[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)エポキシ基及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を有するシリコーン樹脂、(B)特定の構造を有する光酸発生剤を含むものである。
[(A)シリコーン樹脂]
(A)成分のシリコーン樹脂は、分子中にエポキシ基、フェノール性ヒドロキシ基又はその両方を含むものである。
(A)成分のシリコーン樹脂としては、特には限定されないが、下記式(a)で表される繰り返し単位及び下記式(b)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
式中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数1~8のヒドロカルビル基であるが、炭素数1~6のものが好ましい。mは、1~600の整数であるが、0~400の整数が好ましく、0~200の整数がより好ましい。a及びbは、0<a<1、0<b<1及びa+b=1を満たす数である。Xは、エポキシ基及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を含む2価の有機基である。
前記ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基及びこれらの構造異性体等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられる。これらのうち、メチル基及びフェニル基が原料の入手の容易さから好ましい。
このようなシリコーン樹脂の中でも、特に、下記式(a1)~(a4)及び(b1)~(b4)で表される繰り返し単位(以下、それぞれ繰り返し単位a1~a4及びb1~b4ともいう。)を含むものが特に好ましい。
(式中、R
1~R
4及びmは、前記と同じ。)
式(a1)及び(b1)中、X
1は、下記式(X1)で表される2価の基である。
式(X1)中、Y1は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R13及びR14は、それぞれ独立に、炭素数1~4の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数1~4の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。p1及びp2は、それぞれ独立に、0~7の整数である。q1及びq2は、それぞれ独立に、0~2の整数である。破線は、結合手である。
前記飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、これらの構造異性体等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビルオキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、これらの構造異性体等のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
式(a2)及び(b2)中、X
2は、下記式(X2)で表される2価の基である。
式(X2)中、Y2は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R23及びR24は、それぞれ独立に、炭素数1~4の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数1~4の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。r1及びr2は、それぞれ独立に、0~7の整数である。s1及びs2は、それぞれ独立に、0~2の整数である。前記飽和ヒドロカルビル基及び飽和ヒドロカルビルオキシ基としては、R13及びR14の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。破線は、結合手である。
式(a3)及び(b3)中、X
3は、下記式(X3)で表される2価の基である。
式(X3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。t1及びt2は、それぞれ独立に、0~7の整数である。破線は、結合手である。
式(a4)及び(b4)中、X
4は、下記式(X4)で表される2価の基である。
式(X4)中、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R43及びR44は、それぞれ独立に、炭素数1~8のヒドロカルビル基である。u1及びu2は、それぞれ独立に、0~7の整数である。vは、0~600の整数であるが、0~400の整数が好ましく、0~200の整数がより好ましい。前記ヒドロカルビル基としては、R1~R4の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。破線は、結合手である。
(A)成分のシリコーン樹脂は、その重量平均分子量(Mw)が、3,000~500,000であるものが好ましく、5,000~200,000であるものがより好ましい。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフランを溶出溶剤として用いた、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
式(a1)~(a4)及び(b1)~(b4)中、a1~a4及びb1~b4は、0≦a1<1、0≦a2<1、0≦a3<1、0≦a4<1、0≦b1<1、0≦b2<1、0≦b3<1、0≦b4<1、0<a1+a2+a3<1、0<b1+b2+b3<1及びa1+a2+a3+a4+b1+b2+b3+b4=1を満たす数であるが、0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0≦a3≦0.8、0≦a4≦0.8、0≦b1≦0.95、0≦b2≦0.95、0≦b3≦0.95、0≦b4≦0.95、0.05≦a1+a2+a3≦0.8、0.2≦b1+b2+b3≦0.95及びa1+a2+a3+a4+b1+b2+b3+b4=1を満たす数がより好ましく、0≦a1≦0.7、0≦a2≦0.7、0≦a3≦0.7、0≦a4≦0.7、0≦b1≦0.9、0≦b2≦0.9、0≦b3≦0.9、0≦b4≦0.9、0.1≦a1+a2+a3≦0.7、0.3≦b1+b2+b3≦0.9及びa1+a2+a3+a4+b1+b2+b3+b4=1を満たす数が更に好ましい。
前述した各繰り返し単位は、ランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。また、各繰り返し単位中のシロキサン単位が2以上ある場合、各シロキサン単位は、全て同一であってもよく、2種以上の異なるシロキサン単位を含んでいてもよい。2種以上の異なるシロキサン単位を含む場合、シロキサン単位はランダムに結合していても、同種のシロキサン単位のブロックを複数含むものであってもよい。また、前記シリコーン樹脂において、シリコーン(シロキサン単位)含有率は、30~80質量%であることが好ましい。
(A)成分のシリコーン樹脂は、フィルム形成能を与えるものとして機能する。また、得られた樹脂フィルムは、積層体、基板等への良好な密着性、良好なパターン形成能、耐クラック性、及び耐熱性を有する。
(A)成分のシリコーン樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
[(A)シリコーン樹脂の製造方法]
(A)成分のシリコーン樹脂は、例えば、下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)ともいう。)と、下記式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)ともいう。)と、下記式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)ともいう。)、下記式(4)で表される化合物(以下、化合物(4)ともいう。)及び下記式(5)で表される化合物(以下、化合物(5)ともいう。)から選ばれる少なくとも1種と、必要に応じて下記式(6)で表される化合物(以下、化合物(6)ともいう。)とを、金属触媒存在下、付加重合させることにより製造することができる。
