JP7310090B2 - 油孔付きドリル - Google Patents
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Description
この油孔から出た切削液は切れ刃が2枚のドリルの場合、前方側および後方側の2枚の切れ刃に対して冷却効果を発揮するように油孔の位置や大きさが設計されている。
従来の油孔付きドリルに関しては、下記特許文献1ないし3が例として挙げられる。
また、特許文献3に記載されているドリルは油孔を凹型を有した非対称の腎臓形状にすることで、切削液をシンニング部から溝を介して流し、切削加工により生じた切り屑の冷却効果を高める点が説明されている。
つまり、切削液が流れるドリルの特定部位のみが冷却効果の恩恵を受ける。
また、特許文献3に示すドリルではドリルの溝に切削液が流れるので、ドリルと被削材との切削箇所である切れ刃、更には切削速度が最大となる外周コーナへの冷却効果は非常に限定される。
従来の油孔付きドリルは、油孔の形態により切削液の流れる方向は大きく変化すると思われてきた。
しかし、油孔の場所が大きく変化しない限り、その切削液の流れの方向はほとんど変化せずに、その大部分が後方側の切れ刃へ流れていくことが分かった。
図6は従来の油孔付きドリル100を用いて被削材W100を切削加工した際の丸い油孔H101から吐出される切削液のシミュレーション結果、図7は従来の油孔付きドリル100の丸い油孔H101から吐出される切削液の流れの方向を示す模式図をそれぞれ示している。
油孔付きドリルのヒール付近は切削加工時において熱影響が最も少ない部分である。
つまり、油孔から出る切削液が油孔付きドリルのヒール付近へ流れていくことは、油孔付きドリルの冷却効率を低下させる要因であると考えた。
言い換えると、油孔から吐出する切削液を前方の切れ刃に対しては外周コーナへ、後方の切れ刃に対してはシンニング切れ刃から後方の切れ刃全域へ切削液が流れるような孔形態とした。
また、これらの各直線部同士は曲線部により連結されており、第1直線部はドリルの回転方向の前方側に位置し、第2直線部はドリルの回転方向の後方側に位置し、第3直線部はドリルの中心軸側に位置している。
ここで、第1直線部と第2直線部を互いに平行な位置関係にしてもよい。
第1ないし第3曲線部間では第2曲線部の曲率半径を最も大きくし、かつ第5ないし第7曲線部間では第6曲線部の曲率半径を最も大きくしても良い。
また、流路の開口部であるシャンク側の油孔については、シャンクの端部に設けられた凹部形状の溝内に設けても構わない。
これにより、当該直線部を含む箇所は比較的に曲率半径の小さい曲線部に比べてより多くの切削液が流れることになった。
また、油孔の直線部は切れ刃の外周コーナの方向およびシンニング部の方向にそれぞれ分散して配置した。
その結果、油孔から吐出する切削液は前方の切れ刃の外周コーナおよびシンニング切れ刃から後方の切れ刃全域へ集中的に冷却できる効果を奏する
2 切れ刃
3(3A,3B) 逃げ面
4 すくい面
5 ねじれ溝
6 シンニング部
7 外周コーナ
10 シャンク
11 溝
11B 溝底
H1,H2,H101 油孔
O ドリルの中心軸
P 流路
S 流路の断面形状
RD ドリルの回転方向
C1~C7 第1ないし第7曲線部
L1~L3 第1ないし第3直線部
P1~P6,P11~P14 接点
W1,W100 被削材
r1~r7 第1ないし第7曲線部の曲率半径
θ 第1直線部と第2直線部の成す角度
本発明の一実施形態であるドリル1の正面図を図1、ドリル1の先端部分(切れ刃側)の拡大斜視図を図2、ドリル1の後端部分(シャンク側)の拡大斜視図を図3にそれぞれ示す。
逃げ面3は切れ刃2から近い順に第1逃げ面(二番面)3Aと第2逃げ面(三番面)3Bに分かれており、第2逃げ面3Bには切削液を吐出する開口部(油孔H1,H1)が設けられている。
また、切れ刃2からドリル1の中心側(チゼル側)にはシンニング部6、外周側には外周コーナ7がそれぞれ設けられている。
その溝11の溝底11Bには図2に示す2ヶ所の油孔H1,H1とドリル1内部に設けられた2条の流路(図示せず)を介してつながっている2ヶ所の油孔H2,H2が設けられている。
図1に示すドリル1のA-A線における断面図を図4、その断面図における流路Pの断面形状Sの拡大図を図5に示す。
これらの2条の流路P,Pはドリル1の軸方向に沿って図2に示す油孔H1,H1と図3に示す油孔H2,H2をつないでおり、内部に切削液を流す役割を果たす。
また、ドリル1の軸方向と直交する方向の断面において流路Pの断面形状Sは図5に示すようにホームベース型に類似した概ね五角形の形状である。
この断面形状Sは、少なくとも、長さが互いに異なる第1ないし第3直線部L1~L3を含み、これらの第1ないし第3直線部L1~L3同士は曲線部により連結されている。
図4,図5に示すように、ドリル1の回転方向をRDと表現すると、第1直線部L1は3本の直線部L1~L3の中で最も回転方向RDの前方側に位置し、第2直線部L2は3本の直線部L1~L3の中で最も回転方向RDの後方側に位置している。
第1直線部L1と第2直線部L2は、野球のホームベース形状の様に互いに略平行な位置関係にあるのが好ましい。
さらに、第3直線部L3は3本の直線部L1~L3の中で最もドリル1の中心軸O側に位置している。
