以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施の形態における電源装置Pを含む回路Aの全体構成を示す回路図である。本発明の実施の形態における回路Aは、例えば、インバータ回路である。回路Aは、例えば、電源装置Pと電源装置Pからの電源供給を受けて駆動されるスイッチング素子Sとから構成される。
スイッチング素子Sは、ここでは、例えば、上述したIGBTである。図1の回路Aでは、スイッチング素子S1及びスイッチング素子S2、スイッチング素子S3及びスイッチング素子S4が直列に接続されている。また、スイッチング素子S1及びスイッチング素子S3、スイッチング素子S2及びスイッチング素子S4が互いに並列に接続されている。
また、スイッチング素子S1及びスイッチング素子S2を接続する経路と、スイッチング素子S3及びスイッチング素子S4を接続する経路との間には、負荷Rが接続されている。
なお、ここではスイッチング素子が4つ(スイッチング素子S1ないしスイッチング素子S4)接続された構成を示しているが、スイッチング素子の個数については特に限定するものではない。また、複数のスイッチング素子について共通に説明する場合には、適宜「スイッチング素子S」と表す。
各スイッチング素子Sのゲート電極には、それぞれドライブ回路D1ないしD4が接続されている。なお以下、ドライブ回路D1ないしD4をまとめて説明する場合には「ドライブ回路D」と表す。
ドライブ回路Dにはゲート電源からゲート電圧が印加され、ドライブ回路Dが駆動される。ゲート電源として、プラスのゲート電源G1とマイナスのゲート電源G2とが設けられており、ドライブ回路Dに対して各々の電源からプラスのゲート電圧とマイナスのゲート電圧が印加される。
なお、図1においては、プラスのゲート電源G1は「+ゲート電源G1」と、マイナスのゲート電源G2は「-ゲート電源G2」と表されている。また、以下プラスのゲート電源G1とマイナスのゲート電源G2とをまとめて説明する場合には、適宜「ゲート電源G」と表す。
またドライブ回路Dには、図1には図示しない制御装置からの制御信号に基づくゲート信号が入力される。このゲート信号によってスイッチング素子SのON、OFFの切り替えが行われる。
電源装置Pは、直流電源1と、直流電源1とスイッチング素子Sとの間に設けられるキャパシタCを有する。直流電源1は、例えば、スイッチング素子Sを駆動するために電源を供給する。
キャパシタCは、例えば、直流電源1から供給される電源電圧に重畳するリプル成分を平滑化する。また、このキャパシタCには、例えば、直流電源1が遮断された場合であっても一定の期間残留電圧が存在し、その後自然放電する。
さらに電源装置Pは、バックゲートバイアス補償回路2を備える。バックゲートバイアス補償回路2は、キャパシタCの残留電圧を利用してドライブ回路Dにマイナスのゲート電圧を印加する。図1においては、バックゲートバイアス補償回路2は破線で囲まれて示されている。
バックゲートバイアス補償回路2は、キャパシタCの残留電圧の入力側とドライブ回路Dへの出力側とを備え、入力側と出力側との間に両者をつなぐ開放接点21を備えている。開放接点21は、後述するゲート電位判定回路からの信号に基づきON、OFFの切り替えを行うスイッチである。
開放接点21の一方は、バックゲートバイアス補償回路2の出力側と接続されており、マイナスのゲート電源G2とドライブ回路Dとを結ぶ経路に接続されている。キャパシタCの残留電圧は当該経路を通じてドライブ回路Dに印加される。
開放接点21の他方は、バックゲートバイアス補償回路2の入力側と接続されている。本発明の実施の形態においては、キャパシタCと開放接点21の他方との間には、DC/AC変換装置22とAC/DC変換装置23とが設けられている。すなわち、キャパシタCの残留電圧を一旦DC/AC変換しDC的に分離した後、改めてAC/DC変換した上で、ドライブ回路Dに印加している。