(式中、R
1~R
4及びmは、前記と同じ。)
(式中、R
11~R
14、R
21~R
24、R
31、R
32、R
41~R
44、Y
1、Y
2、p
1、p
2、q
1、q
2、r
1、r
2、s
1、s
2、t
1、t
2、u
1、u
2及びvは、前記と同じ。)
前記金属触媒としては、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・xH2O、H2PtCl6・xH2O、NaHPtCl6・xH2O、KHPtCl6・xH2O、Na2PtCl6・xH2O、K2PtCl4・xH2O、PtCl4・xH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・xH2O(ここで、xは、0~6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(例えば、米国特許第3,220,972号明細書に記載のもの);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(例えば、米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、及び米国特許第3,775,452号明細書に記載のもの);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム-オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(いわゆるウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特に、ビニル基含有環状シロキサン)との錯体等を使用することができる。
前記触媒の使用量は触媒量であり、通常、原料化合物の合計100質量部に対し、0.001~0.1質量部であることが好ましく、0.01~0.1質量部であることがより好ましい。
前記付加重合反応においては、必要に応じて溶剤を使用してもよい。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好ましい。
重合温度は、触媒が失活せず、かつ短時間で重合の完結が可能という観点から、40~150℃が好ましく、60~120℃がより好ましい。重合時間は、得られる樹脂の種類及び量にもよるが、重合系中に湿気の介入を防ぐため、およそ0.5~100時間が好ましく、0.5~30時間がより好ましい。反応終了後、溶剤を使用した場合はこれを留去することにより、(A)成分のシリコーン樹脂を得ることができる。
反応方法は、特に限定されないが、例えば、まず、化合物(3)、化合物(4)及び化合物(5)から選ばれる少なくとも1種と、必要に応じて化合物(6)とを混合して加熱した後、前記混合液に金属触媒を添加し、次いで化合物(1)及び化合物(2)を0.1~5時間かけて滴下する方法が挙げられる。
各原料化合物は、化合物(3)、化合物(4)及び化合物(5)から選ばれる少なくとも1種と、必要に応じて化合物(6)とが有するアルケニル基の合計に対し、化合物(1)及び化合物(2)が有するヒドロシリル基の合計が、モル比で、好ましくは0.67~1.67、より好ましくは0.83~1.25となるように配合するのがよい。
前記シリコーン樹脂のMwは、o-アリルフェノールのようなモノアリル化合物又はトリエチルヒドロシランのようなモノヒドロシランやモノヒドロシロキサンを分子量調整剤として使用することにより制御することが可能である。
[(B)光酸発生剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)光酸発生剤として下記式(B)で表されるオニウムガレート塩を含む。
式(B)中、R101~R104は、それぞれ独立に、炭素数1~18の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基であるが、少なくとも1つは炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基である。
R101~R104で表される炭素数1~18の飽和ヒドロカルビル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、ピナニル基等の架橋環式飽和ヒドロカルビル基が挙げられる。
式(B)中、R101~R104で表される炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基としては、フェニル基等の単環式アリール基;ナフチル基、アントラセニル基、フェナンスレニル基、アントラキノリル基、フルオレニル基、ナフトキノリル基等の縮合多環式アリール基;チエニル基、フラニル基、ピラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基等の単環式ヘテロアリール基;インドリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、イソベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェノチアジニル基、フェナジニル基、キサンテニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、フェノキサチイニル基、クロマニル基、イソクロマニル基、クマリニル基、ジベンゾチエニル基、キサントニル基、チオキサントニル基、ジベンゾフラニル基等の縮合多環式ヘテロアリール基等が挙げられる。
また、前記炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基は、その水素原子の一部が、炭素数1~18の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、炭素数2~18の不飽和ヒドロカルビル基、炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、-ORa、-C(=O)-Rb、-O-C(=O)-Rc、-SRd、-NReRf及びハロゲン原子から選ばれる置換基で置換されていてもよい。Ra~Rdは、炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基である。Re及びRfは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基である。
前記炭素数1~18の飽和ヒドロカルビル基及び炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。また、炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基としては、前述した炭素数1~18の飽和ヒドロカルビル基のうち、炭素数が1~8のものが挙げられる。
前記置換基である炭素数2~18の不飽和ヒドロカルビル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基のアルケニル基;2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;スチリル基、シンナミル基等のアリールアルケニル基;エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、3-メチル-1-ブチニル基、1-デシニル基、2-デシニル基、8-デシニル基、1-ドデシニル基、2-ドデシニル基、10-ドデシニル等のアルキニル基;フェニルエチニル基等のアリールアルキニル基等が挙げられる。
