JP7312719B2 - 構造体とその施工方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態の一つは、建築物に例示される構造体とその施工方法に関する。
近年、事務所ビルや病院、商業施設などの広い室内空間が要求される構造体(建築物)において、一対の柱を連結する梁として鉄骨を用い、鉄骨の両端部を鉄筋コンクリートで覆う梁(ハイブリッド梁)が採用されている。ハイブリッド梁を用いることで、梁の全てを鉄筋コンクリートで施工する場合と比較し、柱の数を大幅に減らすことができ、その結果、大きな空間を有する構造体を建造することができる(特許文献1参照)。
特開2013-170386号公報
本発明の実施形態の一つは、より低コストで建造可能な、ハイブリッド梁を備える構造体、およびその施工方法を提供することを課題の一つとする。
本発明の実施形態の一つは、構造体である。この構造体は、一対の柱、一対の柱に連結される梁、および梁上に位置する床スラブを備える。梁は、鉄骨、第1のコンクリート、および第2のコンクリートを有する。鉄骨は互いに対向する第1の端部と第2の端部を有する。第1のコンクリートは、第1の端部の一部を埋め込む。第2のコンクリートは、第2の端部の一部を埋め込み、第1のコンクリートから離隔する。床スラブは第3のコンクリートを含み、第3のコンクリートは、第1の端部と前記第2の端部において、鉄骨の上面と接する。第3のコンクリートの強度は、第1のコンクリートと第2のコンクリートの強度よりも低い。
本発明の実施形態の一つは、構造体の施工方法である。この施工方法は、一対の柱を互いに対向する第1の端部と第2の端部を有する鉄骨で連結すること、第1の端部の一部と第2の端部の一部をそれぞれ第1のコンクリートと第2のコンクリートで覆うこと、第1のコンクリート、第2のコンクリート、および鉄骨上に第3のコンクリートを打設することで床スラブを形成することを含む。第1のコンクリートと第2のコンクリートは、それぞれ鉄骨の上面が露出されるように打設される。第3のコンクリートの強度は、第1のコンクリートと第2のコンクリートの強度よりも低い。
本発明の実施形態により、広い空間を内部に有する構造体をより低コストで建造することができる。
本発明の実施形態の一つである構造体の模式的斜視図。 本発明の実施形態の一つである構造体の一部の外観と内部構造を示す模式的側面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の一部の外観と内部構造を示す模式的上面図と断面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の梁の模式的断面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の梁の模式的断面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の梁の模式的断面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的上面図と側面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的上面図と側面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の床スラブの模式的上面図と側面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的上面図と側面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的断面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的上面図と側面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的断面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的上面図と側面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的断面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的上面図と側面図。 本発明の実施形態の一つである構造体の施工方法を示す模式的断面図。
