JP7311135B2 - 熱成形装置および熱成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、上型と下型とにより、加熱されたシートの賦形を行う熱成形装置であって、シートを保持するためのシート冶具と、シート冶具がシートを保持した状態で、熱成形装置内に搬入し、搬出する搬送装置と、を有する熱成形装置に関するもの、および上型と下型とを備える熱成形装置により、加熱されたシートの賦形を行う熱成形方法であって、シート冶具がシートを保持した状態で、熱成形装置内に搬入し、シートを熱成形した後、熱成形装置外へ搬出する熱成形方法に関するものである。
従来から、スマートフォンのケースの表面のコーティングを行う場合、加熱されたシート状のコーティング部材を熱成形することで、スマートフォンのケースの表面にコーティング部材を被覆することが行われている。例えば、特許文献1に開示されるような、成形基材(例えばスマートフォンのケース)を保持する基材冶具と、シート(例えばシート状のコーティング部材)を加熱する熱板と、を有し、加熱されたシートを成形基材の表面に被覆することが可能な熱成形装置が用いられる。
特許文献1に開示される熱成形装置100は、図8、図9、図10に示すように、昇降手段(図示せず)によって図中の上下に移動可能な上型110と、固定側である下型120とからなっている。
そして、上型110と、下型120とが、図9に示すように、シートS2を介して当接することで、上枠111と下枠121とにより成形室101が形成され、成形室101内において、下基材122に保持された成形基材U2に対してシートS2の被覆が行われる。
成形基材U2に対してシートS2の被覆を行う工程を説明すると、まず、図8に示すように、シート冶具130等により外周を挟持されたシートS2が、下型120内に成形基材U2(例えばスマートフォンのケース)が保持されている熱成形装置100に搬送され、下枠121の上端面121aに接するようにして配置される。
次に、図9に示すように、上枠111の下端面111aが、シートS2を介して、下枠121の上端面121aに当接するように上型110全体を下降させる。これにより、シートS2は、外周部が、上枠111の下端面111aと下枠121の上端面121aとによって挟持された状態で固定される。このとき、成形室101は、シートS2によって上下に区画され、シートS2の上側が加圧室101A、シートS2の下型が減圧室101Bとなる。
そして、減圧室101Bは真空ポンプ(図示せず)と接続されており、真空ポンプを開放することにより減圧室101Bを真空吸引して減圧する。一方で、加圧室101Aはコンプレッサ(図示せず)に接続されており、コンプレッサにより加圧室101Aに圧縮空気を供給し、加圧した状態にする。
減圧室101Bを減圧し、加圧室101Aを加圧した状態の中、下基材122を上昇させることで成形基材U2を上昇させる。すると、図10に示すように、軟化したシートS2が成形基材U2の外表面に引き付けられ、シートS2が成形基材U2の表面全体にわたって隙間なく被覆される。
特許第5957131号公報
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
従来の熱成形装置100において、シートS2は、その外周部が上枠111の下端面111aと下枠121の上端面121aとによって挟持され、固定された状態で熱成形が行われる。シートS2の外周部が固定された状態で、平面状のシートS2が、成形基材U2の形状に倣って凸状に成形されるため、挟持されている箇所と成形基材U2とによってシートS2が引っ張られ、伸びが生じる。シートS2に伸びが生じると、例えば、シートS2がハードコートされたものである場合、当該シートS2は伸びにくいため割れが生じるおそれがある。
また、シートS2が挟持された状態で熱成形が行われると、シートS2に生じる伸びが不均一となるおそれがある。シートS2がポリカーボネートを材料とする場合、シートS2の伸びが不均一となることで位相差が生じ、干渉色(いわゆる虹ムラ)が生じる。干渉色が生じると、製品外観の不良に繋がるおそれがある。