前記置換基であるハロゲン原子で置換された炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基としては、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、ヘプタフルオロ-n-プロピル基、1,1-ジフルオロ-n-プロピル基、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、ノナフルオロ-n-ブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-n-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基、パーフルオロ-n-オクチル基等の直鎖状ハロゲン化アルキル基;ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘキサクロロイソプロピル基、ヘキサフルオロイソブチル基、ノナフルオロ-tert-ブチル基等の分岐状ハロゲン化アルキル基;ペンタフルオロシクロプロピル基、ノナフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;パーフルオロアダマンチル基等の架橋環式飽和ヒドロカルビル基が挙げられる。
-ORaで表される基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等のアリールオキシ基が挙げられる。-C(=O)-Rbで表される基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等のアシル基が挙げられる。-O-C(=O)-Rcで表される基としては、アセトキシ基、ブタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基が挙げられる。-SRdで表される基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。-NReRfで表される基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ピペリジノ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記置換基としては、カチオン重合反応における触媒活性の観点から、ハロゲン原子で置換された炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基が好ましく、フッ素原子で置換された炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基及びフッ素原子がより好ましい。
R101、R102、R103及びR104としては、パーフルオロアルキル基又はフッ素原子で置換されたフェニル基であることが好ましく、ペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基であることがより好ましい。前記オニウムガレート塩のガレートアニオンとしては、特に、R101~R104が全てペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基であるものが好ましい。
式(B)中、R105は、Eに結合している有機基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。R105としては、炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基、炭素数1~18の飽和ヒドロカルビル基及び炭素数2~18の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基が挙げられる。また、前記炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基は、炭素数1~18の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~8の飽和ヒドロカルビル基、炭素数2~18の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基、炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、-ORa、-C(=O)-Rb、-O-C(=O)-Rc、-SRd、-NReRf、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Ra~Rdは、前記と同じである。
R105で表される炭素数6~14の芳香族ヒドロカルビル基、炭素数1~18の飽和ヒドロカルビル基及び炭素数2~18の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基としては、式(B)中のR101~R104の説明において例示したものと同じものが挙げられる。
また、2個以上のR105が、互いに直接結合して、又は-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1~20の飽和ヒドロカルビレン基若しくはフェニレン基を介して結合して、元素Eを含む環構造を形成してもよい。
式(B)中、Eは、周期表の15族~17族の原子価nの元素を表し、有機基であるR105と結合してオニウムイオンを形成する。15族~17族の元素のうち好ましいものとしては、酸素(O)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)及びヨウ素(I)が挙げられ、対応するオニウムイオンとしては、オキソニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン及びヨードニウムイオンである。中でも、安定で取り扱いが容易なアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン及びヨードニウムイオンが好ましく、カチオン重合性能や架橋反応性能に優れるスルホニウムイオン及びヨードニウムイオンが更に好ましい。nは、元素Eの原子価を表し、1~3の整数である。
前記オキソニウムイオンの具体例としては、トリメチルオキソニウムイオン、ジエチルメチルオキソニウムイオン、トリエチルオキソニウムイオン、テトラメチレンメチルオキソニウム等のオキソニウムイオン;4-メチルピリリウム、2,4,6-トリメチルピリリウム、2,6-ジ-tert-ブチルピリニウム、2,6-ジフェニルピリリウム等のピリリウム;2,4-ジメチルクロメリニウム等のクロメニウム;1,3-ジメチルイソクロメリニウム等のイソクロメリニウム等が挙げられる。
前記アンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、エチルトリメチルアンモニウムイオン、ジエチルジメチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウムイオン;N,N-ジメチルピロリジニウムイオン、N-エチル-N-メチルピロリジニウムイオン、N,N-ジエチルピロリジニウムイオン等のピロリジニウムイオン;N,N'-ジメチルイミダゾリニウムイオン、N,N'-ジエチルイミダゾリニウムイオン、N-エチル-N'-メチルイミダゾリニウムイオン、1,3,4-トリメチルイミダゾリニウムイオン、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムイオン等のイミダゾリニウムイオン;N,N'-ジメチルテトラヒドロピリミジニウムイオン等のテトラヒドロピリミジニウムイオン;N,N'-ジメチルモルホリニウムイオン等のモルホリニウムイオン;N,N'-ジエチルピペリジニウムイオン等のピペリジニウムイオン;N-メチルピリジニウムイオン、N-ベンジルピリジニウムイオン、N-フェナシルピリジウムイオン等のピリジニウムイオン;N,N'-ジメチルイミダゾリウムイオン等のイミダゾリウムイオン;N-メチルキノリニウムイオン、N-ベンジルキノリニウムイオン、N-フェナシルキノリニウムイオン等のキノリニウムイオン;N-メチルイソキノリニウムイオン等のイソキノリニウムイオン;ベンジルベンゾチアゾニウムイオン、フェナシルベンゾチアゾニウムイオン等のチアゾニウムイオン;ベンジルアクリジニムイオン、フェナシルアクリジニウムイオン等のアクリジニウムイオン等が挙げられる。
