遷移周波数ω0eに関して、一光子遷移離調Δ=ω-ω0eによって離調されてよい。二光子遷移離調δは、トラップされたイオンに第一及び第二のレーザビームによって提供されるエネルギー量の調整を含み、それらを組み合わせて使用すると、トラップされたイオンが超微細状態|0>と|1>との間で移動する。一光子遷移離調Δが二光子遷移離調(単に「離調」とも呼ばれる)δ=ω-ω-ω01(以下、±μで表され、μは正の値である)よりもはるかに大きい場合、それぞれ状態|0>と|e>の間、状態|1>と|e>の間でラビフロップが発生する単一光子ラビ周波数Ω0e(t)とΩ1e(t)(時間に依存し、第一と第二のレーザビームの振幅と位相によって決定される)、励起状態|e>からの自然放出率、2つの超微細状態│0>と│1>の間のラビフロップ(「キャリア遷移」と呼ばれる)は、二光子ラビ周波数Ω(t)で誘導される。二光子ラビ周波数Ω(t)は、Ω0eΩ1e/2Δに比例する強度を有し、ここで、Ω0eとΩ1eは、それぞれ第一と第二のレーザビームによる単一光子ラビ周波数である。以下、キュービットの内部状態を操作するためのラマン構成におけるこの逆伝播レーザビームのセットは、「複合パルス」又は単に「パルス」と呼ばれてよく、結果として生じる二光子ラビ周波数Ω(t)の時間依存パターンは、「パルスシーケンス」と呼ばれてよく、それらは、以下、図7A及び図8Aを参照して図示され、さらに説明される。離調δ=ω-ω-ω01は、複合パルスの離調と呼ばれてよい。第一及び第二のレーザビームの強度によって決定される二光子ラビ周波数Ω(t)の強度は、複合パルスの「強度」と呼ばれてよい。
なお、本明細書に提供される説明で使用される特定の原子種は、イオン化されたときに安定し、かつ明確に定義された2レベルエネルギー構造と、光学的にアクセス可能な励起状態とを有する原子種の一例にすぎないため、本開示のイオントラップ型量子コンピュータの可能な構成、仕様などを限定することを意図するものではない。例えば、他のイオン種は、アルカリ土類金属イオン(Be、Ca、Sr、Mg、及びBa)又は遷移金属イオン(Zn、Hg、Cd)を含む。
図5は、方位角Φ及び極性角θを有するブロッホ球500の表面上の点として表されるイオンのキュービット状態を視覚化するのを助けるために提供される。上記のように、複合パルスを適用すると、キュービット状態│0>(ブロッホ球の北極として表される)と│1>(ブロッホ球の南極として表される)との間でラビフロップが発生する。複合パルスの持続時間と振幅を調整すると、キュービット状態を│0>から│1>に(すなわち、ブロッホ球の北極から南極へ)反転させるか、あるいはキュービット状態│1>から│0>に(すなわち、ブロッホ球の南極から北極に)反転させる。複合パルスのこの適用は、「πパルス」と呼ばれる。さらに、複合パルスの持続時間と振幅を調整することにより、キュービット状態│0>を、2つのキュービット状態│0>と│1>が加算され、同位相で均等に重み付けされた重ね合わせ状態│0>+│1>(重ね合わせ状態の正規化係数は、一般性を失うことなく、以下省略される)に変換することができ、そして、キュービット状態│1>を、2つのキュービット状態│0>と│1>が加算され、均等に重み付けされているが、位相がずれる重ね合わせ状態│0>-│1>に変換することができる。複合パルスのこの適用は、「π/2パルス」と呼ばれる。より一般的には、加算されて均等に重み付けされた2つのキュービット状態│0>と│1>の重ね合わせは、ブロッホ球の赤道上にある点によって表される。例えば、重ね合わせ状態│0>±│1>は、方位角Φがそれぞれゼロとπである赤道上の点に対応する。方位角Φの赤道上の点に対応する重ね合わせ状態は、│0>+eiΦ│1>(例えば、Φ=±π/2の場合は│0>±i│1>Φである)として表される。赤道上の2点間の変換(すなわち、ブロッホ球のZ軸の周りの回転)は、複合パルスの位相をシフトすることで実装できる。
イオントラップ型量子コンピュータでは、運動モードは、2つのキュービット間のもつれを仲介するデータバスとして機能することができ、このもつれは、XXゲート操作を実行するために使用される。つまり、2つのキュービットのそれぞれが運動モードともつれて、そして、以下に説明するように、もつれは、運動側波帯励起を使用することによって、2つのキュービット間のもつれに転送される。図6A及び図6Bは、一実施形態に係る、周波数ωを有する運動モード│n>での鎖102内のイオンの運動側波帯スペクトルの図を概略的に示す。図6Bに示すように、複合パルスの離調がゼロの場合(すなわち、第一と第二のレーザビーム間の周波数差がキャリア周波数δ=ω-ω-ω01=0に調整される場合)、キュービット状態│0>と│1>の間で単純なラビフロップ(キャリア遷移)が発生する。複合パルスの離調が正の場合(すなわち、第一と第二のレーザビーム間の周波数差が、キャリア周波数よりも高く調整されている場合、δ=ω-ω-ω01=μ>0、青側波帯と呼ばれる)、組み合わされたキュービット運動状態│0>│n>と│1>│n+1>の間でラビフロップが発生する(すなわち、キュービット状態│0>が│1>に反転する場合、│n>で表されるn-フォノン励起を伴うm番目の運動モードから│n+1>mで表されるn+1-フォノン励起を伴うm番目の運動モードへの遷移が発生する)。複合パルスの離調が負の場合(すなわち、第一と第二のレーザビーム間の周波数差が、運動モード│n>の周波数ωによってキャリア周波数よりも低く調整されている場合、δ=ω-ω-ω01=-μ<0、赤側波帯と呼ばれる)、組み合わされたキュービット運動状態│0>│n>と│1>│n-1>の間のラビフロップが発生する(すなわち、キュービット状態│0>から│1>に反転する場合、運動モード│n>から、フォノン励起が1つ少ない運動モード│n-1>への遷移が発生する)。キュービットに適用された青側波帯のπ/2パルスは、組み合わされたキュービット運動状態│0>│n>を、│0>│n>と│1>│n+1>の重ね合わせに変換する。キュービットに適用された赤側波帯のπ/2パルスは、組み合わされたキュービット運動状態│0>│n>を、│0>│n>と│1>│n-1>の重ね合わせに変換する。二光子ラビ周波数Ω(t)が離調δ=ω-ω-ω01=±μと比較して小さい場合、青側波帯遷移又は赤側波帯遷移を選択的に駆動することができる。したがって、キュービットは、π/2パルスなどの適切なタイプのパルスを適用することにより、所望の運動モードでもつれることができ、その後、別のキュービットともつれることができ、2つのキュービット間のもつれをもたらす。イオントラップ型量子コンピュータでXXゲート操作を実行するには、キュービット間のもつれが必要である。
上記のように、組み合わされたキュービット運動状態の変換を制御及び/又は指示することにより、2つのキュービット(i番目及びj番目のキュービット)に対してXXゲート操作を実行することができる。一般に、XXゲート操作(すなわち、100%忠実度の理想的なXXゲート操作)は、2キュービット状態|0>|0>、|0>|1>、|1>|0>及び|1>|1>をそれぞれ次のように変換する。
Figure 0007219826000001
