JP7314472B1 - グラビア、フレキソ又はスクリーンインキ及びその製造方法、並びに印刷物 - Google Patents

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Abstract

【課題】廃棄物の削減及び環境負荷の低減が可能であり、グラビア印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷に用いられるインキとして好適であり、かつ、印刷画像が堅牢性に優れる、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキを提供する。【解決手段】着色剤及び液状媒体を含有し、着色剤は、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素及び焙煎後のコーヒー豆の粉末のうちの少なくとも一方を含み、積算粒子径分布の99%に対応した粒子径(D99)が0.5~300μmである、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキである。【選択図】なし

Description

本発明は、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキ及びその製造方法、並びに印刷物に関する。
グラビア印刷、フレキソ印刷は、食品包装、建装材等の被印刷体に、スクリーン印刷は、紙、ボトル、布等の被印刷体に、いずれも意匠性、機能性を付与する目的で広く採用されている。近年、包装物の多様性や包装技術の高度化、さらには有機溶剤に代表される法規制面からの環境課題に対する取組みなど、印刷インキへの要求は年々多様化している。
さらには、気候変動対策として2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。これを行うと、植物原料などのバイオマス原料を使用し、燃焼で排出される二酸化炭素と、植物などの生長により吸収・固定される二酸化炭素の量とが同一量とすれば空気中の二酸化炭素は増加しない。従って、フィルム用の包装材に使用できるグラビア、フレキソ又はスクリーンインキの原料に、植物由来(バイオマス由来) のものを使用する、すなわち、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキのバイオマス度を、空気中の二酸化炭素を増加させない程度まで向上させる取り組みが急務となっている。
グラビア印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷に使用されるグラビア、フレキソ又はスクリーンインキは、通常、着色剤、バインダー樹脂、液状媒体、及び補助剤を含む。
グラビア、フレキソ又はスクリーンインキのバインダー樹脂部にバイオマス成分を含有させる技術は開示されている(特許文献1)が、バイオマスモノマーを出発原料とした人工的な色素合成を除けば、植物が生合成した色素をそのまま活用するバイオマス由来の有色の着色剤を活用したグラビア、フレキソ又はスクリーンインキの例はほぼない。
一般に、着色剤としてはアゾ顔料、多環式顔料等の有機顔料又はカーボンブラックや各種金属塩等の無機顔料が使用される。
石油由来の素原料で構成されているアゾ顔料、多環式顔料等の有機顔料又はカーボンブラック等の色材はカーボンニュートラルの観点で好ましくなく、再生可能な炭素源であるバイオマス原料由来の色材利用の方が環境負荷低減の観点で好ましい。
過去、包装材等向けのグラビア、フレキソ又はスクリーン印刷以外の用途では、植物由来の天然物を着色剤として使用する試みがなされていた。例えば、特許文献2には、主として衣服用の、植物から抽出された天然染料を用いたインキが提案されている。また、特許文献3には、ラテアート等飲食物用に、コーヒーの抽出物をインキの着色剤として利用することが提案されている。いずれも、植物由来の天然物を利用することから、環境面の負荷を減らすことができ、廃棄物を利用すれば廃棄物量を削減することができる。
特許第6906001号 特開平8-109346号公報 特表2010-506562号公報
特許文献1に記載のインキはバインダー樹脂にバイオマス成分を組み込んでいるが、インキの必要な構成成分である色材は石油由来の原料を用いているため、達成しうるインキ全体のバイオマス度には限界がある。
特許文献2に記載のインキは、主として衣服への印刷を目的としたインキである。特許文献3に記載のインキは、ラテアート等飲食物への印刷を目的とした可食性インキである。従って、両特許文献に記載のインキは、食品パッケージ印刷に用いるようなグラビア印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷用の食品包材用のインキとしての使用は考慮されておらず、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキとしての適性には劣ると考えられる。
また、特許文献3に記載のインキは、コーヒーの抽出物をそのままの状態、すなわち、染料として使用している。そのため、食品包材用のインキとして用いる場合特に耐水性が不十分であるなど、堅牢性に劣ると考えられる。
一方、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキに石油由来の原料を用いた有機顔料を使用した例は無数にあるが、植物である焙煎後のコーヒー豆由来の色素をパッケージ用の印刷インキとして用いた例は確認されない。
また、コーヒーは世界中で栽培、飲用されているが、ロットアウトしたコーヒー豆と、焙煎後にコーヒーショップ等で飲用に抽出された滓を含めると大量の廃棄物が発生する課題がある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、廃棄物の削減、環境負荷の低減、及びバイオマス度の向上が可能であり、グラビア印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷に用いられるインキとして好適であり、かつ、印刷画像が堅牢性に優れる、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキ及びその製造方法、並びに印刷物を提供することにある。
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)着色剤及び液状媒体を含有し、
前記着色剤は、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素及び焙煎後のコーヒー豆の粉末のうちの少なくとも一方を含み、
積算粒子径分布の99%に対応した粒子径(D99)が0.5~300μmである、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
(2)前記抽出色素又は前記焙煎後のコーヒー豆の粉末の乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmである、前記(1)に記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
(3)前記液状媒体が、芳香族溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、アルコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、グリコール溶剤、炭化水素溶剤及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記(1)又は(2)に記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
(4)さらに、バインダー樹脂を含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
(5)前記バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、環化ゴム樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記(4)に記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキからなる印刷層を有する、印刷物。
(7)着色剤及び液状媒体を含有し、前記着色剤は、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素及び焙煎後のコーヒー豆の粉末のうちの少なくとも一方を含むグラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法であって、
