JP2023154569A - 不織布、不織布の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は新規で特有な肌触りの良さを備える不織布およびその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の不織布は、溶解パルプと化学繊維とを含み、溶解パルプおよび化学繊維が交絡したものである;本発明の不織布の製造方法は、溶解パルプと化学繊維とを含むスラリーから得られる湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施すことを含む。【選択図】なし

Description

本発明は、不織布、不織布の製造方法に関する。
不織布は、衣料分野、化粧品、衛生用品、医療用品等の種々の産業上の分野で幅広い用途に適用されている。例えば、特許文献1ではウェットティシュ、おしりふき、ワイパー等のウェット製品に適用可能な不織布として、パルプ繊維と再生セルロース繊維が高圧水ジェット流処理によって交絡した水解性不織布が提案されている。
国際公開第2019/150964号
ウェット製品や水解性不織布に限らず、例えば、ティッシュペーパーのようなヒトの肌に触れる用途に使用される不織布には、消費者の好み、要望、流行等に応じて新規で特有な肌触りの良さが求められている。
本発明は、新規で特有な肌触りの良さを備える不織布およびその製造方法を提供する。
本発明者は不織布において新規かつ特有な肌触りを実現するために、溶解パルプを含むスラリーから不織布を得ることを試みた。溶解パルプはヘミセルロースが極めて少ないため繊維間結合が弱く、独特の肌触りが得られることが期待された。
しかし、本発明者が試験したところ溶解パルプを含むスラリーを単に抄紙するだけでは、溶解パルプは繊維間結合が極めて弱いため、シート強度が不充分であることが判明した。結果として、シート状の不織布そのものが得られなかった。シート強度を高めるための薬品の使用が試みられたが、薬品を使用すると今度は不織布が硬くなり、溶解パルプの独特の肌触りの良さが損なわれてしまった。
そこで本発明者は、溶解パルプの特有の肌触りの良さを損なわないようにし、かつ、不織布を得るのに必要なシート強度を補うために、レーヨン、ビニロン等の化学繊維をスラリーに配合して得られた湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施すことに想到した。溶解パルプと化学繊維を含むスラリーから得られた湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施すことで、不織布を得るのに充分な強度が発現した。加えて、得られた不織布において新規で特有な肌触りの良さ、特にしなやかさを実現できた。
本発明は、下記の態様を有する。
[1]溶解パルプと化学繊維とを含み、前記溶解パルプと前記化学繊維が交絡した、不織布。
[2]前記化学繊維の平均繊維長が、3~20mmである、[1]の不織布。
[3]前記化学繊維が、レーヨンである、[1]または[2]の不織布。
[4]不織布の製造方法であって;溶解パルプと化学繊維とを含むスラリーから得られる湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施すことを含む、不織布の製造方法。
[5]前記化学繊維が、レーヨンである、[4]の製造方法。
本発明によれば、新規で特有な肌触りの良さを備える不織布およびその製造方法が提供される。
実施例で行った高圧水ジェット流処理の様子を説明するための模式図である。
本明細書において、「絶乾状態の不織布」とは、水分含有量が不織布の全質量に対して1質量%以下の不織布を意味する。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
本明細書に開示の数値範囲の下限値および上限値は、任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
<不織布>
本発明の不織布は、溶解パルプと化学繊維を含む。本発明の不織布においては、溶解パルプおよび化学繊維の交絡によって、溶解パルプおよび化学繊維が一体化している。不織布において溶解パルプと化学繊維が互いに交絡し、一体化した様子は、不織布表面を拡大観察し、各繊維がランダムに配向し、絡みあっていることによって理解され得る。
一般に高圧水ジェット流処理によって繊維同士を交絡させて得られる不織布は、スパンレース不織布と呼ばれる。本発明の不織布は、溶解パルプと化学繊維が高圧水ジェット流処理によって互いに水流交絡したスパンレース不織布であるとも言える。
本発明の不織布は、高圧水ジェット流処理によって溶解パルプと化学繊維が交絡し、一体化したものである。そのため、不織布には製造ラインの流れ方向(MD方向)に筋状の噴流跡が連続して形成されている。本発明の不織布においては、不織布の表面に高圧水ジェット流処理によって形成された筋状の噴流跡があることをもって、溶解パルプと化学繊維が水流交絡していると判定できる。噴流跡は、高圧水ジェット流がかかった微細な跡である。噴流跡においては、不織布を構成する繊維の密度が高圧水ジェット流のかかっていない噴流跡以外の箇所の密度よりも高くなっている。
(溶解パルプ)
本発明の不織布は、溶解パルプを含む。溶解パルプは、通常、セルロース原料として使用される。溶解パルプは、一般的な用途として例えば、レーヨン、セロファン、医薬用賦形剤、食品添加剤、土木材料、人造繊維、タバコフィルター、液晶フィルム等の種々の工業製品の原料として使用される。本発明においては、溶解パルプが不織布の原料として使用される点が特徴の一つである。
不織布中に溶解パルプが含まれることは、不織布のαセルロースの割合により確認できる。