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、熱成形品の製造不良や外観不良となるような熱成形時のシートの伸びを抑制することが可能な、熱成形装置および熱成形方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の熱成形装置および熱成形方法は、次のような構成を有している。
(1)上型と下型とにより、加熱されたシートの賦形を行う熱成形装置であって、シートを保持するためのシート冶具と、シート冶具がシートを保持した状態で、熱成形装置内に搬入し、搬出する搬送装置と、を有する熱成形装置において、シート冶具は、シートの外周を挟持する挟持部材を備えること、シートが、熱成形装置内に搬入されたとき、挟持部材は下型内に配置されること、挟持部材が下型内に配置された状態において、上型と下型とが当接されると、シートの挟持を解除する解除機構を備えること、下型は、シートを賦形する賦形型を備えること、賦形は、シートを上型側から圧縮空気によって加圧した状態で行われること、上型は、挟持部材の内周全周に、シートの加圧される側の面と微少な隙間をもって対向するガイド部を有すること、を特徴とする。
(3)上型と下型とを備える熱成形装置により、加熱されたシートの賦形を行う熱成形方法であって、シート冶具がシートを保持した状態で、熱成形装置内に搬入し、シートを熱
成形した後、熱成形装置外へ搬出する熱成形方法において、シートは、熱成形装置内に搬
入されるとき、外周を挟持部材により挟持されていること、前記上型と前記下型とが当接したときに、前記シートの挟持が解除され、シートを上型側から圧縮空気によって加圧した状態で、賦形が行われること、賦形は、挟持部材の内周に設けられたガイド部が、シートの加圧される側の面と微少な隙間をもって対向した状態で行われること、を特徴とする。
本発明の熱成形装置および熱成形方法は、上記構成を有することにより次のような作用・効果を有する。
(1)に記載の熱成形装置によれば、熱成形品の製造不良や外観不良となるような熱成形時のシートの伸びを抑制することが可能である。
シート冶具は、シートの外周を挟持する挟持部材を備えており、搬送装置によって、シートは挟持された状態で、熱成形装置内に搬入される。しかし、挟持部材は下型内に配置されるため、従来の熱成形装置のようにシートの外周部が下枠や上枠により固定されることがない。さらに熱成形装置は、上型と下型とが当接したときに、シートの挟持を解除する解除機構を備えており、熱成形による賦形は、上型と下型とが当接した状態で行われるため、シートの熱成形は、外周部の挟持が解除された状態で行われることとなる。シートの熱成形が、外周部の挟持が解除された状態で行われることで、熱成形時にシートが引っ張られることがなく、伸びが生じるおそれが軽減される。伸びが生じるおそれが軽減されれば、シートがハードコートされたものである場合であっても、伸びに起因した割れが生じるおそれが軽減される。また、シートが、ポリカーボネートを材料とする場合でも、熱成形により伸びが生じた部分で干渉色(いわゆる虹ムラ)が生じ、製品外観の不良に繋がるおそれが軽減される。
さらに、(1)に記載の熱成形装置によれば、精度良く熱成形を行うことができる。
熱成形を行う際、シートを賦形型(例えばスマートフォンのケース等の成形基材や、金型など)に確実に密着させるために、シートは、賦形型の側とは反対の方向から圧縮空気によって加圧される。しかし、本発明においては、挟持部材によるシートの挟持が解除された状態で熱成形が行われるため、シートが圧縮空気による加圧を受けると、圧縮空気がシートと賦形型の間に入り込むなどして、シートがめくれ上がってしまい、賦形型に密着しないおそれがある。シートが賦形型に密着しないと、熱成形品の成形不良につながるなど、精度良く熱成形を行うことができない。
そこで、本発明のように、上型がガイド部を有し、当該ガイド部がシートの加圧される側の面と微少な隙間を持って対向する構成をとることで、圧縮空気により加圧される際に、シートがめくれ上がろうとしても、めくれ上がろうとするシートの動きをガイド部が規制し、シートがめくれ上がるおそれが軽減される。シートがめくれ上がるおそれが軽減されれば、賦形型にシートが確実に密着し、精度良く熱成形を行うことができる。
