JP2015089646A - 加飾製品の製造方法及び加飾製品の製造装置 - Google Patents

加飾製品の製造方法及び加飾製品の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂部品が取り付けられてなる加飾製品において、樹脂部品の熱などによる変形や接合不良及び加飾による意匠の損傷などを防止することのできる加飾製品の製造方法及び加飾製品の製造装置を提供する。
【解決手段】加飾同時組立工程では、樹脂部品120の軟化点よりも低い温度で、シート材201及び転写層202からなる加飾シートにより加飾予定部位である基材110及び樹脂部品120の上面を加飾すると同時に、接合予定部位の基材110と樹脂部品120との間に圧力を加えて接着剤又は粘着剤により接合予定部位である基材110の下面に樹脂部品120が接する部分を接合する。
【選択図】図10

Description

本発明は、加飾製品を構成する部品を組み立てると同時に加飾することにより加飾製品を製造する加飾製品の製造方法及び加飾製品の製造装置に関する。
所定形状を有する基材に対してシート材を熱成形して被覆させるために用いられる金型セットを含む熱成形装置として、特許文献1(特開2011−136471号公報)に記載された熱成形装置が知られている。この熱成形装置は、例えば金属製の単一素材からなる基材にシート材を被覆する装置である。
シート材で被覆して加飾したり柄を転写して加飾したりする対象は、特許文献1に記載されているような金属製の単一素材からなる基材のままで製品として完成することは稀である。例えば金属製の基材に樹脂部品を取り付けて製品として完成させるケースが頻繁に生じている。
特開2011−136471号公報
上述の特許文献1に記載されているような熱成形装置を用いて先に加飾した金属製の基材に対して樹脂部品を取り付けて自動で組み立てようとすると、樹脂部品を基材に押し付けるためのプレスなどによって基材の加飾部に傷が付く場合がある。このように加飾部に傷が付くのを嫌って基材に樹脂部品を接合した後に加飾しようとすると、金属とプラスチックの熱収縮差による変形や接着層の剥離などの不具合が生じる場合がある。特に、金属製の基材に加飾するだけでなく、樹脂部品にも加飾する場合には、従来塗装や水転写などの工法が一般に用いられているが、塗装の場合には乾燥させるときに加える熱によって樹脂部品に変形が発生する場合があり、水転写の場合には柄転写後にハードコート層などの保護層を形成するための熱によって樹脂部品に変形が発生する場合がある。
本発明の課題は、樹脂部品が取り付けられてなる加飾製品において、樹脂部品の熱などによる変形や接合不良及び加飾による意匠の損傷などを防止することのできる加飾製品の製造方法及び加飾製品の製造装置を提供することにある。
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る加飾製品の製造方法は、基材と樹脂部品との位置を合わせて載置部に取り付けることにより、基材と樹脂部品との接合予定部位に接着剤又は粘着剤を配置して載置部による仮固定を行なう仮固定工程と、仮固定されている基材及び樹脂部品のうちの加飾予定部位に加飾シートを配置し、加飾予定部位と加飾シートとの間を減圧して密接させる減圧密接工程と、樹脂部品の軟化点よりも低い温度で、加飾シートにより加飾予定部位を加飾すると同時に、接合予定部位の基材と樹脂部品との間に圧力を加えて接着剤又は粘着剤により接合予定部位を接合する加飾同時組立工程とを備えるものである。
このように構成されている加飾製品の製造方法によれば、仮固定工程で載置部によって基材と樹脂部品とが仮固定されることにより、接合予定部位に接着剤又は粘着剤が正確に配置されて基材と樹脂部品の位置合わせが正確に行なわれる。減圧密接工程で加飾シートを加飾予定部位に密接させた状態で、加飾同時組立工程において、樹脂部品の軟化点よりも低い温度で、加飾シートにより加飾予定部位を加飾すると同時に、接着剤又は粘着剤により接合予定部位を接合する。そのため、樹脂部品は、軟化点よりも低い温度しか掛からないことで変形が防止されるだけでなく、載置部によっても保形されて変形が防止される。また、接合が加飾と同時に行なわれるので接合後に加飾を行なう場合のように加飾に伴う接合不良は生じない。一方、加飾予定部位の加飾後は、樹脂部品の組み立てが生じないために樹脂部品の組み立てによる加飾部の損傷が発生することもない。
この加飾製品の製造方法において、加飾予定部位は、基材及び樹脂部品の両方に掛かる境界領域を含み、減圧密接工程では、境界領域を含む加飾予定部位に加飾シートを配置し、加飾同時組立工程では、接合予定部位を接合すると同時に境界領域の基材及び樹脂部品を一遍に加飾するように構成されてもよい。このように構成されることにより、基材と樹脂部品に別々に加飾する場合に生じ易い加飾のずれを防止でき、不良品の発生を抑制することができる。
この加飾製品の製造方法において、加飾同時組立工程では、接着剤として感熱接着剤又は感熱粘着剤を使って、加飾シートを加熱して加飾する時の熱を用い、加飾シートにより加飾すると同時に感熱接着剤又は感熱粘着剤により接合予定部位を接合するように構成されてもよい。このように構成されることにより、感熱接着剤又は感熱粘着剤の接着力や粘着力を発揮させるための熱源を削減することができ、コストの削減が容易になる。
この加飾製品の製造方法において、加飾同時組立工程は、感熱接着剤又は感熱粘着剤を、載置部を介して冷却する冷却工程を含むように構成されてもよい。このように構成されることにより、載置部を介して感熱接着剤又は感熱粘着剤を冷却することで感熱接着剤又は感熱粘着剤による接合が完了する温度まで速く温度が下がるので接合に掛かる時間を短縮することができる。
この加飾製品の製造方法において、加飾同時組立工程では、冷却工程による冷却が終了するまで加飾シートを加飾予定部位に押し付け続けて加飾シートを加飾予定部位に密接させた状態を維持するように構成されてもよい。このように構成されることにより、加飾シートが加飾予定部位に押し付け続けられて加飾シートが加飾予定部位に密接させられた状態を維持するので、基材と樹脂部品との間の熱収縮の差による加飾のずれを小さくすることができる。
この加飾製品の製造装置において、減圧密接工程の前に、加飾シートを加熱して軟化させる加熱工程をさらに備えるものであってもよい。このように構成されることにより、加飾シートが熱によって柔らかくなるために基材及び樹脂部品に加飾シートが沿い易くなるので、加飾のずれや樹脂部品の熱などによる変形を小さくすることができる。
本発明の一見地に係る加飾製品の製造装置は、基材と樹脂部品が位置を合わせて取り付けられるように構成され、基材と樹脂部品との接合予定部位に接着剤又は粘着剤を配置して仮固定を行なう載置部と、加飾シートの加飾予定部位に対応する箇所を加熱する加熱部と、仮固定されている基材及び樹脂部品のうちの加飾予定部位に加飾シートを配置し、加飾予定部位と加飾シートとの間を減圧して密接させる減圧密接部とを備え、減圧密接部が加飾予定部位に密接させかつ樹脂部品の軟化点よりも低い温度で加飾予定部位を加飾すると同時に、載置部において接合予定部位の基材と樹脂部品との間に圧力を加えて接着剤又は粘着剤で接合予定部位を接合する加飾同時組立を行なうものである。
このように構成されている加飾製品の製造装置によれば、載置部によって基材と樹脂部品とが仮固定されることにより、接合予定部位に接着剤又は粘着剤が正確に配置されて基材と樹脂部品の位置合わせが正確に行なわれる。減圧密接部で加飾シートを加飾予定部位に密接させた状態で、加熱部が樹脂部品の軟化点よりも低い温度に加熱することによって、加飾シートにより加飾予定部位が加飾されると同時に、接着剤又は粘着剤により接合予定部位が接合される。そのため、樹脂部品は、軟化点よりも低い温度しか掛からないことで変形が防止されるだけでなく、載置部によっても保形されて変形が防止される。また、接合が加飾と同時に行なわれるので接合後に加飾を行なう場合のように加飾に伴う接合不良は生じない。一方、加飾予定部位の加飾後は、樹脂部品の組み立てが生じないために樹脂部品の組み立てによる加飾部の損傷が発生することもない。
この加飾製品の製造装置において、加熱部は、減圧密接部によって加飾シートを加飾予定部位に密接させる前に加飾シートを加熱して軟化させるように構成されてもよい。このように構成されることにより、加飾シートが熱によって柔らかくなるために基材及び樹脂部品に加飾シートが沿い易くなるので、加飾のずれや樹脂部品の熱などによる変形を小さくすることができる。
本発明の加飾製品の製造方法又は加飾製品の製造装置によれば、樹脂部品が取り付けられてなる加飾製品の製造において、樹脂部品の熱などによる変形や接合不良及び加飾による意匠の損傷などを防止することができる。
第1実施形態に係る熱転写装置を模式的に示す側面図。 図1に示されている熱転写装置の平面図。 第1実施形態に係る本体部材及び蓋部材を開いた状態を示す平面図。 シート引出工程を示す模式的な断面図。 蓋閉め工程及び加熱工程を示す模式的な断面図。 減圧密接工程の第1工程を示す模式的な断面図。 減圧密接工程の第2工程の第1局面を示す模式的な断面図。 減圧密接工程の第2工程中のシート材の状態を示す斜視図。 減圧密接工程の第2工程の第2局面を示す模式的な断面図。 減圧密接工程の第2工程の第3局面(加飾同時組立工程の開始時点の状態)を示す模式的な断面図。 シート切断工程を示す模式的な断面図。 第2実施形態に係る熱転写装置の模式的な側面図。 第2実施形態に係る本体部材及び蓋部材を開いた状態を示す平面図。 シート引出工程を示す模式的な断面図。 加熱工程を示す模式的な断面図。 減圧密接工程の第1工程を示す模式的な断面図。 蓋閉め工程を示す模式的な断面図。 減圧密接工程の第2工程の第1局面を示す模式的な断面図。 減圧密接工程の第2工程の第2局面を示す模式的な断面図。 加飾同時組立工程の冷却工程を示す模式的な断面図。 治具の他の態様を示す模式的な断面図。 治具の他の態様を示す模式的な断面図。 治具の他の態様を示す模式的な断面図。 治具の他の態様を示す模式的な断面図。 治具の他の態様を示す模式的な断面図。 治具の他の態様を示す模式的な断面図。 治具の他の態様を示す模式的な断面図。 従来技術の治具を示す模式的な断面図。 (a)治具の他の態様による減圧密接工程の第1工程を示す模式的な断面図、(b)治具の他の態様による減圧密接工程の第2工程を示す模式的な断面図。 (a)治具の他の態様による減圧密接工程の第1工程を示す模式的な断面図、(b)治具の他の態様による減圧密接工程の第2工程を示す模式的な断面図。 (a)治具の他の態様による減圧密接工程の第1工程を示す模式的な断面図、(b)治具の他の態様による減圧密接工程の第2工程を示す模式的な断面図。 (a)治具の他の態様による減圧密接工程の第1工程を示す模式的な断面図、(b)治具の他の態様による減圧密接工程の第2工程を示す模式的な断面図。 (a)加飾製品の一例を示す背面図、(b)図33(a)のI−I線断面図、(c)図33(a)のII−II線断面図。