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。符号が付された要素の一部を表記する際には、符号に小文字のアルファベットが添えられる。同一または類似の構造を有する複数の要素をそれぞれ区別して表記する際には、符号の後にハイフンと自然数を付す。同一または類似の構造を有する複数の要素を纏めて表記する際には、符号のみを用いる。
以下、「ある構造体が他の構造体から露出するという」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。
以下、コンクリートとは、原料の一つであるセメントが水と反応して生成する水和物が硬化し、流動性を示さないものを指す。一方、セメントと水を含む混合物が完全に硬化せずに流動性を有する状態はレディーミクストコンクリート(生コンクリートとも呼ばれる)と記す。
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態の一つである構造体100の構造について説明する。以下に示す図面においては、便宜上、水平な地表面に平行な面をxy平面とし、xy平面に垂直な鉛直方向がz軸であるとして説明を行う。
1.全体構造
構造体100の模式的斜視図を図1に示す。図1に示すように、構造体100は、鉛直方向(z方向)に延伸する複数の柱110、一対の柱110に連結され、水平方向(x方向またはy方向)に延伸する複数の梁120、および梁120の上に設けられる床スラブ150を基本的な構成として備える。
1-1.柱
柱110の数は4以上であれば特に制約はなく、構造体100の大きさや形状に応じ、その数や配置を適宜決定すればよい。柱110は図示されない杭や基礎梁と接続される。柱110の形状(xy平面における断面形状)も任意であり、四角形、円形、楕円形などから適宜選択すればよい。柱110の長さも構造体100の大きさ、各階層の高さに応じて適宜設計される。
1-2.梁
各梁120は隣接する一対の柱110と接続される。構造体100に設けられる梁120の少なくとも一つは、ハイブリッド梁である。すなわち、構造体100に設けられる梁120の少なくとも一つは、一対の柱110に連結する鉄骨を有し、その両端部(第1の端部と第2の端部)において鉄骨は鉄筋コンクリートによって覆われる。第1の端部と第2の端部を覆う鉄筋コンクリートに含まれるコンクリートを、以下、それぞれ第1のコンクリートと第2のコンクリートと呼ぶ。ハイブリッド梁の詳細については後述する。
構造体100に設けられる梁120の全てがハイブリッド梁でもよく、あるいは梁120の一部がハイブリッド梁であり、他の梁120は、全体が鉄筋コンクリートで形成された梁(鉄筋コンクリート梁、以下、RC梁と記す)、または鉄筋コンクリートを備えない鉄骨で形成された梁(鉄骨梁)でもよい。図1に示した例では、長い間隔(スパン)で設けられる一対の柱110(例えば第1の柱110-1と第2の柱110-2の対、第3の柱110-3と第4の柱110-4の対、第5の柱110-5と第6の柱110-6の対)に連結される梁120としてハイブリッド梁が用いられ、短い間隔で設けられる一対の柱110(例えば第1の柱110-1と第3の柱110-3の対、第2の柱110-2と第4の柱110-4の対、第3の柱110-3と第5の柱110-5の対、第4の柱110-4と第6の柱110-6の対)にはRC梁が用いられている。ハイブリッド梁とRC梁の配置は任意に決定することができるが、図1に示した例のように、長い間隔で設けられる一対の柱110の間にハイブリッド梁を用いることが好ましい。これは、RC梁と比較するとハイブリッド梁は軽量であるため、スパンの大きい梁(ここでは第1の梁120-1、第3の梁120-3など)にハイブリッド梁を用いることで広い室内空間を確保しつつ、構造体100に十分な強度を付与することができるためである。
1-3.床スラブ