本発明の実施の形態においてこのような構成を採用しているのは、以下の理由からである。すなわち、元々回路Aにおいては、スイッチング素子Sに対して直流電源1から直流電圧が印加されている。また、キャパシタCの残留電圧を利用してドライブ回路Dに印加される電圧も直流であるが、微小信号系のドライブ回路Dのバックゲートバイアスと、高電圧・大電流系のスイッチング素子のコレクタ、エミッタ側両者とを回路内において切り離すこととしたものである。
なお、キャパシタCの残留電圧を利用してドライブ回路Dに電圧を印加するに当たって上述したようなDC/AC変換、AC/DC変換は必ずしも必要ではなく、このような構成を採用せずにキャパシタCの残留電圧をドライブ回路Dに印加する方法を採用しても良い。
ゲート電位判定回路24は、スイッチング素子Sにおける電位を判定する。ここで電位を判定する、とは、スイッチング素子Sに電位が生じているか、すなわち、スイッチング素子Sに電圧が印加されているかを判定することである。
なお、電圧が印加されているか否かの判定、については、電位が生じているか否かだけではなく、例えば、ある電圧値を閾値として設定しておき、当該閾値を下回った場合には電位が生じていないとの判定も含まれる。スイッチング素子Sの誤作動や破壊等を回避する観点からすれば、スイッチング素子Sの特質により設定された閾値以下であれば、たとえスイッチング素子Sに電位が生じていたとしても、上記スイッチング素子Sに対する不適切な状態を招来することを回避できるからである。
また、図1にも示されている通り、ゲート電位判定回路24は、ドライブ回路Dとスイッチング素子Sとが接続される経路に接続されている。そのため、ゲート電位判定回路24では、ドライブ回路Dにゲート信号が入力されているか否かも判定する。すなわち、ゲート電位判定回路24では、スイッチング素子Sに電位が生じているか否か、及び、ドライブ回路Dにゲート信号が入力されているか否かの2つの判定を行う。
ゲート電位判定回路24は、スイッチング素子Sを確実に保護するべく、回路Aが働いている間、常時上述した2つの判定を行う。
電源電圧検知回路25は、直流電源1と接続され、直流電源1からスイッチング素子Sに電圧が印加されたか否かを検知する。すなわち、例えば、自然災害等により急な停電が原因で意図しない不意の電源喪失が生じた場合、或いは、例えば電源装置Pのメンテナンスのために意図して電源が落とされた場合等、直流電源1が電圧不定になり直流電源1からスイッチング素子Sへの電源の供給が途絶えた場合に、電源電圧検知回路25はこの状態を検知する。
そして電源電圧検知回路25は、直流電源1がスイッチング素子Sに対して電圧を印加しているか否か、つまり上述したように直流電源1が電圧不定の状態になったか否かの検知情報をゲート電位判定回路24に対して送信する。
ゲート電位判定回路24では、電源電圧検知回路25が直流電源1からの電源供給が途絶えたことの検知情報を取得する。そしてスイッチング素子Sに閾値以上の電位が生じており、ゲート電源Gからスイッチング素子Sに対してゲート信号が入力されていない、との判定をした場合に、バックゲートバイアス補償回路2の開放接点21に信号を送信する。開放接点21は、ゲート電位判定回路24からの信号に基づいてスイッチをOFFからONとすることで、キャパシタCに残留する残留電圧を利用してドライブ回路Dに電圧を印加する。
図2は、実施の形態におけるバックゲートバイアス補償回路2の動作を示すタイミングチャートである。図2のタイミングチャートにおいては、図面左側から右側に向けて、すなわち、破線から一点鎖線に向けて時間が経過するように示されている。
ここでは破線で示されるタイミングで電源の遮断が発生した場合に、バックゲートバイアス補償回路2による補償処理が開始される。そして、一点鎖線で示されるタイミングで当該補償処理が終了するように示されている。従って、破線と一点鎖線との間を示すXの期間がバックゲートバイアス補償期間となる。
また、図2におけるタイミングチャートでは、大きく「電源側」と「素子側」の2つに分けて動作が示されている。ここで「電源側」には、ゲート電源Gからドライブ回路Dにゲート電圧が印加されているか否かが示されている。
