JP7311847B2 - エンジンの燃料システムの故障検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンの燃料システムの故障検出装置に係り、詳しくは異なる複数の噴射形態を切換可能なエンジンを対象とした燃料システムの故障検出装置に関する。
エンジンに備えられた燃料システムの故障は、不適切な空燃比に起因する排ガス特性の悪化等の弊害に直結する。このため、燃料システムの故障を検出する機能が法規により要求されており、故障検出時には故障表示により運転者に修理を促すと共に、エンジンを制御するECU内に故障コードを記憶して後の修理に役立てている。
単一の噴射形態、例えば、ポート噴射型エンジンを対象とした従来の燃料システムの故障検出装置として、燃料システムの故障時に生じる空燃比の学習値及び空燃比フィードバック補正積算値(以下、積算値)の増加に着目した技術がある。エンジンの燃料噴射量は、空燃比の目標値と計測値との差の積算値に基づき逐次補正されている。この積算値がリッチ側或いはリーン側に増加した状況が一定期間継続すると、積算値の定常成分に相当する学習値が更新されてLAFS(リニア空燃比センサ)等の空燃比センサの出力の中央値が補正され、これにより排気空燃比が目標空燃比に保たれている。
燃料システムの故障時には、学習値が補正限界に達しても排気空燃比を目標空燃比に維持できずに積算値に基づく補正が行われる。このため、学習値が補正限界に到達し且つ積算値が所定の故障判定値に到達したことを条件として、燃料システムの故障判定を下している。
このような従来の燃料システムの故障検出装置とは別に、例えば特許文献1には、ポート噴射と筒内噴射とを切換可能なエンジンを対象とした燃料システムの故障検出装置が提案されている。特許文献1の技術によれば、ポート噴射及び筒内噴射によるそれぞれのエンジン運転中にエンジンの回転変動に基づきインバランス異常を診断し、何れかでインバランス異常の診断を下した場合には、その側の燃料システムを構成する部位、例えばポートインジェクタや筒内インジェクタ等の故障と判断している。
特許第5724963号明細書
しかしながら、特許文献1の技術において燃料システムの故障判定の指標としているエンジンの回転変動(インバランス異常)は、燃料システム自体の故障以外の要因でも発生する。例えば吸気系のデポジットや漏れによる吸気量の増減、或いは点火系の不調等であり、これらの燃料システム以外の外的要因が生じた状況でも、回転変動が発生して故障判定が下される場合がある。即ち、何れかの噴射形態に対する故障判定には、判定対象となった燃料システム自体の故障の他に外的要因も含まれることを意味する。
このため特許文献1の技術によれば、燃料システム自体は正常な場合であっても、外的要因により故障判定が下されて誤った燃料システムの故障コードが記憶されてしまう場合がある。無論、故障判定が下された噴射形態で再度判定を実施したとしても、同一の判定結果が得られるだけで信頼性向上にはつながらない。このような外的要因に起因する問題は、空燃比のずれ(積算値、学習値の増加)を指標とする上記単一の噴射形態、例えば、ポート噴射型エンジンの故障検出装置においても同様に生じる。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、複数の噴射形態を切換可能なエンジンを対象とし、燃料システム以外の外的要因による誤った故障判定を排除し、それぞれの噴射形態を司る燃料システムの故障を高い信頼性で判定することができるエンジンの燃料システムの故障検出装置を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明のエンジンの燃料システムの故障検出装置は、吸気ポートに燃料を噴射するポートインジェクタと、燃焼室内に燃料を噴射する筒内インジェクタと、を有し、前記ポートインジェクタから燃料を噴射する第1の噴射形態と前記ポートインジェクタ及び前記筒内インジェクタから燃料を噴射する第2の噴射形態とを切換可能なエンジンの燃料システムの故障検出装置において、前記第1及び第2の噴射形態による前記エンジンのそれぞれの運転中に燃料システムの故障判定処理を実行する第1の故障判定手段と、前記第1の故障判定手段により前記何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されたときに、他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行する第2の故障判定手段と、前記第1の故障判定手段及び前記第2の故障判定手段による故障判定処理の結果に基づき、前記第1及び第2の噴射形態を司るそれぞれの燃料システムの故障を特定する故障特定手段と、燃料タンクで発生した燃料蒸発ガスをキャニスタに吸着させて前記エンジンの運転中に筒内に導入するパージ処理の実行を禁止するパージ処理禁止手段とを備え、前記パージ処理禁止手段は、前記第1の故障判定手段における一方の噴射形態による運転中の故障判定時は前記パージ処理の実行を禁止せず、前記第2の故障判定手段における他方の噴射形態による運転中の故障判定時は、前記パージ処理の実行を禁止することを特徴とする(請求項1)。
このように構成したエンジンの燃料システムの故障検出装置によれば、第1及び第2の噴射形態によるエンジンのそれぞれの運転中に燃料システムの故障判定処理が実行され、何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されると、他方の噴射形態による運転中に故障判定処理が実行される。そして、故障判定の結果に基づき第1及び第2の噴射形態を司るそれぞれの燃料システムの故障が特定される。