床スラブ150は各層の床面を構成する鉄筋コンクリートであり、梁120の上に設けられる。床スラブ150は各階層に設けられる。なお、図1では、見やすさを考慮し、床スラブ150は一部のみが示されている。詳細は後述するが、床スラブ150には、床面を形成するデッキプレートや、デッキプレート上に設けられる鉄筋トラスおよびスラブ筋を有し、デッキプレート上に鉄筋トラスおよびスラブ筋を埋め込むコンクリート(第3のコンクリート)によって形成される。なお、床スラブ150は設けられない階層があってもよい。
第3のコンクリートの強度は、第1のコンクリートと第2のコンクリートの強度よりも低い。具体的には、第3のコンクリートでは21N/mm2以上33N/mm2以下、または24N/mm2以上27N/mm2以下であるのに対し、第1のコンクリートと第2のコンクリートでは27N/mm2以上150N/mm2以下、36N/mm2以上120N/mm2以下、または36N/mm2以上48N/mm2以下である。第1のコンクリートと第2のコンクリートの強度は互いに実質的に同一でもよく、異なってもよい。また、柱110やRC梁で使用されるコンクリートの強度も、第1のコンクリートと第2のコンクリートの強度と実質的に同一でよい。
2.内部構造
図2(A)と図2(B)にハイブリッド梁の一例として第1の梁120-1、および第1の梁120-1が連結される一対の柱(第1の柱110-1、第2の柱110-2)の模式的側面図を、図3(A)と図3(B)に対応する模式的上面図を示す。図2(B)では、内部構造を示すため、第1の柱110-1や第2の柱110-2、第1の梁120-1のコンクリート、および床スラブ150は点線で示されている。また、図3(A)と図3(B)では、床スラブ150は示されていない。
各柱110には、鉛直方向に延伸する少なくとも一つの柱主筋112、および柱主筋112を取り囲むように設けられる複数の帯筋114を含む鉄筋ユニットが設けられ、この鉄筋ユニットを取り囲むようにコンクリート116が打設される(図2(B)、図3(B))。柱主筋112の数や帯筋114の配置密度も、柱110の長さや太さ、要求される強度によって適宜決定される。
上述したように、ハイブリッド梁構造を有する第1の梁120-1は、一対の柱110(第1の柱110-1、第2の柱110-2)に連結され、水平方向に延伸する鉄骨122を備える(図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B))。鉄骨122は、柱主筋112や帯筋114によって構築される柱110の鉄筋ユニット内部に侵入しないように設けられる。鉄骨122は鉄を含み、その断面形状はH形、I形、T形、L形などでもよい。典型的には、断面がH形のH鋼を用いることができる。H鋼を用いる場合には、二つのフランジが水平面に延伸するように鉄骨122が配置される。鉄骨122は、互いに対向する二つの(第1の端部120a、第2の端部120bを有し、第1の端部120a、第2の端部120bがそれぞれ一対の柱110に連結される。第1の端部120aと第2の端部120bには鉄筋コンクリートが配置されるため、これらはRC区間とも呼ばれる。また、第1の端部120aと第2の端部120bの間には鉄筋コンクリートが設けられないため、この部分(S部)120cは鉄骨区間とも呼ばれる。
第1の端部120aと第2の端部120bにおいては、鉄骨122の長手方向に平行な方向に延伸する少なくとも一つの梁主筋126が設けられ、この梁主筋126は柱110の鉄筋ユニットに一部が挿入される(図2(B))、図3(B))。少なくとも一つの梁主筋126は、複数の梁主筋126を含んでもよい。各梁主筋126の梁中央側には、梁主筋126よりも断面積の大きい定着プレート126aを形成してもよい(図2(B))。第1の端部120aと第2の端部120bにはさらに、鉄骨122と交差し、鉄骨122と梁主筋126を取り囲むように配置される少なくとも一つの横補強筋124が設けられる(図2(B))、図3(B))。少なくとも一つの横補強筋124は複数の横補強筋124を含んでもよい。横補強筋124は、複数の梁主筋126の全てを囲むように環状に配置してもよく、あるいは図2(C)に示すように、互いに形状の異なる一対の横補強筋124-1と124-2を組み合わせて一つの環状の横補強筋124を形成してもよい。後者の場合、例えば一方の横補強筋124-1は鉄骨122よりも上の梁主筋126の一部の上には延伸せず、他方の横補強筋124-1がこの一部の梁主筋126の上で交差するように配置すればよい。横補強筋124により、鉄骨122が梁主筋126とともに柱110の鉄筋ユニットと強固に固定される。横補強筋124の配置も任意であるが、例えば柱110側とS部120c側において高密度に、これらの間が低密度になるように配置してもよい。
