JP7311075B1 - 前処理液および絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この絶縁被膜は、鋼板よりも低い熱膨張率を有する。このため、焼付後に室温まで低下したときに、絶縁被膜によって鋼板に張力が付与されて、鉄損が低減する。
その状態で、絶縁被膜を形成するために焼付(または焼付を兼ねた平坦化焼鈍)を実施すると、不純物元素がフォルステライト被膜から再び鋼板中に侵入する。
その結果、得られる絶縁被膜付き電磁鋼板においては、磁気特性が劣化し、例えば、鉄損が高くなる場合がある。
特許文献1には、リン酸酸洗前処理を実施することにより、フォルステライト被膜中に取り込まれている不純物元素であるSは除去されて、不純物元素であるSが鋼板中に再侵入することが抑制されることが記載されている。
前処理時間が短いと、フォルステライト被膜からの不純物元素の除去が不十分となる場合がある。その場合、焼鈍(または平坦化焼鈍)の際に、フォルステライト被膜中から不純物元素が鋼板中に再侵入することが抑制されず、得られる絶縁被膜付き電磁鋼板においては、鉄損が高くなる。
しかし、その場合、フォルステライト被膜が前処理液によって損傷し、フォルステライト被膜の鋼板に対する密着性が低下しやすい。その場合も、鉄損が高くなる。
その結果、リン酸などの無機酸を含有する前処理液に、特定量の酢酸を添加することで、前処理時間が短くても、フォルステライト被膜からの不純物元素を十分に除去できることを見出し、本発明を完成させた。
[1]フォルステライト被膜を表面に有する電磁鋼板に、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩を含有する絶縁被膜処理液を塗布する前に用いる前処理液であって、塩酸、硫酸およびリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機酸と、酢酸と、を含有し、上記酢酸の含有量が、1質量ppm以上3000質量ppm以下である、前処理液。
[2]上記無機酸の含有量が、0.20質量%以上30.00質量%以下である、上記[1]に記載の前処理液。
[3]フォルステライト被膜を表面に有する電磁鋼板に対して、上記[1]または[2]に記載の前処理液を用いて前処理し、次いで、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩を含有する絶縁被膜処理液を塗布してから焼付することにより、絶縁被膜を形成する、絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
[4]上記前処理が、上記フォルステライト被膜に上記前処理液を接触させる処理である、上記[3]に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
[5]上記前処理液の温度が、30℃以上95℃以下であり、上記前処理液と上記フォルステライト被膜との接触時間が、1.0秒以上40秒以下である、上記[4]に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
[6]上記絶縁被膜処理液におけるクロム化合物の含有量が、上記塩100質量部に対して、クロム元素換算で、1.0質量部以下である、上記[3]~[5]のいずれかに記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
まず、前処理液を説明する。
前処理液は、フォルステライト被膜を表面に有する電磁鋼板に後述する絶縁被膜処理液を塗布する前に用いる。
前処理液は、塩酸、硫酸およびリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機酸を含有する。
このような前処理液を、電磁鋼板のフォルステライト被膜に、絶縁被膜処理液を塗布する前に、接触させる前処理を実施する。これにより、次のような作用効果が得られる。
これにより、得られる絶縁被膜は、外観が均一美麗となる。また、絶縁性および鋼板に付与する張力も良好になる。
一方、無機酸の含有量が多すぎると、フォルステライト被膜が損傷して密着性が劣化しやすい。このため、フォルステライト被膜の密着性がより優れるという理由から、前処理液における無機酸の含有量は、30.00質量%以下が好ましく、25.00質量%以下がより好ましい。
すなわち、前処理液中における塩酸、硫酸およびリン酸の含有量は、それぞれ、JIS K 0102に準拠して、塩化物イオン(Cl-)、硫酸イオン(SO4 2-)およびリン酸イオン(PO4 3-)を定量し、塩酸、硫酸およびリン酸に換算することにより求める。
前処理液は、無機酸に加えて、更に、酢酸(CH3COOH)を含有する。これにより、無機酸がフォルステライト被膜中の不純物元素を除去する能力が向上する。
このような効果が得られる理由は、明らかではないが、以下のように推測される。
酢酸イオン(CH3COO-)が、不純物化合物の表面に吸着することにより、不純物化合物の無機酸に対する溶解速度が向上する。
このとき、酢酸の含有量が少なすぎると、酢酸の不純物化合物に対する吸着量が少なすぎて、十分な効果が得られない。
