JP7315891B2 - 水解性不織布及び湿潤水解性不織布 - Google Patents
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Description
本発明は、清浄作業等に耐え得る含水時の強度、身体の清拭時に不快感を与えない柔らかさ、及び優れた水解性を兼ね備えた水解性不織布を提供することを目的とするものである。
[1]パルプ繊維と、再生セルロース繊維とが交絡した水解性不織布であり、絶乾状態の前記水解性不織布と水の質量比が1:2となるように前記水解性不織布に純水を含浸させた湿潤水解性不織布の世界下水道トイレに流せる製品問題検討会議(IWSFG)水解性試験に準じた水解性が95%以上であり、前記水解性不織布の湿潤引張強さが30N/m以上であり、且つ、前記水解性不織布と水の質量比が1:2となるように前記水解性不織布に純水を含浸させた湿潤水解性不織布のやわらかさの指標であるHF値が95以上である水解性不織布。
[2]前記再生セルロース繊維は、扁平レーヨン繊維を含む[1]に記載の水解性不織布。
[3]前記扁平レーヨン繊維は、中空扁平レーヨン繊維である[1]または[2]に記載の水解性不織布。
[4]前記水解性不織布の全質量に対して、前記扁平レーヨン繊維を10~50質量%含有する[2]に記載の水解性不織布。
[5]前記扁平レーヨン繊維の繊度は、1.0dtex以上7.0dtex以下である[2]~[4]のいずれかに記載の水解性不織布。
[6]前記扁平レーヨン繊維の平均繊維長が0.5~20mmである[2]~[5]のいずれかに記載の水解性不織布。
[7]前記水解性不織布を離解して得られる前記パルプ繊維のJIS P 8121-2に準拠して測定されるろ水度が300~700mLである[1]~[6]のいずれかに記載の水解性不織布。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の水解性不織布に水分を含浸させてなる湿潤水解性不織布。
本発明は、パルプ繊維と、再生セルロース繊維とが交絡した水解性不織布であって、絶乾状態の前記水解性不織布と水の質量比が1:2となるように前記水解性不織布に純水を含浸させた湿潤水解性不織布の世界下水道トイレに流せる製品問題検討会議(International Water Services Flushability Group 略称IWSFG)水解性試験に準じた水解性が95%以上であること、前記水解性不織布の湿潤引張強さが30N/m以上であること、前記水解性不織布と水の質量比が1:2となるように前記水解性不織布に純水を含浸させた湿潤水解性不織布のHF値が95以上であることの3つの条件をすべて満たす水解性不織布である。
具体的には、実際に使用される大きさの水解性不織布を複数枚作製し、そのうちの一部の乾燥重量を測定し、残りのサンプルについて水解性を評価する。
水解性評価サンプルは予め排水設備模型を用いた前処理を行った後、4Lの水の入ったスロッシュボックス(振とう試験機)の水槽に入れ、振動数(18rpm)で30分間振とうさせた後、孔径25mmのふるいにかけ、ふるいの表面に10cm上方からシャワー水を4L/分の水量で1分間満遍なく水を掛けた後、ふるいに残った不織布片を採取し、乾燥重量を測定して、ふるい通過率を求めるものである。
スロッシュボックスについては、IWSFGの公開する条件を満たしているものでよいが、レンチング社の「Slosh Box100」を用いることもできる。
前記扁平レーヨン繊維は、前記水解性不織布の全質量に対して、前記扁平レーヨン繊維を10~50質量%含有することが好ましく、20~45質量%含有することがより好ましい。前記扁平レーヨン繊維を上記範囲で含有することにより、水解性不織布の柔らかさと、含水状態の水解性不織布で清浄作業を行っても水解性不織布が破れない強度を両立することができる。
本発明の水解性不織布はパルプ繊維を含む。パルプ繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプからなる繊維を挙げることができる。木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LBKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NBKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒クラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等を用いることもできる。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられる。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。パルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