<第1実施形態>
(1)加飾製品の製造装置の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る加飾製品の製造装置である熱転写装置の構成を説明するための模式的な断面図である。熱転写装置1は、所定形状を有する金属製の基材110と樹脂部品120からなる加飾製品100に対して加飾シート200を用いた熱転写により加飾する。図1に示されているように、熱転写装置1は、治具10と、シート保持部20と、シート引出部30と、シート切断部40と、スライド機構70とを備えている。また、熱転写装置1は、治具10に接続された調圧機構80及び加熱部90を備えている。
熱転写装置1は、加飾同時組み立てが行なわれる製造空間を形成するための治具10を構成する本体部材50と蓋部材60とを備えている。本体部材50が蓋部材60で閉められたときに内部に形成される製造空間に載置台56が設けられており、載置台56に仮固定された基材110と樹脂部品120には治具10内の製造空間において加飾シート200からの熱転写が施される。この熱転写装置1は、治具10に次々に基材110と樹脂部品120を仮固定し、ロール状に保持された加飾シート200の端部を引き出して次々に転写層202を供給し、加飾シート200から加飾製品100への模様の転写を間欠的に行う。転写後に転写層202がなくなったシート材201は加飾製品100から除去される。
ここでは、例えばパーソナルコンピュータの筐体の蓋を加飾製品100としている。図33(a)には加飾製品100としてのパーソナルコンピュータの蓋の裏側が示されており、図33(b)には図33(a)のI−I線で切断した端面が示されており、図33(c)には図33(a)のII−II線で切断した端面が示されている。加飾製品100は、金属製の浅い皿状の基材110と、基材110の内面側の周囲と切り欠かれた部分113に嵌め込まれる樹脂部品120とからなる。基材110は、平板状に形成された略矩形状の平板部111と、この平板部111の四方を取り囲むように一体的に形成された側壁部112とを有する。樹脂部品120は、側壁部112の内面側に環状に貼り付けられる環状部分121と、加飾製品100の表面の一部を形成する嵌合部122とを有する。図33(b)に示されている上面が加飾される予定の領域であり、図33(c)に示されている境界領域103が、基材110と樹脂部品120の両方が加飾される領域である。
図33(c)に示されているように、基材110と樹脂部品120の境界のうち、基材110の下面に樹脂部品120が接する部分102に接着剤又は粘着剤が塗布されている。なお、基材110の側面と樹脂部品120が接する部分には、接着剤又は粘着剤がはみ出さないように接着剤又は粘着剤が塗布されていない。なお、この部分102には、接着剤及び粘着剤のうちの少なくとも一方が塗布されていればよい。接着剤及び粘着剤の主剤には、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも用いることができる。接着剤や粘着剤の塗工については、例えばディスペンサーなどを用いて実施することができる。
接着剤及び粘着剤によって基材110に樹脂部品120を接合させるには、押圧力で基材110と樹脂部品120を固着させる方法や、押圧力と加熱によって基材110と樹脂部品120を固着させる方法がある。このときの押圧力としては、0.1MPa/cm以上の圧力が基材110と樹脂部品120の接合予定部位の界面に加えられることが好ましい。また、このときの加熱のためには、基材110と樹脂部品120の温度を、粘着剤の場合には20〜60℃にすることが好ましく、接着剤の場合には40〜80℃にすることが好ましい。従って、接着剤及び粘着剤の主剤に用いられる樹脂は、感圧性樹脂及び感熱性樹脂のうちの少なくとも一方である。例えば、樹脂部品120の材質がアクリル系樹脂の場合には、アクリル系樹脂が用いられる。また、樹脂部品120の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合には、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを用いるとよい。また、樹脂部品120の材質がポリプロピレン樹脂の場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂などを用いるとよい。
粘着後又は接着後に基材110と樹脂部品120の接合を十分なものとするために基材110と樹脂部品120を冷却してもよい。
また、接着剤及び粘着剤によって基材110に樹脂部品120を接合させる場合に、東亞合成株式会社製のアロンアルファ(登録商標)やセメダイン株式会社製の接着剤であってα−シアノアクリレートにより空気中の湿気と反応させて硬化させるものや空気を遮断すると反応して硬化する嫌気性接着剤を用いることもできる。
(1−1)加飾シート200
加飾シート200は、シート材201と転写層202とからなる。ロール状に保持された加飾シート200で多数の加飾製品100を製造するために、長尺のシート材201上には、断続的に多数の転写層202が形成されている。シート材201は、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂等の合成樹脂を用いて構成することができる。これらの樹脂の共重合体や混合物を用いて構成してもよい。また、シート材201は、単層シートとして構成してもよいし、複数の単層シートを積層してなる積層シートとして構成してもよい。
加飾シート200の転写層202は図柄層を含んでいる。この図柄層は、例えば着色インキや金属薄膜等を含み、文字や図柄、金属光沢等を表現する。また、転写層202は、基材110と図柄層との接着性を向上させるための接着層や、表面強度を向上させて耐擦傷性を付与するためのハードコート層、層間密着性を向上させるためのアンカー層等をさらに有してもよい。さらに、シート材201と転写層202との間に、シート材201からの転写層202の剥離性を向上させるための離型層が備えられてもよい。これらの各層は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、及びオフセット印刷法等の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法、及びコンマコート法等のコート法等により形成することができる。
なお、本実施形態において、引き出された加飾シート200が順次送られる方向は加飾シート200の長手方向に平行であり、この加飾シート200が順次送られる方向を「シート送り方向F」と定義する。また、「上流」及び「下流」の用語は、シート送り方向Fを基準として定義し、シート送り方向Fに沿って、相対的にシート保持部20側(図1における左上側)を「上流側」と呼び、その反対側(図1における右側)を「下流側」と呼ぶ。また、蓋部材60の移動方向Cは、本実施形態では上下方向になる。
(1−2)シート保持部20
シート保持部20は、加飾シート200をロール巻きされた状態で保持する。そのために、シート保持部20は、治具10が載置される基台6上に固定された保持台21と、加飾シート200の幅方向(シート送り方向Fに直交する方向)の両側で対向するように保持台21に立設された一対の保持板22と、一対の保持板22の間に架け渡された支軸23とで構成されている。加飾シート200は、支軸23にロール巻きされた状態で保持されている。加飾シート200は、シート送り方向Fの下流側の端部が、治具10の下流側に配置されているシート引出部30の可動挟持部32によって挟持されて引き出される(図4参照)。支軸23に支持されているロールから引き出された加飾シート200は、支軸23と治具10の間に設けられているガイドローラ24によって向きを変えて治具10(本体部材50と蓋部材60との間)に供給される。
(1−3)シート引出部30
シート引出部30は、ロール巻きされた状態の加飾シート200の端部を把持して、加飾シート200を引き出す。そして、シート引出部30は、治具10に仮固定されている基材110と樹脂部品120の加飾予定部位に転写層202の位置を合わせる。そのために、シート引出部30は、シート送り方向Fの所定位置に固定された固定挟持部31と、シート送り方向Fに沿って移動可能に構成された可動挟持部32とを有する。固定挟持部31は、治具10よりもシート送り方向Fの上流側に配置されている。可動挟持部32は、固定挟持部31よりもシート送り方向Fの下流側を、治具10の全長以上に亘ってシート送り方向Fにスライド移動するように構成されている。固定挟持部31及び可動挟持部32は、それぞれ上側挟持部と下側挟持部とを有する棒状のクランプとして構成されている。シート引出部30は、可動挟持部32が加飾シート200の端部を挟持し、かつ、固定挟持部31が開放された状態で、可動挟持部32が下流側に向かってスライドすることで、ロール状に保持された加飾シート200を引き出す。そして、加飾シート200を引き出した後は、固定挟持部31で加飾シート200を挟持して動かないように固定し、次に可動挟持部32が上流側に向かってスライドして図1に示されている位置に戻る。さらに、固定挟持部31と可動挟持部32の両方で加飾シート200を挟持して、治具10に仮固定されている基材110と樹脂部品120に対する加飾シート200の位置合わせを行なう。
(1−4)治具10
治具10は、内部に基材110及び樹脂部品120を収容するための製造空間R(図5参照)を形成する本体部材50と蓋部材60とを備えている。図2には、蓋部材60を取り除いた状態で熱転写装置1を上部から見た状態が示され、本体部材50を上方から見た状態が示されている。また、図3には、本体部材50と蓋部材60を熱転写装置1から取り外して、本体部材50と蓋部材60を開いて並べて置いて内部側から見た状態が示されている。つまり、図3では、本来は互いに対向する2つの面(本体部材50の上面及び蓋部材60の下面)が、上下に並べて同一平面状に示されている。治具10は、固定挟持部31よりもシート送り方向Fの下流側でかつ可動挟持部32よりも上流側に配置されている。本体部材50と蓋部材60とは、移動方向C(上下方向)に相対移動可能に構成され、閉じられた状態で製造空間Rが外部空間から隔絶され、開かれた状態では互いに離間している。蓋部材60は、蓋部材60の移動方向Cに見て加飾シート200と重なる位置に設けられている。
(1−4−1)本体部材50
図1、図3及び図4に示されているように、本体部材50は、下壁部51と、基材110を載置するための載置台56とを有している。下壁部51は、金属材料を用いて構成されており、平面視において略矩形状に形成されている。