何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下された時点では、一方の噴射形態を司る燃料システムの故障のみならず、例えば吸気系や点火系の故障等の外的要因の可能性もあり、何れが要因か判別できない。このとき本発明では、他方の噴射形態による運転中に故障判定処理が実行され、例えば故障判定が下されなかった場合、他方の噴射形態の燃料システムの正常のみならず外的要因無しの確証も得られる。結果として、直前の一方の噴射形態による運転中に故障判定が下された時点でも外的要因が発生してなかったと判断でき、それにも拘わらず故障判定が下された要因は、一方の噴射形態の燃料システム自体の故障にあると見なせる。
そして、第2の故障判定手段により燃料システムの故障判定処理が実行される際には、パージ処理禁止手段によりパージ処理の実行が禁止される。エンジンの筒内への燃料蒸発ガスの導入時と非導入時とでは故障判定処理の結果が相違し、無差別のタイミングで故障判定処理が実行されると判定結果の誤差要因になり得る。本発明ではパージ処理の実行禁止により、常に筒内への燃料蒸発ガスの非導入時に故障判定処理が実行されるため、故障判定処理の精度、ひいては一方の噴射形態の燃料システム自体の故障と判定したときの確度を向上可能となる。
その他の態様として、前記第1の故障判定手段が、前記エンジンのリッチ側またはリーン側への空燃比変動に基づき前記燃料システムの故障判定を下し、前記エンジンが、スロットルバルブ下流の吸気通路における圧力を検出する吸気圧検出手段をさらに備え、前記第2の故障判定手段が、前記第1の故障判定手段により前記リーン側への空燃比変動に基づき故障判定が下されたときに、前記吸気圧検出手段が前記吸気通路への外気の吸い込みが無いと見なせる所定の圧力以下の値を検出していることを条件として、前記他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行することが好ましい(請求項2)。
この態様によれば、吸気圧検出手段により所定の圧力以下の値が検出されているため、吸気系への外気の吸込みが無いと見なせる。
その他の態様として、前記エンジンが、所定の運転領域において吸気を過給する過給手段と、前記過給手段による過給の有無を検出する過給状態判定手段とをさらに備え、前記第2の故障判定手段が、前記第1の故障判定手段により前記リッチ側への空燃比変動に基づき故障判定が下されたときに、前記所定の運転領域において前記過給状態判定手段によって過給されていると判定することを条件として、前記他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行することが好ましい(請求項3)。
この態様によれば、過給状態判定手段によって過給されていると判定されているため、吸気系からの吸気の漏れが無いと見なせる。
その他の態様として、前記第2の故障判定手段が、前記燃料システムの故障判定処理を実行する際に、前記パージ処理の実行禁止に先立ち、前記エンジンが吸気負圧の発生する所定の運転状態を経験したときに、前記吸気圧検出手段が対応する前記所定の圧力以下の値を検出しているか否かを判定し、該所定の圧力以下の値を検出していない場合には、前記パージ処理の実行禁止を取り止めることが好ましい(請求項4)。
この態様によれば、吸気圧検出手段が例えば減速時に燃料カット処理を実行中にスロットルを閉じたエンジン運転状態において、対応する所定の圧力以下の値を検出していない場合には、以降の故障判定処理が実行されないためパージ処理の実行禁止が不要になる。この場合にはパージ処理の実行禁止が取り止められてパージ処理が継続されることから、燃料タンク内の燃料蒸発ガスを正常に処理可能となる。
その他の態様として、前記第2の故障判定手段が、前記吸気圧検出手段による前記所定の圧力が確保されているか否かの判定、または前記過給状態判定手段による過給圧が確保されているか否かの判定を、前記エンジンが停止されるまで継続することが好ましい(請求項5)。
この態様によれば、エンジンが停止されるまでに吸気負圧の発生領域や過給圧の発生領域に移行すれば、その判定に基づき故障部位の絞り込みが可能になる。
その他の態様として、前記エンジンの吸気量を検出する吸気量検出手段及び前記エンジンの回転速度を検出するクランク角センサをさらに備え、前記第2の故障判定手段が、前記第1の故障判定手段により故障判定が下されたときに、前記吸気量検出手段により検出された吸気量から求めた第1の充填効率と、前記吸気圧検出手段により検出された吸気圧及び前記クランク角センサより検出された回転速度から求めた第2の充填効率とが等しいことを条件として、前記他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行することが好ましい(請求項6)。
この態様によれば、第1の充填効率と第2の充填効率とが等しい場合には、吸気量検出手段により正常に吸気量が検出されていると見なせる。このように吸気量検出手段により正常に吸気量が検出されていることを積極的に確認するため、外的要因が無いことをより確証をもって断定可能となる。
その他の態様として、前記第2の故障判定手段が、前記燃料システムの故障判定処理を開始するときに前記パージ処理禁止手段に前記パージ処理の実行を禁止させ、該故障判定処理の結果が得られると直ちに前記パージ処理禁止手段に前記実行禁止を解除させることが好ましい(請求項7)。
この態様によれば、故障判定処理の結果が得られると、直ちに実行禁止の解除によりパージ処理が再開されるため、パージ処理の実行禁止中のキャニスタへの燃料蒸発ガスの吸着が最小限に抑制される。
本発明のエンジンの燃料システムの故障検出装置によれば、複数の噴射形態を切換可能なエンジンを対象とし、燃料システム以外の外的要因による誤った故障判定を排除し、それぞれの噴射形態を司る燃料システムの故障を高い信頼性で判定することができる。