(3)に記載の熱成形方法によれば、熱成形品の製造不良や外観不良となるような熱成形時のシートの伸びを抑制することが可能である。
シートは、熱成形装置内に搬入されるとき、外周を挟持部材により挟持されている。しかし、上型と下型とが当接したときに、シートの挟持が解除され、シートの挟持が解除された状態で熱成形が行われるため、熱成形時にシートが引っ張られることがなく、伸びが生じるおそれが軽減される。伸びが生じるおそれが軽減されれば、シートがハードコートされたものである場合であっても、伸びに起因した割れが生じるおそれが軽減される。また、シートが、ポリカーボネートを材料とする場合でも、熱成形により伸びが生じた部分で干渉色(いわゆる虹ムラ)が生じ、製品外観の不良に繋がるおそれが軽減される。
上型と下型とが開いた状態の熱成形装置に、シート冶具により保持されたシートを配置した状態を示す図である。 熱成形装置に軟化したシートを配置した後、上型と下型とがシート冶具を介して当接し、型閉じされた状態を示す図である。 上型と下型とが型閉じされた後、下基材が上方向に移動し、成形基材に対するシートの被覆が開始された状態を示す図である。 下基材が上限位置に達し、成形基材に対するシートの被覆がなされた状態を示す図である。 シート冶具に保持されたシートをヒータにより加熱している状態を示す図である。 図5のシート冶具の上面視を表す図である。 (a)は、シートが熱成形装置に配置された状態であって、型閉じ前の、シート冶具のシートを挟持する部分の拡大図である。(b)は、型閉じ時のシート冶具のシートを挟持する部分の拡大図であって、シートの挟持が解除された状態を表す。 従来技術を説明する図であって、シート冶具により保持されたシートを、熱成形装置に配置した状態を示す図である。 従来技術を説明する図であって、上型と下型とがシートを介して当接し、型閉じされた状態を示す図である。 従来技術を説明する図であって、成形基材に対するシートの被覆がなされた状態を示す図である。
本発明の熱成形装置1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態の熱成形装置1は、ヒータ50(図5参照)によりガラス転移点まで加熱されて軟化したシートS1を、搬送装置51により熱成形装置1内に搬入し、熱成形装置1内に配置された成形基材U1の表面に被覆するための装置である。
熱成形装置1は、昇降手段(図示せず)によって図1中の上下に移動可能な上型2と、固定側である下型3とからなっている。上型2と、下型3とが、後述するシート冶具4を介して当接することで、成形室11が形成され(図2参照)、成形室11内において、下基材33に保持された成形基材U1に対してシートS1の被覆が行われる。
なお、図1は、上型2と下型3とが開いた状態の熱成形装置1に、シート冶具4により保持されたシートS1を配置した状態を示し、成形基材U1にシートS1を被覆する前の状態の図を示している。図2は、熱成形装置1に軟化したシートS1を配置した後、上型2と下型3とがシート冶具4を介して当接し、型閉じされた状態の図を示している。図3は、上型2と下型3とが型閉じされた後、下基材33が上方向に移動し、成形基材U1に対するシートS1の被覆が開始された状態の図を示している。図4は、下基材33が上限位置に達し、成形基材U1に対するシートS1の被覆がなされた状態の図を示している。
樹脂製の成形基材U1の表面にシートS1を被覆することにより形成されたものが熱成形品であり、熱成形品としては、例えばスマートフォンのケース等が一例として挙げられる。
成形基材U1は、有頂筒状の形状を有する。しかし、形状はこれに限定されるものでなく、図1に示すように、シートS1が熱成形装置1に設置されたときに、成形基材U1がシートS1に接触しないような高さ寸法の設定が必要な他には、特に制限はない。また、成形基材U1の材料には、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂が適用される。ただし、これらに限定されるものでなく、熱硬化樹脂、鉄、石など接着層が適応可能な素材を採用することも可能である。
