JP7318928B2 - 化学強化ガラスの残留応力の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化学強化ガラスの残留応力の評価方法に関する。
化学強化ガラスは、硝酸カリウム(KNO)融液にガラスを浸漬し、ガラスに含まれるナトリウムイオン(Na)と、硝酸カリウム融液中のカリウムイオン(K)とを置換(イオン交換)したものである。化学強化ガラスは、通常のガラスの5倍以上の強度を有する。
従来、化学強化ガラスの強度の評価方法としては、例えば、化学強化ガラスを鉛直方向下方から2点で支持し、その2点間の中心を押圧して、化学強化ガラスの曲げ応力を測定する曲げ試験法が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
また、化学強化ガラスの残留応力の評価方法としては、例えば、光導波路法が挙げられる(例えば、特許文献1、非特許文献2)参照)。
特開2016-142600号公報
いまさら「ガラスの強度試験」、吉田 智、ニューガラス 28(109)、51-56(2013);JIS R 1601「ファインセラミックスの曲げ強度試験方法」(http://kikakurui.com/r1/R1601-2008-01.html) 光ウェーブガイド効果による化学強化ガラスの表面応力測定、岸井 貫、窯業協会誌87(3)119-126(1979)
曲げ試験法や光導波路法は、化学強化ガラスの残留応力を局所的に測定することには適していないばかりでなく、測定可能な試料(化学強化ガラス)に制限がある等の課題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、化学強化ガラスについて、非接触、非破壊かつ位置選択的に残留応力を評価することができる化学強化ガラスの残留応力の評価方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記の態様を有する。
[1]下記の式(1)で表される化学強化ガラスの残留応力σにおける、イオン交換に伴って増大する比容Vの変化率である[ΔV/V]Virtualを、前記化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルから導出することにより、前記化学強化ガラスの残留応力σを算出する化学強化ガラスの残留応力の評価方法。
Figure 0007318928000001
(式中、Eは化学強化ガラスのヤング率、νは化学強化ガラスのポアソン比、Vは化学強化ガラスの比容、σは化学強化ガラスの残留応力のつり合い条件から得られる定数項である。)
[2]イオン交換前のガラスと残留応力ゼロのガラスの顕微ラマン散乱スペクトルのボソンピークを観察することにより、ガラスの構造緩和率Rを示す下記の式(4)で表される近似式と、ガラスのカリウムイオン濃度C示す下記の式(5)で表される近似式とから得られる下記の式(6)におけるVαとVγを決定し、
残留応力ゼロのガラスの組成分析により、下記の式(6)におけるCβ,γを決定し、
下記の式(6)におけるΔIR=1を、イオン交換前のガラスにおけるDピークの強度Iαと、残留応力ゼロのガラスにおけるDピークの強度Iγとから、ΔIR=1=Iγ-Iαとして求め、上記の式(6)におけるΔIを、市販の化学強化ガラスの最表面のDピークの強度Iとイオン交換前のガラスのDピークの強度Iαとから、ΔI=I-Iαとして求め、上記の式(6)におけるCを、市販の化学強化ガラスの最表面のエネルギー分散型X線分析から求め、これらのV、ΔI、Cを上記の式(6)に代入することにより、上記の式(6)におけるVβを決定し、
下記の式(4)、下記の式(5)および下記の式(6)から得られる下記の式(7)に、ガラスのカリウムイオン濃度Cと比容Vの関係を示す図におけるイオン交換前のガラスを示す点α、理想的化学強化ガラスを示す点βおよび残留応力ゼロのガラスを示す点γを結ぶ線分で形成される三角形の内部にある化学強化ガラスに対する比容V、ΔkおよびΔIの値を代入して得られる連立方程式から、下記の式(7)におけるa´およびb´を求め、
上記の式(7)と前記[ΔV/V]Virtualを表す下記の式(8)から得られる下記の式(9)に、化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるΔkとΔIを代入して、前記残留応力σを算出する[1]に記載の化学強化ガラスの残留応力の評価方法。
Figure 0007318928000002
(式中、Rは構造緩和率、ΔIはイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iの変化量、ΔIR=1はイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iと残留応力ゼロのガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iの差、Cはガラスのカリウムイオン濃度、Cβは理想的化学強化ガラスにおけるガラスのカリウムイオン濃度、Cγは残留応力ゼロのガラスにおけるガラスのカリウムイオン濃度を示す。)
Figure 0007318928000003