実施形態の燃料システムの故障検出装置が適用されたエンジンを示す全体構成図である。 ECUが実行するリーン側空燃比シフト故障判定ルーチンを示すフローチャートである。 同じくECUが実行するリッチ側空燃比シフト故障判定ルーチンを示すフローチャートである。 ECUが実行する空燃比シフト故障部位特定ルーチンを示すフローチャートである。 同じくECUが実行する空燃比シフト故障部位特定ルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明を具体化したエンジンの燃料システムの故障検出装置の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態の燃料システムの故障検出装置が適用されたエンジンを示す全体構成図であり、本実施形態のエンジン1は、ポート噴射(本発明の第1の噴射形態であり、以下、MPIモードという)とポート噴射及び筒内噴射の併用(本発明の第2の噴射形態であり、以下、MPI+DIモードという)との2種の噴射形態を切換可能に構成されている。
エンジン1のシリンダブロック2に形成された各気筒のシリンダ3内にはピストン4が配設され、クランクシャフト5の回転に応じて各ピストン4がシリンダ3内で摺動する。シリンダヘッド6に設けられた吸気カムシャフト7及び排気カムシャフト8はクランクシャフト5に連動して回転駆動され、これらのカムシャフト7,8により各気筒の吸気弁9及び排気弁10が駆動されて吸気ポート11及び排気ポート12を所定のクランク角で開閉する。シリンダヘッド6の各気筒には、燃焼室13内に臨むように点火プラグ14及び筒内インジェクタ15が取り付けられている。
各気筒の吸気ポート11には吸気マニホールド17を介して吸気通路18の下流端が接続され、吸気通路18には上流側よりエアクリーナ19、スロットル弁20、サージタンク21、ポートインジェクタ22が設けられている。図示はしないがフィードポンプから吐出された所定圧の燃料がポートインジェクタ22に供給されると共に、その燃料が高圧ポンプによりさらに加圧されて筒内インジェクタ15に供給されている。従って、ポートインジェクタ22の開閉に応じて吸気ポート11内に燃料が噴射され、筒内インジェクタ15の開閉に応じて燃焼室13内(筒内)に燃料が噴射される。
一方、各気筒の排気ポート12には排気マニホールド23を介して排気通路24の下流端が接続され、排気通路24には三元触媒25及び図示しない消音器が設けられている。
エンジン1の運転中には、エアクリーナ19から吸気通路18内に導入された吸気がスロットル弁20により流量調整された後、吸気マニホールド17により各気筒に分配されて吸気ポート11から燃焼室13内に導入される。MPIモードでは、ポートインジェクタ22から噴射された燃料が吸気と混合しつつ吸気弁9の開弁に伴って燃焼室13内に導入され、MPI+DIモードでは、これに加えて筒内インジェクタ15から燃焼室13内に直接燃料が噴射される。
何れのモードにおいても点火プラグ14の点火により燃焼室13内で燃料が燃焼し、その燃焼圧によりピストン4を介してクランクシャフト5が回転駆動される。燃焼後の排ガスは排気弁10の開弁に伴って燃焼室13内から排気ポート12に排出され、排気マニホールド23により集合して排気通路24の三元触媒25により浄化された後に排出される。
車室内には、図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えたECU31(エンジン制御ユニット)が設置されており、エンジン1の総合的な制御を行う。ECU31の入力側には、エンジン1の回転に同期したクランク角信号を出力するクランク角センサ32、三元触媒25の上流側に配設された排気空燃比を検出するLAFS33(リニア空燃比センサ)、三元触媒25の下流側に配設された排気中の酸素濃度を検出するOセンサ34(酸素センサ)、吸気量Qaを検出するAFS36(エアフローセンサであり、本発明の吸気量検出手段)、及び吸気マニホールド17内に発生するインマニ圧Pin(負圧)を検出する吸気圧センサ37(吸気圧検出手段)等の各種センサ類が接続されている。またECU31の出力側には、点火プラグ14を駆動するイグナイタ35、上記各気筒のポートインジェクタ22及び筒内インジェクタ15等の各種デバイス類が接続されている。
ECU31は、各センサからの検出情報に基づきエンジン1を運転する。例えば、所定の制御マップに基づきエンジン運転領域に応じて噴射形態としてMPIモードまたはMPI+DIモードを選択した上で、その噴射形態での点火時期や燃料噴射量等を決定し、決定した目標値に基づいてイグナイタ35やインジェクタ15,22を駆動制御する。
例えば燃料噴射制御については、LAFS33の出力に基づき三元触媒25の上流側の空燃比を目標空燃比(例えばストイキ)に一致させるように空燃比フィードバックを実行しており、空燃比の目標値とLAFS33により検出された実空燃比との差の積算値に基づき燃料噴射量を逐次補正すると共に、積算値のリッチ側或いはリーン側への変動を補正する方向に学習値を逐次更新してLAFS出力の補正に適用している。なお、学習値は噴射形態毎に個別設定され、以下の説明では、MPI学習値)及びDI学習値として区別する。また、これと並行してECU31はOセンサ34の出力に基づく空燃比サブフィードバックも実行し、三元触媒25の下流側の酸素濃度に応じた学習結果をLAFS出力の補正に反映させている。
そして本実施形態では、このような燃料噴射制御に適用される空燃比の目標値と計測値との差の積算値、及び学習値に基づき、MPIモード及びMPI+DIモードを司るそれぞれの燃料システムの故障判定がECU31により実施される。より詳しくは、MPI燃料システムのみで実行されるMPIモードでは、MPI燃料システム(ポート噴射燃料システム)の故障が判定され、MPI燃料システムとDI燃料システムとの併用により実行されるMPI+DIモードでは、MPI燃料システムを除外してDI燃料システム(筒内噴射燃料システム)の故障が判定される。