前記ホスホニウムイオンの具体例としては、テトラフェニルホスホニウムイオン、テトラ-p-トリルホスホニウムイオン、テトラキス(2-メトキシフェニル)ホスホニウムイオン、テトラキス(3-メトキシフェニル)ホスホニウムイオン、テトラキス(4-メトキシフェニル)ホスホニウムイオン等のテトラアリールホスホニウムイオン;トリフェニルベンジルホスホニウムイオン、トリフェニルフェナシルホスホニウムイオン、トリフェニルメチルホスホニウムイオン、トリフェニルブチルホスホニウムイオン等のトリアリールホスホニウムイオン;トリエチルベンジルホスホニウムイオン、トリブチルベンジルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラヘキシルホスホニウムイオン、トリエチルフェナシルホスホニウムイオン、トリブチルフェナシルホスホニウムイオン等のテトラアルキルホスホニウムイオン等が挙げられる。
前記スルホニウムイオンの具体例としては、トリフェニルスルホニウムイオン、トリ-p-トリルスルホニウムイオン、トリ-o-トリルスルホニウムイオン、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウムイオン、1-ナフチルジフェニルスルホニウムイオン、2-ナフチルジフェニルスルホニウムイオン、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムイオン、トリ-1-ナフチルスルホニウムイオン、トリ-2-ナフチルスルホニウムイオン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウムイオン、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムイオン、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウムイオン、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウムイオン、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムイオン、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウムイオン、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウムイオン、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムイオン、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムイオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドイオン、ビス[4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル]スルフィドイオン、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィドイオン、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィドイオン、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィドイオン、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムイオン、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムイオン、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムイオン、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムイオン、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウムイオン、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウムイオン、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントンイオン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントンイオン、4-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル)チオフェニル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルフェニルスルホニウムイオン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウムイオン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウムイオン、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウムイオン、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウムイオン、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウムイオン、5-フェニルチアアンスレニウムイオン、5-トリルチアアンスレニウムイオン、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウムイオン、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウムイオン等のトリアリールスルホニウムイオン;ジフェニルフェナシルスルホニウムイオン、ジフェニル-4-ニトロフェナシルスルホニウムイオン、ジフェニルベンジルスルホニウムイオン、ジフェニルメチルスルホニウムイオン等のジアリールスルホニウムイオン;フェニルメチルベンジルスルホニウムイオン、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウムイオン、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウムイオン、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウムイオン、4-ヒドロキシフェニル(2-ナフチルメチル)メチルスルホニウムイオン、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウムイオン、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウムイオン、フェニルメチルフェナシルスルホニウムイオン、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウムイオン、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウムイオン、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウムイオン、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウムイオン、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウムイオン、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウムイオン等のモノアリールスルホニウムイオン;ジメチルフェナシルスルホニウムイオン、フェナシルテトラヒドロチオフェニウムイオン、ジメチルベンジルスルホニウムイオン、ベンジルテトラヒドロチオフェニウムイオン、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウムイオン等のトリアルキルスルホニウムイオン等が挙げられる。
前記ヨードニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウムイオン、ジ-p-トリルヨードニウムイオン、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウムイオン、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウムイオン、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムイオン、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウムイオン、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウムイオン、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムイオン、4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウムイオン等が挙げられる。