(式中、aおよびbはガラスのカリウムイオン濃度Cと比容Vの関係を示す図におけるイオン交換前のガラスを示す点α、理想的化学強化ガラスを示す点βおよび残留応力ゼロのガラスを示す点γを結ぶ線分で形成される三角形の内部にある化学強化ガラスに対する比容V、イオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kの変化量、およびイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iの変化量ΔIを式(7)に代入して得られる値を示す。)
Figure 0007318928000004
(式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cはガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cβは理想的化学強化ガラスにおけるガラスのカリウムイオン濃度、Cγは残留応力ゼロのガラスにおけるガラスのカリウムイオン濃度、Vαはイオン交換前のガラスの比容、Vβは理想的化学強化ガラスの比容、Vγは残留応力ゼロのガラスの比容を示す。)
Figure 0007318928000005
(式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cは上記と同じであり、Cβは上記と同じであり、Cγは上記と同じであり、Vαは上記と同じであり、Vβは上記と同じであり、Vγは上記と同じであり、a´=1/a、b´=b/aであり、aおよびbは上記と同じである。)
Figure 0007318928000006
Figure 0007318928000007
(式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cは上記と同じであり、Cβは上記と同じであり、Cγは上記と同じであり、Vαは上記と同じであり、Vβは上記と同じであり、Vγは上記と同じであり、a´=1/a、b´=b/aであり、aおよびbは上記と同じである。)
本発明によれば、化学強化ガラスについて、非接触、非破壊かつ位置選択的に残留応力を評価することができる化学強化ガラスの残留応力の評価方法を提供することができる。
ガラスにおける、カリウムイオン(K)濃度Cと比容Vの関係を示す図である。 化学強化ガラスにおけるカリウムイオン(K)濃度Cとガラス深さ(ガラスの最表面を基準として、ガラスの厚さ方向に沿う深さ)zの関係を示す図である。 顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kとガラス深さzの関係を示す図である。 顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iとガラス深さzの関係を示す図である。 酸化物ガラスにおけるボソンピークの位置と比容Vの関係を示す図である。 化学強化ガラスの残留応力σとガラス深さzの関係を示す図である。
本発明の化学強化ガラスの残留応力の評価方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態の化学強化ガラスの残留応力の評価方法は、下記の式(1)で表される化学強化ガラスの残留応力σにおける、イオン交換に伴って増大する比容Vの変化率である[ΔV/V]Virtualを、化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルから導出することにより、化学強化ガラスの残留応力σを算出する方法である。
Figure 0007318928000008
(式中、Eは化学強化ガラスのヤング率、νは化学強化ガラスのポアソン比、Vは化学強化ガラスの比容、σは化学強化ガラスの残留応力のつり合い条件から得られる定数項である。)
本実施形態の化学強化ガラスの残留応力の評価方法では、まず、イオン交換前のガラスと残留応力ゼロのガラスの顕微ラマン散乱スペクトルのボソンピークを観察することにより、ガラスの構造緩和率Rを示す下記の式(4)で表される近似式と、ガラスのカリウムイオン(K)濃度C示す下記の式(5)で表される近似式とから得られる下記の式(6)におけるVαとVγを決定する。
Figure 0007318928000009
(式中、Rは構造緩和率、ΔIはイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iの変化量、ΔIR=1はイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iと残留応力ゼロのガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iの差、Cはガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cβは理想的化学強化ガラスにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cγは残留応力ゼロのガラスにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度を示す。)
Figure 0007318928000010