焙煎されたコーヒー豆を準備することと、焙煎されたコーヒー豆から色素を抽出することと、前記色素を、積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmとなるようにレーキ化することとを含むことにより前記抽出色素を製造する工程、及び/又は、
焙煎されたコーヒー豆を準備することと、焙煎されたコーヒー豆を、積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmとなるように粉砕することとを含むことにより前記コーヒー豆の粉末を製造する工程、
を含む、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法。
本発明によれば、廃棄物の削減、環境負荷の低減、及びバイオマス度の向上が可能であり、グラビア印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷に用いられるインキとして好適であり、かつ、印刷画像が堅牢性に優れる、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキ及びその製造方法、並びに印刷物を提供することができる。
<グラビア、フレキソ又はスクリーンインキ>
本実施形態のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ(以下、これらを総称して単に「インキ」とも呼ぶ。)は、着色剤及び液状媒体を含有し、着色剤は、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素及び焙煎後のコーヒー豆の粉末のうちの少なくとも一方を含み、積算粒子径分布の99%に対応した粒子径(D99)(以下、単に「粒子径(D99)」とも呼ぶ。)が0.5~300μmであることを特徴としている。
本実施形態のインキにおいては、着色剤として、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素及び焙煎後のコーヒー豆の粉末のうちの少なくとも一方を含む。すなわち、いずれも植物由来であるコーヒー豆を原料としており、環境負荷の低減に資する。また、コーヒーの廃棄物を利用することで、廃棄物量の削減を図ることができる。さらに、これらの着色剤は、いずれも液状媒体に溶解することなく分散しており、染料ではなく褐色系顔料として機能する。従って、印刷後の画像は十分な耐水性を有し、堅牢性に優れる。また、本実施形態のインキは、粒子径(D99)が0.5~300μmであることで、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキとしての適性に優れる。なお、褐色系とは、低い彩度を呈する色調を意味し、例えば、茶褐色、茶色、黒褐色等の色調が挙げられる。
本実施形態のインキは、粒子径(D99)が0.5~300μmである。したがってコーヒーショップ等から廃棄される抽出後のコーヒー滓や一般的なコーヒーミルで引いた粉体を用いてそのままインキ化した場合は粒径が大きすぎるため本実施形態のインキの粒子径D99の上限300μmを逸脱する。すなわち、本実施形態のインキを得るためには焙煎後のコーヒー豆をグラビア・フレキソ・スクリーンインキへ適用可能な形態へ加工する必要がある。インキの粒子径(D99)が300μm以下であれば粗粒による印刷不良が起きにくい。また、スクリーンインキの場合、メッシュ詰まりやメッシュを通過しない粗粒の滞積が起きにくい。一方、一般に粒子径(D99)が0.5μm以上であれば、分散体再凝集が起こりにくくインキの安定性が向上する。当該粒子径(D99)は、150μm以下であることが好ましく、50μm以下であることより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。
本明細書において、インキの積算粒子径分布の99%に対応した粒子径(D99)は、体積基準の粒子径であり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置により測定することができる。
以下に本実施形態のインキの各成分について説明する。
[着色剤]
本実施形態において、着色剤は、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素の形態と、焙煎後のコーヒー豆の粉末の形態とがある。以下、それぞれの形態について詳述する。
(焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素)
本実施形態において、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素(以下、「コーヒー豆抽出色素」とも呼ぶ。)は、焙煎され褐色系の色調となったコーヒー豆から色素を抽出し、抽出した色素をレーキ化して得られる。すなわち、コーヒー豆抽出色素は、所定の粒子径を有し、褐色系の顔料として機能する。
コーヒー豆抽出色素の積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)(以下、単に「粒子径(D90)」とも呼ぶ。)は0.5~300μmであることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。コーヒー豆抽出色素の粒子径(D90)を0.5~300μmとし、さらに微粒子化することで本実施形態のインキの粒子径(D99)を0.5~300μmとすることができる。
なお、粒子径(D90)の測定は、レーザー回析式乾式粒度分布測定装置により行うことができる。
本実施形態のインキにおいて、コーヒー豆抽出色素は、インキ中に5~30質量%含むことが好ましく、10~20質量%含むことがより好ましい。
本実施形態のインキにおいて、コーヒー豆抽出色素は、耐水性向上の観点からレーキ化度は30%以上が好ましく、40%がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、60%以上が特に好ましい。なお、レーキ化度は、固形分中の非可溶性固形分の質量割合を指す。非可溶性固形分の割合とは、すなわち固形分中に占める可溶性固形分以外の固形分の割合であり、下記の式を用いて求めることができる。なお、以下の「可溶性固形分値」は質量基準の値である。
レーキ化度(%) = 100-コーヒー抽出色素の可溶性固形分値/金属塩の可溶性固形分値×100
可溶性固形分は屈折計やBrix計など既知の方法で測定することができる。
コーヒー豆の焙煎、焙煎したコーヒー豆からの色素の抽出及び抽出した色素のレーキ化については、後述する本実施形態のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法において説明する。
(焙煎後のコーヒー豆の粉末)
本実施形態において、焙煎後のコーヒー豆の粉末(以下、「コーヒー豆粉末」とも呼ぶ。)は、焙煎され褐色系の色調となったコーヒー豆を所定の粒子径となるように粉砕して得られる。
コーヒー豆粉末の粒子径(D90)は0.5~300μmであることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。コーヒー豆粉末の粒子径(D90)は0.5~300μmとし、さらに微粒子化、ならびに篩過を併用することで本実施形態のインキの粒子径(D99)を0.5~300μmとすることができる。
なお、コーヒー豆粉末の粒子径(D99)の測定は、コーヒー豆抽出色素と同様に測定することができる。
コーヒー豆の焙煎、焙煎したコーヒー豆の粉砕については、後述する本実施形態のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法において説明する。
本実施形態においては、着色剤として、コーヒー豆抽出色素とコーヒー豆粉末とを併用してもよい。併用する場合、両者の比率は特に限定はない。
また、本実施形態のインキにおいては、着色剤として、コーヒー豆抽出色素及びコーヒー豆粉末の少なくとも一方に加え、カーボンブラックなど、一般的に使用される顔料を併用してもよい。
[液状媒体]
本実施形態のインキに使用する液状媒体としては、水又は有機溶剤が挙げられる。また、有機溶剤は、水溶性溶剤、非水溶性溶剤に分類できる。