不織布中の全溶解パルプの合計に対するαセルロースの割合は、92質量%以上が好ましく、94質量%以上がより好ましく、96質量%以上がさらに好ましい。αセルロースの割合が92質量%以上であると、滑らかな肌触り、しなやかさを備える不織布が得られやすいと考えられる。
不織布中のパルプに対するαセルロースの割合は、JIS P8101に準拠して測定される。
溶解パルプは、原料チップに含まれるリグノセルロース物質から、ヘミセルロースおよびリグニンを選択的に除去して得られるセルロース原料である。溶解パルプの原料チップは、木材(針葉樹、広葉樹等)でもよく、非木材(ケナフ、バガス、バンブーフ等の草木類)でもよく、特に限定されない。
生産効率を考慮すると、容積重が高い木材が好適に用いられる。該当する広葉樹としては、例えば、ユーカリ・グロブラス、ユーカリ・グランディス、ユーカリ・ユーログランディス、ユーカリ・ペリータ、ユーカリ・カマルドレンシス、ユーカリ・ブラシアーナ、アカシア・メランシが挙げられる。該当する針葉樹としては、例えば、ラジアータパイン、カリビアンパイン、ダグラスファー、ヘムロック、レッドウッド、カラマツ等が挙げられる。広葉樹、針葉樹、非木材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、併用時の組み合わせは何ら限定されない。
溶解パルプに含まれるαセルロースの含有量は92質量%以上が好ましく、94質量%以上がより好ましく、96質量%以上がさらに好ましい。溶解パルプ中のαセルロースの含有量が前記下限値以上であると、滑らかな肌触り、しなやかさを備える不織布が得られやすいと考えられる。
溶解パルプ中のαセルロースの含有量は、JIS P8101に準拠して測定される。
溶解パルプの粘度は6~13mPa・sが好ましく、6~11mPa・sがより好ましく、6~10mPa・sがさらに好ましい。溶解パルプの粘度とは、J TAPPI No.44に準拠して測定される相対粘度である。溶解パルプの粘度は、溶解パルプを銅エチレンジアミン水溶液で溶解したときの比較粘度であり、溶解パルプ中のセルロースの重合度の指標としても用いられる。溶解パルプの粘度が前記数値範囲内の下限値以上であると、湿式ウェブ、不織布のシート強度が向上しやすい。溶解パルプの粘度が前記数値範囲内の上限値以下であると、スラリーの流動性が充分に高く、湿式抄紙しやすい。
溶解パルプは、酸性サルファイト蒸解法で製造したものでもよく、アルカリ蒸解法で製造したものでもよく、いずれの製法で得られたものでも使用可能である。
アルカリ蒸解法としては、例えば、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解があるが、いずれの製法でもよく、特に限定されない。溶解パルプの品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解法が好適に用いられる。
以下、クラフト蒸解法による溶解パルプの製造方法を説明するが、溶解パルプはクラフト蒸解法によって製造されるものに限定されない。
クラフト蒸解法で溶解パルプを製造するためには、木材等のチップを水の存在下で、加温して前加水分解処理を行なう。前加水分解の強度はPファクターとして200~1000が好ましい。温度は160~170℃が好ましい。処理温度は処理時間に対応して決定すればよい。Pファクターは、前加水分解時の温度と時間から計算される。前加水分解に用いる装置は特に限定されないが、好適には汎用の連続蒸解釜、バッチ釜等が用いられる。
次いで、前加水分解処理後の木材等のチップに、アルカリ蒸解処理が施される。アルカリ蒸解に用いられる装置は特に限定されないが、好適には汎用の連続蒸解釜、バッチ釜等が用いられる。木材をクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は20~35%が好ましい。クラフト蒸解液の有効アルカリ添加率は、絶乾木材質量あたりで10~25質量%が好ましい。蒸解温度は140~170℃が好ましい。蒸解白液を分割して添加する蒸解法でも、蒸解白液を一括で添加する蒸解法でもよく、クラフト蒸解の方式は特に問わない。
アルカリ蒸解して得られる未漂白パルプのカッパー価は、特に限定されない。溶解パルプの品質、その後の漂白性等を考慮すると、広葉樹を原料とした場合、カッパー価は6~18が好ましく、針葉樹を原料とした場合、カッパー価は20~35が好ましい。
未漂白パルプは洗浄、粗選、精選を経て、好適には酸素脱リグニン法により脱リグニン処理された後に、漂白処理され、漂白パルプが得られる。酸素脱リグニン法、漂白処理の具体的態様は特に限定されず、当業者によって適宜選択され得る。
漂白処理としては、例えば、二酸化塩素、アルカリ、酸素、過酸化水素、オゾンといった漂白段を組み合せる多段漂白が一般的である。未漂白パルプは最終的に白色度87~92%ISO、好ましくは89~92%ISOまで漂白され、溶解パルプが得られる。
漂白パルプの主成分は、セルロースおよびヘミセルロースである。漂白パルプは、リグニン、樹脂分等の不純物を含み得る。漂白パルプに関し、一般の溶解パルプはセルロースを95~99質量%含み、ヘミセルロースを1~5質量%含む。対して、一般的な製紙用パルプはセルロースを85質量%程度含み、ヘミセルロースを15質量%程度含む。一般的なコットンではセルロースの含有量が99質量%以上であり、ヘミセルロースの含有量は1質量%未満である。
溶解パルプはマーセル化(アルセル化)したものでもよい。マーセル化した溶解パルプは、アルカリセルロースを含む。マーセル化反応には、種々のマーセル化処理液(アルカリ溶液等)を使用できる。マーセル化反応には、マーセル化促進剤として界面活性剤を用いてもよい。マーセル化促進剤として使用され得る界面活性剤としては、例えば、国際公開第2016/170857号に開示の界面活性剤(A)が挙げられる。ただし、界面活性剤はこの例示に限定されない。