一方、酢酸の含有量が多すぎると、酢酸の不純物化合物に対する吸着量が増えて立体障害が発生し、不純物化合物の無機酸に対する溶解速度が低下して、効果が減少する。
一方、前処理液における酢酸の含有量は、3000質量ppm以下であり、2500質量ppm以下が好ましく、2000質量ppm以下がより好ましい。
イオンクロマトグラフィーは、以下の条件で実施する。
・カラム:Shodex RSpak KC-G8B(内径8.0mm、長さ50mm)とShodex RSpak KC-811(内径8.0mm、長さ300mm)とを2本連結
・カラム温度:50℃
・移動相:3mmol/L過塩素酸
・反応液:Shodex ST3-R(10倍希釈)
・流速:移動相1.0mL/分、反応液0.7mL/分
測定波長:430nm
注入量:20μL
前処理液の溶媒としては、水が好ましい。
前処理液を調製する方法としては、例えば、濃度既知の試薬または工業薬品である無機酸および酢酸を秤量して混合し、所望の含有量になるように水を用いて希釈することにより、前処理液を調製する方法が挙げられる。
次に、絶縁被膜処理液を説明する。
絶縁被膜処理液は、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩を含有する。これにより、得られる絶縁被膜は、フォルステライト被膜との密着性に優れる。
リン酸塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。リン酸塩を2種以上併用することにより、絶縁被膜の物性値を緻密に制御できる。
リン酸塩としては、入手容易であるという理由から、第一リン酸塩(重リン酸塩)が好ましい。
ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム(Na3SiO3)、ケイ酸リチウムなどが挙げられる。
絶縁被膜処理液は、更に、コロイド状シリカを含有することが好ましい。
コロイド状シリカの含有量は、塩100質量部に対して、SiO2固形分換算で、20質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましい。コロイド状シリカの含有量がこの範囲であれば、絶縁被膜の熱膨張係数を低減する効果が大きくなり、鋼板に付与される張力がより高まる。
絶縁被膜処理液は、無水クロム酸(三酸化クロム)、クロム酸塩、重クロム酸塩などのクロム化合物を含有しない、いわゆるクロムフリーであることが好ましい。
具体的には、クロム化合物の含有量は、塩100質量部に対して、クロム元素(Cr)換算で、1.0質量部以下が好ましく、0.10質量部以下がより好ましく、0.01質量部以下が更に好ましい。
絶縁被膜処理液は、金属化合物(金属元素を含有する化合物)を含有することが好ましい。
金属化合物の含有量は、塩100質量部に対して、金属元素換算で、5.0質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。これにより、得られる絶縁被膜は、耐吸湿性、耐食性などが良好となり、また、鋼板に付与する張力がより高くなる。絶縁被膜処理液がクロムフリーである場合、これらの特性が不足することがあるため、より有用である。
金属化合物は、これらの金属元素を含有する酸化物、窒化物などの化合物であり、その形態は、例えば、粒子である。
絶縁被膜処理液の溶媒としては、水が好ましい。
フォルステライト被膜を有する電磁鋼板は、鋼板と、その鋼板表面に配置されたフォルステライト被膜(フォルステライトを含有する被膜)とを有するものであれば、特に限定されず、一例として、方向性電磁鋼板である。
まず、好ましい鋼の成分組成を説明する。以下、特に断らない限り、各元素の含有量の単位「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、ゴス方位結晶粒の発生に有用である。この作用を有効に発揮させるためには、C含有量は、0.0010%以上が好ましい。
一方、C含有量が多すぎると、脱炭焼鈍によっても脱炭不良を起こす場合がある。このため、C含有量は、0.10%以下が好ましい。
Siは、電気抵抗を高めて鉄損を低下させるとともに、鉄のBCC組織を安定化させて高温の熱処理を可能とする。このため、Si含有量は、1.0%以上が好ましく、2.0%以上がより好ましい。
一方、Si含有量が多すぎると冷間圧延が困難となる。このため、Si含有量は、5.0%以下が好ましい。
Mnは、鋼の熱間脆性の改善に有効に寄与する。更に、Mnは、SやSeが混在している場合には、MnSやMnSe等の析出物を形成して、結晶粒成長の抑制剤(インヒビター)として機能する。このため、Mn含有量は、0.010%以上が好ましい。
一方、Mn含有量が多すぎると、MnSe等の析出物の粒径が粗大化して、インヒビターとしての機能が失われる場合がある。このため、Mn含有量は、1.0%以下が好ましい。
Alは、鋼中でAlNを形成して、分散第二相となり、インヒビターとして機能する。このため、Al含有量は、sol.Alとして、0.0030%以上が好ましい。