例えば、2つのキュービット(i番目とj番目のキュービット)が両方とも最初に超微細基底状態|0>(|0>|0>で表される)にあり、その後、青側波帯のπ/2パルスがi番目のキュービットに適用される場合、i番目のキュービットと運動モード|0>|n>の組み合わせ状態は、|0>|n>と|1>|n+1>の重ね合わせに変換されるため、2つのキュービットと運動モードの組み合わせ状態は、|0>|0>|n>と|1>|0>|n+1>の重ね合わせに変換される。赤側波帯のπ/2パルスがj番目のキュービットに適用される場合、j番目のキュービットと運動モード|0>|n>の組み合わせ状態は、|0>|n>と|1>|n-1>mの重ね合わせに変換されるため、組み合わせ状態|0>|n+1>は、|0>|n+1>と|1>|n>の重ね合わせに変換される。
したがって、i番目のキュービットにπ/2青側波帯のパルスを適用し、j番目のキュービットにπ/2赤側波帯のパルスを適用すると、2つのキュービットと運動モード|0>|0>|n>の組み合わせ状態を|0>|0>|n>と|1>|1>|n>の重ね合わせに変換することができ、2つのキュービットは、今やもつれ状態にある。当業者にとって明らかであるように、フォノン励起の初期数nとは異なる数(すなわち、|1>|0>|n+1>と|0>|1>|n-1>)のフォノン励起を有する運動モードともつれる2キュービット状態は、十分に複雑なパルスシーケンスによって除去できるため、XXゲート操作後の2つのキュービットと運動モードの組み合わせ状態は、m番目の運動モードでのフォノン励起の初期数nがXXゲート操作の終了時に変化しないので、解きほぐされたと考えてもよい。したがって、XXゲート操作の前後のキュービット状態は、一般に、運動モードを含まずに、以下で説明する。
より一般的には、側波帯の複合パルスを持続時間τ(「ゲート持続時間」と呼ばれる)適用することによって変換されたi番目とj番目のキュービットの組み合わせ状態は、もつれ相互作用χi,j(τ)の観点から次のように記述することができる。
Figure 0007219826000002
ここで、
Figure 0007219826000003
である。ηi,mは、i番目のイオンと周波数ωを有するm番目の運動モードの間の結合強度を定量化するラムディッケパラメータである。いくつかの実施形態では、i番目とj番目のイオンのパルスシーケンスΩ(t)(i番目のイオンに供給されるパルスシーケンス)とΩ(t)(j番目のイオンに供給されるパルスシーケンス)は、それぞれ制御パラメータとして調整される。i番目とj番目のイオンの調整可能なもつれがゼロでないことを保証して、i番目とj番目のキュービットの組み合わせ状態の所望の変換を実行するように、パルスシーケンスΩ(t)とΩ(t)を含む制御パラメータを調整することができる。制御パラメータ、パルスシーケンスΩ(t)及びΩ(t)が満たさなければならない条件の1つは、0<χi,j(τ)≦π/4であり、これは、もつれ相互作用をゼロでないことを意味する。上記i番目とj番目のキュービットの組み合わせ状態の変換は、χi,j(τ)=π/4の場合のXXゲート操作に対応する。
制御パラメータ、パルスシーケンスΩ(t)及びΩ(t)は、また、運動モードがトラップされたイオンへのパルスシーケンスΩ(t)及びΩ(t)の供給によって励起されるときに、初期位置から変位したトラップされたイオンが初期位置に戻るという条件を満たさなければならない。重ね合わせ状態のl番目のイオン│0>±│1>(l=i,j)は、ゲート持続時間τ中にm番目の運動モードの励起により変位し、m番目の運動モードの位相空間(位置と運動量)の軌道±αl,m(τ)をたどる。ここで
Figure 0007219826000004
である。したがって、トラップされたN個のイオンの鎖102に対して、条件αl,m(τ)=0(l=i,j)(「位相空間の閉鎖」とも呼ばれる)は、条件0<χi,j(τ)≦π/4に加えて、すべてのN個の運動モードに対して課されなければならない。これらの条件は、ゲート持続時間τを等しい持続時間のN(ここで1<N)個のセグメント(s=1,2,…,N)に均等に分割し、各セグメントのパルスシーケンスΩ(t)の強度を変化させることによって、満たすことができる。つまり、パルスシーケンスΩ(t)は、それぞれが強度Ωsと持続時間を有するN個のパルスセグメントに分割される。次いで、パルスセグメントの強度Ω(s=1,2,…,N)は、位相空間の閉鎖(αl,m(τ)=0)が高い数値精度で満たされ、もつれ相互作用(0<|χi,j(τ)|≦π/4)がゼロでないことが満たされるように決定される。
(ゲートもつれ操作)
上記2つのキュービット間のもつれ相互作用がゼロでないことは、XXゲート操作を実行するために使用することができる。XXゲート操作(ゲートXX)と単一キュービット操作(ゲートR)は、所望の計算プロセスを実行するように構成された量子コンピュータを構築するために使用できるユニバーサルゲートセット{R、XX}を形成する。図7Aは、トラップされた7つのイオンの鎖102の第二及び第四のイオンに対してXXゲート操作を引き起こすために最初に使用されるゲート持続時間τ(例えば、~145μs)のセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を示す。図7Aに示される例では、鎖102内のトラップされたすべての7つのイオンのパルスシーケンスΩ(t)は同じであり、それぞれが異なる強度Ω(s=1,2,…,9)を有する9つの段階的なパルスセグメントに分割される。この例では、パルスセグメントの強度Ω(t)(s=1,2,…,9)は、すべての条件0<χi,j(τ)≦π/4及びαl,m(τ)=0(l=i,j)を満たすように決定される。セグメント化パルスシーケンスΩ(t)は、決定された強度Ω(t)(s=1,2,…,9)を有するパルスセグメントを組み合わせることによって生成することができる。
図7Bは、第三と第四の運動モードの周波数ωとωの間にあるように選択された離調μの値に基づいて、図7Aに示される9つの段階的パルスセグメントのセグメント化パルスシーケンスΩ(t)によって実行されるXXゲート操作中の、キュービット状態│0>から│1>までのトラップされた7つのイオンの鎖102内の第二と第四のイオンの非共鳴キャリア励起の瞬間的及び時間平均集団のシミュレーション結果を示す。図7Bでは、第二と第四のイオンの非共鳴キャリア励起701は、ゼロでない値の周りで望ましくなく変化し、時間平均非共鳴キャリア励起702は、パルスシーケンスの異なる段階の間でも、XXゲート操作の終了時にも、ゼロに戻らない。
あるいは、図8Aは、本明細書に記載の開示の実施形態に係る、トラップされた7つのイオンの鎖102内の第二と第四のイオンに対してXXゲート操作を実行するために以下に説明する最適化ステップを実行してから作成され適用される、ゲート持続時間τにわたって改善されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を示す。図8Aに示す例では、同じパルスシーケンスΩ(t)は、トラップされた7つのイオンの鎖102内の第二と第四のイオンに適用され、9つのパルスセグメントに分割される。図8Aでは、各パルスセグメントは強度Ω(s=1,2,…,9)を有し、例えば、正弦二乗関数の形でパルスセグメントの開始点及び終了点でスプラインを使用して形成されたランプを備えたパルス形状を有する。つまり、強度Ω(時間tで開始)とΩS+1(時間tS+τ/(2Ns+1)で開始)を有する隣接するパルスセグメント間のランプ強度は、(ΩS+1-Ω)×sin(π(t-t)/(2t))により与えられ、ここで、tはランプ持続時間である。段階的パルスセグメントの強度Ω(t)(s=1,2,…,9)は、条件0<χi,j(τ)≦π/4及びαl,m(τ)=0(l=i,j)がすべて満たされるように決定される。ランプ化されセグメント化パルスシーケンスΩ(t)は、決定された強度を有するパルスセグメントをその開始点及び終了点でランプと組み合わせることによって生成することができる。