水溶性溶剤としては、例えば、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等のグリコール溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水溶性溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、ブチルアセテート、メチルアセテート、ノルマルプロピルアセテート等のエステル溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、及びヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭化水素溶剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液状媒体としては、中でも、芳香族溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、アルコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、グリコール溶剤、炭化水素溶剤及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
[バインダー樹脂]
本実施形態のインキは、インキの液滴を定着させ印刷物の耐性を向上させるため、バインダー樹脂を含有してもよい。バインダー樹脂としては、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン樹脂、ポリ乳酸樹脂等のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、環化ゴム樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
なお、水溶性溶剤を使用する水性インキの場合、水性のバインダー樹脂が使用される。水性のバインダー樹脂としては、水性ポリウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、等が挙げられる。もっとも、水性インキの場合、バインダー樹脂は含有しなくてもよい。バインダー樹脂として生分解性を有する樹脂を用いる場合、インキ全体としての生分解性も期待することができる。
以下に、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン樹脂、ポリ乳酸樹脂等のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂について詳述する。
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000のものが好ましい。
また、ポリウレタン樹脂は、アミン価及び/又は水酸基価を有するものが好ましく、アミン価は0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、1~20mgKOH/gであることがより好ましい。また、水酸基価は0.5~30mgKOH/gであることが好ましく、1~20mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲であると、基材への接着性が向上する。
ポリウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール由来の構造単位を含むものが好ましく、その含有量の合計は、ポリウレタン樹脂固形分100質量%中、5~80質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが更に好ましい。
ポリウレタン樹脂は特に制限はなく、公知の方法により適宜製造される。ポリオールとポリイソシアネートからなるポリウレタン樹脂や、ポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミンとを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂などが好ましい。製造方法としては例えば、特開2013-256551号公報、国際公開第2018/199085号、特開2018-131624号公報に記載の方法などが挙げられる。
(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル由来の構造単位とその他モノマー由来の構造単位を含有するものであれば特に限定されない。中でも塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂が好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであり、分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000がより好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
(セルロース樹脂)
セルロース樹脂としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートその他のセルロースエステル樹脂、ニトロセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、及びカルボキシアルキルセルロース等が挙げられる。セルロースエステル樹脂はアルキル基を有することが好ましく、当該アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、更にアルキル基が置換基を有していてもよい。
セルロース系樹脂としては、上記のうちセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びニトロセルロースが好ましい。特に好ましくはニトロセルロースである。分子量としては重量平均分子量で5,000~200,000のものが好ましく、10,000~50,000がより好ましい。また、ガラス転移温度が120℃~180℃であるものが好ましい。
《ニトロセルロース》
上記ニトロセルロースは、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましい。平均重合度は20~200の範囲のものが好ましく、30~150の範囲のものがより好ましい。平均重合度が20以上の場合、インキ被膜の強度が向上し、耐擦傷性が向上するため好ましい。又、平均重合度が200以下の場合、溶剤への溶解性、インキの低温安定性、併用樹脂との相溶性が向上するため好ましい。また、窒素分は10.5~12.5質量%であることが好ましい。
(アクリル樹脂)
本実施形態でインキに使用するアクリル樹脂としては、不飽和二重結合を有するモノマーを、重合開始剤を用いて溶媒中で重合させることで得られるアクリル樹脂が使用可能である。ここで不飽和二重結合を有するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化合物、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の少なくとも1個のN-置換メチロール基を含有する(メタ)アクリル酸アミド誘導体、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類の(メタ)アクリル酸のモノまたはジエステル類、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の酸基を有するビニル化合物等が例示できる。本発明のグラビアインキのプラスチックフィルムに対する接着性、耐熱性の面から、カルボキシル基および/または水酸基を有するアクリル樹脂が好ましく、アクリル樹脂に水酸基を持たせる場合、アクリル樹脂として構成するモノマーとして(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル化合物を含有するものが好ましい。以上のアクリル樹脂の重量平均分子量は、30,000~100,000の範囲であることが好ましい。また、アクリル樹脂はガラス転移温度(Tg)が40~110℃であることが好ましい。
(ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂は以下に限定されるものではないが、好ましくは多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得ることができる有機溶剤に可溶な熱可塑性ポリアミドである。特に、重合脂肪酸及び/又はダイマー酸を含有する酸成分と、脂肪族及び/又は芳香族ポリアミンの反応物を含むポリアミド樹脂であることが好ましく、更には一級及び二級モノアミンを一部含有するものが好ましい。