第1の端部120aと第2の端部120bにおいては、鉄骨122の一部、梁主筋126の一部、および横補強筋124の一部がそれぞれ第1のコンクリート128aと第2のコンクリート128bに埋め込まれる(図2(B))、図3(B))。これらのコンクリート128は柱110を構成するコンクリート116と接してもよい。あるいは、これらのコンクリート116、128は一体化されていてもよい。第1の端部120aと第2の端部120bに設けられる第1のコンクリート128aと第2のコンクリート128bは、互いに離隔する。換言すると、鉄骨122のS部120cは、コンクリート128から露出する。
ここで、第1の端部120aと第2の端部120bにおいては、図3(B)の破線A-A´に沿った模式的断面図(図4(A))に示すように、鉄骨122の一部、梁主筋126の一部、および横補強筋124の一部は、コンクリート128から露出する。例えば、鉄骨122の上面は、コンクリート128から露出する。鉄骨122がH鋼の場合には、一方のフランジ(図4(A)において点線楕円で囲まれた部分)の上面がコンクリート128から露出し、コンクリート128の最上面とフランジの上面が同一平面に位置してもよい。横補強筋124は、一部がコンクリート128に埋め込まれ、他の一部がコンクリート128から露出する。同様に、梁主筋126も、一部がコンクリート128に埋め込まれ、他の一部がコンクリート128から露出する。一方、コンクリート128から露出した部分は、床スラブ150に含まれる第3のコンクリート152によって埋め込まれる。例えば、横補強筋124や梁主筋126のうちコンクリート128から露出した部分は、第3のコンクリート152によって埋め込まれる。鉄骨122の上面は、第3のコンクリート152と接する。また、第1の端部120aや第2の端部120bでは、第3のコンクリート152は、コンクリート128と接する。
コンクリート128は、図4(A)に示すように、その上面が鉄骨122の上面と同一平面上に位置するように設けてもよく、あるいは、図4(B)に示すように、鉄骨122の上面の全てがコンクリート128から露出するようにコンクリート128を設けてもよい。すなわち、コンクリート128の上面が鉄骨122の上面よりも低く位置し、一対のフランジを連結するウェブの一部がコンクリート128から露出するようにコンクリート128を設けてもよい。
あるいは、図5(A)から図5(C)に示すように、鉄骨122の上側のフランジの上面は、コンクリート128と重ならない領域における床スラブ150の底面よりも低くなるよう、鉄骨122を配置してもよい。図5(A)に示す例では、鉄骨122の全てがコンクリート128内に埋設され、上側のフランジがコンクリート128によって覆われる。図5(B)に示す例では、鉄骨122の上側のフランジの一部をコンクリート128が覆い、他の一部はコンクリート128から露出し、床スラブを形成する第3のコンクリート152と接する。図5(C)に示す例では、ウェブの一部がコンクリート128に埋め込まれ、他の一部が床スラブを形成する第3のコンクリート152と接する。
図6(A)から図6(C)に示すように、横補強筋124や梁主筋126のすべてが、コンクリート128と重ならない領域における床スラブ150の底面よりも下に位置していてもよい。図6(A)に示すでは、鉄骨122の上側のフランジの一部がコンクリート128から露出し、図6(B)に示す例では、ウェブの一部がコンクリート128から露出するようにコンクリート128が設けられる。図6(C)に示す例では、コンクリート128の上面と鉄骨122の上側のフランジの上面が実質的に同一平面になるよう、コンクリート128が設けられる。