下壁部51の中央部には、載置台56が設けられている。載置台56は、基材110に樹脂部品120が取り付けられてなる加飾製品100の形状に対応する外面形状を有している。載置台56は、基材110の平板部111の下面、各側壁部112の内面及び樹脂部品120の環状部分121を支持するように構成されている。載置台56は、基材110や樹脂部品120の凹凸に嵌りこむ凸凹を有しており、基材110及び樹脂部品120を支持するとともに加飾同時組み立ての期間中は動かないように仮固定する。
本体部材50は、下壁部51における蓋部材60と対向する側に形成された第一凹部54をさらに含む。下壁部51は、載置台56の周囲を取り囲むように形成された周壁部52を有しており、この周壁部52の内面(傾斜面53)と、下壁部51の上面とにより、第一凹部54が画定されている。図3に示されているように、第一凹部54は、平面視において略矩形状(丸みを帯びた角を有する矩形状)に形成されている。第一凹部54は、平面視において、載置台56と同心状に(中心部が揃った状態で)配置されている。第一凹部54の大きさは、載置台56の大きさに比べて1.5倍〜3倍程度に設定されている。また、第一凹部54の深さは、載置台56及び基材110を合わせた全体の高さよりも僅かに大きく設定されている。
本体部材50には、下壁部51における第一凹部54の表面に開口する多数の第一通気路58が形成されている。第一通気路58は、載置台56の外側であって載置台56の近傍(基材110の端部付近)に開口するように形成されている。第一通気路58は、配管等を介して調圧機構80に接続されている。
(1−4−2)蓋部材60
図1、図3及び図4に示されているように、蓋部材60は、上壁部61と、上壁部61における下壁部51と対向する側に形成された第二凹部64とを含む。この上壁部61に対しては、加熱部90からの熱が伝達される。上壁部61は、金属材料を用いて構成されている。上壁部61は、平面視において略矩形状に形成されている(図3参照)。上壁部61は、下壁部51に対して移動方向C(上下方向)に相対移動して外縁部を下壁部51の周壁部52の上端部に密接できるように構成されている。下壁部51と上壁部61とが加飾シート200を挟んで密接することにより、製造空間Rの気密が比較的高く保たれる構成となっている。
第二凹部64は、加飾製品100の外面形状を模した形状を有するように形成されている。ここで、「加飾製品100の外面形状を模した形状」とは、基材110に樹脂部品120を仮固定した外面形状に沿う形状、又は基材110に樹脂部品120を仮固定した外面形状を概略的に表した形状を意味する。これは、基材110に樹脂部品120を仮固定した外面形状に完全に沿うことを要求する概念ではなく、基材110に樹脂部品120を仮固定した外面形状に概ね対応していれば足りる概念である。図4に示されているように、基材110の平板部111及び側壁部112に沿うように、第二凹部64も、水平面に沿う平面部分とその四方の側面部分とを有するように形成されている。また、基材110に樹脂部品120を仮固定した外面形状になるように、平面部分とその四方の側面部分には、樹脂部品120が嵌りこむ凹凸が形成されている。
図3に示されているように、第二凹部64は、平面視において略矩形状(丸みを帯びた角を有する矩形状)に形成されている。第二凹部64は、平面視において、載置台56及び第一凹部54と同心状に配置されている。第二凹部64の大きさは、載置台56の大きさよりも大きく、かつ、第一凹部54の大きさよりも小さく設定されている。つまり、本体部材50に蓋部材60を重ねて平面視すると、第一凹部54の外縁54eが第二凹部64の外縁64eを包含するように、第一凹部54と第二凹部64との位置関係が設定されている。さらに、平面視において、第二凹部64の外縁64eが載置台56の外縁を包含し、かつ、第一凹部54の外縁54eが第二凹部64の外縁64eを包含するように、載置台56と第一凹部54と第二凹部64との位置関係が設定されている。
このように構成された上壁部61においては、上壁部61の下面における第二凹部64の外縁64eと第一凹部54の外縁54eに対応する位置との間に、第二凹部64を包囲するように枠状包囲面61aが形成される。なお、図3では、見易くするために、この枠状包囲面61aにハッチングを施しいている。枠状包囲面61aは、平面視において、所定幅を持つ四角い環状の形状を呈する。図示の例では、長手方向に沿う辺と短手方向に沿う辺とで枠状包囲面61aの幅が異なるように設定されているが、長手方向に沿う辺と短手方向に沿う辺の幅が等しくなるように設定されていてもよい。
枠状包囲面61aの幅は、本体部材50に蓋部材60を接触させた状態での第一凹部54の外縁54eと第二凹部64の外縁64eとの間の距離に相当し、第一凹部54と第二凹部64との大きさの差に応じた値となる。枠状包囲面61aの幅は、後述する第二通気路68が形成できる程度に設定されることが好ましい。枠状包囲面61aの幅は、例えば第一凹部54の深さの0.6倍〜2.5倍の大きさとなるように設定することができる。あるいは、本体部材50に蓋部材60を接触させた状態での第二凹部64の外縁64e(図4における点P)と第一凹部54の外縁54eとを結ぶ仮想平面と、第一凹部54の外縁54eを通る鉛直面とのなす角θを用いて、およそ30°〜70°の範囲で設定してもよい。さらに、枠状包囲面61aの幅は、例えば第一凹部54の深さの0.8倍〜2倍に設定することができ、上記なす角θを用いておよそ40°〜60°の範囲で設定してもよい。また、枠状包囲面61aの幅は、例えば基材110の長手方向の長さに対して10%〜30%程度の大きさとなるように設定することができる。枠状包囲面61aの幅は、第一凹部54の深さや基材110のサイズにもよるが、例えば12mm〜50mmとなるように設定することができる。
蓋部材60には、上壁部61の第二凹部64の表面に開口する多数の第二通気路68が形成されている。また、多数の第二通気路68のうちの一部は、上壁部61の下面における第二凹部64の周囲の領域(上述した枠状包囲面61a)にそれぞれ開口するように形成されている。第二通気路68は、配管等を介して調圧機構80に接続されている。
(1−5)スライド機構70
スライド機構70は、本体部材50を加飾シート200の幅方向に沿ってスライド移動させるための機構である。スライド機構70は、幅方向に沿って互いに平行となるように基台6上に配置された複数のガイドレール71と、このガイドレール71上をスライド可能な架台72とを備えている。架台72には、本体部材50が固定されている。架台72がガイドレール71の上をスライドすることによって、本体部材50は、加飾製品100を加飾同時組み立てする加飾同時組立場所と、基材110及び樹脂部品120を装着したり製造された加飾製品100を離脱させたりする着脱場所との間をガイドレール71に沿ってスライドするようになっている。加飾同時組立場所は、蓋部材60の移動方向Cに見て本体部材50と蓋部材60とが重なる重複位置であり、着脱場所は移動方向Cに見て本体部材50と蓋部材60とが重ならない非重複位置である。着脱場所では、本体部材50に基材110及び樹脂部品120が新たに載置されたり、加飾同時組立後の基材110及び樹脂部品120が本体部材50から取り出されたりする。また、加飾同時組立場所では、本体部材50と蓋部材60とを上下に対向させることができるので、本体部材50を加飾同時組立場所にスライド移動させた後に本体部材50を蓋部材60で閉じて製造空間Rが形成される。
(1−6)シート切断部40
シート切断部40は、製造空間Rよりもシート送り方向Fの上流側で加飾シート200を切断する。シート切断部40は、シート送り方向Fにおける固定挟持部31と治具10との間に設けられている。シート切断部40は、固定挟持部31と治具10との間に保持された加飾シート200を、幅方向に切断する。シート切断部40は、加飾シート200の幅方向の全域に亘ってスライド可能なカッター41(例えば、ロータリーカッターやヒートカッター等)により構成されている。なお、製造空間Rよりも上流側において本体部材50及び蓋部材60のいずれかに内在されたカッター等により、シート切断部40が構成されてもよい。
(1−7)加熱部90
加熱部90は、蓋部材60の上壁部61を加熱する。加熱部90は、例えば抵抗熱ヒータ、赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ、誘導加熱装置、及びマイクロ波加熱装置等により構成することができる。加熱部90は、上壁部61の上面に固定され、上壁部61に対して加熱部90から熱を伝達することができるように構成されている。ただし、このような構成に限定される訳ではなく、例えば加熱部90から上壁部61に熱が伝達されるように、加熱部90を上壁部61の内部に埋め込んでもよい。
(1−8)調圧機構80
調圧機構80は、第一通気路58及び第二通気路68にそれぞれ接続され、本体部材50と蓋部材60との間に形成される製造空間R(図5参照)の内部の圧力を調整する。調圧機構80は、製造空間Rの内部を減圧することもできるし、加圧することもできるように構成されている。このため、調圧機構80は、図1に示されているように、真空タンク81に接続された真空ポンプ82と、圧力タンク83に接続されたコンプレッサ84とを備えている。調圧機構80と第一通気路58及び第二通気路68との間の配管の所定位置には複数のバルブが設けられている。制御ユニット(図示せず)からの指令に応じて各バルブが開閉することで、所望のタイミングで製造空間Rの内部が減圧及び/又は加圧される。ここでは、第一通気路58と真空タンク81との間に第一バルブ86aが設けられ、第二通気路68と真空タンク81との間に第二バルブ86bが設けられている。第二通気路68と圧力タンク83との間に第三バルブ87が設けられている。さらに、第一通気路58を大気開放するための第四バルブ88aが設けられ、第二通気路68を大気開放するための第五バルブ88bが設けられている。
(2)加飾製品の製造方法
次に、熱転写装置1を用いて行われる加飾製品100の製造方法について説明する。第1実施形態に係る加飾製品の製造方法は、仮固定工程、シート引出工程、蓋閉め工程、加熱工程、減圧密接工程、加飾同時組立工程、シート切断工程及び取出工程を備えている。蓋閉め工程、加熱工程、減圧密接工程、加飾同時組立工程及び取出工程は、記載されている順に実行される。仮固定工程及びシート引出工程は蓋閉め工程の前に行なわれれば、仮固定工程とシート引出工程のいずれが先に行われてもよい。また、シート切断工程は、蓋閉め工程以後であれば一連の製造工程の中のいずれのタイミングで実行されてもよい。以下、順を追って説明する。
(2−1)仮固定工程