ポリアミド樹脂の原料で使用される多塩基酸としては、以下に限定されるものではないが、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、テレフタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、トリメリット酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、重合脂肪酸などが挙げられ、その中でもダイマー酸あるいは重合脂肪酸に由来する構造を主成分(ポリアミド樹脂中に50質量%以上)含有するポリアミド樹脂が好ましい。ここで、重合脂肪酸とは、不飽和脂肪酸脂肪酸の環化反応等により得られるもので、一塩基性脂肪酸、二量化重合脂肪酸(ダイマー酸)、三量化重合脂肪酸等を含むものである。なお、ダイマー酸あるいは重合脂肪酸を構成する脂肪酸は大豆油由来、パーム油由来、米糠油由来など天然油に由来するものを好適に挙げることができ、オレイン酸及びリノール酸から得られるものが好ましい。
多塩基酸には、モノカルボン酸を併用することもできる。併用されるモノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
多価アミンとしては、ポリアミン、一級または二級モノアミンなど挙げることができる。ポリアミド樹脂に使用されるポリアミンとしてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミンを挙げることができ、脂環族ポリアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン等を挙げることができる。また、芳香脂肪族ポリアミンとしてはキシリレンジアミン、芳香族ポリアミンとしてはフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を挙げることができる。さらに、一級及び二級モノアミンとしては、n-ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどを挙げることができる。
また、ポリアミド樹脂は軟化点が80~140℃であることが好ましく、当該範囲においてインキ被膜が強くなる。また、ポリアミド樹脂の溶解性の観点から重量平均分子量は2,000~50,000の範囲であることが好ましく、2,000~10,000であることがより好ましい。軟化点が80℃以上の場合は、印刷物のインキ被膜の表面タック切れが良好となり、ブロッキングを防ぐ。軟化点が140℃以下の場合はインキ被膜が柔軟となり基材への接着性が向上する。重量平均分子量の範囲はとしては2,000以上の場合はインキの被膜強度が良好となり、耐擦傷性、耐熱性、高速印刷適性が向上する。分子量が50,000以下の場合はインキの粘度が低粘度化でき、貯蔵安定性が良好となる。なお、軟化点はJISK2207(環球法)で測定された値を表す。
(ロジン樹脂)
ロジン樹脂は、ロジン骨格を有する樹脂であれば特に限定されないが、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル、ロジンフェノール、重合ロジンなどが好ましい。軟化点(環球法による)が90~200℃であることが好ましい。耐ブロッキング性を向上させるためである。またロジン系樹脂はポリウレタン樹脂と併用することが好ましい。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、通常、ジカルボン酸成分と、ジオール成分との重縮合、ジカルボン酸成分と、ジオール成分と、オキシカルボン酸成分との重縮合、ラクチド成分の開環重合等により得られる樹脂である。ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が0~100℃であることが好ましく、20~80℃であることがより好ましい。軟化点が20℃以上であると、塗膜形成時に良好な耐熱性が得られる。また、80℃以下の軟化点であると、基材への密着性が向上する。ポリエステル樹脂は数平均分子量が3000~100,000のものが好ましく、5000~40,000のものがより好ましい。数平均分子量が3000以上であると、塗膜形成時に良好な耐油性が得られる。また、100,000以下であると、インキにおいて適正な粘度を与えることが可能であり、良好な印刷適性が得られる。
中でも、バイオマス度を高める観点からポリ乳酸樹脂が好ましい。
《ポリ乳酸樹脂》
ポリ乳酸樹脂とは、植物由来のデンプンや糖を原料とし、化学的な工程を経て製造されたポリ乳酸を主骨格とするバイオマスプラスチックであり、従来の石油を原料とするプラスチックとは異なり、使用後にコンポストまたは土中などの、水分と温度が適度な環境下に置くことで加水分解が促進され、その後、微生物による分解(生分解)が進行し、最終的にはCOと水に完全に分解する生分解性樹脂である。工業的にはトウモロコシ等から生成したデンプンから作られた乳酸の環状二量体であるラクチドから合成されるポリエステル樹脂である。ポリ乳酸樹脂は、ポリ乳酸樹脂全体に対しポリ乳酸由来の構成単位を70~100質量%含むことが好ましく、90~100質量%含むことがより好ましい。
ポリ乳酸樹脂を製造するためには、L-ラクチド、D-ラクチド、LD-ラクチド等のラクチドで、いずれの光学異性体を用いても合成が可能である。
L-ラクチドとD-ラクチドのモル比(L/D)は1~9の範囲であることが好ましく、1~5.6であることがより好ましい。L/Dが9以下であれば、使用溶剤に対する当該ポリ乳酸樹脂の溶解性が良好である。また、L/Dが1以上であれば、原料コストを低く抑えられる点で有効である。
ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、10000~100000の範囲であることが好ましく、25000~50000の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量が10000以上であると、印刷層及び被覆装での良好な耐熱性が得られる。また、重量平均分子量が1000000以下であれば、インキにおいて適正な粘度を与えることが可能であり、良好な印刷適性が得られる。
ポリ乳酸樹脂は、カプロラクトンなどのラクチド以外の環状エステル化合物との共重合を行うことも好ましい。ラクチド以外の生分解を有するラクトンとの共重合を行う場合、ポリ乳酸樹脂はポリ乳酸単位を70モル%以上有していることが好ましい。ポリ乳酸単位が70モル%以上であると、耐摩擦性や、耐傷つき性が良好となる。当該環状エステル化合物は、例えば、ラクトン化合物が挙げられ、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトンなどが好適に挙げられる。
<ポリ乳酸樹脂の製造>
例えば、ポリ乳酸樹脂は、上記ラクチドを開環重合して得られる。具体的には、有機溶剤としての酢酸エチルと、モノマーとしてのラクチドと、重合開始剤とを、120~180℃で2~6時間撹拌加熱行うことで得ることができる。
ポリ乳酸樹は上記重合開始剤の化合物を構成単位として有していることが好ましく、性状の良いポリ乳酸樹脂を得ることができる。中でも、上記重合開始剤は、アルコール化合物であることが好ましい。当該アルコール化合物としてはモノアルコール、ジオールなどが好適に挙げられる。モノアルコールとしては炭素数5~20のアルコール化合物が挙げられ、例えば、ラウリルアルコール、オクタノール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールなどが好適に挙げられる。ジオールとしてはジエチレングリコール、プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,9-ノナンジオールなどが好適に挙げられる。重合開始剤はポリ乳酸樹脂の全質量中、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることが更に好ましい。なお、ポリ乳酸樹脂の製造には、反応効率向上のために酸性触媒、チタン、あるいはスズ系錯体を用いてもよい。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、軟化点が40~160℃であることが好ましく、60~140℃であることがより好ましい。軟化点が40℃以上であると、塗膜形成時に良好な耐熱性が得られる。また、160℃以下の軟化点であると、基材への密着性が向上する。エポキシ樹脂は重量平均分子量が500~100,000のものが好ましく、700~50,000のものがより好ましい。重量平均分子量が100以上であると、塗膜形成時に良好な耐油性が得られる。また、100,000以下であると、良好な光沢が得られる。
インキ中におけるバインダー樹脂の含有量は、0~50質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましく、7~20質量%であることが更に好ましい。
[添加剤]