上述したように、第3のコンクリート152の強度は第1のコンクリート128aや第2のコンクリート128bの強度よりも低い。しかしながら、鉄骨122の第1の端部120aと第2の端部120bでは、鉄骨122やそれを取り巻く横補強筋124や梁主筋126は、第1のコンクリート128aと第3のコンクリート152、または第2のコンクリート128bと第3のコンクリート152によって覆われる。したがって、ハイブリッド梁として機能する第1の梁120-1は十分な強度を確保することができる。このため、床スラブ150に低強度の第3のコンクリート152を用いても十分な強度を確保した構造体100を提供することができ、より低コストで広い室内空間を備える構造体100を建築することができる。
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた構造体100の施工方法の一例を図7(A)から図17(B)を用いて説明する。図7(A)、図8(A)、図10(A)、図12(A)、図14(A)、および図16(A)は構造体100の施工方法を示す模式的平面図であり、図7(B)、図8(B)、図10(B)、図12(B)、図14(B)、および図16(B)はこれらに対応する模式的側面図である。これらの図では、見やすさを考慮し、一部の構成(鉄筋ユニットの一部など)は図示されない。なお、本実施形態では、四本の柱110とこれらを連結する四本のハイブリッド梁である梁120によって形成される構造体100について説明するが、柱110の数や梁120の数は制約されない。第1実施形態で述べた構成と同様または類似する構成については説明を割愛することがある。
1.柱と梁の施工
図7(A)と図7(B)は、柱110と鉄骨122、および梁主筋126までが設けられた状態を示す。これらは公知の方法で施工できるため、説明は割愛する。なお、柱110は、あらかじめ柱主筋112や帯筋114などで構成される鉄筋ユニットとそれを取り巻くコンクリートを作製した後に設置してもよく、あるいは鉄筋ユニットを施工場所に組み立て、その後コンクリートを打設することで構築してもよい。
任意の構成として、互いに平行に延伸する一対の鉄骨122を連結する一つ、または複数の小梁130を設けてもよい。小梁130にも断面形状がH形、I形、T型、L型などの鉄骨を用いることができる。小梁130の強度は、鉄骨122の強度よりも小さくてもよい。すなわち、小梁130の断面積は鉄骨122の断面積よりも小さくてもよい。小梁130を設けることで、後述するデッキプレート154の撓みを防止することができる。
2.床スラブと型枠の設置
次に、床スラブ150を構成する。床スラブ150も鉄筋コンクリートで構成することができ、金属製または木製の板材の上に構築される鉄筋ユニット、および鉄筋ユニットを埋め込む第3のコンクリートを含む。一例として、板材として機能するデッキプレート154、およびデッキプレート154上に設けられる鉄筋トラス156を鉄骨122上に配置する例を図8(A)から図9(C)に示す。図9(A)に示すように、デッキプレート154は鉄やステンレスで形成される平板であり、溶接、あるいはボルトによって鉄骨122や小梁130に固定される。デッキプレート154は凹凸形状を有してもよい。デッキプレート154の長さに制約はなく、互いに平行に延伸する一対の鉄骨122の間隔以上でもよく、それ以下でもよい。後者の場合、図8(A)、図8(B)に示すように、一つのデッキプレート154は、一つの鉄骨122と一つの小梁130、または隣接する小梁130上に配置、固定される。
鉄筋トラス156はデッキプレート154上に設けられる鉄筋ユニットであり、あらかじめ鉄筋トラス156が形成されたデッキプレート154を鉄骨122上に配置してもよく、鉄骨122上に配置されたデッキプレート154上に鉄筋トラス156を配置してもよい。鉄筋トラス156の構成も任意に選択することができる。例えば図9(A)から図9(C)に示すように上主筋158、下主筋160、ラチス材162、吊材164などの鉄筋を主な構成として備えることができる。