(B)成分の含有量は、光硬化性の観点から、(A)成分100質量部に対し、0.05~20質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましい。(B)成分の含有量が0.05質量部以上であれば、酸の発生量が不足して架橋反応が十分に進行しないおそれがないために好ましく、20質量部以下であれば、酸発生剤自身の吸光度が増大するのを抑制することができ、透明性が低下するといった問題が生じるおそれがないために好ましい。
[(C)架橋剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、更に、(C)成分として架橋剤を含むことが好ましい。前記架橋剤は、前述した(A)成分中のフェノール性ヒドロキシ基、あるいはR13、R14、R23又はR24で表される飽和ヒドロカルビルオキシ基と縮合反応を起こし、パターンの形成を容易になし得るための成分であるとともに、硬化物の強度を更に上げるものである。
前記架橋剤としては、1分子中に平均して2個以上のメチロール基及び/又はアルコキシメチル基を含む、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチル基を有するフェノール化合物、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物等が好ましい。
前記メラミン化合物としては、下記式(C)で表されるものが挙げられる。
式(C)中、R201~R206は、それぞれ独立に、メチロール基、炭素数2~5のアルコキシメチル基、又は水素原子であるが、少なくとも1つはメチロール基又はアルコキシメチル基である。前記アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基等が挙げられる。
式(C)で表されるメラミン化合物としては、トリメトキシメチルモノメチロールメラミン、ジメトキシメチルモノメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン等が挙げられる。
式(C)で表されるメラミン化合物は、例えば、まず公知の方法に従ってメラミンモノマーをホルムアルデヒドでメチロール化して変性させ、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性させることで得ることができる。なお、前記アルコールとしては、低級アルコール、例えば炭素数1~4のアルコールが好ましい。
前記グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメトキシエチルグアナミン等が挙げられる。
前記グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
前記ウレア化合物としては、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメトキシエチルウレア、テトラエトキシメチルウレア、テトラプロポキシメチルウレア等が挙げられる。
前記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物としては、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールより変性された尿素縮合物等が挙げられる。
前記変性メラミン縮合物としては、式(C)で表される化合物又はこの多量体(例えば二量体、三量体等のオリゴマー体)と、ホルムアルデヒドとを所望の分子量になるまで付加縮合重合させて得られるものが挙げられる。なお、前記付加縮合重合方法としては、従来公知の方法を採用し得る。また、式(C)で表される変性メラミンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物としては、メトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。
前記変性尿素縮合物は、例えば公知の方法に従って所望の分子量の尿素縮合物をホルムアルデヒドでメチロール化して変性させ、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性させることで得ることができる。
前記1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチル基を有するフェノール化合物としては、(2-ヒドロキシ-5-メチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,2',6,6'-テトラメトキシメチルビスフェノールA等が挙げられる。
前記1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等が挙げられる。
(C)成分を含む場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5~50質量部が好ましく、1~30質量部がより好ましい。0.5質量部以上であれば光照射時に十分な硬化性が得られ、50質量部以下であれば感光性樹脂組成物中の(A)成分の割合が低下しないため、硬化物に十分な効果を発現させることができる。(C)成分の架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[(D)溶剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、更に、(D)成分として溶剤を含んでもよい。前記溶剤としては、(A)~(C)成分や、後述する各種添加剤が溶解可能な溶剤であれば特に限定されないが、これら成分の溶解性に優れていることから有機溶剤が好ましい。
前記有機溶剤としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられる。特に、光酸発生剤の溶解性が最も優れている乳酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、PGMEA、γ-ブチロラクトン及びこれらの混合溶剤が好ましい。これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
(D)成分の使用量は、感光性樹脂組成物の相溶性及び粘度の観点から(A)~(C)成分の合計100質量部に対し、50~2,000質量部が好ましく、50~1,000質量部がより好ましく、50~100質量部が特に好ましい。
[その他の添加剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、前述した各成分以外に、その他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤が挙げられる。