シートS1は、加熱されることで可撓性及び粘着性を発現し、且つ冷却された際に成形基材U1の表面に被覆され得るものであれば、特に制限されない。なお、JIS(日本工業規格)における包装用語では、厚さ250μm以上の薄板状のプラスチック材をシートとし、厚さ250μm未満の膜状のプラスチック材をフィルムとして規定されている。しかし、本実施形態において、シートS1は特に厚みが規定されるものではなく、JISにおいてはフィルムと規定されるものであっても良い。
次に上型2について説明する。
上型2は、上部ベース21と、上枠22と、調温部23とからなる。上部ベース21は矩形平板状であり、上部ベース21の図1中の下面に、上枠22が立設されている。
上枠22は、上部ベース21に対してボルトにより固定されている。上枠22の図1中の下端面22aには、上型2と下型3とが型閉じされたときに成形室11を気密に保つためのOリング24が取り付けられている。
上枠22に囲まれるようにして、連結ロッド25により上部ベース21に固定される調温部23が配置されている。調温部23は、調温用ヒータ26を内蔵しており、熱成形装置1の温度を調整する。
また、調温部23の下面には、ガイド部27が配置されており、ガイド部27は、上型2と下型3とが型閉じされたときに、シートS1の図中上側の面と微少な隙間37(図7(b)参照)を持って対向するようになっている(詳細は後述)。
調温部23の下面には、複数の通気孔(不図示)が所定の間隔をあけて形成されている。これらの通気孔は、コンプレッサ(不図示)が接続されている。コンプレッサは、通気孔を介して、後述する加圧室11Aに圧縮空気を供給することができ、加圧室11Aを加圧した状態にすることができる。
次に下型3について説明する。
下型3は、下部ベース31と、成形基材U1を収容可能な凹部32bを有する下枠32と、成形基材U1を図1中の下方向から保持する下基材33とからなる。
下部ベース31の上面には下枠32が固定されている。また、下枠32の図1中の上端面32aには、上型2と下型3とが型閉じされたときに成形室11を気密に保つためのOリング34が取り付けられている。下枠32の凹部32bには、昇降装置35により上下動する下基材33が配設されている。下基材33の上下動は、図1に示す下限位置と、図4に示す上限位置との間で行われる。
下枠32の凹部32bの底面には、下枠32を貫通する真空通気孔(不図示)が形成されている。この真空通気孔には、真空ポンプ(不図示)が接続されている。真空通気孔の数量に制限はなく、少なくとも1つ形成されていればよい。真空ポンプは、真空通気孔を介して、後述する減圧室11Bを真空吸引し、減圧することができる。また、下枠32の凹部32bの底面には、シート冶具4を構成するボルト43を設置するための設置部36が配置されている。
次に、シート冶具4について説明する。
シート冶具4は、ヒータ50による加熱時、熱成形装置1への搬入時、熱成形装置1からの搬出時にシートS1を保持するための冶具である。
シート冶具4は搬送装置51に接続されており、搬送装置51が、シート冶具4の移動を行う。搬送装置51がシート冶具4の移動を行うことで、ヒータ50により加熱されて軟化したシートS1の熱成形装置1への搬入が行われ、熱成形が完了したシートS1の熱成形装置1からの搬出が行われる。
シート冶具4は、図5に示すように、保持パネル41と、挟持部材42A,42Bとからなる。
保持パネル41は平板状で、中央部には貫通孔41aを有しており、熱成形時には、昇降装置35により下基材33が上昇したときに、下基材33に保持された成形基材U1が貫通孔41aを通過して、シートS1を成形する。