上主筋158と下主筋160は、一つの方向(例えばX方向)に延伸し、上主筋158が下主筋160上に配置される。上主筋158と下主筋160は、デッキプレート154の長辺方向と平行になるように配置してもよく、短辺方向と平行になるように配置してもよい。ラチス材162は下主筋160と上主筋158の間に配置され、溶接、またはボルトによって下主筋160と上主筋158に固定される。ラチス材162は下主筋160と上主筋158の間で波形状を有し、下主筋160と上主筋158が延伸する方向に延伸する。これにより、下主筋160と上主筋158が強固に固定され、X方向、および上下方向(Z方向)に掛かる張力に対して高い耐性が付与される。一方、吊材164は、下主筋160と上主筋158が延伸する方向と交差する方向(例えばY方向)に延伸する。吊材164は、溶接、あるいはボルトによってデッキプレート154に固定されるとともに、上主筋158にも固定される。吊材164は、デッキプレート154を底面、上主筋158を頂点とする三角形を囲む形状を有するように折り曲げられ、デッキプレート154と上主筋158に固定される。
次に、図10(A)、図10(B)に示すように、デッキプレート154を柱110近辺を除く領域に配置した後、横補強筋124を配筋する。デッキプレート154を柱110近辺に配置しないことで、横補強筋124を配筋するための空間を確保すことができるので、作業効率の向上を図ることができる。
なお、図9(A)から図9(C)に例示されたデッキプレート154や鉄筋トラス156を用いず、木製の板材上に複数の鉄筋を網目状に配置してもよい。
その後、各鉄骨122の両端部に打設されるコンクリート128のための型枠132を設置する。図10(A)の鎖線C-C´に沿った断面の模式図を図11に示す。図11に示すように、型枠132は、鉄骨122や横補強筋124、梁主筋126の一部を囲むように設けられる。また、図11中の点線で示すように、型枠132は、その上面が鉄骨122の上側のフランジの上面とほぼ同一平面となるように設けられる。ただし、コンクリート128がフランジの上面の一部を覆う場合には(図4(B)、図5(B))、型枠132は、その上面が上側のフランジの上面よりも上に位置するように設けられる。一方、上側のフランジの全体がコンクリート128から露出する場合には(図4(B)、図5(C))、型枠132は、その上面がそれぞれ上側のフランジの底面よりも下に位置するように設けられる。
この後、柱110近辺にもデッキプレート154を配置する(図12(A)、図12(B))。図12(A)の鎖線D-D´に沿った模式的断面図を図13(A)、図13(B)に示す。これらの図では、一つの鉄骨122を挟むように設けられる二つのデッキプレート154が示されている。図13(A)、図13(B)に示すように、柱110近辺に設けられるデッキプレート154は、型枠132が形成する空間がデッキプレート154によって閉ざされないように配置される。したがって、デッキプレート154は、型枠132の上面の一部と接する(図13(A))、あるいはデッキプレート154の一部が型枠132の内側底面に重なるように配置される(図13(B))。これにより、コンクリート128を型枠132内部に打設することができ、かつ、鉄骨122や横補強筋124、梁主筋126の一部をコンクリート128によって埋め込むことができる。
なお、図12(A)の鎖線E-E´に沿った模式的断面図(図13(C))に示すように、S部120cにおいては、鉄骨122のフランジは隣接するデッキプレート154から一部が露出するようにデッキプレート154を配置する。これにより、第3のコンクリート152が鉄骨122と接することができる。
3.RC区間におけるコンクリートの打設
次に、型枠132内にレディーミクストコンクリートを流し込み、硬化させる。つまり、コンクリート128を打設する(図14(A)、図14(B)。レディーミクストコンクリートは、その上面が型枠132の上面とほぼ同一平面となるように流し込み、硬化させる。その結果、図14(A)の鎖線F-F´に沿った模式的断面図(図15(A))に示すように、S部に打設されるコンクリート128の上面も、型枠132の上面とほぼ同一平面となる。レディーミクストコンクリートの硬化開始時に、コンクリート128の上面を刷毛引きなどによって処理し、凹凸を形成してもよい(図15(B))。凹凸の深さ(すなわち、凸部の高さ)は、0.5mm以上10mm以下、3mm以上7mm以下とすればよい。凹凸をコンクリート128の上面に形成することで、コンクリート128上に設けられる床スラブ150に含まれる第3のコンクリート152との摩擦係数を増大させることができ、その結果、コンクリート128と第3のコンクリート152をより強固に互いに固定することができる。なお、ウォータージェットなどによりレディーミクストコンクリートの硬化後にコンクリート128の上面に凹凸を形成してもよい。