前記界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、例えば、フッ素系界面活性剤、具体的にはパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。これらは、市販されているものを用いることができ、例えば、Fluorad(登録商標)FC-430(スリーエム社製)、サーフロン(登録商標)S-141、S-145(AGCセイミケミカル(株)製)、ユニダイン(登録商標)DS-401、DS-4031、DS-451(ダイキン工業(株)製)、メガファック(登録商標)F-8151(DIC(株)製)、X-70-093(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの中でも、Fluorad FC-430、X-70-093が好ましい。前記界面活性剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.05~1質量部が好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、その他の添加剤として、シランカップリング剤を含んでもよい。シランカップリング剤を含むことにより、該組成物から得られる皮膜の被接着体への密着性を更に高めることができる。シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤、芳香族基含有アミノシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。前記シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、含有する場合は、本発明の感光性樹脂組成物中、0.01~5質量%が好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物の調製は、通常の方法で行われる。例えば、前記各成分を攪拌、混合し、その後必要に応じて固形分をフィルター等により濾過することにより、本発明の感光性樹脂組成物を調製することができる。
このようにして調製された本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、半導体素子の保護膜、配線の保護膜、カバーレイフィルム、ソルダーマスク、貫通電極用絶縁膜(TSV用)の材料、更には、三次元積層における積層基板間の接着剤として好適に用いられる。
[感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法]
本発明の感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法は、
(i)本発明の感光性樹脂組成物を用いて、基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程、
(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、及び
(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像してパターンを形成する工程
を含むものである。
工程(i)は、前記感光性樹脂組成物を用いて、基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程である。前記基板としては、例えばシリコンウエハ、貫通電極用シリコンウエハ、裏面研磨により薄膜化したシリコンウエハ、プラスチック又はセラミック基板、イオンスパッタリング法やめっき法等により基板全面又は基板の一部にNi、Au等の金属を有する基板等が挙げられる。凹凸を有する基板が使用されることもある。
感光性樹脂皮膜の形成方法としては、例えば、前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、必要に応じて予備加熱(プリベーク)する方法が挙げられる。塗布方法としては、公知の方法でよく、ディップ法、スピンコート法、ロールコート法等が挙げられる。塗布量は、目的に応じて適宜選択することができるが、得られる感光性樹脂皮膜の膜厚が好ましくは0.1~200μm、より好ましくは1~150μmとなるように塗布することが好ましい。
基板面における膜厚均一性を向上させる目的で、感光性樹脂組成物を塗布する前に溶剤を基板に滴下してもよい(プリウェット法)。滴下する溶剤及びその量は、目的に応じて適宜選択することができる。前記溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類、シクロヘキサノン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類等が好ましいが、感光性樹脂組成物に使用される溶剤を用いることも可能である。
ここで、光硬化反応を効率的に行うため、必要に応じてプリベークを行って溶剤等を予め揮発させておいてもよい。プリベークは、例えば、40~140℃で1分間~1時間程度行うことができる。
次に、(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する。このとき、露光は、波長10~600nmの光で行うことが好ましく、190~500nmの光で行うことがより好ましい。このような波長の光としては、例えば放射線発生装置により発生された種々の波長の光、例えば、g線、h線、i線等の紫外線光、遠紫外線光(248nm、193nm)等が挙げられる。これらのうち、波長248~436nmの光が特に好ましい。露光量は、10~10,000mJ/cm2が好ましい。
露光は、フォトマスクを介して行ってもよい。前記フォトマスクは、例えば所望のパターンをくり貫いたものであってもよい。なお、フォトマスクの材質は、特に限定されないが、前記波長の光を遮蔽するものが好ましく、例えば、遮光膜としてクロム等を備えるものが好適に用いられる。
更に、現像感度を高めるために、露光後加熱処理(PEB)を行ってもよい。PEBは、40~150℃で0.5~10分間とすることが好ましい。PEBによって、露光部分が架橋して現像液である有機溶剤に不溶な不溶化パターンが形成される。
露光後又はPEB後、(iii)現像液にて現像してパターンを形成する。現像液としては、例えば、IPA等のアルコール類、シクロヘキサノン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類等の有機溶剤が好ましいが、感光性樹脂組成物に使用される溶剤を用いることも可能である。現像方法としては、通常の方法、例えばパターン形成された基板を前記現像液に浸漬する方法等が挙げられる。有機溶剤現像によって非露光部が溶解し、除去されることでパターンが形成される。その後、必要に応じて、洗浄、リンス、乾燥等を行い、所望のパターンを有する皮膜が得られる。
更に、(iv)パターンを形成した皮膜を、オーブンやホットプレートを用いて、好ましくは100~250℃、より好ましくは150~220℃で後硬化してもよい。後硬化温度が100~250℃であれば、感光性樹脂組成物の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去でき、基板に対する密着性、耐熱性や強度、電気特性、更に接着強度の観点から好ましい。後硬化時間は、好ましくは10分間~10時間、より好ましくは10分間~3時間とすることができる。本発明の感光性樹脂組成物を用いれば、200℃前後の比較的低温の後硬化であっても、各種フィルム特性に優れた皮膜を得ることができる。後硬化後の皮膜(硬化皮膜)の膜厚は、通常1~200μm、好ましくは5~50μmである。
パターンを形成する必要のない場合、例えば単なる均一な皮膜を形成したい場合は、前記のパターン形成方法における工程(ii)において、前記フォトマスクを介さずに適切な波長の光で露光する工程を採用することで、皮膜形成を行えばよい。
[基板の接着方法]
本発明の感光性樹脂組成物は、2つの基板を接着するための接着剤としても使用できる。基板の接着方法としては、熱及び圧力の好適な条件下で、2つの基板間に接着性結合が形成されるように、本発明の組成物で皮膜を形成した基板を第2の基板と接着させる方法が挙げられる。皮膜を形成した基板及び第2の基板のいずれか一方又は両方が、ダイシング加工等によりチップ化されることもある。接着条件として、加熱温度は50~200℃、1~60分間とすることが好ましい。接着装置として、ウエハボンダ装置を使用し、荷重を加えながら減圧下でのウエハ同士の貼り付け、あるいはフリップチップボンダ装置を用いたチップ-ウエハ又はチップ-チップ接着を行うこともできる。基板間に形成された接着層は、後述する後硬化処理により結合力が高まり、永久接着となる。
貼り付け(接着)を行った基板を前述した工程(iv)と同じ条件で後硬化処理することで前記皮膜の架橋密度が増し、基板接着力を高めることができる。なお、接着時の加熱によって架橋反応が起こるが、前記架橋反応においては脱ガスを伴う副反応が生じないため、特に基板接着剤として使用した場合において、貼り合わせ欠陥(ボイド)を誘起しない。
[感光性ドライフィルム]
本発明の感光性ドライフィルムは、支持フィルムと、該支持フィルム上に前記感光性樹脂組成物から得られる感光性樹脂皮膜とを備えるものである。