挟持部材42A,42Bは、保持パネル41の上面側に対向するように配置され、ボルト43と結合されている。図6に示すように、一対の挟持部材42Aと、一対の挟持部材42Bとが、シートS1の外周を四方から挟持できるように配置されており、挟持部材42AがシートS1の短手方向を挟持し、挟持部材42BがシートS1の長手方向を挟持するようになっている。なお、挟持部材42Aと、挟持部材42Bとは、断面形状は同一である。以下、挟持部材42Aと、挟持部材42Bとを総称して挟持部材42とする。
ボルト43は、上下方向に摺動可能に保持パネル41を貫通しており、保持パネル41の下面側においてスプリング44に挿通されている。
スプリング44は、ボルト43と結合するばね受け部45と、保持パネル41の下面とにより圧縮されているため、ボルト43は常時図中下方向に付勢されている。ボルト43が下方向に付勢されているため、ボルト43と結合されている挟持部材42と、保持パネル41の上面側との間で、シートS1を挟持することが可能となる。
シートS1は、挟持部材42と、保持パネル41の上面側との間に挟持された状態で、ヒータ50による加熱が行われ、その後、搬送装置51により、熱成形装置1に搬入される。図1に示すように、熱成形装置1にシートS1を設置した段階では、シートS1は、保持パネル41と挟持部材42とに挟持されたままの状態である。しかし、上型2と下型3がシート冶具4を介して当接したとき、詳しくは、上枠22の下端面22aと、下枠32の上端面32aとが、シート冶具4(保持パネル41)を介して当接したとき、シートS1の挟持が解除されるようになっている。
ここで、シートS1の挟持の解除は以下のようにして行われる。
軟化したシートS1が熱成形装置1に配置されるとき、図7(a)に示すように、設置部36の上面に、ボルト43の下端部が接するように配置される。このとき、保持パネル41の下面と、下枠32の上端面32aとの間には所定の隙間がある。
この状態で、上型2が下方向に稼働されると、上枠22の下端面22aが保持パネル41の上面を押圧し、押し下げる。ボルト43は、設置部36に接しており、下方向への移動が規制されているため、スプリング44も、ボルト43に結合しているばね受け部45により、下方向への規制されている。よって、上枠22の下端面22aに押し下げられる保持パネル41は、スプリング44を圧縮しながら下降する。
ボルト43の下方向への移動が規制されていることで、ボルト43に結合されている挟持部材42の位置も変動することがないため、保持パネル41が下降すると、保持パネル41の上面と、挟持部材42とが離間し、図7(b)に示すように、シートS1の挟持が解除される。
以上のように、上枠22の下端面22aと、下枠32に設けられた設置部36と、シート冶具4の保持パネル41とにより、シートS1の挟持を解除する解除機構が構成されており、上型2と下型3とが型閉じされることでシートS1の挟持が解除されるため、シートS1の挟持が解除された状態で熱成形を行うことが可能となる。
ここで、上型2と下型3とが型閉じされることで形成された成形室11は、シート冶具4とシートS1とによって上下に区画され、シート冶具4およびシートS1の上側が加圧室11A、シート冶具4およびシートS1の下型が減圧室11Bとなる。
前述の通り、調温部23の下面に設けられた通気孔によって、コンプレッサから圧縮空気を加圧室11Aに供給することができ、下枠32の凹部32bの底面に設けられた真空通気孔によって、真空ポンプで減圧室11Bを真空吸引し、減圧することができる。よって、シートS1の成形基材U1とは反対側が加圧され、シートS1の成形基材U1側が減圧されるため、熱成形時にシートS1を成形基材U1に密着させることができる。
また、上型2と下型3とが型閉じされると、図7(b)に示すように、挟持部材42の内周近傍において、ガイド部27がシートS1の図中上側の面(すなわち、圧縮空気により加圧される側の面)と微少な隙間37を持って対向する。ここでいう微少な隙間37とは、シートS1が図中上下方向に動こうとしたときに、ガイド部がシートS1に干渉することで、その動きを規制できる程度の隙間である。