マーセル化反応の温度、時間は特に限定されず、当業者によって適用設定または変更され得る。
不織布中の溶解パルプの平均繊維長は0.3~4mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましく、0.5~1mmがさらに好ましい。溶解パルプの平均繊維長が前記数値範囲内の下限値以上であると、不織布の強度が向上しやすい。また、滑らかな肌触り、しなやかさが得られやすい。溶解パルプの平均繊維長が前記数値範囲内の上限値以下であると、製造設備に溶解パルプが絡みにくく、不織布を製造しやすい。
溶解パルプの平均繊維長は、JIS P8226に準拠して測定される。
不織布中の溶解パルプの繊維巾は10~30μmが好ましく、10~25μmがより好ましく、10~20μmがさらに好ましい。溶解パルプの繊維巾が前記数値範囲内の下限値以上であると、不織布の強度が向上しやすい。溶解パルプの繊維巾が前記数値範囲内の上限値以下であると、不織布を製造する際にスラリー中の溶解パルプの分散性が向上しやすい。
溶解パルプの繊維巾は、バルメット社FS5等の画像解析の手法を用いて測定される。
(化学繊維)
化学繊維は特に限定されない。再生繊維、半合成繊維、合成繊維のいずれも使用され得る。化学繊維は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
再生繊維としては、例えば、レーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、キュプラ(銅アンモニアレーヨン)、リヨセル、テンセルが挙げられる。ただし、再生繊維はこれらの例示に限定されない。
半合成繊維としては、例えば、アセテート、トリアセテート、プロミックスが挙げられる。ただし、半合成繊維はこれらの例示に限定されない。
合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミドが挙げられる。ただし、合成繊維はこれらの例示に限定されない。
再生繊維、半合成繊維、合成繊維の各繊維は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも化学繊維としては、再生繊維が好ましく、レーヨン、ビニロンがより好ましく、レーヨンがさらに好ましい。化学繊維がレーヨンであると、よりしなやかな肌触りの不織布が得られやすい。レーヨンは生分解性であり、溶解パルプもまた生分解性であるため、生分解性の不織布が得られるという利点もある。
レーヨンは、繊維断面の形状が扁平形状である扁平レーヨンであってもよい。繊維断面の形状とは、繊維の長さ方向に対して垂直方向のカット面の形状である。扁平形状とは、繊維断面の形状が、中心点を通過する最大長で定義される長径と、中心点を通過する最小長で定義される短径を有し、かつ断面の長径/短径の比が2以上となる形状である。繊維断面の長径/短径の比は、10個の異なる扁平レーヨンの扁平断面を垂直方向より顕微鏡観察し、マイクロスケールを基準として測定した長径および短径の各々の平均値から算出できる。
扁平形状としては、例えば、まゆ型、長円型、楕円型が挙げられる。ただし、扁平形状はこれら例示した形状に限定されない。
扁平レーヨンとして、密実扁平レーヨンを用いてもよく、中空扁平レーヨンを用いてもよい。中空扁平レーヨンは、湿潤状態でその繊維断面が扁平形状となる。そのため、繊維同士の接触面積が増大することで、吸いの表面張力による吸着力や摩擦力が発生する結果、高い強度が得られやすい。また、中空扁平レーヨンは、水洗時の大量の水の存在下で膨潤し、ほぐれやすくなる。そのため、不織布の水解性が発揮されやすくなると考えられる。中空扁平レーヨンとして、市販品を用いてもよい。市販の中空扁平レーヨンとして、例えば、ダイワボウレーヨン社製のSBHが挙げられる。
化学繊維の繊度は0.3~7.0dtexが好ましく、0.5~5.0dtexがより好ましく、0.8~2.0dtexがさらに好ましい。化学繊維の繊度が前記数値範囲内の下限値以上であると、シート強度が向上しやすい。化学繊維の繊度が前記数値範囲内の上限値以下であると、不織布を製造する際にスラリー中の化学繊維の分散性が向上しやすい。また、水中で分解した後の再凝集を抑制しやすい。そのため、水解性が向上しやすい。
化学繊維の繊度は、JIS L-1015に準拠して測定される。
化学繊維の平均繊維長は3~20mmが好ましく、3~15mmがより好ましく、5~10mmがさらに好ましい。化学繊維の平均繊維長が前記数値範囲内の下限値以上であると、シート強度が向上しやすい。化学繊維の平均繊維長が前記数値範囲内の上限値以下であると、製造設備に化学繊維が絡みにくく、不織布を製造しやすい。また、溶解パルプに起因する滑らかな肌触り、しなやかさが損なわれにくい。
化学繊維の平均繊維長は、JIS L-1015に準拠して測定される。
(他の繊維)
本発明の不織布は、溶解パルプの特有の肌触りの良さを極端に損なわない範囲内であれば、溶解パルプおよび化学繊維以外の他の繊維をさらに含んでもよい。
他の繊維としては、例えば、木材パルプおよび非木材パルプ等のセルロース繊維、綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維が挙げられる。木材パルプは叩解パルプでもよいし、未叩解パルプでもよい。
溶解パルプ以外の木材パルプとしては、例えば、化学パルプ、半化学パルプ、機械パルプが挙げられる。
化学パルプとしては、例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LBKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NBKP))、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプが挙げられる。