一方、Al含有量が多すぎると、AlNが粗大に析出して、インヒビターとしての機能が失われる場合がある。このため、Al含有量は、sol.Alとして、0.050%以下が好ましい。
Nは、Alの存在下で、AlNを形成する。このため、N含有量は、0.0010%以上が好ましい。
一方、N含有量が多すぎると、スラブ加熱時にふくれ等を生じる場合がある。このため、N含有量は、0.020%以下が好ましい。
SおよびSeは、MnやCuと結合して、MnSe、MnS、Cu2-xSe、Cu2-xSを形成し、鋼中の分散第二相となり、インヒビターとして機能する。このため、SおよびSeの少なくとも1種の合計含有量は、0.0010%以上が好ましい。
一方、SおよびSeの含有量が多すぎると、スラブ加熱時の固溶が不完全となるだけでなく、製品表面の欠陥が発生する場合もある。このため、SおよびSeの少なくとも1種の合計含有量は、0.050%以下が好ましい。
上述した成分組成は、更に、Cu:0.20%以下、Ni:0.50%以下、Cr:0.50%以下、Sb:0.10%以下、Sn:0.50%以下、Mo:0.50%以下、および、Bi:0.10%以下からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(便宜的に「元素a」と呼ぶ)を含有してもよい。
これらの元素aは、結晶粒界に偏析しやすく、補助的なインヒビターとして機能することで、更に磁性を向上できる。しかし、元素aが多すぎると、二次再結晶の不良が発生しやすくなる場合がある。このため、元素aの含有量は、上記範囲が好ましい。
また、元素aの添加効果を得る観点からは、Cu、Ni、Cr、Sb、SnおよびMoの含有量は、それぞれ、0.010%以上が好ましく、Biの含有量は、0.0010%以上が好ましい。
元素bにより、結晶粒成長の抑制力が更に強化されて、より高い磁束密度が安定的に得られる。元素bの添加効果を得る観点からは、BおよびGeの含有量は、それぞれ、0.0010%以上が好ましく、As、P、Te、Nb、TiおよびVの含有量は、それぞれ、0.0050%以上が好ましい。
上述した成分組成の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
次に、フォルステライト被膜を有する電磁鋼板を製造する方法の一例を説明する。
まず、上述した成分組成を有する鋼を、従来公知の精錬プロセスによって溶製し、連続鋳造法または造塊-分塊圧延法を用いて、鋼スラブを得る。
次いで、得られた鋼スラブに熱間圧延を施して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。その後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を実施して、最終板厚の冷延板を得る。そして、得られた冷延板に対して、一次再結晶焼鈍および脱炭焼鈍を施し、その後、MgOを含有する焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上げ焼鈍を実施する。
こうして、フォルステライトを含有する被膜(フォルステライト被膜)が表面に形成された電磁鋼板が得られる。
次に、絶縁被膜付き電磁鋼板を製造する方法について説明する。
まず、フォルステライト被膜を有する電磁鋼板に対して、前処理液を用いて前処理を実施する。すなわち、フォルステライト被膜に、前処理液を接触させる。
前処理の方法としては、前処理液をフォルステライト被膜に接触できれば、特に限定されない。例えば、フォルステライト被膜を有する電磁鋼板を、前処理液の浴に浸漬させる方法が挙げられる。このとき、以下の前処理条件(前処理温度および前処理時間)を満たすことが好ましい。
前処理による効果を十分に得るため、前処理温度(前処理液の温度)は、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
一方、前処理温度が高すぎると、フォルステライト被膜が損傷して密着性が低下する場合がある。また、酸ヒューム対策が必要になる場合があり、この場合、不経済である。
このため、前処理温度は、95℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
前処理による効果を十分に得るため、前処理時間(前処理液とフォルステライト被膜との接触時間)は、1.0秒以上が好ましく、2.0秒以上がより好ましい。
一方、前処理時間が長すぎると、前処理に用いる装置が長大となる場合がある。この場合、酸ヒューム対策が必要な場合と同様に、不経済である。また、前処理時間が長すぎると、フォルステライト被膜が損傷して密着性が低下する場合がある。
このため、前処理時間は、40秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。
なお、次いで絶縁被膜処理液を塗布する前に、フォルステライト被膜を乾燥することは必須ではないが、絶縁被膜の膜厚制御のしやすさの観点から、乾燥することが好ましい。
次いで、前処理液を接触させた後のフォルステライト被膜に、絶縁被膜処理液を塗布し、必要に応じて乾燥してから、焼付する。焼付に代えて、焼付を兼ねた平坦化焼鈍を実施してもよい。