(式中、aおよびbはガラスのカリウムイオン(K)濃度Cと比容Vの関係を示す図におけるイオン交換前のガラスを示す点α、理想的化学強化ガラスを示す点βおよび残留応力ゼロのガラスを示す点γを結ぶ線分で形成される三角形の内部にある化学強化ガラスに対する比容V、イオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kの変化量、およびイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iの変化量ΔIを式(7)に代入して得られる値を示す。)
Figure 0007318928000011
(式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cはガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cβは理想的化学強化ガラスにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cγは残留応力ゼロのガラスにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度、Vαはイオン交換前のガラスの比容、Vβは理想的化学強化ガラスの比容、Vγは残留応力ゼロのガラスの比容を示す。)
本実施形態の化学強化ガラスの残留応力の評価方法では、ラマン分光装置を用いた顕微ラマン分光法により、ガラス(イオン交換前のガラスと残留応力ゼロのガラス)にレーザー光を照射して、発生したラマン散乱光のスペクトル(顕微ラマン散乱スペクトル)のボソンピークを観察する。
次に、エネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-ray spectrometry、EDX)により、ガラスに含まれるナトリウムイオン(Na)を全てカリウムイオン(K)に置換した残留応力ゼロのガラスの組成分析を行う。これにより、上記の式(5)におけるCβ,γを決定する。
次に、上記の式(6)におけるΔIR=1を、イオン交換前のガラスにおけるDピークの強度Iαと、残留応力ゼロのガラスにおけるDピークの強度Iγとから、ΔIR=1=Iγ-Iαとして求め、上記の式(6)におけるΔIを、市販の化学強化ガラスの最表面のDピークの強度Iとイオン交換前のガラスのDピークの強度Iαとから、ΔI=I-Iαとして求め、上記の式(6)におけるCを、市販の化学強化ガラスの最表面のエネルギー分散型X線分析から求め、これらのV、ΔI、Cを上記の式(6)に代入することにより、上記の式(6)におけるVβを決定する。
次に、上記の式(4)、上記の式(5)および上記の式(6)から得られる下記の式(7)に、ガラスのカリウムイオン濃度Cと比容Vの関係を示す図におけるイオン交換前のガラスを示す点α、理想的化学強化ガラスを示す点βおよび残留応力ゼロのガラスを示す点γを結ぶ線分で形成される三角形の内部にある化学強化ガラスに対する比容V、ΔkおよびΔIの値を代入して得られる連立方程式から、下記の式(7)におけるa´およびb´を求める。
Figure 0007318928000012
(式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cは上記と同じであり、Cβは上記と同じであり、Cγは上記と同じであり、Vαは上記と同じであり、Vβは上記と同じであり、Vγは上記と同じであり、a´=1/a、b´=b/aであり、aおよびbは上記と同じである。)
上記の式(7)と上記の[ΔV/V]Virtualを表す下記の式(8)から得られる下記の式(9)に、化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるΔkとΔIを代入して、残留応力σを算出する。
Figure 0007318928000013
Figure 0007318928000014
(式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cは上記と同じであり、Cβは上記と同じであり、Cγは上記と同じであり、Vαは上記と同じであり、Vβは上記と同じであり、Vγは上記と同じであり、a´=1/a、b´=b/aであり、aおよびbは上記と同じである。)
本実施形態の化学強化ガラスの残留応力の評価方法によれば、化学強化ガラスについて、非接触、非破壊かつ位置選択的に残留応力を評価することができる。
以下、実験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
[実験例]
[化学強化ガラスの残留応力の評価方法]
化学強化ガラスの残留応力σは、Stuffing(詰め込み)効果を定式化した下記の式(1)で表される(V.Tyagi,et al.,J.Non-cryst.Solids 238,186(1998)、R.Gy,Mat.Sci.Eng.B 149,159(2008)、K.D.Vargheese et al.403,107(2014)参照)。
Figure 0007318928000015
上記の式(1)中、Eは化学強化ガラスのヤング率、νは化学強化ガラスのポアソン比、Vは化学強化ガラスの比容、σは化学強化ガラスの残留応力のつり合い条件から得られる定数項である。σは、化学強化ガラス内部における引張応力に相当する。化学強化ガラスの残留応力のつり合い条件は、下記の式(2)で表される。
Figure 0007318928000016
上記の式(2)中、zは化学強化ガラス深さ(ガラスの最表面を基準として、ガラスの厚さ方向に沿う深さ)、化学強化ガラスの厚さである。