図5に示す流路Pの断面形状Sは、第1ないし第3直線部L1~L3の他に所定の曲率半径を有する第1ないし第7の曲線部C1~C7から形成されている。
これらの複数の曲線部C1~C7は、大別すると最も外周コーナ側に位置する第1ないし第3曲線部C1~C3、第2直線部L2と第3直線部L3の間に位置する第4曲線部C4、ドリル1の最も中心軸O側に位置する第5ないし第7曲線部C5~C7である。
第6曲線部C6は、第1ないし第7曲線部C1~C7の中で最も大きい曲率半径r6を有する。
なお、第4曲線部C4を介した第2直線部L2と第3直線部L3の成す角度(内角)θは、110°~150°の範囲が好ましい(図5に示す第2直線部L2と第3直線部L3の成す角度は130°)。
なお、図5に示す上述した複数の接点P1~P6,P11~P14は直線部と曲線部または曲線部同士の境界を示すために便宜上図示しているものであり、流路の断面形状を形成する直線部と曲線部および曲線部同士は段差なく滑らかに接続されている。
これら3本の直線部を油孔の形状の一部とすることで、第1直線部を配置した箇所から前方の切れ刃の外周コーナに向けて切削液が吐出されて、同時に第2および第3直線部を配置した箇所から油孔から吐出される切削液がシンニング部を経由して後方の切れ刃の外周コーナに到達する。
これにより、ドリルの切削加工時において被削剤との摩擦熱が最も発生するドリルの外周コーナ付近への冷却効果を一層高めることができる。
また、流路の断面形状を形成する第1ないし第3直線部の長さ,第1ないし第7曲線部の長さや曲率半径の大きさ,第2直線部と第3直線部の成す角度などは切れ刃の枚数やドリルの直径などの諸条件に応じて任意に変更できる。
まず、従来品は丸い形状の油孔が2枚の切れ刃の後方側にそれぞれ配置されているドリルとした。
前述したように、従来品100の切削加工時において被削材W100内で切削液が流れる方向を可視化したシミュレーション結果を図6、油孔H101から吐出される切削液の各方向を矢印FD101~FD106で示した状態を図7にそれぞれ示す。
また、従来品100の油孔H101から流れ出る切削液が方向FD101~FD106も、図7に示す様に多くの切削液が従来品100のランド全体に流れるものの、切れ刃の外周コーナへ流れる切削液は少ない。
本発明品1の油孔H1の場合、吐出される切削液は油孔H1の一部に直線部を含むので、それらの直線部分と比較的に大きな曲率半径を有する曲線部から切削液が優先的に流れていることが把握される。
具体的には、図8に示す様に前方の切れ刃2側に位置する直線部からは前方の切れ刃2の外周コーナ7に向けて切削液が流れている状態が把握される。
同時に、ドリルの回転方向の逆側(後方側)にも2本の直線部を含むので、後方の切れ刃2の方向に切削液の流れFD6が発生する。
その結果、本発明のドリルではいずれの切れ刃の外周コーナへも切削液を重点的に冷却できることがわかる。
従来品および本発明品ともにドリル径8mm、溝長さ64mm、ドリル長さ118mmの共通仕様とした。
また、被削材に炭素鋼(S50C)を用いて、加工穴は40mm深さの止まり穴とした。
なお、切削加工条件は以下のとおりとした。
・切削速度:120m/min
・回転数:4800min-1
・送り速度:1220mm/min
・送り量:0.256mm/rev
・切削油:水溶性切削油剤
・使用機械:立形マシニングセンタ(BT40)
なお、本試験の使用寿命はドリルの外周コーナにおける摩耗量がマージンの幅を超えた時点で寿命が尽きると判断し、その時点で切削加工試験を終了とした。
これに対して、本発明品を用いた切削試験では、寿命に至るまでに加工できた総穴数は4950穴および4400穴であり、平均して4675穴の加工ができた。
この結果より、本発明品は従来品よりも1.4倍の寿命延長を図ることができた。
Claims (3)
- 2枚以上の切れ刃と、冷却媒体を流す流路と、前記流路の開口部である油孔を備えた油孔付きドリルであって、
前記油孔付きドリルの軸方向と直交する方向の断面において前記流路の断面形状は、少なくとも、長さが互いに異なる第1ないし第3直線部を含み、
前記各直線部同士は所定の曲率半径を有して前記油孔の内側から外側に向かって湾曲する曲線部により連結されており、
前記第1直線部は前記油孔付きドリルの回転方向の前方側に位置し、前記第2直線部は前記油孔付きドリルの回転方向の後方側に位置し、前記第3直線部は前記油孔付きドリルの中心軸側に位置し、かつ前記第1直線部と前記第2直線部は互いに平行な位置関係にあることを特徴とする油孔付きドリル。 - 前記曲線部は、前記油孔付きドリルの外周コーナ側に位置して相互が滑らかにつながる第1ないし第3曲線部,前記第2直線部と前記第3直線部の間に位置する第4曲線部,前記油孔付きドリルの中心軸側に位置して相互が滑らかにつながる第5ないし第7曲線部と、を有しており、第1ないし第3曲線部間では前記第2曲線部の曲率半径が最も大きく、かつ第5ないし第7曲線部間では前記第6曲線部の曲率半径が最も大きいことを特徴とする請求項1に記載の油孔付きドリル。
- 前記流路の開口部であるシャンク側の油孔は、前記シャンクの端部にある凹形状の溝内に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の油孔付きドリル。
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