JP7316187B2 - 既設管更生工法における裏込め方法及び支保工 - Google Patents
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本発明は、かかる事情に鑑み、支保工を簡易で設置容易な構造にして流水阻害等を抑制するとともに、裏込め時の更生管の浮上及び変形を防止可能な更生工法および支保工を提供することを目的とする。
既設管の内面に沿って更生管をライニングして前記既設管を更生する工法における、前記ライニング後の既設管と更生管との間の管間隙間に裏込めする方法であって、
前記更生管の上半部を変形可能に解放した状態で、前記更生管の底部を含む下半部を浮上不能に押さえ、かつ前記底部を前記既設管に押し付けるようにして、前記更生管の内部に支保工を設置する工程と、
前記管間間隙に裏込め材を複数回に分けて注入する工程と、
前記裏込め材の1回の注入終了後、次の注入開始まで養生する工程と
を備えたことを特徴とする。
支保工は、更生管の下半部だけを押さえればよいから、簡易で軽量な構造にできる。したがって、設置作業が容易になる。既設管ひいては更生管の内部を水が流れる場合は、流水阻害が抑制される。
更生管の下半部は支保工によって押えられているから、初回注入時に更生管が浮上及び変形されるのを確実に防止できる。二回目以降の注入時は、前記支保工による押さえに加えて、硬化した初回裏込め材によって更生管の下半部が拘束されているから、更生管の下半部より上側部分の変形及び更生管の浮上を防止でき、更には初回裏込め材と更生管との間で界面剥離が起きるのを防止できる。界面剥離が防止されることで、注入中の未硬化の裏込め材が、直前回の裏込め材と更生管との間に入り込むのを防止でき、更に大きな水頭圧が発生するのを避けることができる。
これによって、簡易構造の支保工を用いて、初回注入時に更生管が浮上及び変形されるのを確実に防止できる。また、二回目以降の注入時に前記初回注入の裏込め材と更生管との間で界面剥離が起きるのを確実に防止できる。
これによって、直前回までの裏込め材によって更生管が拘束された状態で次に裏込め材が注入される。したがって、更生管の浮上及び変形、更には前記界面剥離が起きるのを一層確実に防止できる。
これにより、前記界面剥離が発生する可能性をさらに低減できる。上半部まで裏込め材が硬化すると、3回目以降は更生管が殆ど変形することなく注入可能である。
前記次の注入開始までの養生時間は、10時間~20時間程度であることが好ましい。これによって、直前回の裏込め材が十分に硬化した後、次回の注入を行うことができる。
更生管の底部の内面に配置された底部腹起しと、
前記更生管の中間部と前記底部との間の内面に配置された側部腹起しと、
上端部が前記更生管の頂部を貫通して前記既設管の頂部に突き当てられ、下端部が前記底部腹起しに突き当てられた柱状の突張部材と、
前記突張部材と前記側部腹起しとの間に架け渡された架渡部材と、
前記架渡部材に設けられて、前記側部腹起しを前記更生管へ向けて押さえ付ける押さえ手段と
を備え、前記更生管の上半部を変形可能に解放していることが好ましい。
前記架渡部材が、前記両側の側部腹起しを結ぶように前記更生管の下半部の内面に沿って前記周方向に延びる弧状に形成されていることが好ましい。これによって、支保工による流水阻害を一層抑制できる。
前記架渡部材の中央部が、前記底部腹起しに被さり、前記突張部材が、前記架渡部材の中央部を介して前記底部腹起しに突き当たっていてもよい。前記架渡部材の中央部には、前記底部腹起しが嵌る凹部が形成されていることが、より好ましい。
これによって、簡易構造の支保工を用いて、初回注入時に更生管が浮上及び変形されるのを防止できる。
<第1実施形態(図1~図5)>
図1及び図2は、老朽化した既設管1として、地中に埋設された下水道管を更生する様子を示したものである。なお、既設管1としては、下水道管に限らず、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管その他の埋設管の他、トンネルなどが挙げられる。トンネルの場合、穴を掘っただけ、もしくは内面をセグメントやモルタルで補強したものであってもよい。
前記裏込め材5を注入、充填する裏込め工程に際して、更生管3内に支保工10が設置される。
図1及び図2に示すように、支保工10は、腹起し11,12と、突張部材20と、架渡部材30を備えている。