本実施形態のインキは、添加剤として公知のものを適宜含むことができ、必要に応じて公知の添加剤、例えば顔料誘導体、顔料分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤等を使用することができる。
本実施形態のインキは、着色剤の原料としてコーヒー豆を使用することから、インキのバイオマス度を高くすることができる。具体的には、本実施形態のインキのバイオマス度は、バインダー樹脂によっては100%とすることができる。
<インキ原料のバイオマス度>
インキ原料のバイオマス度は、インキ原料の固形成分中の全炭素原子のうち、動植物由来の炭素原子の割合である。炭素原子がすべて動植物由来である際はバイオマス度100%とする。原料の生産時に素原料として化石燃料等を併用している場合、もしくはすべての炭素が動植物由来か自明でない場合は放射性炭素年代測定により定量することができる。
<インキのバイオマス度>
インキのバイオマス度は、インキの中の全固形分に対するバイオマス由来の固形分が占める質量割合を%で示した値である。
<印刷物>
本実施形態の印刷物は、上述の本実施形態のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキからなる印刷層を有する印刷物である。本実施形態の印刷物における印刷層は、本実施形態のインキを使用して印刷されてなるため堅牢性が高く、またバイオマス度が高い。
さらに生分解性の樹脂(例えば、ポリ乳酸樹脂)を用いた場合、高いバイオマス度のみならず生分解性を有する。
<グラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法>
本実施形態のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法は、着色剤及び液状媒体を含有し、着色剤は、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素及び焙煎後のコーヒー豆の粉末のうちの少なくとも一方を含むグラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法である。そして、焙煎されたコーヒー豆を準備する(以下、「工程A-1」とも呼ぶ。)と、焙煎されたコーヒー豆から色素を抽出すること(以下、「工程A-2」とも呼ぶ。)と、色素を、積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmとなるようにレーキ化すること(以下、「工程A-3」とも呼ぶ。)とを含むことにより抽出色素を製造する工程(以下、「工程A」とも呼ぶ。)、及び/又は、焙煎されたコーヒー豆を準備すること(以下、「工程B-1」とも呼ぶ。)と、焙煎されたコーヒー豆を、積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmとなるように粉砕する工程(以下、「工程B-2」とも呼ぶ。)を含むことによりコーヒー豆の粉末を製造する工程(以下、「工程B」とも呼ぶ。)を含むことを特徴としている。
[工程A]
工程Aは、工程A-1~工程A-3を含むことにより抽出色素を製造する工程である。以下に工程A-1~工程A-3について説明する。
(工程A-1)
工程A-1は、焙煎されたコーヒー豆を準備する工程である。本工程において、焙煎されたコーヒー豆を準備するに当たり、未焙煎のコーヒー豆を焙煎してもよいし、市販のコーヒー豆等、既に焙煎されたコーヒー豆を入手してもよい。
未焙煎のコーヒー豆を焙煎する場合、焙煎方法としては、コーヒー豆が褐色系の色調となれば特に限定はなく、公知の焙煎方法を採用することができる。
あるいは、既に焙煎されたコーヒー豆を入手する場合、市販のコーヒー豆や賞味期限が切れて廃棄されるものを入手してもよい。
(工程A-2)
工程A-2は、焙煎されたコーヒー豆から色素を抽出する工程である。焙煎されたコーヒー豆からの色素の抽出は特に制限はなく、公知の抽出法により行うことができる。例えば、水抽出、熱水抽出、有機溶媒抽出により行うことができる。
焙煎されたコーヒー豆から色素を抽出するに際し、抽出液のpHを7~14とすることが好ましい。抽出液のpHが7未満の場合、抽出される色素の色が薄くなる傾向にあるからである。コーヒーは酸性であることから、抽出液のpHを7~14とするには、積極的に塩基性の物質を添加する必要がある。当該塩基性の物質としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
(工程A-3)
工程A-3は、色素を、積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmとなるようにレーキ化する工程である。工程A-2で抽出した色素は水溶性であるが、本工程において、水溶性の色素をレーキ化することで、所定の粒子径を有する、水に不溶な顔料とする。
レーキ化は、金属塩により行うことができる。金属塩としては、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属の硫酸塩、塩酸塩を用いることができる。具体的には、硫酸鉄、ミョウバン、アルミナ、硫酸バリウム等が挙げられる。レーキ化に当たり、金属塩の使用量は、コーヒー豆から抽出した色素をレーキ化できればよく、色素の添加量に応じて適宜調整することができる。例えば、金属塩は、色素含有液に対して質量比0.01~100倍とすることができる。
本工程においては、粒子径(D90)が0.5~300μmとなるようにレーキ化するが、粒子径(D90)は0.5~100μmが好ましく、0.5~20μmがより好ましく、1.0~10μmがさらに好ましい。
なお、粒子径(D90)を所定の範囲内とする当たり、粒子径の調整は、レーキ化における、金属塩濃度の調整、レーキ化時の温度、レーキ化の時間の調整、篩過時のメッシュの目開きの調整等により行うことができる。
[工程B]
工程Bは、工程B-1~工程B-2を含むことによりコーヒー豆の粉末を製造する工程である。以下に工程B-1~工程B-2について説明する。
(工程B-1)
工程B-1は、焙煎されたコーヒー豆を準備する工程である。本工程は、工程A-1と同じであり、上述の工程A-1の説明がそのまま当てはまる。従って、説明を省略する。
(工程B-2)
工程B-2は、焙煎されたコーヒー豆を、積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmとなるように粉砕する工程である。粉砕は、粉砕機を使用して行うことができる。粉砕機としては、例えば、ビーズミル、ローターミル、ジェットミル、ピンミル、ハンマーミル、ターボミル、ボールミル、産業用石臼等が挙げられる。粒子径(D90)が0.5~300μmとなるように粉砕するには、粉砕機の選定、粉砕時間の設定等により適宜行うことができる。
コーヒー豆に脂分を含むと良好に粉砕できないことがあるため、粉砕は脱脂後に行うことが好ましい。脱脂は、アルカリ溶液又は有機溶媒に浸漬することにより行うことができる。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等の水溶液が挙げられる。また、有機溶媒としては、エタノール、ヘキサン、アセトン等が挙げられる。
以上の工程A及び/又は工程Bの終了後、得られたレーキ化後の色素たる着色剤は乾燥させることが好ましい。乾燥は、熱風乾燥、赤外線乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等により行うことができる。
乾燥後、着色剤を既述の液状媒体に投入して分散させる。このとき、必要に応じてバインダー樹脂、添加剤等を用い、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等、インキの製造に用いられる装置を用いて混練することにより、最終結果物であるインキとすることができる。また、混練により、粒子径(D99)が0.5~300μmのインキとなる。
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の記載において「部」は質量部を示す。「%」とは特段の断りのない限り質量%を表す。
《コーヒー豆抽出色素 DE1の作製》
焙煎したコーヒー豆を準備し、コーヒーミルにより粉砕した。次いで、水で加熱抽出して色素を抽出した。その後、ミョウバンによって抽出した色素をレーキ化した。
レーキ色素を脱水後、ビーズミルで解砕し、メッシュを用いた篩過を行った。
抽出色素の乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)を、レーザー開設式乾式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製 HELOS&RODOS)により測定したところ40μmであった。また、レーキ化度を測定したところ、74.2%であった。