半化学パルプとしては、例えば、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)が挙げられる。
機械パルプとしては、例えば、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)が挙げられる。
溶解パルプ以外の非木材パルプとしては、例えば、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ;麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ;ホヤ、海草等から単離されるセルロース;キチン、キトサン等が挙げられる。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプを用いてもよい。
(他の成分)
本発明の不織布は、溶解パルプの特有の肌触りの良さを極端に損なわない範囲内であれば、溶解パルプ、化学繊維および他の繊維以外の他の成分をさらに含んでもよい。
他の成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤が挙げられる。
乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。
湿潤紙力剤としては、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミドが挙げられる。
柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が挙げられる。
他の成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(不織布の組成)
不織布中の溶解パルプの含有量は、不織布の全質量100質量%に対して40~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。溶解パルプの含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、水解性、溶解パルプの特有の肌触りの良さ、しなやかさが得られやすい。溶解パルプの含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、製造時のシート強度、不織布の強度が得られやすい。
不織布中の化学繊維の含有量は、不織布の全質量100質量%に対して5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。化学繊維の含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、製造時のシート強度、不織布の強度が得られやすい。化学繊維の含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、水解性、溶解パルプの特有の肌触りの良さ、しなやかさが得られやすい。
他の繊維の含有量は不織布の全質量100質量%に対して0~30質量%が好ましく、0~25質量%がより好ましく、0~20質量%がさらに好ましい。他の繊維の含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、他の繊維による特性や肌触りが不織布に発現しやすい。他の繊維の含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、溶解パルプの特有の肌触りの良さ、しなやかさが得られやすい。
他の成分の含有量は不織布の全質量100質量%に対して0~15質量%が好ましく、0~12.5質量%がより好ましく、0~10質量%がさらに好ましい。他の成分の含有量が前記数値範囲内の下限値以上であると、他の成分による特性が不織布に発現しやすい。他の成分の含有量が前記数値範囲内の上限値以下であると、溶解パルプの特有の肌触りの良さ、しなやかさが損なわれにくい。
(不織布の性状)
不織布の坪量は特に限定されない。不織布の用途に応じて適宜変更可能である。例えば、不織布の坪量は15~90g/mが好ましく、20~85g/mがより好ましく、25~80g/mがさらに好ましい。不織布の坪量が前記数値範囲内の下限値以上であると、不織布の強度が向上しやすい。不織布の坪量が前記数値範囲内の上限値以下であると、肌触りの良さ、しなやかさが損なわれにくい。
不織布の坪量は、JIS P 8124に準拠して測定される。
不織布の厚みは特に限定されない。不織布の用途に応じて適宜変更可能である。
不織布の密度は特に限定されない。不織布の用途に応じて適宜変更可能である。不織布の密度は0.1~0.35g/cmが好ましく、0.11~0.32g/cmがより好ましく、0.12~0.30g/cmがさらに好ましい。不織布の密度が前記数値範囲内の下限値以上であると、不織布の強度が向上しやすい。不織布の密度が前記数値範囲内の上限値以下であると、肌触りの良さ、しなやかさが得られやすい。
不織布の密度はJIS P8118に準拠して測定される。
不織布の引張強度は特に限定されない。不織布の用途に応じて適宜変更可能である。不織布の引張強度は0.05kN/m以上が好ましく、0.08kN/m以上がより好ましく、0.1kN/m以上がさらに好ましい。不織布の引張強度が前記下限値以上であると、ウェットティッシュ、清拭シート、フェイスマスク等の引張強度が求められる用途に不織布を適用しやすい。不織布の引張強度の上限値は特に限定されない。該上限値は例えば、1.0kN/m程度である。