腹起し11,12は、更生管3の下半部の内面上に配置され、既設管1及び更生管3の管軸(図1において紙面と直交する方向)に沿って延びている。ここで、下半部とは、更生管3の高さ方向の中間部3cより下側の部分を言う。
底部腹起し11は、更生管3の底部(最も下側の部分)に配置されている。
3つ(複数)の腹起し11,12が更生管3の周方向に互いに離れて並べられている。
図1及び図2に示すように、突張部材20は、突張部材本体29と、ジャッキ21を含む。突張部材本体29は、例えば円筒形の鋼管によって構成されている。突張部材本体29ひいては突張部材20が、底部腹起し11上に鉛直に立設され、柱状になっている。
突張部材本体29の上端部は、更生管3の頂部に形成された貫通穴3dを貫通して、既設管1の頂部の内面に突き当てられている。
図3に示すように、架渡部材30は、両端の側部腹起し12を結ぶように、更生管3の下半部の内面の周方向に沿って円弧状(弧状)に延びている。架渡部材30を介して、突張部材20と腹起し11,12とが連結されている。架渡部材30の半分は、突張部材20と一方の側部腹起し12との間に架け渡されている。架渡部材30の他の半分は、突張部材20と他方の側部腹起し12との間に架け渡されている。
押さえ台32には、雌ネジ孔32bが貫通形成されている。
したがって、支保工10は、前掲特許文献と比べて構造が極めて簡素である。
更生管3の管軸と直交する断面における、支保工10の総断面積(腹起し11,12、突張部材20、架渡部材30、押し付け手段40等の合計断面積)は、更生管3の内部空間の断面積の10%以下である。
図1及び図2に示すように、既設管1の内周に沿って更生管3をライニングする。
<支保工設置工程>
次に、更生管3の内部に支保工10を設置する。詳しくは、更生管3の下半部の内面上に3つの腹起し11,12を管軸に沿って延びるように配置するとともに、管軸方向の一定間隔置きに架渡部材30を配置して、各凹部31a,32aに腹起し11,12を嵌める。
そして、ジャッキ21によって突張部材20を伸長させて上下に突っ張らせる。該突っ張り力が、架渡部材30の押さえ台31を介して底部腹起し11に伝わり、底部腹起し11が更生管3の底部に強く押し付けられる。更には、更生管3の底部が既設管1の底部に強く押し付けられる。
更に、押し付け手段40によって、側部腹起し12を更生管3の下側部に強く押し付ける。
これによって、更生管3の下半部が、支保工10によって浮上不能に押さえられる。更生管3の上半部は、変形可能に解放されている。
加えて、架渡部材30が更生管3の下半部の内面に沿う弧状であるために、流水阻害を一層確実に緩和できる。
次に、図5に示すように、管間隙間4にモルタルなどの裏込め材5を注入して充填する。裏込め材5の注入は、例えば3回(複数回)に分けて行う。裏込め材注入を複数回に分けて行なうことで、一度に更生管3にかかる裏込め材の水頭圧を小さくできる。
図5(a)に示すように、初回裏込め材5aは、管間間隙4の下半部だけに充填する。つまり、更生管3の管径(内直径)R3の50%以下の高さで初回注入を終える。好ましくは、初回裏込め材5aの注入高さH5aは、側部腹起し12の高さ程度とする。つまり、支保工10による更生管下半部の押さえ高さ程度まで初回注入を行なう。具体的には、更生管3の管径R3の20%~30%程度の高さまで初回注入を行う。
なお、初回注入の高さH5aは、側部腹起し12の高さないしは更生管下半部押え高さに対して±100mm程度の範囲内の違いは許容される。
裏込め材5の1回の注入が終了する度に養生を行なう。養生時間は、10時間~20時間程度が好ましい。これによって、裏込め材5を十分に硬化させることができる。硬化した裏込め材5によって更生管3が部分的に拘束される。したがって、更生管3における、硬化済み裏込め材5と接する部分は変形不能になる。初回注入後の初回養生においては、更生管3の下半部が拘束されて変形不能になる。
なお、養生時間は、10時間~20時間程度に限らず、裏込め材の硬化所要時間に応じて適宜調整できる。
養生後、次回の注入を開始する。
図5(b)に示すように、好ましくは、2回目裏込め材5bは、更生管3の中間部3cを越えて上半部の途中まで注入する。より好ましくは、2回目裏込め材5bは、更生管3の管径R3の60%~90%程度の高さH5bになるまで注入する。