以下のようにして、絶縁被膜付き電磁鋼板を製造した。
まず、板厚が0.20mmである仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板を準備した。仕上げ焼鈍済みであることから、その表面には、フォルステライト被膜が形成されていた。
同様に、準備した方向性電磁鋼板について、後述する方法によって、Se量(すなわち、フォルステライト被膜および鋼板のいずれかに含まれるセレンの量)を求めたところ、100質量ppmであった。
更に、準備した方向性電磁鋼板から後述する方法によってフォルステライト被膜を剥離し、鋼板だけの状態にした。その状態における鋼板のS量およびSe量を、上記と同様にして求めたところ、どちらも、定量限界未満であった。
したがって、準備した方向性電磁鋼板において、不純物元素であるSおよびSeは、ほとんどがフォルステライト被膜に取り込まれていることが分かる。
下記表1に示す成分組成を有する絶縁被膜処理液A~Vを調製した。
リン酸塩としては、それぞれ、第一リン酸塩を使用した。なお、下記表1では、第一リン酸マグネシウムを「リン酸Mg」と表記している。他の第一リン酸塩も同様である。
ホウ酸塩としては、ホウ砂(Na2B4O5(OH)4・8H2O)を使用した。
ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(Na3SiO3)を使用した。
コロイド状シリカとしては、日産化学社製のスノーテックス30を用いた。
金属化合物(金属元素を含有する化合物)としては、水溶性のCrO3のほか、TiO2、ZrO2、HfO2、Nb2O5、VN、MgOまたはZnOを使用した。下記表1には、金属元素換算した含有量(下記表1では、単に「含有量」と表記)を記載した。
なお、金属化合物の粒径は、いずれも、0.1~0.8μmの範囲であった。粒径は、島津製作所社製のレーザ回折式粒度分布測定装置SALD-3100を用いて計測した。粒径は、平均粒径であり、体積基準で50%の粒子径つまり、メディアン径を示す。
下記表2に示すNo.1~51の前処理液を調製した。
具体的には、下記表2に示す量の純水に、試薬特級の液体である塩酸(濃度:35質量%)、硫酸(濃度:97質量%)、リン酸(濃度:85質量%)および酢酸(濃度:99.7質量%)を下記表2に示す量で添加して、前処理液を得た。
得られた前処理液の無機酸および酢酸の含有量を、下記表2に示す。
準備した仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板を、水洗によって未反応の焼鈍分離剤を除去してから、下記表2に示す前処理条件(前処理温度および前処理時間)で、前処理液の浴に浸漬させ、その後、水洗し、乾燥した。こうして、前処理を実施した。
前処理の実施後、仕上げ焼鈍済みの方向性電磁鋼板の表面(つまり、フォルステライト被膜)に、下記表2に示す絶縁被膜処理液を、塗布および焼付後の付着量が両面合計で12.0g/m2となるように、ロールコーターを用いて塗布し、焼付を実施し、絶縁被膜を形成した。焼付の条件としては、N2:100体積%雰囲気下、840℃、20秒とした。こうして、絶縁被膜付き電磁鋼板を得た。
得られた絶縁被膜付き電磁鋼板の磁束密度B8(磁化力800A/mにおける磁束密度)は、1.920Tであった。
得られた絶縁被膜付き電磁鋼板を、以下の方法により評価した。評価結果を下記表2に示す。
(剥離前)
得られた絶縁被膜付き電磁鋼板について、JIS G 1215-4に記載された燃焼-赤外線吸光法に準拠して、S量(単位:質量ppm)を求めた。
求めたS量は、絶縁被膜、フォルステライト被膜および鋼板のいずれかに含まれる硫黄(S)の量を意味する。
得られた絶縁被膜付き電磁鋼板を、塩酸とフッ酸との混合溶液に浸漬することにより、絶縁被膜およびフォルステライト被膜を剥離し、鋼板だけの状態にした。その状態における鋼板のS量(単位:質量ppm)を、上記と同様にして求めた。
(剥離前)
得られた絶縁被膜付き電磁鋼板について、Se量(単位:質量ppm)を求めた。
Se量は、その大小に応じて、JIS G 1257-20に記載された原子吸光分析法、または、JIS G 1233に記載された2,3-ジアミノナフタリン抽出吸光光度法に準拠して求めた。
求めたSe量は、絶縁被膜、フォルステライト被膜および鋼板のいずれかに含まれるセレン(Se)の量を意味する。
得られた絶縁被膜付き電磁鋼板を、塩酸とフッ酸との混合溶液に浸漬することにより、絶縁被膜およびフォルステライト被膜を剥離し、鋼板だけの状態にした。その状態における鋼板のSe量(単位:質量ppm)を、上記と同様にして求めた。
得られた絶縁被膜付き電磁鋼板に対して、窒素雰囲気中で、820℃×3時間の歪取焼鈍を実施した。
歪取焼鈍後の絶縁被膜付き電磁鋼板を、5mm、10mm…のように5mm間隔で直径が異なる丸棒に巻き付けていき、フォルステライト被膜が剥離しない最小の直径を求めた。この直径が30mm以下である場合、鋼板に対するフォルステライト被膜の密着性が優れると評価した。