詳しく説明すると、シートS1は、成形基材U1の側とは反対の方向から圧縮空気によって加圧される。しかし、本実施形態に係る熱成形装置1は、挟持部材42によるシートS1の挟持が解除された状態で熱成形が行われるため、シートS1が圧縮空気による加圧を受けると、圧縮空気がシートS1と成形基材U1の間に入り込むなどして、シートS1がめくれ上がってしまい、成形基材U1に密着しないおそれがある。シートS1が成形基材U1に密着しないと、熱成形品の成形不良につながるなど、精度良く熱成形を行うことができない。
しかし、本実施形態に係る熱成形装置1は、上型2がガイド部27を有し、当該ガイド部27がシートS1の加圧される側の面と微少な隙間37を持って対向する構成をとっているため、圧縮空気により加圧される際に、シートS1がめくれ上がろうとしても、めくれ上がろうとするシートS1とガイド部27が干渉する。めくれ上がろうとするシートS1とガイド部27が干渉することで、めくれ上がろうとするシートS1の動きが規制されるため、シートS1がめくれ上がるおそれが軽減される。シートS1がめくれ上がるおそれが軽減されれば、成形基材U1にシートS1が確実に密着し、精度良く熱成形を行うことができる。
なお、ガイド部27は、シートS1が図中上下方向に動こうとしたときに、シートS1の動きを規制することができれば良いため、シートS1が、図中の左右方向に自由に移動可能なよう軽く触れている程度のものであっても良い。シートS1が左右方向に自由に移動可能なようにしておく理由は、シートS1の左右方向の移動を規制してしまうと、従来の熱成形装置100と同様に、シートS1の外周を挟持固定することにつながり、熱成形品の製造不良や外観不良を引き起こすおそれがあるためである。
熱成形が完了し、上型2と下型3とが離型すると、上枠22の下端面22aが保持パネル41の上面を押えていた力がなくなり、圧縮されていたスプリング44の弾性力により、保持パネル41が元の位置に戻る。すると、再びシートS1が挟持部材42と保持パネル41とにより挟持される。シートS1が再び挟持されるため、搬送装置51がシート冶具4を移動させれば、シートS1を熱成形装置1から搬出することができる。
なお、シートS1が再び挟持される位置は、熱成形前に挟持されていた箇所よりもシートS1の外周側に変動する。これは、シートS1が挟持されることなく熱成形されることで、熱成形によってシートS1に伸びが生じにくく、成形基材U1によって、S1が上側に凸状に押し出された分、図1のシートS1の端部S1aが、シートS1の中央よりに移動するためである。
次に、熱成形装置1を用いた熱成形方法について説明する。本実施形態の熱成形方法は、加熱することにより軟化したシートS1を賦形し、成形基材U1に対して被覆するための方法である。詳しくは、以下のような工程により熱成形が行われる。
まず、図5に示すように、ヒータ50によりシートS1をガラス転移点に達するまで加熱し、軟化させる。なお、本実施形態においては、一対のヒータ50によって、シートS1を上下方向から加熱することとしているが、シートS1の上方向または下方向のどちらか一方から加熱することとしても良い。
次に、軟化したシートS1を、シート冶具4に挟持された状態で、搬送装置51によって熱成形装置1に搬入し、図1に示すように、熱成形装置1に配置する。このとき、シート冶具4のボルト43の下端部が、設置部36に接触するように配置される。シートS1が熱成形装置1に搬入される際、熱成形装置1は、上型2と下型3とが離型した状態であり、成形基材U1は下基材33に保持された状態にある。また、下基材33は下限位置にあり、成形基材U1は、熱成形装置1に設置されたシートS1に接触しない状態にある。
次に、上型2を下方向に稼働し、図2に示すように、上枠22と下枠32とをシート冶具4を介して当接させ、上型2と下型3とを型閉じする。型閉じされると、シート冶具4におけるシートS1の挟持が解除されるとともに、ガイド部27が、シートS1の図中上面と微少な隙間37をもって対向する。
さらに、型閉じされると、保持パネル41の上面と、上枠22の下端面22aとによりOリング24が圧縮され、成形室11のうちの加圧室11Aが気密に保たれる。また、保持パネル41の下面と、下枠32の上端面32aとによりOリング34が圧縮され、成形室11のうちの減圧室11Bが気密に保たれる。