ヤング率Eおよびポアソン比νについては、データシート値(E=76.6GPa、ν=0.21、https://www.corning.com/microsites/csm/gorillaglass/PI_Sheets/CGG_PI_Sheet_Gorilla%20Glass%203.pdf参照)等を参照して、取得することができる。よって、[ΔV/V]Virtualを何らかの手法によって求めることができれば、化学強化ガラスの残留応力σを算出することができる。
これにより、化学強化ガラスについて、非接触、非破壊かつ位置選択的な残留応力の評価が可能になる。
ガラスにおける、カリウムイオン(K)濃度Cと比容(比容積)Vの関係を説明する。
図1は、ガラスにおける、カリウムイオン(K)濃度Cと比容Vの関係を示す図である。
図1において、縦軸はガラスの比容V(×Å/g-atom・N)、横軸はガラスのカリウムイオン(K)濃度を示す。なお、Nは、アボガドロ定数(6.02214086×1023mol-1)である。Å=10-10mである。また、図1において、点αはイオン交換前のガラスを示す点、点βはガラスに含まれるナトリウムイオン(Na)を全てカリウムイオン(K)に置換した理想的化学強化ガラスを示す点、点γは点βのガラスと組成が等しい残留応力ゼロのガラスを示す点である。
分子動力学シミュレーション(K.D.Vargheese et al.403,107(2014)参照)によれば、図1に示すように、比容Vは、カリウムイオン(K)濃度Cの増大に伴って、線形に増大する。
図1において、点αと点βを結ぶ線分αβの傾きは、点αと点γを結ぶ線分αγの傾きよりも小さい。これは、イオン交換によって、比容Vの増大が抑制されていることを意味する。このような現象を、Stuffing効果という。
また、イオン交換前のガラス(点α)をイオン交換したガラスにおけるカリウムイオン(K)濃度Cと比容Vは、図1に示す三角形αβγの内部および三角形αβγの辺上の一点として表される。その点は、下記の式(3)で表される。
Figure 0007318928000017
上記の式(3)中、Vαは図2に示す点αにおけるガラスの比容、Vβは図2に示す点βにおけるガラスの比容、Vγは図2に示す点γにおけるガラスの比容である。また、上記の式(3)中、Cαは図2に示す点αにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cβは図2に示す点βにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cγは図2に示す点γにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度である。また、上記の式(3)中、Rは、ガラスが理想的化学強化ガラスからどの程度、構造緩和、すなわち、比容Vが増大しているかを示す指標(構造緩和率)である。このRは、図1における線分αβと線分αγ間の比容差を1としたときの比容差(図1に示す線分αβと点Rとの差)に相当する。
上記の式(3)の右辺を顕微ラマン散乱スペクトルから計算する方法を示す。
図2は、化学強化ガラスにおけるカリウムイオン(K)濃度Cとガラス深さzの関係を示す図である。図2に示すように、カリウムイオン(K)濃度Cは、ガラスの最表面に近づくに従って増大する。
ラマン分光装置を用いた顕微ラマン分光法により、ガラスにレーザー光を照射して、発生したラマン散乱光のスペクトル(顕微ラマン散乱スペクトル)を観察することにより、図2に示すような結果が得られる。
ラマン分光装置を用いた顕微ラマン分光法では、測定範囲を5cm-1~1400cm-1、ガラスに照射するレーザー光のスポット径を1μm、深さ分解能を5μm以下とする。
また、顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピーク(~1100cm-1)の波数をk、Dピーク(~600cm-1)の強度をIとすると、種々のガラスにおける、Aピークの波数kと、Dピークの強度Iは、ガラス深さzに対して、それぞれ変化する。
図3は、顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kとガラス深さzの関係を示す図である。図4は、顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iとガラス深さzの関係を示す図である。
図3と図4から、構造緩和率Rの増大は、Dピークの強度Iを増大させ(図4における化学強化ガラス(市販および自作)から、残留応力ゼロのガラスへの変化に相当)、同時にAピークの波数kを減少させる(図3におけるガラス深さz=0付近の化学強化ガラス(市販および自作)から、残留応力ゼロのガラスへの変化に相当)。一方、カリウムイオン(K)濃度Cの増大は、Aピークの波数kを増大させる(図3の化学強化ガラスにおけるガラス深さz<100μmにおける変化に相当)ことが分かる(N.Terakado et al.124,1164(2016)、N.Terakado et al.44,2843(2018)参照)。
これらの関係を線形近似すると、下記の式(4)と下記の式(5)が得られる。
Figure 0007318928000018
Figure 0007318928000019