不織布の引張強度は、引張試験機にてMD方向およびMD方向に垂直なCD方向の各引張強度を測定し、MD方向の引張強度とCD方向の引張強度の相乗平均値を算出したものである。サンプル幅15mm、スパン長100mm、引張速度100mm/分の条件でMD方向およびCD方向の各引張強度を測定する。引張試験機としては、島津製作所社製のAUTOGRAPH試験機を用いることができる。
不織布の引張伸びは特に限定されない。不織布の用途に応じて適宜変更可能である。不織布の引張伸びは5%以上が好ましく、7%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。不織布の引張伸びが前記下限値以上であると、フェイスマスク等の引張伸びが求められる用途に不織布を適用しやすい。不織布の引張伸びの上限値は特に限定されない。該上限値は例えば、20%程度である。
不織布の引張伸びは、引張試験機にてMD方向およびMD方向に垂直なCD方向の各引張伸びを測定し、MD方向の引張伸びとCD方向の引張伸びの相乗平均値を算出したものである。サンプル幅15mm、スパン長100mm、引張速度100mm/分の条件でMD方向およびCD方向の各引張伸びを測定する。引張試験機としては、島津製作所社製のAUTOGRAPH試験機を用いることができる。
不織布の生濡れ強度は特に限定されない。不織布の用途に応じて適宜変更可能である。不織布の生濡れ強度は0.2kgf/50mm以上が好ましく、0.25kgf/50mm以上がより好ましく、0.3kgf/50mm以上がさらに好ましい。不織布の生濡れ強度が前記下限値以上であると、ウェットティッシュ、清拭シート、フェイスマスク等の生濡れ強度が求められる用途に不織布を適用しやすい。不織布の生濡れ強度の上限値は特に限定されない。該上限値は例えば、1.5kgf/50mm程度である。
不織布の生濡れ強度は、以下の通り求められる。すなわち、絶乾状態の不織布と水の質量比が1:2(絶乾状態の不織布:水)となるように不織布に純水を含浸させ、湿潤不織布を得る。不織布の生濡れ強度は、湿潤不織布のMD方向の引張強度とCD方向の引張強度の相乗平均値を算出したものである。湿潤不織布について、サンプル幅50mmを二つ折りに25mmとし、スパン長100mm、引張速度100mm/分の条件でMD方向およびCD方向の各引張強度を測定する。引張試験機としては、島津製作所社製のAUTOGRAPH試験機を用いることができる。
不織布の生濡れ伸びは特に限定されない。不織布の用途に応じて適宜変更可能である。不織布の生濡れ伸びは10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。不織布の生濡れ伸びが前記下限値以上であると、フェイスマスク等の生濡れ伸びが求められる用途に不織布を適用しやすい。不織布の生濡れ伸びの上限値は特に限定されない。該上限値は例えば、40%程度である。
不織布の生濡れ伸びは、以下の通り求められる。すなわち、絶乾状態の不織布と水の質量比が1:2(絶乾状態の不織布:水)となるように不織布に純水を含浸させ、湿潤不織布を得る。不織布の生濡れ伸びは、湿潤不織布のMD方向の引張伸びとCD方向の引張伸びの相乗平均値を算出したものである。湿潤不織布について、サンプル幅50mmを二つ折りに25mmとし、スパン長100mm、引張速度100mm/分の条件でMD方向およびCD方向の各引張伸びを測定する。引張試験機としては、島津製作所社製のAUTOGRAPH試験機を用いることができる。
本発明の一態様においては、不織布のしなやかさの指標としてTS7を採用してもよい。
TS7はemtec社製のティシューソフトネス測定装置(TSA)によって取得できる。本発明の一態様に係る不織布において、相対的に硬い繊維は測定時にTSAのブレードにより強い振動を起こし、相対的に柔らかい繊維は該ブレードにより弱い振動を起こし得る。この振動を音響スペクトルの周波数で計測し、TSAに備わるソフトウェアによる処理を経た後、TS7が得られる。
一般に不織布のTS7の値が大きいほど、不織布が硬いことを示すと言われる。本発明の一態様においてはTS7の値が小さいほど、しなやかな肌触りが得られると考えられる。
TS7は20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下がさらに好ましいと考えられる。TS7の下限値は特に限定されないが、5程度と考えられる。TS7が前記上限値以下であると、しなやかな肌触りが得られやすいと考えられる。
不織布のTS7は、表面のTS7と裏面のTS7の平均値とする。不織布の表面は、製造ラインにおいて高圧水ジェット流処理の水流が直接噴射された面とする。そのため、不織布の表面には、高圧水ジェット流処理によって形成された筋状の噴流跡がある。不織布の裏面は、表面の反対側の表面である。
<不織布の製造方法>
本発明の不織布の製造方法は、溶解パルプと化学繊維とを含むスラリーから得られる湿式ウェブに、高圧水ジェット流処理を施すことを含む。
溶解パルプと化学繊維とを含むスラリーの調製方法は、特に限定されない。溶解パルプ、化学繊維の詳細および好ましい態様は、上述の<不織布>の項で説明した内容と同じである。
また、溶解パルプの特有の肌触りの良さを極端に損なわない範囲内であれば、他の繊維、他の成分を必要に応じてスラリーにさらに配合してもよい。他の繊維、他の成分の詳細は、上述の<不織布>の項で説明した内容と同じである。
スラリー中の溶解パルプの割合はスラリー100質量%に対し、40~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましく、60~80質量%がさらに好ましい。スラリー中の溶解パルプの割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、溶解パルプの特有の肌触りの良さ、しなやかさが得られやすい。スラリー中の溶解パルプの割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、製造時のシート強度、不織布の強度が得られやすい。