図8Bは、図8Aに示す改善されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)によって実行されるXXゲート操作中の、キュービット状態│0>から│1>の間の鎖102の第二と第四イオンの非共鳴キャリア励起の瞬間的及び時間平均集団の改善された結果を示す。図8Bでは、非共鳴キャリア励起801はほぼゼロで振動するようにされることにより、鎖102内の第二と第四のイオンの時間平均非共鳴キャリア励起802は、全体を通してゼロに近いままであり、XXゲート操作の終了時にゼロに戻ることが保証される。図8Cでは、図8Aに示す改善されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)の供給の結果として、m番目の運動モード(m=1,2,…,7)の位相空間軌道αl,m(τ)(任意の単位で)は形成され、かつグラフで示される。図8Cに示す位相空間軌道α~αのそれぞれは、トラップされた7つのイオンの鎖102の7つの運動モードのそれぞれの位相空間(すなわち、横軸の位置、縦軸の運動量)における軌道を個別に示し、ここで、原点は、パルスシーケンスΩ(t)が適用される前のイオンの初期位置を示す。図8Cに示すように、位相空間軌道αとαなどの一部の運動モードの位相空間軌道αl,m(τ)は、XXゲート操作の終了時に原点に戻らないため、イオンの変位を引き起こす。これは、図7Aに示す元のセグメント化パルスシーケンスΩ(t)が、図8Aに示すスプラインの追加によってわずかに変更され、すべての位相空間軌道が閉じられないためである。
したがって、すべての運動モードの位相空間軌道がXXゲート操作の終了時に原点に戻るように、最適化されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を解く際にスプラインの効果を含めることは有用である。図8Dは、このさらに最適化されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)(図示せず)による、m番目の運動モード(m=1,2,…,7)の位相空間における位相空間軌道αl,m(τ)(任意の単位で)を示す。図8Dでは、位相空間軌道αl,m(τ)は、XXゲート操作の終了時に原点に戻る(すなわち、XXゲート操作の終了時に運動モードの残留励起がゼロである)。したがって、改善されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)は、ランプの使用による図8Bに示す残留非共鳴キャリア励起を低減させながら、図8Dに示すように、ゲート最小値の終了時に残留運動励起を維持することで、XXゲート操作の忠実度を向上させる。
図9は、一実施形態に係る、トラップされたN個のイオンの鎖102の2つのキュービット(i番目及びj番目のキュービット)に対して、XXゲート操作を実行するための改善又は最適化されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を生成するために使用される、実行された様々なステップを含む方法900を説明するフローチャートを示す。
ブロック902では、ゲート持続時間τと、離調μと、ランプ持続時間tRと、i番目のイオン及びm番目の運動モードηi,mのラムディッケパラメータとの値を入力パラメータとして選択する。図15を参照して以下に説明するように、ゲート持続時間τ及び離調μは、選択される。図11を参照して以下に説明するように、ラムディッケパラメータは、計算される。図10、図11、及び図12A~図12Cを参照して説明されるように、運動モード周波数(ω,m=0,1,…,N-1)は、イオントラップ型量子コンピュータシステム100から直接測定され、運動モード構造は、計算される。ラムディッケパラメータηi,mは、運動モード構造、運動側波帯遷移を駆動するレーザビームの光子運動量、イオン質量、及び横運動モード周波数ωによって決定される。セグメント化パルスシーケンスΩ(t)は、N個のパルスセグメントを含み、ここで、Nは、所望のゲート持続時間τの間のイオン数Nと、XXゲート操作を実行するために必要なもつれ相互作用の全体的な強度に基づいて繰り返し選択される。本明細書で説明される一例では、パルスシーケンスΩ(t)の各パルスセグメントは、等しい長さτS(=τ/N)と、ランプ持続時間tで各パルスセグメントの開始点及び終了点でスプラインを使用して形成されたランプを有する強度Ω(s=1,2,…,N)とを有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、セグメント化パルスシーケンスΩ(t)のパルスセグメントは、時間とともに変化する長さを有してよい。
ブロック904では、ブロック902において入力パラメータとして選択されたゲート持続時間τ、離調μ、ランプ持続時間t、m番目の運動モードの周波数ω、パルスセグメントの数N、及びラムディッケパラメータηi,m、ηj,mの値に基づいて、i番目とj番目のキュービットのもつれ相互作用χi,j(τ)の値と、l番目のイオン(l=i,j)とm番目の運動モード(m=0,1,…,N-1)の位相空間軌道αl,m(τ)の値を計算する。もつれ相互作用の値は、i番目とj番目のキュービットに対して、
Figure 0007219826000005
であり、位相空間軌道の値は、m番目のイオンmとm番目の運動モードmに対して、
Figure 0007219826000006
であり、パルスセグメントの強度Ω(s=1,2,…,Ns)を制御パラメーターとして残す。
ブロック906では、パルスセグメントの強度Ω(s=1,2,…,N)に関して線形であるN個の方程式セットを、計算された値αl,n(τ)がl番目のイオン(l=i,j)及びm番目の運動モード(m=0,1,…,N-1)に対してゼロに等しいことを要求することによって生成する。
ブロック908では、線形方程式のセットを解いて強度Ωs(s=1,2,…,Ns)の複数のセットの解を得る。複数のセットの解の中から、最高のXXゲート忠実度をもたらす強度Ωs(s=1,2,…,Ns)の単一セットの解を選択する。
ブロック910では、決定された強度Ωs(s=1,2,…,Ns)と、ブロック902で選択されたランプ持続時間tRの正弦二乗関数の形で各パルスセグメントの開始点と終了点でスプラインを使用するランプとを有するパルスセグメントを組み合わせることによって、パルスシーケンスΩ(t)を生成する。この生成されたパルスシーケンスΩ(t)を、i番目とj番目のキュービットに適用して、i番目とj番目のキュービットに対してXXゲート操作を実行する。