次に、コンプレッサによる加圧室11Aの加圧および真空ポンプによる減圧室11Bの減圧を開始するとともに、下基材33を昇降装置35により上昇させ、成形基材U1をシートS1に接触させていく。シートS1は、軟化することで可撓性を発現しているため、図3に示すように、成形基材U1の表面形状に沿って賦形されていく。このとき、加圧室11Aにおける加圧および減圧室11Bにおける減圧がされているため、成形基材U1の表面と、シートS1とが隙間なく密着されていく。
そして、図4に示すように、上昇する下基材33が上限位置に達することで、成形基材U1の表面全体に、シートS1が被覆される。シートS1は軟化することで粘着性を発現しているため、成形基材U1の表面に接着される。
以上の工程により、成形基材U1とシートS1とによる熱成形品が完成し、一連の熱成形動作が完了する。
以上説明したように、本実施形態の熱成形装置1によれば、
(1)上型2と下型3とにより、加熱されたシートS1の賦形を行う熱成形装置1であって、シートS1を保持するためのシート冶具4と、シート冶具4がシートS1を保持した状態で、熱成形装置1内に搬入し、搬出する搬送装置51と、を有する熱成形装置1において、シート冶具4は、シートS1の外周を挟持する挟持部材42を備えること、シートS1が、熱成形装置1内に搬入されたとき、挟持部材42は下型3内に配置されること、挟持部材42が下型3内に配置された状態において、上型2と下型3とが当接されると、シートS1の挟持を解除する解除機構(下端面22a,保持パネル41,設置部36)を備えること、を特徴とするので、熱成形品の製造不良や外観不良となるような熱成形時のシートS1の伸びを抑制することが可能である。
シート冶具4は、シートS1の外周を挟持する挟持部材42を備えており、搬送装置51によって、シートS1は挟持された状態で、熱成形装置1内に搬入される。しかし、挟持部材42は下型3内に配置されるため、従来の熱成形装置100のようにシートS1の外周部が下枠32や上枠22により固定されることがない。さらに熱成形装置1は、上型2と下型3とが当接したときに、シートS1の挟持を解除する解除機構(下端面22a,保持パネル41,設置部36)を備えており、熱成形による賦形は、上型2と下型3とが当接した状態で行われるため、シートS1の熱成形は、外周部の挟持が解除された状態で行われることとなる。シートS1の熱成形が、外周部の挟持が解除された状態で行われることで、熱成形時にシートS1が引っ張られることがなく、伸びが生じるおそれが軽減される。伸びが生じるおそれが軽減されれば、シートS1がハードコートされたものである場合であっても、伸びに起因した割れが生じるおそれが軽減される。また、シートが、ポリカーボネートを材料とする場合でも、熱成形により伸びが生じた部分で干渉色(いわゆる虹ムラ)が生じ、製品外観の不良に繋がるおそれが軽減される。
(2)(1)に記載する熱成形装置1において、下型3は、シートS1を賦形する賦形型(成形基材U1)を備えること、賦形は、シートS1を上型2側から圧縮空気によって加圧した状態で行われること、上型2は、挟持部材42の内周全周に、シートS1の加圧される側の面と微少な隙間37をもって対向するガイド部27を有すること、を特徴とするので、精度良く熱成形を行うことができる。
熱成形を行う際、シートS1を賦形型(成形基材U1)に確実に密着させるために、シートS1は、賦形型(成形基材U1)の側とは反対の方向から圧縮空気によって加圧される。しかし、本発明においては、挟持部材42によるシートS1の挟持が解除された状態で熱成形が行われるため、シートS1が圧縮空気による加圧を受けると、圧縮空気がシートS1と賦形型(成形基材U1)の間に入り込むなどして、シートS1がめくれ上がってしまい、賦形型(成形基材U1)に密着しないおそれがある。シートS1が賦形型(成形基材U1)に密着しないと、熱成形品の成形不良につながるなど、精度良く熱成形を行うことができない。