仮固定工程は、本体部材50の載置台56に基材110及び樹脂部品120を仮固定する工程である。仮固定工程では、架台72に固定された本体部材50がガイドレール71に沿って側方に引き出され、着脱場所において載置台56に基材110及び樹脂部品120が載置される。このとき基材110及び樹脂部品120のうちの少なくとも一方の接合予定部位には接着剤及び粘着材のうちの少なくとも一方が塗布されている。この仮固定工程では、載置台56の上で、加飾製品100になったときと同じ位置関係を維持するように基材110と樹脂部品120が固定される。その後、本体部材50はガイドレール71に沿って蓋部材60の下方つまり加飾同時組立場所に戻される。これにより、基材110及び樹脂部品が仮固定された状態の本体部材50と蓋部材60とが、所定間隔を隔てて上下に対向した状態となる。
(2−2)シート引出工程
シート引出工程は、ロール巻きされた状態の加飾シート200を引き出す工程である。シート引出工程では、可動挟持部32が本体部材50及び蓋部材60よりも上流側の固定挟持部31の近傍までスライド移動して、固定挟持部31によって挟持された状態でその下流側にはみ出た加飾シート200の端部を挟持する。その後、固定挟持部31による挟持状態が解除され、可動挟持部32が本体部材50及び蓋部材60よりも下流側の図4に示されている位置までスライド移動することで、加飾シート200が引き出される。これにより、所定間隔を隔てて上下に対向した本体部材50と蓋部材60との間に、加飾シート200が配置される。なお、基材110及び樹脂部品120の加飾予定部位と加飾シート200の転写層202との位置合わせは、例えば、本体部材50又は蓋部材60に光センサ(図示せず)を設けておき、この光センサによる検出結果に基づいて転写層202を予め決められている位置に誘導することによって行う。光センサは、治具10から独立して設けられてもよい。
(2−3)蓋閉め工程
蓋閉め工程は、本体部材50を蓋部材60で閉じて加飾シート200を本体部材50と蓋部材60で挟んだ状態で気密性の高い製造空間Rの形成を行なう工程である。図5に示されているように、蓋閉め工程では、本体部材50と蓋部材60とが互いに近接するように相対移動して、本体部材50が蓋部材60によって閉じられて製造空間Rが形成される。このとき、加飾シート200は、その幅が第一凹部54の外縁54eよりも広いので、本体部材50の周壁部52の上端部と蓋部材60の下面の周縁部との間に挟持された状態となる。なお、この状態では、加飾シート200は平面状の形態を維持している。このため、加飾シート200は、蓋部材60(上壁部61)の下面における第二凹部64以外の平面部分に接するように配置された状態となる。また、本体部材50と蓋部材60との間の製造空間Rは、加飾シート200よりも本体部材50側に画定される第一空間R1と、加飾シート200よりも蓋部材60側に画定される第二空間R2とに区画される。
加熱工程は、図5に示されている状態で、上壁部61の下面における第二凹部64以外の平面部分に接するように配置された加飾シート200を加熱する工程である。加熱工程では、加熱部90(図1参照)の熱が上壁部61に伝達され、さらに加熱状態にある上壁部61の熱が、接触部位を介して直接的に加飾シート200に伝達される。また、加熱状態にある上壁部61の熱は、第二空間R2に存在する空気を介した対流や輻射によって間接的に加飾シート200に伝達される。加熱工程は、所定時間継続して実行され、その結果、加飾シート200は部位によらずに全体が概ね均一に加熱される。
(2−4)減圧密接工程
減圧密接工程の第1工程は、加飾シート200と蓋部材60との間(第二空間R2)を減圧し、加熱状態の加飾シート200を、第二凹部64に吸着させて当該第二凹部64に沿うように賦形する工程である。減圧密接工程の第1工程では、第二通気路68と真空タンク81(図1参照)との間の配管に設けられた第二バルブ86bが開状態とされるとともに第一バルブ86a、第三バルブ87、第四バルブ88a及び第五バルブ88bが閉状態とされ、第二通気路68を介して第二空間R2内の空気が真空吸引される。これにより、製造空間Rにおける第二空間R2が高度に減圧され、加飾シート200を挟んで第一空間R1と第二空間R2との間に圧力差が生じる。その結果、図6に示されているように、加熱により軟化した加飾シート200が、第二凹部64の表面に沿って吸着される。なお、このとき、加飾シート200と蓋部材60とが密着するため、製造空間Rは実質的に第一空間R1のみとなる。
このとき、図6に示すように、加熱状態の加飾シート200は、第二凹部64の外縁64eを起点として屈曲して第二凹部64に沿うことによって、基材110及び樹脂部品120の外面形状に類似する形状となるように賦形される。つまり、減圧密接工程の第1工程を実行することにより、基材110及び樹脂部品120の外面形状に類似する形状を有する凸状の賦形部分210(図8も参照)が、後ほど説明する減圧密接工程の第2工程の実行前に加飾シート200に形成される。なお、賦形部分210の周囲の部分(蓋部材60の移動方向Cに見て第一凹部54と重なる位置にある部分)は、未だなお平面状を維持する。この部分を、ここでは“平面状包囲部分220”と称する。この平面状包囲部分220は、減圧密接工程の第1工程の完了時においては、上壁部61の下面における枠状包囲面61a(図3参照)に接する部分である。
ところで、加飾シート200は、第二凹部64に沿うように賦形される際に若干の伸びを伴う。この伸びの影響で、転写層202を構成する図柄層もある程度は伸びることになる。但し、加飾シート200は、製造空間R内で部位によらずに略均一な伸び率で伸びながら賦形される。このため、賦形部分210の内側に形成された転写層202の文字や図柄も、均一性を維持する。また、転写層202の伸び方は予測することができるので、伸びた後に所望の文字や図柄になるように転写層202の図柄層の文字や図柄を縮小して形成しておけば、賦形による伸びの影響を排除することができる。
減圧密接工程の第2工程は、加飾シート200と本体部材50との間(第一空間R1)を減圧し、加飾シート200と蓋部材60との間(第二空間R2)を加圧して、基材110及び樹脂部品に加飾シート200を密接させる工程である。減圧密接工程の第2工程では、まず、第二通気路68と真空タンク81との間の配管に設けられた第二バルブ86bが閉状態とされるとともに、第五バルブ88bが開状態とされて第二通気路68を介して第二空間R2が大気開放される。このとき、他の第一バルブ86a、第三バルブ87及び第四バルブ88aは閉じられたままである。
次に、第一通気路58と真空タンク81との間の配管に設けられた第一バルブ86aが開状態とされ、第一通気路58を介して第一空間R1内の空気が真空吸引される。このとき、第一バルブ86aと第五バルブ88b以外のバルブは閉じられている。これにより、製造空間Rにおける第一空間R1が高度に減圧され、加飾シート200を挟んで第一空間R1と第二空間R2との間に、減圧密接工程の第1工程における圧力差とは反対方向の圧力差が生じる。その結果、図7に示されているように、それまで第二凹部64の表面に沿っていた加飾シート200が、本体部材50側(基材110側)に向かって移動し始める。
このとき、製造空間R内において、加飾シート200は第一凹部54の外縁54eを起点として屈曲しつつ賦形部分210の周囲の部分(平面状包囲部分220)が伸びて、賦形部分210はその形状を保持したままで基材110及び樹脂部品120の方に向かって移動する。また、賦形部分210は、基材110及び樹脂部品120に対してほぼ平行姿勢を保持したままで基材110及び樹脂部品120の方に向かって移動する。つまり、平面状包囲部分220が加飾シート200における屈曲しながら伸延する屈伸部として機能することで、賦形部分210は、その形状を保持したまま基材110及び樹脂部品120に向かって平行移動する(図8及び図9参照)。
図9に示されているように、基材110の平板部111に対しては賦形部分210における平面状の頂上部分が先に密着するのに対して、基材110の側壁部112及び樹脂部品120と賦形部分210の側壁部分との間には僅かに隙間が残る。そこで、減圧密接工程の第2工程では、第一空間R1の減圧動作と並行して(或いは、減圧動作を停止してもよい)、第二空間R2の加圧動作を行う。そのために、第二通気路68と圧力タンク83との間の配管に設けられた第三バルブ87が開状態とされ、図10に示されているように、第二通気路68を介して第二空間R2内に圧縮空気が導入される。第一空間R1の減圧動作を続行する場合には第一バルブ86aが開状態とされ、第一空間R1の減圧動作を停止する場合には第一バルブ86aが閉状態とされる。また、このとき他の第二バルブ86b、第四バルブ88a及び第五バルブ88bは閉状態である。これにより、製造空間Rにおける第二空間R2が高度に加圧され、第一凹部54及び基材110の表面に沿って加飾シート200が押し付けられて密着する。なお、このとき、製造空間Rは実質的に第二空間R2のみとなる。このようにして、基材110及び樹脂部品120の表面に加飾シート200が被覆され、基材110及び樹脂部品120の加飾予定部位に転写層202が密接される。なお、この圧縮空気は、樹脂部品120の軟化点よりも低い温度に加熱された加熱圧縮空気であってもよい。圧縮空気を加熱圧縮空気とするためには、例えば圧力タンク83で加圧されている空気をヒータなどで温めればよい。
圧空により基材110の表面に完全に沿うように加飾シート200を被覆させる段階では、平面状包囲部分220以外に、それ以前の段階で未だ基材110及び樹脂部品120に密接していない賦形部分210の側壁部分も、ある程度は伸びる。しかし、減圧密接工程の第1工程において予め賦形部分210が形成され、この賦形部分210は、平面状の頂上部分も含めて、略均一な伸び率で既に伸びている。このため、圧空による被覆段階で賦形部分210の側壁部分にさらなる伸びが生じるとは言っても、その伸び量は僅かである。最終的には、賦形部分210の部位毎の伸び率に大きなばらつきは生じない。しかも、賦形部分210は基材110及び樹脂部品120の外面形状に類似する形状に賦形されているので、基材110及び樹脂部品120の外面形状によらずに、賦形部分210の部位毎の伸び率のばらつきを小さく抑えることができる。その結果、加飾製品100の外周側部分におけるクラックの発生や基材110及び樹脂部品120に対する加飾シート200の位置ずれ等の発生を、有効に抑制することができる。また、図柄層の部位毎の伸び率のばらつきも抑制されるので、加飾された加飾製品100の意匠性を高く維持することができる。
(2−5)加飾同時組立工程