4.第3のコンクリートの打設
引き続き、鉄筋トラス156を埋め込むようにレディーミクストコンクリートをデッキプレート154上に流し込み、硬化させる。これにより、床スラブ150の第3のコンクリート152が打設される(図16(A)、図16(B))。なお、レディーミクストコンクリートを打設する前に、梁120を介して隣接するデッキプレート154に亘る複数のスラブ筋166を配置してもよい(図17(A)、図17(B)参照)。複数のスラブ筋166は鉄筋トラス156上に設けられ、上主筋158などと交差する。スラブ筋166はコンクリート128を打設する前に配置してもよい。図16(A)の鎖線G-G´に沿った模式的断面図(図17(A))に示すように、RC区間では、コンクリート128が第3のコンクリート152と接する。また、S部では、図13(C)に対応する模式的断面図(図17(B))に示すように、鉄骨122のフランジが第3のコンクリート152と接する。その後、型枠132を撤去する。
上述したように、第3のコンクリート152の強度はコンクリート128(第1のコンクリート128a、第2のコンクリート128b)の強度よりも低い。したがって、例えば第3のコンクリート152を形成するレディーミクストコンクリート中の水の量を、第1のコンクリート128a、第2のコンクリート128bのそれよりも多くすればよい。
以上の施工方法を適宜適用することにより、第1実施形態で述べた構造体100を建築することができる。構造体100では、床スラブ150を構成する第3のコンクリート152は、ハイブリッド梁として機能する梁120の両端部を覆うコンクリート(第1のコンクリート128a、第2のコンクリート128b)よりも強度が低い。このため、より低コストで床スラブ150を構築することができるため、構造体100の建築コストの削減が可能である。
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
120:梁、120-1:第1の梁、120-3:第3の梁、120a:第1の端部、120b:第2の端部、120c:S部、122:鉄骨、124:横補強筋、126:梁主筋、126a:定着プレート、128:コンクリート、128a:第1のコンクリート、128b:第2のコンクリート、130:小梁、132:型枠、150:床スラブ、152:第3のコンクリート、154:デッキプレート、156:鉄筋トラス、158:上主筋、160:下主筋、162:ラチス材、164:吊材、166:スラブ筋

Claims (16)

  1. 一対の柱、
    前記一対の柱に連結される梁、および
    前記梁上に位置する床スラブを備え、
    前記梁は、
    互いに対向する第1の端部と第2の端部を有する鉄骨、
    前記第1の端部の一部を埋め込む第1のコンクリート、および
    前記第2の端部の一部を埋め込み、前記第1のコンクリートから離隔する第2のコンクリートを有し、
    前記床スラブは第3のコンクリートを含み、
    前記第1のコンクリートと前記第2のコンクリートは、最上面が前記鉄骨の上面よりも上に位置し、かつ、前記鉄骨の前記上面の一部を露出するように構成され、
    前記第3のコンクリートの強度は、前記第1のコンクリートと前記第2のコンクリートの強度よりも低い、構造体。
  2. 前記梁は、
    前記第1の端部を取り囲み、前記第1のコンクリートに部分的に埋め込まれる少なくとも一つの第1の横補強筋、および
    前記第2の端部を取り囲み、前記第2のコンクリートに部分的に埋め込まれる少なくとも一つの第2の横補強筋をさらに備え、
    前記少なくとも一つの第1の横補強筋の一部、および前記少なくとも一つの第2の横補強筋の一部は、それぞれ前記第1のコンクリートと前記第2のコンクリートから露出する、請求項1に記載の構造体。
  3. 前記少なくとも一つの第1の横補強筋の前記一部、および前記少なくとも一つの第2の横補強筋の前記一部は、前記第3のコンクリートに埋め込まれる、請求項に記載の構造体。
  4. 前記梁は、前記鉄骨の長手方向に延伸する少なくとも一つの第1の梁主筋と少なくとも一つの第2の梁主筋をさらに備え、