更生管3は、未硬化の2回目裏込め材5bからも流体圧(水頭圧)を受け、変形されようとする。これに対し、前述したように、硬化した初回裏込め材5aによって更生管3の下半部が拘束されているために、該拘束力が2回目の注入領域にも及び、該2回目注入領域における更生管3の変形を小さく抑えることができる。更に、支保工10によって更生管3の下半部が押えられているために、2回目裏込め材5bからの圧力によって、初回裏込め材5aと更生管3との間で界面剥離が起きるのを防止できる。ひいては、これら初回裏込め材5aと更生管3との間に2回目裏込め材5bが流入しないようにして水頭圧の更なる上昇を回避でき、更生管3の変形を一層確実に防止できる。
2回目注入の終了後、養生工程によって2回目裏込め材5bの硬化を待つ。該硬化によって、更生管3の底部から上半部の途中まで部分、好ましくは更生管3の管径R3の60%~90%の高さまでの部分が、裏込め材5a,5bによって拘束されて変形不能となる。
その後、3回目の注入を行う。
図5(c)に示すように、3回目裏込め材5cは、管間隙間4の上端部まで注入する。これによって、管間隙間4の全域が裏込め材5で充填される。
前述したように、3回目注入時は、更生管3の底部から上半部の途中まで部分が拘束されているために、更生管3が殆ど変形することなく、界面剥離を起こすこともなく注入可能である。
このようにして、裏込め工程が終了し、既設管1が更生される。
その後、支保工10を解体して撤去する。支保工10は構造が簡素で部品点数が少ないために、撤去作業が容易である。
<第2実施形態(図6~図7)>
図6に示すように、第2実施形態においては、架渡部材30Bが、中央部において2つの押さえピース34に分割されている。2つの押さえピース34の対向端部にL字状の押さえ台部分34aが形成されている。図7に示すように、2つの押さえ台部分34aが合わさって、底部腹起し11のための中央押さえ台31Bが構成されている。
図8に示すように、第3実施形態の支保工10Cにおいては、架渡部材30Cが、突張部材20の下側部と直交して、水平に真っ直ぐ延びることで、突張部材20と側部腹起し12との間に架け渡されている。架渡部材30Cと突張部材20の交差部には、これら部材30C,30どうしを直交するように連結する直交クランプ50が設けられている。
図9に示すように、第4実施形態の支保工10Dにおいては、一対(複数)の架渡部材30Dが、突張部材20の中間部から対応する側部腹起し12へ向かって斜め下へ延びることで、突張部材20と側部腹起し12との間に架け渡されている。架渡部材30Dと突張部材20の交差部にはクランプ51が設けられている。クランプ51によって、架渡部材30Dの突張部材20に対する交差位置及び角度が保持されている。
ナット44を回すことで側部腹起し12が更生管3に押し当てられること、及び突張部材20の下端部(ベース部材25)が底部腹起し11に直接突き当てられていることは、第3実施形態と同様である。
例えば、裏込め材5の注入回数は、実施形態の3回に限らず、2回でもよく、4回以上でもよい。
養生工程の時間は、必ずしも直前回の裏込め材がほぼ硬化するまでの時間に設定する必要が無い。直前回の裏込め材が半硬化又は未硬化の状態で次の回を裏込め材を注入してもよい。そうすることで、打ち継ぎ目5jが形成されないようにしてもよい。養生工程の時間が10時間未満であってもよい。
腹起しの数は、3つに限らず、4つ以上でもよい。底部腹起し11と最も中間部3cに近い側部腹起し12との間に1又は複数の腹起しが設けられていてもよい。
更生管3は、螺旋管に限らず、形状記憶性を有する合成樹脂からなるチューブなどによって構成されていてもよい。
3 更生管
3d 貫通孔
4 管間間隙
5 裏込め材
5a 初回裏込め材
5b 2回目裏込め材
5c 3回目裏込め材
5j 打ち継ぎ目
10 支保工
10B,10C,10D 支保工
11 底部腹起し(腹起し)
12 側部腹起し(腹起し)
20 突張部材
21 ジャッキ
29 突張部材本体
30 架渡部材
30B,30C,30D 架渡部材
31,31B 中央押さえ台
32 端部押さえ台
34 押さえピース
40 押し付け手段
40B,40C,40D 押し付け手段
42 ホルダ
50,51 クランプ
H5a 初回注入高さ
H5b 2回目注入高さ
R3 管径
Claims (10)
- 既設管の内面に沿って更生管をライニングして前記既設管を更生する工法における、前記ライニング後の既設管と更生管との間の管間隙間に裏込めする方法であって、
前記更生管の上半部を変形可能に解放した状態で、前記更生管の底部を含む下半部を浮上不能に押さえ、かつ前記底部を前記既設管に押し付けるようにして、前記更生管の内部に支保工を設置する工程と、