一方「素子側」では、スイッチング素子Sに電位が生じているか否か、印加される電圧の値の動きが示されている。バックゲートバイアス補償回路2による処理が行われる場合には、電源電圧検知回路25が検知した通り、確かに直流電源1は電圧不定の状態にあるが、キャパシタCの残留電圧が存在し、この残留電圧がスイッチング素子Sに印加される状態が生ずる。このためゲート電位判定回路24では、スイッチング素子Sに電位が生じている状態を検出している。
「電源側」における(1)で示すゲート電源Gを見ると、プラスのゲート電源G1もマイナスのゲート電源G2も破線で示されるタイミングを境にドライブ回路Dに対してプラス電圧、マイナス電圧を印加していない(0V)、或いは、電圧不定の状態になっていることが示されている。
ゲート電位判定回路24は、このようなドライブ回路Dにゲート信号が入力されていない状態であることの判定を行い、バックゲートバイアス補償回路2に対してキャパシタCの残留電圧を利用してドライブ回路Dにバックゲートバイアスを印加するように信号を送る。バックゲートバイアス補償回路2では、ゲート電位判定回路24からの指示に基づき、開放接点21のスイッチをONとして、キャパシタCの残留電圧をマイナスのゲート電源G2の経路を介してドライブ回路Dに印加する。
ここで「素子側」において示されている「電源電圧」は、キャパシタCの残留電圧である。直流電源1が電圧不定の状態にあるので、これ以上直流電源1の電圧がキャパシタCに溜まることはなく、自然放電を介して残留電圧も徐々に下がる。
ここで例えば、V1の位置における残留電圧の値は、ゲート信号やゲート電源が不定の状態で、当該残留電圧がスイッチング素子Sに印加された場合に、誤作動や素子の破壊を招来しかねない値を示している。従って残留電圧の値がV1以上の値である場合には、スイッチング素子Sを保護するために、引き続きバックゲートバイアス補償回路2によるバックゲートバイアス処理が行われる必要がある。
一方、V2の値は、V1の値よりも低い値を示している。このV2の値は、例えば、バックゲートバイアス補償回路2であってもドライブ回路Dに対してバックゲートバイアスを印加することができない電圧値である。
キャパシタCの残留電圧がこのV2の値となってしまうと、「電源側」の(1)の場合と同じようにゲート電源Gの電圧は0V、或いは、電圧不定の状態となる。しかしながらV2の値はV1の値よりは低い値であり、当該V2の値未満の電圧値であれば、スイッチング素子Sにおける上記誤作動等は起きない。そこで、バックゲートバイアス補償回路2は、キャパシタCの残留電圧の値が当該V2の値未満になるまでドライブ回路Dに対してキャパシタCの残留電圧を利用してバックゲートバイアスを印加する。
すなわち、ゲート電位判定回路24では、スイッチング素子Sに生じている電位が予め定められた閾値(ここでは、例えば、V2の値)以上であるか否かを判定し、電位が閾値以上の値である場合には、引き続きバックゲートバイアス補償回路2によるバックゲートバイアス処理が行われる。一方、電位が閾値未満の値まで下がった場合には、バックゲートバイアス補償回路2によるバックゲートバイアス処理を終了する。
なお、ここでは「V1」、「V2」を用いて上述のように説明したが、当該「V1」、「V2」の値は、スイッチング素子Sの特性によって任意に設定することができる値である。
図2における「電源側」の(2)を見ると、マイナスのゲート電源は破線の前後でスイッチング素子Sに印加する電圧の値に変化は見られない。これは、バックゲートバイアス補償回路2によってドライブ回路DにキャパシタCの残留電圧を利用して生成されたマイナスのゲート電圧が印加されるからである。
そして、上述した一点鎖線で示すタイミングまでのXで示す期間に亘って、バックゲートバイアス補償回路2がドライブ回路DにキャパシタCの残留電圧を利用して生成されたマイナスのゲート電圧を印加し、バックゲートバイアスの処理がなされている。ここで一点鎖線は、「素子側」の電源電圧においてV2の値を示す位置に表されている。