スラリー中の化学繊維の割合はスラリー100質量%に対し、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。スラリー中の化学繊維の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、製造時のシート強度、不織布の強度が得られやすい。スラリー中の化学繊維の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、溶解パルプの特有の肌触りの良さ、しなやかさが得られやすい。
スラリー中の他の繊維の割合はスラリー100質量%に対し、0~30質量%が好ましく、0~25質量%がより好ましく、0~20質量%がさらに好ましい。スラリー中の他の繊維の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、他の繊維による特性や肌触りを不織布に付与しやすい。スラリー中の他の繊維の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、溶解パルプの特有の肌触りの良さ、しなやかさが得られやすい。
スラリー中の他の成分の割合はスラリー全質量100質量%に対し、0~15質量%が好ましく、0~12.5質量%がより好ましく、0~10質量%がさらに好ましい。他の成分の割合が前記数値範囲内の下限値以上であると、他の成分による特性を不織布に付与しやすい。他の成分の割合が前記数値範囲内の上限値以下であると、溶解パルプの特有の肌触りの良さ、しなやかさが得られやすい。
本発明の一態様において、例えば、溶解パルプと化学繊維とを含むスラリーを湿式抄紙することでシート状の湿式ウェブを得ることができる。抄紙に際しては、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜ワイヤー抄紙機、長網抄紙機等の種々の抄紙機を用いて湿式抄紙すればよい。抄紙時には、スラリーにポリエチレンオキサイド等の粘剤を添加してもよく、抄紙時のワイヤーパートにおいて抄紙液速度とワイヤー速度の比を調整することで湿式ウェブの繊維配向をコントロールしてもよい。
次いで、湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施す。本発明の不織布において、溶解パルプと化学繊維が一体化した構造は、湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施すことで形成される。高圧水ジェット流処理を施すことによって、溶解パルプと化学繊維はねじられ、曲げられ、回された状態となるため、繊維同士が交絡して一体化する。
高圧水ジェット流処理はウォーターパンチ処理、ウォータージェット処理と呼ばれることもある。いずれの処理においても繊維の集積層に高圧の水流を噴射することで繊維同士を交絡させることができる。
高圧水ジェット流処理の具体的な手法は、水流によって溶解パルプと化学繊維とを交絡させることができれば特に限定されない。例えば、湿式ウェブを多孔性の支持体上に置き、湿式ウェブの上面から、孔径が0.08~0.30mm程度の細孔が多数配列したノズルを通して水圧15~150kg/cmの水圧で高圧水を噴射することで、湿式ウェブ中の溶解パルプと化学繊維を相互に交絡させることができる。
高圧水ジェット流処理は種々の手法により実施できる。ノズルの孔数、ノズル孔径、各ノズルの水流の水圧、ノズルの通過スピードは、繊維同士を交絡させることができれば特に限定されない。
高圧水ジェット流処理は、湿式抄紙してウェブを形成した直後にオンラインで行ってもよく、湿式抄紙したウェブを一旦乾燥した後、オンラインまたはオフラインで高圧水ジェット流処理を行ってもよい。また、高圧水ジェット流処理は1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。溶解パルプと化学繊維を充分に交絡させる点では、高圧水ジェット流処理は複数回行うことが好ましい。
高圧水ジェット流処理における高圧水ジェット流エネルギーは0.01~0.50kWh/kg/mが好ましく、0.02~0.40kWh/kg/mがより好ましく、0.03~0.30kWh/kg/mがさらに好ましく、0.05~0.20kWh/kg/mが特に好ましい。高圧水ジェット流エネルギーが前記数値範囲内の下限値以上であると、製造時のシート強度、不織布の強度が得られやすい。高圧水ジェット流エネルギーが前記数値範囲内の上限値以下であると、不織布の水解性が向上しやすい。
高圧水ジェット流エネルギーは、下式(1)により算出される。高圧水ジェット流処理を複数回行う場合、高圧水ジェット流エネルギーは各回の高圧水ジェット流処理の合計値とする。
E=P×(F/100)×0.163 ・・・式(1)
式(1)中、Eは高圧水ジェット流エネルギー(kWh/kg/m)であり、Pはノズル部での水圧(kgf/cm)であり、Fはノズル部の1孔から吐出される水の流量(cm/分)である。
式(1)におけるFは、下式(2)により算出される。
F=(A/100)×V×100 ・・・式(2)
式(2)中、Fはノズル部の1孔から吐出される水の流量(cm/分)であり、Aはノズル1孔の面積(mm)であり、Vはノズルから吐出される水の流速(m/分)である。
式(2)におけるVは、下式(3)により算出される。
V=(2×g×(P―Ap)×10000/(ρ×1000))1/2×60 ・・・式(3)