(運動モードの修正)
図10は、イオントラップ200で生成された四重極電位によって半径方向に閉じ込められた7つのイオンの例示的な鎖102を示す。イオントラップ200で生成され、鎖102内のイオンに印加される四重極電位は、RF成分及びDC成分を有する。図10の実線の矢印で示されるように、i番目のイオン(i=1,2,…,7)について、四重極電位のRF成分と四重極電位のDC成分による横方向の復元力は、それぞれRFばね定数kRFとDCばね定数kによってモデル化される。
イオントラップ型量子コンピュータシステム100では、鎖102に沿って局所的に変化するDC四重極電位に伴う漂遊電界によって、イオンの実際の縦方向分布と、(イオンがほぼ等間隔である)理想的な縦方向分布とは、不一致になる可能性がある。したがって、実際の運動モード構造と、(イオンの理想的な縦方向分布に基づく)理想的な運動モード構造とは、不一致となる可能性があるため、XXゲート操作を実行するセグメント化パルスシーケンスΩ(t)が理想的な縦方向分布に基づいて生成された場合、XXゲート操作の忠実度が低下することになる。したがって、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、イオンの実際の縦方向分布と運動モード周波数ω(m=0,1,…,N-1)は、イオントラップ型量子コンピュータシステム100で測定される。実際の運動モード構造とラムディッケパラメータηi,nは、測定されたイオンの実際の縦方向分布と測定された運動モード周波数ω(m=0,1,…,N-1)に基づいて計算される。これらの値は、改善されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を生成する際に、方法900のブロック902において入力パラメータとして選択され、XXゲート操作を実行する。
図11は、一実施形態に係る、トラップされたN個のイオンの鎖102の実際の運動モード構造を生成し決定するために使用される、実行された様々なステップを含む方法1100を説明するフローチャートを示す。
ブロック1102では、イオンからY軸に沿って生成された蛍光を収集し、結像対物レンズ104を用いてカメラ又はPMT106上で蛍光を画像化することによって、イオンの縦方向における位置(図10ではz1,z2,…,z7で表される)を正確に測定する。
ブロック1104では、測定されたイオンの縦方向における位置に基づいて、鎖102内のi番目のイオン(i=1,2,…N)のばね定数kのセットを生成し、ばね定数のセットを使用して、i番目のイオンの横方向の復元力をモデル化する。i番目のイオン(i=1,2,…N)のばね定数kのセットを生成する際、各イオンの横方向における運動は、それぞれRFバネ定数kRFとDCばね定数kの影響下で調和振動として近似される。DCばね定数kは、ブロック1102で測定されたイオンの実際の位置に基づいて計算される。
ブロック1106では、測定されたイオンの縦(軸)方向における間隔(すなわち、測定された隣接するイオン間の距離)に基づいて、イオン間のクーロン相互作用の強度を計算する。
ブロック1108では、ブロック1104で生成されたi番目のイオン(i=1,2,…N)のDCばね定数k、ブロック1108で生成されたクーロン相互作用の強度、及びイオンの鎖に沿って均一であるRFばね定数kRFのセットに基づいて実際の運動モード構造を生成する。
その後、ブロック1110では、実際の運動モード構造に基づいて、ラムディッケパラメータηi,m(m=0,1,…,N-1)を計算する。これらのラムディッケパラメータは、向上した忠実度を有するXXゲート操作を実行するための改善されたセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を生成する方法900のブロック902で入力パラメータとして選択される。
図12A及び図12Bは、上記方法1100で修正された、トラップされた7つのイオンの鎖102の運動モード構造の例を示す。図12Aと12Bは、第四と第五の運動モードについて、点線で理想的な運動モード構造(すなわち、イオンの理想的な縦方向分布と、鎖に沿って均一であるRFばね定数及びDCばね定数とに基づく運動モード構造)を示し、実線で実際の運動モード構造(すなわち、方法1100で修正された運動モード構造)をそれぞれ示す。縦軸は、鎖102内の7つのイオンの横方向の変位振幅を表す。図12Cは、理想的な運動モード構造と、方法1100で見出されたステップによって決定された運動モード修正を用いて形成された実際の運動モード構造とを使用して得られた、XXゲート操作を実行するために生成されたパルスシーケンスΩ(t)の比較を示す。実際の運動モード構造に基づいて生成又は変更されたパルスシーケンスΩ(t)は、XXゲート操作の忠実度を向上させる。
(XXゲートの校正)
単一キュービット及び2キュービットゲートの操作は、図4に示すように、ラマン構成の逆伝播レーザビームによって駆動され、この場合、レーザビームの二光子遷移離調δは、キャリア遷移(δ=0)との共鳴に調整されるか、又は運動モード周波数ω(δ=±μ、μがωに近い)に近くなる。いずれの場合も、レーザビームの位相は、ゲート操作中にレーザビームによって駆動されるキュービットにインプリントされる。しかしながら、レーザビームの光学的特性の違いや、ラマン構成で使用される内部原子構造の違いなどの、単一キュービットと2キュービットのゲート操作に対して選択されたレーザビームパラメータの違いにより、インプリントされた位相は、異なるイオン及び/又は異なるゲート操作によって異なる場合がある。これは、量子計算の誤差の原因であり、各キュービットへの単一キュービット及び2キュービットのゲート操作によってもたらされるインプリントされた位相のオフセットを特徴づけることによって取り除くことができる。いくつかの実施形態では、最初にi番目とj番目のイオンに対して単一キュービットのゲート操作を実行し、i番目とj番目のイオンに対してそれぞれ単一キュービットゲート位相ΦとΦをインプリントし、その後、2キュービットのゲート位相が単一キュービットのゲート位相と一致するように2キュービットのゲート位相を調整することによって、インプリントされた位相の違いを取り除く。単一キュービットの位相ΦとΦは、それぞれi番目とj番目のイオンの単一キュービットと2キュービットのゲート操作間の位相オフセットと見なすこともできる。
図13は、一実施形態に係る、i番目及びj番目のキュービットの位相オフセットΦ及びΦ(すなわち、ブロッホ球上のZ軸の周りの回転)を決定し、この情報を使用して、i番目及びj番目のキュービットに対するXXゲート操作のインプリントされた位相を校正する(すなわち、位相オフセットΦとΦのいずれかを調整する)ために使用される、実行された様々なステップを含む方法1300を説明するフローチャートを示す。図14A~14Dを参照して、方法1300を説明する。図14Aは、位相オフセットを決定するゲートシーケンスの概略図を示す。図14Aでは、位相オフセットΦ及びΦを有するXXゲート操作は、ボックス1402で表わされ、それぞれ、i番目とj番目のキュービットに適用される。