図10に示されている減圧密接工程の第2工程は、圧縮空気を第二空間R2に導入すると同時に短時間で終了する。しかし、加飾シート200が基材110及び樹脂部品120を一瞬覆っただけでは接合させるには不十分であり、基材110と樹脂部品120を十分に接合させるためのリードタイムが必要になる。リードタイムは、基材110と樹脂部品120の接合予定部位に塗布されている接着剤や粘着剤の種類によって異なるが、例えば数分程度基材110と樹脂部品120の接合予定部位に押圧力を与え続ける。言い換えれば、図10に示されているのは加飾同時組立工程の開始時点である。この押圧力を与え続ける工程が加飾同時組立工程であり、この加飾同時組立工程のリードタイムによって加飾シート200から基材110と樹脂部品120への転写層202の転写もより良く行える。
減圧密接工程の第2工程においては、第二空間R2の加圧も利用することで、加飾シート200の基材110及び樹脂部品120への押圧力を増大させることができる。よって、基材110及び樹脂部品120の外面形状によらずに、基材110及び樹脂部品120と加飾シート200との間にエアーが残留することが抑制され、高品質な転写を実現することができる。また、加飾同時組立工程においては、第二空間R2の加圧も利用することで、0.1MPa/cm以上の押圧力を基材110と樹脂部品120の接合予定部位の界面に発生させ易くなる。
また、基材110及び樹脂部品120を収容する治具10内の製造空間Rが、本体部材50の第一凹部54と蓋部材60の第二凹部64との両方によって画定されている。このため、例えば本体部材50の下壁部51が凹部を有さない平板状に形成され、製造空間Rが蓋部材60の第二凹部64のみによって画定される場合に比べて、一定の大きさの製造空間Rを確保するための第二凹部64の深さを浅くすることができる。よって、加熱工程において、第二空間R2に存在する空気の対流や輻射により加飾シート200を加熱する際に、加飾シート200を十分かつ略均一に加熱できるまでの所要時間を比較的短く抑えることができる。その結果、サイクルタイムの長期化を抑えつつ、上述したような各種の効果を得ることができる。
(2−6)シート切断工程
図11に示されているシート切断工程は、上述の加飾同時組立工程の後に行なわれている、加飾シート200を切断する工程である。シート切断工程では、固定挟持部31も加飾シート200を挟持し、固定挟持部31及び治具10の双方によって加飾シート200が挟持される。その後、固定挟持部31と治具10との間で、カッター41によって加飾シート200が幅方向に切断される。こうして、長尺状の加飾シート200からその下流側端部の一部が切り離される。
取出工程は、加飾シート200によって加飾がされると同時に基材110と樹脂部品120が接合された加飾製品100を取り出す工程である。取出工程では、まず、本体部材50と蓋部材60とが互いに離間するように相対移動して治具10が開かれる。その後、架台72に固定された本体部材50がガイドレール71に沿って側方に引き出される。そして、着脱場所において、加飾シート200で覆われた加飾製品100が、載置台56から取り出される。その後、載置台56に、新たな基材110及び樹脂部品120が載置される。つまり、取出工程において本体部材50を着脱場所に引き出す動作は、上述した仮固定工程における同様の動作と共通化されている。
以後、上記の各工程を繰り返すことで、加飾シート200付きの加飾製品100を次々に製造することができる。接着剤や粘着剤の接着力や粘着力を十分に引き出すために、取り出し後すぐに加飾製品100から加飾シート200を剥離せずに、加飾シート200付きの加飾製品100のままの状態で養生してもよい。また、加飾シート200付きの加飾製品100のシート材201を保護シートとして使用して、加飾シート200付きの加飾製品100のままで輸送してもよい。
<第2実施形態>
(3)加飾製品の製造装置の構成
次に、本発明の第2実施形態に係る加飾製品の製造装置である熱転写装置及びそれを用いた加飾製品の製造方法について図12乃至図19を用いて説明する。第2実施形態に係る加飾製品の製造装置は、図12に示されているように、本体部材50A及び蓋部材60Aの具体的構成が、第1実施形態とは一部異なっている。また、第2実施形態の熱転写装置1Aは、冷却機構95をさらに備えている点で、第1実施形態の熱転写装置1とは異なっている。さらに、これらの相違点に基づき、治具10Aを含む熱転写装置1Aを用いて行われる加飾製品の製造方法の具体的手順が、第1実施形態とは一部異なっている。そこで以下では、主に第1実施形態の熱転写装置1及びそれを用いた加飾製品の製造方法と第2実施形態の熱転写装置1A及びそれを用いた加飾製品の製造方法の相違点について説明する。なお、第2実施形態の熱転写装置1Aにおいて第1実施形態の熱転写装置1と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する場合がある。
(3−1)治具10A
図12乃至図14に示されているように、本体部材50Aは、下壁部51Aと載置台56とを有している。載置台56は、下壁部51Aの中央部に固定されている。本体部材50Aは、クランプ59をさらに有している。一方、下壁部51Aは、その中央部に、第1実施形態の本体部材50が有するような第一凹部54(図1等参照)を有していない。平面視において矩形状の持つ下壁部51Aは、その外周側領域に、クランプ59を収容するためのクランプ収納部51Aaを有する。クランプ収納部51Aaは、上壁部61Aに対向する下壁部51Aの上面の四辺のそれぞれを各辺に沿って切り欠いて形成されている。すなわち、下壁部51Aの上面の四辺にある切欠状凹部がクランプ収納部51Aaである。クランプ59及びクランプ収納部51Aaは、平面視において、矩形枠状に形成されている。また、本体部材50Aは、載置台56に載置されている基材110及び樹脂部品120を加熱するための第1加熱部(図示せず)を有している。
クランプ59は、複数の付勢部材59aによって下壁部51Aに取り付けられている。付勢部材59aとしては、コイルばねや板バネ等の弾性部材を用いることができる。或いは、アキュムレータ等の流体圧システムを利用してもよい。ここでは、付勢部材59aとしてコイルばねを用いている。外力が作用していない状態では、クランプ59は、付勢部材59aによって上壁部61A側に向かって飛び出したところで支持されており、クランプ59の上端部が基材110の上端部よりも上壁部61A側に位置する。また、付勢部材59aによる付勢力よりも十分に大きな外力が作用した状態では、クランプ59は、クランプ収納部51Aaに収納されて下壁部51Aと面一状態となる(図17参照)。
図12乃至図14に示されているように、蓋部材60Aは、上壁部61Aと第二凹部64Aとを有している。また、蓋部材60Aは、上壁部61Aの内部に埋め込まれている第2加熱部(図示せず)を有している。この第2加熱部は上壁部61Aに対して熱を伝達することができるように構成されている。下壁部51Aが直方体状に形成されていることに対応して、第二凹部64Aの深さが、第1実施形態における第二凹部64の深さよりも深く設定されている。
蓋部材60Aには、上壁部61Aの表面に開口する複数の第二通気路68Aが形成されている。第二通気路68Aは、上壁部61Aの下面における第二凹部64Aの周囲の領域には開口していない。つまり、全ての第二通気路68Aが、第二凹部64Aの表面にそれぞれ開口するように形成されている。それぞれの第二通気路68Aは、上壁部61Aの内部に形成された共通の緩衝空間69に連通している。緩衝空間69は、蓋部材60Aの移動方向Cに対して直交する平面に沿うように形成されている。第二通気路68Aは、緩衝空間69及び配管等を介して、調圧機構80に接続されている。
各第二通気路68Aの「経路長」は、予め定められた基準箇所から第二凹部64Aの表面までの長さとして定義することができる。ここでは、全ての第二通気路68Aに共通の緩衝空間69が、基準箇所として定められている。従ってここでは、各第二通気路68Aの「経路長」は、緩衝空間69と第二凹部64Aの表面との間における通気路の延在方向に沿った長さになる。複数の第二通気路68Aの経路長は、蓋部材60Aの移動方向Cに見た場合の開口位置が第二凹部64Aの最深部から外縁64e側となるに従って長くなるように設定されている。ここで、第二凹部64Aの「最深部」とは、蓋部材60Aの本体部材50Aと合わさる面からの第二凹部64Aの深さが最も深くなる部分である。なお、第二凹部64Aは、基材110の外面形状を模した形状に形成されているため、その最深部は、基材110の外面形状における最上部に対応する部分であるとも言える。第二凹部64Aでは、平面視において、一定深さを有する略矩形状に形成された中央領域が最深部となる。
また、各第二通気路68Aは、緩衝空間69から蓋部材60Aの移動方向Cに沿って直線状に延びる部分を有する。複数の第二通気路68Aのうちの幾つかは、移動方向Cに沿う部分のみを有しており(上下方向にのみ延びており)、そのまま第二凹部64Aの中央領域(最深部)に開口している。その他の第二通気路68Aは、移動方向Cに沿う部分と、当該部分に対して交差する方向に延びる部分とを有する屈曲形状に形成されている。そして、屈曲形状の第二通気路68Aは、第二凹部64Aにおける傾斜面部分に開口している。そのため、直線状に上下に延びる第二通気路68Aも屈曲形状を持つ第二通気路68Aも、第二凹部64Aの表面に対して略直交する方向に開口している。なお、「略直交する」とは、直交している状態、又は実質的に直交しているとみなすことができる状態(例えば、第二凹部64Aの表面と第二通気路68Aが延びる方向とのなす角が85°〜90°の状態)である。
(3−2)冷却機構95
冷却機構95は、治具10A及びその内部の製造空間RAに載置される基材110及び樹脂部品120を冷却するための機構である。冷却機構95は、冷却液の流通路(図示せず)が内部に形成された板状部材を含み、この冷却液の流通路には圧送ポンプや熱交換器等(図示せず)が接続される。冷却液の流通路は、冷却液循環路の一部を構成し、冷却液循環式の冷却機構として構成されている。なお、冷却機構95は、ペルティエ素子等の放電素子を含む、電熱冷却方式の冷却機構であってもよい。
冷却機構95は、本体部材50Aに対して接触した状態及び離間した状態のいずれの状態も取り得るように設けられている。そのために、冷却機構95は、本体部材50Aに対して移動方向Cに相対移動可能に構成されている。より具体的には、冷却機構95は、スライド機構70を構成する架台72の上に固定されており、本体部材50Aから離間した状態が図14に示されている状態であり、本体部材50Aに接触した状態が図20に示されている状態である。
冷却機構95の本体部材50Aに対する相対的な移動は、本体部材50Aに対する蓋部材60Aの相対的な移動とは独立して行うことができるように構成されている。例えば、基材110及び樹脂部品120に加飾シート200が密接しているときに、本体部材50Aに冷却機構95が接触している状態では基材110及び樹脂部品120が冷却機構95により冷却され、本体部材50Aから冷却機構95が離間している状態では冷却機構95による基材110及び樹脂部品120に対する冷却が停止される。