前記管間間隙に裏込め材を複数回に分けて注入する工程と、
前記裏込め材の1回の注入終了後、次の注入開始まで養生する工程と
を備え、前記支保工を設置する工程では、前記支保工における最も高所に在る腹起しとして、前記更生管の中間部と前記底部との間の内面に側部腹起しを配置し、前記側部腹起しと嵌合させたジャッキによって前記側部腹起しを前記更生管に押し付け、
前記裏込め材の初回注入時は、前記管間間隙の下半部だけに注入を行なうことを特徴とする既設管更生工法における裏込め方法。 - 前記裏込め材の初回注入時は、前記支保工による前記下半部の押さえ高さまで注入を行なうことを特徴とする請求項1に記載の裏込め方法。
- 前記裏込め材の初回注入時は、前記更生管の管径の20%~30%の高さまで注入を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の裏込め方法。
- 前記裏込め材の2回目以降の注入は、直前回に注入した裏込め材がほぼ硬化した後に開始することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の裏込め方法。
- 前記裏込め材の2回目の注入時は、前記更生管の管径の60%~90%の高さまで注入を行うことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の裏込め方法。
- 請求項1~5の何れか1項に記載の支保工であって、
更生管の底部の内面に配置された底部腹起しと、
前記更生管の中間部と前記底部との間の内面に配置された側部腹起しと、
上端部が前記更生管の頂部を貫通して前記既設管の頂部に突き当てられ、下端部が前記底部腹起しに突き当てられた柱状の突張部材と、
前記突張部材と前記側部腹起しとの間に架け渡された架渡部材と、
前記架渡部材に設けられて、前記側部腹起しを前記更生管へ向けて押し付ける押し付け手段と
を備え、前記押し付け手段が、前記架渡部材に設けられたジャッキと、前記ジャッキの先端部に設けられたホルダとを含み、前記ホルダが前記側部腹起しと嵌合されており、
前記側部腹起しが、前記支保工における最も高所に在る腹起しであり、前記更生管の上半部を変形可能に解放していることを特徴とする支保工。 - 前記底部腹起しを挟んで前記更生管の下半部の周方向の両側にそれぞれ前記側部腹起しが設けられ、
前記架渡部材が、前記両側の側部腹起しを結ぶように前記更生管の下半部の内面に沿って前記周方向に延びる弧状に形成され、かつ前記架渡部材の中央部が、前記底部腹起しに被さり、
前記突張部材が、前記架渡部材の中央部を介して前記底部腹起しに突き当たっていることを特徴とする請求項6に記載の支保工。 - 請求項1~5の何れか1項に記載の支保工であって、
更生管の底部の内面に配置された底部腹起しと、
前記更生管の中間部と前記底部との間の内面に配置された側部腹起しと、
上端部が前記更生管の頂部を貫通して前記既設管の頂部に突き当てられ、下端部が前記底部腹起しに突き当てられた柱状の突張部材と、
前記突張部材と前記側部腹起しとの間に架け渡された架渡部材と、
前記架渡部材に設けられて、前記側部腹起しを前記更生管へ向けて押し付ける押し付け手段と
を備え、前記更生管の上半部を変形可能に解放しており、
前記底部腹起しを挟んで前記更生管の下半部の周方向の両側にそれぞれ前記側部腹起しが設けられ、
前記架渡部材が、前記両側の側部腹起しを結ぶように前記更生管の下半部の内面に沿って前記周方向に延びる弧状に形成され、かつ前記架渡部材の中央部が、前記底部腹起しに被さり、
前記突張部材が、前記架渡部材の中央部を介して前記底部腹起しに突き当たっており、
前記架渡部材の長さ方向の中央部及び両端部には、それぞれ前記更生管の内面側へ開放された挿通凹部を有する押さえ台が形成され、前記中央部の押さえ台の挿通凹部に前記底部腹起しが通され、前記両端部の押さえ台の挿通凹部に前記側部腹起しが通されていることを特徴とする支保工。 - 前記側部腹起しが、前記更生管の底部から前記更生管の管径の20%~30%の高さに配置されていることを特徴とする請求項6~8の何れか1項に記載の支保工。
- 前記更生管の管軸と直交する断面における、当該支保工の総断面積が、前記更生管の内部空間の断面積の10%以下であることを特徴とする請求項6~9の何れか1項に記載の支保工。
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