ブロック1302では、ドップラー冷却又は分解サイドバンド冷却などの既知のレーザ冷却方法で、光ポンピングによって、いずれも超微細基底状態|0>|0>になるように、i番目及びj番目のキュービットを準備する。
ブロック1304では、位相+Φ1404を有するπ/2パルス及び位相-Φ1406を有するπ/2パルスを、XXゲート操作1402(χ(τ)=π/4)を適用する前後の両方のキュービットにそれぞれ適用する。
ブロック1306では、位相Φをスキャンすることによって超微細基底状態|0>の集団を測定する。図14Bは、超微細基底状態|0>にあるi番目及びj番目のキュービットの集団の例を示す。超微細基底状態|0>にあるi番目のキュービットの集団が最大値を有する位相Φの値は、i番目のキュービットの位相オフセットΦに対応する。j番目のキュービットの位相オフセットΦは、同様に決定される。したがって、XXゲート操作は、2キュービット状態|0>|0>、|0>|1>、|1>|0>及び|1>|1>を次のように変換するように正しく決定される。
Figure 0007219826000007
i番目とj番目のキュービットの位相オフセットΦとΦが決定された後、XXゲート操作を駆動するレーザビームの位相は、ΦとΦが両方ともゼロになるように調整される。
ブロック1308では、(Φ=0、Φ=0、及び幾何学的位相とも呼ばれるもつれ相互作用の絶対値|χi,j(τ)|=π/4で)位相調整されたXXゲートを、図14Cに示すように、ゲートシーケンスで適用する。このシーケンスは、XXゲート操作1408がi番目及びj番目のキュービットに適用され、続いて解析位相Φを有するπ/2パルスである解析パルス1410が適用された場合に、2キュービット状態でのパリティ振動を測定するために使用される。パリティ(すなわち、状態|0>|0>と|1>|1>の組み合わせた集団から状態|0>|1>と|1>|0>の集団を引いたもの)は、解析位相Φがスキャンされるときに測定される。図14Dに示すように、パリティは、解析位相Φが0と2πの間(図14B及び図14Dでは1に正規化される)で変化するにつれて振動する。幾何学的位相χi,j(τ)(単にχと呼ばれる)が正の場合、パリティは、解析シフトΦがゼロから増加するにつれて増加する。幾何学的位相χが負の場合、パリティは、解析位相Φがゼロから増加するにつれて減少する。
ブロック1310では、ブロック1308で測定されたパリティに基づいて位相オフセットΦの校正を調整する。幾何学的位相χが負の場合、位相オフセットΦの校正を、位相オフセットΦ+πの校正に置き換える(すなわち、j番目のキュービットは、ブロッホ球のZ軸の周りにπだけ回転する)。幾何学的位相χが正の場合、位相オフセットΦの校正を変更しない。他のイオンiの位相オフセットΦの校正を変更しない。
ブロック1312では、各ペアのキュービットに対するXXゲート操作が正の幾何学的位相χを有するように、ブロック1302から1308のステップをすべてのペアのキュービットに対して繰り返す。例えば、トラップされた7つのイオンの鎖では、ブロック1302から1308のステップをすべての21ペアのキュービットに対して繰り返す。したがって、各ペアのキュービットのXXゲート操作を校正して(すなわち、インプリントされた位相オフセットを調整して)、XXゲート操作の忠実度を向上させることができる。
(離調とゲート持続時間の最適化)
図15は、一実施形態に係る、ゲート持続時間τ及び離調μを最適化するために使用される、実行された様々なステップを含む方法1500を説明するフローチャートを示す。
ブロック1502では、ブロック902で選択されたゲート持続時間τ及びランプ持続時間tRの値、方法1100で生成された実際の運動モード構造、及び実験的に測定されたモード周波数ω(m=1,2,…,N)に基づいて、XXゲート操作を実行するためのセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を所定の離調値μに対して方法900で生成する。セグメント化パルスシーケンスΩ(t)を最適化するために、XXゲート操作の平均不忠実度(すなわち、セグメント化パルスシーケンスΩ(t)によって実行されたXXゲート操作と理想的なXXゲート操作との間の不一致)を、運動モード周波数の小さな変動又は集合ドリフトに対して計算する。つまり、離調μを小さな範囲内で変化させ、XXゲート操作の不忠実度を離調μの値ごとに計算し、計算されたXXゲート操作の不忠実度を、離調μが変化する範囲で平均化する。XXゲート操作の不忠実度のこの変化は、離調誘導不忠実度と呼ばれる。XXゲート操作の離調誘導不忠実度の計算を、全部又は一部の運動モード周波数ω(m=1,2,…,N)にまたがる周波数範囲の離調μの値に対して繰り返す。
ブロック1504では、不忠実度が最小値を有し、パルスセグメントの決定された強度Ωsが最小値を有する(したがって、必要なレーザ出力を最小化する)離調パラメータμの値を離調μの最適値として選択する。このように選択された離調μのこれらの値は、離調μの変動に対してロバストであるだけでなく、より低いレーザ強度を必要とするセグメント化パルスシーケンスΩ(t)を生成する。
図16Aは、離調μが第三と第十一の運動モードの周波数ωとω11の間の周波数範囲でスキャンされるときの、トラップされた13個のイオンの鎖102に対して決定されたパルスセグメントの強度Ωsの変化を示す。図16Bは、離調μが小さい範囲(通常、1kHzのオーダー)内で変化するときの、計算されたXXゲート操作の離調誘導不忠実度を示す。2.698MHz、2.72MHz、2.78MHz、及び2.995MHzの近似値の離調μ(図16Bでは「X」で表される)では、離調誘導不忠実度および決定された強度Ωsはその最小値になるため、離調μのこれらの値の1つは、離調μの最適値として選択され、対応するパルスシーケンスΩ(t)は、忠実度の高いXXゲート操作を実行するための最適化されたパルスシーケンスΩ(t)として選択される。
ブロック1506では、最適化されたパルスシーケンスΩ(t)は、離調μの対応する値が有用な範囲内にあるように、運動モードのノイズ特性に基づいてフィルタリングする。図17は、鎖102に沿って4V/mの漂遊電界を受けるトラップされた13個のイオンの鎖102のすべての13個の横運動モードの運動モード周波数のシミュレートされた周波数シフトの例を示す。シミュレートされた周波数シフトに基づいて、最も低い2つの運動モードが周波数シフトの影響を受けることにより、運動モード周波数ωとωに近い離調μでXXゲート操作にかなりの誤差をもたらす可能性があることは明らかである。したがって、XXゲート操作を実行するための最適化されたパルスシーケンスΩ(t)は、離調μが運動モード周波数ωよりも大きい場合のみに実装用に選択される。これは、図16A及び16Bに反映されるように、最適化されたパルスシーケンスΩ(t)を生成する離調μの下限を決定する。さらに、加熱速度が高いと測定された運動モードを除外することにより、XXゲート操作が運動モードの加熱に鈍感にされるように、最適化されたパルスシーケンスΩ(t)をフィルタリングする。13個のキュービットからなる鎖の例では、13番目の運動モードである重心モード(すなわち、一般的な運動モード、一般にN個のイオンからなる鎖のN番目の運動モード)での加熱速度は、他の運動モードと比較して高いと測定される。XXゲート操作におけるこの運動モードの使用を除外するために、最適化されたパルスシーケンスΩ(t)を生成する離調μが運動モード周波数ω11で上限を有するように設定される範囲を決定し、その範囲で、傾斜運動モード周波数ω12も、一般的な運動モード周波数ω13に近いため除外される。下限と上限の間の範囲で、離調μを選択することにより、最適化されたパルスシーケンスΩ(t)は、運動モードの加熱や漂遊電界による運動モードの周波数シフトの影響を受けないXXゲート操作を実行することができる。