(4)加飾製品の製造方法
次に、熱転写装置1Aを用いて行われる加飾製品100の製造方法について説明する。第2実施形態に係る加飾製品の製造方法は、第1実施形態の加飾製品の製造方法と同様に、仮固定工程、シート引出工程、蓋閉め工程、加熱工程、減圧密接工程、加飾同時組立工程、シート切断工程及び取出工程を備えている。蓋閉め工程、加熱工程、減圧密接工程、加飾同時組立工程及び取出工程は、記載されている順に実行される。仮固定工程及びシート引出工程は蓋閉め工程の前に行なわれれば、仮固定工程とシート引出工程のいずれが先に行われてもよい。また、シート切断工程は、蓋閉め工程以後であれば一連の製造工程の中のいずれのタイミングで実行されてもよい。なお、第2実施形態の製造方法では、第1実施形態の製造方法と異なり、冷却機構95を用いた強制的な冷却が、加飾同時組立工程で第2工程の後に開始される。以下、順を追って説明する。
(4−1)仮固定工程
第2実施形態の仮固定工程は、第1実施形態の仮固定工程と同様に行なわれ、本体部材50Aの載置台56に基材110及び樹脂部品120が仮固定される。
(4−2)シート引出工程
第2実施形態のシート引出工程も、第1実施形態のシート引出工程と同様に行なわれ、図14に示されているように、所定間隔を隔てて上下に対向した本体部材50Aと蓋部材60Aとの間に、加飾シート200が配置される。そして、載置台56に載置されている基材110及び樹脂部品120の加飾予定部位と加飾シート200の転写層202との位置合わせが行なわれる。
(4−3)加熱工程
シート引出工程により本体部材50Aと蓋部材60Aとの間に加飾シート200が配置された状態で、蓋閉め工程よりも前に加熱工程が実行される。加熱工程では、図15に示されているように、まず、上壁部61Aの下面における第二凹部64A以外の平面部分と加飾シート200とが接するとともにクランプ59の上面と加飾シート200とが接するように、加飾シート200に対して蓋部材60Aを移動方向Cに相対移動させる。このように蓋部材60が移動されることにより、付勢部材59aにより付勢されたクランプ59と蓋部材60Aとの間に加飾シート200が挟まれる。加熱工程は、加飾シート200がクランプ59と上壁部61Aとの間に挟持された状態で実行される。なお、付勢部材59a付きのクランプ59は、蓋閉め前に加飾シート200と上壁部61Aとを密接させるための“密接手段”として機能する。
加熱工程では、上壁部61Aの内部に埋め込まれた第2加熱部(図示せず)の熱が上壁部61Aに伝達され、さらに加熱状態にある上壁部61Aの熱が、クランプ59と上壁部61Aとに挟持されている接触部位を介して直接的に加飾シート200に伝達される。また、加熱状態にある上壁部61Aの熱は、第二凹部64Aに存在する空気を介した対流や輻射によって間接的に加飾シート200に伝達される。これにより、平面視において上壁部61Aと重なる加飾シート200の部分は、部位によらずに全体が概ね均一に加熱される。
(4−4)減圧密接工程
次に、図16に示されているように、第二通気路68Aを介して加飾シート200と蓋部材60Aとの間(第二凹部64A)に存在する空気を真空吸引することにより、減圧密接工程の第1工程が実行される。減圧密接工程の第1工程では、第二通気路68Aと真空タンク81(図12参照)との間の配管に設けられた第二バルブ86bが開状態とされるとともに第一バルブ86a、第三バルブ87、第四バルブ88a及び第五バルブ88bが閉状態とされ、第二通気路68Aを介して加飾シート200と上壁部61Aとに囲まれた空間内の空気が真空吸引される。減圧密接工程の第1工程では、加熱工程により軟化した加飾シート200が、第二凹部64Aの表面に沿って吸着される。軟化状態の加飾シート200は、第二凹部64Aの外縁64eを起点として屈曲しつつ、第二凹部64Aに沿うように(すなわち、基材110の外面形状に類似する形状となるように)賦形される。つまり、減圧密接工程の第1工程を実行することにより、基材110及び樹脂部品120の外面形状に類似する形状を有する凸状の賦形部分が加飾シート200に形成される。このとき、加飾シート200は、部位によらずに略均一な伸び率で伸びながら賦形される。このため、賦形部分の内側に形成された転写層202の文字や図柄も、均一性を維持する。
上述したように、複数の第二通気路68Aの経路長は、平面視における開口位置が第二凹部64Aの最深部から外縁64e側となるに従って長くなるように設定されている。このため、真空吸引の効果は、第二通気路68Aの経路長が最短となる第二凹部64Aの最深部に対応する位置で最も早く、第二通気路68Aの経路長が長くなる(外縁64e側となる)に従ってより遅く現れる。その結果、軟化状態にある加飾シート200は、第二凹部64Aの最深部から徐々に外縁64eに向かって、第二凹部64Aの表面形状に追従する。よって、減圧密接工程の第1工程において、加飾シート200の全体的な位置ずれを有効に抑制することができる。
減圧密接工程の第1工程において、加飾シート200が基材110及び樹脂部品120の外面形状に類似する形状に予め賦形されるので、その後の減圧密接工程の第2工程において、成形品の外周側部分でのクラックの発生や基材110及び樹脂部品120に対する加飾シート200の位置ずれ等の発生を有効に抑制することができる。また、転写層202における図柄層の部位毎の伸び率のばらつきも抑制されるので、加飾された成形品の意匠性を高く維持することができる。
加熱工程及び減圧密接工程の第1工程の実行後に、蓋閉め工程が実行される。蓋閉め工程では、付勢部材59aの付勢力に抗して、加飾シート200を挟んで本体部材50Aと蓋部材60Aとが接する位置まで相対移動する。この蓋閉めにより、図17に示すように、クランプ59がクランプ収納部51Aaに完全に収納されるとともに、本体部材50Aと蓋部材60Aとの間に製造空間RAが形成される。このとき、加飾シート200は、第二凹部64Aに沿うように既に賦形された状態で、それ以外の未だなお平面状を維持する部分が、下壁部51A及びクランプ59と上壁部61Aとの間に挟持される。
減圧密接工程の第1工程の次に第2工程が実行される。減圧密接工程の第2工程では、まず、第2バルブ86bを閉じて、加飾シート200と蓋部材60Aとの間の真空吸引を停止する。その後、第二通気路68Aと圧力タンク83との間の配管に設けられた第三バルブ87を開いて加飾シート200と蓋部材60Aとの間の圧空供給を開始するとともに、第一通気路58と真空タンク81との間の配管に設けられた第一バルブ86aを開いて加飾シート200と本体部材50Aとの間の真空吸引を開始する。これにより、それまで第二凹部64Aの表面に沿っていた加飾シート200が、図18に示されているように本体部材50A側(基材110及び樹脂部品120の側)に向かって移動し始める。最終的には、図19に示されているように、下壁部51A及び基材110及び樹脂部品120の表面に沿って加飾シート200が押し付けられて密着する。このようにして、基材110及び樹脂部品120の表面に加飾シート200が被覆され、基材110及び樹脂部品120の加飾予定部位に転写層202が密接される。
減圧密接工程の第2工程においても、減圧密接工程の第1工程の場合と同様に、圧空供給の効果は、第二通気路68Aの経路長が最短となる第二凹部64Aの最深部に対応する位置で最も早く、第二通気路68Aの経路長が長くなる(外縁64e側となる)に従ってより遅く現れる。その結果、予め賦形された加飾シート200は、実質的にはその賦形形状を保持したまま、基材110の最上部から徐々に外周側部分に向かって、基材110及び樹脂部品120の表面形状に追従する。よって、減圧密接工程の第2工程においても、加飾シート200の全体的な位置ずれを有効に抑制することができる。
また、第二凹部64Aにおける傾斜面部分に開口する複数の第二通気路68Aのそれぞれは、第二凹部64Aの表面に対して略直交する方向に開口している。このため、全ての第二通気路68Aの第二凹部64Aの表面への開口面積を、実質的に等しくすることができる。これにより、減圧密接工程の第1工程における蓋部材60A(第二凹部64A)への加飾シート200の吸着や、減圧密接工程の第2工程における蓋部材60A(第二凹部64A)からの加飾シート200の吐出を、加飾シート200の全体に亘って略均一化することができる。例えば第二通気路68Aの開口部の跡が加飾シート200に残るのを抑制することができ、成形品の外観を良好に維持することができる。
(4−5)加飾同時組立工程
(4−5-1)加熱工程
図19に示されている減圧密接工程の第2工程の後で、接合予定部位に押圧力を与え続ける加飾同時組立工程が実施される。言い換えれば、図19に示されている状態が加飾同時組立の開始時点の状態である。基材110と樹脂部品120の接合予定部位に塗布されている接着剤や粘着剤は、感熱接着剤及び感熱粘着剤のうちの少なくとも一方である。第2実施形態による加飾同時組立工程では、第1加熱部(図示せず)によって感熱接着剤や感熱粘着剤が活性化する温度まで接合予定部位の温度が上昇させられる。
この加飾同時組立工程のリードタイムを経て、加飾シート200から基材110と樹脂部品120への転写層202の転写もより良く行える。
加飾同時組立工程においても、加飾シート200と本体部材50Aとの間の空間の加圧も利用することで、加飾シート200の基材110及び樹脂部品120への押圧力を増大させることができる。加飾同時組立工程においては、加飾シート200と本体部材50Aとの間の空間の加圧も利用することで、0.1MPa/cm以上の押圧力を基材110と樹脂部品120の接合予定部位の界面に発生させている。
(4−5-2)冷却工程
冷却工程は、感熱接着剤や感熱粘着剤による接合予定部位の接合時間を短縮するために、冷却機構95を本体部材50Aに接触させて基材110及び樹脂部品120を冷却する工程である。冷却工程では、それ以前の各工程では本体部材50Aから離間した状態に保持されていた冷却機構95を、図20に示されているように本体部材50Aに接触させる。蓋閉めによって一体化された本体部材50A及び蓋部材60Aの全体が移動方向Cに沿って冷却機構95側に移動することで、冷却機構95と本体部材50Aとを接触させる。冷却工程では、基材110及び樹脂部品120の熱が載置台56を介して下壁部51Aに伝達され、さらに下壁部51Aの熱が、冷却機構95によって奪われる。その結果、基材110が冷却される。
(5)特徴
(5−1)