《コーヒー豆抽出色素 DE2の作製》
焙煎したコーヒー豆を準備し、コーヒーミルにより粉砕した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液で加熱抽出して色素を抽出した。その後、ミョウバンによって抽出した色素をレーキ化した。レーキ色素を脱水後、ビーズミルで解砕し、メッシュを用いた篩過を行った。
抽出色素の乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)を、レーザー開設式乾式粒度分布測定装置(日本レーザー製 HELOS&RODOS)により測定したところ38μmであった。また、レーキ化度を測定したところ、76.2%であった。
《コーヒー豆抽出色素 DE3の作製》
篩過に用いるメッシュ目開きを変えることにより、抽出色素の乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)を5μmとしたこと以外、コーヒー豆抽出色素DE1と同様にして作製した。また、レーキ化度を測定したところ、75.0%であった。
《コーヒー豆抽出色素 DE4の作製》
篩過に用いるメッシュ目開きを変えることにより、抽出色素の乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)を290μmとしたこと以外、コーヒー豆抽出色素DE1と同様にして作製した。また、レーキ化度を測定したところ、74.5%であった。
《コーヒー豆抽出色素 DE5の作製》
篩過に用いるメッシュ目開きを変えることにより、抽出色素の乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)を450μmとしたこと以外、コーヒー豆抽出色素DE1と同様にして作製した。また、レーキ化度を測定したところ、73.8%であった。
《コーヒー豆抽出色素 DE6の作製》
レーキ化しなかったこと以外、コーヒー豆抽出色素DE1と同様にして作製した。
抽出色素の乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)を、レーザー開設式乾式粒度分布測定装置(日本レーザー製 HELOS&RODOS)により測定したところ35μmであった。また、レーキ化度について、DE6はレーキ化処理をしていないため0%とした。
《コーヒー豆脱脂粉末 CG1の作製》
焙煎したコーヒー豆を準備し、脱脂効率を向上させるため脱脂後に産業用石臼により粉砕した。粉砕したコーヒー豆粉末を乾燥後、ビーズミルで解砕し、メッシュを用いた篩過を行った。コーヒー豆抽出色素1と同様にして、乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)を測定したところ、5μmであった。
《コーヒー豆粉末 CG2の作製》
焙煎したコーヒー豆を準備し、産業用石臼により粉砕した。コーヒー豆抽出色素1と同様にして、乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)を測定したところ、78μmであった。
《コーヒー豆粉末 CG3の作製》
乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が308μmとなるように粉砕したこと以外はコーヒー豆粉末CG1と同様に粉砕した。
《コーヒー豆粉末 CG4の作製》
乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が390μmとなるように粉砕したこと以外はコーヒー豆粉末CG1と同様に粉砕した。
次いで、インキの調製に用いる他の成分を以下に示す。なお、使用した液状媒体及びバインダー樹脂の詳細は以下の通りである。
(液状媒体)
以下の比率は、質量比を表す。
・液状媒体1:ノルマルプロピルアセテート(NPAC):イソプロピルアルコール(IPA)=75%:25%の混合液
・液状媒体2:トルエン:メチルエチルケトン(MEK):イソプロピルアルコール(IPA)=40%:40%:20%の混合液
・液状媒体3:MCH(メチルシクロヘキサン):ノルマルプロピルアセテート(NPAC):イソプロピルアルコール(IPA)=35%:35%:30%の混合液
・液状媒体4:ノルマルプロピルアセテート(NPAC):ノルマルプロピルアルコール(NPA):プロピレングリコールモノプロピルエーテル=20%:75%:5%の混合液
・液状媒体5:水:イソプロピルアルコール(IPA)=95:5の混合液
・液状媒体6:プロピレングリコール:プロピレングリコールモノプロピルエーテル=50:50の混合液
・液状媒体7:シクロヘキサノン:γ-ブチロラクトン=50:50の混合液
・液状媒体8:シクロヘキサノン:エチレングリコールモノブチルエーテル=60:40の混合液
・液状媒体9:プロピレングリコール
・液状媒体10:水:プロピレングリコールモノプロピルエーテル=50:50の混合液
(バインダー樹脂)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液:日信化学工業株式会社製、ソルバインTAO 塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=91/2/7(質量比)の共重合樹脂、固形分30%酢酸エチル溶液
・ニトロセルロース樹脂溶液:NOBEL NC社製 DHX 40-70(H綿 固形分70%、バイオマス度47%)
・アクリル樹脂溶液:三菱レイヨン株式会社製、ダイヤナールBR-107 30%酢酸エチル/イソプロピルアルコール溶液、重量平均分子量60000、ガラス転移温度50℃、酸価3.5mgKOH/g
・ポリアミド樹脂溶液:築野食品工業株式会社製、ベジケムグリーン V725(軟化点129℃、バイオマス度82%)をイソプロパノール溶液に溶解し固形分30%に調整
・水性アクリル樹脂溶液:BASFジャパン株式会社製 JONCRYL63D (固形分30%)
<バイオマスポリウレタン樹脂の合成>
・ポリウレタン合成に使用するポリエステルポリオールの合成
攪拌機、温度計、分水器及び窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、1,3-プロパンジオール(植物由来バイオマス度100%)26部、1,2-プロピレングリコール(植物由来バイオマス度100%)26部、コハク酸(植物由来バイオマス度100%)18 部、セバシン酸(植物由来バイオマス度100%)30部、テトラブチルチタネート0.002部を仕込み、窒素気流下に230℃で縮合により生じる水を除去しながらエステル化を8時間行った。ポリエステルの酸価が15以下になったことを確認後、真空ポンプにより徐々に真空度を上げ反応を終了した。これにより数平均分子量2000、水酸基価56.1mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/g、バイオマス度100%のポリエステルポリオールを得た。
・ポリウレタン樹脂の合成
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、上記のポリエステルポリオールを23.6部、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIとも略す)4.68部、酢酸エチル7.5部、2-エチルヘキサン酸スズ0.003部を仕込み、窒素気流下に120℃で6時間反応させ、酢酸プロピル7.5部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下IPDAとも略す)1.72部、酢酸エチル34部及びイソプロピルアルコール(以下IPAとも略す)21部を混合したものへ、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量71000、アミン価10mgKOH/g バイオマス度79%、固形分30%のポリウレタン樹脂溶液を得た。なお、バイオマス度とは化合物中に含まれる全炭素原子中の、動植物由来の炭素原子の割合をいう。
<ポリ乳酸樹脂の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、Mラクチドを100部、オクタノール0.1部を仕込み180℃到達後に2-エチルヘキサン酸スズを0.05部添加し2時間開環重合を行った後116%強リン酸0.08部を添加して減圧下脱残留ラクチドを行ったものを酢酸エチルで固形分50%に調整して、重量平均分子量50000のポリ乳酸樹脂溶液を得た。
<水性ポリウレタン樹脂の合成>