ブロック1508では、ブロック1502から1506のステップを繰り返すことによって、ゲート持続時間τの最適値を決定する。XXゲート操作を実行するためのパルスシーケンスΩ(t)を生成する際に、ゲート持続時間τの値を最適化しながら、パルスセグメントの必要な強度ΩとXXゲート操作の離調誘導不忠実度を最小限に抑える。開始点として、ゲート持続時間は
Figure 0007219826000008
に設定され、ここで、βはゲート持続時間係数であり、
Figure 0007219826000009
はブロック1506で決定された離調μの範囲内の隣接する運動モード周波数間の平均差である。ゲート持続時間係数βを減らすと、一般に、離調μの最適値で離調誘導不忠実度が低下する(図16Aを参照)一方で、ゲート持続時間係数βを減らすと、最大のもつれ(この場合、χi,j(τ)=π/4)を達成するために必要な決定されたパルスセグメントの強度Ωも増加することが観察されている。ゲート持続時間の短縮によるパルスセグメントの増加された強度Ωは、XXゲート操作を実行するためにレーザビームの強度を高くする必要がある。したがって、離調誘導不忠実度の低下と、ブロック1502~1506のステップの複数の繰り返しを通じてゲート持続時間τOPTの最適値を最終的に決定するレーザビームの必要な強度の減少との間にはトレードオフがある。なお、ゲート持続時間τに対するパルスセグメントの離調誘導不忠実度と強度Ωの傾向は、常に上記のように単調であるとは限らず、複雑である可能性があるため、ブロック1502から1506のステップの繰り返しを通じて、最適なゲート持続時間τOPTとパルスシーケンスΩ(t)のパルスセグメントNの数の両方を決定してXXゲート操作を実行する高度な学習アルゴリズムを必要とし、またパルスセグメントの数Nの最適化を含むこともある。
上記のように生成されたセグメント化パルスシーケンスは、2つのキュービット間で、向上した忠実度で、もつれ操作を実行することができる。ゲートもつれ操作を実行するためにこのような改善されたパルスシーケンスを生成する際に、入力パラメータ(ゲート持続時間τ、離調μ)を最適化し、運動モード周波数(ω)を正確に測定し、運動モード構造を決定する。最適化された入力パラメータ、測定された運動モード周波数、及び生成された運動モード構造に基づいて、セグメント化パルスシーケンスの各パルスセグメントの強度を決定し、向上した忠実度を有するXXゲート操作を実行するために、結果として得られたセグメント化パルスシーケンスを適用することができる。
さらに、改善されたセグメント化パルスシーケンスの各パルスセグメントは、開始点及び終了点にランプを備えたパルス形状を有し、非共鳴キャリア励起からの不忠実度を低減するために使用される。各キュービットのインプリントされた位相シフトを調整するためのXXゲート操作の校正により、XXゲート操作の忠実度をさらに向上させる。
上記は特定の実施形態を対象としているが、他のさらなる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。

Claims (23)

  1. 量子コンピュータにおいて2つのトラップされたイオン間のもつれ操作を実行する方法において、
    ゲート持続時間値と、トラップされたイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンに対してゲートもつれ操作を実行するために使用されるパルスシーケンスの離調値とを選択するステップであって、前記トラップされたイオンのそれぞれがキュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、
    前記パルスシーケンスが複数のパルスセグメントを含み、
    ランプが、前記複数のパルスセグメントのそれぞれの開始点及び終了点でスプラインを使用して形成される、ステップと、
    前記トラップされたイオンの鎖の前記トラップされたイオンが整列する方向に垂直な方向で、前記トラップされたイオンの鎖の集合運動モードの周波数を測定するステップと、
    選択された前記ゲート持続時間値、選択された前記離調値、及び測定された前記集合運動モードの周波数に基づいて、前記第一のイオンと前記第二のイオンの間のもつれ相互作用のための第一の条件、および前記第一のイオンと前記第二のイオンの前記集合運動モードの位相空間軌道のための第二の条件を要求することによって、前記複数のパルスセグメントのそれぞれの強度を計算するステップと、
    前記複数のパルスセグメントを含む前記パルスシーケンスを、前記第一のイオンおよび前記第二のイオンに適用するステップであって、前記複数のパルスセグメントのそれぞれが、計算された前記強度を有する、ステップと
    含む、方法。
  2. 前記複数のパルスセグメントのそれぞれの前記開始点及び前記終了点で形成される前記ランプのランプ持続時間を選択するステップをさらに含み、
    前記複数のパルスセグメントのそれぞれの前記強度を計算するステップは、選択された前記ランプ持続時間にさらに基づく、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第一の条件は、前記もつれ相互作用が所定の値であるという要件を含み、
    前記第二の条件は、前記位相空間軌道がゼロであるという要件を含み、
    前記所定の値は、ゼロ~π/4である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記複数のパルスセグメントの数は、1より大きい整数値となるように選択される、請求項2に記載の方法。
  5. 前記トラップされたイオンの鎖に沿った方向にトラップされたイオンの位置を測定するステップと、
    測定された前記トラップされたイオンの位置に基づいて、前記トラップされたイオンの鎖に垂直な方向にトラップされたイオンの運動を近似する調和振動のばね定数のセットを計算するステップと、
    測定された前記トラップされたイオンの位置に基づいて、前記トラップされたイオン間のクーロン相互作用の強度を計算するステップと、
    計算された前記ばね定数のセット及び計算された前記クーロン相互作用の強度に基づいて、前記トラップされたイオンの鎖の前記集合運動モードの集合運動モード構造を計算するステップと、
    計算された前記集合運動モード構造に基づいて、前記トラップされたイオンの鎖の前記集合運動モードのラムディッケパラメータを計算するステップと、をさらに含み、
    前記複数のパルスセグメントのそれぞれの強度を計算するステップは、計算された前記集合運動モード構造および前記ラムディッケパラメータにさらに基づ、請求項2に記載の方法。