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、特許文献1の技術では、燃料システムの故障のみならず、その他の外的要因(吸気系や点火系の故障等)が発生した場合でも故障判定が下されてしまうため、故障判定の信頼性が低いという問題があった。
以上の不具合を鑑みて本発明者は、本実施形態のような2種(或いは複数)の噴射形態を切り換えるエンジン1では、何れの噴射形態に対しても外的要因が影響することから、外的要因の発生時には双方の噴射形態で故障判定が下される点に着目した。
即ち、何れか一方の噴射形態で燃料システムの故障判定を下しただけでは、上記のように燃料システム自体の故障か外的要因か判別不能であるが、このとき他方の噴射形態で故障が否定(正常判定)された場合には、他方の噴射形態の燃料システムの正常のみならず外的要因無しの確証も得られる。噴射形態が正常に実行されるには、その噴射形態の燃料システムだけでなくエンジン運転システム全体が正常に機能する必要があるためである。結果として、直前の一方の噴射形態で故障判定が下された時点でも吸気系や点火系が正常に機能して外的要因が発生してなかったと見なせ、それにも拘わらず故障判定が下されている要因は一方の噴射形態の燃料システム自体の故障にあると断定できる。
以下、この知見の下にECU31により実行される燃料システムの故障判定処理について説明する。
図2はECU31が実行するリーン側空燃比シフト故障判定ルーチンを示すフローチャートである。当該ルーチンは空燃比がリーン側に変動したときの故障を判定するものであり、エンジン1の運転中にECU31により所定の制御インターバルで実行される(第1の故障判定手段)。
まず、ステップS1でMPIモード中であるか否かを判定し、Yes(肯定)のときにはステップS2でモニタ禁止行程中であるか否かを判定する。ステップS2の処理は、噴射形態の切換直後に生じる空燃比変動に起因する誤判定の防止を目的とし、モニタ禁止行程は、噴射形態の切換により一時的に変動した空燃比が安定するまでの期間として設定されている。このため、ステップS2の判定がYesのときには誤判定の可能性有りとしてステップS1に戻り、モニタ禁止行程が経過してステップS2の判定がNo(否定)になると、誤判定の可能性無しとしてステップS3に移行する。
ステップS3ではMPI学習値が予め設定された上限補正限界に到達したか否かを判定し、続くステップS4では積算値が予め設定されたMPIリーン故障判定値に到達したか否かを判定する。
ステップS3,4の処理は、MPI学習値及び積算値の変動状況に基づく故障判定を目的としたものである。即ち、MPI学習値が上限補正限界に到達しても空燃比のリーン側への変動を抑制できず、それを補うために積算値がMPIリーン故障判定値に到達する状況は、通常ではあり得ずに何らかの故障発生と見なせる。
そして、ステップS3,4の条件が共に成立するとステップS5に移行し、この状態が所定時間(例えば5sec)継続したか否かを判定し、Yesの判定を下すとステップS6に移行する。
ステップS6では、故障コードを記憶し、その後にルーチンを終了する。MPIモード中に下された故障判定ではあるが、この時点ではMPI燃料システムの故障のみならず吸気系や点火系の故障等の外的要因の可能性もあり、何れが要因か判別できない。そこで故障コードとして、エンジン1の運転システム全体の何れかの部位に起因するリーン側空燃比シフト故障を示す故障コードが記憶される。
一方、上記ステップS1でMPI+DIモード中としてNoの判定を下した場合には、ステップS7に移行する。ステップS7では、車載バッテリの接続後にMPI学習値の学習が完了している否かを判定する。この処理は、MPI燃料システムとDI燃料システムとを併用するMPI+DIモードにおいて、DI燃料システムの故障を抽出するためのものである。即ち、MPI学習値の学習が完了していない場合、MPI+DIモードで故障判定を下したとしても、その要因がMPI燃料システムにあるかDI燃料システムにあるかを判別できない。MPI学習値の学習が完了していれば、MPI燃料システムについては正常に機能している確証が得られるため、故障判定を下した要因がDI燃料システム側にあると見なせる。そこで、MPI学習値の学習完了を条件として、以降のMPI+DIモード中における故障判定を実施している。
ステップS7の判定がNoのときには、ステップS1に戻ってMPI学習値の学習完了を待ち、判定がYesになるとステップS8に移行する。基本的にMPI+DIモード中の故障判定は、上記したMPIモード中の処理と同様であるため概略のみ述べるが、ステップS8でモニタ禁止行程が経過すると、ステップS9でDI学習値が上限補正限界に到達したか否かを判定し、続くステップS10で積算値がDIリーン故障判定値に到達したか否かを判定する。なお、上限補正限界は、MPIモードの場合と別の値が適用される。
ステップS9,10の条件成立が所定時間継続すると、ステップS11でYesの判定を下してステップS6に移行する。ステップS6では、上記したMPIモードの場合と同じく、エンジン1の運転システム全体のリーン側空燃比シフト故障を示す故障コードを記憶してルーチンを終了する。
以上がリーン側空燃比シフト故障時の判定処理であり、これと並行してECU31は、図3に示すルーチンに基づきリッチ側空燃比シフト故障時の判定処理も実行する(第1の故障判定手段)。その処理内容は、基本的に空燃比のリーン変動に代えてリッチ変動に対応した点が相違するだけのため概略のみ述べる。