式(3)中、Vはノズルから吐出される水の流速(m/分)であり、gは重力加速度(=9.8m/s)であり、Pはノズル部での水圧(kgf/cm)であり、Aはノズル1孔の面積(mm)であり、pは大気圧(kgf/cm)であり、ρは水の密度(g/cm)である。
本発明の不織布の製造方法においては、新規な肌触りが得られるのであれば高圧水ジェット流処理に加え、高圧水ジェット流処理以外の他の交絡処理を併用してもよい。
他の交絡処理としては、例えば、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法が挙げられる。ニードルパンチ法では、高速で上下するニードル(針)で繰り返し繊維同士の集積層を突き刺し、ニードルに刻まれた突起により繊維同士を交絡させることができる。サーマルボンド法では、低融点の熱融着繊維を混合した繊維同士の集積層を熱ロールの間に通して熱圧着することで、または該集積層に熱風を当てることで、繊維同士を接着できる。ケミカルボンド法では、エマルジョン系の接着樹脂を含浸や噴霧等の方法で繊維の集積層に付着させ、次いで該集積層を加熱して乾燥することで繊維同士の交点を接着できる。
他の交絡処理は、高圧水ジェット流処理を施す前の湿式ウェブ、高圧水ジェット流処理を施した後の湿式ウェブのいずれに対して施してもよい。
高圧水ジェット流処理が施された湿式ウェブは、その後乾燥することで不織布が得られる。高圧水ジェット流処理が施された湿式ウェブを乾燥する前には必要に応じてプレスしてもよく、脱水してもよい。プレスによって所望の厚みに調整してもよい。
<作用機序>
以上説明した本発明に係る不織布は、溶解パルプと化学繊維が交絡したものである。溶解パルプを原材料とする不織布は新規なものである。そのため、本発明に係る不織布によれば、新規で特有な肌触りの良さが得られる。
本発明においては、溶解パルプおよび化学繊維を含むスラリーから得られた湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施す。そのため、溶解パルプの特有の肌触りの良さを損なわず、しかも、不織布を得るのに充分なシート強度が発現する。結果として得られた不織布において新規で特有な肌触りの良さ、特にしなやかさが得られる。
<用途>
不織布の用途は特に限定されない。例えば、ティーバック、水切シート等の生活関連品用途;各種フィルター等の産業用途;ビニールハウスシート等の農業資材用途;芯地等の衣料関連品用途;医療関連品用途;衛生関連品用途等が挙げられる。
本発明の不織布は、ウェットシート、フェイスマスク等の化粧品、おしぼり、ウェットティシュ、おしりふき、ワイパー等のウェット製品、衛生用品として好適に用いられる。水、プロピレングリコール等の湿潤剤、アルコール、パラ安息香酸エステル等の抗菌剤、防かび剤、香料、所望の薬効を有する薬剤等を不織布に含浸させてもよい。
不織布は衛生材料の表面材としても使用され得るこの場合、所望に応じて不織布に親水性や撥水性を高めるための処理を施してもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
<原料>
(溶解パルプ)
・各例では、クラフト蒸解法にて得られた広葉樹由来の溶解パルプ(以下、「DP」と記す。)を使用した。使用したDPのαセルロースの含有量は96.4質量%であった。また、DPのJ TAPPI No.44に準拠した粘度は、8.9mPa・sであった。
(化学繊維)
・レーヨン:繊度1.1dtex、平均繊維長7mm、繊維径10μmのレーヨン繊維を使用した。
・ビニロン:繊度1.1dtex、平均繊維長7mm、繊維径11μmのビニロン繊維を使用した。
(他の繊維)
・NBKP:JIS P 8121-2:2012に準拠して測定されたフリーネスが705ml)の針葉樹クラフトパルプを使用した。NKPの平均繊維長は2.3mm、繊維径は24μmである。
・麻:平均繊維長3.79mm、繊維巾19.6μmの麻繊維を使用した。
<実施例1>
DPおよびレーヨンをDP/レーヨン=90/10の質量比で配合し、スラリーを得た。手抄きシートマシンにて湿式抄紙することでスラリーから湿式ウェブを得た。次いで、ウォータジェット装置(高圧水ジェット流処理装置)を用いて高圧水ジェット流処理を湿式ウェブに施した。
高圧水ジェット流処理は、図1に示すようにして行った。すなわち、25cm×25cmの湿式ウェブ1を30cm×30cmのプラスチックワイヤー2に置き、図中の矢印で示す流れ方向(MD方向)にライン処理した。ラインベルト5とともに移動する湿式ウェブ1に、孔径0.1mm、ピッチ1mm、配列数1のノズルを備えた第1の噴射機3によって水圧:20.0kgf/cmの条件で高圧水ジェット流を噴射した。続いて、孔径0.1mm、ピッチ1mm、配列数1のノズルを備えた第2の噴射機4によって、水圧:19.0kgf/cmの条件で高圧水ジェット流を噴射した。第1の噴射機3および第2の噴射機による合計の高圧水ジェット流エネルギーは、0.100kWh/kg/mであった(以下、実施例1の高圧水ジェット流処理の条件を「条件A」と記す。)。
第2の噴射機4による高圧水ジェット流の噴射の直後に湿式ウェブ1を支持体のプラスチックワイヤー2から剥がして回収した。その後、ろ紙を押し当てて脱水した後、シリンダードライヤーにて120℃、2minの条件で乾燥し、実施例1の不織布を得た。
<実施例2>
実施例1において、第1の噴射機3によって水圧:16.0kgf/cmの条件で高圧水ジェット流を噴射し、かつ第2の噴射機4によって水圧:15.0kgf/cmの条件で高圧水ジェット流を噴射した以外は、実施例1と同じ方法で実施例2の不織布を得た。実施例2における高圧水ジェット流エネルギーの合計は、0.070kWh/kg/mであった(以下、実施例2の高圧水ジェット流処理の条件を「条件B」と記す。)。
<実施例3~10、比較例1~7>