上記の式(4)、上記の式(5)中、Δはイオン交換前のガラス(点α)に対する変化量、a(>0)とb(>0)は未定係数である。上記の式(4)、ΔIR=1は、イオン交換前のガラス(点α)におけるDピークの強度Iと残留応力ゼロのガラス(点γ)におけるDピークの強度Iの差に相当する。
上記の式(3)に、上記の式(4)および上記の式(5)を代入すると、下記の式(6)となる。
Figure 0007318928000020
上記の式(6)における未定数は、以下のようにして求められる。
図5は、酸化物ガラスにおけるボソンピークの位置と比容Vの関係を示す図である。
図5に示すように、LiO-SiO、NaO-SiO等の酸化物ガラスの場合、比容Vは、その組成によらず、ボソンピークの波数kから一意的に定まる(K.Nakamura et al.,J.Cream.Soc.Jpn.121,1012(2013)参照)。よって、イオン交換前のガラス(点α)と残留応力ゼロのガラス(点γ)の顕微ラマン散乱スペクトルのボソンピークを観察することにより、上記の式(6)におけるVαとVγを決定できる。
上記の式(6)におけるCβ,γは、残留応力ゼロのガラス(点γ)の組成分析から決定できる。組成分析方法としては、例えば、エネルギー分散型X線分析(EDX)、蛍光X線分析(XRF)等を用いることができる。
残留応力ゼロのガラス(点γ)のXRF結果は下表のようになる。この結果から、K濃度を算出すると、Cβ,γ=10mol%が得られる。
Figure 0007318928000021
上記の式(6)におけるΔIR=1は、イオン交換前のガラス(点α)におけるDピークの強度をIα、残留応力ゼロのガラス(点γ)におけるDピークの強度をIγとすると、ΔIR=1=Iγ-Iαとして求められる。上記の式(6)におけるVβは、市販の化学強化ガラスの最表面のボソンピークの波数kから決定する。上記の式(6)におけるΔIは、市販の化学強化ガラスの最表面のDピークの強度Iとイオン交換前のガラス(点α)のDピークの強度Iαから、ΔI=I-Iαとして求められる。上記の式(6)におけるCは、市販の化学強化ガラスの最表面のエネルギー分散型X線分析(EDX)から得られる。これらのV、ΔI、Cを上記の式(6)に代入することにより、上記の式(6)におけるVβを決定できる。
上記の式(4)、上記の式(5)および上記の式(6)から、下記の式(7)が得られる。
Figure 0007318928000022
上記の式(7)における未定数a´と未定数b´は、以下のようにして求められる。
理想的化学強化ガラス(点β)と三角形αβγの内部にある任意の化学強化ガラスに対する比容V、ΔkおよびΔIはそれぞれ、顕微ラマン散乱スペクトルから求めることができる。得られた比容V、ΔkおよびΔIの値を、上記の式(7)に代入して得られる連立方程式から、未定数a´と未定数b´を求めることができる。図5に示すように、LiO-SiO、NaO-SiO等の酸化物ガラスの場合、比容Vは、その組成によらず、ボソンピークの波数kから一意的に定まる(K.Nakamura et al.,J.Cream.Soc.Jpn.121,1012(2013)参照)。よって、化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルのボソンピークを観察することにより、上記の式(5)におけるVを決定できる。Δkは、化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kとイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kαから、Δk=k-kαとして求めることができる。ΔIは、化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iとイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iαから、ΔI=I-Iαとして求めることができる。
ここで、[ΔV/V]Virtualは、図1に示すV(C,1)とV(C,R)を用いて、下記の式(8)で表される。
Figure 0007318928000023
上記の式(8)において、右辺の分子が本来増大するはずだった比容Vに相当する。
上記の式(7)および上記の式(8)から、下記の式(9)が得られる。
Figure 0007318928000024
よって、上記の式(9)にイオン交換後の顕微ラマン散乱スペクトルにおけるΔkとΔIを代入することによって、上記の式(1)の化学強化ガラスの残留応力σを算出することができる。
図6は、上記の式(9)を上記の式(1)に代入して求めた化学強化ガラスの残留応力σとガラス深さzの関係を示す図である。
図6の結果から、本実施形態の化学強化ガラスの残留応力の評価方法は、光弾性法による検査装置の結果とほぼ一致することが分かった。

Claims (2)

  1. 下記の式(1)で表される化学強化ガラスの残留応力σにおける、イオン交換に伴って増大する比容Vの変化率である[ΔV/V]Virtualを、前記化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルから導出することにより、前記化学強化ガラスの残留応力σを算出する化学強化ガラスの残留応力の評価方法。
    Figure 0007318928000025