前記感光性ドライフィルム(支持フィルム及び感光性樹脂皮膜)は固体であり、感光性樹脂皮膜が溶剤を含まないため、その揮発による気泡が前記感光性樹脂皮膜の内部及び凹凸のある基板との間に残留するおそれがない。前記感光性樹脂皮膜の膜厚は、その平坦性、段差被覆性、及び基板積層間隔の観点から、5~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。
また、前記感光性樹脂皮膜の粘度と流動性とは密接に関係しており、前記感光性樹脂皮膜は、適切な粘度範囲において適切な流動性を発揮でき、狭い隙間の奥まで入っていったり、樹脂が軟化することにより基板との接着性を強くしたりすることができる。したがって、前記感光性樹脂皮膜の粘度は、前記感光性樹脂皮膜の流動性の観点から、80~120℃において、好ましくは10~5,000Pa・s、より好ましくは30~2,000Pa・s、更に好ましくは50~300Pa・sである。なお、本発明において粘度は、回転粘度計による測定値である。
本発明の感光性ドライフィルムは、凹凸のある基板に密着させる際に、感光性樹脂皮膜が前記凹凸に追随して被覆され、高い平坦性を達成できる。特に、前記感光性樹脂皮膜は、低い粘弾性が特徴であるため、より高い平坦性を達成できる。更に、前記感光性樹脂皮膜を真空環境下で前記基板に密着させると、それらの隙間の発生をより効果的に防止できる。
本発明の感光性ドライフィルムは、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥させて感光性樹脂皮膜を形成することによって製造することができる。前記感光性ドライフィルムの製造装置としては、一般的に粘着剤製品を製造するためのフィルムコーターが使用できる。前記フィルムコーターとしては、例えば、コンマコーター、コンマリバースコーター、マルチコーター、ダイコーター、リップコーター、リップリバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、3本ボトムリバースコーター、4本ボトムリバースコーター等が挙げられる。
支持フィルムを前記フィルムコーターの巻出軸から巻き出し、前記フィルムコーターのコーターヘッドを通過させるとき、前記支持フィルム上に前記感光性樹脂組成物を所定の厚みで塗布した後、所定の温度及び時間で熱風循環オーブンを通過させ、前記支持フィルム上で乾燥させて感光性樹脂皮膜とすることで、感光性ドライフィルムを製造することができる。また、必要に応じて、感光性ドライフィルムを前記フィルムコーターの別の巻出軸から巻き出された保護フィルムとともに、所定の圧力でラミネートロールを通過させて前記支持フィルム上の前記感光性樹脂皮膜と保護フィルムとを貼り合わせた後、前記フィルムコーターの巻取軸に巻き取ることによって、保護フィルム付き感光性ドライフィルムを製造することができる。この場合、前記温度としては25~150℃が好ましく、前記時間としては1~100分間が好ましく、前記圧力としては0.01~5MPaが好ましい。
前記支持フィルムは、単一のフィルムからなる単層フィルムであっても、複数のフィルムを積層した多層フィルムであってもよい。前記フィルムの材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。これらのうち、適度な可とう性、機械的強度及び耐熱性を有するポリエチレンテレフタレートが好ましい。これらのフィルムは、コロナ処理や剥離剤塗布等の各種処理が行われたものでもよい。これらは市販品を使用することができ、例えばセラピールWZ(RX)、セラピールBX8(R)(以上、東レフィルム加工(株)製)、E7302、E7304(以上、東洋紡(株)製)、ピューレックスG31、ピューレックスG71T1(以上、帝人デュポンフィルム(株)製)、PET38×1-A3、PET38×1-V8、PET38×1-X08(以上、ニッパ(株)製)等が挙げられる。
前記保護フィルムとしては、前述した支持フィルムと同様のものを用いることができるが、適度な可とう性を有するポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンが好ましい。これらは市販品を使用することができ、ポリエチレンテレフタレートとしてはすでに例示したもの、ポリエチレンとしては、例えばGF-8(タマポリ(株)製)、PEフィルム0タイプ(ニッパ(株)製)等が挙げられる。
前記支持フィルム及び保護フィルムの厚みは、感光性ドライフィルム製造の安定性、及び巻き芯に対する巻き癖、所謂カール防止の観点から、いずれも好ましくは10~100μm、より好ましくは25~50μmである。
[感光性ドライフィルムを用いるパターン形成方法]
本発明の感光性ドライフィルムを用いるパターン形成方法は、
(i')本発明の感光性ドライフィルムを用いて、基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程、
(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、及び
(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像してパターンを形成する工程
を含むものである。
まず、工程(i')において、感光性ドライフィルムを用いて基板上に感光性樹脂皮膜を形成する。具体的には、感光性ドライフィルムの感光性樹脂皮膜を基板に貼り付けることで基板上に感光性樹脂皮膜を形成する。また、前記感光性ドライフィルムが保護フィルムを有している場合には、感光性ドライフィルムから保護フィルムを剥がした後、感光性ドライフィルムの感光性樹脂皮膜を基板に貼り付ける。貼り付けは、例えばフィルム貼り付け装置を用いて行うことができる。
前記基板としては、感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法において説明したものと同様のものが挙げられる。前記フィルム貼り付け装置としては、真空ラミネーターが好ましい。例えば、前記感光性ドライフィルムの保護フィルムを剥離し、露出した前記感光性樹脂皮膜を所定真空度の真空チャンバー内において、所定の圧力の貼り付けロールを用いて、所定の温度のテーブル上で前記基板に密着させる。なお、前記温度としては60~120℃が好ましく、前記圧力としては0~5.0MPaが好ましく、前記真空度としては50~500Paが好ましい。
必要な厚さの感光性樹脂皮膜を得るために、必要に応じてフィルムを複数回貼り付けてもよい。貼り付け回数は例えば1~10回程度で、10~1,000μm、特に100~500μm程度の膜厚の感光性樹脂皮膜を得ることができる。
前記感光性樹脂皮膜の光硬化反応を効率的に行うため、及び感光性樹脂皮膜と基板との密着性を向上させるため、必要に応じてプリベークを行ってもよい。プリベークは、例えば、40~140℃で1分間~1時間程度行うことができる。
基板に貼り付けた感光性樹脂皮膜は、前記感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法の場合と同様に、(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像してパターンを形成する工程、及び必要に応じて(iv)後硬化処理をすることでパターンを形成することができる。なお、感光性ドライフィルムの支持フィルムは、プロセスに応じてプリベーク前又はPEB前に剥がすか、他の方法で除去する。
前記感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムから得られる皮膜は、耐熱性、可とう性、電気絶縁性、機械的特性及び基板等との密着性に優れ、半導体素子等の電気・電子部品保護用皮膜や基板接着用皮膜として好適に用いられる。
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、Mwは、カラムとしてTSKgel Super HZM-H(東ソー(株)製)を用い、流量0.6mL/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した。
合成例において使用した化合物(S-1)~(S-6)を、以下に示す。
[1]シリコーン樹脂の合成
[合成例1]