V2は、上述したように、バックゲートバイアス補償回路2であってもドライブ回路Dに対してバックゲートバイアスを印加することができない電圧値である。従って、バックゲートバイアス補償回路2はゲート電源Gが0V、或いは、電圧不定になってからキャパシタCの残留電圧を利用してバックゲートバイアスを印加できなくなるまでの間、ドライブ回路Dに対してキャパシタCの残留電圧を利用してバックゲートバイアスを印加する。
このような期間キャパシタCの残留電圧を利用してバックゲートバイアスをドライブ回路Dに印加することができれば、スイッチング素子Sに対して、例えばV1の電圧が印加されたとしても適切に誤作動等が生ずることを回避することができ、より確実にスイッチング素子Sを保護できる。
[動作]
次に、キャパシタCの残留電圧を利用したバックゲートバイアス印加の流れについて、図3、図4を用いて説明する。図3、図4は、実施の形態においてバックゲートバイアス補償回路2の動作の流れを示すフローチャートである。特に図3は、電源電圧検知回路25における処理の流れを、図4はゲート電位判定回路24における処理の流れを示している。
まず電源電圧検知回路25が、直流電源1が電源遮断により0V、或いは、電源不定の状態である電源異常の状態になったか否かを検知する(ST1)。この電源遮断が生ずる理由については、上述したように、停電等の意図しない場合、メンテナンス等の意図した場合のいずれの場合も含まれる。
電源電圧検知回路25が直流電源1の状態として電源遮断の状態にないと判断した場合には(ST1のNO)、このまま直流電源1の検知を継続する。すなわち、電源電圧検知回路25は直流電源1の状態を常時検知している。なお、図3におけるフローチャートでは、電源異常の状態にないと判断された場合に電源電圧検知回路25による検知処理が終了するように示されている。
一方、電源電圧検知回路25が、直流電源1が電源遮断の状態にあることを検知した場合には(ST1のYES)、ゲート電位判定回路24に対して直流電源1が電源遮断の状態にあること及びキャパシタCに残留電圧が存在することを報知する(ST2)。
このように電源電圧検知回路25からの報知を受けたゲート電位判定回路24は、図4に示すように、スイッチング素子Sにゲート電源Gからゲート電源が入力されているか否か、且つゲート信号が正常に入力されているかを判定する(ST11)。
ゲート電位判定回路24が判定した結果、スイッチング素子Sにゲート電源Gからゲート電源が入力され、且つゲート信号が正常に入力されている場合には(ST11のYES)、スイッチング素子Sが誤作動等を起こす心配はないことから、特にバックゲートバイアス補償回路2を利用したバックゲートバイアスを印加する必要はない(後述)。
ゲート電位判定回路24は、上記判定を行った結果、スイッチング素子Sにゲート電源Gからのゲート電源の入力、又は、ゲート信号の入力が正常に行われていない場合には(ST11のNO)、次に、スイッチング素子Sに電位が生じているかを判定する(ST12)。
ゲート電位判定回路24が判定した結果、スイッチング素子Sに電位が生じていない場合には(ST12のNO)、スイッチング素子Sが誤作動等を起こす心配はないことから、特にバックゲートバイアス補償回路2を利用したバックゲートバイアスを印加する必要はない(後述)。
これに対して、ゲート電位判定回路24がスイッチング素子Sに電位が生じていると判定した場合は(ST12のYES)、ゲート電位判定回路24は、直流電源1が電源遮断等の異常状態にあることから、キャパシタCの残留電圧がスイッチング素子Sに印加されている状態にある、という判定を行ったことを示している。
ゲート電位判定回路24は、電源電圧検知回路25から通知された電位が、閾値を越えているか判定する。その結果、スイッチング素子Sに生じている電位が閾値未満であれば(ST13のNO)、スイッチング素子Sが誤作動等を起こす心配はないことから、特にバックゲートバイアス補償回路2を利用したバックゲートバイアスを印加する必要はない(後述)。