なお、パルプ繊維の長さ加重平均繊維長は、以下の測定方法で算出された繊維長である。まず水解性不織布を水に離解させて得られた繊維分散スラリーを作製する。これをナイロンメッシュスクリーンで濾過し、残渣(レーヨン)、濾液(パルプ分散液)に分ける。パルプ分散液を4500rpmで離解機で処理し、十分に離解させ、繊維分散スラリーを得る。得られた繊維分散スラリーを0.01質量%以上0.02質量%以下になるように希釈し、希釈液を作製する。この希釈液10mlに含まれる繊維成分の投影長さを、繊維長測定装置(メッツォオートメーション社製、カヤーニファイバーラボVer4.0)を用いて測定し、離解繊維の長さ加重平均値を算出する。
フリーネスは、JIS P 8121-2に規定するカナダ標準ろ水度(C.S.F.)で示される値であり、繊維の叩解の度合いを示す値である。繊維の叩解は、繊維を分散させた紙料(スラリー)に対して、ビーター、ディスクリファイナー等の公知の叩解機を用いて実施することができる。通常、繊維のフリーネスの値が小さいほど、叩解の度合いが強く、叩解による繊維の損傷が大きくてフィブリル化が進行している。繊維のフィブリル化が進行すると繊維間の結合点数が増加するため、強度が向上する。本発明においては湿潤強度と水解性を好ましい範囲とするために、フリーネスを適宜調節することも好ましい。
本発明の水解性不織布は再生セルロース繊維を含み、再生セルロース繊維は、扁平レーヨン繊維を含むものである。再生セルロース繊維は、扁平レーヨン繊維を含むものであればよく、他の再生セルロース繊維を含むものであってもよい。ただし、再生セルロース繊維の全質量に対する扁平レーヨン繊維の割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが一層好まく、100質量%であることが特に好ましい。
本発明の水解性不織布は、他の任意成分を含むものであってもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤等を挙げることができる。乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の水解性不織布の製造方法は、湿式抄紙法により形成した、パルプ繊維と再生セルロース繊維とポリエチレンオキシド樹脂とを含む不織布シートに高圧水ジェット流処理を施す工程を含む。ここで、再生セルロース繊維は、扁平レーヨン繊維である。また、絶乾状態の水解性不織布と水の質量比が1:2(不織布:水)となるように水解性不織布に純水を含浸させた湿潤水解性不織布の水解性は100秒以下であり、且つ抄紙機の縦方向の湿潤引張強さが55N/m以上、横方向の湿潤引張強さが30N/m以上となるように、水解性不織布の坪量、厚み、抄紙液の供給速度、ワイヤー速度などを調整することが好ましい。
V=(2×g×(P―Ap)×10000/(ρ×1000))1/2×60・・・(i)
V:ノズルから吐出される水の流速(m/分)
g:重力加速度=9.8m/s2
P:ノズル部での水圧(kgf/cm2)
A:ノズル1孔の面積(mm2)
p:大気圧(kgf/cm2)
ρ:水の密度(g/cm3)
F=(A/100)×V×100・・・(ii)
F:ノズル部の1孔から吐出される水の流量(cm3/分)
A:ノズル1孔の面積(mm2)
V:ノズルから吐出される水の流速(m/分)
E=P×(F/100)×0.163・・・(iii)
E:高圧水ジェット流エネルギー(kWh/kg/m)
本発明の水解性不織布は、水やプロピレングリコール等の湿潤剤、アルコールやパラ安息香酸エステル類といって抗菌剤、防黴剤、香料、所望の薬効を有する薬剤等を含浸させてウェットティシュ、おしりふき、ワイパー等のウェット製品として用いられる。また、本発明の水解性不織布を衛生材料の表面材として使用してもよい。この場合、所望に応じて不織布に親水性や撥水性を高めるような処理を施しても良い。
繊度1.7dtex、長さ7mmの中空扁平レーヨン繊維(商品名:コロナSBH、ダイワボウレーヨン株式会社製)26質量部、未叩解の針葉樹クラフトパルプ(NBKP、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定されたフリーネスが673ml)74質量部となるように繊維原料を混合した固形分濃度1.0質量%のパルプスラリーを得た。手抄きシートマシンにてパルプスラリーから不織布シートを作製した。次いでウォータージェット装置(高圧水ジェット流処理装置)を用いて、負荷エネルギーが0.022kWh/kg/mとなるように、不織布シートに高圧水ジェット流を噴射した。高圧水ジェット流処理が施された不織布シートを乾燥し、乾燥後の坪量が43.0g/m2の水解性不織布を得た。
(実施例2)
実施例1において、高圧水ジェット流の負荷エネルギーを0.088kWh/kg/mにした以外は実施例1と同じ方法で実施例2の水解性不織布を得た。
実施例1において、未叩解の針葉樹クラフトパルプ(NBKP、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定されたフリーネスが673ml)74質量部のうちの37部を未叩解の広葉樹クラフトパルプ(LBKP、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定されたフリーネスが510ml)に変更し、且つ高圧水ジェット流の負荷エネルギーを0.029kWh/kg/mにした以外は実施例1と同じ方法で実施例3の水解性不織布を得た。