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-6)215.0g(0.5モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-4)67.9g(0.35モル)及び化合物(S-5)(y=40、信越化学工業(株)製)453.0g(0.15モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂1を得た。樹脂1は、1H-NMR(Bluker製)により、繰り返し単位a1、a2、b1及びb2を含むものであることを確認した。樹脂1のMwは62,000、シリコーン含有率は61.6質量%であった。
[合成例2]
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-2)53.00g(0.20モル)、化合物(S-1)117.6g(0.30モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-4)48.5g(0.25モル)及び化合物(S-5)(y=40、信越化学工業(株)製)755.0g(0.25モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂2を得た。樹脂2は、1H-NMR(Bluker製)により、繰り返し単位a1、a3、a4、b1、b3及びb4を含むものであることを確認した。樹脂2のMwは83,000、シリコーン含有率は77.5質量%であった。
[合成例3]
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-3)27.9g(0.15モル)、化合物(S-1)19.6g(0.05モル)及び化合物(S-6)129.0g(0.30モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃に加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-4)87.3g(0.45モル)及び化合物(S-5)(y=20、信越化学工業(株)製)79.3g(0.05モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂3を得た。樹脂3は、1H-NMR(Bluker製)により、繰り返し単位a1、a2、a4、b1、b2及びb4を含むものであることを確認した。樹脂3のMwは24,000、シリコーン含有率は31.2質量%であった。
[2]感光性樹脂組成物の調製
[実施例1~12及び比較例1~15]
表1~3に記載の配合量に従って各成分を配合し、その後常温にて攪拌、混合、溶解した後、テフロン(登録商標)製1.0μmフィルターで精密濾過を行い、実施例1~12及び比較例1~15の感光性樹脂組成物を調製した。
表1~3中、光酸発生剤PAG-1~PAG-8は、以下のとおりである。
表1~3中、架橋剤CL-1及びCL-2は、以下のとおりである。
[3]感光性ドライフィルムの作製
フィルムコーターとしてダイコーター、支持フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を用いて、表1~3に記載した感光性樹脂組成物をそれぞれ前記支持フィルム上に塗布した。次いで、100℃に設定された熱風循環オーブン(長さ4m)を5分間で通過させることにより乾燥し、支持フィルム上に感光性樹脂皮膜を形成し、感光性ドライフィルムを得た。前記感光性樹脂皮膜の上から、保護フィルムとしてのポリエチレンフィルム(厚さ50μm)をラミネートロールで圧力1MPaにて貼り合わせ、保護フィルム付き感光性ドライフィルムを作製した。各感光性樹脂皮膜の膜厚は表4及び5に記載した。なお、感光性樹脂皮膜の膜厚は光干渉式膜厚測定機により測定した。
[4]感光性樹脂皮膜の評価
(1)パターン形成及びその評価
前記保護フィルム付き感光性ドライフィルムは、保護フィルムを剥離し、真空ラミネーターTEAM-100RF((株)タカトリ製)を用いて、真空チャンバー内を真空度80Paに設定し、支持フィルム上の感光性樹脂皮膜をマイグレーション試験用基板(導電材料が銅、導電部間隔及び導電部幅が20μm、導電部厚み4μmの櫛形電極基板)に密着させた。温度条件は110℃とした。常圧に戻した後、前記基板を真空ラミネーターから取り出し、支持フィルムを剥離した。次に、基板との密着性を高めるため、ホットプレートにより130℃で5分間プリベークを行った。感光性樹脂皮膜に対し、ラインアンドスペースパターン及びコンタクトホールパターンを形成するためにマスクを介して405nmの露光条件でコンタクトアライナ型露光装置を使用して露光した。光照射後、ホットプレートにより120℃で5分間PEBを行った後冷却し、前記基板をPGMEAで300秒間スプレー現像を行い、パターンを形成した。なお、感光性ドライフィルム製造後から1日後にパターン形成を行った。
前記方法によりパターンを形成した基板上の感光性樹脂皮膜を、オーブンを用いて150℃で4時間窒素パージしながら後硬化した。その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により、形成した100μm、80μm、60μm、40μm、30μmのコンタクトホールパターン断面を観察し、フィルム底部までホールが貫通している最小のホールパターンの直径を限界解像性とした。また、得られたホールパターン300個に基板からの剥離が1か所でもあるものを「剥離あり」とした。結果を表4及び5に示す。
また、前記感光性ドライフィルムを室温(25℃)、遮光条件下で60日間保管した後に、前記方法により同様のパターンを形成した。パターンを形成した基板上の感光性樹脂皮膜を、オーブンを用いて150℃で4時間窒素パージしながら後硬化した。その後、SEMにより、形成した100μm、80μm、60μm、40μm、30μmのコンタクトホールパターン断面を観察し、フィルム底部までホールが貫通している最小のマスクホールパターンを限界解像性とした。なお、開口不良は×と表記した。結果を表4及び5に示す。
(2)電気特性(銅マイグレーション)の評価
前記方法で作製した銅マイグレーション用の基板を用いて試験を行った。銅マイグレーション試験の条件は、温度85℃、湿度85%、印加電圧10Vにて行い、1,000時間を上限に短絡を起こした時間を確認した。結果を表4及び5に示す。
(3)電気特性(絶縁破壊強さ)の評価
感光性樹脂皮膜の絶縁破壊強さを評価するため、実施例1~12及び比較例1~15の感光性樹脂組成物をそれぞれ13cm×15cm、厚さ0.7mmの鉄板上にバーコーターにて塗布し、150℃のオーブンで4時間加熱して、感光性樹脂皮膜を得た。各感光性樹脂組成物は、皮膜の膜厚が0.2μmとなるよう塗布した。この感光性樹脂皮膜を利用して、絶縁破壊試験機TM-5031AM(多摩電測(株)製)を用いて、各感光性樹脂皮膜の絶縁破壊強さを測定した。絶縁保護膜としての理想的な値は500V/μm以上である。結果を表4及び5に示す。
(4)耐溶剤性の評価
半導体素子等を形成する場合に多用されるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に対する耐溶剤性を評価するため、実施例1~12及び比較例1~15の感光性樹脂組成物につき、(2)の銅マイグレーション試験用のウエハ作製と同様の方法で、15mm×15mmのパターンをシリコンウエハ上に形成した。このウエハをNMP中に室温で1時間浸漬したのち、膜厚変化、外観を調査し、耐溶剤性を評価した。外観・膜厚に変化がなかったものを〇、膨潤等が確認されたものを×とした。結果を表4及び5に示す。
以上の結果より、本発明の感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムは、保存安定性が良好であり、厚膜で微細なパターン形成を容易に行うことができ、感光性材料として十分な特性を示した。また、これらから得られる感光性樹脂皮膜は、フォトレジスト剥離液等への薬品耐性が高く、また、電気絶縁性、銅マイグレーション耐性に優れ、その絶縁保護膜としての信頼性が高く、回路基板、半導体素子、表示素子等の各種電気・電子部品保護用皮膜の形成材料に好適に用いることができた。本発明によれば、より信頼性の高い感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムの提供が可能となる。