一方で、スイッチング素子Sに閾値以上の電位が生じている時(ST13のYES)、この場合はゲート電源Gからスイッチング素子Sに対してゲート電源、又はゲート信号が入力されていない状態である。そこでゲート電位判定回路24は、バックゲートバイアス補償回路2が動作中であるか否かを判定し(ST14)、バックゲートバイアス補償回路2が動作中で無いと判定した時(ST14のNO)は、バックゲートバイアス補償回路2をONにする(ST15)。
バックゲートバイアス補償回路2では、ゲート電位判定回路24からの指示を受けて、開放接点21をOFFからONに切り替えて、キャパシタCの残留電圧を利用して生成されたマイナスゲート電源をドライブ回路Dに印加する。
一方この時、ゲート電位判定回路24が判定した結果、バックゲートバイアス補償回路2が既に動作中の場合(ST14のYES)は、バックゲートバイアス補償回路2の動作を継続する。
そしてキャパシタCの残留電圧から、バックゲートバイアスが必要とされる範囲において、バックゲートバイアス補償回路2はドライブ回路Dに当該残留電圧を利用してマイナスゲート電圧を生成し印加してバックゲートバイアスの処理を続ける。
すなわち、ゲート電位判定回路24では、スイッチング素子Sの電位が閾値を越えている限り、開放接点21に対してそのスイッチをONとする信号を送り続けて、バックゲートバイアス補償回路2によるバックゲートバイアスの処理を続けさせる。
バックゲートバイアス補償回路2によるバックゲートバイアスの処理が行われている間、ゲート電位判定回路24は、スイッチング素子Sに生じている電位が閾値未満であるか否か、すなわち、キャパシタCの残留電圧が閾値未満となったか否かを判定する(ST16)。
ゲート電位判定回路24が判定した結果、キャパシタCの残留電圧が閾値未満となっていない場合には(ST16のNO)、引き続きバックゲートバイアス補償回路2の動作を継続させる。
一方、キャパシタCに残留電圧が閾値未満、或いは、なくなってしまうと、ドライブ回路Dに印加される電圧も0V、或いは、電圧不定の状態になる。この状態は、上述した図2で示すV1、乃至はV2の状態に該当するため、スイッチング素子Sにおいても誤作動等は生じない。
そこでゲート電位判定回路24がこの状態になったと判定した場合(ST16のYES)、改めてバックゲートバイアス補償回路2が動作中であるか否かを判定し(ST17)、動作中であれば(ST17のYES)、バックゲートバイアス補償回路2をOFFとする(ST18)。一方、バックゲートバイアス補償回路2が動作中ではない場合には(ST17のNO)、このままの状態を維持する。
ここでキャパシタCの残留電圧が閾値以下となった時に加え、電源の復旧によりゲート電源Gからドライブ回路Dにゲート電源とゲート信号が正常に入力されている時(ST11のYES)も、バックゲートバイアス補償回路2をOFFにする(ST18)。これにより、復旧後は即座にバックゲートバイアスの処理を終了させ、電源装置P本来の動作に戻すことができる。
また、スイッチング素子Sに電位が生じていない場合(ST12のNO)、或いは、キャパシタCの残留電圧が閾値未満である場合(ST13のNO)にも、バックゲートバイアス補償回路2が動作中であるか否かが判定され(ST17)、バックゲートバイアス補償回路2のOFFの状態維持、或いは、バックゲートバイアス補償回路2がOFFとされる(ST18)。
以上で基本的なバックゲートバイアス補償回路2の動作の流れを説明した。次に、当該バックゲートバイアス補償回路2の動作の流れを、電源装置Pにインターロックの機構が組み込まれた場合を例に挙げて説明する。インターロックの機構は、電源装置Pに対して電源が投入された場合と、電源装置Pの電源を遮断する場合とに動作するように構成されている。
まず電源投入時のインターロックの機構の動作についてである。図5は、実施の形態において、電源投入時におけるインターロック機構としてバックゲートバイアス補償回路2を用いる場合における動作の流れを示すフローチャートである。
電源装置Pに電源が投入された場合にインターロックの機構を機能させるのは、電源が投入されてドライブ回路Dが制御されていない中でスイッチング素子Sに電位が生じてしまうと、上述したような、スイッチング素子Sの誤作動等が生ずる可能性があるからである。