実施例1において、繊度1.7dtex、長さ7mmの中空扁平レーヨン繊維26部の代わりに繊度1.1dtex、長さ7mmの菊型レーヨン繊維26部を用い、且つ高圧水ジェット流の負荷エネルギーを0.088kWh/kg/mにした以外は実施例1と同じ方法で比較例1の水解性不織布を得た。
トイレに流せるおしりふき市販品1(商品名:ムーニートイレに流せるタイプ、ユニ・チャーム社製)を使用した。
トイレに流せるおしりふき市販品2(商品名:メリーズするりんキレイおしりふきトイレに流せるタイプ、花王社製)を使用した。
実施例、比較例1各水準を110mm×200mmの大きさに断裁したもの、比較例2、3については製品の大きさのものを複数枚用意して、乾燥後の質量を測定した。その後、実施例、比較例1各水準の水解性不織布と水の質量比が1:2(不織布:水)となるように水解性不織布に純水を含浸させて湿潤状態の水解性不織布(湿潤水解性不織布)を得た。比較例2,3については製品の状態で準備した。
その後、湿潤状態の水解性不織布の水解性をIWSFGより公開されている「PAS 3:2018 スロッシュボックスによる水解性試験法」に準拠して測定した。
実施例、比較例1で得られた水解性不織布については、各水準の水解性不織布と水の質量比が1:2(不織布:水)となるように水解性不織布に純水を含浸させて湿潤状態の水解性不織布とし、比較例2,3の水解性不織布については製品の状態で、引張試験機(エイ・アンド・デイ社製、TENSILON万能材料試験機)にてサンプル幅30mm、スパン長110mm、引張速度300mm/分の条件で、水解性不織布のウォータージェット痕もしくはエンボス加工痕と並行方向及び垂直方向の湿潤引張強度を測定し、相乗平均を算出した。
実施例、比較例1各水準については絶乾状態の水解性不織布と水の質量比が1:2(不織布:水)となるように水解性不織布に純水を含浸させて湿潤状態の水解性不織布(湿潤水解性不織布)を得た。比較例2,3については製品の状態でサンプルを準備した。
湿潤状態の水解性不織布について、ティシューソフトネス測定装置(型式TSA、日本ルフト社製、アルゴリズム:TP2)を用いて、HF値を測定した。
実施例、比較例1各水準については絶乾状態の水解性不織布を150mm角に断裁して、水解性不織布と水の質量比が1:2(不織布:水)となるように水解性不織布に純水を含浸させて湿潤状態の水解性不織布(湿潤水解性不織布)を得た。比較例2,3については、製品の状態で150mm角に断裁してサンプルを得た。
次に東洋精機製作所製の「サウザランドラブテスタ」のサンプル台に人工皮膚(バイオスキンプレート、スムーズサーフェス、ビューラックス社製)を固定した。
さらに、上記で得られた湿潤水解性不織布を900gの摺動子(サンプル台接触する部分は平面で20mm角)に貼り付け、円弧軌道上を一定速度で10往復させて湿潤水解性不織布の損傷度合いを目視で評価した。
○:大きな損傷がみられず、清浄作業性に優れる。
×:人口皮膚と接触した部分に穴が開いており、実用上問題がある。
実施例、比較例1各水準については絶乾状態の水解性不織布と水の質量比が1:2(不織布:水)となるように水解性不織布に純水を含浸させて湿潤状態の水解性不織布(湿潤水解性不織布)サンプルを得た。比較例2,3については製品の状態でサンプルを準備した。
比較例2のサンプルを手で触ったときの柔らかさを基準として、各サンプルを手で触ったとき、比較例と同等以上の柔らかさであると感じられる場合は○、明らかに硬く感じられるものを×とし、結果を表1に示した。
Claims (6)
- パルプ繊維と、再生セルロース繊維とが交絡した水解性不織布であり、絶乾状態の前記水解性不織布と水の質量比が1:2となるように前記水解性不織布に純水を含浸させた湿潤水解性不織布の世界下水道トイレに流せる製品問題検討会議(IWSFG)水解性試験に準じた水解性が95%以上であり、
前記水解性不織布の湿潤引張強さが30N/m以上であり、
且つ、前記水解性不織布と水の質量比が1:2となるように前記水解性不織布に純水を含浸させた湿潤水解性不織布のやわらかさの指標であるHF値が95以上であり、
前記再生セルロース繊維は、中空扁平レーヨン繊維を含み、
前記水解性不織布の全質量に対して、前記中空扁平レーヨン繊維を10~50質量%含有する水解性不織布。 - パルプ繊維と再生セルロース繊維とを含むスラリーを湿式抄紙して得られた不織布シートに、高圧水ジェット流処理を施されてなる請求項1に記載の水解性不織布。
- 前記水解性不織布の全質量に対するパルプ繊維の含有量は、50質量%以上である請求項請求項1または2に記載の水解性不織布。
- 前記水解性不織布の全質量に対するパルプ繊維の含有量は、90質量%以下である請求項1~3のいずれかに記載の水解性不織布。
- 前記中空扁平レーヨン繊維の繊度は、1.0dtex以上7.0dtex以下である請求項1~4のいずれかに記載の水解性不織布。
- 前記中空扁平レーヨン繊維の平均繊維長が0.5~20mmである請求項1~5のいずれかに記載の水解性不織布。
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