    (式中、Eは化学強化ガラスのヤング率、νは化学強化ガラスのポアソン比、Vは化学強化ガラスの比容、σは化学強化ガラスの残留応力のつり合い条件から得られる定数項である。)
  2. イオン交換前のガラスと残留応力ゼロのガラスの顕微ラマン散乱スペクトルのボソンピークを観察することにより、ガラスの構造緩和率Rを示す下記の式(4)で表される近似式と、ガラスのカリウムイオン濃度C示す下記の式(5)で表される近似式とから得られる下記の式(6)におけるVαとVγを決定し、
    残留応力ゼロのガラスの組成分析により、下記の式(6)におけるCβ,γを決定し、
    下記の式(6)におけるΔIR=1を、イオン交換前のガラスにおけるDピークの強度Iαと、残留応力ゼロのガラスにおけるDピークの強度Iγとから、ΔIR=1=Iγ-Iαとして求め、上記の式(6)におけるΔIを、市販の化学強化ガラスの最表面のDピークの強度Iとイオン交換前のガラスのDピークの強度Iαとから、ΔI=I-Iαとして求め、上記の式(6)におけるCを、市販の化学強化ガラスの最表面のエネルギー分散型X線分析から求め、これらのV、ΔI、Cを上記の式(6)に代入することにより、上記の式(6)におけるVβを決定し、
    下記の式(4)、下記の式(5)および下記の式(6)から得られる下記の式(7)に、前記三角形の内部にある化学強化ガラスに対する比容V、ΔkおよびΔIを代入して得られる連立方程式から、下記の式(7)におけるa´およびb´を求め、
    上記の式(7)と前記[ΔV/V]Virtualを表す下記の式(8)から得られる下記の式(9)に、化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるΔkとΔIを代入して、前記残留応力σを算出する請求項1に記載の化学強化ガラスの残留応力の評価方法。
    Figure 0007318928000026
    (式中、Rは構造緩和率、ΔIはイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iの変化量、ΔIR=1はイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iと残留応力ゼロのガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピークの強度Iの差、Cはガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cβは理想的化学強化ガラスにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cγは残留応力ゼロのガラスにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度を示す。)
    Figure 0007318928000027
    (式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、aおよびbはガラスのカリウムイオン濃度Cと比容Vの関係を示す図におけるイオン交換前のガラスを示す点α、理想的化学強化ガラスを示す点βおよび残留応力ゼロのガラスを示す点γを結ぶ線分で形成される三角形の内部にある化学強化ガラスに対する比容V、イオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるAピークの波数kの変化量、およびイオン交換前のガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iに対する化学強化ガラスの顕微ラマン散乱スペクトルにおけるDピーク強度Iの変化量ΔIを式(7)に代入して得られる値を示す。)
    Figure 0007318928000028
    (式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cはガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cβは理想的化学強化ガラスにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度、Cγは残留応力ゼロのガラスにおけるガラスのカリウムイオン(K)濃度、Vαはイオン交換前のガラスの比容、Vβは理想的化学強化ガラスの比容、Vγは残留応力ゼロのガラスの比容を示す。)
    Figure 0007318928000029
    (式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cは上記と同じであり、Cβは上記と同じであり、Cγは上記と同じであり、Vαは上記と同じであり、Vβは上記と同じであり、Vγは上記と同じであり、a´=1/a、b´=b/aであり、aおよびbは上記と同じである。)
    Figure 0007318928000030
    Figure 0007318928000031
    (式中、ΔIは上記と同じであり、ΔIR=1は上記と同じであり、Cは上記と同じであり、Cβは上記と同じであり、Cγは上記と同じであり、Vαは上記と同じであり、Vβは上記と同じであり、Vγは上記と同じであり、a´=1/a、b´=b/aであり、aおよびbは上記と同じである。)
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