ステップS21でMPIモード中としてYesの判定を下すと、ステップS22でモニタ禁止行程が経過するまで待機する。その後にステップS23でMPI学習値が下限補正限界に到達したか否かを判定し、続くステップS24で積算値がMPIリッチ故障判定値に到達したか否かを判定する。
ステップS23,24の条件成立が所定時間継続すると、ステップS25でYesの判定を下してステップS26に移行する。ステップS26では、エンジン1の運転システム全体のリッチ側空燃比シフト故障を示す故障コードを記憶してルーチンを終了する。
また、上記ステップS21でMPI+DIモード中としてNoの判定を下した場合には、ステップS27でMPI学習値の学習が完了している否かを判定し、判定がYesになるとステップS28に移行する。そしてモニタ禁止行程が経過すると、ステップS29でDI学習値が下限補正限界に到達したか否かを判定し、続くステップS30で積算値がDIリッチ故障判定値に到達したか否かを判定する。
ステップS29,30の条件成立が所定時間継続すると、ステップS31でYesの判定を下してステップS26に移行し、エンジン1の運転システム全体のリッチ側空燃比シフト故障を示す故障コードを記憶する。
そして、以上のようにMPIモード及びMPI+DIモードの何れのエンジン運転中にもリーン側及びリッチ側の空燃比シフト故障判定を実施し、何れかのモードで空燃比シフト故障判定を下すと、ECU31は図4,5に示す空燃比シフト故障の部位特定ルーチンを開始する(第2の故障判定手段、故障特定手段)。
まず、ステップS41でMPIモード中に故障判定が下されたか否かを判定し、YesのときにはステップS42に移行する。ステップS42では、今回のドライブサイクル(エンジン始動からイグニションOFFによる運転停止までの期間)が終了したか否かを判定する。ステップS42の判定がNoのときには、続いてステップS43で、AFS36により検出された吸気量から第1充填効率Ec1(第1の充填効率)を算出すると共に、吸気圧センサ37により検出されたインマニ圧Pin及びクランク角信号に基づくエンジン回転速度Neから第2充填効率Ec2(第2の充填効率)を算出し、これらの充填効率Ec1,Ec2が略等しいか否かを判定する。
リーン側及びリッチ側の何れであっても空燃比シフト故障の要因としては、燃料システムの故障以外にAFS36の誤検出の可能性があり、筒内に供給される燃料の過不足により空燃比がリーン側またはリッチ側に変動して空燃比シフト故障と判定される。上記ステップS43の処理は、MPIモードで下された空燃比シフト故障の要因からAFS36の誤検出を排除して、燃料システム自体の故障を抽出することを目的とする。
即ち、AFS36による吸気量の検出が正常な場合には、双方で算出した充填効率Ec1,Ec2が略等しくなるはずであり、ステップS43の判定がNoのときにはAFS36が故障発生により誤検出している可能性がある。この場合にはステップS44に移行し、MPIモードでの上記ステップS6またはステップS26による故障コード(運転システム全体のリーン側またはリッチ側空燃比シフト故障)を維持した上で、ルーチンを終了する。この場合には運転システム全体の故障とは言ってもAFS36の故障に起因する可能性が高く、その意味で、可能性のある故障部位が絞り込まれたと見なせる。
また、充填効率Ec1,Ec2が略等しいとしてステップS43でYesの判定を下したときには、ステップS45に移行してAFS36により検出された吸気量Qaが予め設定された判定値Qa0以下であるか否か(車両減速時の燃料カット情報の利用も可能)を判定し、続くステップS46でインマニ圧Pin(本発明の吸気圧であり、この場合は負圧)が予め設定された判定値Pin0以下であるか否かを判定する。
空燃比シフト故障の要因としては燃料システムの故障以外に、エンジン1の吸気系(スロットル弁20から吸気弁9までの領域)において配管取り付けの不良やシーリングの劣化による外気の吸込みや吸気の漏れが考えられる。例えば、クランクケース内の燃料蒸発ガスを吸気系に導入する図示しないPCV(ポジティブ クランクケース ベンチレーション)のホース抜け等により外気の吸込みは発生し、エンジン1の筒内に吸気が余分に供給されることで空燃比がリーン側に変動してリーン側空燃比シフト故障と判定される。
以下に述べるように、吸気系に負圧が発生すべき運転領域(以下、吸気負圧の発生領域と称する)で実際に吸気負圧が確保されていれば(本発明の「現在の運転領域に対応する吸気圧の発生」に相当)、吸気系への取り付け不良が無いと見なせる。結果としてMPIモードで下された空燃比シフト故障の要因から吸気系の取り付け不良を排除して、燃料システム自体の空燃比シフト故障を抽出可能となる。そのための検証が上記ステップS45、S46の処理の目的である。即ち、吸気量Qa≦判定値Qa0(もしくは燃料カット情報)に基づき、ステップS45で吸気負圧の発生領域が判定され、Pin≦判定値Pin0に基づきステップS46で吸気負圧の確保が判定される。
エンジン1の運転領域はアクセル操作や車両の走行状態等に応じて種々に変化するため、今回のドライブサイクル中に吸気負圧の発生を判定するエンジン運転領域に移行しないこともあり、その場合にはステップS45からステップS42を経て上記ステップS44に移行する。ステップS44では、上記ステップS6による故障コード(運転システム全体のリーン側もしくはリッチ側の空燃比シフト故障)を維持した上で、ルーチンを終了する。
この場合には故障部位を絞り込むことはできないが、以下に述べるようにドライブサイクル中に吸気負圧の発生領域に移行すれば、所定の吸気負圧の有り無しの何れの場合でも、その判定結果に基づき故障部位の絞り込みが可能になる。そして、吸気負圧の発生領域に関するステップS45の処理がドライブサイクルの終了(エンジン停止)まで継続されるため、可能な限り故障部位を絞り込む機会を増やすことができる。