温度計、撹拌機、還流冷却管、撹拌装置および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール50.4部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール 5.0部、シクロヘキサンジメタノール1.3部、ジメチロールブタン酸9.2部、ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン6.4部、トリメチロールプロパン0.2部、及びメチルエチルケトン125部を混合、撹拌しながらイソホロンジイソシアネート27.6部を1時間かけて滴下し、80℃ 、6時間反応させた。次に、冷却しながら、28%アンモニア水2.5部とイオン交換水526部を上記溶剤型ウレタン樹脂に徐々に添滴下して中和することにより水溶化し、さらにメチルエチルケトンを減圧留去した後、水を加えて固形分調整を行うことで、水性ポリウレタン樹脂溶液を得た(重量平均分子量約40,000)。
(スクリーンインキ用バインダー樹脂)
・ポリウレタン樹脂溶液:DIC株式会社製 パンデックスT-5102A-23A(固形分23%)
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂:日信化学工業株式会社製、ソルバインC 塩化ビニル/酢酸ビニル=87/13(質量比)の共重合樹脂
・アクリル樹脂溶液:三菱ケミカル株式会社製 ダイヤナールBR-77
・ロジン樹脂:ハリマ化成グループ株式会社製 ハリマックAS-5
・ポリエステル樹脂:東洋紡株式会社製 バイロン200 非晶性ポリエステル樹脂
・エポキシ樹脂:三菱ケミカル株式会社製 jER 1001
・環化ゴム樹脂:allnex社製 ALPEX CK514
・エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂:住友化学株式会社製 スミテートMB-11
・水性ポリウレタン樹脂溶液:Covestro Coating Resin社製 NeoRez R-960(固形分33%)
・水性アクリル樹脂溶液:BASFジャパン株式会社製 Joncryl 63D(固形分30%)
<インキ組成物の調製>
[実施例1](S1)
着色剤として焙煎後のコーヒー豆由来の抽出色素DE1 10部、液状媒体1 45部、ポリウレタン樹脂溶液30部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液15部をアイガーミル(アイガー社製)にて10分間分散し、油性グラビアインキ組成物S1を得た。
[実施例2~16](S2~S16)
実施例1の方法に従って、同様に油性グラビアインキ組成物S2~S15及び油性フレキソインキ組成物S16を得た。配合組成を表1に示す。
[比較例1~3](C1~C3)
実施例1の方法に従って、油性グラビアインキ組成物C1を得た。同様に、実施例1の方法に従って、インキ組成物C2、C3を得た。配合組成を表1に示す。
[実施例17](S17)
着色剤として焙煎後のコーヒー豆由来の抽出色素DE1 10部、液状媒体5 50部、水性アクリル樹脂溶液40部、をアイガーミルにて10分間分散し、水性グラビアインキ組成物S17を得た。
[実施例18~28](S18~S28)
実施例17の方法に従って、同様に水性グラビアインキ組成物S18~S27及び水性フレキソインキ組成物S28を得た。配合組成を表2に示す。
[比較例4~6](C4~C6)
実施例17の方法に従って、インキ組成物C4を得た。同様に、実施例17の方法に従って、インキ組成物C5,C6を得た。配合組成を表2に示す。
[実施例29](S29)
着色剤として焙煎後のコーヒー豆由来の抽出色素DE1 15部、液状媒体7 55部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液15部、アクリル樹脂溶液15部を、ミキサー回転式攪拌機を用いて均一に混合した後、3本ロール分散機を2パスして油性スクリーン印刷用インキ組成物S29を得た。
[実施例30~43、47、51](S30~S43、S47、S51)
実施例29の方法に従って、同様に油性スクリーン印刷用インキ組成物S30~S39、S47及び水性スクリーン印刷用インキ組成物S40~S43、S51を得た。配合組成を表3に示す。
[実施例44](S44)
着色剤として焙煎後のコーヒー豆由来の抽出色素DE4 15部、液状媒体7 55部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂溶液15部、アクリル樹脂溶液15部を、ミキサー回転式攪拌機を用いて均一に混合し油性スクリーン印刷用インキ組成物S44を得た。
[実施例45、46、48~50](S45、S46、S48~S50)
実施例44の方法に従って、同様に油性又は水性スクリーン印刷用インキ組成物S45、S46、S48~S50を得た。配合組成を表3に示す。
[比較例7~12](C7~C12)
実施例44の方法に従って、油性又は水性スクリーン印刷用インキ組成物C7~12を得た。配合組成を表3に示す。
<油性グラビアインキの調製>
得られた油性グラビアインキ組成物S1~S15、C1~C3のそれぞれ100部に対し、イソプロピルアルコール:酢酸n-プロピル混合溶剤(質量比25:75)を40部混合して希釈グラビアインキとした。
<油性フレキソインキの調製>
得られた油性フレキソインキ組成物S16の100部に対し、n-プロピルアルコール:酢酸n-プロピル混合溶剤(質量比80:20)を30部混合して希釈フレキソインキとした。
<水性グラビアインキの調製>
得られた水性グラビアインキ組成物S17~S27、C4~C6のそれぞれ100部に対し、水:IPA混合液(質量比95:5)を50部混合して希釈グラビアインキとした。
<水性フレキソインキの調製>
得られた水性フレキソインキ組成物S28の100部に対し、水:IPA混合液(質量比50:50)を10部混合して希釈フレキソインキとした。
<インキの粒子径(D99)>
調製した各インキの粒子径(D99)をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000IIシリーズ)により測定した。測定結果を表1~2に示す。
<耐水性評価>
各インキの印刷面を水で濡らした綿棒で擦り、綿棒への色移りの程度を下記の色彩勾配に基づき以下のA~Cで評価を行った。
色彩勾配(色コード(16進法)) (淡色)#ffffff、#fcf7f0、#f8efe2、#f4e7d3、#f0dfc5、#ecd8b7、#e7d0a9、#bcaa8b、#94856d、#6d6251、#484237、#26231f、#000000(濃色)
A:色移りなし
B:#ffffffより濃色 ~ #f8efe2と同等もしくはより淡色
C:#f8efe2より濃色
A,Bは実用上問題がない範囲である。
<グラビアインキ・フレキソインキ濃度評価>
(1)油性グラビアインキの濃度評価:インキ組成物S1~S15、C1~C3について、グラビア希釈インキを175L/inch、135度 コンプレストのグラビアシリンダー(東洋FPP株式会社製)で市販の片面コロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PET、厚さ12μm)の処理面上に印刷し印刷物を得た。
(2)水性グラビアインキの濃度評価:インキ組成物S17~S27、C4~C6について、グラビア希釈インキを版深15μのグラビアシリンダー(東洋FPP株式会社製)で漂白したクラフトパルプを使用した、片面に艶面を有する晒紙(大王製紙株式会社製 ナゴヤ晒竜王N 坪量60g/m)の艶を有しない面に印刷し印刷物を得た。
(3)油性フレキソインキの濃度評価:インキ組成物S16について、フレキソ希釈インキをフレキソ印刷機(アニロックス条件:900LPI,3cc/m)にて市販の片面コロナ処理PET(厚さ12μm)の処理面上に印刷し印刷物を得た。
(4)水性フレキソインキの濃度評価:インキ組成物S28について、フレキソ希釈インキをフレキソ印刷機(アニロックス条件:900LPI,3cc/m)で漂白したクラフトパルプを使用した、片面に艶面を有する晒紙(大王製紙株式会社製 ナゴヤ晒竜王N 坪量60g/m)の艶を有しない面に印刷し印刷物を得た。
[評点基準]
印刷物のベタ部の濃度をエックスライト社製X-Rite分光濃度計を用いて白色台紙上で反射濃度測定しL値に基づき以下のA~Cで評価を行った。
A:L値が80以下
B:L値が80以上88未満
C:L値が88以上
A,Bは実用上問題がない範囲である。
<スジ評価>
(1)グラビアインキのスジ評価:得られたグラビア希釈インキを周長600mmのグラビアシリンダーにセラミックドクターをドクター圧2.0kg/cmでセットし100m/分の印刷速度で空転させて10分後の版面の状態に基づき以下のA~Cで評価を行った。