    前記少なくとも一つの第1の梁主筋は、前記鉄骨と前記少なくとも一つの第1の横補強筋の間に配置され、
    前記少なくとも一つの第2の梁主筋は、前記鉄骨と前記少なくとも一つの第2の横補強筋の間に配置される、請求項1に記載の構造体。
  5. 前記少なくとも一つの第1の梁主筋と前記少なくとも一つの第2の梁主筋は、それぞれ前記鉄骨の上に位置する複数の第1の梁主筋と複数の第2の梁主筋を含み、
    前記複数の第1の梁主筋は、いずれも前記第1のコンクリートの前記最上面よりも下に位置し、一部が前記第1のコンクリートから露出し、
    前記複数の第2の梁主筋は、いずれも前記第2のコンクリートの前記最上面よりも下に位置し、一部が前記第2のコンクリートから露出する、請求項4に記載の構造体。
  6. 前記鉄骨はH鋼である、請求項1に記載の構造体。
  7. 前記床スラブは板材を含み、
    前記板材は、前記第1のコンクリートと前記第2のコンクリートから離隔する、請求項1に記載の構造体。
  8. 前記床スラブは板材を含み、
    前記板材は、前記第1のコンクリートと前記第2のコンクリートに接する、請求項1に記載の構造体。
  9. 一対の柱を互いに対向する第1の端部と第2の端部を有する鉄骨で連結すること、
    前記第1の端部の一部と前記第2の端部の一部をそれぞれ第1のコンクリートと第2のコンクリートで覆うこと、および
    前記第1のコンクリート、前記第2のコンクリート、および前記鉄骨上に第3のコンクリートを打設することで床スラブを形成することを含み、
    前記第1のコンクリートと前記第2のコンクリートは、上面が前記鉄骨の上面よりも上に位置し、かつ、前記鉄骨の前記上面の一部を露出するように打設され、
    前記第3のコンクリートの強度は、前記第1のコンクリートと前記第2のコンクリートの強度よりも低い、構造体の施工方法。
  10. 前記第1の端部を少なくとも一つの第1の横補強筋で取り囲むこと、および
    前記第2の端部を少なくとも一つの第2の横補強筋で取り囲むことをさらに含み、
    前記第1のコンクリートは、前記少なくとも一つの第1の誇補強筋の一部を露出するように打設され、
    前記第2のコンクリートは、前記少なくとも一つの第2の誇補強筋の一部を露出するように打設される、請求項9に記載の施工方法。
  11. 前記少なくとも一つの第1の横補強筋の前記一部、および前記少なくとも一つの第2の横補強筋の前記一部は、前記第3のコンクリートに埋め込まれる、請求項10に記載の施工方法。
  12. 前記鉄骨の長手方向に延伸する少なくとも一つの第1の梁主筋と少なくとも一つの第2の梁主筋を配置することをさらに含み、
    前記少なくとも一つの第1の梁主筋は、前記鉄骨と前記少なくとも一つの第1の横補強筋の間に配置され、
    前記少なくとも一つの第2の梁主筋は、前記鉄骨と前記少なくとも一つの第2の横補強筋の間に配置される、請求項10に記載の施工方法。
  13. 前記少なくとも一つの第1の梁主筋と前記少なくとも一つの第2の梁主筋は、それぞれ前記鉄骨の上に位置する複数の第1の梁主筋と複数の第2の梁主筋を含み、
    前記複数の第1の梁主筋は、いずれも前記第1のコンクリートの前記最上面よりも下に位置し、一部が前記第1のコンクリートから露出するように配置され、
    前記複数の第2の梁主筋は、いずれも前記第2のコンクリートの前記最上面よりも下に位置し、一部が前記第2のコンクリートから露出するように配置される、請求項12に記載の施工方法。
  14. 前記第3のコンクリートを打設する前に、前記第1のコンクリートの上面と前記第2のコンクリートの上面に凹凸を形成することをさらに含む、請求項9に記載の施工方法。
  15. 前記鉄骨はH鋼である、請求項9に記載の施工方法。
  16. 前記床スラブの形成は、前記第3のコンクリートを打設する前に前記鉄骨上に板材を配置することをさらに含み、
    前記板材は、前記第1のコンクリートと前記第2のコンクリートから離隔するように配置される、請求項9に記載の施工方法。
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