但し、必ずしもドライブサイクルの終了まで待機する必要はなく、例えば所定時間が経過した時点でステップS45、S46の判定処理を終了するようにしてもよい。
一方、吸気負圧が確保されていないとしてステップS46でNoの判定を下すと、上記ステップS44に移行し、上記ステップS6による故障コード(運転システム全体のリーン側空燃比シフト故障)を維持した上で、ルーチンを終了する。この場合には運転システム全体のリーン側空燃比シフト故障の要因が吸気系への外気の吸込みにある可能性が高く、その意味で、可能性のある故障部位が絞り込まれたと見なせる。
また、吸気負圧が確保されているとしてステップS46でYesの判定を下すと、ステップS47に移行してMPI+DIモード中のパージ処理の実行を禁止する(本発明のパージ処理禁止手段であり、以下、この禁止処理をパージカットと称する)。周知のようにパージ処理は、燃料タンクで発生した燃料蒸発ガスを一時的にキャニスタに吸着させ、その後のエンジン1の運転中にキャニスタに吸着されている燃料蒸発ガスを吸気系に供給して筒内に導入する制御である。例えばパージ処理は所定時間毎に実行されるが、パージカットが要求されている期間中は、その実行タイミングに至ってもパージ処理は中止されたままとなる。
以下に述べるように、パージカットはMPI+DIモードでの故障判定が完了するまで継続されるが、パージカット中には燃料蒸発ガスがキャニスタに吸着され続けるため、パージカットが不要であればパージ処理を継続することが望ましい。AFS36故障としてステップS45でNoの判定を下した場合、及び吸気負圧の確保無しとしてステップS46でNoの判定を下した場合には、何れも故障判定を継続しないことからパージカットは不要になる。これらの場合にはステップS47のパージカットが取り止められてパージ処理が継続されることから、燃料タンク内の燃料蒸発ガスを正常に処理できるという利点が得られる。
続くステップS48では、モニタ禁止行程中であるか否かを判定する。その趣旨は、例えば上記ステップS2と同じく空燃比変動に起因する誤判定を防止するためである。ステップS48でNoの判定を下すと、ステップS49でMPI+DIモード中においてAFS36により検出された吸気量Qaが予め設定された判定値Qa1以上であるか否かを判定する。空気量変化の影響が大きく空燃比が変動することを排除する目的である。
ステップS49でYesの判定を下すと、更にステップS50で吸気量Qa≧判定値Qa1の運転領域においてDI学習値を更新しているとき、DI学習値に積算値を加算した値が予め設定された正常範囲内にあるか否かを判定する。
ステップS50の処理は、例えば上記ステップS3,4と同じくDI学習値及び積算値の変動状況に基づく故障判定を目的としているが、その処理内容が簡略化されている。既にステップS3,4の処理によりMPI燃料システムのリーン側空燃比シフト故障とは断定できないものの可能性有りと判定されているため、DI燃料システムの故障を否定(正常判定)することによりステップS3,4の判定結果を再確認することが、ステップS50の趣旨のためである。
上記したように学習値は、積算値がリッチ側或いはリーン側に増加した状況が一定期間継続した後に更新されるが、積算値が大きく増加すれば学習値の更新を予測できる。このため上記のようなステップS50の趣旨と考え合わせると、学習値が増加した時点で判定を下しても差し支えなく、その観点の下でステップS50実行される。結果としてDI学習値の更新を待つことなく、DI燃料システムの故障判定の結果がいち早く得られる。
ステップS50の条件が成立せずにNoの判定を下したときにはステップS51に移行し、上記ステップS6またはステップS26による故障コード(運転システム全体のリーン側もしくはリッチ側の空燃比シフト故障)を維持し、続くステップS52でパージカットの要求を解除した後にルーチンを終了する。この場合にはステップS43の条件成立に基づきAFS36が正常であること、及びステップS45、S46の条件成立に基づき吸気系の取り付け不良がないことが判っている。従って、これらの故障を運転システム全体の故障から排除でき、その意味で、可能性のある故障部位が絞り込まれたと見なせる。
また、ステップS50でYesの判定を下したときにはステップS53に移行し、この状態が所定累積時間(例えば20sec)継続したとしてステップS53でYesの判定を下すと、ステップS54に移行する。ステップS54では、MPI燃料システムの空燃比シフト故障を示す故障コードを記憶し、その後にステップS52に移行する。
ステップS50,53の判定結果がYesの場合、DI燃料システムの正常のみならず吸気系や点火系の故障等の外的要因無しの確証も得られる。ステップS50で学習値や積算値が正常に設定されるには、DI燃料システムが正常に機能するだけでなく、MPI燃料システムを除きエンジン運転システム全体が正常に機能して、例えば吸気量や点火時期等が適切に制御される必要があるためである。
結果として、直前のMPIモードで故障判定が下された時点でも吸気系や点火系が正常に機能して外的要因が発生してなかったと判断でき、それにも拘わらず故障判定が下されている要因はMPI燃料システム自体の故障にあると見なせる。
しかも、上記したAFS36の誤検出及び吸気系への外気の吸込みは、共に外的要因に含まれる故障であるが、本実施形態ではステップS43の及びステップS45、S46の処理により、それらの故障が発生していないことを積極的に確認している。このため、外的要因が無いことをより確証をもって断定でき、上記ステップS54での故障コード(MPI燃料システムの空燃比シフト故障)の設定をより信頼性の高いものとして、その後の修理等に一層役立てることができる。