以上説明したように、仮固定工程では、載置台56(載置部の例)によって基材110と樹脂部品120とが仮固定される。この仮固定によって、基材110の下面に樹脂部品120が接する部分102(接合予定部位の例)に接着剤又は粘着剤が正確に配置されて基材110と樹脂部品120の位置合わせが正確に行なわれる。減圧密接工程では、基材110と樹脂部品120の境界領域103を含む上面101(加飾予定部位の例)に加飾シート200を密接させた状態で、加飾同時組立工程において、樹脂部品120の軟化点よりも低い温度で、加飾シート200により加飾予定部位を加飾すると同時に、接着剤又は粘着剤により基材110の下面に樹脂部品120が接する部分102(接合予定部位)を接合する。そのため、樹脂部品120は、軟化点よりも低い温度しか掛からないことで変形が防止されるだけでなく、載置台56によっても保形されて変形が防止される。また、接合が加飾と同時に行なわれるので接合後に加飾を行なう場合のように加飾に伴う接合不良は生じない。一方、上面101(加飾予定部位)の加飾後は、樹脂部品の組み立てが生じないために樹脂部品の組み立てによる加飾部の損傷が発生することもない。
(5−2)
図33(c)に示されているように、基材110と樹脂部品120の上面101(加飾予定部位)は、基材110及び樹脂部品120の両方に掛かる境界領域103を含んでいる。減圧密接工程では、境界領域103を含む上面101に加飾シート200を配置し、加飾同時組立工程では、基材110の下面に樹脂部品120が接する部分102(接合予定部位)を接合すると同時に境界領域103の基材110及び樹脂部品120を一遍に加飾するように構成されている。このように構成されることにより、基材110と樹脂部品120に別々に加飾する場合に生じ易い加飾のずれを防止でき、不良品の発生を抑制することができる。
特に第1実施形態及び第2実施形態では、減圧密接工程の第1工程を備えることで、加飾製品100の外周側部分におけるクラックの発生や基材110及び樹脂部品120に対する加飾シート200の位置ずれ等の発生を有効に抑制しながら、意匠性に優れた加飾製品を効率良く製造することができる。
(5−3)
加飾同時組立工程では、接着剤として感熱接着剤又は感熱粘着剤が使用されている。そのために、加熱部90を使っている加飾シート200を加熱して加飾する時の熱を用い、加飾シート200により加飾すると同時に、基材110の下面に樹脂部品120が接する部分102(接合予定部位)を感熱接着剤又は感熱粘着剤により接合している。このように構成されることにより、感熱接着剤又は感熱粘着剤の接着力や粘着力を発揮させるための専用の熱源を削減することができ、コストの削減が容易になる。
(5−4)
第2実施形態の加飾同時組立工程は、感熱接着剤又は感熱粘着剤を、載置台56を介して冷却する冷却工程を含んでいる。冷却機構95によって載置台56を介して感熱接着剤又は感熱粘着剤を冷却することができるように構成されている。冷却機構95によって冷却することで感熱接着剤又は感熱粘着剤による接合が完了する温度まで速く温度が下がるので接合に掛かる時間を短縮することができる。
(5−5)
第2実施形態の加飾同時組立工程では、冷却工程による冷却が終了するまで加飾シート200を基材110と樹脂部品120の上面101(加飾予定部位)に押し付け続けて加飾シート200を上面101に密接させた状態を維持する。加飾シート200が上面101に押し付け続けられて加飾シート200が上面101に密接させられた状態を維持するので、基材と樹脂部品との間の熱収縮の差による加飾のずれを小さくすることができる。
(5−6)
第1実施形態及び第2実施形態では、減圧密接工程の前に、加飾シート200を加熱して軟化させる加熱工程を備えている。加飾シート200が熱によって柔らかくなるために基材110及び樹脂部品120に加飾シート200が沿い易くなるので、加飾のずれや樹脂部品120の熱などによる変形を小さくすることができる。
(6)変形例
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。なお、以下の変形例の説明では、第1実施形態や第2実施形態と異なる部分には異なる符号を付しているが、形状を変えただけの場合などにはアルファベットの大文字を付加して第1実施形態や第2実施形態との対応を理解し易いように符号を付している。
(6−1)
以上説明したように、上記第1実施形態では、平面視において、第一凹部54と第二凹部64とが同心状に配置されるとともに、第一凹部54の外縁54eが第二凹部64の外縁64eを包含する構成を例として説明した。しかし、第一凹部54と第二凹部64との配置関係は同心状の場合に限定されるものではない。例えば、平面視において、第一凹部54の中心部と第二凹部64の中心部とが異なる位置となりつつ第一凹部54の外縁54eが第二凹部64の外縁64eを包含するように、両者が配置されてもよい。また、図21に示されている治具10Bのように、平面視において、第一凹部54Bと第二凹部64とが同心状となりつつ第一凹部54Bの外縁54eと第二凹部64の外縁64eとが一致するように、両者が配置されてもよい。なお、図21は、第一凹部54Bと第二凹部64の位置関係を説明するための図であるので、その他の部分は図示を省略している。例えば、第1実施形態の治具10に対して図21の治具10Bは、本体部材50Bの第一凹部54Bの形状が本体部材50の第一凹部54の形状と異なっているが、そのために周壁52Bの形状も異なっている。
(6−2)
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、基材110及び樹脂部品120を組み立てて形成される加飾製品100がパーソナルコンピュータの筐体の蓋である場合について説明した。しかし、基材と樹脂部品とを組み立てると同時に加飾することによって製造される加飾製品はパーソナルコンピュータの筐体の蓋に限定されるものではない。この場合、加飾製品の外面形状が異なれば、それに応じて蓋部材の第二凹部の形状も決定される。例えば一例として図22に示されている治具10Cのように、基材110Cの外面が段付き形状となっている場合には、第二凹部64Cも、それに応じた段付き凹部として形成されると好適である。例えば、第1実施形態の治具10に対して図22の治具10Cは、蓋部材60Cの上壁部61Cの第二凹部64Cの形状が蓋部材60の上壁部61の第二凹部64の形状と異なっている。
(6−3)
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、第二凹部64,64Aが基材110及び樹脂部品120の外面形状に沿う形状を有するように形成されている構成を例として説明した。しかし、第二凹部は、基材及び樹脂部品の外面形状に完全に沿っている必要はなく、基材及び樹脂部品の外面形状に概ね対応する形状を有するように形成されていればよい。例えば第2実施形態を例にとると、図23に示されている治具10Dのように、基材110D及び樹脂部品120Dを組み立ててなる扁平な断面U字状の加飾製品に対して第二凹部64Dが断面長円状に形成される等、第二凹部の形状は、基材及び樹脂部品の外面形状を概略的に表すものであってもよい。例えば、第2実施形態の治具10Aに対して図23の治具10Dは、本体部材50Dの載置台56Dの形状が本体部材50Aの載置台56の形状と異なり、また蓋部材60Dの上壁部61Dの第二凹部64Dの形状が蓋部材60の上壁部61の第二凹部64の形状と異なっている。
(6−4)
上記第1実施形態では、周壁部52の内面(傾斜面53)が、鉛直面に対して一律の傾斜角度を有している構成を例として説明した。しかし、例えば図24に示されている治具10Eのように、傾斜面53Eが、複数段階に傾斜するように形成されてもよい。例えば傾斜面53Eが、第一凹部54Eの外縁54Eeから鉛直面に対して第1の傾斜角度で傾斜する第一傾斜面53Eaと、鉛直面に対して上記第1の傾斜角度よりも小さい第2の傾斜角度で傾斜する第二傾斜面53Ebとを有してもよい。また、上記第2の傾斜角度が上記第1の傾斜角度よりも大きく設定されてもよい。さらには、傾斜が断面直線状ではなく、断面曲線状であってもよい。例えば、第1実施形態の治具10に対して図24の治具10Eは、本体部材50Eの下壁部51Eの第一凹部54Eの形状が本体部材50の下壁部51の第一凹部54の形状と異なっている。
(6−5)
上記の第1実施形態及び第2実施形態では、第二凹部64,64Aの最深部である、基材110の平板部111に対応する部分が、基材110の平板部111に平行な平面状に形成されている構成を例として説明した。しかし、例えば第2実施形態を例にとると、図25に示されている治具10Fのように、第二凹部64Fが、その最深部に、本体部材50A側(載置台56側)に向かって局所的に突出する突出部64pを有してもよい。例えば、第2実施形態の治具10Aに対して図25の治具10Fは、蓋部材60Fの上壁部61Fの第二凹部64Fの形状が蓋部材60の上壁部61の第二凹部64の形状と異なっている。
このような突出部64pを備えることで、減圧密接工程の第1工程において、加熱状態にある加飾シート200を、最深部から徐々に第二凹部64Fの外縁64eに向かって凹部形状に追従させることが容易となる。また、減圧密接工程の第2工程において、基材110に対して、最上部から徐々に外周側部分に向かって加飾シート200を被覆することが容易となる。よって、基材110及び樹脂部品120に対する加飾シート200の位置精度をさらに高めることができる。
(6−6)
上記の第1実施形態及び第2実施形態で説明した治具10,10Aにおいて、蓋部材が、第二凹部における基材及び樹脂部品の変曲部に対応する位置に設けられた断熱部材をさらに含んでもよい。第2実施形態で説明した治具10Aを例にとると、図26に示されている治具10Gのように、蓋部材60Gが、第二凹部64における基材110及び樹脂部品120の変曲部に対応する位置に設けられた断熱部材65をさらに含んでもよい。例えば、第2実施形態の治具10Aに対して図26の治具10Gは、蓋部材60Gの上壁部61Gの構成が蓋部材60の上壁部61の構成と異なっている。
図示の例では、断熱部材65は、上壁部61Gに埋め込まれている。このような断熱部材65を備えることで、当該断熱部材65の設置位置における加飾シート200の伸びを抑制できる。よって、加飾シート200の伸び量を調整することができ、図柄の歪みやコントラスト差の増大を抑制することができる。その結果、加飾された成形品の意匠性をさらに向上させることができる。なお、断熱部材65は、第二凹部64Aの表面に貼り付けられていてもよい。また、断熱部材65は、第二凹部64Aにおける基材110及び樹脂部品120の変曲部に非対応の位置に設けられてもよい。
(6−7)