  6. 前記第一のイオンの第一の位相オフセット及び前記第二のイオンの第二の位相オフセットを校正するステップと、
    校正された前記第一の位相オフセット及び第二の位相オフセットに基づいて、前記ゲートもつれ操作を校正するステップと、をさらに含み、
    前記第一の位相オフセット及び前記第二の位相オフセットを校正するステップは、
    前記2つの周波数分離状態のうちの低い周波数状態にある前記第一のイオンと前記第二のイオンを準備するステップと、
    第一の位相を有する第一のπ/2パルスを前記第一のイオン及び前記第二のイオンに適用するステップと、
    生成された前記パルスシーケンスを前記第一のイオンと前記第二のイオンに適用するステップと、
    前記第一の位相の負の位相である第二の位相を有する第二のπ/2パルスを前記第一のイオン及び前記第二のイオンに適用するステップと、
    前記第一の位相を変化させながら、前記2つの周波数分離状態のうちの高い周波数状態にある前記第一のイオン及び前記第二のイオンの集団を測定するステップと、
    前記第一のイオンの前記第一の位相オフセットがスキャンされるときに前記第一のイオンの前記集団が低い周波数状態にある前記第一の位相の値、および前記第一のイオンの前記第一の位相オフセットがスキャンされるときに前記第二のイオンの前記集団が高い周波数状態にある前記第の位相の値を計算するステップと
    をさらに含み、
    前記ゲートもつれ操作を校正するステップは、
    前記2つの周波数分離状態のうちの前記低い周波数状態にある前記第一のイオンと前記第二のイオンを準備するステップと、
    校正された前記第一の位相オフセット及び前記第二の位相オフセットを有する前記パルスシーケンスを前記第一のイオン及び前記第二のイオンに適用するステップと、
    解析位相を有するπ/2パルスを前記第一のイオン及び前記第二のイオンに適用するステップと、
    前記解析位相を変化させながら、前記第一のイオンと前記第二のイオンが両方とも低い周波数状態にある集団と、両方とも高い周波数状態にある集団とを測定するステップと、
    前記ゲートもつれ操作の絶対値が負であると測定された場合、校正された前記第二の位相オフセットを変更するステップと、
    を含む、請求項2に記載の方法。
  7. 前記パルスシーケンスの離調値を選択するステップは、
    前記離調値を変化させながら、離調値に基づいて生成された前記パルスシーケンスによって実行されるゲートもつれ操作の平均不忠実度を計算するステップと、
    計算された前記ゲートもつれ操作の平均不忠実度が最小であり、計算された前記複数のパルスセグメントの強度が最小である離調値を選択するステップと、
    を含む、請求項2に記載の方法。
  8. 前記パルスシーケンスの前記離調値を選択するステップは、
    前記トラップされたイオンの鎖に沿った方向に印加された電界による前記集合運動モードのそれぞれの周波数シフトを計算するステップと、
    他の集合運動モードよりも計算された前記周波数シフトが大きい、前記集合運動モードの第一の集合運動モードを計算するステップと、
    前記第一の集合運動モードの周波数とは異なる第一の離調値を選択するステップと
    択された前記第一の離調値を前記パルスシーケンスの前記離調値として選択するステップと、
    を含む、請求項2に記載の方法。
  9. 前記パルスシーケンスの前記離調値を選択するステップは、さらに、
    前記パルスシーケンスの適用中に前記集合運動モードのそれぞれの加熱速度を測定するステップと、
    他の集合運動モードよりも測定された前記加熱速度が大きい前記集合運動モードの第一の集合運動モードを計算するステップと、
    前記第一の集合運動モードの前記周波数とは異なる第一の離調値を選択するステップと、
    選択した前記第一の離調値を前記パルスシーケンスの前記離調値として選択するステップと、
    を含む、請求項2に記載の方法。
  10. 情報処理システムによって実行されると、前記情報処理システムに、
    ゲート持続時間値と、トラップされたイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンに対してゲートもつれ操作を実行するために使用されるパルスシーケンスの離調値とを選択するステップであって、前記トラップされたイオンのそれぞれがキュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、
    前記パルスシーケンスが複数のパルスセグメントを含み、
    ランプが、前記複数のパルスセグメントのそれぞれの開始点及び終了点でスプラインを使用して形成される、ステップと、
    前記トラップされたイオンの鎖が整列する方向に垂直な方向で、前記トラップされたイオンの鎖の集合運動モードの周波数を測定するステップと、
    選択された前記ゲート持続時間値、選択された前記離調値、及び測定された前記集合運動モードの周波数に基づいて、前記第一のイオンと前記第二のイオンの間のもつれ相互作用のための第一の条件、および前記第一のイオンと前記第二のイオンの前記集合運動モードの位相空間軌道のための第二の条件を要求することによって、前記複数のパルスセグメントのそれぞれの強度を計算するステップと
    記複数のパルスセグメントを含む前記パルスシーケンスを、前記第一のイオンおよび前記第二のイオンに適用するステップであって、前記複数のパルスセグメントのそれぞれが、計算された前記強度を有する、ステップと、
    を実行させるコンピュータプログラム命令を含む、コンピュータ可読媒体。
  11. 前記コンピュータプログラム命令は、前記情報処理システムに、さらに
    前記複数のパルスセグメントのそれぞれの前記開始と前記終了に形成されるランプのランプ持続時間を選択させる、請求項10に記載のコンピュータ可読媒体。
  12. 前記第一の条件は、前記もつれ相互作用がゼロ~π/4の非ゼロ値であるという要件を含み、
    前記第二の条件は、前記位相空間軌道がゼロであるという要件を含む、
    請求項10に記載のコンピュータ可読媒体。
  13. 前記複数のパルスセグメントの数は、1より大きい任意の整数である、請求項10に記載のコンピュータ可読媒体。
  14. 前記コンピュータプログラム命令は、さらに、前記情報処理システムに、
    前記トラップされたイオンの鎖に沿った方向に前記トラップされたイオンの位置を測定するステップと、
    測定された前記トラップされたイオンの位置に基づいて、前記トラップされたイオンの鎖に垂直な方向にトラップされたイオンの運動を近似する調和振動のばね定数のセットを計算するステップと、
    測定された前記トラップされたイオンの位置に基づいて、前記トラップされたイオン間のクーロン相互作用の強度を計算するステップと、
    計算された前記ばね定数のセット及び計算された前記クーロン相互作用の強度に基づいて、前記トラップされたイオンの鎖の前記集合運動モードの集合運動モード構造を計算するステップと、
    生成された前記集合運動モード構造に基づいて、前記トラップされたイオンの鎖の前記集合運動モードのラムディッケパラメータを計算するステップと、を実行させ、