そして、以上のように本実施形態では、MPIモードにおいてリーン側シフトの故障判定が下された場合(ステップS6)、及びリッチ側シフトの故障判定が下された場合(ステップS26)の何れでも、MPI+DIモードで再度故障判定を実行する際に、パージカット要求によりパージ処理の実行を禁止している。エンジン1の筒内への燃料蒸発ガスの導入時には、非導入時に比較して空燃比がリッチ側に変動する傾向があるため、導入時と非導入時とで故障判定の結果が相違してしまう。よって、導入・非導入に関係なく無差別のタイミングで故障判定を実行すると、判定結果の誤差要因になり得る。本実施形態ではパージ処理の実行禁止により、常に筒内への燃料蒸発ガスの非導入時に故障判定が実行されるため、故障判定処理の精度、ひいてはMPI燃料システム自体の故障と判定したときの確度を大幅に向上することができる。
ところで、外的要因無しとしてステップS54で故障コードを設定した場合、ステップS52でのパージカットの要求解除は今回のドライブサイクル中の何れのタイミングでも起こり得る。一方で、上記のようにパージカット中には燃料蒸発ガスがキャニスタに吸着され続けるため、その継続は可能な限り短時間が望ましい。本実施形態では、ステップS50,53で判定結果が得られると、直ちにパージカットの要求が解除されてパージ処理が再開されるため、パージカット中のキャニスタへの燃料蒸発ガスの吸着を最小限に抑制できる。よって、燃料蒸発ガスをキャニスタに良好に吸着可能な状態でパージ処理を再開できるという利点も得られる。
以上がMPIモードで空燃比シフト故障判定を下した場合のMPI+DIモードでの故障判定処理であり、逆にMPI+DIモードで空燃比シフト故障判定を下した場合にも、MPIモードで同様の故障判定処理を実行する。その処理内容は図5に示すように、基本的にMPIモード中の空燃比のリーン側もしくはリッチ側シフト故障検出に代えてMPI+DIモード中に対応した点が相違するだけのため概略のみ述べる。
図4のステップS41でNoの判定を下すと、図5のステップS62に移行して今回のドライブサイクルが終了したか否かを判定する。ステップS62でNoの判定を下すと、ステップS63で充填効率Ec1,Ec2が略等しいか否かを判定し、NoのときにはステップS64に移行してMPI+DIモードでの故障コードを維持する。
またステップS63でYesの判定を下すと、ステップS65~S66で吸気負圧の発生領域で実際に吸気負圧が確保されているか否かを判定する。
また、吸気負圧の確保に基づきステップS66でYesの判定を下すと、ステップS67でMPIモード中のパージカットを要求する。続くステップS68でモニタ禁止行程中でないとしてNoの判定を下すと、ステップS69でMPIモード中において吸気量Qaが予め設定された判定値Qa1以上であるか否かを判定する。S69でYesの判定を下すと、更に、ステップS70でMPIモード中においてMPI学習値を更新しているとき、MPI学習値に積算値を加算した値が正常範囲内にあるか否かを判定する。判定がNoのときにはステップS71でMPI+DIモードでの故障コードを維持し、続くステップS72でパージカットの要求を解除する。
また、ステップS70でYesの判定を下したときにはステップS73に移行し、所定時間の継続によりYesの判定を下すとステップS74に移行する。ステップS74では、DI燃料システムの空燃比シフト故障を示す故障コードを記憶し、その後にステップS72に移行する。
MPI+DIモードでの空燃比シフト故障判定に基づきMPIモードで再度故障判定を実行する際にも、パージカット要求によりパージ処理の実行を禁止している。従って、重複する説明はしないが、空燃比に対する燃料蒸発ガスの影響を排除して、故障判定処理の精度、ひいてはDI燃料システム自体の故障と判定したときの確度を大幅に向上することができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、ポート噴射を行うMPIモードとポート噴射及び筒内噴射を併用するMPI+DIモードとの2種の噴射形態を切換可能なエンジン1を対象としたが、噴射形態はこれに限るものではない。例えばエンジン1の筒内で燃料を拡散燃焼させる拡散燃焼モードと予混合燃焼させる予混合燃焼モードとを切換可能なエンジンを対象としてもよい。また吸気ポートに一対のポートインジェクタを設け、一方のインジェクタのみを駆動するモードと双方のインジェクタを駆動するモードとを切換可能なエンジンを対象としてもよい。或いは、3種以上の噴射形態を切換可能なエンジンを対象としてもよい。
また上記実施形態では、MPI+DIモード及びMPIモードの何れにおいてもリーン側空燃比シフト故障の判定を下したときには、吸気負圧の発生領域で実際に吸気負圧が確保されている(ステップS45、S46またはステップS65、66がYes)ことを条件として故障判定処理を実行し、これによりPCVのホース抜け等吸気系の配管接続やシール不良による外気の吸込みが発生していないことを積極的に確認した。
これに同様の発想に基づき、第1の故障判定手段により空燃比シフト故障をリーン側で判定している場合(ステップS6),モード切換後に学習値と積算値を合算した値が予め設定された正常範囲内にあるかを否かを判定する(ステップS50もしくはステップS70)移行条件として,吸気圧センサ37により検出された吸気圧をもとに吸気負圧の確保を追加してもよい。第1の故障判定手段による空燃比リーン側で判定が吸気系への外気の吸込みを原因とする可能性を排除し,モード切替後において学習値と積算値の合算値が正常範囲から逸脱がないことを判定するためである。