上記第2実施形態で説明した治具10Aにおいて、図27に示されているように、本体部材50Aが、下壁部51A上に配置され、載置台56の周囲を取り囲むように形成された矩形枠状の中間壁部55をさらに含んでもよい。この場合、下壁部51Aと上壁部61Aとは、中間壁部55を介して間接的に密接可能となる。このような中間壁部55を備えることで、中間壁部55を備えない場合に比べて、第二凹部64Aの深さを浅くすることができる。よって、加熱工程において、第二凹部64Aに存在する空気を介した対流や輻射により加飾シート200を加熱する際に、短時間で加飾シート200を十分かつ略均一に加熱することができる。その結果、加飾シート200の加熱から加飾シート200の賦形、さらには基材110に対する加飾シート200の被覆までの全体のサイクルタイムを短縮することができる。
(6−8)
上記の各実施形態では、加飾シート200が、シート材201とそのシート材201から剥離される図柄層を含む転写層202とを有する構成を例として説明した。しかし、例えば、加飾シート200は、図柄層を含まずにハードコート層のみを含む転写層202を有するシートであってもよい。また、例えば、加飾シート200は、シート材201と転写層202とが剥離しない一体型シートであってもよい。シート材201と転写層202とが剥離しない場合には、加飾製品は、転写によって加飾されているのではなく、加飾シート200が基材110及び樹脂部品120と一体化することによって加飾されていることになる。
(6−9)
上記第1実施形態及び第2実施形態では、治具10,10Aを用い、加飾シート200をロールから供給して連続処理を行う熱転写装置1,1Aを構成する場合について説明した。しかし、例えば加飾シート200を枚葉で供給して熱転写したり、基材110及び樹脂部品120に貼り合わせたりする場合にも治具10,10Aを用いることができる。
(6−10)
上記第1実施形態及び第2実施形態では、蓋部材60,60Aに第二凹部64,64Aが形成されている場合について説明した。しかし、例えば図28に示されている治具10Hのように、平板状の上壁部61Hを含む蓋部材60Hを備えるものとしてもよい。図28に示されている治具10Hは、上記第1実施形態で既に説明した本体部材50の下壁部51、周壁部52、載置台56及び第一通気路58並びに蓋部材60の上壁部61及び第二通気路68などに対応する本体部材50Hの下壁部51H、周壁部52H、載置台56及び第一通気路58並びに蓋部材60Hの上壁部61H及び第二通気路68Hなどを備えている。
(6−11)
上記6−10で説明した図28に示されている治具10Hの変形例として、例えば図29(a)及び図29(b)に示されている治具10Iのように、1つ以上の第二通気路68Iが、上壁部61Iにおける基材110の最上部に対応する位置のみに開口するように構成されてもよい。この場合、減圧密接工程の第2工程の初期段階では、第二通気路68Iを介して真空吸引して加飾シート200を部分的に上壁部61Iに吸着させつつ、第一通気路58を介して加飾シート200と本体部材50Hとの間を真空吸引する(図29(a)参照)。この段階を経ることで、加飾シート200は、大まかではあるが、基材110及び樹脂部品120の外面形状に類似する形状に予め賦形される。その後、第二通気路68Iを介して圧空供給を行い、加飾シート200で基材110及び樹脂部品120を完全に被覆させる(図29(b)参照)。
(6−12)
上記6−10で説明した図28に示されている治具10Hの変形例として、例えば図30(a)及び図30(b)に示されている治具10Jのように、載置台56Jが、下壁部51Hに対して移動方向Cに相対移動可能に構成されてもよい。すなわち、載置台56Jが、第1実施形態や第二実施形態で説明されている位置を基準位置として、この基準位置よりも蓋部材60H側に突出した突出位置との間で移動可能に構成されている。この場合、減圧密接工程の第2工程の初期段階では、載置台56Jを突出位置まで突出させた状態で第一通気路58を介して加飾シート200と本体部材50Jとの間を真空吸引する(図30(a)参照)。この段階を経ることで、基材110及び樹脂部品120に対する加飾シート200の最初の接触が上壁部61Hにより近い位置で行われるので、位置精度を高めることができる。その後、載置台56Jを基準位置に戻して、加飾シート200に基材110及び樹脂部品120を完全に被覆させる(図30(b)参照)。このとき、載置台56Jを突出位置から基準位置に戻す際に加飾シート200に余裕代が生じるので、成形品の外周側部分におけるクラックの発生を有効に抑制することができる。
(6−13)
上記6−10で説明した図28に示されている治具10Hの変形例として、例えば図31(a)及び図31(b)に示されている治具10Kのように、本体部材50K及び蓋部材60Kが、それぞれ分割構造を有するように構成されてもよい。例えば、本体部材50Kが、下壁部51Kと、この下壁部51Kの周囲を取り囲みつつ方向Cに相対移動可能な第一周壁57とを含み、蓋部材60Kが、上壁部61Kと、この上壁部61Kの周囲を取り囲みつつ方向Cに相対移動可能な第二周壁67とを含むように構成する。第一周壁57と第二周壁67とは、移動方向Cに見て(平面視において)重なる部分を有するように配置される。この場合、減圧密接工程の第2工程において、第一周壁57と第二周壁67とを同期して基材110及び樹脂部品120側に移動させることで、2つの周壁57,67によって挟持された加飾シート200に基材110及び樹脂部品120に被覆させる(図31(b)参照)。加飾シート200を挟持してその位置をコントロールしながら基材110及び樹脂部品120を被覆するので、位置精度を高めることができる。その後、第一通気路58を介して加飾シート200と本体部材50Kとの間を真空吸引しつつ、第二通気路68を介して加飾シート200と蓋部材60Kとの間に圧空供給して、加飾シート200を基材110樹脂部品120に完全に被覆させる。
(6−14)
上記6−11で説明した図29(a)及び図29(b)に示されている治具10Iの変形例として、例えば図32(a)及び図32(b)に示されている治具10Lのように、修正ブロック66で基材110及び樹脂部品120を加圧してもよい。この場合、減圧密接工程の第2工程の初期段階では、第二通気路68Iを介して真空吸引して加飾シート200を部分的に上壁部61Iに吸着させつつ、第一通気路58を介して加飾シート200と本体部材50Hとの間を真空吸引する(図32(a)参照)。この図32(a)に示されている状態では、修正ブロック66は、蓋部材60Iの中に収納されている。加飾シート200が基材110及び樹脂部品120の外面形状に類似する形状に予め賦形された後、第二通気路68Iを介して圧空供給を行い、加飾シート200で基材110及び樹脂部品120を完全に被覆させる。その次の段階で、修正ブロック66を下降させて修正ブロック66により基材110を加圧する(図32(b)参照)。修正ブロック66で加圧することにより、基材110及び樹脂部品120の接合予定領域により高い圧力を加えて強固な接合を形成することができる。
(6−15)
上記第1実施形態及び第2実施形態では、基材110と樹脂部品120の両方を加飾する場合について説明したが、例えば、基材110の切りかかれた部分113及び樹脂部品120の嵌合部122を無くして、組立部分を樹脂部品120の環状部分121と基材110の下面を接合するだけにし、かつ加飾部分を基材110の上面だけにすることもできる。
1 熱転写装置
10,10A〜10L 治具
20 シート保持部
30 シート引出部
40 シート切断部
50,50A,50B,50D,50E,50H,50J,50K 本体部材
56,56J 載置台
60,60A,60C,60D,60F,60G,60H,60I,60K 蓋部材
66 修正ブロック
70 スライド機構
80 調圧機構
90 加熱部
95 冷却機構

Claims (8)

  1. 基材と樹脂部品との位置を合わせて載置部に取り付けることにより、前記基材と前記樹脂部品との接合予定部位に接着剤又は粘着剤を配置して前記載置部による仮固定を行なう仮固定工程と、
    仮固定されている前記基材及び前記樹脂部品のうちの加飾予定部位に加飾シートを配置し、前記加飾予定部位と前記加飾シートとの間を減圧して密接させる減圧密接工程と、
    前記樹脂部品の軟化点よりも低い温度で、前記加飾シートにより前記加飾予定部位を加飾すると同時に、前記接合予定部位の前記基材と前記樹脂部品との間に圧力を加えて前記接着剤又は前記粘着剤により前記接合予定部位を接合する加飾同時組立工程と
    を備える、加飾製品の製造方法。
  2. 前記加飾予定部位は、前記基材及び前記樹脂部品の両方に掛かる境界領域を含み、
    前記減圧密接工程では、前記境界領域を含む前記加飾予定部位に前記加飾シートを配置し、
    前記加飾同時組立工程では、前記接合予定部位を接合すると同時に前記境界領域の前記基材及び前記樹脂部品を一遍に加飾する、
    請求項1に記載の加飾製品の製造方法。
  3. 前記加飾同時組立工程では、前記接着剤として感熱接着剤又は感熱粘着剤を使って、前記加飾シートを加熱して加飾する時の熱を用い、前記加飾シートにより加飾すると同時に前記感熱接着剤又は前記感熱粘着剤により前記接合予定部位を接合する、
    請求項1又は請求項2に記載の加飾製品の製造方法。
  4. 前記加飾同時組立工程は、前記感熱接着剤又は前記感熱粘着剤を、前記載置部を介して冷却する冷却工程を含む、
    請求項3に記載の加飾製品の製造方法。
  5. 前記加飾同時組立工程では、前記冷却工程による冷却が終了するまで前記加飾シートを前記加飾予定部位に押し付け続けて前記加飾シートを前記加飾予定部位に密接させた状態を維持する、
    請求項4に記載の加飾製品の製造方法。
  6. 前記減圧密接工程の前に、前記加飾シートを加熱して軟化させる加熱工程をさらに備える、
    請求項1から5のいずれか一項に記載の加飾製品の製造方法。
  7. 基材と樹脂部品が位置を合わせて取り付けられるように構成され、前記基材と前記樹脂部品との接合予定部位に接着剤又は粘着剤を配置して仮固定を行なう載置部と、
    前記加飾シートの前記加飾予定部位に対応する箇所を加熱する加熱部と、
    仮固定されている前記基材及び前記樹脂部品のうちの加飾予定部位に加飾シートを配置し、前記加飾予定部位と前記加飾シートとの間を減圧して密接させる減圧密接部と
    を備え、
    前記減圧密接部が前記加飾予定部位に密接させかつ前記樹脂部品の軟化点よりも低い温度で前記加飾予定部位を加飾すると同時に、前記載置部において前記接合予定部位の前記基材と前記樹脂部品との間に圧力を加えて前記接着剤又は前記粘着剤で前記接合予定部位を接合する加飾同時組立を行なう、加飾製品の製造装置。
  8. 前記加熱部は、前記減圧密接部によって前記加飾シートを前記加飾予定部位に密接させる前に前記加飾シートを加熱して軟化させる、
    請求項7に記載の加飾製品の製造装置。
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