A:スジの発生が認められない。
B:1本以上3本以下のスジ発生が認められる。
C:4本以上のスジ発生が認められる。
A,Bは実用上問題がない範囲である。
(2)フレキソインキのスジ評価:得られたフレキソ希釈インキをフレキソ印刷機(アニロックス条件:900LPI,3cc/m、版条件:ベタ版)にセットし70m/分の印刷速度で空転させて10分後の版面の状態に基づき以下のA~Cで評価を行った。
評点基準
A:スジの発生が認められない。
B:1本以上3本以下のスジ発生が認められる。
C:4本以上のスジ発生が認められる。
A,Bは実用上問題がない範囲である。
<インキのバイオマス度>
インキのバイオマス度とはインキの固形分の化合物中に含まれる植物由来その他のバイオマス由来の割合をいう。バイオマス度= 100 × 該当化合物のバイオマス由来成分質量/ 該当化合物の総質量で表される。ただし、該当化合物が、バイオマス由来原料と、バイオマス由来でない原料との反応物である場合、反応前の原料に換算して、計算する。例えば、二塩基酸とジオールとの反応物であるポリエステル樹脂(ポリエステルポリオール)の場合、バイオマス度= 100 × ( バイオマス二塩基酸+ バイオマス由来ジオール) / (すべての二塩基酸+すべてのジオール)「すべての二塩基酸+すべてのジオール」とは、バイオマス由来およびバイオマス由来でない二塩基酸、およびバイオマス由来およびバイオマス由来でないジオールの合計をいう。
Figure 0007314472000001
Figure 0007314472000002
表1より、実施例1~16においては、いずれの評価結果も良好であったことが分かる。一方、インキの粒子径(D99)が過大な比較例1はスジ汚れが生じ、グラビアインキ等の適性に劣っていた。また、レーキ化していない色素を着色剤として用いた比較例2は耐水性に劣り、かつ、高濃度で印刷ができなかった。さらに、インキの粒子径(D99)が過大な比較例3はグラビアインキ等の適性に劣り、かつ、スジ汚れが生じグラビアインキ等の適性に劣っていた。また、実施例1~16のいずれも、コーヒー豆由来の着色剤を使用していることからバイオマス度が高い。特に、バインダー樹脂として、ポリ乳酸樹脂を使用した実施例8及び9が、バイオマス度が最も高い。
表2より、実施例17~28においては、いずれの評価結果も良好であったことが分かる。
一方、インキの粒子径(D99)が過大な比較例4はスジ汚れが生じ、グラビアインキ等の適性に劣っていた。また、レーキ化していない色素を着色剤として用いた比較例5は耐水性に劣り、かつ、高濃度で印刷ができなかった。さらに、インキの粒子径(D99)が過大な比較例6は耐水性に劣り、かつ、スジ汚れが生じグラビアインキ等の適性に劣っていた。
<インキの粒子径(D99)>
調製した各インキの粒子径(D99)をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000IIシリーズ)により測定した。測定結果を表3~4に示す。
<スクリーンインキ濃度評価>
(1)油性スクリーン印刷用インキの濃度評価:実施例29~39、44~47について、スクリーン印刷用インキをスクリーン刷版(ポリエステルメッシュ T-100(線径0.054mm、線数100mesh/Inch、乳剤厚20μm、バイアス各22.5°)を用いて市販の片面コロナ処理PET(厚さ125μm)の処理面上にスクリーン印刷してスクリーン印刷物を得た。
(2)水性スクリーン印刷用インキの濃度評価: 実施例40~43、48~51について、スクリーン印刷用インキをスクリーン刷版(ポリエステルメッシュ T-100(線径0.054mm、線数100mesh/Inch、乳剤厚20μm、バイアス各22.5°)を用いて厚紙(ボール紙、ミルクカートン紙、ケント紙、段ボール紙)のいずれかの基材にスクリーン印刷してスクリーン印刷物を得た。
[評点基準]
印刷物のベタ部の濃度をエックスライト社製X-Rite分光濃度計を用いて反射濃度測定しL値に基づき以下のA~Cで評価を行った。
A:L値が50未満
B:L値が50以上60未満
C:L値が60以上
A,Bは実用上問題がない範囲である
<メッシュ詰まり・メッシュ上残渣>
スクリーン印刷用インキをスクリーン刷版(ポリエステルメッシュ テトロンT-100(線径0.054mm、線数100mesh/Inch、乳剤厚20μm、バイアス各22.5°))を用いて市販の片面コロナ処理PET(厚さ125μm)の処理面上にスクリーン印刷し、初期5ショットの平均の転移量を基準とし、20ショット後の転移量の変化に基づき以下のA~Cでメッシュ詰まりを評価した。
[転移率変化]=100%-[20ショット後の転移量]/[初期5ショットの平均の転移量]
A:転移率変化が0%以上5%未満
B:転移率変化が5%以上20%未満
C:転移率変化が20%以上もしくはメッシュを通過できない残渣が視認できる
A,Bは実用上問題がない範囲である。
Figure 0007314472000003
Figure 0007314472000004
表3及び表4より、実施例29~51においては、いずれの評価結果も良好であったことが分かる。
一方、インキの粒子径(D99)が過大な比較例7及び10はメッシュ詰まりが生じ、スクリーンインキの適性に劣っていた。また、レーキ化していない色素を着色剤として用いた比較例8及び11は耐水性に劣り、かつ、高濃度で印刷ができなかった。さらに、コーヒー豆粉末を使用し、インキの粒子径(D99)が過大な比較例9及び12は耐水性に劣り、かつ、メッシュ詰まりが生じスクリーンインキの適性に劣っていた。

Claims (7)

  1. 着色剤及び液状媒体を含有し、
    前記着色剤は、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素及び焙煎後のコーヒー豆の粉末のうちの少なくとも一方を含み、
    積算粒子径分布の99%に対応した粒子径(D99)が0.5~300μmである、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
  2. 前記抽出色素又は前記焙煎後のコーヒー豆の粉末の乾燥状態における積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmである、請求項1に記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
  3. 前記液状媒体が、芳香族溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、アルコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、グリコール溶剤、炭化水素溶剤及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
  4. さらに、バインダー樹脂を含む、請求項1又は2に記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
  5. 前記バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、環化ゴム樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4に記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキ。
  6. 請求項1又は2に記載のグラビア、フレキソ又はスクリーンインキからなる印刷層を有する、印刷物。
  7. 着色剤及び液状媒体を含有し、前記着色剤は、焙煎後のコーヒー豆由来のレーキ化された抽出色素及び焙煎後のコーヒー豆の粉末のうちの少なくとも一方を含むグラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法であって、
    焙煎されたコーヒー豆を準備することと、焙煎されたコーヒー豆から色素を抽出することと、前記色素を、積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmとなるようにレーキ化することとを含むことにより前記抽出色素を製造する工程、及び/又は、
    焙煎されたコーヒー豆を準備することと、焙煎されたコーヒー豆を、積算粒子径分布の90%に対応した粒子径(D90)が0.5~300μmとなるように粉砕することとを含むことにより前記コーヒー豆の粉末を製造する工程、
    を含む、グラビア、フレキソ又はスクリーンインキの製造方法。
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