そこで、本発明のように、上型2がガイド部27を有し、当該ガイド部27がシートS1の加圧される側の面と微少な隙間37を持って対向する構成をとることで、圧縮空気により加圧される際に、シートS1がめくれ上がろうとしても、めくれ上がろうとするシートS1の動きをガイド部27が規制し、シートS1がめくれ上がるおそれが軽減される。シートS1がめくれ上がるおそれが軽減されれば、賦形型(成形基材U1)にシートS1が確実に密着し、精度良く熱成形を行うことができる。
(3)上型2と下型3とを備える熱成形装置1により、加熱されたシートS1の賦形を行う熱成形方法であって、シート冶具4がシートS1を保持した状態で、熱成形装置1内に搬入し、シートS1を熱成形した後、熱成形装置1外へ搬出する熱成形方法において、シートS1は、熱成形装置1内に搬入されるとき、外周を挟持部材42により挟持されていること、上型2と下型3とが当接したときに、シートS1の挟持が解除された状態で賦形(熱成形)が行われること、を特徴とするので、熱成形品の製造不良や外観不良となるような熱成形時のシートS1の伸びを抑制すること可能である。
シートS1は、熱成形装置1内に搬入されるとき、外周を挟持部材42により挟持されている。しかし、上型2と下型3とが当接したときに、シートS1の挟持が解除され、シートS1の挟持が解除された状態で熱成形が行われるため、熱成形時にシートS1が引っ張られることがなく、伸びが生じるおそれが軽減される。伸びが生じるおそれが軽減されれば、シートS1がハードコートされたものである場合であっても、伸びに起因した割れが生じるおそれが軽減される。また、シートS1が、ポリカーボネートを材料とする場合でも、熱成形により伸びが生じた部分で干渉色(いわゆる虹ムラ)が生じ、製品外観の不良に繋がるおそれが軽減される。
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施の形態では、ヒータ50によって軟化させたシートS1を成形基材U1に被覆することとしているが、下基材33を金型として、ヒータ50の加熱によって軟化したシートS1を金型賦形することも可能である。
1 熱成形装置
2 上型
3 下型
4 シート冶具
22a 下端面(解除機構の一例)
41 保持パネル(解除機構の一例)
36 設置部(解除機構の一例)
42 挟持部材
51 搬送装置
S1 シート

Claims (2)

  1. 上型と下型とにより、加熱されたシートの賦形を行う熱成形装置であって、前記シートを保持するためのシート冶具と、前記シート冶具が前記シートを保持した状態で、前記熱成形装置内に搬入し、搬出する搬送装置と、を有する熱成形装置において、
    前記シート冶具は、前記シートの外周を挟持する挟持部材を備えること、
    前記シートが、前記熱成形装置内に搬入されたとき、前記挟持部材は前記下型内に配置されること、
    前記挟持部材が前記下型内に配置された状態において、前記上型と前記下型とが当接されると、前記シートの挟持を解除する解除機構を備えること、
    前記下型は、前記シートを賦形する賦形型を備えること、
    前記賦形は、前記シートを前記上型側から圧縮空気によって加圧した状態で行われること、
    前記上型は、前記挟持部材の内周全周に、前記シートの加圧される側の面と微少な隙間をもって対向するガイド部を有すること、
    を特徴とする熱成形装置。
  2. 上型と下型とを備える熱成形装置により、加熱されたシートの賦形を行う熱成形方法であって、シート冶具がシートを保持した状態で、前記熱成形装置内に搬入し、前記シートを熱成形した後、前記熱成形装置外へ搬出する熱成形方法において、
    前記シートは、前記熱成形装置内に搬入されるとき、外周を挟持部材により挟持されていること、
    前記上型と前記下型とが当接したときに、前記シートの挟持が解除され、前記シートを前記上型側から圧縮空気によって加圧した状態で、賦形が行われること、
    前記賦形は、挟持部材の内周に設けられたガイド部が、前記シートの加圧される側の面と微少な隙間をもって対向した状態で行われること、
    を特徴とする熱成形方法。
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