    前記複数のパルスセグメントのそれぞれの前記強度は、計算された前記集合運動モード構造と前記ラムディッケパラメータにさらに基づいて計算される、
    請求項10に記載のコンピュータ可読媒体。
  15. 前記コンピュータプログラム命令は、さらに、前記情報処理システムに、
    前記2つの周波数分離状態のうちの低い周波数状態にある前記第一のイオンと前記第二のイオンを準備するステップと、
    第一の位相を有する第一のπ/2パルスを前記第一のイオン及び前記第二のイオンに適用するステップと、
    生成された前記パルスシーケンスを前記第一のイオンと前記第二のイオンに適用するステップと、
    前記第一の位相の負の位相である第二の位相を有する第二のπ/2パルスを前記第一のイオン及び前記第二のイオンに適用するステップと、
    前記第一の位相を変化させながら、前記2つの周波数分離状態のうちの低い周波数状態にある前記第一のイオン及び前記第二のイオンの集団を測定するステップと、
    前記第一のイオンの第一の位相オフセットがスキャンされるときに前記第一のイオンの前記集団が低い周波数状態にある前記第一の位相の値、および前記第二のイオンの第二の位相オフセットがスキャンされるときに前記第二のイオンの前記集団が低い周波数状態にある前記第一の位相の値を計算するステップと、
    前記2つの周波数分離状態のうちの前記低い周波数状態にある前記第一のイオンと前記第二のイオンを準備するステップと、
    校正された位相オフセットを有する前記パルスシーケンスを前記第一のイオン及び前記第二のイオンに適用するステップと、
    解析位相を有するπ/2パルスを前記第一のイオン及び前記第二のイオンに適用するステップと、
    前記解析位相を変化させながら、前記第一のイオンと前記第二のイオンが両方とも低い周波数状態にある集団と、両方とも高い周波数状態にある集団とを測定するステップと、
    前記ゲートもつれ操作の絶対値が負であると測定された場合、校正された前記第二のイオンの位相オフセットを変更するステップと、
    を実行させる、請求項10に記載のコンピュータ可読媒体。
  16. 前記コンピュータプログラム命令は、さらに、前記情報処理システムに、
    離調値に基づいて生成された前記パルスシーケンスによって実行されるゲートもつれ操作の平均不忠実度を、前記離調値を変化させながら、計算するステップと、
    計算された前記ゲートもつれ操作の不忠実度が最小であり、計算された前記複数のパルスセグメントの強度が最小である前記離調値を選択するステップと、
    を実行させる、請求項10に記載のコンピュータ可読媒体。
  17. 前記コンピュータプログラム命令はさらに、前記情報処理システムに、
    前記トラップされたイオンの鎖に沿った方向に印加された電界による前記集合運動モードのそれぞれの周波数シフトを計算するステップと、
    他の集合運動モードよりも計算された前記周波数シフトが大きい、前記集合運動モードの第一の集合運動モードを計算するステップと、
    前記第一の集合運動モードの周波数とは異なる第一の離調値を選択するステップと
    択した前記第一の離調値を前記パルスシーケンスの前記離調値として選択するステップと、
    を実行させる、請求項10に記載のコンピュータ可読媒体。
  18. 前記コンピュータプログラム命令は、さらに、前記情報処理システムに、
    前記パルスシーケンスの適用中に前記集合運動モードのそれぞれの加熱速度を測定するステップと、
    他の集合運動モードよりも測定された前記加熱速度が大きい前記集合運動モードの第一の集合運動モードを計算するステップと、
    前記第一の集合運動モードの前記周波数とは異なる第一の離調値を選択するステップと、
    選択した前記第一の離調値を前記パルスシーケンスの前記離調値として選択するステップと、
    を実行させる、請求項10に記載のコンピュータ可読媒体。
  19. トラップされたイオンの鎖であって、前記トラップされたイオンのそれぞれがキュービットを定義する2つの超微細状態と励起状態を有する、トラップされたイオンの鎖と、
    前記トラップされたイオンの鎖内の第一のイオン及び第二のイオンに提供される、第一の周波数及び第二の周波数を有する一対の非共伝搬レーザビームに分割されるレーザビームを放出するように構成された1つ以上のレーザであって、前記一対の非共伝搬レーザビームが、前記2つの超微細状態のそれぞれと前記励起状態との間で前記第一のイオン及び前記第二のイオンのラビフロップを引き起こすように構成された1つ以上のレーザと、
    コントローラと、
    を備える、量子コンピュータシステムであって、
    前記コントローラは、
    ゲート持続時間値と、トラップされたイオンの鎖内の第一のイオンと第二のイオンに対してゲートもつれ操作を実行するために使用されるパルスシーケンスの離調値とを選択するステップであって、前記トラップされたイオンのそれぞれがキュービットを定義する2つの周波数分離状態を有し、
    前記パルスシーケンスが複数のパルスセグメントを含み、
    ランプが、前記複数のパルスセグメントのそれぞれの開始点及び終了点でスプラインを使用して形成される、ステップと、
    前記トラップされたイオンの鎖が整列する方向に垂直な方向で、前記トラップされたイオンの鎖の集合運動モードの周波数を測定するステップと、
    選択された前記ゲート持続時間値、選択された前記離調値、及び測定された前記集合運動モードの周波数に基づいて、前記第一のイオンと前記第二のイオンの間のもつれ相互作用のための第一の条件および前記第一のイオンと前記第二のイオンの前記集合運動モードの位相空間軌道のための第二の条件を要求することによって、前記複数のパルスセグメントのそれぞれの強度を計算するステップと、
    前記複数のパルスセグメントを含む前記パルスシーケンスを、前記第一のイオンおよび前記第二のイオンに適用するステップであって、前記複数のパルスセグメントのそれぞれは計算された前記強度を有する、ステップと、
    を実行するように構成される、量子コンピューティングシステム。
  20. 前記トラップされたイオンの鎖内の各イオンは、1/2超微細状態を有する171Ybであり、
    前記レーザは、355nmのモードロックレーザである、請求項19に記載の量子コンピューティングシステム。
  21. 前記コントローラがさらに、前記複数のパルスセグメントのそれぞれの開始点と終了点で形成される前記ランプのランプ持続時間を選択するように構成される、請求項19に記載の量子コンピューティングシステム。
  22. 前記第一の条件は、前記もつれ相互作用がゼロ~π/4の間で選択された任意の値であるという要件を含み、
    前記第二の条件は、前記位相空間軌道がゼロであるという要件を含む、請求項19に記載の量子コンピューティングシステム。
  23. 前記複数のパルスセグメントの数は1より大きい、請求項19に記載の量子コンピューティングシステム。
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