まず、ゲート電位判定回路24が、ゲート電位が正常であるか否かを判定する(ST21)。例えば、この時点でゲート電位が正常では無い場合には(ST21のNO)、電源装置Pから未だ電源が供給されていない状態や、ゲート電源Gが正常ではないと判定する。
そして、この状態で不用意に回路Aに電源を供給するとスイッチング素子Sの破壊等を招きかねない。そこでこの場合には、ゲート電位判定回路24からの指示に基づき、バックゲートバイアス補償回路2がキャパシタCの残留電圧を利用して生成したバックゲートバイアスをスイッチング素子Sに印加する(ST22)。
一方、ゲート電位判定回路24がゲート電位が正常であると判定した場合には(ST21のYES)、さらにスイッチング素子Sに正常にゲート信号が入力されているか否かを判定する(ST23)。例えば、ゲート電位判定回路24が、PWMパルスが周期的に変化している状態やドライブ回路Dにマイナスのゲート電圧が印加されている状態にあれば、正常にゲート信号が入力されていると判定する(ST23のYES)。
これに対して、スイッチング素子Sにゲート信号が入力されていないとゲート電位判定回路24が判定した場合には(ST23のNO)、上述したように、ゲート電位判定回路24がバックゲートバイアス補償回路2の開放接点21をONにし、バックゲートバイアス補償の処理が実行される(ST22)。
以上の処理を経て、スイッチング素子Sにおいて電源装置Pからの電源投入の準備が整った場合に、電源装置Pからの電源供給が開始され、スイッチング素子Sに電圧が印加される(ST24)。このようなインターロック機構の処理を経ることによって、安全、確実に回路Aを保護することができる。
次に、電源遮断時のインターロックの機構の動作についてである。図6は、実施の形態において、電源遮断時におけるインターロック機構としてバックゲートバイアス補償回路2を用いる場合における動作の流れを示すフローチャートである。
電源電圧検知回路25が、直流電源1からの電源供給が途絶え電源が遮断されたことを検知すると(ST31)、この検知情報が電源電圧検知回路25からゲート電位判定回路24へ送られる。そしてゲート電位判定回路24がスイッチング素子Sに対するバックゲートバイアスの処理が有効に働いているか否かを判定する(ST32)。
ここで、「バックゲートバイアスが有効か」の判定は、ドライブ回路Dに対してマイナスのゲート電圧が印加されているか否かの判定を行うことを意味する。もしドライブ回路Dに対してマイナスのゲート電圧が印加されていれば、スイッチング素子Sに残留電圧が印加されてもバックゲートバイアス処理が適切に実行されることになる。
もしゲート電位判定回路24がバックゲートバイアス処理が有効に機能していないと判定した場合には(ST32のNO)、バックゲートバイアス補償回路2に指示を出し、バックゲートバイアス補償回路2がキャパシタCの残留電圧を利用してバックゲートバイアス処理を行う(ST33)。
一方、ゲート電位判定回路24がバックゲートバイアスの処理が有効に実行されていると判定した場合には(ST32のYES)、さらにキャパシタCの残留電圧が閾値未満であるかを判定する(ST34)。
ゲート電位判定回路24が当該キャパシタCの残留電圧が閾値未満であるか否かの判定をする場合、キャパシタCの残留電圧については、例えば、電源電圧検知回路25からもたらされる情報を基に判定する。或いは、キャパシタCの残留電圧がどのくらいの時間で十分に放電するかについての情報を予め有しておき、当該情報を基に判定することも考えられる。
なお、ここでの閾値については、任意に設定可能である。例えば、図2を用いて説明した際の、V1、乃至はV2の値を閾値として設定することができる。
もしキャパシタCの残留電圧が閾値未満である場合には(ST34のYES)、当該残留電圧がスイッチング素子Sに印加されることによるスイッチング素子Sの誤作動等は起きないと考えられることから、インターロック機構による処理は完了する。