得られた絶縁被膜付き電磁鋼板から、幅30mm×長さ280mmの試験片を切り出した。切り出した試験片を用いて、JIS C 2550に記載された方法に準拠して、鉄損(W17/50)(磁束密度の振幅1.7T、周波数50Hzにおける質量あたりの損失)を計測した。鉄損(W17/50)は、0.800W/kg以下が好ましい。
上記表2に示すように、No.4~9、12~16、19~39および41~51(発明例)の絶縁被膜付き電磁鋼板は、フォルステライト被膜の密着性に優れ、かつ、低鉄損であった。
これに対して、No.1~3、10~11、17~18および40(比較例)の絶縁被膜付き電磁鋼板は、フォルステライト被膜の密着性および鉄損の低減の少なくともいずれかが不十分であった。
ここで、No.1~51のうち、代表的に、絶縁被膜処理液Aを使用したNo.1~10を対比する。
No.1は、S量(剥離前)およびSe量(剥離前)が多いことから、前処理液を用いた前処理によって、フォルステライト被膜中の不純物元素(SおよびSe)が十分に除去されてなかったことが分かる。
また、No.1は、S量(剥離後)およびSe量(剥離後)も多いことから、絶縁被膜を形成するための焼付の際に、フォルステライト被膜から鋼板に不純物元素(SおよびSe)が再侵入したことが分かる。
No.2は、No.1よりもS量およびSe量が低減しており、前処理時間を長くしたことによって、フォルステライト被膜中のSおよびSeが除去されたことが分かる。
しかしながら、No.2は、密着性および鉄損の低減が不十分であった。これは、前処理時間を長くしたことにより、フォルステライト被膜が損傷したためと推測される。
No.3は、No.1よりもS量およびSe量が低減しており、前処理温度を高くしたことによって、フォルステライト被膜中のSおよびSeが除去されたことが分かる。
しかしながら、No.3は、密着性および鉄損の低減が不十分であった。これは、前処理温度を高くしたことにより、フォルステライト被膜が損傷したためと推測される。
No.4~9では、No.1と同じ前処理条件(前処理温度および前処理時間)であっても、No.1よりもS量およびSe量が低減しており、フォルステライト被膜中のSおよびSeが除去されたことが分かる。
また、No.4~9では、フォルステライト被膜の密着性が良好かつ低鉄損であり、前処理によるフォルステライト被膜の損傷が抑制されていることが分かる。
このようなNo.10では、フォルステライト被膜は損傷しておらず、密着性は良好であったが、フォルステライト被膜から鋼板にSおよびSeが再侵入しており、鉄損の低減が不十分であった。
Claims (8)
- フォルステライト被膜を表面に有する電磁鋼板に、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩を含有する絶縁被膜処理液を塗布する前に用いる前処理液であって、
塩酸、硫酸およびリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機酸と、
酢酸と、を含有し、
前記酢酸の含有量が、1質量ppm以上3000質量ppm以下である、前処理液。 - 前記無機酸の含有量が、0.20質量%以上30.00質量%以下である、請求項1に記載の前処理液。
- フォルステライト被膜を表面に有する電磁鋼板に対して、請求項1または2に記載の前処理液を用いて前処理し、次いで、リン酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩を含有する絶縁被膜処理液を塗布してから焼付することにより、絶縁被膜を形成する、絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
- 前記前処理が、前記フォルステライト被膜に前記前処理液を接触させる処理である、請求項3に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
- 前記前処理液の温度が、30℃以上95℃以下であり、
前記前処理液と前記フォルステライト被膜との接触時間が、1.0秒以上40秒以下である、請求項4に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。 - 前記絶縁被膜処理液におけるクロム化合物の含有量が、前記塩100質量部に対して、クロム元素換算で、1.0質量部以下である、請求項3に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
- 前記絶縁被膜処理液におけるクロム化合物の含有量が、前記塩100質量部に対して、クロム元素換算で、1.0質量部以下である、請求項4に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
- 前記絶縁被膜処理液におけるクロム化合物の含有量が、前記塩100質量部に対して、クロム元素換算で、1.0質量部以下である、請求項5に記載の絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
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