また,ターボチャージャ等の過給手段を備えたエンジンにおいて、第1の故障判定手段により空燃比シフト故障をリッチ側で判定している場合(ステップS26),ステップS50もしくはステップS70への移行条件として,過給圧の確保を追加してもよい。第1の故障判定手段による空燃比リッチ側で判定が吸気系への外気の漏れを原因とする可能性を排除し,モード切替後において学習値と積算値の合算値が正常範囲から逸脱がないことを判定するためである。
1 エンジン
31 ECU
(第1の故障判定手段、第2の故障判定手段、故障特定手段、パージ処理禁止手段、過給状態判定手段)
36 AFS(吸気量検出手段)
37 吸気圧センサ(吸気圧検出手段)

Claims (7)

  1. 吸気ポートに燃料を噴射するポートインジェクタと、燃焼室内に燃料を噴射する筒内インジェクタと、を有し、前記ポートインジェクタから燃料を噴射する第1の噴射形態と前記ポートインジェクタ及び前記筒内インジェクタから燃料を噴射する第2の噴射形態とを切換可能なエンジンの燃料システムの故障検出装置において、
    前記第1及び第2の噴射形態による前記エンジンのそれぞれの運転中に燃料システムの故障判定処理を実行する第1の故障判定手段と、
    前記第1の故障判定手段により前記何れか一方の噴射形態による運転中に故障判定が下されたときに、他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行する第2の故障判定手段と、
    前記第1の故障判定手段及び前記第2の故障判定手段による故障判定処理の結果に基づき、前記第1及び第2の噴射形態を司るそれぞれの燃料システムの故障を特定する故障特定手段と、
    燃料タンクで発生した燃料蒸発ガスをキャニスタに吸着させて前記エンジンの運転中に筒内に導入するパージ処理の実行を禁止するパージ処理禁止手段と
    を備え、
    前記パージ処理禁止手段は、前記第1の故障判定手段における一方の噴射形態による運転中の故障判定時は前記パージ処理の実行を禁止せず、前記第2の故障判定手段における他方の噴射形態による運転中の故障判定時は、前記パージ処理の実行を禁止する
    ことを特徴とするエンジンの燃料システムの故障検出装置。
  2. 前記第1の故障判定手段は、前記エンジンのリッチ側またはリーン側への空燃比変動に基づき前記燃料システムの故障判定を下し、
    前記エンジンは、スロットルバルブ下流の吸気通路における圧力を検出する吸気圧検出手段をさらに備え、
    前記第2の故障判定手段は、前記第1の故障判定手段により前記リーン側への空燃比変動に基づき故障判定が下されたときに、前記吸気圧検出手段が前記吸気通路への外気の吸い込みが無いと見なせる所定の圧力以下の値を検出していることを条件として、前記他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行する
    ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料システムの故障検出装置。
  3. 前記エンジンは、所定の運転領域において吸気を過給する過給手段と、
    前記過給手段による過給の有無を検出する過給状態判定手段とをさらに備え、
    前記第2の故障判定手段は、前記第1の故障判定手段により前記リッチ側への空燃比変動に基づき故障判定が下されたときに、前記所定の運転領域において前記過給状態判定手段によって過給されていると判定することを条件として、前記他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行する
    ことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃料システムの故障検出装置。
  4. 前記第2の故障判定手段は、前記燃料システムの故障判定処理を実行する際に、前記パージ処理の実行禁止に先立ち、前記エンジンが吸気負圧の発生する所定の運転状態を経験したときに、前記吸気圧検出手段が対応する前記所定の圧力以下の値を検出しているか否かを判定し、該所定の圧力以下の値を検出していない場合には、前記パージ処理の実行禁止を取り止める
    ことを特徴とする請求項2または3に記載のエンジンの燃料システムの故障検出装置。
  5. 前記第2の故障判定手段は、前記吸気圧検出手段による前記所定の圧力が確保されているか否かの判定、または前記過給状態判定手段による過給圧が確保されているか否かの判定を、前記エンジンが停止されるまで継続する
    ことを特徴とする請求項3に記載のエンジンの燃料システムの故障検出装置。
  6. 前記エンジンの吸気量を検出する吸気量検出手段及び前記エンジンの回転速度を検出するクランク角センサをさらに備え、
    前記第2の故障判定手段は、前記第1の故障判定手段により故障判定が下されたときに、前記吸気量検出手段により検出された吸気量から求めた第1の充填効率と、前記吸気圧検出手段により検出された吸気圧及び前記クランク角センサより検出された回転速度から求めた第2の充填効率とが等しいことを条件として、前記他方の噴射形態による運転中に前記燃料システムの故障判定処理を実行する
    ことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載のエンジンの燃料システムの故障検出装置。
  7. 前記第2の故障判定手段は、前記燃料システムの故障判定処理を開始するときに前記パージ処理禁止手段に前記パージ処理の実行を禁止させ、該故障判定処理の結果が得られると直ちに前記パージ処理禁止手段に前記実行禁止を解除させる
    ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のエンジンの燃料システムの故障検出装置。
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