スラリー組成、高圧水ジェット流処理の条件を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同じ方法で各例の不織布を得た。ただし、比較例1では高圧水ジェット流処理後でも溶解パルプ同士の交絡が弱く、プラスチックワイヤーに繊維が刺さり込んでいた。そのため、高圧水ジェット流処理後の湿式ウェブをプラスチックワイヤーから回収できず、不織布が得られなかった。よって、DP100質量%のスラリーについては、高圧水ジェット流エネルギーが条件Aより弱い条件Bによる高圧水ジェット流処理を行わなかった。
<測定、評価>
(坪量)
不織布の坪量(g/m)は、JIS P 8124に準拠して測定した。
(厚み)
不織布の厚み(μm)は、JIS P8118に準拠して測定した。
(密度)
不織布の密度(g/cm)は、JIS P8118に準拠して測定した。
(引張強度)
不織布の引張強度(kN/m)は、島津製作所製AUTOGRAPH試験機を用い、サンプル幅15mm、スパン長100mm、引張速度100mm/分の条件でMD方向およびCD方向の各引張強度を測定し、これらの相乗平均値を算出した。
(引張伸び)
不織布の引張伸び(%)は、島津製作所製AUTOGRAPH試験機を用い、サンプル幅15mm、スパン長100mm、引張速度100mm/分の条件でMD方向およびCD方向の各引張伸びを測定し、これらの相乗平均値を算出した。
(生濡れ強度)
不織布の生濡れ強度(kgf/50mm)は、絶乾状態の不織布と水の質量比が1:2(絶乾状態の不織布:水)となるように不織布に純水を含浸させて得た湿潤不織布について以下の通り測定した。湿潤不織布について、島津製作所製AUTOGRAPH試験機を用い、サンプル幅50mmを二つ折りに25mmとし、スパン長100mm、引張速度100mm/分の条件でMD方向およびCD方向の各引張強度を測定し、これらの相乗平均値を算出した。
(生濡れ伸び)
不織布の生濡れ伸び(%)は、絶乾状態の不織布と水の質量比が1:2(絶乾状態の不織布:水)となるように不織布に純水を含浸させて得た湿潤不織布について以下の通り測定した。湿潤不織布について、島津製作所製AUTOGRAPH試験機を用い、サンプル幅50mmを二つ折りに25mmとし、スパン長100mm、引張速度100mm/分の条件でMD方向およびCD方向の各引張伸びを測定し、これらの相乗平均値を算出した。
(しなやかさ)
不織布のしなやかさは、不織布製造に携わる技術者が指で掴んだときの指先の感覚に基づく官能試験によって評価した。5名の技術者のそれぞれが不織布のしなやかさを下記の8段階の基準で評価した。技術者5名分の結果の平均値を算出した。
1点:非常にごわごわとした手触りでしなやかさに非常に劣る。
2点:ごわごわとした手触りでしなやかさに劣る。
3点:ごわごわとした手触りでしなやかさに劣るが、下位点に比べると優れる。
4点:滑らかさやしなやかさにおいて、優れてもいないし劣ってもいない。
5点:滑らかさやしなやかさにおいて、優れてもいないし劣ってもいないが、下位点より優れる。
6点:滑らかな手触りでしなやかであるが、上位点に比べると劣る。
7点:滑らかな手触りでしなやかさに優れる。
8点:非常に滑らかな手触りでしなやかさに非常に優れる。
(TS7)
不織布のTS7は、ティシューソフトネス測定装置(emtec社製、アルゴリズム:TPII)を用いて測定した。TS7は不織布のしなやかさの指標である。
<結果>
各例の結果を表1に示す。
Figure 2023154569000001
実施例1~10では、溶解パルプと化学繊維を含むスラリーから得られた湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施すことで、シート状の不織布が得られた。実施例1~10の不織布には独特のしなやかさがあり、溶解パルプに由来する新規で特有な肌触りの良さが得られた。対して、比較例2~7ではシート状の不織布が得られたものの、溶解パルプの特有の肌触りの良さやしなやかさが得られなかった。
実施例1~10では比較例2~7と比較して、高圧水ジェット流処理後の湿式ウェブをプラスチックワイヤーから回収しやすく、不織布が得られやすかった。
しなやかさに関して、実施例7、9と比較例6の結果を比較すると、スラリー組成におけるDPの配合割合を高くすることで、良好なしなやかさが得られる傾向が確認できる。同じ傾向は実施例8、10と比較例7の結果を比較することでも確認できる。
レーヨンを用いた実施例1~6、特に実施例1、2では、良好なしなやかさが得られた。対して比較例2~5の結果に示すように麻を使用すると、しなやかさが得られにくく、表面のザラつきが目立つ結果であった。
実施例1~10のなかでも実施例3、4のDP/レーヨン=70/30の質量比で配合したスラリーから得られた不織布では、しなやかと強度のバランスが最も良好であった。
本発明によれば、新規で特有な肌触りの良さを備える不織布およびその製造方法が提供される。
1 湿式ウェブ
2 支持体(プラスチックワイヤー)
3 第1の噴射機
4 第2の噴射機
5 ラインベルト

Claims (5)

  1. 溶解パルプと化学繊維とを含み、前記溶解パルプと前記化学繊維が交絡した、不織布。
  2. 前記化学繊維の平均繊維長が、3~20mmである、請求項1に記載の不織布。
  3. 前記化学繊維が、レーヨンである、請求項1または2に記載の不織布。
  4. 不織布の製造方法であって、
    溶解パルプと化学繊維とを含むスラリーから得られる湿式ウェブに高圧水ジェット流処理を施すことを含む、不織布の製造方法。
  5. 前記化学繊維が、レーヨンである、請求項4に記載の製造方法。
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