一方、バックゲートバイアス補償回路2による処理が行われている場合、ゲート電位判定回路24は引き続きキャパシタCの残留電圧が閾値未満であるか否かを判定する。閾値よりも大きな残留電圧がある場合には(ST34のNO)、継続してバックゲートバイアス補償回路2による処理が実行される。
もしゲート電位判定回路24がキャパシタCの残留電圧が閾値未満であると判定した場合には(ST34のYES)、当該残留電圧がスイッチング素子Sに印加されることによるスイッチング素子Sの誤作動等は起きないと考えられることから、バックゲートバイアス補償回路2はOFFされ、インターロック機構による処理は完了する(ST35)。
以上の処理を経ることによって、電源装置Pの電源遮断の際にも安全、確実に回路Aを保護することができる。
(その他の実施の形態)
図7は、実施の形態における変形例として、電源装置Pを備える医用画像診断装置Mの全体構成を示すブロック図である。この医用画像診断装置Mとしては、例えば、X線CT装置(computed tomography:コンピュータ断層撮影装置)や、磁気共鳴診断装置(MRI:magnetic resonance imaging)等の装置が該当する。
例えば、医用画像診断装置MがX線CT装置である場合には、例えばX線CT装置は、架台装置と寝台装置を有する本体M1を備えている。架台装置は、検査や治療等の対象となる被検体の医用画像を生成するために、被検体内部の情報を収集する装置である。寝台装置は、被検体が載置される装置である。
また、本体M1には、被検体の内部情報を収集し、この収集された情報に基づいて被検体内部を画像化した医用画像を生成する医用画像生成装置も備えている。
本体M1の内部には、電源装置Pが備えられている。医用画像診断装置Mは、当該電源装置Pからの電源の供給を受けることによって各部が起動し機能を果たすことができる。また、これまで説明してきたように、一定の条件の下、キャパシタCの残留電圧を用いてバックゲートバイアス補償回路2によるバックゲートバイアスの処理が実行される。
バックゲートバイアス補償回路2が有効に機能することによって、医用画像診断装置Mにおいて用いられているスイッチング素子Sや機器の誤作動や破壊を回避して確実に保護することができる。
さらに図6に示す医用画像診断装置Mは、ディスプレイM2を備えている。ディスプレイM2は、上述した本体M1の内部に設けられる医用画生成装置により生成された医用画像を表示する。またその他、検査処理に利用する検査プロトコル、或いは、操作画面(例えば、ユーザから各種指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface))などの各種画像を図示しない制御部の制御に従って表示するものである。
このディスプレイM2としては、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどを用いることが可能である。
なお、ここではディスプレイM2をX線CT装置Mの1つの構成要素として記載しているが、このような構成に限られない。例えば、ディスプレイM2をX線CT装置Mの構成要素ではなく、X線CT装置Mとは別体に構成することも可能である。
以上説明した少なくとも1つの実施の形態によれば、電源電圧が不定な状態にあり、スイッチング素子にゲート電圧やゲート信号が入力されない状態であっても、キャパシタの残留電圧を利用してスイッチング素子にバックゲートバイアスを印加することで、誤ってこのスイッチング素子がONされてしまうことを防ぎ、確実にスイッチング素子を保護することができる。
また、上述したバックゲートバイアス補償回路の構成であれば、より簡単な構成で確実にバックゲートバイアス処理を行うことができる。さらにキャパシタの残留電圧を利用してバックゲートバイアス処理を行うために、ゲート電源以外にバックゲートバイアス処理用の新たな電源を用意する必要はなく、装置を簡易に構成することができ省スペース化にも寄与する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。